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特許7455140水素を発生させるための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】水素を発生させるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12P 3/00 20060101AFI20240315BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240315BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240315BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240315BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240315BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20240315BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240315BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20240315BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20240315BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
C12P3/00 Z
C12N1/12
C12N1/20 F
C12M1/00 E
C12M1/00 D
C01B3/02 Z
C01B3/56 Z
C01B3/36
H01M8/0606
H01M8/0612
H01M8/04007
H01M8/04014
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2021560170
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 AU2020050285
(87)【国際公開番号】W WO2020191442
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】2019900999
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521438744
【氏名又は名称】ハイドローブ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,クリスチャン コエーリョ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-097116(JP,A)
【文献】特開平04-334729(JP,A)
【文献】特開2004-057045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるための方法であって、
(i)光合成ステップにおいて、藻類源を使用して、第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換することと、
(ii)好気性生物分解ステップおよび嫌気性生物分解ステップを含む順次ステップを含む生物分解ステップにおいて、細菌を使用して前記有機供給原料を生物分解して、前記有機供給原料を第1の水素ガス流およびガス状副生成物に変換することと
を含み、
前記好気性生物分解ステップが、前記嫌気性生物分解ステップに先立って実施され、
前記好気性生物分解ステップが、バシラス(Bacilli)のクラスの細菌種を使用して前記有機供給原料を生物分解し、第1の生物分解生成物を製造し、
前記嫌気性生物分解ステップが、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)のクラスの細菌種を使用して前記第1の生物分解生成物を生物分解し、第1の水素ガス流を製造する、方法。
【請求項2】
ステップ(ii)のガス状副生成物を捕集することと、前記ガス状副生成物を濾過して、第2の廃二酸化炭素ガス流を単離することとをさらに含み、さらに任意選択により前記第2の廃二酸化炭素流をステップ(i)に移すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)が、光子源が装着された微生物リアクター中で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記嫌気性生物分解ステップに先立って、前記好気性生物分解ステップの生成物の少なくとも一部が、ステップ(i)の前記藻類源と混合される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)が、1つまたは複数の生物分解リアクター中で実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の廃二酸化炭素ガス流が、天然ガスなどの炭化水素源から二次水素ガス流を形成するガス改質装置から発生される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(i)および/または(ii)の温度が、前記ガス改質装置から発生される熱の少なくとも一部を利用することによって調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス状副生成物を濾過して、廃炭化水素ガス流を単離することをさらに含み、前記廃炭化水素ガス流を使用して前記炭化水素源を補完する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の水素ガス流が前記ガス改質装置から発生される前記二次水素ガス流を補完する、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(i)および/または(ii)で発生したバイオマス廃棄物流を捕集することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(i)およびステップ(ii)が同じリアクターで生じることができる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光合成ステップに送達される二酸化炭素の濃度が最大で約50%までの範囲、任意選択で8%~20%の範囲となるように、前記第1の廃二酸化炭素ガス流の二酸化炭素を他のガスと混合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記藻類源がクロレラ(Chlorella)属の種を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記好気性生物分解ステップに用いる前記細菌種がバシラス(Bacillus)属の種を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記嫌気性生物分解ステップに用いる前記細菌種がクレブシエラ(Klebsiella)属の種を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させる方法であって、
(i)第1の廃二酸化炭素ガス流と藻類源とを混合して、有機供給原料を形成することと、
(ii)バシラス(Bacilli)のクラスの細菌種を使用して前記有機供給原料を生物分解し、第1の生物分解生成物を製造する好気性生物分解ステップである第1の生物分解ステップにおいて、前記有機供給原料を処理し、第1の生物分解生成物を生成することと、
(iii)ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)のクラスの細菌種を使用して前記第1の生物分解生成物を生物分解し、水素ガスを製造する嫌気性生物分解ステップである第2の生物分解ステップにおいて、前記第1の生物分解生成物を処理して、水素ガスを生成することと
を含み、ステップ(iii)に先立って、前記第1の生物分解生成物の少なくとも一部を、ステップ(i)の前記藻類源と混合する、方法。
【請求項17】
前記第1の生物分解ステップが好気性であり、前記第2の生物分解ステップが嫌気性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(iii)において、ガス状副生成物と前記水素ガスが製造され、前記方法がステップ(iii)の前記ガス状副生成物を捕集することと、前記ガス状副生成物を濾過して、第2の廃二酸化炭素ガス流を単離することとをさらに含み、さらに任意選択で前記第2の廃二酸化炭素流をステップ(i)に移送することを含む、前記第2の生物分解ステップが嫌気性である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(i)が、光子源が装着された微生物リアクター中で実施される、請求項16、17または18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(ii)および(iii)が、1つまたは複数の生物分解リアクター中で実施される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記二酸化炭素ガス流が、天然ガスなどの炭化水素源から二次水素ガス流を形成するガス改質装置から発生される、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(i)、(ii)および/または(ii)の温度が、前記ガス改質装置から発生される熱の少なくとも一部を利用することによって調節される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(iii)において、ガス状副生成物と前記水素ガスが製造され、前記方法がステップ(iii)の前記ガス状副生成物を捕集することと、前記ガス状副生成物を濾過して、廃炭化水素ガス流を単離することをさらに含み、前記廃炭化水素ガス流を使用して前記炭化水素源を補完する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法で発生された前記水素ガス流が、前記ガス改質装置から発生した前記二次水素ガス流を補完する、請求項21、22または23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(i)および/または(ii)のそれぞれで発生したバイオマス廃棄物流を捕集することをさらに含む、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(i)に送達される二酸化炭素の濃度が最大で約50%までの範囲、任意選択で8%~20%の範囲、となるように、前記二酸化炭素ガス流の二酸化炭素を他のガスと混合する、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記藻類源がクロレラ(Chlorella)属の種を含む、請求項16から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記好気性生物分解ステップに用いる前記細菌種がバシラス(Bacillus)属の種を含む、請求項16から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記嫌気性生物分解ステップに用いる前記細菌種がクレブシエラ(Klebsiella)属の種を含む、請求項16から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
発電ステップにおいて、請求項1から29のいずれか一項に従って水素ガス流を発生させることと、燃料源として水素ガス流を使用することとを含む、発電方法。
【請求項31】
前記発電ステップが、
- 前記水素ガス流を燃料電池に通過させ、それによって発電すること、または
- 前記水素ガス流で可燃燃料を富化して水素富化燃料を生成することと、前記水素富化燃料を燃焼させて発電機を駆動すること
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるためのシステムであって、
藻類源を使用して第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換するように構成されている光合成リアクターであり、二酸化炭素ガス流を受け取るための入口および有機供給原料用出口を有する、光合成リアクターと、
有機供給原料を受け取るために前記有機供給原料用出口と連結されている入口を含む生物分解リアクターであり、嫌気性生物分解ステップに先立って実施される、好気性生物分解ステップを含む順次ステップを使用して、前記光合成リアクターからの有機供給原料を水素ガス流に変換するように好気性生物分解リアクターおよび嫌気性生物分解リアクターとして構成されており、前記好気性生物分解リアクターは前記好気性生物分解ステップのために構成されており、当該好気性生物分解ステップはバシラス(Bacilli)のクラスの細菌種を使用して前記有機供給原料を生物分解し、第1の生物分解生成物を製造し、前記嫌気性生物分解リアクターは前記嫌気性生物分解ステップのために構成されており、当該嫌気性生物分解ステップはガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)のクラスの細菌種を使用して前記第1の生物分解生成物を生物分解し、水素ガス流を製造する、生物分解リアクターと
を含む、システム。
【請求項33】
前記好気性生物分解リアクターが、前記嫌気性生物分解リアクターとは別々のリアクターとして構成されている、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記光合成リアクターと前記生物分解リアクターが一つの同じユニットである、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記生物分解リアクター中で発生する二酸化炭素を前記光合成リアクターに輸送するための補助二酸化炭素供給ラインであって、二酸化炭素以外のガスを濾過するためのフィルターを含む補助二酸化炭素供給ラインをさらに含む、請求項32から34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
炭化水素を第2の水素ガス流および前記第1の廃二酸化炭素ガス流に変換するためのガス改質装置をさらに含み、
前記第2の水素ガス流が、水素貯蔵容器に流体連結されており、
前記第1の廃二酸化炭素ガス流が、前記光合成リアクターに流体連結されている、
請求項32から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記生物分解リアクター中で発生した炭化水素を前記ガス改質装置に移すために、前記生物分解リアクターと前記ガス改質装置とを接続する補助炭化水素供給ラインであって、炭化水素以外のガスを濾過するためにフィルターを含む補助炭化水素供給ラインをさらに含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記生物分解リアクター中で形成された生成物の少なくとも一部を前記光合成リアクターに移送するための移送ラインをさらに含む、請求項32から37のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオリアクターを使用した二酸化炭素の水素への変換に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムおよび水素技術は、電気車両の未来の決定を競っている。リチウムの制約は車両範囲および再充電の時間であり、水素に関連する課題は、高価な燃料、輸送および貯蔵である。両方の技術は、車両の動作が二酸化炭素を放出しない点で、表面的には「環境に優しい」。しかしながら、水素およびリチウムを燃料とする電気車両は両方とも、ある点で温室効果ガス排出の一因となる燃料源を要する。
【0003】
リチウム電池は、電気車両産業において主要な技術になってきた。それにもかかわらず、従来の内燃機関は、特に長距離運送に対して、さらに費用対効果が大きく、便利なままである。これに応じて、また、技術にかかわらず、電気車両はニッチなままであり、いまだ自動車産業に完全に影響を与える立場にない。世界をリードする国の多くが、中期的に内燃機関の段階的な廃止に目を向ける中、費用対効果が大きい燃料電池技術の可能性は極めて高い。現在の水素の製造費は、電気車両における大規模な使用をサポートするには高すぎることもあり、より費用対効果が高いレベルで水素を生成する必要がある。
【0004】
これに関連して、水素の「ポンプ」の価格は、より主流になるには、水素車用のガソリンと同程度でなければならない。例えば、Toyota Miraiは、500キロメートルを走行するために約5キログラムの水素を使用する。同等のガソリン式乗用車は、同じ距離をカバーするのに約40リットルのガソリンを使用する。1リットル当たりUS$1.00~$1.25の範囲のガソリン費用を仮定すると、走行費用はUS$40~US$50である。同じ距離をめぐって価格が競合する水素を燃料として供給されるToyota Miraiでは、水素の小売価格は、1キログラム当たりUS$8~US$10である必要がある。しかしながら、そのような水素の価格は、依然として消費者に利用されていない。
【0005】
現在の水素製造に関する問題は、大部分(すなわち、90%超)の水素が炭化水素に由来することである。水素が炭化水素から製造される水素経済への移行は、温室効果ガスの発生の効果を若干緩和する。
【0006】
水素を発生させる別の方法は、水の電解分離によるものである。しかしながら、水の分離は、いくつもの理由から長期で実行できない。例えば、500kg/日の水素製造速度を達成するために、大規模設備を要し、不動産の入手のしやすさが困難であり、資本コストが非常に高価である。製造される水素の単位当たりのエネルギー必要量が多く、太陽エネルギーを使用することによって相殺できるが、太陽エネルギーは日中のみの利用に限られ、不定期でありうる。したがって、資本コストに加えて、実行可能な解決策を発揮するために実質的なバッファー記憶装置を要する。水の分離による水素製造の全収率は、物理的に制約され、単位原価(元本回収を含む)が常に目標価格を下回るレベルに達する見込みがない。
【0007】
水素は、その場で水蒸気改質メタン(グリッドガス)を通して製造することもできる。水蒸気改質は、700℃~1000℃の温度を必要とし、大量のエネルギーを消費する。水蒸気改質のための水素の収率は、水の分離よりはるかに高い。しかしながら、グリッドガスを使用する小規模の水蒸気改質工場は、問題に直面する。グリッドガスは、メタン、ブタンおよびエタンガスの混合物を含有するが、ここでは、典型的には、水蒸気改質のためにメタンのみが使用され、小売現場のグリッドガスは、一般に液化天然ガス(LNG)製造設備のメタンより高価である。水蒸気改質は、1kgの水素が製造されるごとに約9kgの二酸化炭素も発生する。炭素捕捉およびストレージソリューションなしでは、水蒸気改質は、水素経済への移行に目を向けたとき、環境上、実行できない。
【0008】
微生物によるメタンおよび他の炭化水素の、純粋な水素への直接変換は、効率が決定的要因である大規模において困難なままである。例えば、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)などの細菌種は、腐食した有機物由来のメタンを水素に変換することが知られている。しかしながら、この直接変換は、水蒸気改質によるグリッドガス由来のメタンの水素への変換ほど効率的ではない。さらに、周囲のバイオマスなしでは、二酸化炭素の製造は、グリッドガスの水素への細菌変換に未解決な問題が残る。
【0009】
また、伝統的な化学的プロセス(水蒸気改質)を要するハイブリッドシステムを用いて水素を発生させることもできる。これらのハイブリッドシステムにおいて、水蒸気改質中に発生した二酸化炭素は、捕捉され、微生物の藻類を用いて、廃棄のために有機成分に加工される。しかしながら、ハイブリッドシステムは、安価な炭素ストレージソリューションを提供するが、二酸化炭素の製造の問題を緩和せず、また、グリッドガスの小規模な水蒸気改質のための費用方程式を解しない。
【0010】
本明細書中で参照される任意の従来技術の刊行物または参考文献については、そのような参考文献は、刊行物が、豪国または他の任意の国において、当該技術分野における一般知識の一部を形成する認可を構成しないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0011】
本開示の第1の態様は、二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるための方法を提供する。この方法は、(i)光合成ステップにおいて、藻類源を使用して第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換することと、(ii)生物分解のステップにおいて、生物を使用して、有機供給原料を、水素ガス流およびガス状副生成物に変換することとを含む。実施形態は、水素ガス流を捕集することをさらに含んでもよい。
【0012】
用語「藻類源」は、本明細書中で用いられる場合、二酸化炭素を有機供給原料に光合成で変換できる1種または複数の藻類種を意味する。用語「有機供給原料」は、本明細書中で用いられる場合、単純および複合糖類などの単純および複合炭水化物、エキソ多糖類などの生体高分子、藻類残屑および光合成の副生成物を含みうる、バイオマスなどの有機物を有する供給原料を意味する。有機供給原料は、光合成ステップ中に使用される材料、例えば二酸化炭素の有機供給原料への光合成変換に使用される培地中に存在する材料および試薬も含むことができる。用語「生物分解」は、本明細書中で用いられる場合、1つまたは複数の生物学的プロセスにおける、1種または複数の生物を使用する、有機供給原料の、他の形態(水素ガスを含む)への変換を意味する。
【0013】
二酸化炭素ガス流は、石炭もしくはガス火力発電所などでの炭化水素の燃焼、または水蒸気改質で生じるような炭化水素の、二酸化炭素を含む他のガスへの変換によって発生されうる。開示する方法は、例えばメタン(すなわち、炭化水素)の水素への変換を直観に反して2つの別々のステップに分けることによって効率化をもたらすことができる。開示する方法の利点は、工業プロセスによって発生されるような廃二酸化炭素を水素に変換できることでありうる。したがって、この方法は、雰囲気または二酸化炭素を生じる活動から二酸化炭素を「スクラブ」または除去する一手段として用いてもよい。開示する方法は、二酸化炭素を地層中に送り込んで貯蔵するような二酸化炭素隔離の代わりに用いてもよい。既存の二酸化炭素隔離技術と比較したとき、開示する方法の追加される利点は、本方法が、さらに、再生可能なガス源として水素ガスを製造することでありうる。
【0014】
方法は、ガス状副生成物を捕集することと、ガス状副生成物を濾過して第2の廃二酸化炭素ガス流を単離することとをさらに含んでもよい。方法は、第2の廃二酸化炭素流をステップ(i)に移送することをさらに含んでもよい。第1および第2の廃二酸化炭素ガス流を合わせてよい。実施形態において、ステップ(i)は、光子源が装着された微生物リアクター中で実施してもよい。藻類源としては、緑藻綱(Chlorophyceae)および/またはトレボウクシア藻綱(Trebouxiophyceae)のクラスの藻類を挙げることができる。藻類源は緑色植物であってもよい。藻類源は、クロレラ属の一部であってもよい。実施形態において、藻類種は、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)であってもよい。
【0015】
ステップ(ii)は、好気性生物分解ステップおよび嫌気性生物分解ステップを含んでもよい。好気性生物分解ステップは、嫌気性生物分解ステップの前に実施してよい。実施形態において、ステップ(i)において、好気性生物分解ステップの生成物の少なくとも一部を藻類源と混合(例えば再循環)した後、マス(mass)を嫌気性生物分解ステップに移してもよい。実施形態において、ステップ(i)中の好気性生物分解ステップの生成物の少なくとも一部と藻類源との混合は、嫌気性生物分解ステップに向けた集産的「供給材料製造段階」としての機能を果たす。
【0016】
実施形態において、ステップ(ii)は、1つまたは複数の生物分解リアクター中で実施してもよい。例えば、各生物分解リアクターは、好気リアクターおよび嫌気リアクターを含んでもよい。生物分解リアクターは、1種または複数の細菌種を含んでもよい。細菌種は、クロストリジウム(Clostridia)、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)、バシラス(Bacilli)、球菌(Cocci)および/またはベータプロテオバクテリア(Beta proteobacteria)のクラスであってもよい。細菌種は、グラム陽性および/またはカタラーゼ陽性の細菌であってもよい。細菌種は、グラム陰性の細菌を含んでもよい。細菌種は、バシラス属の一部であってもよい。実施形態において、細菌種は、バシラス・サブチルス(Bacillus subtilis)を含んでもよい。細菌種は、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)のクラスの一部であってもよい。細菌種は、クレブシエラ属(Klebsiella)の一部であってもよい。実施形態において、好気性生物分解リアクターは、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)を含んでもよく、嫌気性生物分解リアクターは、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)を含んでもよい。
【0017】
方法は、熱源などを用いてステップ(i)および/またはステップ(ii)の温度を調節することをさらに含んでもよい。例えば、ステップ(i)および(ii)は両方とも、約35℃で維持してよい。光合成ステップおよび/または生物分解ステップの特定温度は、これらのステップで使用される藻類源および/または細菌によって決定することができ、それらに有利になるように調節されうる。
【0018】
第1の廃二酸化炭素ガス流は、炭化水素源から二次水素ガス流を形成するガス改質ステップ(例えば、水蒸気改質装置によって)から発生されうる。ステップ(i)および/またはステップ(ii)の温度を調節するための熱源は、水蒸気改質装置から発する熱から提供されうる。炭化水素源は、メタンなどの天然ガスであってもよい。
【0019】
ガス改質装置は、水素および二酸化炭素を発生させる。第1の廃二酸化炭素ガス流がガス改質装置によって形成されるとき、開示する方法を用いて、ガス改質装置によって発生する水素を補完することができる(すなわち、二次水素ガス流を生成することができる)。ガス改質装置を使用するとき、ガス改質装置による水素ガスの製造は、本開示の少なくとも一部の実施形態を用いて消費される天然ガスの単位体積当たり40%~65%増加しうる。
【0020】
この方法は、ガス状副生成物を濾過して廃炭化水素ガス流を単離することをさらに含んでもよい。廃炭化水素ガス流を用いて、炭化水素源を補完してよい。実施形態において、水素ガス流および二次水素ガス流を合わせてもよい。二次水素ガス流は、(一次)水素ガス流と比較して大量の水素ガスを製造することができる。この方法は、水をステップ(i)に供給することをさらに含んでもよい。
【0021】
この方法は、ステップ(ii)から有機物に富む物質を捕集することをさらに含んでもよい。有機物に富む物質は、有機供給原料を水素に変換する生物分解ステップの副生成物であってもよい。有機物に富む物質は、生物肥料として使用してもよい。実施形態において、この方法を用いて任意の二酸化炭素源をメタン、水素および生物肥料に変換することができる。
【0022】
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるための方法を開示する。この方法は、(i)第1の廃二酸化炭素ガス流と藻類源とを混合して有機供給原料を形成することを含む。この方法はまた、(ii)第1の生物分解ステップ中に有機供給原料を処理して第1の生物分解生成物を製造することも含む。この方法は、(iii)第2の生物分解ステップにおいて、第1の生物分解生成物を処理して、水素ガスを生成することをさらに含み、ステップ(iii)に先立って、第1の生物分解生成物の少なくとも一部をステップ(i)の藻類源と混合する。実施形態において、第1の生物分解ステップは好気性であってよく、第2の生物分解ステップは嫌気性であってもよい。第1の生物分解ステップが好気性である場合、第1の生物分解ステップと藻類源との組み合わせは、嫌気性生物分解ステップに向けた集産的「供給材料製造段階」と考えることができる。実施形態において、この方法は、別法では、上記のとおりであってもよい。
【0023】
理論に束縛されるものではないが、第1の生物分解生成物の少なくとも一部と藻類源との混合は、(i)グルコース産生の増加による高濃度の二酸化炭素、および(ii)バイオマス(第2の生物分解リアクター中のより高い効率の生物学的処理のためのpHを含む)の調製による水素製造の増加の実現を助けると考えられている。実施形態は、第1の生物分解ステップで発生した精製バイオマスおよびグルコースを、第1の生物分解ステップの好気性細菌とステップ(i)の好気性藻類との間で再循環させてもよい。第1の生物分解生成物の少なくとも一部を移送し、ステップ(i)において、それを藻類源と混合することによって、水素を製造する代わりに、メタノールおよび他のアルコール類などの水素以外の化合物を発生させてもよい。水素を製造するために使用される生物は、アルコール(類)などの他の生成物を発生するために使用されたものと異なるものでよい。
【0024】
方法の実施形態は、二酸化炭素の排出を排除し、製造される水素のキログラム単位のエネルギー費を低減し、消費される天然ガスの単位当たりに発生される水素の単位を増加することができる。
【0025】
本開示はまた、上記の方法を用いて発生させる水素も提供する。
【0026】
本開示はまた、上記の方法から製造される有機物も提供する。
【0027】
本開示はまた、上記のとおりに水素ガス流を発生することと、発電ステップにおいて、燃料源として水素ガス流を使用することとを含む、発電方法も提供する。
【0028】
発電ステップは、水素ガスを燃料電池に通過させることによって発電させることを含んでもよい。発電ステップは、水素で可燃燃料を富化して、水素富化燃料を生成することを含んでもよい。水素富化燃料を燃焼させて発電機を駆動することができる。第1の廃二酸化炭素ガス流は、石炭またはガス火力発電所から発生されうる。
【0029】
本開示はまた、二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるためのシステムも提供する。システムは、藻類源を使用して第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換するように構成された光合成リアクターを含み、光合成リアクターは、二酸化炭素ガス流を受け取るための入口および有機供給原料用出口を有する。システムはまた、有機供給原料を受け取るための有機供給原料用出口と連通している入口を含む生物分解リアクターも含み、生物分解リアクターは、光合成リアクターからの有機供給原料を水素ガス流に変換するように構成されている。
【0030】
システムは、生物分解リアクター中で発生した水素ガス流を受け取り、貯蔵するための、生物分解リアクターと流体連結している水素貯蔵容器をさらに含んでもよい。システムは、生物分解リアクター中で発生した二酸化炭素を光合成リアクターに移送するための補助二酸化炭素供給ラインをさらに含んでもよい。補助二酸化炭素供給ラインは、二酸化炭素以外のガスを濾過するためのフィルターを含んでもよい。システムは、光合成リアクターおよび生物分解リアクターをそれぞれ加熱するための1つまたは複数の熱交換器をさらに含んでもよい。
【0031】
実施形態において、システムは、炭化水素を第2の水素ガス流および第1の廃二酸化炭素ガス流に変換するためのガス改質装置をさらに含んでもよい。第2の水素ガス流は、水素貯蔵容器と流体連結されていてもよい。第1の廃二酸化炭素ガス流は、光合成リアクターと流体連結されていてもよい。1つまたは複数の熱交換器は、ガス改質装置によって発生された熱を光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターに移送するように構成されていてよい。
【0032】
実施形態において、システムは、生物分解リアクターによって発生された炭化水素をガス改質装置に移送するための、生物分解リアクターとガス改質装置とを接続する補助炭化水素供給ラインをさらに含んでもよい。補助炭化水素供給ラインは、炭化水素以外のガスを濾過するためのフィルターを含んでもよい。
【0033】
システムは、光合成リアクターと流体連結され、光合成リアクターの上流にある燃焼室をさらに含んでもよい。燃焼室は、燃料源を燃焼させて、第1の廃二酸化炭素ガス流を発生させるように構成されていてもよい。
【0034】
光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターは、例えば、標準的な運送容器中の可搬型構造体上に設置されてよい。光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターは、それぞれ、モジュラー・ユニットとして設けられうる。システムの上下スケーリングは、適当なユニットを追加または除去することによって達成されうる。システムは、例えば、光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターと流体連結している給水部をさらに含んでもよい。光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターは、複数のリアクターを含んでもよい。複数のリアクターは、互いに直列または並列して配置されうる。
【0035】
実施形態において、システムは、光合成リアクター中の発泡を防止するように構成されている光合成消泡剤および/または生物分解リアクター中の発泡を防止するように構成されている生物分解消泡剤をさらに含んでもよい。システムは、光合成リアクターと生物分解リアクターとの間に水および/またはバイオマスを再循環させるための再循環器を備えてもよい。再循環器は、例えば、光合成リアクターおよび/または生物分解リアクター中の藻類および/または細菌集団をサポートするために、システム周囲の材料および栄養素を輸送することができる。再循環器中で使用される水は、システム周囲の物質を輸送するための輸送媒体として使用されうる。
【0036】
システムは、光合成リアクターおよび/または生物分解リアクターを制御するためのコントローラーをさらに含んでもよい。システムは、空気を生物分解リアクターに供給するための給気部をさらに含んでもよい。給気部は、給気部によって生物分解リアクターに供給される空気から生物学的物質を濾過するための生物学的フィルターを含んでもよい。水源からの水は、光合成リアクターに供給されうる。
【0037】
実施形態において、本開示はまた、水素を発生させるための上記のシステムの使用も提供する。
【0038】
実施形態において、本開示は、上記のシステムを含む水素車用燃料補給所も提供する。
【0039】
ここで、例示のみを目的として、添付の非限定的な図面を参照して実施形態を説明していく。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図2】本開示の別の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図3】光合成リアクターの実施形態の概略図である。
図4】本開示の別の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図5】光合成リアクターの実施形態を示す写真である。
図6】本開示の別の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図7】本開示の別の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図8】ガス供給所を介して別々の位置で水素を発生させるために使用される分配システムの概略図である。
図9】本開示の実施形態に従って発電するために使用されるシステムの概略図である。
図10】本開示の別の実施形態に従って発電するために使用されるシステムの概略図である。
図11】本開示の別の実施形態に従って水素を発生させるために使用されるシステムの概略図である。
図12】生物分解リアクターの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
水素を製造するために使用されるシステム10の実施形態を図1に示す。システム10は、光合成を用いて二酸化炭素を有機供給原料に変換するように構成されている光バイオリアクター12の形態の微生物リアクターを有する。有機供給原料は、単純および複合糖類などの単純および複合炭水化物、ならびにエキソ多糖類などの生体高分子を含む。実施形態において、光バイオリアクター12によって生成された有機供給原料は、バイオマスならびにグルコースおよび多糖類に由来する糖類を含む。実施形態において、有機供給原料は、種々の炭水化物の混合物を含む。システム10は、二酸化炭素源11からの二酸化炭素を光バイオリアクター12に供給する二酸化炭素用供給ライン28も有する。二酸化炭素供給ライン28は、二酸化炭素以外のガスを濾過除去するためのフィルターも含んでもよい。システム10は、生物分解リアクター14も含む。
【0042】
光バイオリアクター12に送達される二酸化炭素は、空気などの他のガスと混合してもよい。実施形態において、光バイオリアクター12に送達された二酸化炭素の濃度は、最大で約50%までの範囲である。実施形態において、光バイオリアクター12に送達された二酸化炭素の濃度は、約8%~約20%の範囲である。二酸化炭素は、約0.2~約0.8VVMの速度で光バイオリアクター12に供給されうる。実施形態において、廃二酸化炭素ガス流中の二酸化炭素の濃度の調節を可能にするために混合マニホールド(mixing manifold)が設けられる(図示せず)。
【0043】
光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は、コンジット30を介して互いに接続されている。コンジット30は、光バイオリアクター12の有機供給原料用出口から生物分解リアクター14の入口まで有機供給原料を通過させる。有機供給原料は、固体、スラリーおよび/または液体として供給される。実施形態において、有機供給原料は、生物分解リアクター14に供給される溶液として供給される。実施形態において、コンジット30は、有機供給原料を光バイオリアクター12から生物分解リアクター14へ送り込む/輸送するためのポンプまたはオーガーを有する。生物分解リアクター14は、有機供給原料を水素に変換するように設定される。実施形態において、有機供給原料のみが光バイオリアクター12から生物分解リアクター14まで通過するように、光バイオリアクター12にフィルターが設置される。実施形態において、光バイオリアクター12で発生した有機供給原料の一部のみが生物分解リアクター14に移送される。例えば、一部の有機供給原料は、播種材料として維持される。実施形態において、光バイオリアクター12で生成された有機供給原料の60%は生物分解リアクター14に移され、40%の有機供給原料は、光バイオリアクター12でさらに使用するために播種材料として保持される。リアクター12および14は、回分、半回分、または連続プロセスとして操作されうる。
【0044】
生物分解リアクター14で発生された水素は、コンジット24を介して、貯蔵容器(例えば、タンク)16の形態の水素貯蔵容器に移送される。コンジット24は、発生した水素を貯蔵容器16に送り込むためのポンプ25を含む。ポンプ25は、貯蔵容器16を加圧させることができる。しかしながら、ポンプ25は、すべての実施形態において必要ではない。用語「貯蔵容器」は、水素を貯蔵でき、また、炭素質材料などの水素を吸着できる(すなわち、可逆的に吸着できる)材料、金属有機骨格および分子篩も含む密閉容器/密閉可能な容器の任意の形態を含むと広く解釈されることを理解すべきである。
【0045】
必要とされる水素生産量は、必要とされる光バイオリアクター12の生産量を決定する。必要とされる光バイオリアクター12の生産量は、生物分解リアクター14への有機供給原料の必要な投入速度によって決まる。
【0046】
光バイオリアクター12は、二酸化炭素を有機供給原料に光合成変換するように構成されている。光バイオリアクター12の特定の反応条件は、光バイオリアクター12中に存在する生物の生化学的要件によって決まる。しかしながら、光バイオリアクター12中に存在する生物は、一般的に光栄養生物である。
【0047】
光栄養生物としては、藻類種およびコケ、ならびにシアノバクテリアおよび紅色細菌などの光栄養細菌を挙げることができる。シアノバクテリアは藻類種と考えられる場合があり、本開示ではそのように呼ばれる。実施形態において、光バイオリアクターは、緑藻綱(Chlorophyceae)および/またはトレボウクシア藻綱(Trebouxiophyceae)のクラスの藻類を含む。藍藻綱(Cyanophyceae)は、シアノバクテリアおよび藍藻類を含むことができる。実施形態において、緑藻綱は、アクトデスムス・オブリクウス(Acutodesmus obliquus)、セネデスムス・スブスピカツス(Scenedesmus subspicatus)、ドナリエナサリナ・サリナ(Dunaliella salina)および/またはセネデスムス・オブリクウス(Scenedesmus obliquus)を含むことができる。実施形態において、トレボウクシア藻綱は、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)を含む。
【0048】
有機供給原料を発生させるために要する特定の時間は、細胞濃度および光バイオリアクター12中で播種材料として使用される藻類種によって決まりうる。藻類種濃度閾値に達すると、これは、結果として得られた有機供給原料を生物分解リアクターへ移送する誘因を示しうる。例えば、実施形態において、藻類種の密度が約2×10~約2×10CFU/mlのとき、有機供給原料が光バイオリアクター12から生物分解リアクター14に移送される。実施形態において、光バイオリアクター12は、有機供給原料を製造するために48時間稼働する。24時間後、有機供給原料は、2×10CFU/mlの藻類種密度を有しうる。最終的な最大細胞密度に達するための時間は、初期に光バイオリアクター12に播種するために使用される播種細胞濃度によって決まりうる。
【0049】
光バイオリアクター12中に使用される培地の組成は、光栄養生物によって決まる。培地、pH、塩分濃度、栄養所要量、必要な光の線量率、光合成温度などのパラメーターは、光栄養生物の要求に従って調節される。一般的に、光バイオリアクター12中で実施される二酸化炭素の有機供給原料への光合成変換の温度は、約30℃~約40℃の範囲である。使用する光栄養生物の種類と、光栄養生物によって生成され、結果として得られる有機供給原料と、は、生物分解リアクター14の要求に応じて選択されうる。実施形態において、複数の種類の光栄養生物が光バイオリアクター12中で使用される。本開示を通して、用語「光栄養生物」の使用は、2種以上の特定の光栄養生物の混合を含む。
【0050】
光栄養生物は、光バイオリアクター12に移して増殖させる濃縮液として供給されうる。実施形態において、光栄養生物は、光バイオリアクター12中で水につけて戻される脱水形態で供給されてもよい。光バイオリアクター12は、定期的に洗浄する必要があり得、それによって培地および光栄養生物は、一組の新鮮な培地および光栄養生物に代えられる。生物膜などの不要な副生成物は、この時点で除去してよい。二酸化炭素の糖類への変換中、バイオマスも生成される。
【0051】
生物分解リアクター14中で実施される生物分解ステップは、光バイオリアクター12中で発生した有機供給原料を水素に変換する。生物分解ステップの特定の機構および生化学的要件は、生物分解リアクター14中に存在する生物と、光バイオリアクター12によって生成される有機供給原料の種類と、によって決まる。例えば、実施形態において、生物分解リアクター14中で、発酵過程を用いて有機供給原料を水素に変換する。実施形態において、生物分解リアクター14は、嫌気および/または好気条件下で稼働する。実施形態において、生物分解リアクター14中で生成される水素の量は、有機供給原料中のグルコース当量に対して41mol%である。
【0052】
容量0.5Lの光バイオリアクターに基づいて、実施形態では、システム10を用いて、24時間当たり5.04グラムの水素ガス、32.06グラムの二酸化炭素および18.49グラムのメタンが製造される。実施形態において、約10.08グラムの水素は、光バイオリアクター12中で生成された有機供給原料1Lから生成されうる。この0.5Lの光バイオリアクターは、必要水素生産量に応じてスケールアップまたはスケールアウトすることができる。容量0.5Lの光バイオリアクター12に基づいて、投入量および生産量のマスバランスを表1に挙げる。驚くべきことに、二酸化炭素の水素への変換は、既知の文献値に基づくものより4~5倍高い、二酸化炭素投入量に対して64.3mol%の効率で進行した。
【0053】
【表1】
【0054】
実施形態において、光バイオリアクター12中の光合成ステップの後、水が輸送培地として機能し、有機供給原料(例えば、糖類およびバイオマス)を光バイオリアクター12から生物分解リアクター14へ輸送する。輸送培地としての水の使用は、光バイオリアクター12中での二酸化炭素および栄養素の分散を助ける。実施形態において、水輸送培地はシステム10中を再循環し、システム10中の二酸化炭素を混合(例えば、乳化)し、二酸化炭素が有機材料または水素に変換されるまで、光バイオリアクター12と生物分解リアクター14との間を再循環させることができる。同様に、生物分解リアクター14中で形成された生成物の一部をシステム10中に再循環させることもできる。水輸送培地を濾過して、システム10の使用中に生成された水溶性ガスを濾過法により除去してもよい。用語「水輸送培地」は、任意の水溶液を含むと広く解釈される。例えば、水輸送培地は、反応媒体、塩、緩衝液、栄養素、好適なガス吸収を促進させる添加剤などを含むことができる。
【0055】
生物分解リアクター14中に使用された細菌は、サーモアナエロバクター目(Thermoanaerobacterales order)に属しうる。サーモアナエロバクター細菌(Thermoanaerobacterales bacteria)としては、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)およびサーモトガ・エルフィイ(Thermotoga elfii)を挙げることができるが、これらの細菌は代表例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、クロストリジウム(Clostridia)のクラスのものである。クロストリジウムクラスとしては、サーモトガ・マリティマ、カルディセルロシルプター・サッカロリティカス、および/またはサーモトガ・エルフィイを挙げることができる。実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)クラスのものである。ガンマプロテオバクテリアクラス(Gamma Proteobacteria)には、大腸菌(Escherichia coli)およびシュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)を挙げることができる。実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、バシラスクラスのものである。バシラスクラスとしては、バシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・サブチルス(Bacillus Subtilis)および/またはバシラス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)を挙げることができる。実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、球菌クラスのものである。球菌クラスとしては、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)の非病原性変異体を挙げることができる。実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、ベータプロテオバクテリア(Beta proteobacteria)クラスのものである。細菌の組み合わせ、例えば、クロストリジウム、ガンマプロテオバクテリア(Gamma Proteobacteria)、バシラス、球菌および/またはベータプロテオバクテリア(Beta proteobacteria)クラスの細菌のさまざまな組み合わせを、生物分解リアクター14中で使用してよい。クロストリジウムクラスとしては、カルディセルロシルプター・サッカロリティカスを挙げることができる。生物分解リアクター14はまた、根粒細菌も含んでよい。
【0056】
実施形態において、生物分解リアクター14中で使用される細菌は、食糧源として光バイオリアクター12中で生成された糖類を使用し、また、機械的または化学的介入なしで関連バイオマス中の糖類を抽出する。水輸送機構を用いて、光バイオリアクター12中で生成された糖類およびバイオマスの生物分解リアクター14への移送を促進する。食糧源として光バイオリアクター12中で生成された糖類を使用し、機械的または化学的介入なしで関連バイオマス中の糖類を抽出する細菌を使用する利点は、生物分解リアクター14が、水素を発生させるのに必要な機器および/またはプロセスが少なくて済むため、エネルギーの節約をもたらすことができる点である。
【0057】
実施形態において、原バイオマス源および水などの追加の供給原料を生物分解リアクター14に添加して、水素の製造を促進することができる。光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14を流すとき、バイオマスをシステムから除去してもよい。光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は同時に流しても、別々の時に流してもよい。光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14を流すことにより、新鮮な播種材料を光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14に導入させることが可能になる。
【0058】
実施形態において、光バイオリアクター12は、約2×1011細胞/mlの藻類濃度を有し、生物分解リアクター14は、約1.5×1010細胞/mlの細菌濃度を有する。実施形態において、光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14は、1atm~5atmの範囲の圧力で稼働させることができる。
【0059】
生物分解リアクター14は、有機供給原料の水素への変換中に発生する有機物に富んだ物質を抽出するための出口を備える(図示せず)。有機物富化物質用の出口は、リアクター14より底流であってもよい。有機物富化物質は、生物肥料として使用してもよく、別の供給原料として販売されている。別の供給原料から発生する収入は、システム10の運用コストを補うために使用してもよい。実施形態において、有機物富化物質は、システム10が最新に更新されるとき、または光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14中で新規の種によってパージされるとき、有機物富化物質である抽出物で抽出される。実施形態において、有機物富化物質は、生物肥料を生成できる。次いで、システム10から抽出された有機物富化物質は、光バイオリアクター12および生物分解リアクター14中で、微細藻類および細菌などの種の新規播種材料で置き換えられる。有機物富化物質の抽出は、定期的に、例えばおおよそ2~3週間ごとに行うことができる。
【0060】
実施形態において、有機物に富む材料は、以下の組成を有する:
● カリウム:2.67%
● カルシウム:4.77%
● マグネシウム:0.74%
● 銅:20.26ppm
● マンガン:309.52ppm
● 鉄:1ppm
● 亜鉛:80ppm
● アルミニウム:1%
● 硫黄:0.5%
● ナトリウム:2%
● ホウ素:0.008%
● 有機炭素:23.3%
● 炭素/窒素比:24:1
● 湿度(65℃)90%
● 有機物:10%
● 窒素合計:0.96%
● 密度:1.1g/cm
【0061】
使用中、生物分解リアクター14は、水素ならびに廃二酸化炭素および/または廃炭化水素を発生する。生物分解リアクター14中で発生する水素、二酸化炭素および炭化水素の相対量は、一般的に生物分解リアクターの条件によって決まる。光バイオリアクター12は供給原料として二酸化炭素を使用するため、生物分解リアクター14は、生物分解リアクター14によって発生される任意の二酸化炭素を光バイオリアクター12に輸送する補助二酸化炭素供給ライン32(すなわち、二酸化炭素再循環ライン)を装着されうる。これは、生物分解リアクター14によって発生される二酸化炭素を、光バイオリアクター12の供給原料として使用することができることを意味する。補助二酸化炭素供給ライン32は、二酸化炭素供給ライン28によってシステムに送達される二酸化炭素の単位当たりの水素の高い収率を実現できることで、システム10の効率の改善を助けることができる。
【0062】
補助二酸化炭素供給ライン32は、生物分解リアクター14に接続することができる、あるいは二酸化炭素供給ライン32は、コンジット24を分岐することができる。いずれの構成においても、補助二酸化炭素供給ライン32は、他のガス、例えば水素および炭化水素から二酸化炭素ガスを濾過するためのメンブレンフィルターなどのフィルター33が装着される。
【0063】
光合成熱交換器18は、光バイオリアクター12と熱的に連通しており、生物分解熱交換器20は、生物分解リアクター14と熱的に連通している。熱交換器18および20は、熱をリアクター12および14に供給するために熱源17に接続されている。図1中、熱交換器18および20は、熱源17に並列に接続されるが、熱交換器18および20は、任意選択により直列に接続されうる。
【0064】
別の実施形態において、図2に最もよく示すように、給水部21は、光バイオリアクター12と流体連結しており、光合成熱交換器18は、給水部21と熱的に連通している。この配置は、光バイオリアクター12に印加された熱が、光バイオリアクター12から生物分解リアクター14までの有機供給原料の通過によって生物分解リアクター14に移動することを意味する。しかしながら、図2に示す実施形態は、生物分解熱交換器20も含んでよい。図2に示す実施形態において、給水部21は、給水部からの水の霧を発生させるための霧発生装置を含むことができる。光合成熱交換器18は、霧発生装置と熱的に連通していてもよい。
【0065】
図2の実施形態の変形形態において、給水部21は、熱交換器18と熱的に連通しておらず、代わりに熱交換器18は、光バイオリアクター12とのみ熱的に連通している。
【0066】
給水部21は、2つの給水チャネルを有することができ、片方は光バイオリアクター12に直接つながり、他方は二酸化炭素混合室40につながる。二酸化炭素混合室40は、例えば、二酸化炭素供給ライン28から二酸化炭素を受け取り、二酸化炭素富化溶液を形成し、次いでこの溶液を光バイオリアクター12へ送達する。実施形態において、混合室40は、二酸化炭素および水のエマルションを形成する。
【0067】
一般的に、熱交換器18および20は、それらの各リアクターを加熱して、各リアクターを所定の温度に維持する。典型的には、リアクター12および14は、約30℃~約40℃の範囲の温度で維持される。しかしながら、リアクター12および/または14は、極限微生物を含む場合、動作温度は、80℃超など、40℃を超えうる。また、熱交換器18および20は、その各リアクターを冷却するように動作することもできることも理解すべきである。あるいは、または加えて、光バイオリアクター12を生物分解リアクター14と熱的に連結させて、例えば、片方のリアクターが一定の冷却を要し、他方のリアクターが一定の加熱を要する場合、リアクター12および14間で熱を伝えることができる。
【0068】
光バイオリアクター12および生物分解リアクター14を、それぞれ、単一のリアクターとして図1および図2に描くが、ある実施形態では、光バイオリアクター12および/または生物分解リアクター14は複数のリアクターを含みうる。例えば、図3は、6個のリアクター12a~12fを有する光バイオリアクター12の実施形態を示す。リアクター12a~12fは、並列に接続される。ガスマニホールド39は、二酸化炭素供給ライン28をリアクター12a~12fに接続する。藻類マニホールド41は、藻類供給ライン29をリアクター12a~12fに接続する。リアクター12a~12fは、二酸化炭素および藻類材料の向流のために配列される。図3の実施形態の変形形態において、リアクター12a~12fは直列接続している。
【0069】
過剰ガスをリアクター12a~12fから除去させるために、出口ガスライン31が設けられる。過剰ガスが二酸化炭素を含む場合、過剰ガスを二酸化炭素供給ライン28に再導入することができる。リアクター12a~12fが直列接続されているとき、二酸化炭素および藻類流は、並流であっても向流であってもよい。図3は、代表例に過ぎず、複数のリアクターを含む光バイオリアクター12の実施形態は、生物分解リアクター14にも適用できる。実施形態において、複数のリアクターの各リアクターはモジュラー・ユニットである。システム10の生産量を増加するために、追加のモジュラー・ユニットを各リアクターに加えてもよい。モジュラー・リアクターユニットの別の利点は、例えばメンテナンスのために、システム10全体をシャットダウンする必要なく、一ユニットをオフラインにできることである。実施形態において、光バイオリアクター12は、6個のモジュラーリアクターを有し、生物分解リアクター14は、6個のモジュラーリアクターを有する。
【0070】
モジュラーバイオフォトリアクター(すなわち、光合成リアクター)の例を図5に示す。モジュラーバイオフォトリアクター200は、管202の内部空間中にランプ204の形態の光源が装着された中空管202である。リアクター200は、約1200Lの容量を有する。電源206は、ランプ204に接続される。リアクター200は、複数のランプ204を有しうる。ランプ204は、可視光および/または紫外光を放出しうる。使用中の中空管202は、藻類源を含む反応媒体212で充填されている。リアクター200は、中空管202の使用中の下端の近くに取り付けられたガス入口208を有する。ガス入口208は、二酸化炭素を中空管202に入れるために使用される。入口ライン210は、中空管202の使用中の上端の近くに位置する。入口ライン210は、藻類源、反応媒体、緩衝液、pH調整剤などを中空管202に追加するために使用される。また、リアクター200は、二酸化炭素の光合成変換によって生じる有機供給原料を抽出するための出口(図示せず)も有する。ランプ204は、再生可能エネルギーを使用して動力とすることができる。
【0071】
一実施形態において、システム10は、光源204に電力を供給するために使用されうる光起電素子および関連の電池システムを備える。変形形態において、光源を省き、太陽光を光源として使用する。別の変形形態では、日中の間は太陽光を光源として使用し、夜間はランプ204を光源として使用して、光バイオリアクターを連続的に動作させる。
【0072】
図1および図2に戻り、生物分解リアクター14は、給気部13に接続される。実施形態において、給気部は、コンプレッサである。給気部13は、供給される空気から生体物質を濾過法によって取り出すための生物学的フィルターを装備していてもよい。給気部13によって生物分解リアクター14に供給される空気は、光バイオリアクター12によって生成される有機供給原料の水素ガスへの細菌誘導性変換を助ける。
【0073】
光バイオリアクター12中の光合成ステップおよび生物分解リアクター14中の生物分解ステップの間、溶解された有機物の増加がありうる。溶解された有機物は、界面活性剤として機能して泡を作る可能性がある。各リアクター12および14中の発泡は、二酸化炭素を水素に変換するシステム10の能力を低減しうる。これに対抗するために、ある実施形態(図面には示さず)では、光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は、それぞれ、リアクター12および14中の泡の増加を防止するように構成されている消泡剤も含む。
【0074】
実施形態において、光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は、それぞれ、pHセンサー、温度センサー、リアクターレベルセンサー、光バイオリアクター12から発生する供給原料および生物分解リアクター14から発生するガスを監視するためのセンサーを含めた多数のセンサーを含む。実施形態において、リアクター12および14は、リアクターに流入するガスを監視するためのロタメーターが装着されている。また、システム10は、さまざまなセンサーから情報を受信する制御システム(図示せず)も含む。制御システムは、水素を最も効率的に生産できるように、反応条件を最適化するための、例えば、リアクター温度、藻類および細菌の投入率ならびにpHなどのパラメーターを調節することができる。一般的に、補助二酸化炭素供給ライン32などの各供給ラインおよびコンジット28、30および24には、システム10中のさまざまな構成要素の流れを制御するための制御システムによって実用可能かつ制御可能なバルブが装着されている。制御システムは、データロガーも含むことができる。
【0075】
図11は、戻り配管50が光バイオリアクター12および生物分解リアクター14を接続する実施形態を示す。戻り配管50は、生物分解リアクター14中の少なくとも一部の生成物を光バイオリアクター12に戻す(すなわち、再循環させる)ことを可能にする。生物分解リアクター14中の生成物を、光バイオリアクター12中でさらに藻類処理することは、システム10の生物による処理を通して水素に変換するために利用可能な有機供給原料をさらに製造することによって、二酸化炭素の水素への変換の改善を助けることができる。
【0076】
実施形態における生物分解リアクター14は、複数のリアクターを有する。図12で最もよく見られるように、生物分解リアクター14の実施形態は、第1のリアクター14aおよび第2のリアクター14bを有する。各リアクター14aおよび14bは、異なるリアクター条件を有しうる。例えば、リアクター14aおよび14bは、第1および第2の生物分解プロセスを実施するために異なる細菌種を有しうる。実施形態において、リアクター14aおよび14bのうちの片方は好気リアクターであり、他方は嫌気リアクターである。実施形態において、リアクター14aは好気リアクターであり、リアクター14bは嫌気リアクターである。2つ以上の生物分解リアクターを使用するとき、各リアクターの反応条件は、互いに独立して操作されうる。
【0077】
戻り配管50は、2つ以上の生物分解リアクターが使用されるときにも使用できる。例えば、戻り配管50を、リアクター14aおよび/または14bに接続してもよい。実施形態において、戻り配管50は、好気リアクター(例えば、14a)と光合成リアクター12とを接続する。そのような配列は、嫌気性生物分解ステップの集産的「供給材料製造段階」として考えることができる。好気リアクターを使用するとき、給気部(例えば、13)を、空気を供給するためにリアクターに取り付けることができる。実施形態において、好気リアクター14aは24時間稼働し、嫌気リアクター14bは48時間稼働する。
【0078】
2つのリアクター14aおよび14bを図12に示すが、ある実施形態では、単一のリアクターを使用して、種々の生物分解プロセスを実施することができる。例えば、ある実施形態では、先ず好気性生物分解を実施し、次いでリアクター条件を変更(例えば、酸素/空気を排出させる)して嫌気性生物分解を実施する(またはその逆)ように単一のリアクターを設定することができる。
【0079】
システム10の利点は、工業プロセスから排出される、例えば天然ガスの液化から排出される二酸化炭素を除去するために使用することができる点と、水素を生成できる点である。二酸化炭素を封鎖する代わりに、二酸化炭素を消費しながらの水素の製造は、二酸化炭素の封鎖に要する地質学的形成の必要性の排除を助けうる。さらに、二酸化炭素の封鎖が、大量の二酸化炭素でのみ有効であることが多いのに対し、システム10は、処理に要する二酸化炭素の量に応じて、必要な分だけスケールアップまたはダウンすることができる。
【0080】
システム100の別の実施形態を図4に示す。システム100は、二酸化炭素源11が、ガス改質装置22から発生される廃二酸化炭素ガス流であること以外は、システム10と同様である。ガス改質装置22は、水蒸気の改質を介して、メタンまたはプラムド天然ガスなどの炭化水素源26を水素に変換する。水蒸気改質の副生成物は、二酸化炭素である。図4の実施形態において、副生成物の二酸化炭素を捕集し、二酸化炭素供給ライン28に通してガス改質装置22から光バイオリアクター12まで通過させる。ガス改質装置22によって発生された他のガス(一酸化炭素、水蒸気および水素など)から供給ライン28中の二酸化炭素を分離するために、ガスフィルター29が二酸化炭素供給ライン28上に設置されてもよい。
【0081】
ガス改質装置22によって生成された水素は捕集され、コンジット36を介して貯蔵容器16に移送される。コンジット36は、水素ガス流から任意の不純物を除去するためのフィルター37を備えてもよい。実施形態において、光バイオリアクター12からの有機供給原料が水素に変換されるとき、生物分解リアクター14は、炭化水素も生成する。補助炭化水素供給ライン34は、生物分解リアクター14によって発生された炭化水素をガス改質装置22に移送するために、生物分解リアクター14とガス改質装置22とを接続する。実施形態において、補助炭化水素供給ライン34には、改質装置22に送達する前に、生物分解リアクター14によって発生された炭化水素を精製するためのフィルター35が装着される。
【0082】
生物分解リアクター14から発生した炭化水素をガス改質装置22に供給することと、さらに生物分解リアクター14から発生した二酸化炭素を光バイオリアクター12に供給することは、炭化水素(例えば、炭化水素源26)の単位当たりの発生した水素の量の約40%~約65%の増加(約63%の発生した水素の量の増加を表す)を助けることができる。
【0083】
実施形態において、図6に示すように、供給ライン32および34ならびにコンジット24は、マニホールド102に接続される。マニホールド102は、生物分解リアクター14のガス出口に接続される。また、マニホールド102は、生物分解リアクター14によって発生された水素、二酸化炭素および任意の炭化水素が濾過され、各ライン24、32および34中を通過するようにフィルターが装着される。図4および図6に描いた実施形態において、2つの炭化水素投入ラインが改質装置22に入らずに、補助炭化水素供給ライン34は、選択的に供給ライン27と合流して単一の炭化水素の供給材料を形成しうる。
【0084】
ガス改質装置22は、熱交換器18および20と熱的に連通し、したがってガス改質装置22によって発生した熱を使用してリアクター12および/または14を加熱する。リアクター12および14を加熱するための改質装置22から放出する熱の利用は、リアクター12および14のエネルギー必要量の削減を助ける。
【0085】
実施形態において、システム10および/または100は、システムの使用中に生じるガス(水素など)を抽出するための抽出システムを備える。抽出システムは、一般的に、発生したガスを抽出するために生物分解リアクター14と連結される。抽出システムは、生物分解リアクター14中の反応媒体中に溶解されたガスを放出させるために減圧を適用しうる。
【0086】
実施形態において、システム10および/または100は、搬送容器などの構造体上に位置される。構造体は、携帯型構造体であってもよい。構造体は、モジュール方式であってもよい。システムの異なる構成要素、例えば光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は、異なる構造体上に設置されてよく、したがって、各リアクターは独自のモジュラー・ユニットとして設けられる。これは、システム10および/または100が、必要とされるモジュラー・ユニットを追加または除去することによって、必要とされる水素の生産量に応じて必要な分だけ容易にスケールアップまたはダウンできることを意味する。
【0087】
水素を製造するための加工生産設備300の実施形態の概略を図7に示し、これは、システム100に基づく。加工生産設備300は、グリッドエネルギーに対する低い総需要を維持するように、また、日光のフェイルセーフがグリッドエネルギーを一時的に中断させる必要があるとして、システム100に動力を与えるために使用される太陽光発電システム302を有する。実施形態において、加工生産設備300は、2つの20フィートの海洋コンテナに納まる。設備300の別の実施形態では、システム100は、システム10に置き換えられる。
【0088】
システム100(例えば、設備300)は、水素車燃料補給所として利用できる。グリッドガスは、人口の密集する地域のほとんどの場所で入手可能であり、改質装置22のガス源として使用できる。既存のグリッドガス小売販売網および水素を発生させる基盤施設を使用する利点は、水素の燃料補給所への輸送を排除することができ、要求に応じてその場で水素を生成できる点である。また、システム100は、予想寿命を満たすために大量の水素を貯蔵する必要性を減らすこともできる。システム100は、既存の小売用ガス基盤施設と、水素を製造するための給油所に位置するバイオリアクターとを組み合わせる。改質装置22から生じる二酸化炭素から水素を生成するための光バイオリアクター12および生物分解リアクター14の使用は、システム100に投入されるガスの単位当たりの水素生産量が約65%増加されるため、使用する改質装置を小型化することを可能にできる。小型改質装置は、資本および運転コストを減らし、水素のコスト削減を助ける。
【0089】
図8は、水素車用燃料補給所など、別々の場所で水素を生成するための分配システム400の実施形態を示す。システム400は、ガス供給網および基盤施設404を介して、別々の位置406a~dにある複数のシステム100に接続されているグリッドガス供給部402を有する。各位置406a~dは、水素車用燃料補給所であってもよい。各システム100は、各位置406a~dの水素必要量に応じて各位置406a~dで水素を生成するように最適化されうる。
【0090】
実施形態において、各位置406a~dにあるシステム100は、約14,400Lの容量を有し、水素の全生産量は約500kg/日でありうる。LNG工場から生成される二酸化炭素を捕獲するためにシステム10を使用するとき、システム10は約11,700,000Lの容量を有し、水素の全生産量は約10,000kg/日でありうる。
【0091】
図面中に記載される実施形態は、別々のリアクターとする光バイオリアクター12および生物分解リアクター14を示す。しかしながら、ある実施形態では、二酸化炭素の有機供給原料への光合成変換および有機供給原料の水素への生物分解変換は、同じリアクターで生じることができ、そのため、光バイオリアクター12および生物分解リアクター14は一つの同じユニットである。
【0092】
開示される方法の実施形態は、空気(0.0314%)より高濃度の二酸化炭素(8%~20%)の使用を可能にでき、所与の水素生産質量に対してはるかに少ない水(水素源)の質量を要しうる。さらに、本発明者が妥当に推測するように、今日のいかなる既知の技術と比較しても、開示される方法の実施形態は、所与のリアクター容器サイズで一日当たり最大500~2,000倍多くの水素を製造でき、消費される二酸化炭素1キログラム当たり最大28倍多くの水素(kg)を製造でき、製造される水素1キログラム当たり最大51倍多くの二酸化炭素(kg)を消費でき、生物学的システム中のすべての利用可能な水素(0.009%に対して)の13%を生成できる。
【0093】
図9は、発電に使用されるシステム600の実施形態を示す。システム600は、石炭火力発電所602を有する。発電所602の燃焼排ガスは、二酸化炭素を含む。発電所602の燃焼排ガスは、システム10の光バイオリアクター12に流体連結され、第1の廃二酸化炭素ガス流として機能する。実施形態において、燃焼排ガス中の二酸化炭素以外のガスを濾過法によって除去するために、発電所602と光バイオリアクター12との間にフィルターが設けられる。システム10は、第1の廃二酸化炭素流を水素に変換し、該水素は上述するように容器16に貯蔵される。システム600では、水素燃料電池604は、コンジット606によって容器16に接続される。容器16に貯蔵されている水素は、燃料電池604中での発電のために、コンジット606を通って燃料電池604に輸送されうる。実施形態において、容器16およびコンジット606を省き、生物分解リアクター14中で生成される水素は、コンジット24を通って直接、燃料電池604に移送される。燃料電池604によって作られた電気は、分配のために発電所602に供給されうる、または発電所602による発電とは無関係に分配されうる。燃料源としての発電所由来の燃焼排ガス中に存在する二酸化炭素を利用することによって、システム600は、発電所602に投入された単位石炭からより多くのエネルギーを抽出するのを助けることができる。また、システム600は、石炭火力発電所から放出された二酸化炭素の量を低減することも助けることができる。
【0094】
図10は、発電に使用されるシステム700の別の実施形態を示す。システム700は、ガス火力発電所702を含む。ガス火力発電所は、天然ガスなどの炭化水素で稼働しうる。発電所702の燃焼排ガスは、二酸化炭素を含む。発電所702の燃焼排ガスは、システム10の光バイオリアクター12に流体連結され、第1の廃二酸化炭素ガス流として機能する。実施形態において、二酸化炭素以外のガスを濾過法によって除去するために、発電所702と光バイオリアクター12との間にフィルターが設けられる。システム10は、第1の廃二酸化炭素流を水素に変換し、該水素は上述するように容器16に貯蔵される。容器16は、コンジット704によって発電所702に接続される。コンジット704は、容器16に貯蔵されている水素を発電所702に輸送させ、そこで水素ガスは炭化水素ガスと混合されて水素富化ガスを形成することができ、このガスは発電所702で燃焼される。また、システム700には、任意選択により、補助炭化水素供給ライン706も装着されていてもよい。生物分解リアクター14中で生成される任意の炭化水素(メタンなど)は、コンジット706を通して発電所702に輸送し、発電所702で燃焼される天然ガスと混合することができる。システム10によって生成される水素および任意選択の炭化水素を使用して、発電所702で燃焼される一次投入ガスを補完する。燃料源としての発電所由来の燃焼排ガス中の二酸化炭素を利用することによって、システム700は、発電所702に投入された単位ガスからより多くのエネルギーを抽出するのを助けることができる。また、システム700は、ガス火力発電所から放出された二酸化炭素の量を低減することも助けることができる。
【実施例
【0095】
ここで、非限定例を用いて、実施形態を説明していく。
【0096】
[実施例1]
実験室試験の実施形態は以下のとおりである。
【0097】
培地溶液120Lおよびクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)種の播種材料5Lに、空気の存在下、0.5~1.0VVMの流量でCO注入したものを、リアクターが、循環および除去に十分なバイオマス屈折を有するまで、光合成リアクター中で4日間処理した。光バイオリアクターには、2つの12V 青色および赤色LED(波長400~1500~1800μEm-2-1)が装着されていた。
【0098】
光合成リアクター中で生成されたバイオマスの一部(60%)を生物分解リアクターに輸送し、バイオマス(例えば、糖類)をガス(水素を含む)に消化した。残りの40%のバイオマスを、光合成リアクターの播種材料として、または生物肥料の原材料として使用するために貯蔵した。
【0099】
生物分解リアクター中、バイオリアクター中の2×1011(細胞/mL)の濃度のバシラス・サブチルス(Bacillus subtilis)の播種材料15リットルと共に、バイオマスを好気性レジームに挿入し、0.8VVMで大気ガスを48時間挿入し、その後、生物分解リアクターは、濃度1.5×1010(細胞/mL)の嫌気性細菌.アエロゲネス(E. aerogenes)を有する嫌気性レジームに移った。
【0100】
生物分解リアクター中のバイオマスは48時間消化されて、ガスを形成し、このガスは排気システムによって除去され、濾過によって各構成要素(例えば、CO流、H流、CH流)に分離され、これらは再循環されるか、または除去され、Hを生成するために使用されるシステムの要求に応じて貯蔵された。消化後、消化された栄養素、細菌および水を含有する液体を、システムの播種材料または生物肥料土壌調整剤として再利用した。
【0101】
[実施例2]
培地溶液120Lおよびクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)種の播種材料5Lに、空気の存在下、0.2~0.8VVMの流量でCO注入したものを、リアクターが、循環および除去に十分なバイオマス屈折を有するまで、光合成リアクター中で48時間使用した。二酸化炭素の濃度は、8~20vol%の範囲だった。光バイオリアクターには、2つの12V 青色および赤色LED(波長400~1500~1800μEm-2-1)が装着されていた。
【0102】
光合成リアクター中で生成されたバイオマスの一部(60%)を生物分解リアクターに輸送し、バイオマス(例えば、糖類)をガス(水素を含む)に消化した。生物分解リアクターに輸送されたバイオマスは、約78%の収率の炭水化物を有し、最大で約35%のグルコース当量およびガラクトース変形体で構成されていた。残りの40%のバイオマスを、光合成リアクターの播種材料として、または生物肥料の原材料として使用するために貯蔵した。
【0103】
生物分解リアクター中、バイオリアクター中の2×1011(細胞/mL)の濃度のバシラス・サブチルス(Bacillus subtilis)の播種材料15リットルと共に、バイオマスを好気性レジームに挿入し、0.8VVMで大気ガスを24時間挿入し、その後、生物分解リアクターは、濃度1.5×1010(細胞/mL)の嫌気性細菌.アエロゲネス(E. aerogenes)を有する嫌気性レジームに48時間移った。
【0104】
[実施例3]
実施例2を繰り返したが、8010Lの培地および335Lのクロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)を光合成リアクター中で48時間インキュベートした。光バイオリアクター中で生成されたバイオマスの60%を、1000Lのバシラス・サブチルス(Bacillus subtilis)を有する好気性生物分解リアクターに輸送し、そこで24時間インキュベートした。好気性生物分解に後続して、.アエロゲネス(E. aerogenes)による嫌気性生物分解を実施して、81kg/日の水素ガス、513kg/日の二酸化炭素、596kg/日のメタンを生成した。
【0105】
当業者は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に多くの変更を加えることができることを理解するであろう。上記の実施形態は、例示に過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0106】
後述する特許請求の範囲および前述の明細書において、明白な言語または必要な含意により、文脈上他の意味に解する場合を除き、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形体は、包括的な意味で使用され、すなわち、規定の特徴の存在を明記するが、さまざまな実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を除外しない。

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるための方法であって、
(i)光合成ステップにおいて、藻類源を使用して、第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換することと、
(ii)生物分解ステップにおいて、生物を使用して、前記有機供給原料を第1の水素ガス流およびガス状副生成物に変換することと
を含む、方法。
[2]
ステップ(ii)のガス状副生成物を捕集することと、前記ガス状副生成物を濾過して、第2の廃二酸化炭素ガス流を単離することとをさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記第2の廃二酸化炭素流をステップ(i)に移すことをさらに含む、[2]に記載の方法。
[4]
ステップ(i)が、光子源が装着された微生物リアクター中で実施される、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
ステップ(ii)が、好気性生物分解ステップおよび嫌気性生物分解ステップを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記好気性生物分解ステップが、前記嫌気性生物分解ステップに先立って実施される、[5]]に記載の方法。
[7]
前記嫌気性生物分解ステップに先立って、前記好気性生物分解ステップの生成物の少なくとも一部が、ステップ(i)の前記藻類源と混合される、[6に記載の方法。
[8]
ステップ(ii)が、1つまたは複数の生物分解リアクター中で実施される、[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
ステップ(i)および/または(ii)の温度を調節することをさらに含む、[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
前記第1の廃二酸化炭素ガス流が、炭化水素源から二次水素ガス流を形成するガス改質装置から発生される、[1]から[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
ステップ(i)および/または(ii)の温度が、前記ガス改質装置から発生される熱の少なくとも一部を利用することによって調節される、[9]に従属する[10]に記載の方法。
[12]
前記炭化水素源が天然ガスである、[10]または[11]に記載の方法。
[13]
前記ガス状副生成物を濾過して、廃炭化水素ガス流を単離することをさらに含む、[1]から[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
前記廃炭化水素ガス流を使用して前記炭化水素源を補完する、[10]から[12]のいずれかに従属する[13]に記載の方法。
[15]
前記第1の水素ガス流が前記二次水素ガス流を補完する、[10]から[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
前記第1の廃二酸化炭素ガス流が、石炭またはガス火力発電所から発生される、[1]から[9]のいずれかに記載の方法。
[17]
水をステップ(i)に供給することをさらに含む、[1]から[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
ステップ(i)および/または(ii)で発生したバイオマス廃棄物流を捕集することをさらに含む、[1]から[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させる方法であって、
(i)第1の廃二酸化炭素ガス流と藻類源とを混合して、有機供給原料を形成することと、
(ii)第1の生物分解ステップにおいて、前記有機供給原料を処理し、第1の生物分解生成物を生成することと、
(iii)第2の生物分解ステップにおいて、前記第1の生物分解生成物を処理して、水素ガスを生成することと
を含み、ステップ(iii)に先立って、前記第1の生物分解生成物の少なくとも一部を、ステップ(i)の前記藻類源と混合する、方法。
[20]
前記第1の生物分解ステップが好気性であり、前記第2の生物分解ステップが嫌気性である、[19]に記載の方法。
[21]
他の点では、[1]から[18]のいずれかに規定のとおりである、[19]または[20]に記載の方法。
[22]
[1]から[21]のいずれかに記載の方法を用いて発生される水素。
[23]
発電ステップにおいて、[1]から[21]のいずれかに従って水素ガス流を発生させることと、燃料源として水素ガス流を使用することとを含む、発電方法。
[24]
前記発電ステップが、前記水素ガス流を燃料電池に通過させ、それによって発電することを含む、[23]に記載の方法。
[25]
前記発電ステップが、前記水素ガス流で可燃燃料を富化して水素富化燃料を生成することと、前記水素富化燃料を燃焼させて発電機を駆動することとを含む、[23に記載の方法。
[26]
第1の廃二酸化炭素ガス流が、石炭またはガス火力発電所から発生される、[23]から[25]のいずれかに記載の方法。
[27]
二酸化炭素ガス流から水素ガス流を発生させるためにシステムであって、
藻類源を使用して第1の廃二酸化炭素ガス流を有機供給原料に変換するように構成されている光合成リアクターであり、二酸化炭素ガス流を受け取るための入口および有機供給原料用出口を有する、光合成リアクターと、
有機供給原料を受け取るために前記有機供給原料用出口と連結されている入口を含む生物分解リアクターであり、生物を使用して、前記光合成リアクターからの有機供給原料を水素ガス流に変換するように構成されている、生物分解リアクターと
を含む、システム。
[28]
前記生物分解リアクター中で発生した水素ガス流を受け取り、貯蔵するための前記生物分解リアクターと流体連結されている水素貯蔵容器をさらに含む、[27]に記載のシステム。
[29]
前記生物分解リアクター中で発生する二酸化炭素を前記光合成リアクターに輸送するための補助二酸化炭素供給ラインであって、二酸化炭素以外のガスを濾過するためのフィルターを含む補助二酸化炭素供給ラインをさらに含む、[27]または[28]に記載のシステム。
[30]
前記光合成リアクターおよび生物分解リアクターのそれぞれを加熱するように構成されている1つまたは複数の熱交換器をさらに含む、[27]から[29]のいずれかに記載のシステム。
[31]
炭化水素を第2の水素ガス流および前記第1の廃二酸化炭素ガス流に変換するためのガス改質装置をさらに含み、
前記第2の水素ガス流が、前記水素貯蔵容器に流体連結されており、
前記第1の廃二酸化炭素ガス流が、前記光合成リアクターに流体連結されている、
[27]から[30]のいずれかに記載のシステム。
[32]
前記熱交換器が、前記ガス改質装置によって発生した熱を前記光合成リアクターおよび/または前記生物分解リアクターに移すように構成されている、[30]に従属する[31]に記載のシステム。
[33]
前記生物分解リアクター中で発生した炭化水素を前記ガス改質装置に移すために、前記生物分解リアクターと前記ガス改質装置とを接続する補助炭化水素供給ラインであって、炭化水素以外のガスを濾過するためにフィルターを含む補助炭化水素供給ラインをさらに含む、[31]または[32]に記載のシステム。
[34]
前記光合成リアクターの上流と流体連結している燃焼室であって、燃料源を燃焼して、前記第1の廃二酸化炭素ガス流を発生させるように構成されている、燃焼室をさらに含む、[27]から[30]のいずれかに記載のシステム。
[35]
前記光合成リアクターおよび/または前記生物分解リアクターが、可搬型構造体上に設置される、[27]から[34]のいずれかに記載のシステム。
[36]
前記光合成リアクターおよび/または前記生物分解リアクターに水を供給するための給水部をさらに含む、[27]から[35]のいずれかに記載のシステム。
[37]
前記光合成リアクターおよび/または前記生物分解リアクターが、それぞれ、複数のリアクターを含む、[27]から[33]のいずれかに記載のシステム。
[38]
前記生物分解リアクター中で形成された生成物の少なくとも一部を前記光合成リアクターに移送するための移送ラインをさらに含む、[27]から[37]のいずれかに記載のシステム。
[39]
前記光合成リアクター中の発泡を防止するように構成されている光合成消泡剤および/または前記生物分解リアクター中の発泡を防止するように構成されている生物分解消泡剤をさらに含む、[27]から[38]のいずれかに記載のシステム。
[40]
前記光合成リアクターおよび/または前記生物分解リアクターを制御するためのコントローラーをさらに含む、[27]から[39]のいずれかに記載のシステム。
[41]
空気を前記生物分解リアクターに供給するための給気部をさらに含む、[27]から[40]のいずれかに記載のシステム。
[42]
前記給気部が、前記給気部によって供給される空気から生物学的物質を濾過するための生物学的フィルターを含む、[41]に記載のシステム。
[43]
水素を発生させるための、[27]から[42]のいずれかに記載のシステムの使用。
[44]
[27]から[42]のいずれかに記載のシステムを含む水素車用燃料補給所。
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