(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】測位システム、サーバ、情報処理方法、プログラム及び測位対象の装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20240315BHJP
G01S 19/12 20100101ALI20240315BHJP
G01S 19/43 20100101ALN20240315BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/12
G01S19/43
(21)【出願番号】P 2021180600
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】318014809
【氏名又は名称】ALES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 邦光
(72)【発明者】
【氏名】伊田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】池田 将平
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】戸田 響生
(72)【発明者】
【氏名】大西 健広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 徹
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056154(JP,A)
【文献】特開2006-200933(JP,A)
【文献】特開2019-203812(JP,A)
【文献】特開2007-248177(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111290005(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の位置測定に用いるサーバであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、
前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備え、
前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する、ことを特徴とするサーバ。
【請求項2】
請求項1のサーバにおいて、
前記基準局選択部は、前記座標系情報と、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報と、前記水平距離の情報とに基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する、ことを特徴とするサーバ。
【請求項3】
測位対象の位置測定に用いるサーバであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、
前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備え、
前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択し、
前記基準局選択部は、前記測位対象の位置座標が準拠する座標系と同一の座標系に座標位置が準拠している基準局を選択する、ことを特徴とするサーバ。
【請求項4】
測位対象の位置測定に用いるサーバであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、
前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備え、
前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択し、
新規設置の基準局の位置座標は、前記新規設置の基準局が位置するエリアに設定されて座標系と同一の座標系に座標位置が準拠している電子基準点を用いて決定されている、ことを特徴とするサーバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのサーバにおいて、
前記座標系が互いに異なる第1エリアと第2エリアの境界をまたがって前記第1エリアから前記第2エリアに前記測位対象が移動したとき、又は、前記第1エリアから前記第2エリアへの前記測位対象の移動が予測されるとき、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択するときの選択対象の基準局を、前記第1エリアに位置する基準局から第2エリアに位置する基準局に切り替える、ことを特徴とするサーバ。
【請求項6】
測位対象の位置測定に用いるサーバであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、
前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備え、
前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択し、
前記観測品質情報は、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の高度差の情報を含む、ことを特徴とするサーバ。
【請求項7】
請求項2、3、4又は6のサーバにおいて、
前記観測品質情報は、前記基準局が人工衛星の電波を受信して前記観測データを生成したときのマルチパスの値、サイクルスリップの頻度、データ取得率、開口率及び前記受信する電波における干渉の度合いを示す指標値の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とするサーバ。
【請求項8】
測位対象の位置測定に用いるサーバであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、
前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備え、
前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択し、
前記基準局選択部は、前記観測品質情報及び前記水平距離の情報から前記測位対象の測位結果の分散を求める関数又は機械学習済みモデルを用いて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する、ことを特徴とするサーバ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのサーバにおいて、
前記観測データを含む測位補正情報を要求する補正情報要求を、前記測位対象から受信する要求受信部と、
前記選択した基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報を、前記測位対象の装置に送信する情報送信部と、
を備える、ことを特徴とするサーバ。
【請求項10】
請求項9のサーバにおいて、
前記測位対象の概略位置情報を前記測位対象から定期的に受信する測位対象通信部を備え、
前記基準局選択部は、定期的に、
前記測位対象の概略位置情報に基づいて、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系を判定し、
前記測位対象の概略位置情報に基づいて、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離を算出し、
前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する、
ことを特徴とするサーバ。
【請求項11】
請求項9のサーバにおいて、
前記測位対象の概略位置情報を取得するために、前記測位対象が前記人工衛星からの電波を受信して生成した観測データを前記測位対象から定期的に受信する測位対象通信部を備え、
前記基準局選択部は、定期的に、
前記測位対象から受信した前記測位対象の観測データと前記人工衛星の軌道情報とに基づいて、前記測位対象の概略位置情報を計算して取得し、
前記測位対象の概略位置情報に基づいて、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系を判定し、
前記測位対象の概略位置情報に基づいて、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離を算出し、
前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する、
ことを特徴とするサーバ。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかのサーバにおいて、
前記人工衛星の電波を前記測位対象が受信して生成した観測データを、前記測位対象から受信する測位対象通信部と、
前記選択した基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報と、前記測位対象の観測データとに基づいて、前記測位対象の位置情報を計算する位置情報計算部と、
を備える、ことを特徴とするサーバ。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれかのサーバにおいて、
前記基準局は、移動通信の基地局、無線LANのアクセスポイント装置又は国土地理院の基準点に配置された基準局である、ことを特徴とするサーバ。
【請求項14】
測位システムであって、
請求項1乃至
13のいずれかのサーバと、既知の位置座標に配置された基準局及び測位対象の装置の少なくとも一方と、を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項15】
請求項10のサーバと組み合わせられて測位される測位対象の装置であって、
前記サーバと通信するサーバ通信部と、当該測位対象の装置の位置情報を計算する位置情報計算部と、を備え、
前記サーバ通信部は、
前記サーバが前記座標系の判定及び前記水平距離の算出に用いる前記測位対象の装置の概略位置情報を、前記サーバに定期的に送信し、
前記サーバに、前記観測データを含む測位補正情報を要求する補正情報要求を送信
し、
前記座標系情報と前記水平距離の情報とに基づいて前記基準局の選択を定期的に行っている前記サーバから、前記サーバに前記補正情報要求を送信したときに前記サーバが選択し
ている基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報を受信
し、
前記位置情報計算部は、前記サーバから受信した前記測位補正情報と当該測位対象
の装置が前記人工衛星の電波を受信して生成した観測データとに基づいて、当該測位対象の
装置の位置情報を計算す
る、
ことを特徴とする測位対象の装置。
【請求項16】
請求項11のサーバと組み合わせられて測位される測位対象の装置であって、
前記サーバと通信するサーバ通信部と、当該測位対象の装置の位置情報を計算する位置情報計算部と、を備え、
前記サーバ通信部は、
前記サーバが前記座標系の判定及び前記水平距離の算出に用いる前記測位対象の装置の概略位置情報を取得するための前記観測データを、前記サーバに定期的に送信し、
前記サーバに、前記観測データを含む測位補正情報を要求する補正情報要求を送信し、
前記座標系情報と前記水平距離の情報とに基づいて前記基準局の選択を定期的に行っている前記サーバから、前記サーバに前記補正情報要求を送信したときに前記サーバが選択している基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報を受信し、
前記位置情報計算部は、前記サーバから受信した前記測位補正情報と当該測位対象の装置が前記人工衛星の電波を受信して生成した観測データとに基づいて、当該測位対象の装置の位置情報を計算する、
ことを特徴とする測位対象の装置。
【請求項17】
測位対象の位置測定に用いる情報を処理する情報処理方法であって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信することと、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成することと、
前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択することと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項18】
測位対象の位置測定に用いるサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信するためのプログラムコードと、
前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成するためのプログラムコードと、
前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位対象の位置測定を行う測位システム、サーバ、基準局、情報処理方法、プログラム、測位対象の装置及び移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既知の位置(基準点)に配置された基準局(固定局)を用いて、GNSS(全地球航法衛星システム)の人工衛星から電波を受信し、測位対象の位置測定をリアルタイムに行うリアルタイムキネマティック(RTK)測位法が知られている(例えば特許文献1参照)。このRTK測位法では、人工衛星から電波を受信した基準局が観測データを測位対象に送信する。測位対象では、基準局から受信した観測データと、測位対象の観測データを用いて、測位対象の位置座標を計算する。RTK測位法によれば、数cm程度の高い精度で測位対象の測位ができるとされている。
【0003】
上記RTK測位法の方式として、実在する電子基準点や移動通信の基地局などにRTK用の受信機を配置した基準局を用いるRRS(Real Reference Station)方式が知られている。
【0004】
また、引用文献2には、RRS方式の測位システムにおいて、測位対象の現在位置の近くに位置する複数の基準局のそれぞれと当該測位対象との間の水平距離を求めて、その水平距離が最小となる基準局を、測位に用いる基準局(以下「使用基準局」ともいう。)として決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/147569号
【文献】特開2019-203812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のRRS方式の測位システムにおいて、上記水平距離が最小となる基準局を使用基準局として用いても、想定した所望の測位精度が得られない場合があることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るサーバは、測位対象の位置測定に用いるサーバである。このサーバは、互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信する基準局通信部と、前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成する補正情報作成部と、前記測位対象の現在位置の情報に基づいて、前記複数の基準局から、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する基準局選択部と、を備える。前記基準局選択部は、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択する。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る情報処理方法は、測位対象の位置測定に用いる情報を処理する情報処理方法である。この情報処理方法は、互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信することと、前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成することと、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択することと、を含む。
【0009】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、測位対象の位置測定に用いるサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、互いに異なる既知の位置座標に配置された複数の基準局のそれぞれから、前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データを受信するためのプログラムコードと、前記基準局から受信した前記観測データに基づいて測位補正情報を作成するためのプログラムコードと、前記測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び前記基準局の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報並びに前記基準局が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報の少なくとも一方の情報と、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の水平距離の情報と、に基づいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択するためのプログラムコードと、を含む。
【0010】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局として、前記測位対象の位置座標が準拠する座標系と同一の座標系に座標位置が準拠している基準局を選択してもよい。
【0011】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、新規設置の基準局の位置座標は、前記新規設置の基準局が位置するエリアに設定されて座標系と同一の座標系に座標位置が準拠している電子基準点を用いて決定してもよい。
【0012】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記座標系が互いに異なる第1エリアと第2エリアの境界をまたがって前記第1エリアから前記第2エリアに前記測位対象が移動したとき、又は、前記第1エリアから前記第2エリアへの前記測位対象の移動が予測されるとき、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択するときの選択対象の基準局を、前記1エリアに位置する基準局から第2エリアに位置する基準局に切り替えてもよい。
【0013】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記観測品質情報は、前記測位対象の現在位置の位置座標と前記基準局の位置座標との間の高度差の情報を含んでもよい。
【0014】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記観測品質情報は、前記基準局が人工衛星の電波を受信して前記観測データを生成したときのマルチパスの値、サイクルスリップの頻度、データ取得率、開口率及び前記受信する電波における干渉の度合いを示す指標値の少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記観測品質情報及び前記水平距離の情報から前記測位対象の測位結果の分散を求める関数又は機械学習済みモデルを用いて、前記測位対象の位置測定に用いる基準局を選択してもよい。
【0016】
前記サーバ、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記観測データを含む測位補正情報を要求する補正情報要求を、前記測定対象から受信し、前記選択した基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報を、前記測位対象の装置に送信してもよい。
【0017】
前記サーバ、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記人工衛星の電波を前記測位対象が受信して生成した観測データを、前記測位対象から受信し、前記選択した基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報と、前記測位対象の観測データとに基づいて、前記測位対象の位置情報を計算してもよい。
【0018】
本発明の他の態様に係る測位対象の装置は、前記いずれかのサーバに、前記観測データを含む測位補正情報を要求する補正情報要求を送信する要求送信部と、前記サーバから、前記選択した基準局に対応する前記観測データを含む測位補正情報を受信する情報受信部と、前記サーバから受信した前記測位補正情報と当該測位対象が前記人工衛星の電波を受信して生成した観測データとに基づいて、当該測位対象の位置情報を計算する位置情報計算部と、を備える。
【0019】
本発明の更に他の態様に係る移動体は、前記測位対象の装置を備える移動体である。
【0020】
前記サーバ、前記測位対象の装置、前記情報処理方法及び前記プログラムのそれぞれにおいて、前記基準局は、移動通信の基地局、無線LANのアクセスポイント装置又は国土地理院の基準点に配置された基準局であってもよい。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る測位システムは、前記いずれかのサーバと、前記基準局と、を含む。
本発明の更に他の態様に係る測位システムは、前記いずれかのサーバと、前記測位対象の装置と、を含む。
本発明の更に他の態様に係る測位システムは、前記いずれかのサーバと、前記基準局と、前記測位対象の装置と、を含む。
本発明の更に他の態様に係る測位システムは、前記基準局と、前記測位対象の装置と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、RRS方式の測位システムにおいて、基準局と測位対象との間の水平距離のみを選択基準にするのではなく、基準局の位置座標が準拠する座標系と測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系との不一致を回避して測位対象の位置測定に用いる基準局を適切に選択し、測位誤差を低減することができる。
また、本発明によれば、RRS方式の測位システムにおいて、基準局と測位対象との間の水平距離のみを選択基準にするのではなく、観測データの品質が高い基準局を優先的に選択し、測位誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す機能ブロック図。
【
図3】フレーム境界近傍のエリアにおけるベースの座標系とローバーの座標系の不一致の一例を示す説明図。
【
図4】(a)及び(b)はそれぞれ基準点の分類の一例を示す説明図。
【
図5】実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る測位システムにおける測位補正情報の配信処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理及び測位補正情報の配信処理を含む測位処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】フレーム境界エリアに位置する基準局及びローバーが準拠する座標系の判定方法の一例を示す説明図。
【
図9】実施形態に係る測位システムにおけるフレーム境界での基準局選択・決定処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】実施形態に係る測位システムにおけるフレーム境界での基準局選択・決定処理及び測位補正情報の配信処理を含む測位処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理の他の例を示すフローチャート。
【
図12】実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理及び測位補正情報の配信処理を含む測位処理の他の例を示すフローチャート。
【
図13】実施形態に係る測位システムの主要な構成の他の例を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るRRS方式の測位システムでは、基準局(ベース)と測位対象(ローバー)との間の水平距離のみを選択基準するのではなく、基準局の位置座標が準拠する座標系と測位対象の現在位置の位置座標が準拠する座標系と不一致を回避して測位対象の位置測定に用いる基準局をサーバで適切に選択することにより、測位誤差を低減することができる。
更に、本書に記載された実施形態に係る測位システムでは、基準局(ベース)と測位対象(ローバー)との間の水平距離のみを選択基準するのではなく、基準局における観測データの品質情報(例えば、基準局と測位対象との高度差、マルチパスの値、サイクルスリップの頻度、データ取得率、開口率、受信する電波における干渉の度合いを示す指標値など)の各種パラメータに基づいて、観測データの品質が高い基準局を優先的に選択し、測位誤差を低減することができる。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図1において、測位システム10は、測位対象の装置(以下「対象装置」という。)20の位置測定に用いるサーバ30と、互いに異なる複数の既知の位置座標(基準点)それぞれに配置された複数の基準局(以下「ベース」ともいう。)40とを備える。既知の位置座標は、例えば、既知の緯度、経度及び高度である。既知の位置座標は、例えば基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。測位システム10は、対象装置20を更に備えてもよい。また、対象装置20は、移動中の装置若しくは一時停止中の装置であってもよいし、又は、固定配置された装置であってもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、対象装置20の測位方法として、誤差数cmの測位サービス(センチメートル級測位サービス)を提供可能なRRS(Real Reference Station)方式のRTK(リアルタイムキネマティック)測位法を用いた場合について説明するが、本発明は、対象装置の現在位置の位置情報を人工衛星の電波を受信する1局の基準局40の観測データを用いて計算する、RTK測位法以外の測位法を用いる場合にも適用できる。
【0027】
本実施形態における対象装置20は、例えばGNSS受信機210と観測データ生成部220と位置情報計算部230とサーバ通信部240とを有する装置(以下「GNSSユーザ装置」ともいう。)である。GNSS受信機210は、GPS(全地球測位システム)等のGNSS(全地球航法衛星システム)の一又は複数の人工衛星(例えば4つの人工衛星)50から電波を受信する。観測データ生成部220は、GNSS受信機210で受信された電波の受信信号(「GNSS信号」ともいう。)から観測データを生成する。
【0028】
観測データ生成部220で生成する観測データは、例えば、GNSS受信機210で受信された電波の搬送波(キャリア)の位相観測値の(以下「搬送波位相観測データ」ともいう。)、及び、当該電波の搬送波を変調したコードの受信結果(コード位相)に基づいて算出した擬似距離観測値のデータ(以下「擬似距離観測データ」ともいう。)である。以下、搬送波位相観測データ及び擬似距離観測データを区別しない場合は、「観測データ」ともいう。
【0029】
GNSS受信機210が人工衛星50から電波を受信して観測データ生成部220が観測データを生成する観測タイミングは、複数の基準局40が人工衛星50から電波を受信して観測データを生成する観測タイミングと必ずしも同期している必要は無く、数秒から10数秒程度離れていてもかまわない。この観測タイミングは、例えば、2秒間隔、1秒間隔、又は1秒未満の時間間隔の時間タイミングである。観測タイミングは、例えば、10分、30分、1時間などであってもよいし、変化させてもよい。
【0030】
位置情報計算部230は、後述のように、サーバ30から受信した一又は複数の基準局40の測位補正情報(例えば、基準局の座標、観測データ)と、対象装置20が人工衛星50の電波を受信して生成した観測データと、エフェメリスデータとに基づいて、対象装置20の数センチメートル級の高精度位置情報(例えば、緯度、経度、高度)を計算する。サーバ30から受信する測位補正情報は、当該対象装置20に対応するフォーマットを有している。測位補正情報のフォーマットは、例えば、当該対象装置20の識別情報に基づいて選択されたフォーマットであってもよい。
【0031】
計算対象の対象装置20の位置情報は、例えば基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。また、対象装置20で計算した高精度位置情報は、対象装置20の観測データ(受信RAWデータ)とともに、サーバ30に送信してもよい。
【0032】
対象装置20の位置情報は、例えばRTK測位法により計算することができる。まず、選択した基準局40の観測データと対象装置20の観測データ、エフェメリスから基準局40から対象装置20に向かう基線ベクトルを決定する。この基線ベクトルと基準局40の既知の位置情報とに基づいて、対象装置20の位置情報を算出する。
【0033】
位置情報計算部230は、前記選択した一又は複数の基準局40の測位補正情報と対象装置20の観測データとエフェメリスデータとに基づいて、対象装置20の複数の位置情報を計算し、その複数の位置情報の計算結果から、いずれか一つの位置情報の計算結果を選択してもよい。位置情報の計算結果を選択する際、例えばカルマンフィルタ又は最適化処理を選択処理に組み合わせてもよい。
【0034】
サーバ通信部240は、識別情報(ID)を含む補正情報要求をサーバ30に送信する。識別情報(ID)は、例えば補正情報要求の送信時に補正情報要求に自動的に含めるように処理される。対象装置20の識別情報(ID)は、移動通信サービスにおける利用者識別情報(UID)又は端末識別情報(IMEI)であってもよい。
【0035】
また、サーバ通信部240は、対象装置20に対応するフォーマットの測位補正情報(例えば、基準局の観測データ及び位置情報)をサーバ30から受信する。
【0036】
サーバ通信部240は、対象装置20の観測データ(受信RAWデータ)や対象装置20で計算した自装置の位置情報の計算結果をサーバ30に送信してもよい。
【0037】
対象装置20は、例えば、移動通信網を介して通信可能な移動局(「移動機」、「ユーザ装置」等ともいう。)、又は、移動型の基地局(「eNodeB」、「g-NodeB」等ともいう。)であってもよい。この場合、サーバ30の測位補正情報(例えば、基準局の座標、観測データ)は、サーバ30から移動通信網を経由して対象装置20に送信することができる。また、補正情報要求、対象装置20で計算した自装置の位置情報の計算結果、対象装置20の観測データ(受信RAWデータ)などは、対象装置20から移動通信網を経由してサーバ30に送信することができる。
【0038】
また、対象装置20は、移動する移動体そのものであってもよいし、移動体に組み込まれた装置(例えば、測位モジュールのデバイス)であってもよい。
【0039】
移動体は、例えば、地上を移動する車両(例えば、乗用車、トラック、バス、農機、建機、重機など)、上空を移動するドローンや航空機、海などの水上を移動する船舶などであってもよい。移動体は、一時的固定設置される移動可能な装置(可搬装置)であってもよい。例えば、移動体は、測量における固定点や観測点に設置して用いられる装置や、農業分野の圃場の境界点や任意の観測点に設置される装置、土木、建築の現場における土地や建物(構造体)の境界点や任意の観測点に設置される装置などであってもよい。なお、対象装置又はその対象装置が組み込まれた移動体は「ローバー」ともいう。
【0040】
対象装置20は、無線LAN(例えば、Wi-Fi(登録商標))の端末装置であってもよい。この場合、サーバ30の測位補正情報(例えば、基準局の座標、観測データ)は、サーバ30から無線LANのアクセスポイント装置(例えば、WiFiルータ)を経由して無線LANの端末装置に送信することができる。また、補正情報要求、対象装置20で計算した自装置の位置情報の計算結果、対象装置20の観測データ(受信RAWデータ)などは、対象装置20から無線LANのアクセスポイント装置(例えば、WiFiルータ)を経由してサーバ30に送信することができる。
【0041】
人工衛星50は、GPS用の人工衛星のほか、GLONASS、Galileo、BeiDou等のグローバル軌道衛星群の人工衛星でもよいし、QZSSやIRNSSなどの特定地域衛星群の人工衛星でもよい。また、人工衛星50は、WAAS、EGNOS、MSAS、GAGANなどの補強衛星群の人工衛星であってもよい。
【0042】
人工衛星50から受信する電波は、例えば、1.1GHz帯、1.2GHz帯、1.5GHz帯又は2.4GHz帯における所定周波数の電波である。例えば、GPSの人工衛星の場合、L1電波(周波数:1575.42MHz、波長:約0.19m)及びL2電波(周波数:1227.60MHz、波長:約0.24m)を受信することができる。人工衛星50から送信される電波は、例えば、所定の時間タイミングで測位符号(C/Aコード、Pコード)や航法メッセージ等を含む所定データにより所定周波数の搬送波をコード変調したものである。例えば、GPSの人工衛星の場合、L1電波が測位符号(C/Aコード及びPコード)及び航法メッセージでコード変調され、L2電波が測位符号のPコードのみでコード変調されている。
【0043】
人工衛星50から同時に受信する電波は、1周波数の電波でもよいし、2周波数(例えば、1.5GHz、1.2GHz)又は3周波数以上の電波でもよい。例えば、2周波数の電波を受信する場合は、基準局40と対象装置20との距離が10km以上の場合(例えば、基準局40を中心として20km~40km程度の広域エリアを対象装置が移動している場合)でも、RTK(リアルタイムキネマティック)測位法で測位される対象装置20の位置精度が数cm程度(例えば、2cm+1ppm×基線長)の高精度になる。
【0044】
対象装置20のGNSS受信機210は、複数種類の人工衛星50の複数の周波数の電波(信号)に対応するものであってもよい。例えば、GNSS受信機210は、QZSS衛星(L1/L2/L5)、GPS(L1/L2/L5)、GLONASS(G1/G2)、Galileo(E1/E5)及びBeiDou(B1/B2)のように、5種類の人工衛星の3周波数に対応するものであってもよい。
【0045】
複数の基準局40(以下「GNSS基準局装置」ともいう。)は、対象装置20が移動する可能性があるエリアに分散されて配置される。複数の基準局40は、移動中の対象装置20との距離が所定距離以下(例えば、20km以下、又は、40km以下)である基準局40の数が2以上になるように配置される。前記所定距離は、例えば、RTK測位法で測位される対象装置20の位置精度が数cm程度(例えば、2cm+1ppm×基線長)になる距離である。複数の基準局40はそれぞれ、移動通信の基地局の位置又は無線LANのアクセスポイント装置(例えば、WiFiルータ)の位置に設けてもよい。この場合、基準局40は、移動通信の基地局の基地局装置に組み込んでもよいし、無線LANのアクセスポイント装置に組み込んでもよい。また、基準局40は、電柱、コンビニエンスストア、自宅、学校、病院、農協、各種の公共施設などの、人工衛星50に対して見通しとなる任意の場所に設けてもよい。また、基準局40は、個人、法人、公共団体などの任意のエンティティによって設置された善意の基準局であってもよい。
【0046】
複数の基準局40は、例えば日本国内の場合、国土地理院によって全国約1,300ヶ所に設置されたGNSS連続観測点からなる電子基準点の基準局と、移動通信事業者等によって全国のセル(例えば、LTEエリア、次世代の5Gエリアなど)の一部又は全部に対応させて独自に設置された独自基準点の基準局とを含んでもよい。独自基準点の基準局の設置箇所の数は、特に限定されるものではなく、例えば、独自基準点の基準局は、約1,000ヶ所、約1,500ヶ所、又は、約3,000ヶ所以上に設けてもよい。この電子基準点及び独自基準点に配置した基準局により、全国にわたって高密度でほぼ等間隔の均一配置の多数の基準局(例えば約2,000ヶ所以上又は約4,000ヶ所以上の基準局)40からなる基準局網を実現することでき、センチメートル級の高精度測位と基準局40の冗長性を担保することができ、また、測位サービスを利用するユーザによる基準局(基準点)の準備が不要になる。
【0047】
複数の基準局40はそれぞれ、所定の観測タイミングに、GPS等のGNSSの一又は複数の人工衛星(例えば4つの人工衛星)50から電波を受信して観測データを生成する。複数の基準局40それぞれの観測タイミングは、対象装置20がGPS等のGNSSの一又は複数の人工衛星(例えば4つの人工衛星)50から電波を受信して観測データを生成する観測タイミングと必ずしも同期している必要は無く、数秒から10数秒程度離れていてもかまわない。この観測タイミングは、例えば、2秒間隔、1秒間隔、又は1秒未満の時間間隔の時間タイミングである。観測タイミングは、数秒から10秒間隔であってもかまわない。
【0048】
基準局40が生成する観測データは、例えば、RTK測位法で用いられる情報であり、基準局40が人工衛星50から電波を受信して生成した受信RAWデータに対して必要に応じて誤差補正を行った観測データ(例えば、搬送波位相観測データ、及び、擬似距離観測データ)を含む。複数の基準局40それぞれの観測データは、基準局40の位置座標データとともに各基準局40からサーバ30に送信してもよいし、サーバ30内のデータベース等にあらかじめ記録されていてもよい。基準局40が生成する観測データは、基準局40が人工衛星50から受信したコードの受信結果(コード位相)に基づいて算出した人工衛星50と基準局40との間の擬似距離観測データを含む。
【0049】
サーバ30は、基準局情報処理部31と測位対象情報処理部32とを備える。基準局情報処理部31は、基準局通信部310と補正情報作成部311と基準局情報作成部312と情報記憶部313とを有する。測位対象情報処理部32は、測位対象通信部321と基準局選択部322と補正情報選択部323とを有する。
【0050】
基準局通信部310は、高速の通信回線(例えば、専用の光通信回線)を介して、複数の基準局40それぞれから搬送波位相観測データを含む情報を受信する。
【0051】
複数の基準局40それぞれから受信する受信情報は、例えば、人工衛星50から受信した電波の受信RAWデータである位相観測データ(例えば、搬送波位相観測データ、及び、擬似距離観測データ)と基準局40の位置座標データとを含む。前記受信情報は、基準局40が人工衛星の電波を受信して生成した搬送波位相観測データの品質に関する観測品質情報、その観測品質情報を計算するための基礎情報、及び、後述のTEQC(Translation, Editing and Quality Checking)から取得した情報の、少なくとも1つの情報を含んでもよい。
【0052】
補正情報作成部311は、複数の基準局40それぞれについて、基準局40から受信した位相観測データに基づいて、対象装置20の位置測定に用いる所定フォーマットの測位補正情報、状態情報(例えば、測位補正情報が使用可能か否かを識別する情報)等を作成する。測位補正情報は、例えば、RTK測位法で用いられる情報である。
【0053】
測位補正情報のフォーマットは、例えば、RTK測位法で用いられる位相観測データ(例えば、搬送波位相観測データ、及び、擬似距離観測データ)と基準局40の位置座標データとを含むRTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services)フォーマットであってもよい。測位補正情報のフォーマットは複数種類のフォーマットであってもよい。
【0054】
基準局情報作成部312は、複数の基準局40それぞれについて、基準局40から受信した位相観測データに基づいて、基準局40が設置されている基準点の名称、位置情報(例えば、経度、緯度、高度)、状態情報(例えば、基準局40が使用可能か否かを識別する情報)等の基準局情報を作成する。
【0055】
基準局情報作成部312は、複数の基準局40それぞれについて、基準局40から受信した基礎情報(例えば、搬送波位相観測データ)に基づいて、基準局40が人工衛星の電波を受信して生成した搬送波位相観測データの品質に関する観測品質情報の一部又は全部を計算して作成してもよい。
【0056】
情報記憶部(DB)313は、複数の基準局40それぞれについて、表1の基準局データテーブルに例示するように、基準局40の識別情報としての基準局ID(管理番号)に対応づけて、基準局又は基準点の名称、既知の位置情報(例えば、緯度、経度、標高[m]、楕円体高[m]、ジオイド高[m])、座標系情報及び状態情報を互いに関連付けて記憶する。楕円体高は基準楕円体面からの高さであり、GNSS測量により測定することができる。ジオイド高は仮想平均海面の高さであり、任意のジオイドモデルを用いて緯度及び経度から決まる値である。例えば、標高と楕円体高が与えられた場合、ジオイド高は楕円体高-標高で決まる。また、楕円体高とジオイド高が与えられた場合、標高は、楕円体高-ジオイド高で決まる。また、座標系情報は、後述するように基地局(基準点)の位置座標が準拠する座標系に関する情報であり、例えば、基地局(基準点)の位置座標が準拠する座標系(例えば、ITRF94,ITRF2008)の識別情報(F1,F2)である。
【0057】
【0058】
また、情報記憶部(DB)313は、複数の基準局40それぞれについて、表2の補正データテーブルに例示するように、基準局IDに対応づけて、対象装置20の種類に応じて複数種類のフォーマット(例えば、3種類のRTCMフォーマット)による測位補正情報及び状態情報を互いに関連付けて記憶する。複数種類のフォーマットそれぞれが対応する対象装置20の種類は、対象装置20から受信する対象装置20の識別情報(ID)に基づいて判断することができる。
【0059】
【0060】
また、情報記憶部(DB)313は、複数の基準局40それぞれについて、表3の補正データテーブルに例示するように、基準局IDに対応づけて、複数の接続先としてのマウントポイント(MP)及び対象装置20の種類に応じて複数種類のフォーマット(例えば、3種類のRTCMフォーマット)による測位補正情報及び状態情報を互いに関連付けて記憶してもよい。複数種類のフォーマットそれぞれが対応するマウントポイント(MP)及び対象装置20の種類は、例えば、対象装置20から受信するマウントポイントを指定するMP指定情報に基づいて、又は、MP指定情報及び対象装置20の識別情報(ID)に基づいて判断することができる。
【0061】
【0062】
表1、表2及び表3の状態情報の「1」はそれぞれ、対応する基準局40及び測位補正情報が利用可能なアクティブ状態であることを示し、「2」は対応する基準局40及び測位補正情報が利用不可の状態であることを示している。また、表1の各基準局40の名称及び既知の位置情報と表2及び表3の測位補正情報とは、基準局IDを介して互いに関連付けられている。
【0063】
表2及び表3に示すように複数種類のフォーマットで測位補正情報を記憶しておくことにより、対象装置20の種類等によって対象装置20の現在位置の計算に用いる測位補正情報のフォーマットが異なる場合でも、対応するフォーマットの測位補正情報を選択して対象装置20の現在位置を確実に計算することができる。
【0064】
測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20の識別情報(ID)を含む補正情報要求を、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20から受信する。対象装置20の識別情報(ID)は、移動通信サービスにおける利用者識別情報(UID)又は端末識別情報(IMEI)であってもよい。
【0065】
また、測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20から受信した補正情報要求に応答するように、対象装置20に対応するフォーマットの測位補正情報(例えば、基準局の観測データ及び位置情報)を、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20に送信する。
【0066】
また、測位対象通信部321は、対象装置20で計算した対象装置20の数センチメートル級の高精度位置情報(例えば、緯度、経度、高度)の計算結果である所定のフォーマット(例えば、NMEA(National Marine Electronics Association)フォーマット)からなる測位演算結果を、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20から受信してもよい。補正情報作成部311は、高精度位置情報を計算した対象装置20から受信した観測データ(受信RAWデータ)に基づいて測位補正情報を作成し、情報記憶部313は、対象装置20から受信した観測データ(受信RAWデータ)及び対象装置20について生成した測位補正情報を記憶してもよい。この場合、対象装置20を基準局として追加することができる。
【0067】
測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20が人工衛星50からの電波を受信して生成した観測データを、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20から受信してもよい。対象装置20から受信する観測データは、例えば、対象装置20が人工衛星50から電波を受信して生成した受信RAWデータである観測データ(例えば、搬送波位相観測データ、又は、擬似距離観測データ)と、対象装置(GNSSユーザ装置)20の識別情報(ID)とを含む。
【0068】
例えば、測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20の概略位置情報を取得するために、対象装置20が人工衛星50からの電波を受信して生成した所定フォーマット(例えば、RTCMフォーマット)の観測データを、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して、対象装置20から定期的に受信してもよい。対象装置20から受信する観測データは、対象装置20の識別情報(ID)を含む。対象装置20の識別情報(ID)は、例えば、移動通信サービスにおける利用者識別情報(UID)又は端末識別情報(IMEI)であってもよい。
【0069】
対象装置20の概略位置情報を取得するための観測データの受信間隔は一定間隔(例えば、0.1秒、1秒、10分、30分、1時間など)であってもよいし、一度だけ受信するだけでもよいし、対象装置20の移動速度、周辺の基準局40の設置間隔などに応じて変化させてもよい。測位対象通信部321が対象装置20から定期的に受信した対象装置20の観測データは、基準局選択部322及び補正情報作成部311に渡される。
【0070】
また、対象装置20からサーバ30に送信する観測データは、通信網60を介した通信の負荷や測位処理の負荷を抑制するために、測位要求精度に応じてデータの種類が制限された観測データであってもよい。例えば、測位要求精度が高い場合は、対象装置20で観測された複数の人工衛星のすべての観測データ(受信RAWデータ)をサーバ30に送信し、測位要求精度が低い場合は、対象装置20で観測された複数の人工衛星の一部の観測データ(受信RAWデータ)をサーバ30に送信してもよい。
【0071】
また、基準局選択部322は、対象装置20から受信した補正情報要求に含まれる識別情報(例えば、UID又はIMEI)に基づいて一又は複数の基準局40を選択する。
【0072】
例えば、基準局選択部322は、定期的に、測位対象通信部321から受けた対象装置20の観測データと、エフェメリスデータとに基づいて、対象装置20の概略位置情報を計算して取得し、対象装置20に近い位置に配置されている基準局40を選択してもよい。この基準局40の選択は、対象装置20の概略位置情報を取得するための観測データを受信するたびに定期的に実行される。
【0073】
エフェメリスデータは、人工衛星50の位置を求めるために必要な人工衛星50の軌道情報であり、人工衛星50から放送されている。このエフェメリスデータは、所定時間(例えば、GPSでは2時間、Galileoでは10分)ごとに定期的に更新される。
【0074】
なお、基準局40の選択は、対象装置20の移動予測エリアに位置する基準局40を含めるように行ってもよい。例えば、対象装置20の概略位置情報の変化から対象装置20の移動予測エリアを決定し、その移動予測エリアに位置する基準局40を含めるように基準局40を選択してもよい。
【0075】
基準局選択部322は、例えば表4の基準局選択テーブルに示すように、前記選択した一又は複数の基準局40の識別情報(管理番号)と、測位補正情報のRTCMフォーマットの識別番号と、対象装置20の識別情報(例えば、IMEI又はUID)とを互いに対応付けて記憶する。
【0076】
【0077】
また、基準局選択部322は、例えば表5の基準局選択テーブルに示すように、前記選択した一又は複数の基準局40の識別情報(管理番号)と、マウントポイント(MP)の識別情報と、測位補正情報のRTCMフォーマットの識別番号と、対象装置20の識別情報(例えば、IMEI又はUID)とを互いに対応付けて記憶してもよい。
【0078】
【0079】
補正情報選択部323は、例えば表4又は表5の基準局選択テーブルに基づいて、選択した一又は複数の基準局40に対応する複数種類のRTCMフォーマット(データフォーマット)の測位補正情報から、対象装置20の識別情報(IMEI)に基づいて対象装置20に対応するRTCMフォーマット(データフォーマット)からなる測位補正情報を選択する。
【0080】
また、サーバ30は、複数の対象装置20から受信した高精度の位置情報を用いてデータ処理を行ってもよい。例えば、構造物に設置した複数の対象装置20の位置情報を用いて構造物の変形や変位を測定したり、3次元地図を作成して測位計算に用いる衛星信号からのマルチパス波の除去を行ったりするように、データ処理を行ってもよい。
【0081】
[高精度測位に用いる基準局の選択・決定処理1]
上記構成の測位システム10によるRRS方式の測位において、測位に用いられる基準局40が準拠する座標系(基準局40の位置座標の決定に用いられる座標系)と対象装置20が準拠する座標系(対象装置20の位置座標の決定に用いられる座標系)とが違った場合、RTK測位法で測定される対象装置20の高精度(数cm程度の高い精度)の位置座標に誤差が生じるおそれがある。
【0082】
例えば、上記RRS方式の測位において、対象装置20の測位に使用する基準点の基準局40をサーバ30で選択して決定する場合、対象装置20と選択候補の複数の基準局40のそれぞれとの間の水平距離を求めて、その水平距離が最小となる基準局40を使用基準局として決定することが考えられる。
【0083】
しかしながら、互いに異なる座標系(フレーム)が定義された複数のエリアの境界(以下「フレーム境界」ともいう。)又はその近傍に対象装置20が位置し、その対象装置20の測位に使用する基準局40を選択して決定する場合、上記水平距離が最小となる基準局40が準拠する座標系が、必ずしも対象装置20が準拠する座標系と一致しない。基準局40が準拠する座標系と対象装置20が準拠する座標系とが一致しないと、RTK測位法で測定される対象装置20の高精度の位置座標に誤差が生じるおそれがある。
【0084】
図2は、日本の測地基準系として設定されている座標系の説明図である。
図2に示すように、日本国では国土地理院により2種類・3区分の座標系(フレーム)が設定されている。第1の座標系F1は、元期1997年1月1日のITRF(International Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)94であり、西日本及び北海道のエリアに設定されている。第2の座標系F2は、元期2011年5月24日のITRF2008であり、北陸及び東日本(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都(島しょを除く。)、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県及び岐阜県)のエリアに設定されている。第2の座標系F2(ITRF2008)は、2011年3月の地震により地殻変動が発生したので、更新されている。
図2中の太線Bは2つの座標系F1,F2のフレーム境界である。
【0085】
図3は、フレーム境界Bの近傍におけるエリアにおける基準局40の位置座標が準拠する座標系と対象装置20の位置座標が準拠する座標系の不一致の一例を示す説明図である。
図3において、対象装置20はフレーム境界B近傍の第1の座標系F1のエリアに位置している。この対象装置20の測位に使用する使用基準局を選択して決定する際に水平距離のみを基準にすると、第1の座標系F1のエリアに位置する電子基準点41(1)の基準局ではなく、対象装置20との水平距離が最小となる第2の座標系F2のエリアに位置する電子基準点41(2)の基準局が選択される。このように対象装置20の測位に使用する使用基準局として、対象装置20が位置するエリアが準拠する第1の座標系F1とは異なる第2の座標系F2に準拠するエリア内の電子基準点41(2)の基準局40が選択されるため、RTK測位法で測定される対象装置20の高精度の位置座標に誤差が生じるおそれがある。
【0086】
そこで、本実施形態では、対象装置20の現在位置の位置座標が準拠する座標系及び基準局40の位置座標が準拠する座標系に関する座標系情報と、対象装置20の現在位置の位置座標と基準局40の位置座標との間の水平距離の情報とに基づいて、対象装置20の位置測定に用いる基準局を選択している。例えば、サーバ30が管理している複数の基準点(電子基準点と移動通信事業者等による独自基準点とを含む)の基準局40を、準拠する座標系毎に予め分類しておき、サーバ30は、対象装置20の概略位置から、対象装置20が属するエリアが準拠する座標系を判定し、その判定した座標系と同じ座標系に準拠しているエリア内の基準局40を選択する。
【0087】
図4(a)及び(b)はそれぞれ基準点の分類の一例を示す説明図である。
図4(a)において、前述の日本の測地基準系として設定されている座標系の情報に基づいて、国土地理院が設置した複数の電子基準点のベース40を、第1の座標系(ITRF94)F1に準拠するフレームエリア内に位置する電子基準点41(1)の基準局40と、第2の座標系(ITRF2008)F2に準拠するフレームエリア内に位置する電子基準点41(2)の基準局40とに予め分類する。分類した基準局40が準拠する座標系の識別情報F1,F2は、例えば、前述の表1に例示した基準局データテーブルに記録される。
【0088】
また、
図4(b)において、移動通信事業者などが独自基準点の基準局を上記フレームエリア内に新規に設置する場合、その新規設置の独自基準点の位置座標を、当該独自基準点が位置するフレームエリアに設定されている座標系と同一の座標系に座標位置が準拠している電子基準点を用いて決定する。例えば、第1の座標系(ITRF94)F1に準拠するフレームエリア内に独自基準点42(1)の基準局40を設置する場合は、そのF1のフレームエリア内に位置する電子基準点41(1)の位置座標を用いて、新規設置の独自基準点42(1)の位置座標を決定する。また、第2の座標系(ITRF2008)F2に準拠するフレームエリア内に独自基準点42(2)の基準局40を設置する場合は、そのF2のフレームエリア内に位置する電子基準点41(2)の位置座標を用いて、新規設置の独自基準点42(2)の位置座標を決定する。そして、前述の日本の測地基準系として設定されている座標系の情報に基づいて、それらの複数の独自基準点の基準局40を、第1の座標系(ITRF94)F1に準拠するフレームエリア内に位置する独自基準点42(1)の基準局40と、第2の座標系(ITRF2008)F2に準拠するフレームエリア内に位置する独自基準点42(2)の基準局40とに予め分類する。分類したベース40が準拠する座標系の識別情報F1,F2は、例えば、前述の表1に例示した基準局データテーブルに記録される。
【0089】
図5は、実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理の一例を示すフローチャートである。
図5の例は、サーバ30とローバー(対象装置)20との通信が移動通信網60を介した通信である場合の例である。
図5の例では、ローバー20からサーバ30への接続時の認証に、ローバー20に組み込まれた移動局の端末識別情報(IMSI)を用いることができる。
【0090】
図5において、サーバ30は、所定の測位アプリケーションが起動されたローバー(対象装置)20との間で通信の接続処理(S100)を行った後、基準局選択・決定処理(S200)を実行する、
【0091】
基準局選択・決定処理(S200)において、サーバ30は、ローバー20の概略位置情報をローバー20から受信して取得する(S201)。ローバー20からの概略位置情報の受信は、例えば、所定の繰り返し周波数(例えば、1Hz又は10Hz)で定期的に実行してもよいし、所定のタイミングが到来したときに不定期に繰り返し実行してもよい。
【0092】
なお、サーバ30は、ローバー20の概略位置情報を受信して取得せずに、サーバ30内でローバー20の概略位置を計算して取得してもよい。例えば、サーバ30は、ローバー20から擬似距離観測データおよび搬送波位相観測データ(以下、受信RAWデータ、とする)を受信し、受信RAWデータを測位処理に使用可能な所定形式の観測データに変換し、変換後のローバー20の観測データとエフェメリスデータとに基づいて、ローバー20の概略位置を単独測位によって計算して取得してもよい。
【0093】
次に、サーバ30は、情報記憶部(DB)313を参照し、ローバー20の現在位置の位置座標(概略位置情報)が準拠する(ローバー20が属する)座標系を選択し(S202)、選択した座標系で、ローバー20の測位に用いる使用基準局として、当該座標系に準拠する位置座標を有する基準局40を選択して決定する(S203)。
【0094】
ここで、サーバ30は、ローバー20の現在位置の位置座標(概略位置情報)を用いて算出したローバー20と各基準局40との間の水平距離に基づいて、上記選択した座標系においてローバー20に近い複数の基準局40の候補を選択し、その複数の基準局40の候補の中から、ローバー20の測位に用いる最寄りの基準局(使用基準局)40を選択して決定してもよい。例えば、サーバ30は、複数の基準局40の候補について、ローバー20との間の水平距離が短い順番に、ローバー20の現在位置の位置座標が準拠する座標系と基準局40の位置座標が準拠する座標系とが同一か否かを判断し、ローバー20の位置する位置座標が準拠する座標系と同じ座標系に準拠する位置座標の基準局40を、使用基準局として選択して決定してもよい。
【0095】
また、本実施形態の測位システムで測位サービスが提供されるエリアに設定されている座標系(フレーム)が単一の座標系の場合は、上記座標系の選択処理(S202)を行わずに、当該単一の座標系で基準局40を選択して決定してもよい。
【0096】
図6は、実施形態に係る測位システムにおける測位補正情報の配信処理(S300)の一例を示すフローチャートである。この測位補正情報の配信は、所定の繰り返し周波数(例えば、1Hz又は10Hz)で定期的に実行してもよいし、所定のタイミングが到来したときに不定期に繰り返し実行してもよい。
【0097】
図6において、サーバ30は、情報記憶部(DB)313を参照し、使用基準局40に対応する所定のRTCMフォーマットの測位補正情報を検索し(S301)、検索して得られた所定のRTCMフォーマットの観測データを含む測位補正情報をローバー20に送信する(S302)。
【0098】
なお、
図5の基準局40の選択・決定処理(S200)及び
図6の測位補正情報の配信処理(S300)は、互いに独立に並行して実行してもよいし、連続的に実行してもよい。
【0099】
図7は、実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理及び測位補正情報の配信処理を含む測位処理の一例を示すフローチャートである。
図7の例は、基準局40の選択・決定処理(S200)及び測位補正情報の配信処理(S300)を連続的に実行する場合の例である。また、前述の
図5と同様に、
図7は、サーバ30とローバー(対象装置)20との通信が移動通信網60を介した通信である場合の例であり、ローバー20からサーバ30への接続時の認証に、ローバー20に組み込まれた移動局の端末識別情報(IMSI)を用いることができる。
【0100】
図7において、本実施形態の測位処理は、所定の測位アプリケーションが起動されたローバー(対象装置)20との間で通信の接続処理(S100)を行った後、の後に実行する、基準局選択・決定処理(S200)と、対象装置20の現在位置の高精度リアルタイム測位処理で用いる測位補正情報の配信処理(S300)とを含む。
【0101】
図7において、所定の基準局選択・決定タイミングが到来したら、サーバ30は、ローバー20の概略位置情報をローバー20から受信して取得する(S211)。なお、前述の
図5の場合と同様に、サーバ30は、ローバー20の概略位置情報を受信して取得せずに、ローバー20の受信RAWデータをサーバ30へ送信し、サーバ30内でローバー20の概略位置を計算して取得してもよい。
【0102】
次に、サーバ30は、情報記憶部(DB)313を参照し、ローバー20の現在位置の位置座標(概略位置情報)が準拠する(ローバー20が属する)座標系を選択し(S212)、選択した座標系で、ローバー20の測位に用いる基準局(使用基準局)40を選択して決定する(S213)。例えば、サーバ30は、上記選択した座標系に準拠する位置座標を有する基準局40を、ローバー20の測位に用いる使用基準局として決定する。
【0103】
ここで、サーバ30は、前述の
図5の場合と同様に、ローバー20の現在位置の位置座標(概略位置情報)を用いて算出したローバー20と各基準局40との間の水平距離に基づいて、上記選択・決定した座標系においてローバー20に近い複数の基準局40の候補を選択し、その複数の基準局40の候補の中から、ローバー20の測位に用いる最寄りの基準局(使用基準局)40を選択して決定してもよい。
【0104】
次に、サーバ30は、ローバー20から識別情報(例えばIMEI)を含む補正情報要求があったとき(S311でYES)、識別情報に基づいて認証処理を行うとともに、ローバー20の概略位置情報の取得及び使用基準局40の選択を行うことなく、その識別情報に基づいて情報記憶部(DB)313を参照し、ローバー20と使用基準局40とに対応する所定のRTCMフォーマットの測位補正情報を検索する(S312)。サーバ30は、検索して得られた所定のRTCMフォーマットの観測データを含む測位補正情報をローバー20に送信する(S313)。
【0105】
ローバー20は、サーバ30から受信した観測データを含む測位補正情報とローバー20の観測データとエフェメリスデータとを用いて、ローバー20の高精度測位を行うことができる。
【0106】
サーバ30は、ローバー20で計算された高精度測位結果をローバー20から受信して保存してもよい(S314)。この場合、サーバ30は、複数のローバー20から受信した高精度の位置情報を用いてデータ処理を行うことができる。例えば、サーバ30は、構造物に設置した複数のローバー20の位置情報を用いて構造物の変形や変位を測定したり、3次元地図を作成して測位計算に用いる衛星信号からのマルチパス波の除去を行ったりするように、データ処理を行うことができる。
【0107】
また、
図7の測位補正情報の配信処理(S300)において、サーバ30は、ローバー20からの補正情報要求を受信することなく、観測データを含む測位補正情報をローバー20に配信してもよい。
【0108】
また、本実施形態の測位システムで測位サービスが提供されるエリアに設定されている座標系(フレーム)が単一の座標系の場合は、上記座標系の選択処理(S212)を行わずに、当該単一の座標系で基準局40を選択して決定してもよい。
【0109】
図8は、前述の電子基準点及び独自基準点の基準局40の分類及び使用基準局の選択における基準局40及びローバー(対象装置)20が準拠する座標系の判定方法の一例を示す説明図である。
図8において、例えば、日本全国のエリアを所定のグリッド幅(例えば地球の重心を中心とした0.1度の角度幅)でグリッド状に分解して区分けする。
図8中のフレーム境界Bを含まない白抜きのグリッドGA1,GA2に位置する基準局40及びローバー20が準拠する座標系(フレーム)については、そのグリッドが属するエリアが準拠する座標系F1,F2で判定する。一方、
図8中のフレーム境界Bを含むハッチングを付したグリッドGBに位置する基準局40及びローバー20それぞれが準拠する座標系については、そのグリッドGB内のフレーム境界線Bの境界位置データと基準局40及びローバー20それぞれの位置データとに基づいて判定する。
【0110】
図9は、実施形態に係る測位システムにおけるフレーム境界での基準局選択・決定処理の一例を示すフローチャートである。
図9は、測位サービスが提供されるエリアに複数の座標系(フレーム)が設定され、ローバー(対象装置)20がフレーム境界をまたがるように移動する場合の基準局を切り替える処理を含む例を示している。なお、
図9中のS100及びS221の処理については、前述の
図5のS100及びS201の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0111】
図9において、サーバ30は、ローバー20の概略位置情報に基づいてローバー20のフレーム境界をまたがる移動を判断する(S222)。サーバ30は、ローバー20がフレーム境界をまたがって第1エリア(例えば、西日本又は北海道のエリア)から第2エリア(例えば、東日本のエリア)に移動したと判断すると(S223でYES)、ローバー20の座標系を、第1エリアに設定されている座標系(例えば、第1の座標系F1)から第2エリアに設定されている座標系(例えば、第2の座標系F2)に切り替える(S224)。
【0112】
次に、サーバ30は、選択した座標系(例えば、第2の座標系F2)で、ローバー20の測位に用いる使用基準局として、当該座標系に準拠する位置座標を有する基準局40を選択して決定する(S225)。例えば、サーバ30は、ローバー20の現在位置の位置座標(概略位置情報)を用いて算出したローバー20と各基準局40との間の水平距離に基づいて、上記切替後の座標系においてローバー20に近い複数の基準局40の候補を選択し、その複数の基準局40の候補の中から、ローバー20の測位に用いる最寄りの基準局(使用基準局)40を選択して決定する。
【0113】
なお、
図9において、ローバー20の現在位置の概略位置情報及び移動方向の情報等に基づいて、第1エリアから第2エリアへのローバー20の移動が予測されるときに、座標系の切り替え(S224)及び基準局の選択・決定(S225)を事前に行ってもよい。
【0114】
図10は、実施形態に係る測位システムにおけるフレーム境界での基準局選択・決定処理を含む測位処理の一例を示すフローチャートである。
図10の例は、
図9の基準局40の選択・決定処理(S200)及び
図6の測位補正情報の配信処理(S300)を連続的に実行する場合の例であり、測位サービスが提供されるエリアに複数の座標系(フレーム)が設定され、ローバー(対象装置)20がフレーム境界をまたがるように移動する場合の基準局を切り替える処理を含む。なお、
図10中のS100、S231及びS300の処理については、前述の
図7のS100、S211及びS300の処理と同様であるので、説明を省略する。また、
図10中のS232~S235の処理については、前述の
図9のS222~S225の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0115】
図10において、サーバ30は、選択した座標系(例えば、第2の座標系F2)で、ローバー20の測位に用いる使用基準局として、当該座標系に準拠する位置座標を有する基準局40を選択して決定し(S235)、その後、ローバー20から識別情報(例えばIMEI)を含む補正情報要求があったか否かを判断する(S311)。
【0116】
[高精度測位に用いる基準局の選択・決定処理2]
上記構成の測位システム10によるRRS方式の測位においては、測位に用いられる基準局40が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質が、RTK測位法で測定される対象装置(ローバー)20の高精度(数cm程度の高い精度)の位置座標の測位結果(特に、測位結果の分散)に影響するおそれがある。
【0117】
そこで、本実施形態の測位システムにおいて、基準局40が人工衛星の電波を受信して生成した観測データの品質に関する観測品質情報(対象装置20の現在位置の位置座標と基準局40の位置座標との間の水平距離の情報を少なくとも含む)に基づいて、対象装置20の位置測定に用いる使用基準局を選択して決定してもよい。
【0118】
表6は、観測データの品質の影響を受けて発生し得る複数種類の測位誤差について、測位誤差の要因と、その測位誤差との相関が強い要素と、その要素について評価可能な具体的なパラメータと、測位結果に対する影響との関係の一例を示す一覧表である。表6に例示するように、測位誤差の要因として、人工衛星の座標、電離層、対流圏、その他の外乱、及び、精度低下率(DOP:Dilution Of Precision)に影響する人工衛星の配置を挙げることができる。人工衛星の座標及び電離層に起因した測位誤差との相関が強い要素としては、基準局と測位対象との間の水平距離がある。対流圏に起因した測位誤差との相関が強い要素としては、基準局と測位対象との間の高度差がある。その他の外乱に起因した測位誤差との相関が強い要素としては、人工衛星と基準局及び測位対象との間の伝搬路における電波の干渉及びマルチパスがある。人工衛星の配置に起因した測位誤差との相関が強い要素としては、人工衛星と基準局及び測位対象との間の見通し外(NLOS:Non-Line-Of-Site)の環境がある。
【0119】
【0120】
上記測位誤差の要因との相関が強い要素に対する数値又は量を評価可能な観測品質情報としての評価パラメータとしては、例えば、基準局40と対象装置20との間の水平距離D、基準局と測位対象との間の高度差ΔH、MP(マルチパス)値、サイクルスリップの発生頻度、データ取得率及び開口率(「開口度」ともいう。)がある。ここで、開口率は、基準局40の上方の全天空のうち基準局40から障害物の影響を受けずに見通し可能な部分が占める割合、と定義される。干渉の度合いを示す指標値(パラメータ)としては、他の指標値(パラメータ)を用いてもよい。
【0121】
上記評価パラメータのうち、MP値、サイクルスリップの発生頻度及びデータ取得率は、例えば、TEQC(Translation, Editing and Quality Checking)から出力されるものを利用することができる。TEQCは、米国GPS大学連合(UNAVCO)が公開している、GPS受信機の観測データを評価することができるツールである。開口率は、例えば、全天空写真から算出することができる。また、TEQCに開口率が追加された場合は、TEQCから出力される開口率を利用してもよい。
【0122】
また、上記評価パラメータのうち、TEQCなどの外部から取得可能な評価パラメータ以外の評価パラメータについては、基準局40で計算されたものを受信してもよいし、基準局40から受信した基礎情報(例えば、観測データ)に基づいてサーバ30で計算してもよい。
【0123】
本実施形態では、対象エリアに分散設定した複数の位置のそれぞれにテスト用の対象装置20を移動させることにより得られた観測データに基づき、上記観測品質情報としての評価パラメータを引数として上記測位結果の分散を求める関数を予め決定している。この関数を用いて、高精度測位対象の対象装置20の周辺に位置する複数の基準局40の候補について、所定時間間隔(例えば、1秒~10秒の間隔)で算出した所定期間分(例えば、12時間分、1日分、2日分など)の複数の測位結果から測位誤差の分散を求め、各基準局の候補の測位誤差の分散の算出値を比較し、その測位誤差の分散の算出値が最小となる基準局40を、使用基準局として選択して決定する。
【0124】
上記関数は、上記水平距離とその他の評価パラメータの少なくとも1つを引数して決定することができる。例えば、上記水平距離D及び高度差ΔHを引数として上記関数を決定してもよい。また、上記水平距離D、高度差ΔH、MP値、サイクルスリップの発生頻度及びデータ取得率を引数として上記関数を決定してもよいし、更に開口率を引数に追加して上記関数を決定してもよい。
【0125】
図11は、実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理の他の例を示すフローチャートである。
図11は、上記関数を用いた基準局選択・決定処理の例を示している。なお、
図11中のS100、S241及びS242の処理については、前述の
図5のS100、S201及びS202の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0126】
図11において、サーバ30は、上記選択した座標系において、ローバー20の概略位置情報を用いて算出したローバー20と各基準局40との間の水平距離に基づいて、ローバー20に近い複数の基準局40の候補を選択する(S243)。
【0127】
次に、サーバ30は、複数の基準局40の候補について、ローバー20との間の水平距離と上記他の評価パラメータのデータに基づき、予め決定した上記関数を用いて測位結果の分散を求めて出力する(S244)。サーバ30は、各基準局40の候補の測位誤差の分散の算出値を比較し、その測位誤差の分散の算出値が最小となる基準局40を、使用基準局として選択して決定する(S245)。
【0128】
なお、上記関数の代わりに機械学習済みモデルを用いてもよい。機械学習済みモデルは、例えば、上記評価パラメータを説明変数とし上記測位誤差の分散を目標編とした機械学習用モデルを設定し、その機械学習用モデルについて、対象エリアに分散設定した複数の位置のそれぞれにテスト用の対象装置20を移動させ、上記評価パラメータの値を説明変数に入力し、測位結果の分散の算出値を教師データとして用いて決定することができる。
【0129】
図12は、実施形態に係る測位システムにおける基準局選択・決定処理及び測位補正情報の配信処理を含む測位処理の他の例を示すフローチャートである。
図12は、基準局40の選択・決定処理(S200)及び測位補正情報の配信処理(S300)を連続的に実行する場合の例であり、上記関数を用いた基準局選択処理の例を示している。なお、
図12中のS100、S251、S252及びS300の処理については、前述の
図7のS100、S211、S212及びS300の処理と同様であるので、説明を省略する。また、
図12中のS253~S255の処理については、前述の
図11のS243~S245の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0130】
図12において、サーバ30は、前記切替後の座標系(例えば、第2の座標系F2)で、ローバー20の測位に用いる使用基準局を選択して決定し(S255)、その後、ローバー20から識別情報(例えばIMEI)を含む補正情報要求があったか否かを判断する(S352)。
【0131】
なお、
図5~
図12において、サーバ30とローバー(対象装置)20との通信は、インターネット60を介した測位用の汎用プロトコル(例えば、Ntrip:The Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)による通信であってもよい。
【0132】
また、上記複数種類の基準局の選択・決定処理1,2はそれぞれ単独で実行してもよいし、互いに組み合わせて実行してもよい。例えば、本実施形態の測位システムで測位サービスが提供されるエリアに設定されている座標系(フレーム)が単一の座標系の場合に、前述の観測品質情報(対象装置20の現在位置の位置座標と基準局40の位置座標との間の水平距離の情報を少なくとも含む)に基づいて使用基準局を選択して決定する処理(基準局の選択・決定処理2)を単独で実行してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、測位対象(ローバー)20において高精度測位の計算を行うエッジRTK(ローバーRTK)の測位システムについて説明したが、上記複数の基準局の選択・決定処理はそれぞれ、サーバ30において測位対象(ローバー)20の高精度測位の計算を行うサーバRTK(クラウドRTK)の測位システムにも適用できる。
【0134】
図13は、実施形態に係る測位システムの主要な構成の他の例を示す機能ブロック図である。ず9の例では、サーバ30が対象装置(ローバー)20から受信した観測データに基づいて対象装置20の高精度測位の計算を行う。なお、
図13において、前述の
図1と共通する構成部分については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0135】
図13において、サーバ30の測位対象情報処理部32は、測位対象通信部321と基準局選択部322と位置情報計算部324とを有する。
【0136】
測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20が人工衛星50からの電波を受信して生成した観測データを、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20から受信する。
【0137】
また、測位対象通信部321は、後述の位置情報計算部324で計算した対象装置20の数センチメートル級の高精度位置情報(例えば、緯度、経度、高度)の計算結果である所定のフォーマット(例えば、NMEA(National Marine Electronics Association)フォーマット)からなる測位演算結果を、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して対象装置20に送信する。
【0138】
また、測位対象通信部321は、対象装置(GNSSユーザ装置)20の概略位置情報を取得するために、対象装置20が人工衛星50からの電波を受信して生成した所定フォーマット(例えば、RTCMフォーマット)の観測データを、通信網(例えば、インターネット、移動通信網)60を介して、対象装置20から定期的に受信する。
【0139】
位置情報計算部324は、基準局選択部322の基準局選択テーブルを参照し、前記選択した基準局40の補正観測情報(例えば、搬送波位相観測データ、位置情報)と、対象装置20の観測データと、エフェメリスデータとに基づいて、対象装置20の数センチメートル級の高精度位置情報(例えば、緯度、経度、高度)を計算する。計算対象の対象装置20の位置情報は、例えば基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。
【0140】
対象装置20の位置情報は、例えばRTK測位法により計算することができる。まず、選択した基準局40の搬送波位相観測データと対象装置20の搬送波位相観測データ、エフェメリスから基準局40から対象装置20に向かう基線ベクトルを決定する。この基線ベクトルと基準局40の既知の位置情報とに基づいて、対象装置20の位置情報を算出する。
【0141】
以上、本実施形態によれば、RRS方式の測位システムにおいて、基準局40と対象装置(測位対象)であるローバー20との間の水平距離のみを選択基準にするのではなく、基準局40の位置座標が準拠する座標系とローバー20の現在位置の位置座標が準拠する座標系との不一致を回避してローバー20の位置測定に用いる使用基準局40を適切に選択し、測位誤差を低減することができる。
また、本発明によれば、RRS方式の測位システムにおいて、基準局40とローバー20との間の水平距離のみを選択基準にするのではなく、観測データの品質が高い基準局40を優先的に選択し、測位誤差を低減することができる。
【0142】
なお、本実施形態の測位システムは様々なユースケースに適用可能である。例えば、本実施形態の測位システムは、農業分野における農機の運転・操作の自動化や圃場マップの高度化、建築分野における建機の運転・操作の自動化や建物の工事進捗を高精度に管理するドローンの自動制御、交通分野における無人自動運転バスを実現するバス高速輸送システム(BRT)や(MaaS(Mobility as a Service))での高精度な車両位置情報の取得などに適用できる。
【0143】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにサーバ、対象装置(ユーザ装置、移動局、通信端末、端末装置など)、基準局、基地局などの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0144】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、中継通信局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0145】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0146】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0147】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0148】
10 測位システム
20 測位対象(対象装置、ローバー)
30 サーバ
31 基準局情報処理部
32 測位対象情報処理部
40 基準局(ベース)
41 電子基準点
42 独自基準点
50 人工衛星
210 GNSS受信機
220 観測データ生成部
230 位置情報計算部
240 サーバ通信部
310 基準局通信部
311 補正情報作成部
312 基準局情報作成部
313 情報記憶部(DB)
321 測位対象通信部
322 基準局選択部
323 補正情報選択部
324 位置情報計算部