(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】除去システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240315BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240315BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240315BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23Q17/00 A
B23Q17/24 Z
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2021526051
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022116
(87)【国際公開番号】W WO2020250798
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019108212
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】西宮 民和
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-24094(JP,A)
【文献】特開2014-193514(JP,A)
【文献】特開2017-104943(JP,A)
【文献】特開2016-120580(JP,A)
【文献】特開平2-106255(JP,A)
【文献】特開平6-297292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 17/00
B23Q 17/24
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に付着した異物を除去する除去システムであって、
ロボットアームと、表面センサと、異物除去装置と、制御装置とを備え、
前記ロボットアームは、前記工作機械の治具を構成する複数の部材のうち、一方の部材に対して他方の部材を取り付け又は取り外し可能に構成され、
前記表面センサは、前記ロボットアームに装着され、前記治具の表面のうち密着面の表面状態を検出可能に構成され、ここで、前記密着面は、前記ロボットアームにより取り付け又は取り外しされる部材間の面であり、
前記異物除去装置は、前記ロボットアームに着脱可能に構成され、該ロボットアームに装着された際に、前記密着面から異物を除去可能に構成され、
前記制御装置は、表面状態記憶部と、異物検出部と、動作指示部とを備え、
前記表面状態記憶部は、異物が付着していない状態の前記密着面の表面状態を記憶し、
前記異物検出部は、前記表面センサが検出した前記密着面の表面状態と、前記表面状態記憶部に記憶されている表面状態との比較に基づいて、前記密着面に付着している異物を検出可能に構成され、
前記動作指示部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に、前記異物除去装置に対して動作指示を送出可能に構成される
除去システム。
【請求項2】
請求項1に記載の除去システムにおいて、
前記表面センサは、カメラであり、
前記表面状態記憶部は、異物が付着していない状態の前記密着面の画像を記憶し、
前記異物検出部は、前記カメラが撮像した画像と前記表面状態記憶部に記憶されている画像との差分に基づいて前記密着面に付着している異物を検出する
除去システム。
【請求項3】
請求項1に記載の除去システムにおいて、
前記表面センサは、変位計であり、
前記表面状態記憶部は、前記変位計により計測した異物が付着していない状態の前記密着面の表面状態をコンター図化した画像を記憶し、
前記異物検出部は、前記変位計による計測結果をコンター図化した画像と前記表面状態記憶部に記憶されている画像との差分に基づいて前記密着面に付着している異物を検出する
除去システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の除去システムにおいて、
前記異物除去装置を複数備え、
前記動作指示部は、前記異物検出部が検出した異物の位置と大きさとの少なくとも一方に基づいて前記異物除去装置のいずれかを選択し、該選択した異物除去装置の装着を指示する装着指示を前記ロボットアームに送出する
除去システム。
【請求項7】
工作機械に付着した異物を除去する異物除去装置の制御装置であって、
表面状態記憶部と、異物検出部と、動作指示部とを備え、
前記表面状態記憶部は、前記工作機械の治具の表面のうち密着面に異物が付着していない状態で表面センサにより検出した前記密着面の表面状態を記憶し、ここで、前記密着面は、前記ロボットアームにより取り付け又は取り外しされる部材間の面であり、前記表面センサは、前記ロボットアームに装着され、
前記異物検出部は、前記表面センサが検出した前記密着面の表面状態と、前記表面状態記憶部に記憶されている表面状態との比較に基づいて、前記密着面に付着している異物を検出可能に構成され、
前記動作指示部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に、前記異物除去装置に対して動作指示を送出可能に構成され、ここで、前記異物検出部は、前記ロボットアームに装着される
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、除去システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤やマシニングセンタ等の工作機械においては、ワークを把持する把握面等に切粉が付着していたり、チャックや工具に切粉が絡んでいたりすると、正常な動作ができない場合がある。
【0003】
このため、切粉が所定の空間に入り込むことを防止する技術(例えば、特許文献1参照)や、付着した切粉を除去する技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、工作機械の治具、例えば、チャック、NC円テーブル、バイス、ステーショナリチャック、パレット治具等においても、これらを構成する部材間の密着面に切粉等の異物が付着していると、ワークの把持不良が生じる場合もあり、ワークの加工精度が低下する。同様に、ワークを把持する際のワークとの密着面に切粉等の異物が付着している場合にも、ワークの把持不良が生じ、ワークの加工精度が低下する可能性がある。また、異物の付着は、ワーク及び治具自体を損傷させる原因ともなる。
【0007】
このため、治具の密着面においても異物の除去を行うことは、重要である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、切粉が所定の空間に入り込むことを完全に防止することができない。このため、この技術を利用した場合には、治具を構成する部材を取り付け又は交換する際やワークを把持する際に、これらが密着される密着面となる面に異物が付着する可能性がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された技術では、切粉を切粉除去ハンドで掴んで取り除くため、小さな異物を取り除くことが困難である。
【0010】
さらに、特許文献2に記載された技術では、切粉によるセンサの物理的な押し込みにより、切粉を検出しているため、小さな異物を検出することは困難であり、例えば、治具の密着面にセレーションが形成されている場合等には、その谷部にある異物の検出することは不可能に近い。
【0011】
本発明では上記事情を鑑み、治具の密着面に付着した異物を除去することのできる除去システム及び制御装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、工作機械に付着した異物を除去する除去システムであって、表面センサと、異物除去装置と、制御装置とを備え、前記表面センサは、前記工作機械の治具の表面のうち密着面の表面状態を検出可能に構成され、ここで、前記密着面は、前記治具を構成する部材間となる面と、前記治具が把持するワークと接する面との少なくとも一方であり、前記異物除去装置は、前記密着面から異物を除去可能に構成され、前記制御装置は、表面状態記憶部と、異物検出部と、動作指示部とを備え、前記表面状態記憶部は、異物が付着していない状態の前記密着面の表面状態を記憶し、前記異物検出部は、前記表面センサが検出した前記密着面の表面状態と、前記表面状態記憶部に記憶されている表面状態との比較に基づいて、前記密着面に付着している異物を検出可能に構成され、前記動作指示部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に、前記異物除去装置に対して動作指示を送出可能に構成される除去システムが提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、表面センサが検出した密着面の表面状態と、表面状態記憶部に記憶されている表面状態との比較に基づいて、密着面に付着している異物を検出する。これにより、比較的小さな切粉等の異物の検出が可能となるとともに、密着面に刻印や傷があった場合でも、異物の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】除去システム1の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】マスタージョー72の外観を示す斜視図である。
【
図4】トップジョー73の外観を示す斜視図である。
【
図5】異物が付着していない状態の密着面の表面状態の画像の例を示した図である。
【
図6】異物の検出を行う際の密着面の表面状態の画像の例を示した図である。
【
図7】
図5に示した画像と
図6に示した画像の差分を示す画像の例を示した図である。
【
図8】除去システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0016】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0017】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0018】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0019】
1.構成例
まず、除去システムの構成について説明する。
図1は、除去システム1の機能的な構成を示すブロック図である。
【0020】
同図に示すように、除去システム1は、制御装置2、ロボットアーム3、表面センサ4及び異物除去装置5を含むように構成され、工作機械6に付着した異物を除去するシステムである。
【0021】
制御装置2は、ロボットアーム3と、表面センサ4と、異物除去装置5とを制御するもので、表面状態記憶部21、異物検出部22及び動作指示部23を備える。
【0022】
ロボットアーム3は、工作機械6に対して様々な作業を行うことができるロボットであり、その先端にエンドエフェクタが脱着可能なものであるとともに、その先端近傍の外周等に、表面センサ4や異物除去装置5を装着可能とするものである。また、除去システム1は、ロボットアーム3を複数台備えるようにして、表面センサ4を装着したロボットアーム3と、異物除去装置5を装着したロボットアーム3との両者を用いるようにしてもよい。なお、表面センサ4と異物除去装置5は、エンドエフェクタとしてロボットアーム3に脱着可能にするようにしてもよい。
【0023】
表面センサ4は、工作機械6の治具を構成する部材の密着面の表面状態を検出可能に構成される。具体的には、表面センサ4は、カメラ、変位計等により実現される。変位計は、非接触式のものであれば、光学式、渦電流式、超音波式、レーザ式等の様々なものを用いることが可能であるが、例えば、二次元レーザ変位計又は三次元レーザ変位計を用いることができる。また、表面センサ4は、工作機械6の治具を構成する部材の密着面の表面状態を検出可能であれば、ロボットアーム3の先端又は外周に配設されてもよく、工作機械6の加工エリア内に配設されてもよい。この加工エリア内に表面センサ4を配設する場合には、表面センサ4を複数用いてもよい。なお、治具と、その密着面については後述する。
【0024】
異物除去装置5は、工作機械6の治具を構成する部材の密着面から異物を除去するもので、回転ブラシや刷毛、グリッパ、エアブロー、液体噴出器、吸引器等を有するものである。これらは、単体でも適宜組み合わされたものでもよい。また、グリッパ内蔵エアブロー等、組み合わせを一体化したものを利用することもできる。
【0025】
また、除去システム1は、異物除去装置5を複数備えるようにしてもよく、比較的大きな異物を除去するものと、比較的小さな異物を除去するものなど、適宜使い分けをするようにしてもよい。
【0026】
表面状態記憶部21は、異物が付着していない状態の工作機械6の治具を構成する部材の密着面の表面状態を記憶する。具体的には、治具を新たに利用する場合や点検を終えた直後等に、その密着面の表面状態を表面センサ4で検出した結果を記憶する。表面センサ4がカメラである場合には、表面状態記憶部21は、異物が付着していない状態の画像を記憶する。
【0027】
また、表面センサ4が二次元レーザ変位計である場合には、表面状態記憶部21は、二次元レーザ変位計が密着面の全体を計測できるようにロボットアーム3を動作させて計測した異物が付着していない状態の密着面の表面状態をコンター図化した画像を記憶する。なお、コンター図化した画像に代えて、二次元レーザ変位計により計測した数値データを記憶するようにしてもよい。
【0028】
表面センサ4が三次元レーザスキャナである場合には、表面状態記憶部21は、二次元化したコンター図を画像として記憶したり、数値データを記憶したりする。
【0029】
異物検出部22は、表面センサ4が検出した工作機械6の治具を構成する部材の密着面の表面状態と、表面状態記憶部21に記憶されている表面状態との比較に基づいて、密着面に付着している異物を検出する。具体的には、異物検出部22は、表面状態記憶部21に記憶されている表面状態の画像を背景画像とし、表面センサ4が検出した表面状態の画像を前景画像として、背景差分により異物を検出する。
【0030】
異物検出部22は、表面センサ4がカメラである場合には、カメラが撮像した画像と表面状態記憶部21に記憶されている画像との差分に基づいて密着面に付着している異物を検出する。また、異物検出部22は、表面センサ4が二次元レーザ変位計である場合には、二次元レーザ変位計が密着面の全体を計測できるようにロボットアーム3を動作させて計測した計測結果をコンター図化した画像と表面状態記憶部21に記憶されている画像との差分に基づいて密着面に付着している異物を検出する。
【0031】
動作指示部23は、異物検出部22が異物を検出した場合に、ロボットアーム3と異物除去装置5に動作指示を送出する。動作指示部23がロボットアーム3に送出する動作指示は、異物検出部22が検出した異物の位置を示す位置情報を含むもので、ロボットアーム3により異物除去装置5を位置情報に基づいて異物の近傍に移動させるための移動指示である。動作指示部23が異物除去装置5に送出する動作指示は、異物除去装置5を駆動させるための駆動指示であり、例えば、異物除去装置5が回転ブラシで構成されるものであれば、その回転ブラシを駆動させるためのものである。
【0032】
なお、動作指示部23は、工作機械6と通信を行って工作機械6と連動するようにしてもよいが、少なくとも、工作機械6が切削等を行っている稼働状態であるか停止している状態かを確認できるようにすることが望ましい。
【0033】
なお、異物除去装置5への動作指示は、異物除去装置5が装着されているロボットアーム3を介して、動作指示部23から異物除去装置5へ通達されるようにしてもよい。
【0034】
また、異物除去装置5を複数用いる場合には、動作指示部23は、異物検出部22が検出した異物の位置と大きさとの少なくとも一方に基づいて複数の異物除去装置5のいずれかを選択し、選択した異物除去装置の装着を指示する装着指示をロボットアーム3に送出する。異物の位置による選択は、例えば、密着面にセレーションが形成されている場合に、セレーションからの異物の除去に適したものを利用する場合等に行われる。
【0035】
さらに、動作指示部23は、表面センサ4がロボットアーム3に装着されている場合には、ロボットアーム3に対して密着面の表面状態を検出する動作指示を送出する。
【0036】
2.密着面
次に、除去システム1が異物を除去する対象となる密着面について説明する。密着面は、治具を構成する部材と部材とが接する面と、部材とワークとが接する面との両者である。治具としては、例えば、チャック、NC円テーブル、バイス、ステーショナリチャック、パレット治具等があるが、ここでは、チャックを例として密着面について説明する。なお、チャック以外の説明は省略するが、チャック以外の治具も、除去システム1が異物を除去する対象となる。
【0037】
図2は、チャックの外観を示す斜視図である。同図に示すように、チャック7は、ボデー71と、マスタージョー72と、トップジョー73とを含んで構成される。これらボデー71、マスタージョー72、トップジョー73のいずれもが治具を構成する部材に相当する。
【0038】
続いて、密着面について説明する。
図3は、マスタージョー72の外観を示す斜視図である。また、
図4は、トップジョー73の外観を示す斜視図である。
図3に示すように、マスタージョー72は、セレーション721と溝722を有している。また、
図4に示すように、トップジョー73は、セレーション731を有している。
【0039】
セレーション721とセレーション731は、いずれも密着面であり、マスタージョー72にトップジョー73を取り付ける際には、セレーション721の山部分とセレーション731の谷部分が互いに噛み合うように、取り付けられる。
【0040】
また、溝722も密着面である。溝722は、図示しない部材であるTナットが挿入可能な部位で、逆T字形状の溝である。
【0041】
また、トップジョー73でワークを把握する場合、ワークの位置決めを行うために、図示しないロケータが取り付けられる。このロケータとワークが接する面も密着面であり、トップジョー73とワークが接する面も密着面である。
【0042】
3.画像
次に、表面センサ4が検出する表面状態の画像について説明する。
図5は、異物が付着していない状態の密着面の表面状態の画像の例を示した図である。また、
図6は、異物の検出を行う際の密着面の表面状態の画像の例を示した図である。
【0043】
図5に示した画像と
図6に示した画像は、いずれも、表面センサ4がカメラである場合には、セレーション721を正面から撮像したものに相当する。また、表面センサ4が二次元レーザ変位計である場合には、セレーション731を正面から計測した場合のコンター図に相当する。
【0044】
コンター図は、例えば、異物検出部22で作成されるもので、二次元レーザ変位計が計測した分解能毎に、その計測した距離に応じた階調を示す画素を生成し、その画素の集合を画像としたものである。
【0045】
異物検出部22は、
図5に示した画像を背景画像とし、
図6に示した画像を前景画像として、背景差分を抽出する。このとき、各画像に対して適切な画像処理等を施すが、これらの詳細についての説明は省略する。
【0046】
図7は、
図5に示した画像と
図6に示した画像の差分を示す画像の例を示した図である。同図に示した画像は、
図5に示した画像と
図6に示した画像の差分を所定の閾値に基づいて二値化したものであり、切粉等の異物を示すものである。かかる閾値は、使用する表面センサ4のダイナミックレンジ等に合わせて適宜調節することが好ましい。また、かかる閾値を、切削水の水滴は検知しないが切粉は検知するように調節するようにしてもよい。なお、必要に応じて、異物の色や形状の情報を用いるようにアルゴリズムを工夫してもよい。
【0047】
4.動作
次に、除去システム1の動作を説明する。
図8は、除去システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。なお、ここでは、表面センサ4は、ロボットアーム3の先端近傍の外周面に装着されているものとする。
【0048】
除去システム1は、治具を構成する部材を交換する必要が生じると、まず、ロボットアーム3が対象となる部材を取り外す(A101)。
【0049】
続いて、ロボットアーム3は、A101で取り外した部材の密着面の近傍に表面センサ4を移動させ、表面センサ4がその密着面の表面状態を検出する(A102)。
【0050】
そして、異物検出部22が、表面状態記憶部21に記憶されている画像と表面センサ4が検出した画像とに基づいて背景差分の抽出を行う(A103)。
【0051】
その結果、異物が検出されなければ、ロボットアーム3は、交換対象の部材の取り付けを行う(A104)。
【0052】
一方、異物が検出された場合には、ロボットアーム3は、その先端に異物除去装置5を取り付ける(A105)。
【0053】
続いて、ロボットアーム3は、A101で取り外した部材の密着面の近傍に異物除去装置5移動させて異物の除去を試みる(A106)。
【0054】
次に、ロボットアーム3は、A101で取り外した部材の密着面の近傍に表面センサ4を移動させ、表面センサ4がその密着面の表面状態を検出する(A107)。
【0055】
そして、異物検出部22が、表面状態記憶部21に記憶されている画像と表面センサ4が検出した画像とに基づいて背景差分の抽出を行う(A108)。
【0056】
その結果、異物が検出されなければ、ロボットアーム3は、異物除去装置5を取り外して(A109)、交換対象の部材の取り付けを行う(A104)。
【0057】
また、A108の背景差分の抽出の結果、異物が検出された場合には、異物除去の試行が所定回数未満であれば、再度、A101で取り外した部材の密着面の近傍に異物除去装置5移動させて異物の除去を試みる(A106)。
【0058】
A106の異物の除去は、所定回数試行を行い、その間に異物が除去できなければ、除去システム1は、動作を停止して、警告等を発報する。
【0059】
なお、複数の異物除去装置5を用いる場合に、A108の異物除去の試行を複数回繰り返す際には、異物除去の試行毎に異なる異物除去装置5を用いるようにしてもよい。
【0060】
5.その他
最後に、本発明に係る実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記除去システムにおいて、前記表面センサは、カメラであり、前記表面状態記憶部は、異物が付着していない状態の前記密着面の画像を記憶し、前記異物検出部は、前記カメラが撮像した画像と前記表面状態記憶部に記憶されている画像との差分に基づいて前記密着面に付着している異物を検出する除去システム。
前記除去システムにおいて、前記表面センサは、変位計であり、前記表面状態記憶部は、前記変位計により計測した異物が付着していない状態の前記密着面の表面状態をコンター図化した画像を記憶し、前記異物検出部は、前記変位計による計測結果をコンター図化した画像と前記表面状態記憶部に記憶されている画像との差分に基づいて前記密着面に付着している異物を検出する除去システム。
前記除去システムにおいて、前記異物除去装置は、前記工作機械に対して所定の作業を行うロボットアームに装着され、前記動作指示部は、前記ロボットアームに対して前記異物検出部が検出した異物の位置を示す位置情報に基づく移動指示を送出可能に構成される除去システム。
前記除去システムにおいて、前記表面センサは、前記ロボットアームに装着される除去システム。
前記除去システムにおいて、前記異物除去装置を複数備え、前記動作指示部は、前記異物検出部が検出した異物の位置と大きさとの少なくとも一方に基づいて前記異物除去装置のいずれかを選択し、該選択した異物除去装置の装着を指示する装着指示を前記ロボットアームに送出する除去システム。
工作機械に付着した異物を除去する異物除去装置の制御装置であって、表面状態記憶部と、異物検出部と、動作指示部とを備え、前記表面状態記憶部は、前記工作機械の治具の表面のうち、該治具を構成する部材と、該治具が把持するワークとの少なくとも一方と密着する密着面に異物が付着していない状態で表面センサにより検出した前記密着面の表面状態を記憶し、前記異物検出部は、前記表面センサが検出した前記密着面の表面状態と、前記表面状態記憶部に記憶されている表面状態との比較に基づいて、前記密着面に付着している異物を検出可能に構成され、前記動作指示部は、前記異物検出部が異物を検出した場合に、前記異物除去装置に対して動作指示を送出可能に構成される制御装置。
前記制御装置において、前記異物除去装置は、前記工作機械に対して所定の作業を行うロボットアームに装着され、前記動作指示部は、前記ロボットアームに対して前記異物検出部が検出した異物の位置を示す位置情報に基づく移動指示を送出可能に構成される制御装置。
前記制御装置において、前記表面センサは、前記ロボットアームに装着される制御装置。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0062】
1 :除去システム
2 :制御装置
21 :表面状態記憶部
22 :異物検出部
23 :動作指示部
3 :ロボットアーム
4 :表面センサ
5 :異物除去装置
6 :工作機械