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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】プラスチックボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240315BHJP
   B65D 1/42 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65D1/02 233
B65D1/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021026545
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128168
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉良 剛
(72)【発明者】
【氏名】武田 知己
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 直也
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-502375(JP,A)
【文献】米国特許第06019236(US,A)
【文献】特開2011-084315(JP,A)
【文献】特開2009-298483(JP,A)
【文献】特開2013-075669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02-1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面側が有底円筒状に形成されたプラスチックボトルであって、
前記底面の中央に設けられたゲート部と、
前記ゲート部を包囲し、環状に設けられた平面部と、
前記平面部に連設され、前記平面部から前記底面の縁部にわたって放射状に延びる複数の溝部と、を備え
前記溝部の深さは、前記平面部の側から前記縁部の側にわたって一定または漸減するプラスチックボトル。
【請求項2】
前記溝部の前記底面に沿う方向の幅は、前記平面部の側から前記縁部の側にわたって一定または漸減する請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記溝部は、5~8本設けられている請求項1または2に記載のプラスチックボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料製品などの容器としてプラスチックボトルが汎用されている。このような容器について、排出量を抑制するため、使用する樹脂の量を減少させることが求められている。
【0003】
たとえば、特開2009-18840号公報(特許文献1)には、容器を薄肉化して使用する樹脂の量を低減しつつ、必要な強度を確保した合成樹脂製ボトル型容器が開示されている。また、特開平11-227734号公報(特許文献2)には、特に底部の中心に亀裂や割れなどが生じるおそれが少ない自立耐圧プラスチックボトルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-18840号公報
【文献】特開平11-227734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2のような技術を適用した場合であっても、プラスチックボトルが落下した際に底面に割れが生じる場合があった。
【0006】
そこで、強度、特に落下強度を向上したプラスチックボトルの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプラスチックボトルは、底面側が有底円筒状に形成されたプラスチックボトルであって、前記底面の中央に設けられたゲート部と、前記ゲート部を包囲し、環状に設けられた平面部と、前記平面部に連設され、前記平面部から前記底面の縁部にわたって放射状に延びる複数の溝部と、を備え、前記溝部の深さは、前記平面部の側から前記縁部の側にわたって一定または漸減することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、プラスチックボトルの強度、特に落下強度を、従来のプラスチックボトルに比べて向上しうる。また、この構成によれば、プラスチックボトルの強度を一層向上しうる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、前記溝部の前記底面に沿う方向の幅は、前記平面部の側から前記縁部の側にわたって一定または漸減することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、プラスチックボトルの強度を一層向上しうる。
【0014】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、前記溝部は、5~8本設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、プラスチックボトルの強度を一層向上しうる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るプラスチックボトルの正面図である。
図2】実施形態(実施例1)に係るプラスチックボトルの底面の斜視図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4】実施例1のボトルの底面の形状を示す底面図である。
図5】実施例2のボトルの底面の形状を示す底面図である。
図6】比較例のボトルの底面の形状を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るプラスチックボトルの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るプラスチックボトルを、ポリエチレンテレフタレート製飲料用ボトル1(以下、単にボトル1と称する。)に適用した例について説明する。
【0019】
〔ボトルの構成〕
図1に示すように、本実施形態に係るボトル1は、底面2側が有底円筒状に形成されたプラスチックボトルである。より詳細には、ボトル1は、口部11と、口部11と連続し底面2の方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部12と、肩部12と連続する円筒状の胴部13と、胴部13に連続する底部14と、を備える。なお、底部14のうち、ボトル1を設置する際に接する部分を底面2と定義する。
【0020】
本実施形態に係るボトル1は、いわゆるペットボトルである。ボトル1は、二軸延伸ブロー成形などの延伸成形法によってプリフォームを延伸して得られる。本実施形態では、ボトル1はポリエチレンテレフタレート製であり、無色透明である。ボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している280mL、350mL、500mLなど、200mL~2L程度とすることができ、250~650mLであることが好ましい。
【0021】
ボトル1は、従来のボトルに比べて薄肉のボトルであってもよい。具体的には、ボトル1の満注容量(mL単位)に対するボトル1の重量(g単位)の比率が0.017~0.054g/mLであることが好ましく、0.023~0.037g/mLであることがより好ましい。満注容量に対する重量の比率が上記の範囲にあると、適切な強度を確保できる範囲で樹脂の使用量を十分に減らすことができ、ボトル1の省資源化および軽量化に資する。
【0022】
ボトル1に収容される液体は特に限定されず、たとえば、清涼飲料水(炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウォーター、豆乳類、野菜飲料、スポーツ飲料、ココア飲料など)、アルコール飲料、乳飲料などの飲料、スープなどの液体食品、ソースや醤油などの液体調味料、などが例示される。なお、ボトル1を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートに限定されず、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどでありうる。
【0023】
口部11、肩部12、および胴部13の構成は、従来のペットボトルに採用されている構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。口部11は、液体の注ぎ口であり、キャップ(不図示)と螺合可能な雄ねじが設けられている。胴部13は円筒状に構成されており、ロールラベルを貼付可能な領域である。胴部13にはいくつかの周溝が設けられている。肩部12は、口部11と胴部13とを連続的に接続する。
【0024】
底部14と胴部13とは、周溝15によって区分される。本実施形態では、周溝15は底面2から高さ13~16mmの領域に設けられる。
【0025】
〔底面の構成〕
底面2は、ボトル1を机などの平面の上に設置したときに、当該平面に接する面である。図2および図3に示すように、底面2には、ゲート部21、平面部22、溝部23、および脚部24が設けられている。底面2は、概ね、その縁部25からゲート部21に向けて、ボトル1の内側に引退する構造を有している。なお、図3では、ボトル1を机などの平面の上に設置したときの当該平面を、仮想平面Pとして示している。
【0026】
ゲート部21は、底面2の中央に設けられている。ゲート部21は、その中央部分にゲート21aを有する。ゲート21aは、ボトル1の製造に用いるプリフォームを射出成形法によって製造する際に、金型に溶融樹脂(ポリエチレンテレフタレート)を注入するための入口として機能する部分に由来する。ゲート部21は、プリフォームの底部の構造(典型的には半球状に形成されている。)の痕跡が残った形状を有し、ゲート21aを中心としてわずかにボトル1の外側方向(図3における下方向)に突出している。ゲート部21は、周囲の部分に比べて応力が集中しやすく、これによって破損しやすい場合がある。
【0027】
前述のように、底面2は、その縁部25から中央部に向けてボトル1の内側に引退する構造を有している。より具体的には、ゲート21aが、ボトル1を平面の上に設置したときに当該平面から5~15mmの高さに位置する。換言すれば、ゲート21aは、脚部24の先端部分24a(後述する。)を基準としてボトル1の内側方向に5~15mm引退している。この引退構造を設けていることによって、ボトル1のバックリング現象が抑制されるとともに、ボトル1の成形性が向上する。当該引退の大きさは、7~13mmであるとより好ましい。
【0028】
平面部22は、ゲート部21を包囲し、環状に設けられている。ゲート部21と平面部22とは、いずれも底面2と同心円状に設けられている。また、平面部22は、仮想平面Pと平行になる幅2.5mmの平坦面として構成されている。すなわち、平面部22は、仮想平面Pと平行な環状の部分として設けられている。ゲート部21と平面部22とをあわせた円形の部分(平面部22および平面部22に包囲される部分)の直径は13mmである。なお、平面部22には、五つの溝部23が連設されている。
【0029】
溝部23は、平面部22に連設されており、平面部22から底面2の縁部25にわたって放射状に延びている。溝部23は、底面2の周方向に等間隔に五つ設けられており、したがって、隣り合う二つの溝部23の中心線23a同士がなす角は72°である。溝部23の底面2に沿う方向の幅は、平面部22の側から縁部25の側にわたって漸減する。また、溝部23の深さ(隣接する脚部24から溝部23の最も深い部分までの深さ)も、平面部22の側から縁部25の側にわたって漸減する。
【0030】
脚部24は、平面部22と、隣り合う二つの溝部23と、によって画定される部分である。したがって、底面2には脚部24が五つ(すなわち、溝部23と同数)存在する。脚部24の先端部分24aは、ボトル1を設置したときに設置面に接する部分である。
【0031】
図3に示すように、平面部22と溝部23との境界部分26と、平面部22と脚部24との境界部分27とを比較すると、境界部分26において平面部22と溝部23とが連続的に接続されているのに対し、境界部分27は非連続の段差状に形成されている。より具体的には、平面部22と溝部23との境界部分26は、図3の断面図においてボトル1の外側に凸の曲率半径1mm以上の曲線として表される形状に構成されている。また、境界部分26の高さHは、平面部22と溝部23の平面部22側の端との仮想平面Pからの離間距離の差として表され、本実施形態では、2.5mm以下である。さらに、境界部分26の仮想平面Pに対する斜度θは58°以下である。
【0032】
〔ボトルの作用効果〕
本実施形態に係るボトル1では、応力集中しやすいゲート部21(ゲート21a)の周囲に平面部22が設けられており、さらに平面部22から放射状に延びる五つの溝部23が設けられている。この構造によって、ボトル1ではゲート21aへの応力の集中を避けることができるので、ボトル1が落下などによる衝撃を受けた場合に、従来のボトルに比べて破損しにくい。なお、底面がその縁部25から中央部に向けて引退する構造を有していることも、ボトルの破損を防止することに寄与する。
【0033】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るプラスチックボトルのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0034】
上記の実施形態では、平面部22が仮想平面Pと平行になる幅2.5mmの平坦面として構成されている構成について説明した。しかし、本発明に係る平面部の態様は、上記の例に限定されない。たとえば、平面部は、必ずしもボトルの設置面と平行である必要はない。ただし、平面部とボトルの設置面とが交わる角が10°以下であることが好ましい。また、平面部の幅は特に限定されないが、たとえば0.5~3.0mmでありうる。また、平面部22の幅は、平面部22の全体(全周)にわたって一定であってもよいし、一定でなくてもよい。当該幅が一定ではない場合、その幅の平均値が0.5~3.0mmでありうる。
【0035】
上記の実施形態では、溝部23の底面2に沿う方向の幅が、平面部22の側から縁部25の側にわたって漸減する構成を例として説明した。しかし、本発明において第二溝部の幅およびその分布は特に限定されない。ただし、第二溝部の幅が、第一溝部の側から縁部の側にわたって一定である構成、または第一溝部の側から縁部の側にわたって漸減する構成であると、ゲートへの応力集中を回避しやすいため好ましい。
【0036】
上記の実施形態では、溝部23の深さが、平面部22の側から縁部25の側にわたって漸減する構成を例として説明した。しかし、本発明において第二溝部の深さおよびその分布は特に限定されない。ただし、第二溝部の深さが、第一溝部の側から縁部の側にわたって一定である構成、または第一溝部の側から縁部の側にわたって漸減する構成であると、ゲートへの応力集中を回避しやすいため好ましい。
【0037】
上記の実施形態では、溝部23が五つ設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明において、第二溝部を設ける数は特に限定されない。ただし、第二溝部が5~8本設けられていることが好ましい。
【0038】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0039】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。なお、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0040】
〔ボトルの成形〕
ブロー成形機を用いて、底面の形状がそれぞれ異なる実施例1、実施例2、および比較例のボトルを成形した。いずれの例においても、ボトルの寸法は、高さ176mm、胴部の最大外径68.5mmとし、ボトルの満注容量を450mLとした。また、いずれの例においても、ボトルの重量を15gとした。
【0041】
実施例1に係るボトルでは、底面2Aの形状を、上記の実施形態と同様にした(図4)。実施例2に係るボトルでは、底面2Bの形状を、溝部23を八つ設けた形状とした(図5)。比較例に係るボトルでは、底面2Cの形状を、平面部22と溝部23との間に段差28が設けられている形状とした(図6)。
【0042】
〔落下試験〕
実施例および比較例の各ボトルに420gの水を入れ、キャップを閉めたのちに、ボトルの底面を下に配置した姿勢で所定の高さ(表1参照)から落下させた。落下させた後のボトルの底部を目視で観察し、底部の破損の有無を確認した。底部に割れまたはひびが認められる場合は、当該ボトルを「破損あり」と判定し、他の場合は「破損なし」と判定した。実施例および比較例の各例について、一例あたり24本のボトルの試験を行った。
【0043】
〔試験結果〕
実施例1および2、ならびに比較例の試験結果を表1に示す。
【0044】
表1:落下試験の結果
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、たとえば飲料用のプラスチックボトルに利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 :ボトル
11 :口部
12 :肩部
13 :胴部
14 :底部
15 :周溝
2 :底面
21 :ドーム部
21a :ゲート
22 :第一溝部
22a :最深部分
23 :第二溝部
23a :中心線
24 :脚部
24a :先端部分
25 :縁部
26 :第一溝部と第二溝部との境界部分
27 :第一溝部と脚部との境界部分(段差)
28 :比較例における第一溝部と第二溝部との境界部分(段差)
図1
図2
図3
図4
図5
図6