(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】耳かき
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A47K7/00 105
(21)【出願番号】P 2021191900
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】521517186
【氏名又は名称】川口 勉
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】川口 勉
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-70675(JP,A)
【文献】特開2008-86553(JP,A)
【文献】特開2017-124085(JP,A)
【文献】実開昭49-106331(JP,U)
【文献】中国実用新案第203042632(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材から形成され、気体が封入された中空の本体と、
前記本体に連続して弾性材から形成され、前記本体の内圧が所定値以下の状態では当該本体の内側に収納され、前記本体の内圧が所定値を超えると当該本体の外側に突出する有底筒状の耳垢除去筒と、
前記耳垢除去筒の外面に形成され、耳垢を捕捉する捕捉突起と、を備えたことを特徴とする耳かき。
【請求項2】
前記耳垢除去筒は、前記本体に連続する部位の厚みが他の部位より薄く設定されたことを特徴とする、請求項1記載の耳かき。
【請求項3】
前記本体が円盤状をして、前記耳垢除去筒が前記本体の径方向に突出する請求項1又は2に記載の耳かき。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳垢の除去に供される耳かきに係り、外耳道表面の傷付きや耳垢の押し込みの防止等を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の外耳道は入口から鼓膜まで約3cmの長さがあり、外耳道の入口から1/3程の部位に耳垢腺が存在する。外耳道の表面では、耳垢腺から分泌された油に剥がれた皮膚表皮や埃等が混じり合い、いわゆる耳垢が生じる。耳垢は大部分が表皮細胞の動きによって自然に排出されるが、排出されずに固まりとなった耳垢は、不快な痒みをもたらしたり、水分で膨張して外耳道に栓塞を起こしたりすることがある。そこで、外耳道の耳垢を除去する器具として、木製(竹材等)や金属製の耳かきが一般に用いられている。(特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3179911号公報
【文献】特許第5883182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の耳かきは硬質の棒状であるため、強く掻くことで外耳道の表面を傷付けたり、誤って鼓膜を突き鼓膜穿孔を起こしたりすることがある。また、耳かきや綿棒で外耳道の奥に耳垢を押し込んでしまった場合、上述した外耳道の栓塞が引き起こされることもある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、外耳道の耳垢を容易かつ安全に除去できる耳かきを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の耳かきは、
弾性材から形成され、気体が封入された中空の本体と、
前記本体に連続して弾性材から形成され、前記本体の内圧が所定値以下の状態では当該本体の内側に収納され、前記本体の内圧が所定値を超えると当該本体の外側に突出する有底筒状の耳垢除去筒と、
前記耳垢除去筒の外面に形成され、耳垢を捕捉する捕捉突起と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耳かきによれば、外耳道の耳垢を容易かつ安全に除去できる耳かきを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本願の実施形態に係る耳かきの斜視図である。
【
図2】本願の実施形態に係る耳かきの耳垢除去筒が収納された状態での耳かきの要部縦断面図である。
【
図3】本願の実施形態に係る耳かきの耳垢除去筒が突出した状態での耳かきの要部縦断面図である。
【
図4】本願の実施形態に係る耳かきの製造工程の一部を示す図である。
【
図5】本願の実施形態に係る耳かきの作用を示す要部縦断面図である。
【
図6】本願の実施形態に係る耳かきの作用を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、
図1~
図6を用いて詳細に説明する。
<実施形態の構成>
図1に示す実施形態の耳かき1は、シリコーンゴム(ゴム性状を有するシリコーン)を素材として圧縮成形や射出成形によって製造され、厚みがある中空円盤状の本体2と、本体2の外壁2aに連続して形成された耳垢除去筒3とから構成されている。耳垢除去筒3は、通常時、即ち本体2の内圧が所定値以下の状態では、
図1,
図2に示すように本体2の内側に収納されている。一方、耳垢除去筒3は、本体2の内圧が所定値を超えると(すなわち、本体2に外力が加わると)、
図3に示すように本体2の中の気体に押し出されることで反転しながら本体2の外側に突出する。耳垢除去筒3は、本体2の径方向に突出する。
【0010】
図2に示すように、耳垢除去筒3はその肉厚が本体2の外壁2aより薄く設定され、更に本体2に連続する部位が他の部位より薄く設定された薄肉部4となっている。
図3に示すように、突出状態の耳垢除去筒3は、本体2の外壁2aから所定の長さL(本実施形態では、18mm)と、所定の外径D(本実施形態では、10mm)とを有している。また、耳垢除去筒3の外面には楔状の捕捉突起5が千鳥状に多数配置されている。
【0011】
本実施形態の耳かき1は、
図4(a)に示すように、第1ハーフ1aと第2ハーフ1bとに分割成形した後にこれらを接着によって接合する、あるいは、
図4(b)に示すように本体2を一体で成形した後に型抜き孔2bをプラグ7で塞ぐことで製造される。
【0012】
<実施形態の作用>
耳かき1の使用にあたり、使用者は、
図5に示すように耳かき1の本体2を手8で軽く掴み、外耳道10の入口に耳垢除去筒3をあてがう。この際、手で掴まれた本体2の内圧が若干上昇して薄肉部4が撓み、耳垢除去筒3の基部が本体2から環状に突出することにより、耳垢除去筒3と外耳道10との位置合わせが容易となる。なお、外耳道10は、長さが約3cm、径が約1cmのS字状を呈しており、鼓膜11によって中耳12と仕切られるとともに、その入口側には耳垢13が付着している。
【0013】
使用者が耳垢除去筒3を外耳道10に押し当てた状態で本体2を握ると、
図6(a)に示すように、耳垢除去筒3が反転しながら外耳道10の奥に進入する。この際、耳垢除去筒3は、外耳道10の表面に被さるように変形し、外耳道10の表面に対して長手方向に摺動しないため、耳垢13は耳垢除去筒3の外周面に保持されて外耳道10の奥に押し込まれない。
【0014】
使用者が本体2を更に握ると、
図6(b)に示すように、耳垢除去筒3が完全に突出し、この状態で本体2を強く握ると耳垢除去筒3が膨張して外耳道10の表面に密着する。ついで、使用者が耳かき1を引き抜くことで、
図6(c)に示すように、耳垢13が捕捉突起5に掻き取られて排出・除去される。耳かき1の使用を終えると、使用者は、本体2を握ったまま耳垢除去筒3の耳垢13をアルコールやブラシで清掃し、本体2から手を離してテーブル等の上に置く。すると、外圧が消失することで本体2内が負圧となるため、耳垢除去筒3が本体2の内側に引き込まれ、
図1に示す初期状態に戻る。
【0015】
<実施形態の効果>
本実施形態の耳かき1は、上述した構成を採ったことにより、外耳道10の耳垢13を短時間で容易かつ安全に除去できる。また、耳垢除去筒3が柔らかいシリコーンゴム製であるため、従来の木製や金属製の耳かきのように外耳道10を傷付けることが殆どない。また、耳かき1は本体2が外耳道10の縁部(すなわち、頭部)に接した状態で使用され、かつ耳垢除去筒3の長さLが外耳道10の長さに比べて遙かに短いため、棒状の耳かきのように鼓膜11を傷付ける虞がない。
【0016】
また、耳垢除去筒3における本体に連続する薄肉部4の厚みが他の部位より薄く設定されることで、耳垢除去筒3が基端側から徐々に外側に突出しやすくなり、外耳道10の奥に耳垢13が押し込まれることが、より確実に抑制される。さらに、本体2を円盤状として、耳垢除去筒3を本体2の径方向に突出させることで、持ちやすく、使いやすいものとなる。
【0017】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれに限られるものではない。例えば、上記実施形態の耳かきでは、素材としてシリコーンゴムを用いたが、同等の弾性や強度等が確保できれば他種の弾性材を採用してもよいし、本体と耳垢除去筒とを異なる素材で製造してもよい。また、実施形態では本体を厚みがある中空円盤状としたが、中空球状や中空紡錘状としてもよい。また、実施形態では耳垢除去筒の外周に楔状の捕捉突起を設けたが、耳垢除去筒の外周に所定の間隔で配置された環状の捕捉突起を設けてもよい。その他、本体や耳垢除去筒の具体的構成や形状等についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、耳垢の除去に供される耳かきに効果的に利用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 耳かき
2 本体
3 耳垢除去筒
4 薄肉部
5 捕捉突起
10 外耳道
13 耳垢