(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】鉄道車両用整風板
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B61D27/00 V
(21)【出願番号】P 2021026030
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020038307
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】石灰 功征
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-109348(JP,U)
【文献】特開2001-138909(JP,A)
【文献】国際公開第2013/098878(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295746(US,A1)
【文献】特開2017-065487(JP,A)
【文献】特開平06-207434(JP,A)
【文献】特開2000-213765(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105835895(CN,A)
【文献】特開2005-172309(JP,A)
【文献】特開平10-061965(JP,A)
【文献】特開2000-157448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の天井に鉄道車両の長手方向に沿って設けられる空調の吹出口に取付くものであって、両側の縁部に設けた取付部と、取付部間に設けた下方に膨らむ円弧面部と、円弧面部の下面に放射状に設けた複数のフィンを備え、取付部と円弧面部とフィンは、それぞれ鉄道車両の長手方向に連続しており、円弧面部のフィン間に空気吹出用の長孔が設けてあることを特徴とする鉄道車両用整風板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の天井に取付けられる整風板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の天井には空調の風が吹き出す吹出口が設けてあり、当該吹出口には整風板が取付けてある(例えば、特許文献1参照。)。整風板は、ほぼ平らな板状で、下面に複数のフィンが左右方向に間隔をおいて設けてあり、フィン間に長孔が形成されている。
従来の整風板は、フィンが車両の幅方向の中央から遠ざかるほど下端が車両の幅方向の中央から遠ざかるように傾斜して設けてあるものの、風を拡散させる機能が十分ではなく、風をより広範囲に拡散させられるものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、風をより広範囲に拡散させることのできる鉄道車両用整風板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による鉄道車両用整風板は、鉄道車両の天井に鉄道車両の長手方向に沿って設けられる空調の吹出口に取付くものであって、両側の縁部に設けた取付部と、取付部間に設けた下方に膨らむ円弧面部と、円弧面部の下面に放射状に設けた複数のフィンを備え、取付部と円弧面部とフィンは、それぞれ鉄道車両の長手方向に連続しており、円弧面部のフィン間に空気吹出用の長孔が設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による鉄道車両用整風板は、鉄道車両の天井に鉄道車両の長手方向に沿って設けられる空調の吹出口に取付くものであって、両側の縁部に設けた取付部と、取付部間に設けた下方に膨らむ円弧面部と、円弧面部の下面に放射状に設けた複数のフィンを備え、取付部と円弧面部とフィンは、それぞれ鉄道車両の長手方向に連続しており、円弧面部のフィン間に空気吹出用の長孔が設けてあることで、風をより広範囲に拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の整風板の一実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】同整風板を鉄道車両の天井に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【
図4】長孔を打抜き加工するときの様子を示す縦断面図である。
【
図5-1】(a)は本発明の整風板の設置状態の例を示す鉄道車両内の縦断面図であり、(b)は比較例として従来の平らな整風板を設置した場合の鉄道車両内の縦断面図である。
【
図5-2】(a)は本発明の整風板の設置状態の他の例を示す鉄道車両内の縦断面図であり、(b)は比較例として従来の平らな整風板を設置した場合の鉄道車両内の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明の整風板5の一実施形態を示している。本整風板5は、鉄道車両の天井に鉄道車両の長手方向に沿って設けられる空調の吹出口に取付くものであって、アルミ合金の押出形材で形成したものであり、
図1に示すように、左右両側の縁部に設けた取付部1,1と、取付部1,1間に設けた下方に膨らむ円弧面部2と、円弧面部2の下面に放射状に設けた複数のフィン3,3,…を備え、取付部1,1と円弧面部2とフィン3,3,…は、それぞれ鉄道車両の長手方向に連続しており、円弧面部2のフィン3,3,…間に空気吹出用の長孔4が設けてある。円弧面部2は、半径125mmの円弧面となっている。複数のフィン3,3,…は、円弧面部2の円弧の中心Cから放射状に設けてある。長孔4は、フィン3同士の根元の間隔いっぱいの幅で設けてある。
【0009】
図3は、本整風板5を鉄道車両の天井6に取り付けた状態を示している。同図に示すように、鉄道車両の天井6には、幅方向の中央部に空調の風が吹き出す吹出口7が車両の長手方向に沿って設けてあり、その吹出口7を下方より覆うように本整風板5が取付けられる。整風板5は、左右両側の取付部1,1を下方からのねじ8で天井6にねじ止めして取付けてある。
整風板5の上方にはファン9が設けてある。ファン9は、円筒状の羽根10を回転させて、送風口11より風が吹き出すものであり、車両長手方向に沿う水平軸を支点にスイングする構造となっている。
【0010】
このように本整風板5は、取付部1,1間に下方に膨らむ円弧面部2を有し、円弧面部2の下面に放射状に複数のフィン3,3,…が設けてあり、フィン3,3,…間に空気吹出用の長孔4が設けてあることで、幅方向に並ぶ各長孔4,4,…とファン9との距離がほぼ同じになり、尚且つフィン3,3,…がファン9に対して放射状に配置されるため、ファン9から出る風を広範囲に拡散させることができる。
図3中に二点鎖線で示すように、ファン9の位置を下に下げ、円弧面部2の円弧内にファン9を配置することもでき、そうすることでファン9から出る風をより広範囲に拡散させることができる。
また、ファン9の位置を下げないで、整風板5を上に上げて円弧面部2の円弧内にファン9を配置することもでき、その場合も同様にファン9から出る風をより広範囲に拡散させることができる。
【0011】
図5-1(a)は本発明の整風板5の設置状態の例を示しており、
図5-1(b)は比較例として従来の平らな整風板100を設置した場合を示している。図中の二点鎖線は風の流れを示している。ファン9は、
図5(a),(b)で同じ高さ位置に設置されている。
同図より明らかなように、本発明の整風板5は、幅Wが従来の平らな整風板100の幅Wよりも小さくでき、しかも本発明の整風板5を使用した場合の風の広がる角度αは、従来の整風板100を使用した場合の風の広がる角度αよりも大きい。すなわち、本発明の整風板5は、幅Wを小さくしつつ風をより広範囲に拡散することができる。幅Wを小さくできることで、材料費を抑えることができる。また、天井6に設ける空気吹出口の幅を小さくできる。また、風をより広範囲に拡散できることで、車内側面への風の到達高さAが高くなり、車内の冷暖房効率や換気効率が向上する。
さらに本発明の整風板5は、円弧状に形成してあることで、ファン9により近付けて設置することができ、それに伴って天井の高さBを従来の整風板100を使用する場合よりも高くすることができる。これにより、鉄道車両の室内空間を広くすることができる。
【0012】
図5-2(a)は本発明の整風板5の設置状態の他の例を示しており、
図5-2(b)は比較例として従来の平らな整風板100を設置した場合を示している。図中の二点鎖線は風の流れを示している。
本実施例(
図5-2(a))では、天井6の高さを比較例(
図5-2(b))と同じにし、天井6のファン9の下方位置に掘り込み部17を設け、掘り込み部17の天面に整風板5を取付けてある。したがって整風板5は、従来の平らな整風板100よりも高い位置にファン9に近付けて設置してある。図中の符合18は天井6に取付けられる中吊り広告取付枠であり、符合19は中吊り広告を示している。
本実施例によれば、先に説明した実施例(
図5-1(a))と同様に、整風板5の幅を小さくしながら風の広がる角度αを大きくでき、車内側面への風の到達高さAを高くできる効果がある。さらに本実施例によれば、天井6から整風板5が飛び出さないため、車内の乗客が中吊り広告19を見る際に整風板5が邪魔にならず、中吊り広告19を見やすくできる。一方、従来の平らな整風板100は、天井6から下方に飛び出しているため、斜めから見ると整風板100が中吊り広告19と重なるため、整風板100が邪魔になって中吊り広告19が見づらい。
【0013】
次に、本整風板5の製造方法を説明する。まず、両側の取付部1,1間に下方に膨らむ円弧面部2を有し、且つ円弧面部2の下面に複数のフィン3,3,…を放射状に有する形材12を押出成形する。次に、
図4に示すように、その形材12の円弧面部2のフィン3,3,…間に空気吹出用の長孔4を打抜き加工により形成する。
従来の平らな板状の整風板の場合、長孔を打抜き加工で形成しようとすると、打抜き加工用の工具がフィンと干渉するため打抜き加工が行えず、エンドミル等で長孔を一つずつ切削加工するしかなく、長孔の加工に非常に時間がかかっていた。これに対し本整風板5は、円弧面部2に放射状にフィン3,3,…を配置したことで、長孔4を打抜き加工するための工具13がフィン3,3,…と干渉しないため、長孔4を打抜き加工により簡単に形成することが可能となり、これにより長孔加工に要する時間を短縮でき、コストを削減できる。
長孔4を打抜き加工するにあたり、フィン3,3間の円弧面部2の弦14に対する打抜き加工する工具13の進退方向15を80°~100°(
図4では90°)としてある。これにより、長孔4の打抜き加工が無理なく正確に行えると共に、長孔4の幅を極力大きくできる。
長孔4の打抜き加工は、フィン3側から行う。これにより、長孔4を打抜き加工したときにバリが円弧面部2の内側(上面側)に出るので、バリを除去する作業を省略できる。
形材12には、フィン3の根元に切り込み16が長手方向に沿って設けてあり、これにより長孔4を打抜き加工したときに仕上がりがよくなる。
【0014】
以上に述べたように本整風板5は、鉄道車両の天井6に鉄道車両の長手方向に沿って設けられる空調の吹出口7に取付くものであって、両側の縁部に設けた取付部1,1と、取付部1,1間に設けた下方に膨らむ円弧面部2と、円弧面部2の下面に放射状に設けた複数のフィン3,3,…を備え、取付部1,1と円弧面部2とフィン3,3,…は、それぞれ鉄道車両の長手方向に連続しており、円弧面部2のフィン3,3,…間に空気吹出用の長孔4が設けてあることで、風をより広範囲に拡散させることができる。また、本発明の整風板5は、円弧状であるため、風を鉄道車両の室内で広範囲に拡散させるために幅Wを大きくする必要がなく、材料費を抑えることができる。ファン9を、円弧面部2の円弧内に配置することで、風をより一層広範囲に拡散させることができる。また本整風板5は、ファン9に近付けて設置することができるため、これに伴って天井6を高くして鉄道車両の室内空間を広くしたり、整風板5が天井6から飛び出さない納まりにして中吊り広告19を見やすくしたりできる。
また本整風板5は、フィン3,3,…が、長孔4を打抜き加工するための工具13と干渉しないように配置されていることで、長孔4を打抜き加工により簡単に形成できるので、コストを削減できる。
【0015】
本整風板の製造方法は、両側の取付部1,1間に下方に膨らむ円弧面部2を有し、且つ円弧面部2の下面に複数のフィン3,3,…を放射状に有する形材12を押出成形し、円弧面部2のフィン3,3,…間に空気吹出用の長孔4を打抜加工により形成することで、切削加工が不要なためコストを削減できる。しかも、長孔4の打抜き加工の際、フィン3,3間の円弧面部2の弦14に対する打抜加工する工具13の進退方向15が80°~100°であることで、長孔4の打抜き加工が無理なく正確に行えると共に、長孔4の幅を極力大きくできる。
長孔4の打抜き加工をフィン3側から行うことで、バリが円弧面部の内側(上面側)に出るので、バリを除去する作業を省略できる。
形材12は、フィン3の根元に切り込み16が長手方向に沿って設けてあることで、長孔4を打抜き加工したときに仕上がりがよくなる。
【0016】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。整風板の各部の具体的な形状、材質、製造方法は、適宜変更することができる。フィンは、必ずしも円弧面部の円弧の中心から放射状に設けてある必要はなく、円弧面部の円弧の中心よりも低い位置にある中心点から放射状に設けてあってもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 取付部
2 円弧面部
3 フィン
4 長孔
5 整風板
6 天井
7 吹出口