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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240315BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021535332
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028734
(87)【国際公開番号】W WO2021020351
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019138909
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】西川 未佳子
(72)【発明者】
【氏名】櫛間 桃子
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-268237(JP,A)
【文献】特開2005-060314(JP,A)
【文献】特表2001-504817(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062803(WO,A1)
【文献】国際公開第1991/006277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料を含む多層型カプセル粒子
(b)粒子径が50~600μmの水溶性スクラブ剤、
を含む油性化粧料であって、
前記(b)水溶性スクラブ剤が、フルクトース、スクロース、ラクチトール、キシリトールおよびソルビトールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記(b)水溶性スクラブ剤の配合量が化粧料全量に対して2~20質量%であり、かつ、(a)顔料を含む多層型カプセル粒子と(b)水溶性スクラブ剤の配合比率(質量比)[(b)/(a)]が0.5以上2.5未満であることを特徴とする、油性化粧料。
【請求項2】
前記(a)顔料を含む多層型カプセル粒子の配合量が、化粧料全量に対して~10質量%である、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
前記(b)水溶性スクラブ剤がスクロースである、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項4】
水の配合量が、化粧料全量に対して1質量%以下である、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項5】
固形化粧料である、請求項1から4のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項6】
硬度が10~70gfである、請求項5に記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を皮膚上に塗布した後の所望のタイミングで塗膜に軽い摩擦力を加えることによって色調を変化させることができ、かつ、良好なスクラブ効果が得られる油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料、特にメーキャップ化粧料においては、肌に塗布したときの塗膜の発色の良さのみならず、化粧料自体の外観色の目新しさや使用の特殊化も商品価値の重要な要素となっている。
【0003】
例えば、顔料等の色材の一部又は全部がマスキングされた粒子を配合した化粧料は、そのマスキングを剥離することにより内部の色材が露出されるため、塗布時又は塗布後に色調を変化させることが可能である。
特許文献1には、油性の内包物を当該内包物に不溶の軟質樹脂からなるシェル(カプセル膜)で被覆した軟質樹脂カプセル、及び当該軟質樹脂カプセルを配合したメーキャップ化粧料が記載されている。前記軟質樹脂カプセルは、着色顔料、有色真珠光沢顔料および油溶性染料から選択される色材の一種又は二種以上並びに油分を含有する内包物と、その内包物を被覆するシェル(カプセル膜)と、を含む圧縮崩壊性のカプセルである。特許文献1に記載された化粧料は、化粧料を皮膚に塗布した後、前記カプセルの耐圧(破壊)強度を超える力で摩擦することにより、シェル(カプセル膜)が破壊されて内包された顔料等の色材が放出される。その結果、化粧塗膜の色調を変化させることができる。しかしながら、色調を変化させるためには、肌上で強い力で塗擦する必要があり、また、破壊されたカプセルが肌に残るため、化粧塗膜に悪影響を与える場合があった。
【0004】
特許文献1の前記課題に鑑みて、強い力で塗擦しなくても、塗膜の色調を変化させることが可能な化粧料が特許文献2に記載されている。特許文献2の油中水型化粧料は、カラギーナンおよび/又はキサンタンガムと、無着色顔料とを含む軟凝集粒子を内水相に含有しており、当該化粧料を塗布するだけで軟凝集粒子が崩れて発色する。その結果、元の外観色と異なる色調の化粧塗膜が形成される。
【0005】
さらに、特許文献3には、多量の紫外線散乱剤と顔料を含む多層型カプセルを配合した化粧料が開示されている。当該化粧料を肌に塗布すると、多層型カプセルが崩壊し、露出された顔料の外観色によって、多量の紫外線散乱剤に起因する白さが緩和される。しかし、特許文献2および3に記載された化粧料は、いずれも肌に塗布する際に色調が変化する化粧料であり、塗布後の任意のタイミングで色調を変化させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】昭63-196505号公報
【文献】特開2011-225563号公報
【文献】特表2017-515864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、肌に塗布する際には色調が実質的に変化しないが、塗布後の化粧塗膜の色調を任意のタイミングで容易に変化させることができる化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、顔料を含む粒子であって、当該顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子を、水溶性のスクラブ剤と組み合わせて配合し、かつ当該スクラブ剤の粒子径および配合量を所定の範囲内とすることにより、塗布後の化粧塗膜を軽く塗擦するだけで、あるいは、化粧塗膜を形成した皮膚を軽くこすり合わせるだけで、マスキングされていた顔料の外観色が露出して色調が変化することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)顔料を含む粒子であって、顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子、および
(b)粒子径が50~600μmの水溶性スクラブ剤、
を含む油性化粧料であって、
(b)水溶性スクラブ剤の配合量が化粧料全量に対して2~20質量%であり、
かつ、
(a)顔料を含む粒子と(b)水溶性スクラブ剤の配合比率[(b)/(a)]が0.5以上2.5未満であることを特徴とする油性化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油性化粧料に、化粧料と異なる色相の顔料を含む粒子を配合すれば、化粧を施した後の任意のタイミングで軽く塗擦又はこすり合わせるだけで色調を変化させることができ、使用者の気分をリフレッシュする効果を有する。また、油性化粧料と同系色の(色相の近い)顔料を含む粒子を配合しておけば、経時的に色落ちした化粧塗膜を軽く摩擦することで再度鮮やかな発色が得られ、簡便に化粧直しをすることが可能となる。
一方、本発明の油性化粧料は、適度な粒子径を持つスクラブ剤を含有しているため、化粧料の製造工程において粒子がつぶれてしまうという現象が生じにくく、色調変化と同時に良好なスクラビング効果やマッサージ効果も併せて実感できる。また、スクラブ剤として水溶性の物質を用いることで、スクラブ剤が肌残りしないため使用感にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油性化粧料(以下、単に「化粧料」ともいう)は、(a)顔料を含む粒子、及び(b)粒子径が50~600μmの水溶性スクラブ剤を必須成分として含有する。
以下に、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(a)顔料を含む粒子>
本発明に係る化粧料に配合される(a)顔料を含む粒子(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)としては、化粧料に一般的に用いられる顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子であればいずれの形態のものであってもよい。例として、顔料を内包する多層型カプセル粒子、顔料を他の成分と一体化させた凝集粒子等が挙げられる。なかでも、粒子からの顔料放出の調節し易さの観点から、顔料を内包する多層型カプセル粒子が好ましく用いられる。
【0013】
顔料を内包する多層型カプセル粒子は、内部層と1又は複数の外部層を具備する構造を有する。内部層には、赤色無機顔料、黄色無機顔料等の色調顔料が必須成分として内包され、ポリマーを母材とした外部層が内部層を被覆する。ポリマーを母材とした外部層はさらに機能性顔料を含む層によって被覆されてもよい。ポリマーを母材とした外部層と機能性顔料(無機粉末)を含む層はいずれの順で被覆していてもよく、それぞれが単層であっても複層であってもよい。内部層および外部層には任意で無機粉末が含まれうる。
【0014】
母材となるポリマーとしては、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、セルロース等の有機系ポリマーが挙げられる。
本発明における「色調顔料」は、化粧料の色調を変化させる機能を持つものであれば特に限定するものではない。一般に「着色顔料」と呼ばれる顔料、例えば、赤色酸化鉄、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド等の赤色無機顔料や、黄色酸化鉄、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー等の黄色無機顔料等が挙げられる。
本発明における「機能性顔料」は、一般に機能性顔料と呼ばれている窒化ホウ素等のみならず、前記「着色顔料」以外の顔料、例えば、酸化チタン及び酸化亜鉛等の白色顔料、タルク、マイカ及びシリカ等の体質顔料等を包含する。
【0015】
市販製品としては、Magicolor(登録商標)(バイオジェニック社製)、Sugarcapsule Magic SP Series(大東化成工業社製)、TagraCap(商標)(タグラ バイオテクノロジー社製)、およびMicroBeads(商標)(サルボナ テクノロジーズ社製)が挙げられる。
顔料を内包する多層型カプセル粒子は、例えば、米国特許公開第2011/0165208号A1公報(対応する特表2011-529104号公報)に記載されているように、色調顔料、可塑剤およびポリマーを第1の溶媒に均質に混合して第1の混合溶液を調製すること、調製した溶液を噴霧乾燥して、色調顔料がポリマーによって被覆されるコア粒子を形成させること、形成したコア粒子および機能性顔料を第2の溶媒に均質に混合して第2の混合溶液を調製すること、第2の混合溶液を噴霧乾燥して、コア粒子の外部に機能性顔料のコーティング層が形成された多層型カプセル粒子を生成させることによって製造することができる。
【0016】
多層型カプセル粒子において多層とは2層ないしは3層、又は3層以上であることをいい、好ましくは、顔料を内包する内部層とポリマーを母材とした外部層からなる2層構造、又は、顔料を内包する内部層とポリマーを母材とした外部層がさらに機能性顔料を含む層によって被覆された3層構造である。
多層型カプセル粒子の形状は、球形状、角形状、楕円形状などのほか、不定形状であってもよく、形状は問わない。
【0017】
本発明の(a)成分は、そのままの状態で用いることができるが、さらにその表面に、通常用いられている疎水化処理剤で疎水化処理を施して用いることもできる。疎水化表面処理としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理)、脂肪酸処理(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸石鹸処理(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等による処理)、脂肪酸エステル処理(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理)等が挙げられる。これらの疎水化処理は、常法に従って行うことができる。
【0018】
本発明の(a)成分の粒子径は、300μm未満、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは60μm以下である。ここで、粒子径は数平均径を指す。粒子径が300μm以上である場合には、化粧料の使用感触が劣る傾向がある。
【0019】
本発明に係る化粧料における(a)成分の配合量は、塗布面での望ましい視覚効果を達成するために有効な量である限り特に限定されない。例えば、化粧料全量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.5~9.0質量%、さらに好ましくは1.0~8.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると色調の変化が得られにくく、10質量%を超えると使用性が悪くなる傾向がある。
【0020】
<(b)粒子径が50~600μmの水溶性スクラブ剤>
本発明に係る化粧料に配合される(b)水溶性スクラブ剤(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)としては、水溶性であり、粒子径が50~600μmの粉末であれば特に限定されない。皮膚に対する刺激が少なく、安全性が高い(口に入れても問題が生じない)という観点から、糖類からなる粉末を用いるのが好ましい。糖類としては、単糖、多糖、糖アルコールなどを用いることができる。
本発明における「水溶性」とは、20℃における水への溶解度が少なくとも50g/100mL、好ましくは100g/100mL以上、より好ましくは150g/100mL以上であることを意味する。
【0021】
単糖としては、グルコース、フルクトース、キシロース、マンノース、ガラクトースなどが挙げられ、多糖としては、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、セルロースなどが挙げられる。
糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、エリスリトールなどが挙げられる。
【0022】
本発明の(b)成分としては、フルクトース、スクロース、ラクチトール、キシリトールおよびソルビトールからなる群から選択するのが好ましい。特に好ましくはスクロースである。
【0023】
本発明に係る化粧料における(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して2~20質量%であり、2~10質量%とするのが好ましい。配合量が2質量%未満であると、スクラブ剤としての刺激が足りずマッサージ効果が感じられにくいのに加え、軽い摩擦による色調の変化も得られにくい傾向となる。20質量%を超えて配合すると、化粧料の製造時に(a)顔料を含む粒子がつぶれてしまうという問題が生じる。
【0024】
本発明に係る化粧料における(a)成分と(b)成分の配合比率(質量比)は、(b)/(a)=0.5以上2.5未満であり、より好ましくは0.5以上2.0未満である。塗布後の(a)成分のつぶれやすさ及び化粧料製造時の(a)成分のつぶれにくさという観点から、(b)/(a)を1.5以下とするのが好ましく、より好ましくは1.25以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0025】
本発明の化粧料には、上記の配合成分に加えて、必要に応じて、油分、色材、油溶性皮膜剤、界面活性剤、低級アルコール(エタノール等)、保湿剤、紫外線吸収剤、増粘剤、充填剤、安定化剤、酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、ビタミン類、血行促進剤、美白剤、皮膚賦活剤、薬効成分、動植物からの抽出物、香料等の、化粧料に一般的に用いられる成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0026】
本発明に係る化粧料に配合され得る油分としては、化粧料に一般的に用いられる油分であって、常温(25℃)で固体又は半固体の固形油分および常温(25℃)で液体の液状油分から選択される。
【0027】
固形油分としては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール、カルナウバロウ、ミツロウ(ビースワックス)、キャンデリラロウ、ホホバロウ、ラノリン、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ポリエチレン末、ワセリン、各種の水添加動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。
【0028】
液状油分としては、例えば、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、小麦胚芽油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、タートル油、ミンク油、パーシック油、サザンカ油、アマニ油、エノ油、カヤ油、日本キリ油、メドゥフォーム油、スクワレン、スクワラン、植物性スクワラン、ホホバアルコール、流動パラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリグリセリン、オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ポリシロキサン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸へキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、フッ素変性油、トリオクタノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が挙げられる。
【0029】
本発明の化粧料においては、皮膚に塗布した際の伸び広がりや肌とのなじみをよくする観点から、固形油分と液状油分を組み合わせて用いることが好ましい。
【0030】
本発明に係る化粧料に任意成分として配合される色材は、本発明の化粧料自体の外観色を決定するものであり、本発明の必須成分である顔料を含む粒子((a)成分)とは区別される。任意成分である色材としては、通常化粧料に配合可能な色材であれば特に限定されない。例として、有機合成色素(タール色素、染料、レーキ、有機顔料を含む)、天然色素、および無機顔料から選択できる。
【0031】
有機合成色素としては、法定色素別表1~3に記載された色素、具体的には、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、黄色4号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色205号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、褐色201号、紫色201号、紫色401号、黄色403号、赤色401号、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色226号、赤色228号等が挙げられる。
【0032】
天然色素としては、β-カロチン等のカロチノイド系、フラボノイド系、フラビン系、キノン系、ポルフィリン系、ジケトン系、ベタシアニジン系の色素が挙げられる。
【0033】
無機顔料としては、酸化鉄(赤酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄など)、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック等の着色顔料;酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料;雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等の真珠光沢顔料等が挙げられる。
【0034】
本明細書における「油性化粧料」とは、油性成分及び油溶性成分を主原料とし、任意に水又は水溶性成分を含んでいてもよい化粧料である。但し、本発明の化粧料における「水」の配合量は、必須成分である水溶性のスクラブ剤((b)成分)が使用前に溶解してスクラブ効果を失うことがない量に調節するのが好ましい。例えば、本発明の化粧料における水の配合量は、化粧料全量に対して1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。また、水を含有しない無水化粧料の形態とするのが更に好ましい。
【0035】
本発明の化粧料は、固形化粧料として調製するのが好ましく、その硬度は、10~70gf(グラム重)とするのが好ましい。特に、スティック状化粧料に調製する場合には20~60gfの硬度とするのが好ましい。ここで「硬度」は、スティック状に成形した試料に、硬度計(FUDO社製)を用いて荷重(20mm/s押した後、50gf開放)をかけ、試料が折れるまでの荷重回数を測定し、脆性を評価した場合の値をいう。
化粧料の硬度が10gf未満であると、基剤が柔らかすぎて、顔料を含む粒子が粉砕されず、十分な発色が得られない。一方、硬度が70gfを超えると、基剤が固すぎて使用性が悪くなる。
【0036】
本発明の油性化粧料は、スクラブ効果又はマッサージ効果を有し、なおかつ任意のタイミングで色調変化を楽しむことのできる化粧料あるいは医薬部外品として提供可能である。製品形態としては、皮膚又は毛髪用のメーキャップ用化粧料、ケア用化粧料等が想定されるが、これらに限定されない。特に、メーキャップ化粧料、中でも、口唇、目元、頬用の固形メーキャップ化粧料として提供するのに適しており、これらの形態とすることにより本発明の効果が有効に発揮される。
【0037】
本発明に係る化粧料は、従来から用いられている方法に準じて製造することができる。例えば、上記必須成分を含む配合成分を加熱撹拌混合した後、脱気、容器充填し、冷却することによって製造することができる。
【実施例
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
【0039】
実験例1~8、比較例1~4
下記の表1および表2に示す処方で油性化粧料を常法により調製した。
次いで、得られた化粧料について、(1)粒子((a)成分)のつぶれやすさ、(2)使用性(スクラブ剤による刺激効果)、(3)製造時の取り扱いやすさ(製造工程における粒子((a)成分)のつぶれにくさ)、及び(4)塗布後の塗擦による色調変化、を評価した。各項目の評価方法は以下に述べるとおりである。
【0040】
(1)粒子((a)成分)のつぶれやすさ
各例の化粧料(同量)を被験者の手の甲の同面積領域に塗布して化粧料塗膜を形成した。次いで、一定の力で手指を往復させて各塗膜を塗擦し、塗膜の色が変化するまでに要した塗擦(往復)回数により評価した。
A+:3往復以下
A:4~6往復
B:7~10往復
C:11往復以上
【0041】
(2)使用性(スクラブ剤による刺激効果)
各例の化粧料(同量)の唇への塗布時および塗布後、唇をすり合わせた時に感じるざらざら感により評価した。
A:強く感じる
B:わずかに感じる
C:感じない
【0042】
(3)製造時の取り扱いやすさ(製造工程における粒子((a)成分)のつぶれにくさ)
各例の化粧料を汎用の混合装置(ホモミキサー)を用いて混合して製造し、その製造工程中に顔料を含む粒子((a)成分)がつぶれて化粧料の色調変化が生じるか否かにより評価した。
A+:色調変化は全く観察されなかった。
A:色調変化はほとんど観察されなかった。
B:わずかな色調変化を生じたが、化粧料全体の色調を変化させるものではなかった。
C:化粧料全体の色調が変化した。
【0043】
(4)塗布後の塗擦による色調変化
各例の化粧料(同量)を唇に塗布後、手指による塗擦又は唇のすり合わせによって色調変化が生じた際の印象の変化により評価した。なお、塗擦又はすり合わせは、各例の化粧料の色調変化が完了するまで実施した。
A+:唇の外観の印象が顕著に変化した。
A:唇の外観の印象がかなり変化した。
B:唇の外観の印象がほとんど変化しなかった。
C:唇の外観の印象が全く変化しなかった。
なお、上記(4)「色調変化」において、「(a)顔料を含む粒子」として赤色顔料などの暖色系顔料を用いた場合には、色調変化の評価結果が「A+」又は「A」となる化粧料については、血色感向上という効果が得られたことも付記する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2に示した結果から明らかなように、所定量(2~20質量%)の水溶性スクラブ剤(b)を配合し、(a)と(b)の配合量比率[(b)/(a)]が0.5以上2.5未満という要件を満たす油性化粧料(実施例1~8)は、製造工程で顔料を含む粒子(a)がつぶれずに良好に製造できた。また、所定量のスクラブ剤が配合されているため、スクラブ効果(あるいはマッサージ効果)が高く、塗布後の塗擦(すり合わせ)によって、顔料を含む粒子(a)が容易につぶれて色調変化をもたらすことが確認された。しかしながら、配合比率[(b)/(a)]が5である比較例2は、製造過程で粒子(a)がつぶれてしまい、塗布後の塗擦(すり合わせ)による色調変化を生じることができなかった。配合比率[(b)/(a)]が2.5である比較例1は、製造過程で粒子(a)がつぶれてしまうことは回避できたが、スクラブ剤の配合比率が高すぎるため、化粧料を塗布する際に粒子がつぶれてしまい、塗布後の塗擦(すり合わせ)による色調変化がみられなかった。スクラブ剤を配合しない比較例3は、色調変化はみられるものの、色調変化を得るために要する塗擦(すり合わせ)の回数が非常に多くなり、実用的ではなかった。さらに、顔料を含む粒子を配合しない比較例4は、当然のことながら、塗擦(すり合わせ)をしても色調変化は起こらなかった。