(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】立体物印刷システム及び立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2021542027
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022868
(87)【国際公開番号】W WO2021039024
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019156844
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501148012
【氏名又は名称】株式会社ウィルビイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】太田 眞
(72)【発明者】
【氏名】森口 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187915(JP,A)
【文献】特開2010-131879(JP,A)
【文献】特開2008-62634(JP,A)
【文献】特開2015-134410(JP,A)
【文献】特開2018-1571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の立体物を載置する印刷テーブルであって、複数の検出基準マークを有する印刷テーブルと、
少なくとも一つの前記検出基準マークの全部が隠れるとともに、他の少なくとも一つの前記検出基準マークの一部が隠れるように載置した前記立体物の位置および向きと、前記検出基準マークとを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記立体物の位置及び向きと前記検出基準マークとに基づいて、前記各立体物に対応させた印刷データを生成する印刷データ生成手段であって、
前記複数の立体物同士の隙間から露出する前記検出基準マークの一部に基づいて、前記検出基準マークの基準座標を求める印刷データ生成手段と、
前記印刷データ生成手段で生成された前記印刷データにより、前記各立体物への印刷を実行する印刷手段と、
を有する、立体物印刷システム。
【請求項2】
前記立体物を前記検出基準マークの一部の上に載置した状態で、前記印刷手段は前記立体物への印刷を実行する、
請求項1に記載の立体物印刷システム。
【請求項3】
前記立体物を載置する固定治具を更に有し、
前記印刷テーブルは、前記固定治具を介して、複数の前記立体物を載置し、
前記印刷データ生成手段は、前記固定治具の高さを考慮して、前記印刷データを生成し、
前記固定治具を前記検出基準マークの一部の上に載置した状態で、前記印刷手段は前記立体物への印刷を実行する、
請求項1に記載の立体物印刷システム。
【請求項4】
前記検出基準マークは円形であり、
前記印刷データ生成手段は、前記検出手段が検出した前記検出基準マークの輪郭画像と、予め格納した前記検出基準マークの円弧形状の情報との一致度に基づいて、前記検出基準マークの前記基準座標を求める、
請求項1~3の何れかに記載の立体物印刷システム。
【請求項5】
前記検出基準マークは、
前記立体物の輪郭情報の一部と前記検出基準マークの一部の画像情報が誤判定されないように、前記立体物の輪郭情報に基づいて、前記印刷手段によって前記印刷テーブル上に形成される、
請求項1
~4の何れかに記載の立体物印刷システム。
【請求項6】
複数の検出基準マークを有する印刷テーブル上に、
少なくとも一つの前記検出基準マークの全部が隠れるとともに、他の少なくとも一つの前記検出基準マークの一部が隠れるように複数の立体物を載置し、
前記立体物の位置および向きと、前記検出基準マークとを検出手段で検出し、
検出された前記立体物の位置および向きと前記検出基準マークとに基づいて
、印刷データ生成手段が前記立体物に対応させた印刷データを生成し、
前記印刷データにより、印刷手段が前記立体物への印刷を実行する、
立体物印刷方法。
【請求項7】
前記複数の立体物同士の隙間から露出する前記検出基準マーク
の一部に基づいて、印刷データ生成手段が前記検出基準マークの基準座標を求める、
請求項6に記載の立体物印刷方法。
【請求項8】
前記立体物の輪郭情報の一部と前記検出基準マークの一部の画像情報が誤判定されないように、前記立体物の輪郭情報に基づいて、前記印刷手段は、前記検出基準マークを前記印刷テーブル上に印刷する、
請求項6又は7に記載の立体物印刷方法。
【請求項9】
複数の前記立体物は、固定治具を介して印刷テーブル上に載置され、
前記固定治具の高さを考慮して、前記印刷データを生成する、
請求項6~8の何れかに記載の立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷システム及び立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物上に画像を印刷する従来の立体物印刷装置は、インクジェット式の記録ヘッドと、立体物の側面を記録ヘッドのノズル面に対向させた状態で立体物を回転可能に支持する立体物支持部とを有する。立体物支持部によって立体物を回転させながら、記録ヘッドによって立体物の側面に画像を印刷する(例えば、特開2006-335019号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の立体物印刷装置では、立体物支持部は単一の立体物を回転するため、複数の立体物への印刷を行う場合の生産効率が低い。
【0004】
そこで、立体物の回転制御が不要で、また固定治具を用いることなく高精細な印刷を行う立体物印刷システムが提案されている。
具体的には、印刷テーブル上に載置した各立体物の位置および向きを検出し、検出結果に基づいて各立体物に対応させた印刷データを生成し、生成された印刷データにより、各立体物への印刷を行う立体物印刷システムが提案されている。
【0005】
しかし、上述の立体物印刷システムでは、例えば検出基準マークと立体物の位置情報から正確な印刷データを生成するため、検出基準マークを立体物が隠すような位置に立体物を載置できない。
そのため、立体物の大きさと読み取りエリアの大きさとの関係で、立体物を印刷テーブルに高密度で配置できない場合がある。このとき、1回で印刷できる立体物の数量が限定され、印刷効率が低下する。
【0006】
また、立体物を印刷テーブルに高密度で配置できる場合も、検出基準マークを隠さないように立体物を配置する必要がある。そのため、立体物を印刷テーブル上に配置する際の手間が掛かり、生産効率が低下する。
【0007】
本発明は、立体物を印刷テーブルに高密度で配置し、印刷効率を向上できる立体物印刷システム及び立体物印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、
複数の立体物を載置する印刷テーブルであって、複数の検出基準マークを有する印刷テーブルと、
前記印刷テーブル上に載置した前記立体物の位置および向きと、前記検出基準マークとを検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記立体物の位置及び向きと前記検出基準マークとに基づいて、前記各立体物に対応させた印刷データを生成する印刷データ生成手段であって、複数の前記検出基準マークの一部に基づいて、前記検出基準マークの基準座標を求める印刷データ生成手段と、
前記印刷データ生成手段で生成された印刷データにより、前記各立体物への印刷を実行する印刷手段と、
を有する、立体物印刷システムである。
【0009】
本発明の第2の観点は、
複数の検出基準マークを有する印刷テーブル上に、複数の前記検出基準マークのうちの一部が隠れるように複数の立体物を載置し、
前記立体物の位置および向きと、前記検出基準マークとを検出手段で検出し、
検出された前記立体物の位置および向きと前記検出基準マークとに基づいて、印刷データ生成手段が前記立体物に対応させた印刷データを生成し、
前記印刷データにより、印刷手段が前記立体物への印刷を実行する、
立体物印刷方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の立体物印刷システム及び立体物印刷方法によれば、立体物を印刷テーブルに高密度で配置し、印刷効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】立体物印刷システムの全体構成を示す機能ブロック図
【
図3】(a)、(b)は、パターンマッチングで検出基準点を発見する手順を示す説明図
【
図4】(a)~(c)は、印刷データの生成手順の例を示す説明図
【
図5】比較例の立体物印刷システムの検出基準マークおよび立体物の載置例を示す平面図
【
図6】(a)、(b)は、検出基準マークの形成例を示す平面図
【
図8】(a)、(b)は、検出基準マークから中心点を求める例を示す説明図
【
図9】(a)、(b)は、検出基準マークから中心点を求める他の例を示す説明図
【
図10】(a)、(b)は、検出基準マークから中心点を求める他の例を示す説明図
【
図12】(a)、(b)は、検出基準マークの他の構成例を示す説明図
【
図13】(a)、(b)は、検出基準マークによって、基準点を決定する手法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略される。なお、本発明は実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(実施形態)
図1および
図2を参照して、実施形態の立体物印刷システムS1の構成例について説明する。
図1は、実施形態の立体物印刷システムS1の全体構成を示す機能ブロック図である。
図2は、立体物印刷システムS1の構成例を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、立体物印刷システムS1は、印刷テーブルTと、検出手段101と、印刷データ生成手段102と、印刷手段103と、制御手段104と、を有する。印刷テーブルTには、印刷対象である複数の立体物10が載置される。検出手段101は、印刷テーブルT上に載置した各立体物10の位置および向きを検出する。印刷データ生成手段102は、検出手段101による検出結果に基づいて、各立体物10に対応させた印刷データを生成する。印刷手段103は、印刷データ生成手段102で生成された印刷データにより、各立体物10への印刷を実行する。印刷手段103は、例えば、フラットベッド型のUVインクジェットプリンタである。制御手段104は、検出手段101、印刷データ生成手段102および印刷手段103の動作を制御する。
【0015】
検出手段101は、例えば、光学センサ(3次元センサ)200である。光学センサ200は、印刷テーブルTに載置された各立体物10の3次元の姿勢情報を取得する。
印刷テーブルTには、光学センサ200で検出可能な検出基準マークm(m1、m2)が形成される。検出基準マークm(m1、m2)の具体例については、
図6等を参照して後述する。
複数の検出基準マークm(m1、m2)は、印刷テーブルTに設定される所定の読取エリアA10内において、検出手段101によって検出可能である。
【0016】
なお、光学センサ200は、XYスライダ301によって移動可能である。そのため、
図2に示すように、プリンタの筐体300の内部に配置された印刷テーブルTに対する光学センサ200の視野Bも移動可能となる。
【0017】
立体物10を印刷テーブルT上に任意に載置した際に、検出手段101により、複数の立体物10同士の隙間を介して検出基準マークm(m1、m2)の一部又は全部を検出可能に、検出基準マークm(m1、m2)の形状、大きさ、位置および数が設定される。
検出基準マークm(m1、m2)は、例えば、直径約3mm~30mm程度の円形で、検出手段101の視野内に3つ以上である。
図6に示す例では、検出手段101の視野内に23個の円形の検出基準マークmを設ける。
【0018】
なお、検出基準マークm(m1、m2)は、印刷手段103によって印刷テーブルT上に印刷して形成してもよい。これにより、立体物10の大きさや数等の状況に応じて、形状、大きさ、位置および数に変更した検出基準マークm(m1、m2)を印刷できる。
【0019】
検出基準マークmの好ましい大きさは、印刷テーブルTの大きさと印刷対象物の立体物10、500の大きさと、検出手段101の視野の大きさによって異なる。
例えば、
図6に示す例では、検出手段101の視野の大きさ(1回の画像撮影によって検出する対象エリアの大きさ)が75mm×70mmであり、検出基準マークm(m1、m2)の直径は6mmである。この場合に、円形の検出基準マークmは、直径が約3mm~30mm程度、検出手段101の視野の範囲に3~60個程度の検出基準マークmが配置されることが好ましい。
【0020】
検出基準マークmの形状は、一部の輪郭からでもそのマークの中心点等の基準座標を求めることが可能な円形が最も望ましい。
なお、例えば、
図12(a)に示すような星形マークm3を用いた場合も、
図12(b)に示すように各頂点550を結ぶ円551を想定し、円中心点c2を求めることができる。
【0021】
同様に、円中心点を求め得る形状であれば、検出基準マークmは、円形や星形以外の形状でもよい。例えば、
図4(b)に示す「×」印であっても、その一部が隠されていて、交わる2つの直線の一部が検出できれば、延長線上の交わる位置を演算で求める等して検出基準座標を取得できる。
【0022】
検出手段101は、指示手段105を有する。指示手段105は、立体物10の表面について予め複数の検出ポイントを指示するための表示手段(不図示)と指示ポイント(不図示)を移動および決定指示するマウス等のポインティングデバイスを有する。
【0023】
検出手段101は、各立体物10について指示手段105で指示された検出ポイントの位置および検出基準マークm(m1、m2)の位置を検出する。
制御手段104は、例えば、ワークステーション104A、104Bで構成される。制御手段104は、検出された検出ポイントの位置および検出基準マークm(m1、m2)の位置に基づいて、印刷テーブルT上における各立体物10の位置および回転角を算出する。
【0024】
印刷データ生成手段102は、ハードウェアとしてのワークステーション104Bおよび所定のデータ処理ソフトウェア等で構成される。
印刷データ生成手段102は、第1生成手段102Aと、第2生成手段102Bとを有する。第1生成手段102Aは、制御手段104で判定された各立体物10の姿勢と、各立体物10の表面に印刷する描画情報とに基づいて、第1の印刷データ(描画データ)を生成する。第2生成手段102Bは、検出手段101で検出された各立体物10の位置と回転角に応じて、第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成する。
【0025】
なお、光学センサ200は、印刷テーブルTに載置された各立体物10の高さを検出する高さ検出手段をさらに有してもよい。この場合、印刷データ生成手段102は、高さ検出手段で検出された各立体物10の高さ情報に基づいて、第2の印刷データを補正する。
【0026】
また、光学センサ(3次元センサ)200が、印刷テーブルTに載置された各立体物10の3次元の姿勢情報を取得する場合、第1生成手段102Aは、3次元センサによる検出結果に基づいて、第1の印刷データを生成する。第2生成手段102Bは、3次元センサ或いは他の検出手段で取得される各立体物10の位置と回転角に応じて、第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成する。
【0027】
また、検出手段101は、各立体物10の表面への印刷状態を検出する。制御手段104は、印刷状態の検出結果に基づいて、印刷の良否を判定する。
【0028】
(第1生成手段の処理)
ここで、第1生成手段102Aの処理の詳細について説明する。
まず、3DCADデータと、デザインデータとを第1生成手段102Aに入力する。3DCADデータは、立体物10の3次元形状情報を有する。デザインデータは、立体物10の表面に施す彩色および描画に関する情報を有する。
第1生成手段102Aには、3DCADデータに印刷テーブルT上の姿勢情報を含めて入力する。
【0029】
なお、第1生成手段102Aを構成するワークステーション104Bの操作画面上で、3DCADデータから印刷テーブルT上で最も安定する姿勢を指示決定してもよい。
【0030】
次いで、印刷テーブルT上の立体物姿勢情報に対応した3DCADデータと描画情報を合成し、平行光透視像の条件で2次元レンダリングデータを抽出する。
次に、抽出した2次元レンダリングデータと、レンダリングデータに対応する奥行情報から第1の印刷データ(描画データ)を生成する。
【0031】
より具体的には、一般的に印刷装置は平面に2次元データを印刷するので、平面から離れた奥行に対する印刷特性は平面上への印刷特性とは異なる。平面とは異なる奥行印刷特性を予め保存し、保存した特性を参照して、レンダリングデータに対応する奥行情報からの最適な描画データを生成する。
【0032】
例えば、インクジェット印刷装置の場合、インクドロップレットの飛翔特性に応じて、奥行に対する印刷特性が依存する。そこで、比較的遠くの位置へのインクドロップレットの着弾精度が悪くなることによる印刷特性の乱れを補うため、奥行のある輪郭部はレンダリングデータを拡張して最適な描画データとする。
【0033】
(印刷基準に基づく読み取り基準およびパターンマッチング)
デジタルカメラで読み取る立体物10の印刷テーブルT上の位置情報の基準点は、印刷基準と高精度に一致させる必要がある。
そのため、印刷テーブルT上に印刷用シートを固定し、印刷用シート上に
図6に例示するような複数の検出基準マークm1を印刷する。検出基準マークm1との位置関係を撮影情報から決定し、印刷データを生成し、印刷を行う。
【0034】
具体的には、例えば、A3(297mm×420mm)サイズの印刷テーブルT上にテーブルと同等サイズのPETフイルムを固定し、検出マークをエリアA1~A8毎に印刷する(
図4(a)参照)。
図6(a)に示す例では、エリアA10内に、直径6mmの23個の円形の検出基準マークm1が、ほぼ均等な配列で印刷される。
図6(b)に示す例では、エリアA10内に、直径6mmの23個の塗り潰した円形の検出基準マークm2が、ほぼ均等な配列で印刷される。
【0035】
検出手段101で撮影する検出エリアは70mm×75mmであり、このエリア内に23個の検出基準マークm1、m2が配置される。検出基準マークm1、m2の数は、前述の通り、最低3~60程度とすることが好ましい。
また、検出基準マークm1、m2の配列は、特別な規則性は必要ではない。但し、各検出エリアで等しい配列とすることが処理時間の観点では望ましい。
【0036】
検出手段101は、検出基準マークm1、m2をパターンマッチング等で検出し、検出基準マークm1、m2の中心点を求めて、基準点を決定する。
ここで、
図13を参照して、検出基準マークm1、m2によって、基準点(或いは、基準座標)を決定する手法について簡単に説明する。まず、
図13(a)に示すように、各検出基準マークm1には、印刷基準としての座標が予め定義される。例えば、
図13(a)、(b)に示すように、検出手段101によって取得した画像内の3つの検出基準マークm1a~m1cを検出し、この3点m1a~m1cより、印刷データ生成手段102は、読み取りエリアの基準座標軸x、y(
図13(b)参照)を決定する。これにより、読み取りエリア内に載置される立体物の正確な位置を検出できる。このようにして、印刷手段103の印刷基準と検出基準を高精度に一致させる。
【0037】
なお、検出基準マークには印刷基準としての座標が定義されていることから、基準座標を求める行為は、印刷基準としての座標と検出基準マークの位置との関係を結び付けることである。従って、基準座標を求めずに、前記検出基準マークmの一部に基づいて印刷基準としての座標と検出基準マークの位置との関係を結び付けて、立体物10の位置及び向きと検出基準マークの検出結果に基づいて印刷データを生成しても良い。
【0038】
また、デジタルカメラによる撮影情報から各立体物10の位置と回転角(印刷テーブルT平面内での回転角)を高精度で、且つ短時間で決定するために、立体物10の輪郭情報の2か所以上の特徴点を読み取り参照点として指示し、パターンマッチング処理を行う。
例えば、
図3(a)に示すように、予め立体物10の輪郭情報を取得し、2か所の輪郭の特徴点P1、P2を読み取り基準点として指示する。次いで、デジタルカメラの読み取り画像情報からパターンマッチングによって読み取り基準点Q1、Q2を抽出する(
図3(b)参照)。2点の読み取り基準点Q1、Q2を抽出した後に、立体物10の重心位置Cと回転角θ1を決定する。
【0039】
輪郭情報を用いて、
図3(b)、
図4で示すように、立体物10の印刷テーブルT上の位置と姿勢(印刷テーブルTの平面内での回転角θ1)を検出するように、読み取り基準点を2点以上指示する。
図4(a)に示す例では、印刷テーブルTの各エリアA1~A8に、2~3個の立体物10がランダムな方向で載置される。
図4(a)に示す印刷テーブルTのエリアA1~A8の各画像は、例えばA1→A8→A7→A2→A3…のように、検出手段101を往復走査することにより取得する。
【0040】
ここで、エリアA4を例にすると、各立体物10a~10cについて、
図4(a)の脇に示すように、読み取り基準点に基づいて、位置(x1,y1)および回転角(θ1)を決定する(
図4(b)参照)。
なお、
図4(b)における読取り基準点は「×」印で示される。
【0041】
そして、上述のようにして取得した印刷テーブルT上に配置した全ての立体物10の各々の位置と回転角θ1の情報を、第1の印刷データ(描画データ)を生成する第1生成手段102Aに転送する。
【0042】
次いで、第2生成手段102Bにより、各立体物10の位置(x1,y1)および回転角(θ1)に応じて、第1の印刷データに回転処理を施して適正化した第2の印刷データを生成する。
【0043】
なお、第2の印刷データを生成は、読み取り基準点を印刷した際のデータ基準点との位置関係を一致あるいは規定の値とするようにできる。これにより、読み取り判定位置と印刷位置とを高精度に一致できる。
【0044】
また、
図4(a)に示す例では、各立体物10は印刷テーブルTのエリアA1~A8の各エリア内に載置されるが、エリアA1~A8を跨った位置であっても各処理をエリア結合させることで可能となる。
また、立体物もしくは描画データが複数有る場合であっても、本発明の適用により同様に高精度に印刷できる。
【0045】
(比較例)
図5を参照して、比較例の立体物印刷システムの検出基準マークおよび立体物の載置例について説明する。
比較例の立体物印刷システムでは、
図5に示すように、印刷テーブルTには、光学センサ(3次元センサ)で検出可能な検出基準マーク15が四隅に印刷される。そして、検出基準マーク15との位置関係を撮影情報から決定し、印刷データを生成し、印刷を行う。
【0046】
比較例の立体物印刷システムでは、検出基準マーク15と立体物500の位置情報から正確な印刷データを生成するために、検出基準マーク15を立体物500が隠すような位置に立体物500を載置することはできない。そのため、立体物500の大きさと読み取りエリアの大きさとの関係で、立体物500を印刷テーブルTに高密度で配置できない場合がある。そのため、1回で印刷できる立体物500の数量が限定され、印刷効率が低い。
【0047】
(検出基準マークの具体例)
図6から
図11を参照して、本実施形態の立体物印刷システムS1に適用される検出基準マークの具体例等について説明する。
図6(a)、(b)は、本実施形態の立体物印刷システムS1の検出基準マークm1の形成例を示す平面図である。
図7は、立体物印刷システムS1における立体物500の載置例を示す平面図である。
図8(a)、(b)は、検出基準マークm1から中心点を求める例を示す説明図である。
図9(a)、(b)は、検出基準マークm1から中心点を求める他の例を示す説明図である。
図10は、検出基準マークm1から中心点を求める他の例を示す説明図である。
図11は、立体物印刷システムS1における立体物500の他の載置例を示す平面図である。
【0048】
図6(a)、(b)に示すように、印刷テーブルTに設定される所定の読取エリアA10(例えば、70mm×75mm)内には、例えば、直径6mmの円形の検出基準マークm1または塗り潰しの円形の検出基準マークm2が、23個に亘って、ほぼ均等な配列で印刷される。
なお、検出基準マークm1、m2は、任意の色とすることができる。
【0049】
図6(a)、(b)に示す例では、検出基準マークm1、m2の大きさは、例えば直径約6mmである。
検出エリアの面積が、例えば70mm×75mmの場合、3つ以上の検出基準マークm1、m2が、この範囲における検出に必要となる。そのため、検出基準マークm1、m2の直径は、約3mm~30mm程度が好ましく、最大でも約60mm程度とされる。
【0050】
検出基準マークm1、m2の好ましい数は直径に依存する。
即ち、比較的小さい検出基準マークm1、m2の場合、載置する立体物によって多くの輪郭情報が隠される確率が高い。そのため、多数の検出基準マークm1、m2が必要となる。
一方、比較的大きい検出基準マークm1、m2の場合、載置する立体物の隙間から検出基準マークm1、m2の輪郭の一部が見える確率が高い。そのため、検出基準マークm1、m2の数は比較的少なくても、最低3点の基準点を決定するのに必要な輪郭を取得し易い。
【0051】
但し、一部の輪郭からその円の中心点を求める場合、高精度に中心点を求めるには、望ましくは円全周の1/8程度の輪郭情報が必要である。そのため、検出基準マークm1、m2の大きさが直径30mm程度の場合には、数は4~8個が好ましい。
一方、検出基準マークm1、m2の大きさが直径6mmである場合、載置した立体物間の隙間に検出基準マークm1、m2の輪郭が見える確率を上げるため、密度を高めて配置することが望ましい。
【0052】
各検出基準マークm1、m2に定義された座標情報を基準にするため、検出エリアの位置精度(検出手段101の移動精度)に応じて、好ましい間隔を決定する。
例えば、検出エリアの位置精度が±5mmの場合、検出基準マークm1、m2の間隔は約10mm以上とすることが望ましい。従って、検出エリアは70mm×75mmで、検出基準マークm1、m2は、直径6mm程度の場合、設置数は30~50程度が好ましい。
【0053】
このように、検出基準マークm1、m2は、立体物500を印刷テーブルT上に任意に載置した際に、検出手段101により、立体物500同士の隙間から、検出基準マークm1、m2の一部又は全部が検出されるように、形状、大きさ、位置および数が設定される。
検出基準マークm1、m2の形状は円形に限られないが、円形の場合、円の輪郭から中心位置を求め易く、また他の形状に比べて位置特定の精度を保ちや易い。
【0054】
ここで、立体物500が隠していない箇所で検出できる検出基準マークの一部m1a、m1b等から、検出基準マークm1の位置情報を検出する例を
図8および
図9に示す。
図8(a)および
図9(a)に示すように、検出基準マークの円弧の一部m1a、m1bの円弧情報に基づいて、立体物500で隠れている部分の円弧m1a’、m1b’を推定する。そして、円弧の一部m1a、m1bに、円弧m1a’、m1b’を補完して得られる円形の検出基準マークm1について、中心点C1、C2を求める。
このような処理を各検出基準マークについて行うことにより、各検出基準マークm1の中心点C1、C2に基づいて、各立体物500の位置情報を取得する。
【0055】
図10に示す例では、検出手段101で読取った円形マークの輪郭画像m1c~m1eと、予め格納した検出基準マークm1の円弧形状の情報との一致度に基づいて、円形マークm1の中心点C3の座標を算出して求める。
このような処理を各検出基準マークについて行うことにより、各検出基準マークm1の中心点C3に基づいて、各立体物500の位置情報を取得する。
塗り潰しの円形マークm2を用いた場合の処理も同様である。
【0056】
また、立体物の輪郭情報の一部と検出マークの一部の画像情報が類似して誤判定されることが無いように、立体物の輪郭情報に含まれる円弧情報との関係から検出マークの円の大きさ、配置、塗りつぶしの色度情報を決定してもよい。
また、直線の方が立体物の輪郭情報と区別し易い場合もあり、この場合、検出マークは「×」印等の交点を持つ複数の直線とすることが好ましい。
【0057】
全ての検出基準マークm1の位置情報を取得できなくとも、取得できた検出基準マークm1の位置情報と予め定めた規則に従って配列した情報との照合によって、検出基準を取得してもよい。
例えば、
図14に示すように、1つの読み取りエリアA1内に各検出基準マークm1A~m1Mの位置の座標(Xa、Ya)等を予め定める。これにより、2つ以上の検出マークm1A~m1Mの中心点を検出することで、エリアA1内の基準座標軸を決定できる。
【0058】
また、
図11に示すように、検出基準マークm3、m4の色または明度は、立体物500の輪郭コントラストに影響を与えないことが望ましい。
検出基準マークm3、m4は、適当な色(例えば、青色と赤色等)とすることで、検出基準と立体物500の輪郭と共に、正確な画像情報を取得できる。
【0059】
なお、実施形態では、立体物500等は検出基準マークの全てを覆い隠すことの無いように載置されているが、立体物500等の大きさや形状と載置位置や回転角によって検出基準マークの全てを覆い隠す場合には、周辺の読み取りエリアの座標情報を元に当該エリア座標を決定してもよい。
また、読み取りエリアの印刷は禁止する等の処理判断過程を設けてもよい。
【0060】
また、本実施形態において、検出基準マークm(m1~m4)、m2、m3の一部又は全部とは、各検出基準マークm(m1~m4)、m2、m3の一部又は全部を含むほか、複数個から成る検出基準マークm(m1~m4)、m2、m3の内の1個または複数個との概念を含む。
【0061】
また、
図15に示すように、読み取りエリアA1の四隅に、中心点M2(例えばシアン色)と、中心点M2と同心円状の円環部M3(例えば、マゼンタ色)とから成るドーナッツ状の検出基準マークm1Pをそれぞれ配置してもよい。これにより、立体物により高精度の印刷を行うことができる。
尚、上述の説明では、検出基準マークが輪郭で囲まれ中心点を有するが、直線の様な図形の場合、その交点を基準座標とすることもできる。
【0062】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではない。本発明の技術的な範囲は、実施形態の説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
例えば、検出手段101は、バックライトを用いて、立体物10の輪郭情報を取得してもよい。特に立体物10の素材が金属等のように光沢を有する場合、反射照明を用いると輪郭情報を正確に取得できない可能性がある。検出手段101がバックライトによる透過光を用いる場合、金属製の立体物10の輪郭情報を正確に取得できる。
【0064】
また、印刷手段103は、UVインクジェットプリンタに限定されず、種々の印刷方式のプリンタを適用できる。
また、制御手段104は、ワークステーションに限定されず、パーソナルコンピュータ等でもよい。
また、3次元センサに代えて、2次元センサを用いてもよい。
また、印刷テーブルは、無端ベルト等の様に立体物を移送する手段と兼用されているものに本発明を適用してもよい。
【0065】
また、本実施形態では印刷テーブルT上に複数の立体物10を直接載置する構成を説明したが、これに限られるものではない。例えば、印刷テーブルT上の全ての検出基準マークmが覆い隠されることが無いように、印刷テーブルT上に複数の固定治具を配置し、各固定治具に1つ又は複数の立体物10が載置されてもよい。すなわち、1つ又は複数の立体物10が載置された固定治具を用いる場合、複数の検出基準マークmのうち一部の検出基準マークmが固定治具によって覆い隠されてもよい。
ここで、1つの検出基準マークmが固定治具によって完全に覆い隠されてもよいし、1つの検出基準マークmが固定治具によって部分的に覆い隠されてもよい。
なお、固定治具に載置された立体物10は、印刷テーブルTよりも固定治具の高さだけ高い位置に配置される。そのため、印刷データ生成手段102は、固定治具の高さも考慮して、各立体物10の印刷データを生成することが好ましい。
【0066】
また、固定治具(第1固定治具)に検出基準マークmを直接印刷してもよい。ここで、第1固定治具は、より小さいサイズの固定治具(第2固定治具)を固定する凹部を有してもよい。1つ又は複数の凹部は、第1固定治具に印刷された検出基準マークm以外の位置に配置される。各第2固定治具には、1つ又は複数の立体物10が載置される。
このとき、立体物10は、第1固定治具に印刷された検出基準マークmよりも低い位置に配置されてもよい。そのため、印刷データ生成手段102は、検出基準マークmを基準とする立体物10の高さ(深さ)も考慮して、各立体物10の印刷データを生成することが好ましい。
【0067】
また、光学センサ200は、更に、立体物10の凹凸に応じた陰影情報を取得する為に、好ましい陰影が生じる照明手段を有してもよい。光学センサ200は、例えば、立体物10に対して斜め方向から光を照射する照明手段である。照明手段が立体物10に対して斜めから光を照射することにより、立体物10の陰影情報を取得することができる。これにより、印刷テーブルTや固定治具に配置された立体物10の立体姿勢のばらつきを取得することができる。例えば、立体物10の表面が凹凸形状を有する場合、検出基準マークmだけでなく、
図3(a)、
図3(b)を参照して説明した立体物10の輪郭情報に代えて、又は、立体物10の輪郭情報に加えて、立体物10の陰影情報に基づいて、印刷データ生成手段102は、各立体物10の印刷データを生成することができる。これにより、載置された各立体物10の立体姿勢にばらつきが生じたとしても、より高精度の印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
S1 立体物印刷システム
m(m1~m4)、m1P、m2、m3 検出基準マーク
A1~A8 読み取りエリア
T 印刷テーブル
10、500 立体物
101 検出手段
102 印刷データ生成手段
102A 第1生成手段
102B 第2生成手段
103 印刷手段
104 制御手段
105 指示手段
200 光学センサ(3次元センサ)