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特許7455127キメラ抗原受容体(CAR)および医薬におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体(CAR)および医薬におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240315BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240315BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240315BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C07K16/28
C07K19/00
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P19/08
A61P35/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021535886
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2019086309
(87)【国際公開番号】W WO2020127734
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】20181636
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】515202863
【氏名又は名称】オスロ ユニヴェルジテットサイケフス ホーエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルヒリ、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ブルラン、エイヴィン エス
(72)【発明者】
【氏名】インダーベルグ、エルセ マリット
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/033630(WO,A1)
【文献】Nucl. Med. Biol.,1995年,Vol.22, No.6,p.765-771
【文献】ERRATUM,Nuclea Medicine and Biology,1999年,Vol.26,p.599
【文献】Mus musculus mRNA for immunoglobulin light chain variable region, clone TP-1,GenBank,AJ131747,2016年07月26日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AJ131747.1/,[令和5年10月25日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
UniProt/GeneSeq
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/REGISTRY/FSTA/CABA/AGRICOLA/BIOTECHNO/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメインと、ヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーによって連結された配列番号1および配列番号2を含み、
前記ヒンジドメインはCD8αヒンジドメインを含み、
前記細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含む、CAR。
【請求項2】
前記ヒンジドメインは配列番号5で表される請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記膜貫通ドメインは配列番号6で表される請求項1または2に記載のCAR。
【請求項4】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインからなる請求項1~3のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項5】
前記抗原結合ドメインはペプチドリンカーによって連結された配列番号1および配列番号2を含み、前記ヒンジドメインは配列番号5で表され、前記膜貫通ドメインは配列番号6で表され、前記細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む請求項1~のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸。
【請求項7】
請求項に記載の核酸で形質導入された免疫細胞。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のCARを発現する免疫細胞。
【請求項9】
前記免疫細胞がT細胞またはNK細胞である、請求項またはに記載の免疫細胞を含む医薬組成物。
【請求項10】
骨肉腫の治療に使用するための請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
転移性骨肉腫の治療に使用するための請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
微小転移性骨肉腫の治療に使用するための請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
微小転移性骨肉腫または転移性骨肉腫の治療に使用するための請求項9に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は前記治療が必要とされた患者に薬学的に有効量で静脈内投与されるものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞療法の分野に関連する。特に、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptors、CAR)、CARをコードする核酸、それら核酸を発現する免疫細胞、および骨肉腫の治療のための医薬におけるそれらの有用性に関連する。
【背景技術】
【0002】
骨肉腫(OS)は、最も一般的な原発性骨腫瘍であり、小児および青年で8番目に最も一般的な癌の形態である。OSは、5年全生存率が60%と低い侵攻性のタイプの癌である。この数字は70年代に化学療法が導入されてから改善していない。革新的な解決策で臨床試験を実施するための多くの国際借款団が作られたが、今のところ乏しい結果しか報告されていない。これらのネガティブな結果の理由は、OSの生物学に関連する。ほとんどの患者は、たいていの場合に化学療法に耐性のある肺転移による癌に屈服することになる。この分野には明らかに満たされていないニーズがある。
【0003】
CARを発現する自己T細胞によるHER2の標的化に基づく、骨肉腫患者を含む肉腫の患者に関する1臨床試験が報告されている(非特許文献1)。HER2は様々なタイプの癌で存在するが、健康な組織もHER2を発現している。CAR T細胞を静脈内投与されたある患者は、細胞注射後15分以内に呼吸困難を経験し、集中的な医療行為にもかかわらず、その患者は治療の5日後に亡くなった(非特許文献2)。
【0004】
治療力のあるCAR T細胞を得るために、細胞はその細胞膜に十分な量のCARを発現する必要があり、抗原結合ドメインはCARコンストラクト中に十分な親和性および特異性を伝達する必要がある。ヒンジにおける微妙な差異でさえ、標的細胞上の標的エピトープに到達し、その後免疫細胞にシグナルを伝えるCARの能力に影響を与え得る。
【0005】
インビトロでのCAR T細胞の活性は、もちろんインビボでの活性の指標であり得る。しかしながら、以下のように非特許文献3によって開示されたように、インビトロでのCAR T細胞の活性は、必ずしもインビボでの、とりわけOSへの効力と解釈されるわけではない。すなわち、「しかしながら、インビボでは、GD2-CAR T細胞は神経芽腫異種移植片に対する効力のある抗腫瘍活性を仲介したが、骨肉腫異種移植に対しては最小限の活性のみを仲介した。抗腫瘍活性の欠如は、ヒトT細胞を抑制するCD11b+Ly6G+マウスMDSCのかなりの拡大に関連する」。さらにまた非特許文献4によって開示されるように、同所性異種移植を有する大半のマウスにおいて許容されるGD2-CAR T細胞の投与により、深刻な副作用が生じ得る。抗腫瘍活性の急性期中の腫瘍周囲の神経炎症は、一部の動物で致命的な水頭症につながる。
【0006】
加えて、固形腫瘍のためのCAR T細胞療法は、血液悪性腫瘍と比べて異なるセットの克服すべき障害を提供する。非特許文献5において記載されるように、そのような障害は、乏しい輸送、免疫抑制分子および免疫抑制細胞の増強発現、および免疫チェックポイントを含む。例えば、腫瘍へのCAR T細胞の輸送は、腫瘍によって分泌されるケモカインの受容体の発現に依存する。抗原活性化CAR T細胞は、T細胞機能不全につながり得る抑制性受容体の発現を上方制御することがさらに示されている。免疫抑制分子および免疫抑制細胞は、直接的におよび間接的に、腫瘍増殖を促進し、T細胞活性を阻害し得る。したがって、CAR T細胞が固形腫瘍において効果的であるために様々な障害を克服する必要がある。
【0007】
別の問題は、標的部位におけるCAR T細胞の効率的なアクセスに関連する。血液悪性腫瘍とは対照的に、固形腫瘍の認識は血液から腫瘍部位へ出ることを必要とし、T細胞浸透が積極的に妨げられるように多くの悪性腫瘍は発達する。
【0008】
インビトロ活性のある一部のCAR T細胞のみがインビボで腫瘍転移にうまく移行し、OSなどの固形腫瘍の厳しい条件の腫瘍微小環境に浸透することが予期され得る。さらにまた、CAR T細胞は、インビボで治療効果を提供するために経時的にその活性を持続させる必要がおそらくあるであろう。以下のように非特許文献6によって開示されるように、CARコンストラクトのシグナル伝達ドメインは重要である。すなわち、「それにもかかわらず、2つの異なる共刺激シグナル伝達ドメインを有するIIICAR.GD2T細胞を異種移植NSGマウスモデルにおいて試験したとき、我々はCARGD2.28.4-1BBzT細胞のみで、インビボで持続した抗腫瘍効果を仲介することを観察した(図2D~F)。…(中略)…GD2を標的にする第117,18および第3(CD28.OX40)21世代の両方のCARを使用したNBを有する小児において今までに行われた臨床試験は、限られた有効性しか実証していない」。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ahmedら、2015、J Clin Oncol. 2015 May 20;33(15):1688-96
【文献】Morganら、Mol Ther. 2010 Apr;18(4):843-51
【文献】Longら、Cancer Immunol Res. 2016 Oct;4(10):869-880
【文献】Mountら、Nature Medicine volume 24、ページ572-579(2018)
【文献】SrivastavaおよびRiddle、J Immunol 2018;200:459-468
【文献】Quintarelliら、ONCOIMMUNOLOGY 2018、VOL.7、NO.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、免疫細胞の細胞膜で発現されたとき、インビボでOSに治療効果を提供可能な新規なCARを得ることが些細なことではなく、非常に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
新規なキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。本明細書のCARを発現する免疫細胞は転移性OSをシミュレートしたマウスモデル、すなわち肺においてOS腫瘍が確立されたマウスにおいて治療効果を示す。図7、8および9参照されたい。OSはしばしば肺に広がり致命的な結果をもたらす固形腫瘍である。本明細書に提示されるCARは、以前に非常に特異的であることが示された肺転移特異的マーカーを認識する。加えて、我々は健康な組織に対するそれらの反応性を試験することにより、CARの安全性を評価した。健康な骨髄からの幹細胞は、任意のCARを発現するT細胞によってそれほど影響を受けなかったという発見と組み合わせると、本開示はヒト患者におけるOS治療の魅力的な細胞治療力のある代替策を提供する。さらにまた、CARを発現する免疫細胞はまた、微小転移性OSをシミュレートしたモデルにおいて活性を実証した(図10参照)。
【0012】
本明細書のCARが免疫細胞の表面に発現されるとき、そのような免疫細胞は我々のインビボのデータに実証されるように、OS細胞に方向づけられ得る。いくつかの異種移植OSモデルにおける治療効果が実証されている。マウスの腹腔内モデルにおいて、腫瘍増殖は、配列番号1および配列番号2(TP1 scFv-断片)を含む抗原結合ドメインを含むCARを発現するT細胞で有意に遅れた。同じモデルにおいて、配列番号3および配列番号4(TP3 scFv-断片)を含む抗原結合ドメインを含むCARを発現するT細胞のため、腫瘍増殖が本質的に避けられる。さらにまた、全生存率はいずれかのCARを発現するT細胞を受けたマウスで大幅に改善した。OSCAR1またはOSCAR3を発現するT細胞の静脈内投与は、非常に侵攻性のOSA肺腫瘍を有するマウスに治療効果および延長された長期生存を提供し、骨転移さえ防ぐようであった(図7および8参照)。OSCAR1またはOSCAR3を発現するT細胞の静脈内投与はまた、LM-7肺腫瘍を有するマウスにおいて延長された治療効果を提供した(図9を参照)。
【0013】
第1の態様において、抗原結合ドメインと、ヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むCARが提供され、抗原結合ドメインはTP1 scFv-断片を含むか、または抗原結合ドメインはTP3 scFv-断片を含み、ヒンジドメインはCD8αヒンジドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0014】
前記ヒンジドメインは、配列番号5で表され得る。
前記膜貫通ドメインは、配列番号6で表され得る。
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインを含み得る。
【0015】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含み得る。
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインからなり得る。
【0016】
前記抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーによって連結された配列番号1および配列番号2を含み得る。
前記抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーによって連結された配列番号3および配列番号4を含み得る。
【0017】
前記抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーによって連結された配列番号1および配列番号2を含み得、ヒンジドメインは配列番号5で表され得、膜貫通ドメインは配列番号6で表され得、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含み得る。
【0018】
前記抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーによって連結された配列番号3および配列番号4を含み得、ヒンジドメインは配列番号5で表されるCD8αヒンジドメインであり得、膜貫通ドメインは配列番号6で表されるCD8α膜貫通ドメインであり得、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含み得る。
【0019】
第2の態様において、第1の態様によるCARをコードする核酸が提供される。
第3の態様において、第2の態様による核酸で形質導入された免疫細胞が提供される。
第4の態様において、第1の態様によるCARを発現する免疫細胞が提供される。
【0020】
第5の態様において、第3または第4の態様による免疫細胞を含む医薬組成物が提供される。
前記医薬組成物は、骨肉腫の治療に使用され得る。
【0021】
前記医薬組成物は、転移性骨肉腫の治療に使用され得る。
前記医薬組成物は、微小転移性骨肉腫の治療に使用され得る。
転移性骨肉腫の治療に使用するための、その細胞膜にキメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞がまた提供され、前記CARはTP1 scFv-断片またはTP3 scFv-断片を含む抗原結合ドメインと、ヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインと、任意選択的に1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。
【0022】
第5の態様による薬学的に有効量の医薬組成物を患者に静脈内投与するステップを含む、患者の骨肉腫の治療のための方法も提供される。
第5の態様による薬学的に有効量の医薬組成物を患者に静脈内投与するステップを含む、患者の転移性骨肉腫の治療のための方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】両方のCARコンストラクト(OSCAR1およびOSCAR3)は、レトロウイルス的に形質導入された初代T細胞において十分に発現され、抗マウスFab抗体で検出可能であったことを示す図。
図2】BioPlexによって検出された細胞培地中のサイトカイン放出を示す図。より暗い色は、24時間後の上清中のより高いサイトカインレベルを示す。示されるように、OSCARリダイレクト細胞は、骨肉腫細胞株からの刺激時、TNFαおよびIFNγの放出に対して強く活性化された。
図3a】OSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現する初代T細胞またはモックトランスフェクションによるOHS細胞のインビトロ殺傷(BLIアッセイ)を示す図。
図3b】OSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現する初代T細胞またはモックトランスフェクションによるOSA細胞のインビトロ殺傷(BLIアッセイ)を示す図。
図3c】OSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現する初代T細胞またはモックトランスフェクションによるSAOS細胞のインビトロ殺傷(BLIアッセイ)を示す図。
図4a】実施例4において記載されたように腹腔内マウスモデルの処理プロトコルを示す図。
図4b】実施例4において記載されるように処理されたマウスの20日目のOHS腫瘍負荷(IVISによって検出されたルシフェラーゼシグナル検出)および生存率を示す図。
図4c】実施例4において記載されるように処理された各マウスのルシフェラーゼシグナルのスパイダープロットを示す図。OSCAR1およびOSCAR3は、ほとんどの動物において腫瘍増殖を制御し得るが、OSCAR3で処理された動物はモックT細胞で処理された動物(対照)と比較して腫瘍再発が観察された。
図4d】実施例4において記載されたように処理されたマウスの生存曲線(カプラン・マイヤー)を示す図。OSCAR1を発現するT細胞は、エンドポイントにおいて80%のマウスを生存させ続けた。OSCAR3を発現するT細胞は、モックまたは生理食塩水で処理された動物よりも良好に働いた。
図5a】実施例5において記載されるように、肺転移腫瘍モデルのための処理プロトコルを示す図。
図5b】実施例5において記載されるように処理されたマウスでの腫瘍進行を示す図。示されるように、モックまたは培地で処理された動物に比べて、OSCAR1またはOSCAR3を発現するT細胞によってOSA腫瘍増殖はより長い時間制御された。
図6a】OSCAR1またはOSCAR3を一時的に発現するT細胞はいずれも血液前駆細胞のコロニー形成に有意な影響を及ぼさなかったことを実証する図。
図6b】OSCAR1またはOSCAR3を安定的に発現するT細胞はいずれも血液前駆細胞のコロニー形成に有意な影響を及ぼさなかったことを実証する図。コロニー形成単位(CFU)-赤血球(E) 赤、CFU-顆粒球マクロファージ(GM) 白コロニー、CFU 顆粒球、赤血球、単球、巨核球(GEMM)混合コロニー。
図7】肺転移をシミュレートするためにOSA細胞を使用した第2実験においてOSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現するT細胞の治療効果を実証する図。写真は3、11、および20日目に撮影された。ここで、対照動物において骨転移(*)が検出可能であった。
図8】実施例7からのカプラン・マイヤー曲線を示す図。
図9】LM-7細胞株を使用した別の肺転移モデルのインビボ実験を示す図。写真は13、21、および28日目に撮影された。
図10】スフェロイドにおいてOSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現するT細胞の細胞傷害性効果を実証する図。中央の白い斑点は腫瘍細胞(OHS細胞株)を表す。上段は、形質導入されていないT細胞(モック)の効果を表す。
図11】OSCAR1およびOSCAR3のN末端からC末端への概略的な構造を視覚化した図。両方のCARは、CD8αヒンジに連結されたscFvを含み、CD8αヒンジは、ひいてはCD8α膜貫通ドメインに連結される。細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に使用されるとき、キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む受容体である。
本明細書に使用されるとき、抗原結合ドメインは、生理学的条件下、特に腫瘍環境内の生理学的条件下で細胞外標的エピトープと結合できるタンパク質部分である。抗原結合ドメインは2つの配列、抗体軽鎖(VL)からの1可変ドメインおよび抗体重鎖(VH)からの1可変ドメインを含む。理論に縛られることなしに、本明細書の抗原結合ドメインの標的はp80であり得る。この抗原は、癌細胞および腫瘍に関連する毛細血管の出芽によって発現すると思われるので、OS治療の適切な標的であると考えられている。
【0025】
VHおよびVL配列は、ジスルフィド架橋またはペプチドリンカーによって連結され得る。あるいは、その2つの配列は抗体のFab-断片に埋め込まれ得る。一実施形態において、抗原結合ドメインは、VL-リンカー-VHを含むか、またはそれらからなる。別の実施形態において、抗原結合ドメインはVH-リンカー-VLを含むか、またはそれらからなる。そのような抗原結合ドメインは、しばしば一本鎖Fv-断片(scFv)と呼ばれる。リンカーは、VHおよびVLが機能的な抗原結合ドメインを形成できるようにある特定の長さを有する必要がある。一実施形態において、リンカーは10~30のアミノ酸残基を含む。一実施形態において、リンカーは15~25のグリシン残基および/またはセリン残基を含む。一実施形態において、リンカーは配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)によって表される。
【0026】
各VLおよびVHは、フレームワーク配列によって挟まれた3つの相補性決定領域(CDR)を含む。フレームワーク配列は、標的抗原に対する特異性および親和性を滅することなくいくつかの変異を許容し得ることが予期され得る。例えば、アミノ酸残基の置換は、アミノ酸残基の欠失または追加より許容され得る。しかしながらCDRは一般に、より感受性があるが、時折、特異性および親和性を滅することなく保存的置換が導入され得る。
【0027】
一実施形態において、抗原結合ドメインはTP1 scFv-断片を含む。TP1 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP1 VLおよびTP1 VHを含む。一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号1または配列番号1と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2または配列番号2と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。
【0028】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号1または配列番号1と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2または配列番号2と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。ただし、前記配列の任意の差異がアミノ酸残基の保存的置換の形態である場合である。
【0029】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号1またはCDRが改変されていない場合、配列番号1と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2またはCDRが改変されていない場合、配列番号2と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。
【0030】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号1または配列番号1と95%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2または配列番号2と95%を超える配列同一性のある配列2を含む。ただし、前記配列の任意の差異がアミノ酸残基の保存的置換の形態である場合である。
【0031】
一実施形態において、抗原結合ドメインはTP3 scFv-断片を含む。TP3 scFv-断片はリンカーによって連結されたTP3 VLおよびTP3 VHを含む。一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号3または配列番号3と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号4または配列番号4と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。
【0032】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号3または配列番号3と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号4または配列番号4と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。ただし、前記配列の任意の差異がアミノ酸残基の保存的置換の形態である場合である。
【0033】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号3またはCDRが改変されていない場合、配列番号3と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号4またはCDRが改変されていない場合、配列番号4と90%を超える配列同一性のある配列とを含む。
【0034】
一実施形態において、抗原結合ドメインは、配列番号3または配列番号3と95%を超える配列同一性のある配列3と、配列番号4または配列番号4と95%を超える配列同一性のある配列とを含む。ただし、前記配列の任意の差異がアミノ酸残基の保存的置換の形態である場合である。
【0035】
用語「保存的アミノ酸置換」は、本明細書に使用されるとき、1のアミノ酸残基が同様の側鎖を有する他のアミノ酸残基と置換されたアミノ酸置換を表す。同様の側鎖を有するアミノ酸は、同様の特性を有する傾向があり、したがってポリペプチドの構造または機能に重要なアミノ酸の保存的置換は、同じ位置の非保存的アミノ酸置換よりあまりポリペプチド構造/機能に影響を与えないことが予期され得る。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義され、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、保存的アミノ酸置換は、特定のアミノ酸残基が同じファミリー内の異なるアミノ酸残基と置換される置換であると考えられ得る。
【0036】
新規なキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。本明細書のCARが免疫細胞の表面に発現されるとき、そのような免疫細胞は医薬に使用され得る。特に、前記免疫細胞は骨肉腫の治療に使用され得る。一実施形態において、前記免疫細胞は転移性骨肉腫の治療に使用され得る。
【0037】
本開示におけるCARは上述のように任意の抗原結合ドメインを含み得る。特に、本開示におけるCARは上述のようにCD8αヒンジに連結された任意の抗原結合ドメインを含み得る。特に、本開示におけるCARは上述のようにCD8αヒンジに連結された任意の抗原結合ドメインを含み得、CARはさらに膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BBとOX40とから選択される1つの共刺激ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインとを含むか、またはそれらからなる。
【0038】
特定の一実施形態において、CARは、TP1 scFv-断片またはTP3 scFv-断片を含む抗原結合ドメインと、抗原結合ドメインに連結されたCD8αヒンジドメインと、ヒンジドメインに連結された膜貫通ドメインと、膜貫通ドメインに連結されたCD3ζシグナル伝達ドメインおよび4-1BB共刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
【0039】
2つのCARの有効性および安全性が実施例において実証された。OSCAR1と呼ばれる1つのCARは、N末端からC末端へ配列番号1-配列番号9-配列番号2-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8からなる。OSCAR3と呼ばれる他のCARは、N末端からC末端へ配列番号3-配列番号9-配列番号4-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8からなる。OSCAR1およびOSCAR3の概略的な構造は、図11に視覚化される。
【0040】
抗原結合ドメインは、直接的に膜貫通ドメインに付く場合がある。しかしながら、CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、したがって、抗原結合ドメインの立体構造に影響を与え得る。これはひいては標的エピトープに結合してその後免疫細胞にシグナル伝達を引き起こすCARの能力に影響を与える。標的エピトープが標的細胞の細胞膜から遠すぎる位置にある場合または標的エピトープがその他隠されている場合、CARを発現する免疫細胞は効率的ではない場合がある。したがって、標的エピトープがCARを発現する免疫細胞にとって十分にアクセス可能であることが好ましい。本明細書に開示されるCARにおいて配列番号5で表されるCD8αヒンジドメインは、抗原結合ドメインが標的エピトープに結合することを可能にし、かつ、それを発現する免疫細胞の活性化を可能にすることが分かった。抗原結合ドメインの同様の立体配座が可能であれば、他のCD8αヒンジもまた、機能する場合がある。特に、そのようなヒンジは配列番号5で表されるCD8αヒンジとおおよそ同じ数のアミノ酸残基を含み得る。特に、CD8αヒンジは、配列番号5またはそれと90%を超える配列同一性のある配列によって表され得る。一実施形態において、ヒンジドメインはCD28からではない。
【0041】
本明細書に使用されるとき、「X%配列同一性」は、blastpアルゴリズムでのBLAST(登録商標)によってアラインメントして比較したとき、2つの配列間でX%のアミノ酸残基が同一であることを意味する。
【0042】
膜貫通ドメインは、細胞外ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。抗原結合ドメインおよびヒンジドメインの両方は、細胞外ドメインであり、すなわち免疫細胞の細胞膜に発現されたとき、それらは一般に細胞外環境に面する。本明細書に使用されるとき、「膜貫通ドメイン」は、免疫エフェクター細胞によって発現されたとき、細胞膜に埋め込まれる傾向があるCARの部分を意味する。適切な膜貫通ドメインは当業者に良く知られている。特に、CD8α、CD28またはICOSからの膜貫通ドメインが使用され得る。一実施形態において、膜貫通ドメインはCD28からではない。膜貫通ドメインは、抗原結合ドメインによる標的結合時に免疫細胞内にシグナルを伝達すると考えられている。配列番号6で表されるCD8α膜貫通ドメインは標的結合時に免疫細胞内へのシグナル伝達を可能にすることが分かった。
【0043】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、CARが細胞膜に発現されているとき、免疫細胞の内側に配置されるCARの部分を表す。これらのドメインは、標的結合時にシグナルを伝達することに関与する。様々なシグナル伝達ドメインが知られ、それらは免疫細胞内の内在性シグナル伝達機構に適合するように組み合わされ、適応され得る。
【0044】
一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζ、FcR-γ、CD3εなどから入手可能なシグナル伝達ドメイン様の「シグナル1」ドメインを含む。一般に、「シグナル1」ドメイン(例えば、配列番号8で表されるCD3ζシグナル伝達ドメイン)は、抗原結合時にシグナルを伝達すると考えられている。
【0045】
別の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激ドメインを含む。そのようなドメインは良く知られ、「シグナル2」ドメインとしばしば呼ばれ、それらは「シグナル1」ドメインに続いて共刺激分子を介してシグナルを伝達すると考えられている。「シグナル2」は、シグナルの維持および細胞の生存にとって重要である。第1世代のCARのように「シグナル2」がない場合、リダイレクトされた細胞は、殺傷や初期のサイトカイン放出に効果的であり得るが、時間の経過とともに使い果たされることがよくあるであろう。そのような一般に使用される「シグナル2」ドメインの例には、4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン、およびICOSシグナル伝達ドメインが含まれる。
【0046】
特に、本明細書のCARを発現する細胞傷害性免疫細胞は、細胞内シグナル伝達ドメインがCD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号8)および4-1BB共刺激ドメイン(配列番号7)を含むかまたはそれらからなるとき、OSモデルにおいてインビボで効果を提供することが見出された。
【0047】
本明細書のCARを発現する免疫細胞は、白血球分離または他の適切な方法によって患者または互換性のあるドナーから単離され得る。そのような初代細胞は、例えば、T細胞またはNK細胞であり得る。特に、自己T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞の両方またはこれらの混合物)は、それらの細胞が含まれる医薬組成物が患者に戻されて投与される前にCARをコードする核酸で形質導入され得る。CARを発現する免疫細胞はまた、NK-92細胞のように臨床使用に適切な細胞株であり得る。もちろん、意図された患者がヒトであるとき、好ましい細胞はヒトである。しかしながら、OSはまた犬も罹患するので、本明細書のCARを発現するイヌ細胞は、犬のOSの治療に使用され得る。
【0048】
本明細書の医薬組成物は、治療力のある細胞を患者に投与するために適切な任意の組成物であり得る。CAR T細胞の最も一般的な投与ルートは、静脈内投与である。したがって、前記医薬組成物は例えば、中性pHの滅菌水溶液であり得る。例えば、患者の末梢血単核細胞は標準的な白血球分離手順によって得られる場合がある。単核細胞は、CARをコードするレンチウイルスベクターまたはmRNAで形質導入する前にT細胞で富化され得る。前記細胞は、その後、抗CD3/CD28抗体でコーティングされたビーズで活性化され得る。形質導入されたT細胞を細胞培養で拡大培養し、洗浄し、滅菌懸濁液中に製剤してよく、それは凍結保存することができる。そのようにした場合、製品は投与前に解凍される。
【0049】
骨肉腫の標的部位におけるCAR T細胞の効率的なアクセスに関連する1つの問題は、固形腫瘍からの防御を回避することである。血液悪性腫瘍とは対照的に、固形腫瘍の認識には血液から腫瘍部位へ出ることを必要とし、T細胞浸透が積極的に妨げられるように多くの悪性腫瘍は発達する。腫瘍が局在化している状況では、有効性を改善するために異なる投与方法が使用され得る。例えば、CAR T細胞の全身投与ではなく局部的な投与は、有効性を促進する場合がある。
【0050】
医薬組成物は、本明細書の薬学的に有効量の免疫細胞を含み得る。薬学的な有効量は、例えば、1×10から1×10個の範囲のCARを発現する免疫細胞であり得る。薬学的な有効量は、例えば、1×10から5×10個の範囲のCARを発現するT細胞であり得る。
【0051】
免疫細胞におけるクレームされたCARの効率的な発現のために、細胞膜への局在化を容易にするため従来のリーダーペプチド(すなわちシグナルペプチドまたはL鎖)がN末端に導入され得る。リーダーペプチドはトリミングされて細胞膜の機能的なCARには存在していないであろうと考えられている。リーダーペプチドが配列番号10で表されるとき、本明細書のCARをコードする核酸は正常に転写され、CARは正常に細胞膜に移動することが見出された。これは図1に示されている。クレームされたCARをコードする核酸は、良く知られている例えば、mRNAなどのRNA、または例えば、レトロウイルスベクターなどのDNA発現ベクターである。しかしながらTP3 scFvを含むCAR(例えば、OSCAR3)は、TP1 scFvを含む他は同一のCAR(例えば、OSCAR1)より、それらをコードするmRNAで形質導入されたT細胞において良好に発現されることが分かった。したがって、TP3 scFvを含むCARはmRNA形質導入で免疫細胞において一過的に発現させるために好ましいであろう。特に、OSCAR3をコードするmRNAは、T細胞における一過的な発現に好ましい場合がある。mRNA形質導入によるCARの一過的な発現は、レトロウイルスのCAR発現系と比較して安全性の利点を有する。
【0052】
TP1 scFv(例えば、OSCAR1)を含むCARは、侵攻性の転移性OSモデルにおいて改善された長期生存を提供することも分かった。したがって、TP1 scFvを含むCARは、免疫細胞におけるレトロウイルス発現に好ましい場合がある。特に、OSCAR1をコードするレトロウイルスのベクターは、T細胞における長期的な発現に好ましい場合がある。
【0053】
一実施形態において、核酸は、L鎖-VL-リンカー-VH-CD8αヒンジドメイン-CD8α膜貫通ドメイン-4-1BB共刺激ドメイン-CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする。一実施形態において、核酸はL鎖-VH-リンカー-VL-CD8αヒンジドメイン-CD8α膜貫通ドメイン-4-1BB共刺激ドメイン-CD3ζシグナル伝達ドメインをコードする。一実施形態において、骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、本明細書に記載されるように抗原結合ドメインはTP1scFv-断片である。一実施形態において、TP1 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP1 VLおよびTP1 VHを含む。
【0054】
特定の一実施形態において、骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号1および配列番号2を含み、前記CARは、CD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0055】
一実施形態において、骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、本明細書に記載されるように抗原結合ドメインはTP3 scFv-断片である。一実施形態において、TP3 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP3 VLおよびTP3 VHを含む。
【0056】
特定の一実施形態において、骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号3および配列番号4を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0057】
一実施形態において、転移性骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、本明細書に記載されるように抗原結合ドメインはTP1 scFv-断片である。一実施形態において、TP1 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP1 VLおよびTP1 VHを含む。
【0058】
特定の一実施形態において、転移性骨肉腫の治療に使用されるCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号1および配列番号2を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0059】
一実施形態において、転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、本明細書に記載されるように抗原結合ドメインはTP3 scFv-断片である。一実施形態において、TP3 scFv-断片はペプチドリンカーによって連結されたTP3 VLおよびTP3 VHを含む。
【0060】
特定の一実施形態において、転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号3および配列番号4を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0061】
特定の一実施形態において、転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは、配列番号3またはそれと80%を超える配列同一性のある配列、および、配列番号4またはそれと80%を超える配列同一性のある配列を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0062】
一実施形態において、微小転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは本明細書に記載されるようにTP1 scFv-断片を含む。一実施形態において、TP1 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP1 VLおよびTP1 VHを含む。
【0063】
特定の一実施形態において、微小転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号1および配列番号2を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0064】
一実施形態において、微小転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは本明細書に記載されるようにTP3 scFv-断片を含む。一実施形態において、TP3 scFv-断片は、ペプチドリンカーによって連結されたTP3 VLおよびTP3 VHを含む。
【0065】
特定の一実施形態において、微小転移性骨肉腫の治療に使用するためのCARを発現する薬学的に有効量のT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号3および配列番号4を含むscFvであり、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0066】
特定の一実施形態において、ヒト患者において転移性骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のヒトT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは、配列番号1または、CDRが改変されていない場合、配列番号1と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2または、CDRが改変されていない場合、配列番号2と90%を超える配列同一性のある配列2とを含み、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0067】
特定の一実施形態において、ヒト患者において転移性骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のヒトT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号3またはCDRが改変されていない場合、配列番号3と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号4またはCDRが改変されていない場合、配列番号4と90%を超える配列同一性のある配列とを含み、前記CARはCD8αヒンジドメインと、CD8α膜貫通ドメインとを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインとを含む。
【0068】
特定の一実施形態において、犬の骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のイヌT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号1またはCDRが改変されていない場合、配列番号1と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号2またはCDRが改変されていない場合配列番号2と90%を超える配列同一性のある配列とを含み、前記CARはCD8αヒンジドメインおよび膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0069】
特定の一実施形態において、犬の骨肉腫の治療に使用するための、CARを発現する薬学的に有効量のイヌT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物が提供され、抗原結合ドメインは配列番号3またはCDRが改変されていない場合、配列番号3と90%を超える配列同一性のある配列と、配列番号4またはCDRが改変されていない場合、配列番号4と90%を超える配列同一性のある配列とを含み、前記CARはCD8αヒンジドメインおよびCD8α膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインは4-1BB共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0070】
局所OSと診断された多くの患者はOS転移を発症する。転移性OSは、最初に罹患した骨から、起源の部位から離れている身体内の1つ以上の部位に広がった骨肉腫である。検出可能なOS転移は一次診断時に大半の患者で存在する。そのような検出された肺転移の外科的切除にもかかわらず、任意の残っている微小転移は、その後の再発、および最終的には死を引き起こし得る。OS微小転移は、検出された肺転移の外科的切除後、大半の患者で存在すると考えられている。微小転移性腫瘍はその小さいサイズのために、現在の手順によってはほとんど検出できず、それゆえ名前が微小転移性OSである。しかしながら、静脈内注射時に、本明細書のCARを発現する免疫細胞は肺に移動し、そのような微小転移性腫瘍に浸透し得る。特に、OS微小転移性腫瘍においてCAR T細胞が正常にその標的に結合したとき、T細胞は正常に活性化し、細胞傷害性効果が引き起こされ得る。本明細書に開示される医薬組成物は、したがって、転移性OSおよび/または微小転移性OSの代替療法を提供し得る。
【0071】
特定の一実施形態において、
a)TP1 scFv-断片を含むCARをコードするウイルスベクターでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を骨肉腫と診断された患者に投与するステップ
とを含む骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0072】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR1をコードするウイルスベクターでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を骨肉腫と診断された患者に静脈内投与するステップ
とを含む骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0073】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR1をコードするウイルスベクターでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を転移性骨肉腫と診断された患者に静脈内投与するステップ
とを含む転移性骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0074】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR1をコードするウイルスベクターでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を転移性骨肉腫と以前に診断された患者であって、現在、検出可能な転移は検出されていない患者に投与するステップ
とを含む微小転移性骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0075】
特定の一実施形態において、
a)TP3 scFv-断片を含むCARをコードするmRNAでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を骨肉腫と診断された患者に投与するステップ
とを含む骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0076】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR3をコードするmRNAでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を骨肉腫と診断された患者に投与するステップ
とを含む骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0077】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR3をコードするmRNAでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を転移性骨肉腫と診断された患者に投与するステップ
とを含む転移性骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0078】
特定の一実施形態において、
a)OSCAR3をコードするmRNAでNK細胞および/またはT細胞の集団に形質導入するステップと、
b)ステップa)からの細胞を含む医薬組成物を以前に転移性骨肉腫と診断された患者であって、現在、検出可能な転移は検出されていない患者に投与するステップ
とを含む微小転移性骨肉腫の治療の方法が提供される。
【0079】
【表1】

実施例
実施例1
CAR設計
2つの新規な第2世代のCARをpENTRベクター(Invitrogen)にクローニングし、Gateway系の互換性のある発現ベクター、レトロウイルスのコンストラクトpMP71、およびmRNA合成コンストラクトpCIpA102に、我々の以前の出版物(Walchliら、PLoS One.2011;6(11):e27930、および、Inderberg E.M.、Walchli S.(2019) Chimeric Antigen Receptor preparation from hybridoma to T-cell expression. Antibody Therapeutics、Volume2、Issue2、April 2019、ページ56~63)にしたがって、組換えによってさらにサブクローニングした。
【0080】
ベクターにコードされたCAR配列は、L鎖-VL鎖-リンカー-VH鎖-CD8αヒンジドメイン-CD8α膜貫通ドメイン-4-1BB共刺激ドメイン-CD3ζシグナル伝達ドメインであった。
【0081】
したがって、OSCAR1を発現するベクターは、配列番号10-配列番号1-配列番号9-配列番号2-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8をコードしていた。
【0082】
OSCAR3を発現するベクターは、配列番号10-配列番号3-配列番号9-配列番号4-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8をコードしていた。
実施例2:
CAR発現
実施例1からのOSCAR1およびOSCAR3のレトロウイルス粒子を調製し、良く知られている方法(Walchliら、PLoS One.2011;6(11):e27930)によって、健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から単離された初代T細胞に形質導入した。48時間後、抗マウスFab抗体(抗CAR)を使用したフローサイトメトリーでCARの存在を分析した。結果は図1に含まれる。
【0083】
以下の実施例において、OSCAR1またはOSCAR3を発現するT細胞を形質導入していないT細胞(モック)と比較している。いくつかの図において、T細胞を省略してTcと書く。したがって「OSCAR1 Tc」および「Tc OSCAR-1」の両方は、OSCAR1を発現するT細胞を表す。したがって「OSCAR3 Tc」および「Tc OSCAR-3」の両方は、OSCAR3を発現するT細胞を表す。
【0084】
実施例3
インビトロでのCAR機能(殺傷およびサイトカイン放出)
T細胞単独(モック)、OSCAR1を発現するT細胞、およびOSCAR3を発現するT細胞を示された標的細胞と24時間インキュベートした。上清をその後採取し、BioPlexによってサイトカインの存在を検出した。示されるように、OSCARリダイレクト細胞は、特定の刺激時にTNFαおよびIFNγの放出に対して強く活性化された。
【0085】
インビトロでの標的細胞株の殺傷:
OSCAR1またはOSCAR3を発現するT細胞を骨肉腫細胞株(OHS、SAOS-2、OSA)と20時間インキュベートすることによってインビトロでの標的細胞株の殺傷を実証した。全ての標的細胞はGFPに融合されたルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現し、公知の方法(Walsengら、Sci Rep.2017 Sep 6;7(1):10713)によってルシフェラーゼ基質を添加時のルシフェラーゼの存在を使用して細胞殺傷を検出した。標的細胞におけるルシフェラーゼシグナルの変動を測定することによって(BLIアッセイ)T細胞殺傷を監視した。結果を図3a、3bおよび3cに示す。
【0086】
実施例4
インビボでのCAR機能(異種移植モデル)
CAR有効性の評価のために、ヒト骨肉腫細胞株がマウスに移植された動物モデルを使用した。ルシフェラーゼ遺伝子を発現する10個のOHS細胞を腹腔内注射によって移植を行った。腫瘍が触知可能になったとき、マウスを無作為抽出し、OSCAR1リダイレクトT細胞またはOSCAR3リダイレクトT細胞か、またはリダイレクトされていないT細胞で処理したか、またはしなかった。10×10個のT細胞の3つの注射を行い、腫瘍増殖をIVIS(ルシフェラーゼシグナル検出)によって監視した。加えて、マウスの生存率も研究した。条件:マウス5匹/群、N=2。
【0087】
図4aは、本処理のプロトコルおよびタイムラインを示す。図4bは、左に示されるように処理されたマウスの一例示的なIVIS画像(これは20日目)である。示されるように、OSCAR1およびOSCAR3処理された動物は、20日目において非常に低いか検出不可能な腫瘍負荷を示した。図4cは各動物のルシフェラーゼシグナルのスパイダープロットであり、OSCARコンストラクトが腫瘍発症を制御し得ることが示された。これは、OSCAR1で処理した動物の80%がエンドポイントにおいて生存することを示す図4dの生存曲線(カプラン・マイヤー)と一致する。OSCAR3で処理した動物は、モックおよび生理食塩水で処理した動物より良好に生存し、生存曲線に関してはOSCAR1動物と統計的に異ならなかった。
【0088】
実施例5
インビボでのCAR機能(異種移植モデル)
図5aに示されるように、我々はまた、OSA(ルシフェラーゼ+)細胞株をnod-scidマウスに静脈内(iv)注射した肺転移腫瘍モデルを使用した。この細胞株は肺でコロニーを形成し、約25~30日後動物の死につながる侵攻性腫瘍を確立した。4日後、腫瘍負荷は肺で検出可能であり、マウスを無作為抽出し、OSCAR T細胞で処理した。10個のOSCARリダイレクトT細胞でマウスを4回注射し、IVISによって腫瘍進行を分析した。示されるように、モックまたは培地で処理した動物と比べてOSCAR1およびOSCAR3によって、腫瘍増殖は、より長い期間制御されたが、動物は最終的には腫瘍を発症した。カプランマイヤー曲線によって、統計的にこの保護効果が確かめられたが、この侵攻性モデルにおいて動物をレスキューすることはできなかった。
【0089】
実施例6
CAR安全性
CAR療法は危険な療法としてみなされ得る。これは主に、所与のコンストラクトが健康な組織に対して有し得る予測不可能な標的化のためである。OSCAR1およびOSCAR3の特異性を試験するために、造血細胞に対する一連の試験を行った。アッセイは、肝細胞の源としての、ドナーからの骨髄の単離からなる。同じドナーからの血液を取り、T細胞を単離し、肝細胞と共にインキュベートする前に興味の対象であるCARで改変した。その後、各タイプの血液前駆体を拡大培養するためにコロニーを異なる培地で増殖させた。コロニーが視認可能になったとき、それらを数え、対照と比較した。
【0090】
2人のドナーからのT細胞を示されるCARコンストラクトでエレクトロポレーションまたはモックでエレクトロポレーションした。図6aに示されるように、OSCAR1またはOSCAR3のいずれもコロニー形成に影響を及ぼさず、それらの標的が血液前駆細胞に存在しないことを示唆している。我々は、安定的にOSCAR1またはOSCAR3を発現している自己T細胞を使用したとき、これらのデータを確かめ、この場合もまた、統計的な影響は検出されず(図6b参照)、OSCARが造血幹細胞を殺傷しないことが示唆された。
【0091】
実施例7
写真が示されている実施例5と同じ実験によって(図7参照)、対照動物(*)において骨転移の存在が実証されたが、OSCAR処理された動物では腫瘍発症の制御が実証された。
【0092】
実施例8
実施例7に基づくカプラン・マイヤー生存曲線は、OSCAR1およびOSCAR3の両方は肺における腫瘍増殖を制御することができ、それゆえ動物の生存を延長することを実証する(図8参照)。OSAは非常に侵攻性である細胞株(Lauvrakら、Br J Cancer. 2013 Oct 15;109(8):2228-2236)であり、この実験はそのようなモデルにおけるCAR T細胞の有効性を最初に実証したものであり得ることに注意されたい。
【0093】
実施例9
我々は代替的なあまり侵攻性でない肺転移腫瘍モデルを使用した。Nod-scidマウスに、インビトロでOSCAR1およびOSCAR3によってまた認識されるLM-7(ルシフェラーゼ+)細胞株を静脈内(iv)注射し、OSAより遅く肺転移を形成させた。iv注射後、この細胞株は肺でコロニー形成し、約40~50日後に動物を死に至らせる侵攻性の腫瘍を確立する。処理5日後にマウスを無作為抽出し、OSCART細胞で処理した。マウスを10個のOSCARリダイレクトT細胞で4回iv注射し、腫瘍進行をIVISで分析した。図9に示されるように、腫瘍増殖はモックと比較してOSCARによって制御され、形質導入された細胞の良好な有効性を支持している。
【0094】
実施例10
5000個の骨肉腫細胞(OHS細胞株)由来の腫瘍スフェロイドを7日間成長させ、蛍光生細胞顕微鏡によって監視した(GFP=白)。T細胞(モックまたはOSCAR発現)を追加し、写真を定期的に撮影し、GFPシグナルを分析した。図10に示されるように、OSCAR1またはOSCAR3のいずれかを発現するT細胞は、スフェロイド内部の腫瘍を殺傷することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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