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特許7455144トレプロスチニルプロドラッグの乾燥粉末組成物およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】トレプロスチニルプロドラッグの乾燥粉末組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/216 20060101AFI20240315BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240315BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240315BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K31/216
A61P9/12
A61P11/00
A61P43/00 105
A61K9/14
A61K9/12
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/26
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021564297
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020030282
(87)【国際公開番号】W WO2020223237
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】62/840,186
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513204012
【氏名又は名称】インスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ジュ
(72)【発明者】
【氏名】プラント, アダム
(72)【発明者】
【氏名】マリニン, ウラジミール
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540734(JP,A)
【文献】国際公開第2017/192993(WO,A1)
【文献】Plumonary Pharmacology & Therapeutics,2018年,49,pp.104-111
【文献】J Pharmacol Exp Ther,2017年,363,pp.348-357
【文献】Drug Res,2018年,68,pp.605-614
【文献】European Respiratory Journal,2017年,50,PA2377
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2016年,506,pp.174-183
【文献】Journal of Drug Delivery,2018年,Volume 2018,Article ID 5635010 (19 pages)
【文献】Drug Delivery,2014年,21(6),pp.397-405
【文献】Journal of Drug Delivery Science and Technology,2019年,49,pp.97-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約0.1wt%~約3wt%の式(I)の化合物:
【化4】
またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩(式中、Rは、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルである)、
(b)ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール2000および1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール2000からなる群から選択される約0.01wt%~約3wt%のDSPE-PEG2000、
(c)約10wt%~約50wt%のロイシン、ならびに
(d)トレハロースおよびマンニトールからなる群から選択された糖である残部
からなり
(a)、(b)、(c)、および(d)の全体が100wt%である、
乾燥粉末組成物。
【請求項2】
がヘキサデシルである、請求項1に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項3】
が直鎖状ヘキサデシルである、請求項に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項4】
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約0.03wt%~約2.1wt%または約0.05wt%~約1.5wt%で存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項5】
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.75wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%の前記ロイシン、および(d)約68.45wt%のマンニトールからなる、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項6】
処置を必要とする患者における肺高血圧症を処置するための、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物であって前記乾燥粉末組成物が、乾燥粉末吸入器による吸入によって、前記患者の肺に投与される、乾燥粉末組成物
【請求項7】
前記肺高血圧症が、肺動脈性肺高血圧症である、請求項に記載の乾燥粉末組成物
【請求項8】
前記肺動脈性肺高血圧症が、ニューヨーク心臓協会(NYHA)によって特徴付けされたクラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIVの肺動脈性肺高血圧症である、請求項に記載の乾燥粉末組成物
【請求項9】
前記肺高血圧症が、世界保健機関(WHO)によって特徴付けされた群1、群2、群3、群4または群5の肺高血圧症である、請求項に記載の乾燥粉末組成物
【請求項10】
前記肺高血圧症が、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、特発性肺動脈性肺高血圧症、家族性肺動脈性肺高血圧症、または間質性肺疾患に関連する肺高血圧症である、請求項6または9に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項11】
処置を必要とする患者における門脈肺高血圧症または肺線維症を処置するための、請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物であって前記乾燥粉末組成物が、乾燥粉末吸入器による吸入によって、前記患者の肺に投与される乾燥粉末組成物
【請求項12】
前記乾燥粉末組成物を投与するステップが、前記乾燥粉末組成物をエアロゾル化することと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を、吸入により前記患者の前記肺に投与することとを含む、請求項から1のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物
【請求項13】
前記エアロゾル化された乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約1μm~約3μmのMMADを有する粒子からなる、請求項12に記載の乾燥粉末組成物
【請求項14】
前記エアロゾル化された乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約30%~約60%の微粒子率を有する粒子をからなる、請求項12または13に記載の乾燥粉末組成物
【請求項15】
肺高血圧症、門脈肺高血圧症、または肺線維症を処置するためのシステムであって、
請求項1からのいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物、および
乾燥粉末吸入器(DPI)
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月29日に出願した米国仮特許出願第62/840,186号に基づく優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肺高血圧症(PH)は、肺血管系の異常な高血圧を特徴とする。これは、心不全に至る進行性の致死的疾患であり、肺動脈、肺静脈、または肺毛細管で発生し得る。症状として、患者は、息切れ、眩暈、失神、およびその他の症状を経験し、これらの症状はいずれも労作により悪化する。複数の原因が存在し、原因不明の特発性の可能性もあり、他の系の高血圧症、例えば、門脈肺高血圧症(患者は、門脈圧亢進症および肺高血圧症の両方を有する)を引き起こす可能性もある。
【0003】
肺高血圧症は、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)によって5つの群に分類されている。第1群は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)と呼ばれ、原因不明(特発性)のPAH、遺伝性PAH(すなわち、家族性PAHまたはFPAH)、薬物または毒物を原因とするPAH、ならびに結合組織病、HIV感染症、肝疾患、および先天性心疾患などの状態を原因とするPAHを含む。第2群の肺高血圧症は、左心性疾患に伴う肺高血圧症であることを特徴とする。第3群の肺高血圧症は、慢性閉塞性肺疾患および間質性肺疾患などの肺疾患に伴うPH、ならびに睡眠関連呼吸障害(例えば、睡眠時無呼吸)に伴うPHであることを特徴とする。第4群のPHは、慢性血栓症および/または慢性塞栓症に起因するPH、例えば、肺の血栓または血液凝固障害を原因とするPHである。第5群は、他の障害または状態、例えば、血液障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症)、全身性障害(例えば、サルコイドーシス、血管炎)、および代謝性障害(例えば、甲状腺疾患、糖原病)を原因とするPHを含む。
【0004】
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、世界中でおおよそ200,000人の人々が罹患しており、米国にはこれらの患者のおおよそ30,000~40,000人が存在する。PAH患者は肺動脈の狭窄を経験しており、それによって肺動脈圧が上昇し、心臓が肺に血液を送り出すのが困難になる。患者は息切れや疲労に苦しんでおり、それによって身体活動を実施する能力がかなり制限される場合が多い。
【0005】
ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)は、PAH患者を4つの機能分類にカテゴリー分けし、疾患の重症度を査定している。NYHAによってクラスIにカテゴリー分けされるPAH患者は、通常の身体活動により過度の呼吸困難や疲労、胸痛または卒倒寸前にならないため、身体活動の制限を有さない。NYHAによってクラスIIにカテゴリー分けされるPAH患者は、身体活動の若干の制限を有する。これらの患者は、安静時には無症状であるが、通常の身体活動によって過度の呼吸困難や疲労、胸痛または卒倒寸前になる。NYHAによってクラスIIIにカテゴリー分けされるPAH患者は、身体活動の著しい制限を有する。クラスIIIのPAH患者は安静時には無症状であるが、通常の身体活動より軽い活動の結果として、過度の呼吸困難や疲労、胸痛または卒倒寸前を経験する。NYHAによってクラスIVにカテゴリー分けされるPAH患者は、症状を有さずにいかなる身体活動も行うことができない。クラスIVのPAH患者は、安静時も呼吸困難および/または疲労を経験する可能性があり、いかなる身体活動によっても苦痛が増加する。多くの場合、クラスIVのPAH患者には右心不全の兆候が現れる。
【0006】
PAHを有する患者は、エンドセリン受容体アンタゴニスト(ERA)、ホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤、グアニル酸シクラーゼ刺激剤、プロスタノイド(例えば、プロスタサイクリン)、またはこれらの組合せで処置される。ERAとしては、アンブリセンタン(abrisentan)(レタイリス(Letairis)(登録商標))、シタキセンタン、ボセンタン(トラクリア(Tracleer)(登録商標))、およびマシテンタン(オプスミット(Opsumit)(登録商標))が挙げられる。PAHの処置のために表示されるPDE-5阻害剤としては、シルデナフィル(レバチオ(Revatio)(登録商標))およびタダラフィル(アドシルカ(Adcirca)(登録商標))が挙げられる。PAHの処置のために表示されるプロスタノイドとしては、イロプロスト、エポプロステノール(epoprosentol)およびトレプロスチニル(レモジュリン(Remodulin)(登録商標)、タイバソ(Tyvaso)(登録商標))が挙げられる。1つの認可されたグアニル酸シクラーゼ刺激剤は、リオシグアト(アデムパス(Adempas)(登録商標))である。さらに、患者は、上述の化合物の組合せで処置される場合も多い。
【0007】
門脈肺高血圧症(PPH)は、門脈圧亢進症と肺高血圧症の共存によって定義され、肝疾患の重篤な合併症である。門脈肺高血圧症の診断は血行動態基準(hemodynamic criteria)に基づく:(1)門脈圧亢進症および/または肝疾患(臨床診断-腹水/静脈瘤/脾腫)、(2)安静時平均肺動脈圧>25mmHg、(3)肺血管抵抗>240ダイン秒/cm、(4)肺動脈閉塞圧<15mmHgまたは経肺圧較差(transpulmonary gradient)>12mmHg。PPHは、肝疾患の重篤な合併症であり、肝硬変を患っている患者の0.25~4%に存在する。今日、PPHは肝移植対象者の4~6%に併存している。
【0008】
肺線維症は、肺組織に瘢痕が形成され、重篤な呼吸の問題をもたらす呼吸器疾患である。瘢痕形成、すなわち、過剰な線維結合組織の蓄積によって、壁が肥厚し、血中への酸素供給の低下の原因となる。結果として、肺線維症の患者は、永続的な息切れを患っている。一部の患者では、疾患の特定の原因を診断することができるが、他の患者では、問題の原因を決定することができず、特発性肺線維症と呼ばれる状態である。
【0009】
本発明は、肺投与に有用なトレプロスチニルプロドラッグの乾燥粉末組成物を提供することによる、肺高血圧症(PH)(肺動脈性肺高血圧症(PAH)を含む)、門脈肺高血圧症(PPH)、および肺線維症に対する新規な処置の選択肢、ならびに処置を必要とする患者にそれを投与するための方法に対するニーズに対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
一態様では、本開示は乾燥粉末組成物に関する。乾燥粉末組成物は、(a)約0.1wt%~約3wt%の式(I)の化合物:
【化1】
またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩(式中、Rは、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルである);(b)約0.01wt%~約3wt%のジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ポリエチレングリコール2000(DSPE-PEG2000)、(c)約10wt%~約50wt%のロイシン、ならびに(d)トレハロースおよびマンニトールからなる群から選択された糖である残部を含む。(a)、(b)、(c)、および(d)の全体は100wt%である。
【0011】
一実施形態では、Rはテトラデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状テトラデシルである。
【0012】
一実施形態では、Rはペンタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ペンタデシルである。
【0013】
一実施形態では、Rはヘプタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘプタデシルである。
【0014】
一実施形態では、Rはオクタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状オクタデシルである。
【0015】
一実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0016】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.05wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.15wt%~約1.4wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.25wt%~約1wt%で存在する。
【0017】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.3wt%~約1.4wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約1wt%で存在する。
【0018】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.12wt%~約1.8wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.36wt%~約1.26wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.6wt%~約0.9wt%で存在する。
【0019】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約1.5wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.3wt%~約1.05wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約0.75wt%で存在する。
【0020】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.14wt%~約1.6wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.42wt%~約1.12wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.7wt%~約0.8wt%で存在する。
【0021】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.15wt%~約1.5wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.45wt%~約1.05wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.75wt%で存在する。
【0022】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約3wt%で存在し、DSPE-PEG2000と、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.1:1(DSPE-PEG2000:式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)~約1:1(DSPE-PEG2000:式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)の範囲内にある。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在する。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在する。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在する。いっそうさらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在する。別の実施形態では、DSPE-PEG2000と、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.3:1(DSPE-PEG2000:式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)~約0.7:1(DSPE-PEG2000:式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)の範囲内にある。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000と、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.5:1(DSPE-PEG2000:式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)である。
【0023】
本明細書において提供される乾燥粉末組成物の一実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約15wt%~約40wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約18wt%~約33wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約20wt%~約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約25wt%~約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約27wt%~約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。いっそうさらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0024】
一実施形態では、糖はマンニトールである。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0025】
一実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%のロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0026】
一実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.75wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%のロイシン、および(d)約68.45wt%のマンニトールを含む。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0027】
一実施形態では、乾燥粉末組成物は、次世代インパクター(NGI)によって測定した場合、約1μm~約3μmの空気動力学的質量中央粒子径(MMAD)の粒子を有するエアロゾルの形態で存在する。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1.3μm~約2.0μmのMMADの粒子を有するエアロゾルの形態で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0028】
一実施形態では、糖はマンニトールであり、乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約3μmのMMADの粒子を有するエアロゾルの形態で存在する。別の実施形態では、糖はマンニトールであり、乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1.7μm~約2.7μmのMMADの粒子を有するエアロゾルの形態で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0029】
一実施形態では、乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約30%~約60%の微粒子率(FPF)の粒子を有するエアロゾルの形態で存在する。さらなる実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルである。
【0030】
別の態様では、本開示は、それを必要とする患者における肺高血圧症を処置するための方法に関する。本方法は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、患者の肺に投与するステップを含む。
【0031】
肺高血圧症は、一実施形態では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)である。PAHは、一実施形態では、ニューヨーク心臓協会(NYHA)によって特徴付けされたクラスIのPAHである。別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIIのPAHである。別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIIIのPAHである。別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIVのPAHである。
【0032】
一実施形態では、肺高血圧症は、世界保健機関(WHO)によって特徴付けされた群1の肺高血圧症である。
【0033】
別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOによって特徴付けされた群2の肺高血圧症である。
【0034】
別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOによって特徴付けされた群3の肺高血圧症である。
【0035】
別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOによって特徴付けされた群4の肺高血圧症である。
【0036】
別の実施形態では、肺高血圧症は、WHOによって特徴付けされた群5の肺高血圧症である。
【0037】
さらに別の態様では、本開示は、それを必要とする患者における門脈肺高血圧症または肺線維症を処置するための方法に関する。本方法は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、患者の肺に投与するステップを含む。
【0038】
本明細書に記載の処置方法の一実施形態では、投与するステップは、1日1回、1日2回、または1日3回の投薬で実行される。
【0039】
本明細書に記載の処置方法の別の実施形態では、投与するステップは、乾燥粉末組成物をエアロゾル化することと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を吸入により患者の肺に投与することとを含む。一実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含む。別の実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約30%~約60%のFPFを有する粒子を含む。
【0040】
さらに別の態様では、本開示は、肺高血圧症、門脈肺高血圧症、または肺線維症を処置するためのシステムに関する。本システムは、本明細書に開示される乾燥粉末組成物のうちの1つおよび乾燥粉末吸入器(DPI)を含む。
【0041】
DPIは、一実施形態では、単回用量または複数回用量の吸入器のいずれかである。
【0042】
別の実施形態では、DPIは、予め計量されているか、またはデバイスで計量されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の噴霧乾燥回収に対するロイシン含量の効果を示すグラフである。
【0044】
図2A図2A~2Dは、図のように、様々な量のロイシンを含有するマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のSEM画像である。
図2B図2A~2Dは、図のように、様々な量のロイシンを含有するマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のSEM画像である。
図2C図2A~2Dは、図のように、様々な量のロイシンを含有するマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のSEM画像である。
図2D図2A~2Dは、図のように、様々な量のロイシンを含有するマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のSEM画像である。
【0045】
図3図3は、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末における、レーザー回折によって測定した粒径分布に対するロイシン含量の効果を示すグラフである。
【0046】
図4図4は、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のMMADに対するC16TR(トレプロスチニルパルミチル)含量の効果を示すグラフである。
【0047】
図5図5A~5Cは、様々な入口温度で噴霧乾燥したマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のSEM画像である。上のパネルの画像は高倍率で撮影し、下のパネルの画像は低倍率で撮影した。
【0048】
図6図6Aおよび6Bは、炭酸水素アンモニウム(ABC、0.5mg/mL)を用いてまたは用いないで135℃の入口温度で噴霧乾燥した、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の形態を示すSEM画像である。上のパネルの画像は高倍率で撮影し、下のパネルの画像は低倍率で撮影した。
【0049】
図7A図7Aは、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-179のDSCデータを示すグラフである。
【0050】
図7B図7Bは、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-179のX線回折データを示すグラフである。
【0051】
図8図8Aおよび8Bは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の形態に対するロイシン含量の効果を示すSEM画像である。
【0052】
図9A図9A~9Cは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の形態に対する噴霧乾燥入口温度の効果を示すSEM画像である。
図9B図9A~9Cは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の形態に対する噴霧乾燥入口温度の効果を示すSEM画像である。
図9C図9A~9Cは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の形態に対する噴霧乾燥入口温度の効果を示すSEM画像である。
【0053】
図10A図10Aは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のDSCデータを示すグラフである。
【0054】
図10B図10Bは、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のX線回折データを示すグラフである。
【0055】
図11図11は、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-167の水分吸収を示すDVS等温線プロットである(C16TR(トレプロスチニルパルミチル)/DSPE-PEG2000/Man/Leu、1/0.5/80/20)。
【0056】
図12図12は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-162の水分吸収を示すDVS等温線プロットである(C16TR(トレプロスチニルパルミチル)/DSPE-PEG2000/Treh/Leu、1/0.5/80/20)。
【0057】
図13図13は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-163の水分吸収を示すDVS等温線プロットである(C16TR(トレプロスチニルパルミチル)/DSPE-PEG2000/Treh/Leu、1/0.5/70/30)。
【0058】
図14図14は、マンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の加速安定性研究におけるMMADの変化を示すグラフである。
【0059】
図15A図15Aおよび15Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-179のSEM画像である。
図15B図15Aおよび15Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-179のSEM画像である。
【0060】
図16A図16Aおよび16Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、1.5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-183のSEM画像である。
図16B図16Aおよび16Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、1.5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-183のSEM画像である。
【0061】
図17A図17Aおよび17Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、2%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-184のSEM画像である。
図17B図17Aおよび17Bは、それぞれT0およびT3(3カ月)における、2%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-184のSEM画像である。
【0062】
図18A図18Aおよび18Bは、T5(5カ月)における、それぞれ3%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)(SD-NNP-190)および5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)(SD-NNP-191)のマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチのSEM画像である。
図18B図18Aおよび18Bは、T5(5カ月)における、それぞれ3%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)(SD-NNP-190)および5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)(SD-NNP-191)のマンニトールベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチのSEM画像である。
【0063】
図19図19は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の加速安定性研究におけるMMADの変化を示すグラフである。
【0064】
図20図20は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の加速安定性研究におけるFPFの変化を示すグラフである。
【0065】
図21A図21Aおよび21Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-162のSEM画像である。
図21B図21Aおよび21Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-162のSEM画像である。
【0066】
図22A図22Aおよび22Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-163のSEM画像である。
図22B図22Aおよび22Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-163のSEM画像である。
【0067】
図23A図23Aおよび23Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1.5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-188のSEM画像である。
図23B図23Aおよび23Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、1.5%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-188のSEM画像である。
【0068】
図24A図24Aおよび24Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、2%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-189のSEM画像である。
図24B図24Aおよび24Bは、それぞれT0およびT3.5(3.5カ月)における、2%のC16TR(トレプロスチニルパルミチル)を含むトレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末のバッチSD-NNP-189のSEM画像である。
【0069】
図25図25は、噴霧乾燥したトレプロスチニルパルミチルの乾燥粉末製剤A、B、C、およびDの圧力滴定を示すグラフである。見やすさのため、データ点は、各空気圧カテゴリー(左から右へ)内で、順に(A、B、CおよびD)ずらしてある。
【0070】
図26図26は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤A、B、C、およびDの粒径分布を示すグラフである。
【0071】
図27図27は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤AのSEM画像である。
【0072】
図28図28は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤BのSEM画像である。
【0073】
図29図29は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤CのSEM画像である。
【0074】
図30図30は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤DのSEM画像である。
【0075】
図31図31は、T=0、および図のように25℃もしくは40℃で1~3カ月間カプセル内で保管した後、または25℃もしくは40℃で3カ月間バルクとして保管し、同日にカプセル内に充填し、投薬した後の、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Aの微粒子量(fine particle doses)(FPD)を示すグラフである。
【0076】
図32図32は、T=0、および図のように25℃もしくは40℃で1~3カ月間カプセル内で保管した後、または25℃もしくは40℃で3カ月間バルクとして保管し、同日にカプセル内に充填し、投薬した後の、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Cの微粒子量(FPD)を示すグラフである。
【0077】
図33図33は、T=0、および図のように25℃もしくは40℃で1~3カ月間カプセル内で保管した後、または25℃もしくは40℃で3カ月間バルクとして保管し、同日にカプセル内に充填し、投薬した後の、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dの微粒子量(FPD)を示すグラフである。
【0078】
図34図34は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末製剤の動的水蒸気吸着(DVS)等温線プロットである。
【0079】
図35図35は、T=0カ月、ならびに40℃および制御されていない周囲湿度で1.5カ月、2.5カ月、および3.5カ月間(1時点当たりn=1)保管した後の、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末製剤のエアロゾル粒径分布を示すグラフである。
【0080】
図36図36は、トレハロースベースのC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末製剤の吸入後の、肺におけるC16TR(トレプロスチニルパルミチル)等価物(C16TR(トレプロスチニルパルミチル)プラストレプロスチニル、ng/g)および霧化されたINS1009の濃度を示すグラフである。
【0081】
図37図37は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cの吸入後の、肺におけるC16TR(トレプロスチニルパルミチル)等価物(C16TReq)の濃度を示すグラフである。
【0082】
図38図38は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cの吸入後の、肺におけるC16TR(トレプロスチニルパルミチル)の濃度を示すグラフである。
【0083】
図39図39は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cの吸入後の、肺におけるTREの濃度を示すグラフである。
【0084】
図40図40は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cの吸入後の、血漿中のTREの濃度を示すグラフである。
【0085】
図41図41は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cに曝露されたラットにおける低酸素負荷に対するΔRVPP応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
発明の詳細な説明
本開示を通して、用語「約(about)」は、数値および/または範囲と併せて使用され得る。用語「約(about)」は、記載した値に近い値を意味すると理解される。例えば、「約40[単位]」は、40の±25%以内(例えば、30~50)、±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%以内、±1%未満、またはその中の任意の他の値もしくは値の範囲もしくはそれ未満を意味し得る。
【0087】
用語「薬学的に許容される塩」は、無機または有機の塩基および無機または有機の酸を含む薬学的に許容される非毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。塩は、薬学的に許容される限り、その性質は重要ではない。好適な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製され得る。例示的な薬学的な塩は、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Stahl, P.H., Wermuth, C.G., Eds. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use; Verlag Helvetica Chimica Acta/Wiley-VCH: Zurich, 2002に開示される。無機酸の具体的な非限定的な例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸である。好適な有機酸としては、限定されないが、カルボン酸およびスルホン酸を含有する脂肪酸、脂環式酸、芳香酸、アリール脂肪酸、およびヘテロシクリル酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸(algenic)、3-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸またはガラクツロン酸が挙げられる。本明細書に開示される遊離酸を含有する化合物の好適な薬学的に許容される塩としては、限定されないが、金属塩および有機塩が挙げられる。例示的な金属塩としては、以下に限定されないが、適切なアルカリ金属(Ia族)の塩、アルカリ土類金属(IIa属)の塩、および他の生理学的に許容される金属が挙げられる。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から作られ得る。例示的な有機塩は、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩および第四級アミン塩、例えばトロメタミン、ジエチルアミン、テトラ-N-メチルアンモニウム、N,N’ージベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)およびプロカインから作ることができる。
【0088】
本明細書を通して、数値範囲は、ある特定の量として与えられる。これらの範囲がこのうちのすべての下位範囲を含むことが理解されるべきである。よって、範囲「50~80」は、そのうちのすべての可能な範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)を含む。さらに、所与の範囲内のすべての値は、それによって包含される範囲に関する末端値であってもよい(例えば、範囲50~80は、55~80、50~75などのような末端値を含む範囲を含む)。
【0089】
用語「処置すること(treating)」は、一実施形態では:(1)状況、障害または状態に罹患しているかまたはその素因を有している可能性があるが、その状況、障害または状態の臨床的または無症候性症状をまだ経験または呈していない対象において発症するその状況、障害または状態の臨床症状の出現を予防するかまたは遅延させること;(2)その状況、障害または状態を阻害すること(例えば、疾患の発症、またはその少なくとも1つの臨床的もしくは無症候性症状の維持処置の場合にはその再発を停止させる、低減するまたは遅延させること);および/あるいは(3)状態を緩和する(例えば、状況、障害もしくは状態またはその臨床症状もしくは無症候性症状の少なくとも1つを後退させること)ことを含む。一実施形態では、「処置すること(treating)」は、状況、障害または状態を阻害すること(例えば、疾患の発症、またはその少なくとも1つの臨床的もしくは無症候性症状の維持処置の場合にはその再発を停止させる、低減するまたは遅延させること)を指す。別の実施形態では、「処置すること(treating)」は、状態を緩和すること(例えば、状況、障害もしくは状態またはその臨床的もしくは無症候性症状の少なくとも1つを後退させることによる)を指す。処置される対象への利益は、処置前の同一対象の状況もしくは状態と比較して、または未処置対照の対象の状況もしくは状態と比較して統計的に有意であり、利益は、対象または医師にとって少なくとも知覚できるものである。
【0090】
「有効量」は、所望の治療応答をもたらすのに十分な本開示の乾燥粉末組成物の量を意味する。
【0091】
本発明の一態様では、トレプロスチニルプロドラッグの乾燥粉末組成物が提供される。乾燥粉末組成物は:
(a)式(I)の化合物:
【化2】
またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩(式中、Rは、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルである)であって、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約3wt%で存在する、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩;
(b)約0.01wt%~約3wt%のDSPE-PEG2000、
(c)約10wt%~約50wt%のロイシン、ならびに
(d)トレハロースおよびマンニトールからなる群から選択された糖である残部
を含む。(a)、(b)、(c)、および(d)の全体は100wt%である。
【0092】
一部の実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%、約0.3wt%、約0.5wt%、約0.7wt%、約1wt%、約1.3wt%、約1.5wt%、約1.7wt%、約2.0wt%、約2.3wt%、約2.5wt%、約2.7wt%、または約3wt%で存在する。さらなる実施形態では、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在する。式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、国際出願公開第2015/061720号に開示されるトレプロスチニルプロドラッグである。一部の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約35wt%、約40wt%、約45wt%、または約50wt%で存在する。
【0093】
PEGは、その分子量に応じて、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても公知のポリエチレングリコールを指す。DSPE-PEG2000は、平均PEG分子量が2000g/molである分枝状または非分枝状PEG分子を含み得る。一実施形態では、(b)は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.03wt%~約2.1wt%で存在するDSPE-PEG2000である。別の実施形態では、(b)は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.05wt%~約1.5wt%で存在するDSPE-PEG2000である。
【0094】
式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩の一実施形態では、Rはテトラデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状テトラデシルである。
【0095】
式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Rはペンタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ペンタデシルである。
【0096】
式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Rはヘプタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘプタデシルである。
【0097】
式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Rはオクタデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状オクタデシルである。
【0098】
式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Rはヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物:
【化3】
またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩である。一実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物である。さらなる実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。式(II)の化合物はまた、C16TRまたはトレプロスチニルパルミチルとも本明細書において称される。本出願において、C16TRおよびトレプロスチニルパルミチルは交換可能に使用され、式(II)の化合物を指す。
【0099】
一実施形態では、(a)は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、(a)は、式(I)の化合物である。別の実施形態では、(a)は、式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、(a)は、式(II)の化合物である。
【0100】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.05wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.15wt%~約1.4wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.25wt%~約1wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在する。
【0101】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約2wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.3wt%~約1.4wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約1wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在する。
【0102】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.12wt%~約1.8wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.36wt%~約1.26wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.6wt%~約0.9wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在する。
【0103】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約1.5wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.3wt%~約1.05wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約0.75wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在する。
【0104】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.14wt%~約1.6wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.42wt%~約1.12wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.7wt%~約0.8wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在する。
【0105】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約1wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.3wt%~約0.7wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%で存在する。
【0106】
一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.15wt%~約1.5wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.45wt%~約1.05wt%で存在する。さらなる実施形態では、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.75wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在する。
【0107】
一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.1wt%~約3wt%、約0.5wt%~約2wt%、約1wt%~約2wt%、約1.2wt%~約1.8wt%、約1wt%~約1.5wt%、約1.4wt%~約1.6wt%、約1wt%、または約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000と、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.1:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)~約1:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)、または約0.3:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)~約0.7:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)の範囲内、例えば、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、または約1:1である。一実施形態では、DSPE-PEG2000と、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.1:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)~約1:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)の範囲内にある。別の実施形態では、DSPE-PEG2000と、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.3:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)~約0.7:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)の範囲内にある。
【0108】
一部の実施形態では、DSPE-PEG2000と、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比は、約0.5:1(DSPE-PEG2000:式(I)または(II)の化合物)である。この重量比で、一実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約1wt%で存在する。別の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.6wt%~約0.9wt%で存在する。別の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.7wt%~約0.8wt%で存在する。別の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在し、DSPE-PEG2000は、乾燥粉末組成物の総重量の約0.75wt%で存在する。一部の実施形態では、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、乾燥粉末組成物中で上記重量パーセンテージまたは重量パーセンテージの範囲のそれぞれで存在する。一部の実施形態では、式(I)または(II)の化合物は、乾燥粉末組成物において上記重量パーセンテージまたは重量パーセンテージの範囲のそれぞれで存在する。
【0109】
一実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約15wt%~約40wt%で存在する。さらなる実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約18wt%~約33wt%で存在する。さらなる実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約20wt%~約30wt%、例えば約20wt%、約25wt%、または約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約25wt%~約30wt%で存在する。さらなる実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約27wt%~約30wt%で存在する。一実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約20wt%で存在する。別の実施形態では、ロイシンは、乾燥粉末組成物の総重量の約30wt%で存在する。
【0110】
一部の実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、トレハロースである。他の実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、マンニトールである。
【0111】
一実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%のロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0112】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%のロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0113】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%のDSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%のロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0114】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%のDSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%のロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0115】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%のロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0116】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.75wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%のロイシン、および(d)約68.45wt%のマンニトールを含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。一実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(II)の化合物、(b)約0.75wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%のロイシン、および(d)約68.45wt%のマンニトールを含む。
【0117】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%のDSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%のロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0118】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%のDSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%のロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1.5wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0119】
別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、(a)約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%のDSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%のロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。さらなる実施形態では、乾燥粉末組成物中の(a)は、約1wt%の式(I)または(II)の化合物である。一部の実施形態では、Rは、式(I)の化合物におけるヘキサデシルである。さらなる実施形態では、Rは、式(I)の化合物における直鎖状ヘキサデシルであり、すなわち、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0120】
空気動力学的質量中央粒子径(MMAD)は、所与のエアロゾルの質量の50%が空気動力学的中央粒子径(MAD)よりも小さい粒子に関連し、質量の50%がMADより大きい粒子に関連する、空気動力学的粒子径の値である。MMADは、インパクターによる測定、例えばアンダーソンカスケードインパクター(ACT)または次世代インパクター(NGI)によって決定することができる。一部の実施形態では、乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約5μm、約1μm~約3μm、約1.3μm~約2.0μm、または約1.7μm~約2.7μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾルの形態である。一実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、マンニトールである。別の実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、トレハロースである。
【0121】
一実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖はマンニトールであり、乾燥粉末組成物は、NGIで測定した場合、約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾルの形態である。別の実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖はマンニトールであり、乾燥粉末組成物は、NGIで測定した場合、約1.7μm~約2.7μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾルの形態である。
【0122】
「微粒子率(fine particle fraction)」または「FPF」は、カスケードインパクションによって測定した場合、直径5μm未満の粒径を有するエアロゾルの分率を指す。FPFは、通常パーセンテージとして表される。FPFは、患者の肺に沈着する粉末の分率と相関することが実証されている。一部の実施形態では、乾燥粉末組成物は、NGIで測定した場合、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、約30%~約60%、約35%~約55%、または約40%~約50%のFPFを有する粒子を含むエアロゾルの形態である。一実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、マンニトールである。別の実施形態では、糖はトレハロースである。
【0123】
粉末のタップ密度は、粉末を既定の期間タップした後に、粉末に占められる体積に対する粉末の質量の比である。粉末のタップ密度は、そのランダムな高密度充填を表す。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density, United States Pharmacopeia convention, Rockville, Md., 10th Supplement, 4950-4951, 1999の方法を使用して決定することができる。一部の実施形態では、乾燥粉末組成物は、約0.2g/ml~約0.8g/ml、または約0.3g/ml~約0.6g/mlのタップ密度を有する粒子を含む。一実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、マンニトールである。別の実施形態では、乾燥粉末組成物中の糖は、トレハロースである。
【0124】
本開示の乾燥粉末組成物は、凍結乾燥または噴霧乾燥技法を使用して液体組成物から生成することができる。凍結乾燥が使用される場合、凍結乾燥された組成物は粉砕され、上記所望のサイズ範囲内の粒子を含有する微細に分割された乾燥粉末を得ることができる。噴霧乾燥が使用される場合、上記所望のサイズ範囲内の粒子を含有する微細に分割された乾燥粉末を生じる条件下で、このプロセスが行われる。乾燥粉末の形態の医薬組成物を調製する例示的な方法は、そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、WO96/32149、WO97/41833、WO98/29096、ならびに米国特許第5,976,574号、同第5,985,248号、および同第6,001,336号に開示される。例示的な噴霧乾燥方法は、そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,848,197号および同第8,197,845号に記載される。
【0125】
一部の実施形態では、本開示の乾燥粉末組成物は、以下のプロセスによって調製される。式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、およびDSPE-PEG2000のストック溶液は、アルコール(例えば、1-プロパノール)などの有機溶媒を使用して調製される。糖(例えば、マンニトールまたはトレハロース)およびロイシンの水性ストック溶液も調製される。その後、必要量の上記ストック溶液を水および有機溶媒の混合物に添加し、噴霧乾燥供給溶液を形成する。噴霧乾燥供給溶液では、水対有機溶媒の体積比は、約3:2~約1:1であり得る。
【0126】
噴霧乾燥は、乾燥ガス流をスタートさせ、例えば約120℃~約160℃、または約135℃~約150℃の所望の入口温度に設定することによって乾燥ガスを加熱することによって開始される。噴霧乾燥出口温度が、例えば約55℃~約65℃の好適な温度に到達した後、液体スキッド入口を、ブランク溶媒が噴霧乾燥機中で窒素の助けを借りて霧化されるよう設定し、システムを冷却および安定化させる。生成物フィルターのパルシングを開始し、生成物フィルターパージ流を、例えば10~20scfhに設定する。システムが安定化した後、液体スキッド入口を上記で調製した供給溶液に切り替え、供給溶液がなくなるまで、プロセスを継続する。供給溶液がなくなる時点で、液体スキッド入口をブランク溶媒に戻し、溶媒を約5~約20分間噴霧させる。この時点で、粉末は、生成物フィルターの底部で収集される。ブランク溶媒を約5~約20分間噴霧した後、液体ライン、霧化ガス、乾燥ガスヒーター、乾燥ガス入口および最終的に排気装置を止めることによりシステムを停止する。
【0127】
一実施形態では、本開示の乾燥粉末組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)を使用して吸入により対象の肺に送達される。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、単回用量乾燥粉末吸入器である。噴霧剤を含まないデバイスであるDPIは、対象の吸気を使用して乾燥粉末を対象の肺に送達する。DPIデバイスにおいて使用される乾燥粉末組成物の単位用量は、硬質カプセルの乾燥粉末ブリスターディスクであることが多い。本開示の乾燥粉末組成物を送達するのに好適な例示的なDPIデバイスとしては、以下の段落に記載のデバイス、ならびにそのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,766,799号、同第7,278,425号および同第8,496,002号に記載のDPIが挙げられる。
【0128】
AIR(登録商標)吸入器(Alkermes)は、カプセルから多孔質粉末を送達する小型の呼吸活性化システムを含む。多孔質粒子は、1~5μmの空気力学的粒子径を有する。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第99/66903号および同第00/10541号を参照されたい。
【0129】
エアロライザー(Aerolizer)(商標)(Novartis)は、単回用量の乾燥粉末吸入器である。このデバイスでは、乾燥粉末医薬は、カプセル内に保存され、TEFLON(登録商標)でコーティングしたスチールピンでカプセル壁を突き刺すことによって放出される。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,488,027号および同第3,991,761号を参照されたい。
【0130】
Bang Olufsenは、最大60回用量を含むブリスターストリップを使用する呼吸作動式吸入器を提供する。新規トリガー機構による吸入の間にのみその用量が利用可能になる。デバイスは、用量カウンターを備えており、すべての用量が使用された後に、処分され得る。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、EP1522325を参照されたい。
【0131】
クリックヘラー(Clickhaler)(登録商標)(Innovata PLC)は、大型リザーバー式呼吸活性化複数回用量デバイスである。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,437,270号を参照されたい。
【0132】
ダイレクトヘラー(DirectHaler)(商標)(Direct-Haler A/S)は、ポリプロピレン製の単回用量の、予め計量された、予め充填された、使い捨てのDPIデバイスである。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,797,392号を参照されたい。
【0133】
ディスカス(Diskus)(商標)(GlaxoSmithKline)は、防湿するための二重ホイルブリスターストリップに含有された最大60回用量を保有する使い捨ての小型DPIデバイスである。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、GB2242134を参照されたい。
【0134】
エクリプス(Eclipse)(商標)(Aventis)は、最大20mgの乾燥粉末組成物を送達可能な呼吸作動式の再利用可能なカプセルデバイスである。粉末は、カプセルからボルテックスチャンバーに吸引され、そこで、対象が呼吸すると、回転するボールが粉末の脱凝集を補助する。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,230,707号およびWO9503846を参照されたい。
【0135】
フレックスヘラー(Flexhaler)(登録商標)は、プラスチック製の呼吸活性化乾燥粉末吸入器であり、本明細書において提供される乾燥粉末組成物と共に使用するのに適している。
【0136】
フローカップス(FlowCaps)(登録商標)(Hovione)は、最大14カプセルを保有する、カプセルベースの、詰め替え可能な、再利用可能な乾燥粉末受動吸入器である。吸入器自体は耐湿性である。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,673,686号を参照されたい。
【0137】
ジャイロヘラー(Gyrohaler)(登録商標)(Vectura)は、ブリスターのストリップを含有する使い捨ての受動DPIである。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、GB2407042を参照されたい。
【0138】
ハンディヘラー(HandiHaler)(登録商標)(Boehringer Ingelheim GmbH)は、単回用量のDPIデバイスである。これは、カプセル内の最大30mgの乾燥粉末組成物を送達することができる。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第04/024156号を参照されたい。
【0139】
マイクロドーズDPI(MicroDose DPI)(Microdose Technologies)は、小型の電子DPIデバイスである。これは、圧電振動子(超音波周波数)を使用して、アルミニウムブリスター中の薬物粉末を脱凝集させる(単回または複数回用量)。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,026,809号を参照されたい。
【0140】
Nektarドライパウダー吸入器(Nektar Dry Powder Inhaler)(登録商標)(Nektar)は、手のひらサイズの使いやすいデバイスである。これは、標準的カプセルからの簡便な投薬および流量に依存しない肺沈着をもたらす。
【0141】
Nektar肺吸入器(Nektar Pulmonary Inhaler)(登録商標)(Nektar)は、粉末をパッケージから効率的に取り除き、粒子を破壊し、深肺への送達に好適なエアロゾル雲を生じる。これにより、エアロゾル化粒子が、患者の呼吸中にデバイスから深肺に輸送され、喉と上気道における損失を低減することが可能になる。圧縮ガスを使用して粉末をエアロゾル化する。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、AU4090599および米国特許第5,740,794号を参照されたい。
【0142】
NEXT DPI(商標)は、複数回用量の能力、防湿、および用量カウントを特徴とするデバイスである。デバイスは、適切な呼吸の流れに達した場合にのみ、方向(上下)および用量に関係なく使用することができる。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、EP1196146、米国特許第6,528,096号、WO0178693、およびWO0053158を参照されたい。
【0143】
ネオヘラー(Neohaler)(登録商標)は、カプセルベースのプラスチック製呼吸活性化乾燥粉末吸入器である。
【0144】
オリエル(Oriel)(商標)DPIは、圧電膜と非線形振動を利用して、粉末製剤をエアロゾル化する活性DPIである。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第0168169号を参照されたい。
【0145】
イタリアのPlastiapeによって開発されたRS01単回用量乾燥粉末吸入器は、コンパクトサイズおよび単純および有効な穿孔システムを特徴とし、ゼラチンとHMPCカプセルの両方に適応する。
【0146】
プレスエアー(Pressair)(商標)は、プラスチック製の呼吸活性化乾燥粉末吸入器である。
【0147】
プルビナル(Pulvinal)(登録商標)吸入器(Chiesi)は、呼吸活性化複数回用量(100回用量)乾燥粉末吸入器である。乾燥粉末は、透明であり、100回目の用量が送達された時点を表示するよう明確に印を付けたリザーバーに保存される。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,351,683号を参照されたい。
【0148】
ロトヘラー(Rotohaler)(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、カプセルを利用する一回用デバイスである。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,673,686号および同第5,881,721号を参照されたい。
【0149】
レクサムDPI(Rexam DPI)(Rexam Pharma)は、カプセルを用いて使用するように設計された、単回用量の再利用可能なデバイスである。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,651,359号およびEP0707862を参照されたい。
【0150】
S2(Innovata PLC)は、高濃度で乾燥粉末組成物を送達するための、再利用可能であるかまたは使い捨ての単回用量DPIである。その分散機構は、患者の肺への優れた薬物送達を達成するために、最小限の患者の努力しか必要としない。S2は、使いやすく、パッシブエンジンを有するため、電池も電源も必要としない。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、AU3320101を参照されたい。
【0151】
スカイヘラー(SkyeHaler)(登録商標)DPI(SkyePharma)は、一回用、または取り換え可能なカートリッジ中に最大300回の個々の用量を含有する複数回用量デバイスである。このデバイスは、呼吸によって動力を得て、呼吸と作動の間に連携を必要としない。そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,182,655号およびWO97/20589を参照されたい。
【0152】
タイフン(Taifun)(登録商標)DPI(LAB International)は、複数回用量(最大200回)のDPIデバイスである。これは呼吸作動式であり、流量に依存しない。このデバイスは、一貫して投薬するための容積用量計測システムに連結された固有の水分の均衡を保つ薬物リザーバーを含む。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,132,394号を参照されたい。
【0153】
ターボヘラー(TurboHaler)(登録商標)(AstraZeneca)は、その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,983,893号に記載される。このDPIデバイスは、最大200回用量の乾燥粉末組成物および数マイクログラム~0.5mgの用量範囲を与える複数回用量リザーバーを有する、吸気流に駆動される、複数回用量の乾燥粉末吸入器である。
【0154】
ツイストヘラー(Twisthaler)(登録商標)(Schering-Plough)は、用量カウントの特徴を有する複数回用量デバイスであり、14~200回の作動が可能である。乾燥粉末組成物は、乾燥剤を含有するカートリッジにパッケージングされる。その開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,829,434号を参照されたい。
【0155】
ウルトラヘラー(Ultrahaler)(登録商標)(Aventis)は、正確な用量計測と良好な分散を兼ね備える。これは、数値用量カウンター、摂取用量インジケーターおよびロックアウトメカニズムを有し、使いやすい、別個の、ポケットサイズのデバイスである。このデバイスは、最大20mgの乾燥粉末組成物を送達することが可能である。ウルトラヘラー(Ultrahaler)(登録商標)は、そのそれぞれの開示が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,678,538号およびWO2004026380に記載される。
【0156】
エクセロベール(Xcelovair)(商標)(Meridica/Pfizer)は、5~20mgの範囲の、60回の予め計量された、密閉シールされている用量を保有する。このデバイスは、40℃/75%RHの加速条件下で、防湿をもたらす。分散システムは、微粒子率を最大化し、最大50%の微粒子塊を送達する。
【0157】
別の態様では、(i)本明細書に記載の乾燥粉末組成物の1つおよび(ii)乾燥粉末組成物の投与のための乾燥粉末吸入器(DPI)を含むシステムが提供される。DPIは、(a)本明細書に開示される乾燥粉末組成物を含むリザーバー、および(b)乾燥粉末組成物を吸入により患者に導入するための手段を含む。リザーバーは、一実施形態では、カプセル内またはブリスターパック内に本発明の乾燥粉末組成物を含む。カプセルのシェル用材料は、ゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、または合成プラスチックであり得る。DPIは、単回用量または複数回用量の吸入器であってもよい。さらに、DPIは、予め計量されていてもデバイスで計量されていてもよい。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、単回用量乾燥粉末吸入器である。
【0158】
システムは、一実施形態では、肺高血圧症、門脈肺高血圧症、または肺線維症を処置するために使用される。システムは、本明細書に開示される乾燥粉末組成物、すなわち、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末組成物、およびDPIを含む。一実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)または(II)の化合物を含む。乾燥粉末吸入器は、上記のものであってもよく、単回用量もしくは複数回用量の吸入器であってもよく、および/または予め計量されているかもしくはデバイスで計量されていてもよい。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、単回用量乾燥粉末吸入器である。
【0159】
本発明の別の態様では、それを必要とする患者における肺高血圧症(PH)を処置するための方法が提供される。本方法は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物、すなわち、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、患者の肺に投与するステップを含む。一実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)または(II)の化合物を含む。一実施形態では、投与するステップは、DPIによって乾燥粉末組成物をエアロゾル化して、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を与えることと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を、DPIによって吸入により患者の肺に投与することとを含む。一部の実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約10μm、約1μm~約7μm、約1μm~約5μm、または約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含む。一実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約40%~約70%、約30%~約60%、または約50%~約60%のFPFを有する粒子を含む。
【0160】
世界保健機関(WHO)は、PHを5つの群に分類している。群1のPHは、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)、家族性肺動脈性肺高血圧症(FPAH)、および他の疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症(APAH)を含む。例えば、膠原血管病(例えば、強皮症)、体循環と肺循環の間の先天的シャント、門脈圧亢進症および/またはHIV感染症に伴う肺動脈性肺高血圧症は、群1のPHに含まれる。群2のPHは、左心疾患、例えば、心房もしくは心室の疾患、または心臓弁膜の疾患(例えば、僧帽弁狭窄)に伴う肺高血圧症を含む。WHOの群3の肺高血圧症は、肺疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症として特徴付けられる。群4の肺高血圧症は、慢性血栓症および/または塞栓症による肺高血圧症である。群4のPHは、慢性血栓塞栓性肺高血圧症とも称される。群4のPH患者は、血餅による血管の遮断または狭窄を経験する。群5のPHは、「多様な」カテゴリーであり、血液障害(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板血症)、全身障害(例えば、サルコイドーシス、血管炎)および/または代謝障害(例えば、甲状腺疾患、糖原病)によって引き起こされるPHを含む。
【0161】
本明細書において提供される方法を使用して、WHOによって特徴付けされた群1(すなわち、肺動脈性肺高血圧症またはPAH)、群2、群3、群4または群5のPH患者を処置することができる。本方法の一実施形態では、処置される肺高血圧症は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症である。
【0162】
本方法の別の実施形態では、処置される肺高血圧症は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)である。一部の実施形態では、処置されるPAHは、ニューヨーク心臓協会(NYHA)によって特徴付けされたクラスIのPAH、クラスIIのPAH、クラスIIIのPAH、またはクラスIVのPAHである。
【0163】
一実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIのPAHである。
【0164】
別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIIのPAHである。
【0165】
さらに別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIIIのPAHである。
【0166】
また別の実施形態では、PAHは、NYHAによって特徴付けされたクラスIVのPAHである。
【0167】
別の態様では、本開示は、それを必要とする患者における門脈肺高血圧症(PPH)を処置するための方法を提供する。本方法は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物、すなわち、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、患者の肺に投与するステップを含む。一実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)または(II)の化合物を含む。一実施形態では、投与するステップは、乾燥粉末組成物を乾燥粉末吸入器(DPI)でエアロゾル化して、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を与えることと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を、DPIにより患者の肺に投与することとを含む。一部の実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約10μm、約1μm~約7μm、約1μm~約5μm、または約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含む。一実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約40%~約70%、約30%~約60%、または約50%~約60%のFPFを有する粒子を含む。
【0168】
一部の実施形態では、本開示の方法によって処置されたPH、PAH、またはPPHの患者は、以下の治療応答の1つまたは複数を現す:(1)肺血管抵抗係数(PVRI)の処置前の値からの低下、(2)平均肺動脈圧の処置前の値からの低下、(3)低酸素症スコアの処置前の値からの増加、(4)酸素化指数の処置前の値からの低下、(5)処置前と比較して改善された右心機能、および(6)処置前と比較して改善された運動能力(例えば、6分間歩行試験によって測定した場合)。
【0169】
本開示の方法の一実施形態では、PH、PAH、またはPPHの患者は、乾燥粉末組成物を1日に1回投与される。本開示の方法の別の実施形態では、PH、PAH、またはPPHの患者は、乾燥粉末組成物を1日に2回投与される。本開示の方法のまた別の実施形態では、PH、PAH、またはPPHの患者は、乾燥粉末組成物を1日に3回またはそれより多い回数投与される。一実施形態では、投与は食事と共にされる。一実施形態では、各投与は、DPIからの1~5用量(パフ)、例えば、1用量(1パフ)、2用量(2パフ)、3用量(3パフ)、4用量(4パフ)または5用量(5パフ)を含む。このDPIは、一実施形態では、小型であり、患者によって移動可能である。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、単回用量乾燥粉末吸入器である。
【0170】
また別の態様では、本開示は、それを必要とする患者における肺線維症を処置するための方法を提供する。本方法は、本明細書に開示される乾燥粉末組成物、すなわち、式(I)もしくは(II)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩を含む乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、患者の肺に投与するステップを含む。一実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。別の実施形態では、乾燥粉末組成物は、式(I)または(II)の化合物を含む。一実施形態では、投与するステップは、乾燥粉末組成物をDPIでエアロゾル化して、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を形成することと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を、DPIにより患者の肺に投与することとを含む。一部の実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約1μm~約10μm、約1μm~約7μm、約1μm~約5μm、または約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含む。一実施形態では、エアロゾル化された乾燥粉末組成物は、NGIによって測定した場合、約40%~約70%、約30%~約60%、または約50%~約60%のFPFを有する粒子を含む。患者は、一実施形態では、乾燥粉末組成物を1日に1回、1日に2回、または1日に3回もしくはそれより多い回数投与される。一実施形態では、投与は食事と共にされる。一実施形態では、各投与は、DPIからの1~5用量(パフ)、例えば、1用量(1パフ)、2用量(2パフ)、3用量(3パフ)、4用量(4パフ)または5用量(5パフ)を含む。このDPIは、一実施形態では、小型であり、患者によって移動可能である。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は、単回用量乾燥粉末吸入器である。
【実施例
【0171】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに例証される。しかし、上記実施形態と同様に、これらの実施例は、例示であり、本発明の範囲を制限するものとして決して解釈されるべきではないことに留意されたい。
(実施例1)
式(II)の化合物(トレプロスチニルパルミチル)を含む吸入可能な乾燥粉末製剤の調製および特徴付け
【0172】
この実施例は、式(II)によって表されるトレプロスチニルパルミチルを含むマンニトールおよびトレハロースベースの乾燥粉末製剤、Inert LoopコンデンサーB-295および減湿器B-296を備えたBuchi B-290噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥することによるそれらの調製、ならびにこれらの製剤の特徴付けおよび安定性試験について記載する。
【0173】
構成成分としてトレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000/マンニトール/ロイシン(1/0.5/80/20、1.5/0.75/80/20、2/1/80/20、w/w)を有するマンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤を作ることに成功した。炭酸水素アンモニウムを添加せずに、1-プロパノール/HO共溶媒系(50/50、v/v)にすべての構成成分を溶解することによって、供給ストックを作った。マンニトールベースの乾燥粉末に関する噴霧乾燥収率は、90%を超えていた。収集した乾燥粉末は、球形粒子、結晶性XRDプロファイル、および低水分含量を有した。
【0174】
トレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000/トレハロース/ロイシン(1/0.5/80/20、1/0.5/70/30、1.5/0.75/80/20、2/1/80/20、w/w)の構成成分を有するトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤は、炭酸水素アンモニウムを添加せずに、1-プロパノール/HO共溶媒系(50/50、v/v)に溶解されたすべての構成成分を含有する供給ストックを噴霧乾燥することによって作った。トレハロースベースの乾燥粉末は、崩れた粒子を含有し、結晶性ロイシンおよび非晶質トレハロースを提示した。トレハロースベースの乾燥粉末は、3カ月にわたって良好な物理的安定性を示した。
材料および方法
1.材料
【0175】
リン酸緩衝食塩水:PBS、PH7.4、カタログ番号10010(Life technologies,)、または等価物
【0176】
塩化ナトリウム:ACS試薬(JT Baker、カタログ番号3628-05)、または等価物
【0177】
トレプロスチニルパルミチル、式II、上記
【0178】
DSPE-PEG2000:N-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩、SUNBRIGHT(登録商標)DSPE-020CN(NOF、Tokyo、Japan)、または等価物
【0179】
D-ラクトース、一水和物、(Sigma)
【0180】
L-ロイシン、(Sigma)
【0181】
炭酸水素アンモニウム(Sigma)
【0182】
無水エタノール(Fisher Sci)
【0183】
1-プロパノール(Fisher Sci)
2.装置
【0184】
Inert LoopコンデンサーB-295、減湿器B-296、二流体ノズルID 0.7mm、および高性能サイクロンセパレーター分離器(Buchi)を備えたBuchi B-290噴霧乾燥器
【0185】
SEM:Zeiss-Sigma FE-SEM(Germany)
【0186】
XRD:(PANalytical、Netherlands)
【0187】
DSC 250、TA Instruments、New Castle、DE、USA
【0188】
タップ密度試験機、JV 1000、(Copley Scientific、UK)
【0189】
NGI:次世代インパクター(Next Generation Impactor)、(MSP Corporation、MN、USA)
【0190】
PSD:RODOS/M、(Sympatec、Germany)
【0191】
Karl Fischer滴定器:Aquastar、AQV33、EMD。
【0192】
DLS:Mobius(登録商標)、Atlas、(Wyatt Technology、Santa Barbara、CA)
【0193】
高性能液体クロマトグラフ:Waters Alliance Model 2695。HPLCソフトウェア:Waters Empower(商標)3
【0194】
マグネチックスターラープレート
3.重量比1:0.5:80:20でトレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、トレハロース、およびロイシンを含む乾燥粉末製剤の調製
【表1】
ストック溶液の調製:
【0195】
トレプロスチニルパルミチル:1-プロパノール中10mg/mL
【0196】
DSPE-PEG2000:1-プロパノール中10mg/mL
【0197】
トレハロース:DI水中150mg/mL
【0198】
ロイシンストック:DI水中20mg/mL:
噴霧乾燥供給溶液の調製:
【0199】
表1によれば、噴霧乾燥供給溶液は、トレプロスチニルパルミチルと、トレハロースおよびロイシンの総量との重量比が1:100で調製した。最終供給溶液は、50%の1-プロパノールと20.3mg/mLの固体を有した(表2)。
【0200】
トレハロースとロイシンストック溶液を最初に水相に添加し、続いて1-プロパノールを添加し、水浴中で超音波処理した。次いで、トレプロスチニルパルミチル(式(II))とDSPE-PEG2000を別々に添加した。全プロセスにわたり、撹拌を適用した。
【表2】
トレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000/Treh/Leu(1/0.5/80/20)を含有するトレハロースベースの乾燥粉末の噴霧乾燥プロセス:
【0201】
以下のパラメーターの下で噴霧乾燥器Buchi B-290を使用して噴霧乾燥を実施した:150℃の入口温度、64℃の出口温度、414L/時の噴霧空気流(36mm、ロータメーターの高さ)、吸引速度として35%m/時、および7.5mL/分の供給速度(22%)。表3にプロセスのパラメーターをまとめる。
【表3】
4.重量比1:0.5:80:20でトレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、マンニトール、およびロイシンを含む乾燥粉末製剤の調製
【表4】
ストック溶液の調製:
【0202】
トレプロスチニルパルミチル:1-プロパノール中10mg/mL
【0203】
DSPE-PEG2000:1-プロパノール中10mg/mL
【0204】
マンニトール:DI水中150mg/mL
【0205】
ロイシンストック:DI水中20mg/mL
噴霧乾燥供給溶液の調製:
【0206】
表4によれば、トレプロスチニルパルミチルと、マンニトールおよびロイシンの総量との重量比が1:100で噴霧乾燥供給溶液を調製した。最終供給溶液は、50%の1-プロパノールと20.3mg/mLの固体を有した(表5)。
【0207】
マンニトールとロイシンストック溶液を最初に水相に添加し、続いてプロパノールを添加し、水浴中で超音波処理した。次いで、トレプロスチニルパルミチルとDSPE-PEG2000を別々に添加した。全プロセスにわたり、撹拌を適用した。
【表5】
トレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000/マンニトール/Leu(1/0.5/80/20)から構成されるマンニトールベースの乾燥粉末の噴霧乾燥プロセス:
【0208】
以下のパラメーターの下で噴霧乾燥器Buchi B-290を使用して噴霧乾燥を実施した:135℃の入口温度、60℃の出口温度、414L/時の噴霧空気流(36mm、ロータメーターの高さ)、吸引速度として35%m/時、および7.5mL/分の供給速度(22%)。表6にプロセスのパラメーターをまとめる。
【表6】
5.乾燥粉末の特徴付け
表面電子顕微鏡(SEM)
【0209】
乾燥粉末試料(入手時のもの)をカーボンテープにかけ、次いで、Electron Microscopy Sciences(EMS150T ES)スパッターコーターを使用して20nmの金(Au)でコーティングした。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を使用して、5keVの作動電圧を有するZeiss-Sigma FE-SEM(Germany)を使用して粒子形態を観察した。動作距離を8~10mmに保ち、比較的高い解像度を得た。
X線回折試験(XRD)
【0210】
乾燥粉末試料(入手時のもの)をゼロ-バックグラウンド試料ホルダーに詰め、次いで、1分当たり0.04ラジアン(rad)の度合いの走査速度のCu Kα(λ=1.540598Å)放射を有する45kVおよび40mAのPANalytical(Netherlands) X’Pert回折計を使用して、構造上の特徴を評価するためにX線回折(XRD)を用いた。走査範囲は、4°~40°の度合い(2θ)であり、1ステップ当たりの時間が97.92秒および0.0131°のステップサイズであった。
示差走査熱量測定(DSC)
【0211】
およそ5~10mgの乾燥粉末をDSC試料パンに秤量し、次いで、密閉シールした。以下のように試験を実施した:20℃で平衡化、モジュレーション温度0.32℃で60秒、等温1.0分、勾配5℃/分~180.0℃。
レーザー回折による粒径分布(PSD)
【0212】
およそ15mg~20mgの乾燥粉末を必要とされるガラス管に入れた。Sympatech-HOLOS-REDOSモードを使用した。試験パラメーターは以下の通りであった:
【表1A】
水分含量試験(Karl Fischer)
【0213】
乾燥粉末中の水分含量をKarl Fischerを使用して分析した。おおよそ30mgの試料を秤量し、滴定容器に移した。装置、材料および作動パラメーターは、以下に記載したように使用した:
材料/装置:
(1)滴定装置:関連する天秤を有する、5mLビュレットを備え付けたAquastar AQV33 Karl Fischer滴定器
(2)天秤:Aquastar滴定器に接続することが可能なインターフェースを有する最大小数点以下4桁まで秤量することが可能な化学天秤。
(3)Water Standard 1% NIST
(4)乾燥剤(Dessicant)100%指示、またはモレキュラーシーブ、タイプ4A、1/16ペレット
(5)リントフリーのクロス、キムワイプ
(6)秤量ボート
(7)シリンジ 3mL
溶液:
(1)滴定液:Aquastar CombiTitrant 2
(2)溶媒:60/40のメタノール/ホルムアミド
機器のパラメーターおよび条件:
(1)ドリフト:<50μg/分
(2)撹拌速度:40%
(3)混合時間:300秒
(4)終了:相対的ドリフト
かさおよびタップ密度
【0214】
タップ密度試験機、JV 1000(Coply Scientific、UK)によって密度試験を実施した。以下の手順を続けた。ガラス管を清浄化し、圧縮空気で乾燥させる;ガラス管を秤量し、W1と記録する;乾燥粉末をガラス管に移し、高さをAと印付け、重量をW2と記録する;パラフィルムで上部を密封する;ガラス管を5mLのメスシリンダーに入れ、10分間タッピングする;タッピング後に高さをBと印付ける;粉末を管から取り除き、清浄化し、圧縮空気で乾燥する;ガラス管を秤量し、W3と記録する;Bのレベルまで水を添加し、重量をW5と記録する;Aのレベルまで水を添加し、重量をW4と記録する。(水の密度は1g/mLに等しいと仮定する)
【表1B】
NGIを使用する空気力学的粒径分布(aerodynamic particle size distribution)(APSD)
【0215】
サイズ3のVcaps HPMCカプセルに充填したおよそ20mgの粉末を、市販の吸入器(Plastiape RS01)によって、60L/分の体積流量で操作され、4秒間作動させた次世代カスケードインパクター(NGI)(Copley Scientific、UK)中に分散させた。NGI器械から各段階で収集した薬物含量をHPLC-MSで評価した。NGI中に沈着した薬物塊(<5μm)として微粒子率(FPF)を定義し、排出量(emitted dose)で除した。
HPLCアッセイ
【0216】
PDA検出器(Waters 2996)とコロナ荷電化粒子検出器(Thermo Fisher Scientific)を備えたウォーターズアライアンスモデル2695を使用して、トレプロスチニル(TRE)およびトレプロスチニルパルミチルの濃度を決定した。
カラム:ACE 3 C8 HPLCカラム 4.6×50(Mac-Mod Analytical、カタログ番号ACE1120546)
カラム温度:25℃
移動相A:アセトニトリル25%、メタノール25%、水50%、ギ酸0.1%、トリエチルアミン0.01%
移動相B:アセトニトリル50%、メタノール50%、ギ酸0.1%、トリエチルアミン0.01%
流量:1mL/分
TREを測定するためのグラジエント:
注入体積:50μL
UV波長:270±2.4nm
試料および標準物質をアセトニトリル33%、メタノール33%、水33%中に溶解させた
カリブレーションは、検出力関数Log(面積)=A+BLog(濃度)により近似した。
保持時間 TRE 約1.8分、C16TR 約7.6分
総記録時間 9分
結果
1.マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のバッチ
【0217】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の様々なバッチを噴霧乾燥によって調製した。これらのバッチでは、乾燥粉末中のトレプロスチニルパルミチルの量は1~5%(重量比、w/w)で変化したが、トレプロスチニルパルミチルとDSPE-PEG2000との比は2対1に保たれた。ロイシン含量は、乾燥粉末の0~30%(w/w)の間の範囲である。炭酸水素アンモニウムの効果も調査した。噴霧乾燥プロセスの間に、入口温度は120℃~150℃に変化した。表7Aは、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の様々なバッチに関する組成および入口温度を示す。各バッチについて、トレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、マンニトール、およびロイシンの量を重量比で表示する。トレプロスチニルパルミチルとロイシンの量も、重量比でのそれらの比率によって表されるそれらのおおよその重量パーセンテージで表示する。表7Bは、重量比に基づいて計算した、各バッチにおけるトレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、マンニトール、およびロイシンの標的重量パーセンテージを示す。
【表7A】
【表7B】
1.1.噴霧乾燥回収に対するロイシン含量の効果
【0218】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の特性に対するロイシンの効果を評定した。4つのロイシン負荷量、すなわち0%、10%、20%および30%について評定した。ロイシン含量の低下を補うために、マンニトール負荷量の増加を適用した。
【表8】
【0219】
ロイシンを含有しないバッチからの噴霧乾燥回収(%)は低かった。回収率は、ロイシンレベルが10%および20%まで増加すると、有意に増加した。その後、ロイシン含量が30%までさらに増加すると、回収率はわずかに下降した(図1)。20%のロイシンを含むバッチが、粉末密度に関して最も高い値を有した(表8)。
1.2.粉末の形態に対するロイシン含量(30%、20%、10%および0%)の効果、
【0220】
粉末表面に対するロイシン含量の効果を検査するためにSEMを実施した(図2A~2D)。ロイシン含量の変化は、マンニトール対ロイシンの様々な重量比、すなわち70/30、80/20、90/10、および100/0をもたらした。
【0221】
マンニトール対ロイシンの様々な重量比(70/30、80/20、90/10、および100/0)を有するトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末試料を作製した。SEMデータは、ロイシン含量が20%~30%に増加することにより、しぼ面を有する粉末が生じることを示した(図2Aおよび2B)。ロイシンを含まない乾燥粉末は、低回収率のものと一緒に、噴霧乾燥後に砕かれた(図2D)。さらなる研究では、20%のロイシンを使用した。
1.3.PSDに対するロイシン含量の効果(レーザー回折によって試験した)
【0222】
10、20および30%のロイシン(w/w)を含有するマンニトールベースの乾燥粉末の3つのバッチをレーザー回折によって調査した。バッチの情報を表9に示した。
【表9】
【0223】
図3に示されるように、20%のロイシンを含む製剤が最も小さな粒径(D50)を有した。20%のロイシンを含む製剤をこの実施例のさらなる研究において使用することになる。
1.4.MMADに対する様々な量のトレプロスチニルパルミチルの効果
【0224】
様々な量のトレプロスチニルパルミチルを、乾燥粉末の特性に対するそれらの効果を調査する目的で、マンニトールベースの乾燥粉末製剤に加えた。表10に示されるように、1%~5%の範囲に及ぶトレプロスチニルパルミチルを有し、トレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000の重量比が2:1の乾燥粉末の5つのバッチを調製した。
【表10】
【0225】
MMADの値は、乾燥粉末中に1~2%のトレプロスチニルパルミチルが存在する場合に一定であり、トレプロスチニルパルミチルが3~5%に増加すると有意に増加した(図4)。
1.5.粉末の形態に対する150℃、135℃および120℃の噴霧乾燥入口温度の効果
【0226】
同じ構成成分比を有するマンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を異なる入口温度、すなわち150℃、135℃、および120℃で作製した(表11)。乾燥粉末の形態に対する入口温度の効果を最初に調査した。SEMによって、135℃と120℃のより低い入口温度で噴霧乾燥した乾燥粉末試料において、より少ない表面の破壊しか存在しないことが明らかになった(図5A~5C)。135℃と120℃の間に有意差は認められなかったため(図5Bおよび5C)、135℃の入口温度をさらなる調査において使用した。
【表11】
1.6.マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の形態に対する供給ストックにおける炭酸水素アンモニウム(ABC)の効果
【0227】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の形態に対するABCの効果を、乾燥粉末を調製する際に供給ストックにABCを添加するか、または添加しないことによって検査した(表12)。ABCの添加によって粉末表面の変化は観察されなかった(図6Aおよび6B)。したがって、ABCは、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末に適用されないであろう。
【表12】
1.7.マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の物理化学特性
【0228】
すべての構成成分を含有する溶液を噴霧乾燥することによって、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を作製した。マンニトールベースの乾燥粉末が、DSC試験におけるTgおよび粉末X線回折試験(XRD)における広範なピークなどのいくつかの非晶質特性を示すことが予想された。図7Aおよび7Bは、それぞれ、1%のトレプロスチニルパルミチルおよび20%のロイシンを有するバッチSD-NNP-179からのDSCおよびXRDのデータを示した。このバッチから、Tgは検出されず、粉末XRDにおける鋭いピークが観察された。これら2つの特徴は、組成および噴霧乾燥条件の差異にかかわらず、他のバッチからも認識された。
2.トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のバッチ
【0229】
様々なバッチのトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を、噴霧乾燥を使用して作った。表13Aは、バッチの組成および噴霧乾燥プロセスに使用した入口温度を示す。各バッチについて、トレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、トレハロース、およびロイシンの量を重量比で表示する。表13Bは、重量比に基づいて計算した、各バッチにおけるトレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、トレハロース、およびロイシンの標的重量パーセンテージを示す。これらのバッチは、トレプロスチニルパルミチル含量が1~2%(重量比、w/w)で変化したが、トレプロスチニルパルミチル対DSPE-PEG2000の比は、2対1で同じに保たれた。これらのバッチにおけるロイシン含量は、20%または30%(w/w)であった。噴霧乾燥プロセス中、入口温度は110℃~155℃に変化した。
【表13A】
【表13B】
2.1.粉末の形態に対するロイシン含量の効果
【0230】
2種のレベルのロイシン(20%および30%)を含むトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を調製した(表14)。SEMデータは、ロイシン含量が20%~30%に増加することにより、しわのよった粉末表面が生じることを示した(図8Aおよび8B)。
2.2.粉末のエアロゾル性能に対するロイシン含量の効果
【0231】
本発明者らは、2種のレベルのロイシン、すなわち20%および30%をトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末に加え、それらの粒径(D50、レーザー回折)およびMMADを比較した(表14)。
【表14】
【0232】
表14のデータは、30%のロイシンを含む乾燥粉末が、20%のロイシンを含むものと比較して、より大きな幾何粒径(D50)ならびに喉およびプレセパレーターへの粉末のより少ない沈着を有したことを表示している。ロイシンの可溶性が低いことが、ロイシンが最初に沈殿することの原因であろう。ロイシンの量がより多いことによって、より早い沈殿が誘発され、より大きな粒子が作製されるであろう。しかし、MMADには有意差がなかった。
2.3.乾燥粉末のエアロゾル性能に対するトレプロスチニルパルミチル含量の効果。
【0233】
様々な量のトレプロスチニルパルミチルを、乾燥粉末の特性に対するそれらの効果を調査する目的で、トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末に加えた。表15に示されるように、乾燥粉末の4つのバッチを1%~2%の範囲のトレプロスチニルパルミチル含量で調製し、トレプロスチニルパルミチル/DSPE-PEG2000の重量比を2:1に固定した。
【表15】
【0234】
乾燥粉末中により多くのトレプロスチニルパルミチルを含むと、MMADと喉およびプレセパレーターへの沈着とは増加したが、微粒子率(FPF)は低下した(表15)。
2.4.粉末の形態に対する噴霧乾燥入口温度の効果
【0235】
噴霧乾燥プロセスにおける入口温度は、水分含量、粒径および粉末の形態などの乾燥粉末の特性に影響を及ぼすことが期待された。130℃と150℃の2つの入口温度を、表16に示したトレハロースベースのビヒクル乾燥粉末のバッチを用いて調査した。
【表16】
【0236】
SEMによって、150℃の高い入口温度によって粉末が砕かれたことが明らかになった(図9A~9C)。しかし、最終乾燥粉末における高水分を防ぐために、トレプロスチニルパルミチルを含有するトレハロースベースの乾燥粉末に対して150℃を使用することになる。
2.5.トレハロースベースの乾燥粉末の物理化学特性
【0237】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末と同様に、トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を、構成成分のすべてを含有する溶液を噴霧乾燥することによって生成した。乾燥粉末が、DSCにおけるTgおよび粉末X線回折(XRD)における広範なピークなどのいくつかの非晶質特性を示すことが予想された。
【0238】
表17に示したトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のバッチをDSCおよびXRDに供した。DSC試験では、すべてのバッチについて、64℃~80℃の範囲に及ぶTgを観察した。粉末が、バッチSD-NNP-162およびSD-NNP-163において観察されたように、一晩の凍結乾燥によって2回目の乾燥を経た場合に、乾燥粉末中の水分が低下するために、Tgは上昇し得る(図10A)。マンニトールベースの乾燥粉末由来のXRDと比較して、トレハロースベースの乾燥粉末由来のものは、鋭いピークをあまり示さず(図10B)、これはトレハロースの非晶質状態に原因を帰した。これらのバッチはすべて、構成成分の重量比および噴霧乾燥条件の差異にかかわらず、類似するXRDデータを示した。表17は、MMAD、FPF、および喉+プレセパレーターへの沈着を含む乾燥粉末のバッチのさらなる特性を示す。
【表17】
3.マンニトールおよびトレハロースベースの乾燥粉末の動的水蒸気吸着(DVS)プロファイル
【0239】
製品を不安定にし、パッケージングの問題を引き起こす水分を、噴霧乾燥、パッケージング、および保管中に乾燥粉末製剤に加えてもよい。噴霧乾燥の際に、乾燥粉末中の水分は、2回目の乾燥によって低減され得る。しかし、パッケージング中に、粉末は、たとえ湿度制御条件下であっても、環境に曝露された場合に水分を吸収する場合がある。マンニトールおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の水分吸収を検査した。
【0240】
図11に示されるように、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末は、RH%が0~40%に増加した場合、最大0.3%の水分を吸収し得る。ラクトースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末と比較して、マンニトールベースの乾燥粉末は、はるかに少ない水分しか吸収せず、これはおそらく、マンニトールベースの乾燥粉末が結晶性マンニトールとロイシンを含有しており、両方の安定形態が非水和形態であるためである。
【0241】
トレハロースベースの乾燥粉末に関する水分吸収プロファイルを図12(20%のロイシンを含む粉末)および図13(30%のロイシンを含む粉末)に示す。トレハロースベースの乾燥粉末の重量変化は、50%のRH%でピークに達した。その後、トレハロースの物理的形態が非晶質から結晶に変わることにより水分の取り込みが下降した。20%および30%のロイシンを含む粉末製剤は同様の水分取込みデータを有したが、後者の製剤は1%の未満の吸収しか有さなかった。しかし、脱着プロセスにおける差異は有意であった。30%のロイシンを含む粉末は、0%のRH%でより高い水分残量を提示した。
4.マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末に関する安定性試験
【0242】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末に関する安定性試験を、湿度制御なしで、3カ月にわたり40℃で実施した。1、1.5、2、3および5%のトレプロスチニルパルミチルを含有する、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の5つのバッチを調査した(表18)。NGI試験によって、一般に、乾燥粉末のMMADが2か月の時点で急激に上昇し、その後1カ月の時点のものに類似するレベルに戻ることを示した(図14)。SEMデータは、密集した小さな線維が粉末表面で増えることを示した(図15A、15B、16A、16B、17A、17B、18A、および18B)。
【表18】
【0243】
表19は、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のバッチの安定性データの詳細を示す。20%のロイシンを含有するマンニトールベースの乾燥粉末のバッチのすべてにおいて、MMADとFPFの有意な変化が観察された。さらに、初期MMADは、3および5%のトレプロスチニルパルミチルを含む乾燥粉末のものと比較して、1、1.5、および2%のトレプロスチニルパルミチルを含む乾燥粉末に関してより低かった。
【表19】
5.トレハロースベースの乾燥粉末に関する安定性試験
【0244】
20%または30%のロイシンおよび1%~2%の範囲に及ぶトレプロスチニルパルミチルを含むトレハロースベースの乾燥粉末製剤に関する安定性試験も、マンニトールベースの乾燥粉末製剤に関するのと同じ条件下で実施した。3.5カ月の研究期間にわたり、有意な変化は観察されなかった(表20ならびに図21A、21B、22A、22B、23A、23B、24A、および24B)。
【表20】
【0245】
表21は、トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のバッチの安定性データの詳細を示す。バッチSD-NNP-162およびSD-NNP-188についてMMADは有意に増加した(表21および図19)。FPF値は、バッチSD-NNP-162では最も著しく低下した(図20)。バッチSD-NNP-163(トレプロスチニルパルミチル1%、ロイシン30%)は最も低く安定したMMADと最も高く安定したFPFを示した。
【表21】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の知見の概要
【0246】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末において、ロイシンの添加は、高い噴霧乾燥回収率をもたらした。20%のロイシンを含むマンニトールベースの乾燥粉末は、球形の粒子形状および低い幾何直径(D50=2.75μm)をもたらした。
【0247】
噴霧乾燥プロセスにおいて、120℃~150℃で変化した入口温度は、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の形態に影響を与えなかった。135℃で生成した乾燥粉末由来の水分含量がおよそ1%であったため、入口温度を135℃に設定した。
【0248】
DSC試験において、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末からガラス転移は検出されず、このことは、X線回折試験(XRD)の結果が結晶性物質を表示すことを支持した。さらに、噴霧乾燥したマンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末はほとんど吸湿性(hydroscopic)ではなく、90%のRH%で1%未満の水分しか吸収しなかった。
【0249】
マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の安定性試験において、1~2%のトレプロスチニルパルミチルを含む製剤では2カ月の時点で、より高いトレプロスチニルパルミチル含量を含む製剤では1カ月の時点で、MMADが急激に上昇した。その後の時点ではMMADは下降した。すべての製剤は、保存後に粉末表面に線維を示した。
トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤に関する知見の概要
【0250】
30%のロイシンを含有するトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末は、20%のロイシンを含有するものと比較して、しわのよった表面ならびに喉およびプレセパレーターへの粉末の沈着の低下を有した。しかし、2つの間のMMADに有意差は存在しなかった。
【0251】
噴霧乾燥プロセスにおける入口温度は、最終乾燥粉末中のより低い水分含量を達成するために、150℃を選択した。
【0252】
64~80℃の範囲のガラス転移温度(Tg)が観察され、これは、乾燥粉末中のトレハロースの非晶質状態を表示した。トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末は、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末と比較して、より高い水分の吸収を示した。
【0253】
安定性試験において、試験したトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のほとんどは、FPFの有意な変化を提示しなかった。すべての製剤は、保存後に粉末表面に毛髪様結晶を示した。
【0254】
まとめると、この実施例のデータは、最大2wt%の範囲のトレプロスチニルパルミチル含量がトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の物理特性に影響を及ぼさなかったことを表示している。3および5wt%のトレプロスチニルパルミチルでは、マンニトールベースの粉末の初期MMADの増加が認められた。ロイシン含量は、乾燥粉末のエアロゾル特性に対して重要であることが分かった。
(実施例2)
吸入可能なマンニトールおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の製造、カプセル化、および特徴付け
【0255】
この実施例は、4種のトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤、すなわち製剤A、B、C、およびDの噴霧乾燥およびカプセル化による製造について記載する。製剤AおよびDはマンニトールベースであり、重量比と重量比に基づいて計算された標的重量パーセンテージの両方におけるそれらの組成を表22に示す。製剤BおよびCはトレハロースベースであり、重量比と重量比に基づいて計算された標的重量パーセンテージの両方におけるそれらの組成を表23に示す。この実施例はまた、粒径、形態、水含量、溶媒含量、物理的状態、水蒸気吸着プロファイル、熱特性、および温度の関数としての重量損失に関する製剤A~Dの特徴付けについて記載する。
【表22】
【表23】
1.製剤A、B、C、およびDの噴霧乾燥による製造
【0256】
それぞれおおよそ55グラムの製造中の固体を用い、BLD-200噴霧乾燥機を使用して、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤A、B、C、およびDを製造した。各条件間で、ブランク溶媒溶液を噴霧して、前の製剤が溶液ラインから片付けられたことを保証した。これらの条件間でさらなる噴霧乾燥機の洗浄は実行しなかった。
【0257】
4種の製剤のそれぞれを独立した溶液として調製した。光から保護せずに室温で溶液を調製した。各溶液の調製のために、以下のステップを実施した:
1.ロイシンを脱イオン水に溶解させた。
2.糖(マンニトールまたはトレハロース)を脱イオン水に溶解させた。
3.水性溶液を0.2μmのPVDF膜を通して濾過した。
4.DSPE-PEG2000を1-プロパノールに溶解させた。
5.トレプロスチニルパルミチルを1-プロパノールに溶解させた。
6.有機溶液を撹拌水溶液に添加した。
【0258】
噴霧乾燥製剤およびプロセス条件を表24に列挙する。製造収率は、54~80質量%の範囲に及んだ。各製剤のバルク乾燥粉末のパッケージングを乾燥グローブボックス内で実行した。
【表24】
2.粉末のカプセル化
【0259】
エクセロドーズ600Sを使用して、乾燥粉末製剤をカプセル化し、製剤当たり50~51個のカプセルに充填した。好適な相対湿度は30%未満であった。カプセル化の概要を表25に示す。例えば、各カプセルに、112.5μgのトレプロスチニルパルミチル、56.2μgのDSPE-PEG2000、5133.8μgのマンニトール、および2197.5μgのロイシンを充填することによって、製剤Dの典型的なバッチ(1.50wt%のトレプロスチニルパルミチル、0.75wt%のDSPE-PEG2000、68.45wt%のマンニトール、および29.30wt%のロイシンを含有する)から、カプセルを作った。上記で表示したように典型的なwt%値の±5%で独立して変化するかまたはその±5%以内の、各構成成分に関するwt%を有する製剤Dの他のバッチは、同等の特性および性能を有することが観察された。カプセルをガラスジャーに収集し、0.5gの分子篩乾燥剤と共にフォイルバッグ中に熱で密封した。
【表25】
3.分析による特徴付け
【0260】
粒径分布、粒子形態、水含量、残留溶媒、物理的状態、水分吸着および熱特性について、4つの製剤のそれぞれを評定した。結果の概要を表26に示す。
【表26】
3.1.粒径分布
【0261】
これらの製剤は呼吸送達の標的とされたため、標的粒径は5μm未満であるべきであった。粒径分布は、シロッコ2000乾燥粉末分散ユニットを有するマルバーンマスターサイザー22000上で、レーザー回折によって測定した。すべての試料に関する初期圧力滴定スクリーニングを方法の開発のために実施し(n=1)、結果は、使用される3つの分散空気圧(2.5、3.0および3.5バール)間でほぼ同一であることが観察された(図25)。この初期スクリーニングに基づき、3.0バールの分散空気圧でさらに2つの複製(n=2)を測定した。図26および表27に示した分布で結果を平均化した。これらの測定値について、Fraunhoferの近似モデルを使用した。供給率65%、バックグラウンド測定時間10秒および試料測定時間30秒で小型の試料トレーを使用した。オブスキュレーションフィルタリングによって、1~6%の間のデータを捕捉することが可能となった。
【表27】
3.2.粒子形態
【0262】
4つの製剤を、それぞれ、日立SU3500走査電子顕微鏡を使用して、500、1500、および5000倍で画像化した。5000倍で撮影した画像を図27(製剤A)、図28(製剤B)、図29(製剤C)および図30(製剤D)に示す。すべての製剤は、おおよそ3μmまたはそれより小さい直径の完全な球形および凹んだ球形の粒子を含有し、レーザー回折の結果と一致した。製剤Cは最もしわがよっているようであったのに対し、製剤Aは最も「平滑」であったようであった。表面粗さはエアロゾル性能を改善し得る。すべての製剤について、粒子の有意な結晶性表面の形成または融合は観察されなかった。
3.3.水含量
【0263】
これらの製剤は、水を含む溶剤混合物から噴霧乾燥したため、メトロノーム874オーブンサンプルプロセッサを使用して試料の水含量を分析した。最初に、3つのブランクと3つの水標準物質を試験し、試料を試験する前にシステム適合性を決定した。20ミリグラムの試料(n=3の複製)を、各製剤について、50℃の開始温度から2.5℃/分の加熱速度で140℃に加熱した。すべての製剤に関する水含量は、表28に示されるように3質量%未満であった。トレハロースを含有する製剤(BおよびC)は、マンニトールで製剤化したもの(AおよびD)よりも高い水含量を提示した。より高いロイシン含量を含有する製剤(CおよびD)もより高い水含量を提示した。
【表28】
3.4.残留溶媒
【0264】
噴霧溶媒中の他の構成成分は1-プロパノールであったため、Agilent 7890ガスクロマトグラフィーシステム上でヘッドスペース法を使用して、1-プロパノールの残留量を決定した。すべての試料が0.5質量%未満の1-プロパノールしか有さず(表29)、より多くのロイシンを含む製剤(CおよびD)は、マンニトールを含有する製剤(AおよびD)と同様により少ない残量の1-プロパノールを有した。
【表29】
3.5.粉末のX線回折
【0265】
リガクMiniFlex 600粉末X線回折計を使用して、試料の結晶性を評価した。0.2mmのゼロバックグラウンドホルダー(ZBH)ディスク上で試料を調製し、3~40 2θの機器にランした。製剤AおよびDは、結晶性マンニトール(多形混合物と同様に)およびロイシンを提示したが、製剤BおよびCは、非晶質トレハロースと共に結晶性ロイシンを提示した。
【0266】
構成成分は、噴霧乾燥された製剤と比較して、原材料と異なる回折強度を提示し得る。マンニトールを含有する製剤は、類似する回折パターンを有するようであった。トレハロースを含有する製剤もまた、類似する非晶質回折パターンを有するようであった。
3.6.示差走査熱量測定(DSC)
【0267】
熱転移を使用して、製剤の安定性を予測することができる。TA Instruments Q2000示差走査熱量測定計上で、4つの製剤を走査させた。これらを密封シールし、機器にランする前に、試料を一晩乾燥環境(5%RH未満)中で平衡化した。0~180℃まで2.5℃/分の加熱勾配速度で、モジュレーションを±1.5℃/分に設定した。64℃での熱事象をすべての試料について観察し、この事象はトレプロスチニルパルミチルまたはDSPE-PEG2000の融解に相当し得る。
【0268】
熱安定性の陽性指標である結晶化事象は、これらの試料では観察されなかった。マンニトールベースの製剤(AおよびD)についてガラス転移は検出されず、これは、結晶性物質に関する粉末X線回折(PXRD)の結果を支持した。製剤AおよびDは164℃で融解し、マンニトールの融解温度と一致した。製剤BおよびCは、おそらく非晶質トレハロースにより、83℃でガラス転移を提示した。製剤Bはまた、他の試料では観察されなかった、133℃および158℃で熱事象を有した。
3.7.熱重量分析(TGA)
【0269】
製剤に関する熱分解データを、TA Instruments Discovery 熱重量分析計を使用して測定した。2.5℃/分の速度で0~300℃まで試料をランした。180℃以降で、製剤は急速に分解し始めた。重量変化はおよそ100℃で観察され、水含量に相当した。
3.8.動的水蒸気吸着
【0270】
Surface Measurement Systems DVS Advantage 1上で、水の吸着および脱着プロファイルを測定した。10%RHの段階変化で、0~90%RHまで25℃で試料をランした。4つの製剤すべてが、製剤によって、およそ50%または60%RHで開始する重量変化事象を有したようであった。結晶化後の水吸着速度を評価するために、試料に関して2回目のサイクルを実施した。これらの試料はいずれも、2回目のサイクル中に変化が観察されず、ほとんどの試料は最終脱着ステップ中に水を保持しなかった。
【0271】
製剤Dから得られた吸着結果は、製剤Aから得られた結果と比較して、より高い湿度(およそ70%RH)での変化を表示している。製剤Aと比較して、製剤Dの質量のわずかな損失がおよそ50%RHで観察され、これは、より高い湿度からのさらなる水分の吸着を伴っても継続的に質量を喪失するようであった。
【0272】
トレハロース製剤に関する取込み速度は、40%の相対湿度で水分平衡に到達するのにおよそ50~90分(ロイシン含量のレベルに依存する)かかることを表示している。より低いロイシン含量では、より高いロイシン含量を有するものよりも速く水分を取り込んだ。
3.9.NGIによる空気力学的粒径分布(APSD)によって評価した製剤A、C、およびDのカプセルのエアロゾル性能
【0273】
トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤A、C、およびDのカプセルを、25℃または40℃で1~3カ月間保存した。カプセル化された乾燥粉末の外観の変化、例えば、褐変または明らかな増大または硬度の変化はなかった。レーザー回折によって測定した乾燥粉末製剤の粒径分布(PSD)は、25℃または40℃で3カ月の保存後にも影響を受けなかった。
【0274】
トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤A、C、およびDをカプセル化し、このカプセルを40℃で1カ月、2カ月、もしくは3カ月保存するか、または25℃で3カ月保存した。保存したカプセルからの製剤の微粒子量(FPD)およびこれらの製剤の初期(T=0)のFPDをNGIによって測定した。トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤A、C、およびDを40℃または25℃で3カ月間バルクとしても保存し、次いでカプセル内に充填し、同日にFPDを決定するために投薬した。製剤A、C、およびDに関するFPDの結果を、それぞれ図31、32、および33に示す。これらのデータは、25℃で3カ月間カプセル内で保存した後、製剤DがFPDの最も少ない変化(-3.7%)を有したことを表示している。さらに、製剤Dは、25℃で3カ月間バルクとして保存し、カプセル内に充填し、同日に投薬した場合、FPDの-5.2%の変化を有した。さらに、製剤A、C、およびDのそれぞれについて、40℃での保存は、FPDによって測定した場合、エアロゾル性能に対する25℃での長期保存の予測はないようであった。これらのデータに基づいて、エアロゾル性能を修正するための粉末またはカプセルの条件付けまたは前処理は必要とされない。
【0275】
上記カプセルからの製剤A、C、およびDの排出量および総回収率も決定し、結果を表30に示した。
【表30】
【0276】
上記データは、製剤Dを、25℃で3カ月間カプセル内で保存した後、および25℃で3カ月間バルクとして保存し、その後カプセル内に充填し、同日に投薬した後に、排出量の最小の変化しか呈さなかったことを表示している。まとめると、エアロゾル性能の変化に基づいて、製剤Dは、25℃で少なくとも3カ月間安定であるようである。さらに、安定性データは、今日まで、2~8℃で保存した場合に6カ月の貯蔵寿命を支持する。
(実施例3)
加速保存条件下でのトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤のエアロゾル性能の決定および該乾燥粉末製剤の吸入後のラットにおける肺の薬物動態プロファイル
【0277】
重量比が1:0.5:70:30のトレプロスチニルパルミチル、DSPE-PEG2000、トレハロース(Treh)およびロイシン(Leu)から構成されるトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を、実施例1に記載したようにBuchi B-290システムを使用する噴霧乾燥によって生成した。加速安定性研究のために、乾燥粉末を、40℃および制御されていない周囲湿度で、密封されたガラスバイアル中で保存した。粉末のエアロゾル性能を保存の1.5、2.5、および3.5カ月後に測定した。
方法および材料
1.動的水蒸気吸着(DVS)研究
【0278】
動的水蒸気吸着(DVS)自動化重量吸着システム(DVS Intrinsic1 Plus、Surface Measurement System、PA、USA)を使用して、水分吸収曲線を得た。おおよそ20mgの粉末を負荷し、25℃で、吸着/脱着等温線のサイクル(0%の相対湿度(RH)~90%のRH~再度0%のRH、10%RHの増分で)に供した。RHに関する粉末塊の変化(%)を決定し、プロットした。
2.DPIデバイスおよび空気力学的粒径分布(APSD)試験
【0279】
この研究では、RS01 Mod.7 DPIデバイス(High Resistance、コード239700002AA、Plastiape、Italy)を使用した。60L/分で次世代インパクター(NGI)を使用して、トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の空気動力学的質量中央粒子径(MMAD)を測定した。
【0280】
おおよそ15mgのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を、サイズ番号3のHPMCカプセル(Qualicaps, Inc.)内に負荷した。このカプセルをDPIデバイスに負荷し、作動させて、エアロゾル粒径分布(APSD)を特徴付けた。各インパクターのステージおよびフィルターに沈着した薬物量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。
3.鼻部による吸入
【0281】
乾燥粉末分散器(ヴィルニュスエアロゾル発生器(Vilnius Aerosol Generator)(VAG)、CH Technologies、USA)を使用して、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末を、12ポートの鼻部吸入チャンバーを通して送達した。おおよそ1gの乾燥粉末をVAGへと負荷した。VAGは、1.0Vで合計20分間、8L/分の流量を有した。乾燥粉末送達システムは、その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Li et al., "Inhaled INS1009 Demonstrates Localized Pulmonary Vasodilation," European Respiratory Society (ERS) International Congress, 3-7 September 2016, London, United Kingdom, Abstract No:853952(poster PA2845)中に詳細に記載された。
4.PK試料の収集および分析
【0282】
ラットの肺組織を、送達の直後(約0.5時間)、薬物投薬の6、12、および24時間後に採取した。肺組織試料を、LC-MS/MSによってトレプロスチニルパルミチルおよびトレプロスチニル(TRE)について分析した。トレプロスチニルパルミチルの死後の加水分解を説明するために、「トレプロスチニルパルミチル等価物」に関して結果を報告する。
トレプロスチニルパルミチル等価物、ng/g=[トレプロスチニルパルミチル、ng/g]+[TRE、ng/g](MMトレプロスチニルパルミチル/MM TRE)
MM:モル質量
結果
1.動的水蒸気吸着(DVS)
【0283】
トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の動的水蒸気吸着(DVS)を図34に示す。乾燥粉末を最大50%のRHの増加に曝露させた場合、吸収された水分は0%~8%を超えて増加し、脱着と完全に可逆的ではなく、5.5%のままであるかまたは5.5%を超えた。おおよそ4%にまたはそれ未満に水分含量を保つために、この粉末に対するRHへの曝露は、製造中<30%まで制御されてもよい。
2.空気力学的粒径分布(APSD)
【0284】
1.5カ月間(T=1.5M)、2.5カ月間(T=2.5M)、および3.5カ月間(T=3.5M)保存したトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末のAPSDデータならびに60L/分でRS01 Mod. 7 DPI(高い耐性)によって得られた初期のAPSD(T=0)を図35および表31に示す。4つの時点すべてからの分布は同等であった。
【表31】
【0285】
40℃および制御されていない周囲湿度で最大3.5カ月間保存した後の、エアロゾル化された乾燥粉末の微粒子率(FPF)、MMADおよび幾何標準偏差(GSD)値を表32にまとめる。FPF値は、54.6%~58.7%の範囲であった。MMAD値は、1.25μm~1.44μmの範囲であった。GSD値は、3.5~4.1の範囲であった。
【表32】
3.ラットの肺のPK結果
【0286】
霧化されたINS1009またはエアロゾル化されたトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末の吸入後の肺におけるトレプロスチニルパルミチル等価物(トレプロスチニルパルミチルおよびトレプロスチニル)の濃度を表33および図36にまとめる。霧化されたINS1009は、モル比45:45:10のトレプロスチニルパルミチルおよび賦形剤であるスクワランおよびDSPE-PEG2000を含有し、PBSに懸濁された(その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Corboz et al., "Preclinical Pharmacology and Pharmacokinetics of Inhaled Hexadecyl-Treprostinil (C16TR), a Pulmonary Vasodilator Prodrug," J Pharmacol Exp Ther. 363:348-357(2017)を参照されたい)。霧化されたINS1009とC16TR(トレプロスチニルパルミチル)乾燥粉末の両方は、ラットにおいて、吸入後の類似する肺PKプロファイルを有した。これら2つのプロファイルの統計による比較を表34にまとめ、両プロファイルに関する同等の傾きを実証する。
【表33】
【表34】
【0287】
まとめると、この研究は、トレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤のエアロゾル粒径分布が、密閉されたバイアル中40℃および制御されていないRHで最大3.5カ月間の保存に対して再現可能であること、ならびにトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の肺PKプロファイルが、霧化されたINS1009のものと同等であったことを表示している。
(実施例4)
ラットにおけるマンニトールおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の薬物動態評定
【0288】
この研究では、それらの主要な賦形剤として、マンニトール(すなわち、実施例2に記載されている製剤D)またはトレハロース(すなわち、実施例2に記載されている製剤C)を含む2つの異なるトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の肺および血漿中薬物動態(PK)を評定した。重量比で表現した製剤DおよびCの組成、重量比に基づいて計算した標的重量パーセンテージ、ならびに各製剤の典型的バッチからの構成成分の実際の重量パーセンテージをそれぞれ、表35Aおよび35Bにまとめる。
【表35A】
【表35B】
方法
【0289】
雄のスプラーグドーリーラット(300~400g)を12ポートの鼻部吸入チャンバーおよびヴィルニュスエアロゾル発生器(Vilinius Aerosol Generator)(VAG)を使用して、乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cのエアロゾルに曝露させた。チャンバーの鼻部ポートに取り付けた拘束管にラットを配置した。製剤Dと製剤Cを用いる2つの別々の研究において、各研究において9匹のラットを使用し、1つのポートをフィルター上でエアロゾル薬物を収集するために使用した。6匹のラットを使用し、1つのポートをフィルター上に沈着した薬物量の収集のために使用した、製剤Dに関する省略型の研究も実施した。
【0290】
薬物への曝露のために、1グラムの物質をVAGに配置した。VAGからの出力を1ボルト(V)で確立し、薬物を分散させ、8L/分のバイアス空気量を有する鼻部チャンバーに送達した。空気は、鼻部チャンバーの底に侵入し、上部から出た。曝露期間は20分に設定した。真空源(0.5L/分)をフィルターに取付け、薬物サンプリング時間を5分に確立した。フィルター上に沈着したトレプロスチニルパルミチルの量をHPLCおよび帯電エアロゾル検出器(CAD)によって測定した。送達された薬物用量を、吸入された薬物の濃度(フィルターのデータから)、曝露期間、毎分換気量ならびに鼻に送達された薬物に対して使用された1.0の沈着率、および肺に送達された薬物に対して使用された0.1の沈着率を有する体重から計算した。用量は、体重1kg当たりで表現する。
【0291】
製剤Dおよび製剤Cに関する2つの主要な研究において、薬物への曝露の0.5、2、4、6、12および24時間後の時点で血液試料を収集した。血液試料を遠心分離して血漿を抽出した。これらの研究では、喉頭、気管、竜骨+気管支および肺の呼吸組織を、薬物への曝露の0.5、6、12および24時間後の時点で収集した。製剤Dに関する省略型の研究において、血液試料を、0.5、2、4、12および24時間の時点で得て、呼吸組織を薬物への曝露の0.5および24時間後の時点で採取した。血漿中のトレプロスチニル(TRE)ならびに呼吸組織中のトレプロスチニルパルミチルおよびTREの濃度を、LC-MS/MSによって測定した。すべての呼吸組織について、トレプロスチニルパルミチル(C16TR)等価物(C16TReq)の濃度は、トレプロスチニルパルミチルおよびTREの濃度に由来し(C16TReq=トレプロスチニルパルミチル+[TRE×615/390.5ng/g]、ここで、トレプロスチニルパルミチルとTREのモル重量は、それぞれ615と390.5である。肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物および血漿中TREのデータを使用して、以下のPKパラメーターを導き出した:マイクロソフトエクセルのPKソルバープログラムを使用する、ラムダz(終末相消失速度定数)、T1/2、Tmax、CmaxおよびAUC0~inf
結果
【0292】
ラットを製剤Dおよび製剤Cに曝露することにより、製剤Cに関して体重1kg当たり送達された総用量58μgと比較して、製剤Dに関して体重1kg当たり送達された総用量がわずかにより高い78μgとなった。曝露の0.5時間後に測定した肺におけるトレプロスチニルパルミチル等価物の濃度もまた、製剤Cに関する1711ng/gと比較して、製剤Dに関してはわずかにより高く、平均して3072ng/gであった。
1.肺および上気道のトレプロスチニルパルミチル、TREおよびトレプロスチニルパルミチル等価物
【0293】
製剤Dと製剤Cの両方に関して、肺におけるトレプロスチニルパルミチル、TREおよびトレプロスチニルパルミチル等価物の最も高い濃度は、曝露の0.5時間後に発生した。24時間にわたり、トレプロスチニルパルミチルとTREの緩やかな単指数減少が存在し、すべての時点で、トレプロスチニルパルミチルとTREの両方の濃度は製剤Dでは一貫してより高かった。これらの結果は、図37においてトレプロスチニルパルミチル等価物(C16TReq)について例証され、24時間にわたり、肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物濃度の緩やかな減少を示すが、製剤Cと比較して製剤Dでは、トレプロスチニルパルミチル等価物の濃度は一貫してより高い。図38は、製剤Dまたは製剤Cの吸入後の肺におけるトレプロスチニルパルミチル(C16TR)の濃度を示す。図39は、製剤Dまたは製剤Cの吸入後の肺におけるTREの濃度を示す。
【0294】
肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物に関する導き出されたPKパラメーターの比較は、ラムダz、T1/2およびTmaxに関して製剤DとCの間に主要な差異を見出さなかったが、製剤Dでは、肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物のCmaxが79%高く、AUC0~24hは130%高かった(表36)。
【表36】
【0295】
喉頭、気管、竜骨+気管支および肺におけるトレプロスチニルパルミチルの沈着について、トレプロスチニルパルミチルの大多数(>97パーセント)は肺に沈着した。これは、製剤Dと製剤Cの両方で認められた。鼻組織はこの研究では収集されなかった。
2.血漿中TRE
【0296】
血漿中のTREの最も高い濃度は、0.5時間で観察され、製剤Dでは24時間かけて緩やかに減少し、製剤Cではより急速に減少した。血漿中TRE濃度は、製剤Cでは、24時間までに検出レベル未満であった(図40)。
【0297】
血漿中TREに関して導き出されたPKパラメーターの比較によって、製剤Cと比較して製剤Dでは、ラムダzが34%低く、T1/2が51%高いことが分かった(表37)。製剤Cと比較して製剤Dでは、血漿中TREのCmaxは10%高く、AUC0~tは51%高かった(表37)。
【表37】
【0298】
まとめると、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤DおよびCの吸入によって、トレプロスチニルの吸入と比較して、低いトレプロスチニルの血漿中Cmax値ならびに血漿および肺において持続レベルのトレプロスチニルがもたらされる。類似する条件下で送達された製剤Dと製剤Cの間のラットにおけるPKプロファイル、すなわち1Vで20分間のVAG出力の比較によって、製剤Cに関する58μg/kgと比較して、78μg/kgであった製剤Dに関して34%高い送達用量がもたらされた。肺におけるトレプロスチニルパルミチル、TREおよびトレプロスチニルパルミチル等価物の濃度は、おそらく製剤Dに関するより高い送達用量に起因して、製剤Dに関して一貫してより高かったが、いずれの製剤も24時間にわたり、穏やかな単指数減少を実証した。製剤Dに関してより高く、両製剤に関して24時間にわたり緩やかに減少した類似の傾向が血漿中のTRE濃度でも観察された。TREおよびトレプロスチニルパルミチル曝露のほとんどが肺において発生し、喉頭、気管、竜骨+気管支の上部呼吸領域には3パーセント未満しか沈着しなかった。
【0299】
製剤Dおよび製剤Cに関するこれらの結果は、霧化されたINS1009で以前に観察されたのと類似するPKプロファイルを実証し、これは、30分で肺におけるトレプロスチニルパルミチル等価物および血漿中のTREの最も高い濃度を呈し、24時間にわたってこれらは緩やかな単指数減少を有する。しかし、一方のトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤と他方の霧化されたINS1009の間の肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物:血漿中TREのCmax比には有意差が存在するようである。霧化されたINS1009に関する典型的な肺中トレプロスチニルパルミチル等価物:血漿中TREのCmax比は約800であり、一方、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤に関する比は約1,600~13,000の範囲に及ぶ。その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Corboz et al., J Pharmacol Exp Ther 363: 1-10(2017)を参照されたい。肺の血管拡張剤は、肺内のTREの局所活性により強く関連し、血漿中のTREのレベルにはあまり関連せず(その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Chapman RW et al., Pulm. Pharmacol. Ther. 49:104-111(2018)を参照されたい)、肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物:血漿中のTREのCmax比の予期されない差異は、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の投与によって、TREへのより少ない全身曝露しか有益にもたらされず、よって、全身の血圧低下などの潜在的な全身的有害事象を最小化することを表示する。
(実施例5)
低酸素負荷を遠隔測定したラットにおけるマンニトールおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の有効性の評定
【0300】
この実施例は、2つの異なるトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤:実施例2および実施例4に記載のマンニトールベースの製剤Dおよびトレハロースベースの製剤Cのin vivo有効性評定について記載する(表35Aおよび35B)。吸入した低酸素ガス混合物への曝露によって誘導された右心室脈圧(RVPP)の増加の阻害を測定するために右心室内に埋め込んだ遠隔操作プローブを用いて調製したラットにおいて、有効性を決定した。
方法
【0301】
RVPPおよび平均全身動脈血圧(mSAP)を測定するために右心室と下行大動脈に遠隔操作プローブを埋め込んだ雄のスプラーグドーリーラットにおいて実験を実施した。正常酸素圧の空気(21%のO/残部N)を呼吸し、その後低酸素の空気(10%のO/残部N)に10分間曝露し、正常酸素圧の空気の呼吸に戻しながら、これらの心血管パラメーターを測定した。各実験において、低酸素負荷に起因するRVPPの増加(低酸素によるΔRVPP)を、薬物への曝露の前ならびに吸入されたトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたは製剤Cへの曝露の1、6、12および24時間後に測定した。薬物製剤を、1ボルト(V)の出力のヴィルニュスエアロゾル発生器(Vilinius Aerosol Generator)(VAG)を用いて与え、12ポートの鼻部吸入チャンバーに20分間送達させた。8L/分のバイアスフローで、エアロゾルをVAGから分散させ、鼻部吸入チャンバーの底に送達させた。フィルターを鼻部ポートのうちの1つに接続し、0.5L/分の真空流に5分間取り付けた。フィルター上に沈着したトレプロスチニルパルミチルの量をLC-MS/MSによって測定した。ラットの血漿および呼吸組織試料を、トレプロスチニルパルミチルおよび/またはTREの濃度について分析した。
結果
【0302】
ラットを吸入された低酸素に曝露させることによって、正常酸素圧値に対して10~13mmHgまでRVPPが増加した。低酸素負荷の終わりに、RVPPは、数分以内に即座に低下し、10分以内に前の低酸素値に戻った。薬物への曝露の24時間後までの様々な時点で、低酸素に起因するΔRVPPを、薬物への曝露前に得られた2~3個の決定値からの合計値と比較することによって、薬物の効果を決定した。
【0303】
実験結果を図41に示す。図41では、値は平均±SEMである(製剤Dに関してn=6~8匹のラットおよび製剤Cに関して4匹のラット)。-1日目は、薬物への曝露前のベースライン値を表し、0日目は、薬物への曝露後の値を表す。ΔRVPPは、右心室脈圧の増加を表す。「」は、-1日目の薬物への曝露前の合計値(1、6および12時間)と比較してP<0.05である印である。結果は、製剤Dへの曝露によって、1、6、12および24時間で観察された統計的に有意な(P<0.05)阻害と共に、低酸素に起因してΔRVPPが低下したことを表示している。1、6、12および24時間で観察された統計的に有意な(P<0.05)阻害と共に、製剤Cに関して類似する結果が得られた。製剤Dおよび製剤Cによる処置の24時間後までに、RVPPは、薬物への曝露前に観察されたベースライン値に戻る傾向があった。対照として、吸入されたマンニトールビヒクル(69.48wt%の標的重量パーセントのマンニトール、29.78wt%の標的重量パーセントのロイシン、および0.74wt%の標的重量パーセントのDSPE-PEG2000を含有する)への曝露は、投与の1、6、12および24時間後の低酸素へのΔRVPP応答を阻害しなかった(データは示さず)。吸入された薬物の濃度、曝露の期間、体重、毎分換気量および1.0の沈着率に基づいて、製剤Dの送達用量は体重1kg当たり78μgであり(肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物濃度が3072ng/g)、製剤Cの送達用量は体重1kg当たり58μgであった(肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物の濃度が1711ng/g)。その内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Alexander D.J. et al., Inhal. Toxicol. 20:1179-1189(2008)を参照されたい。
【0304】
まとめると、低酸素負荷した遠隔操作ラットにおける有効性評定は、吸入されたトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤CおよびDが、薬物への曝露の最大24時間後までRVPPの増加を阻害したことを示す。24時間まで、低酸素に対するRVPP応答は、薬物への曝露前に観察されたベースライン値に戻る傾向があった。比較すると、76μg/kgの送達用量が達成された霧化されたINS1009は、12時間まで低酸素に誘導されるRVPPの増加を阻害し、24時間までにベースライン値に戻った。それぞれ、高用量で用いられた(215μg/kg)吸入されたトレプロスチニルは、低酸素に誘導されるRVPPの増加を2時間阻害し、より少ない吸入用量(15、53、または110μg/kg)では1時間阻害した。これらの結果は、遠隔操作されたラットにおいて、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤による、低酸素に誘導されるRVPPの増加の阻害の延長を実証している。
(実施例6)
モルモットにおける咳およびベンチレーションに関するマンニトールおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の評価
【0305】
この実施例は、覚醒した雄のモルモットにおいて、咳、ベンチレーションの変更、気管支収縮中に典型的に見られる変更された呼吸パターンの無次元指数であるPenhの変化を生じる、マンニトールベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dおよびトレハロースベースのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤C(実施例2および実施例4に記載される;表35Aおよび35Bの製剤の組成を参照されたい)の効果に関する研究について記載する。
方法
【0306】
雄のHartleyモルモットにおいて実験を実施した。3日間の順化後に、確立された技法を使用してベンチレーション(一回呼吸量、呼吸速度および毎分換気量)、Penhおよび咳を測定するために、モルモットを全身プレチスモグラフ中に配置した。そのそれぞれの内容が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Corboz et al., J Pharmacol Exp Ther 363: 1-10(2017);Chong BTY et al., J. Pharmacol. Toxicol. Methods 39, 163-168(1998);Lomask, Exp. and Toxicol. Pathol. 57,13-20(2006)を参照されたい。咳は、大きく息を吸い込んだ後、大きく息を吐き出すことを示すプレチスモグラフの記録から測定し、手動の観察、ビデオの記録および咳の音によって確認した。ベンチレーション、Penhおよび咳のデータは、乾燥粉末エアロゾルへの曝露前の15分のベースライン期間中に測定した。製剤D、製剤Cおよびそれらのそれぞれのビヒクル、すなわちマンニトールビヒクル(69.48wt%の標的重量パーセントのマンニトール、29.78wt%の標的重量パーセントのロイシン、および0.74wt%の標的重量パーセントのDSPE-PEG2000を含有する)、およびトレハロースビヒクル(69.48wt%の標的重量パーセントのトレハロース、29.78wt%の標的重量パーセントのロイシン、および0.74wt%の標的重量パーセントのDSPE-PEG2000を含有する)を含んだ試験物を、次いで、乾燥粉末として15分間送達させ、その後、エアロゾル化合物が投与された後の120分を観察期間とした。実験の全ステップでのエアロゾル送達のための空気は、エアコンプレッサーによって供給した。供給される空気の典型的な湿度は、測定した場合、およそ30%であった。試験物への曝露の前、間および後に、ベンチレーション、Penhおよび咳を測定した。ヴィルニュスエアロゾル発生器(VAG)により、エアロゾル化した試験物を生成した。VAGからの空気流量度を4.5L/分に設定し、エアロゾルを分散させ、1L/分の湿った空気(30%の加湿)と合わせて、プレチスモグラフへのエアロゾル送達を促進し、静電吸着の問題を最小限にした。したがって、空気の総流入量は、5.5L/分であった。VAGからの発生器の出力は、1、0.75および0.5ボルトであり、各VAG出力を15分間加えて、薬物の3つの異なる用量を送達し、より多い用量はより高い電圧で送達された。空気およびエアロゾルがシステムの上部に侵入し、底部からでるように、8L/分の真空流をプレチスモグラフの底で確立した。プレチスモグラフのポートに取り付けたフィルターに、0.5L/分の別々の真空源を接続させ、薬物(トレプロスチニルパルミチル)濃度をサンプリングした。研究の全期間、すなわち135分間、フィルターサンプリングを維持したが、15分の曝露時間を使用して、鼻部チャンバー内の薬物のエアロゾル濃度および吸入された総送達薬物用量を計算した。トレプロスチニルパルミチル濃度についてフィルター試料を分析した。研究の終わりに、モルモットを安楽死させ、血液(血漿)、肺、気管、喉頭および竜骨+気管支を収集して、これらの試料中のトレプロスチニルパルミチルおよびTRE濃度を測定した。
結果
【0307】
製剤D、製剤C、またはマンニトールおよびトレハロースビヒクルの曝露は、忍容性に優れ、いかなる致死率ももたらさなかった。
【0308】
1Vで作製し、15分間投与したエアロゾル化された製剤Dは(吸入された総送達用量=体重1kg当たり35.8μg)、6匹のモルモットのうちの4匹で咳を生じさせた。この曝露に対する咳の平均数は24±12回の咳であった。0.75ボルトおよび15分間の投与の設定では(吸入された総送達用量=体重1kg当たり12.8μg)、咳は、4匹のモルモットのうちの3匹で観察され、咳の平均数は19±7回の咳であった。0.5Vおよび15分間の投与の設定では(吸入された総送達用量=体重1kg当たり2.3μg)、4匹のモルモットのうちの4匹において咳は観察されなかった。1Vで15分間投与の設定で作製したマンニトールビヒクルのエアロゾルは、4匹のモルモットのうちの4匹で咳を生じなかった(表38)。製剤Dまたはマンニトールビヒクルに関してベンチレーションにおける一貫した変化がなく、この薬物により観察されたPenhのわずかな増加は、マンニトールビヒクルと比較して有意差に達しなかった。
【0309】
1Vおよび15分間の投与の設定で作製したエアロゾル化された製剤Cは(吸入された総送達用量=体重1kg当たり10.2μg)、6匹のモルモットのうちの3匹において咳を生じ、咳の平均数は10±5回の咳であった。0.75V(吸入された総送達用量=体重1kg当たり4.7μg)および0.5V(吸入された総送達用量=体重1kg当たり1.5μg)および15分間の曝露の投与の設定では、製剤Cは、いずれの群においても4匹のモルモットのうちの4匹で咳を生じなかった。1Vの電圧で15分間投与したトレハロースビヒクルは、4匹のモルモットのうちの4匹で咳を生じなかった(表38)。製剤CまたはトレハロースビヒクルによるベンチレーションまたはPenhにおける一貫した変化はなかった。
【0310】
肺中のトレプロスチニルパルミチル等価物の濃度は、製剤Dおよび製剤Cの両方に関して吸入された薬物用量の関数として増加し、製剤Dは、製剤Cと比較して、肺におけるトレプロスチニルパルミチル等価物のおおよそ3倍高いレベルを有した(表38)。吸入された薬物のほとんどが肺内に沈着したため(データは示さず)、喉頭、気管および竜骨+気管支の上部気管組織における薬物沈着のパーセンテージに、これら2つの製剤間の差異はなかった。鼻組織はこの研究では収集しなかった。
【表38】
【0311】
この研究からの結果は、咳が両製剤により発生し、製剤Dに関しては吸入用量の閾値が12.8μg/kgおよび製剤Cに関しては10.2μg/kgで見られたことを実証している。これらの各用量は、1.23μg/kgである、モルモットにおいて咳を引き起こすTREの吸入用量の閾値よりも10および8倍高い。製剤Dまたは製剤Cへの曝露後に、咳の最初の発作は17から35分の間に発生し、これは、曝露の最初の10分以内に発生する霧化されたTREによる咳のタイミングより遅い。
【0312】
肺におけるトレプロスチニルパルミチル等価物の濃度は、製剤Dよりもおおよそ3倍高く(表38)、薬物のほとんどが肺に沈着したため(データは示さず)、喉頭、気管、および竜骨と気管支の上気道に沈着した薬物のパーセンテージにおいてこれらの2つの製剤間には差異がなかった。血漿中のTREの濃度は、製剤Cと比較して製剤Dで2から3倍高かった(表38)。
(実施例7)
8週間のsugen-低酸素(SuHx)に誘導される肺動脈性肺高血圧症ラットモデルの処置におけるトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤の効果の評定
【0313】
ラットにおけるSugen-低酸素(SuHx)に誘導されるPAHモデルは、十分に文書化されているモデルである。このモデルは、臨床疾患において見られる病態のほとんどを複製する。この実施例では、肺動脈圧(PAP)および他の心血管パラメーター、右心室肥大、肺および心臓の組織病理ならびにPAHに関連するバイオマーカーを含む、ラットにおける8週間のSuHxに誘導される肺動脈性肺高血圧症(PAH)モデルに対する、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤D(実施例2および実施例4に記載される;表35Aの製剤の組成を参照されたい)ならびに吸入されたトレプロスチニル(TRE)、静脈内トレプロスチニル(TRE)、および経口セレキシパグの効果を評価する。
研究群、試験物およびビヒクルならびにそれらの投与
【0314】
200から250gの体重の雄のスプラーグドーリーラットを、体重により研究群に無作為化し、体重の範囲が群にわたって均一に分布することを保証する。表39は研究群と各研究群が受ける処置をまとめる。
【表39】
1.群1-正常酸素圧対照群
【0315】
正常酸素圧対照群(群1)は、2mL/kgで100%のDMSOの皮下注射を1回受け(sugenのためのビヒクル)、処置を受けない。
2.群2-トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dのためのビヒクルによる処置群
【0316】
トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dのためのビヒクルは、70wt%のマンニトールおよび30wt%のロイシンの標的組成を有する。このビヒクル処置群(群2)のラットを秤量し、ヴィルニュスエアロゾル発生器(VAG)のカップ(170mgのビヒクルを負荷した)に入れ、すべての物質がエアロゾル化されるまで、1日に1回、1ボルトでノーズコーンチャンバー内に投与する。エアロゾル化の期間を測定する。群3および4と並行して、この群に対するビヒクル処置を35日間実行する。
3.群3および4-トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dによる処置群
【0317】
群3および4では、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dを秤量し、VAGのカップに入れる(90mgを使用し、57μg/kgの標的用量のために0.5ボルト(V)で作製し、170mgを使用し、138μg/kgの標的用量のために1Vで作製する)。乾燥粉末製剤を35日間1日に1回与え、各投与に対して、すべての物質がエアロゾル化されるまでVAGをそのままにする。エアロゾル化の期間を測定する。乾燥粉末製剤を4±2℃で保存する。
4.群5-吸入されたトレプロスチニル(TRE)のための霧化されたビヒクルによる処置群
【0318】
吸入されたトレプロスチニル(TRE)のための霧化されたビヒクルはリン酸緩衝食塩水(PBS)である。群6と並行して、この霧化されたビヒクル処置群(群5)のラットは、35日間、1日ごとに12時間にわたり、4回、ノーズコーンチャンバー内で霧化されたPBSを受ける。
5.群6-霧化されたトレプロスチニル(TRE)による処置群
【0319】
霧化されたトレプロスチニル(TRE)溶液は、pH7.4のPBS中に0.5mMのTREを含有する。溶液を4±2℃で保存し、使用期限を調製の7日後に設定する。この溶液を使用して、110μg/kgの標的用量のTREを送達し、35日間、1日ごとに12時間にわたり、4回、吸入によって群6のラットに投与する。
6.群7-持続注入による静脈内トレプロスチニルのためのビヒクルによる処置群
【0320】
静脈内トレプロスチニルのためのビヒクルは、3.0mg/mLのm-Cresol、5.3mg/mLのNaCl、および6.3mg/mLのクエン酸ナトリウムを含有する、pHが6.0~7.2の水性溶液である。この群(群7)のラットは、ビヒクルで満たした浸透圧ポンプをそれぞれ埋め込まれ、以下の群8で指定した注入速度での持続注入に供する。群8と並行して、群7に対するビヒクルの持続注入は、35日間続くことになる。
7.群8-持続注入による静脈内トレプロスチニル(TRE)による処置群
【0321】
群8に対するTREの静脈内投与のために、2種の溶液を調製する。それらは、TREの濃度においてのみ異なる。具体的には、第1の溶液は、8.75mg/mLのTRE、3.0mg/mLのm-Cresol、5.3mg/mLのNaCl、および6.3mg/mLのクエン酸ナトリウムを含有する、pHが6.0~7.2の水性溶液である。第2の溶液は、10.7mg/mLのTRE、3.0mg/mLのm-Cresol、5.3mg/mLのNaCl、および6.3mg/mLのクエン酸ナトリウムを含有する、pHが6.0~7.2の水性溶液である。この群(群8)の各ラットは、埋め込まれた浸透圧ポンプ(ALZETポンプ)を使用して、TREの静脈内注入を受ける。各ALZETポンプは、最初に、450gのラットに対して28日の期間にわたり持続注入を達成し、810ng/kg/分の標的用量のTREを達成するのに十分である(2.5μL/時の注入速度に基づく)、8.75mg/mLのTREを含む第1の溶液2mLで満たされる。ALZETポンプは、注入の19日目(研究全体の40日目)に置き換えられ、おおよそ550gまでのラットの体重増加に基づき、10.7mg/mLのTREを含む第2の溶液2mLで満たされる。第1および第2の溶液のTRE濃度の導出を以下に示す。IVによるTREの持続注入は、35日間続くことになる。
【0322】
第1の溶液におけるTRE濃度(8.75mg/mL)の導出:
〇 ラットの体重は450gであると仮定する
〇 注入したTRE=810ng/kg/分;=364.5ng/分;=21.87μg/時;=524.88μg/日;=18.37mg/35日
〇 AlZET注入速度=2.5μL/時;=60μL/日;=2100μL/35日;=2.1mL/35日
〇 TRE濃度=18.37mg/2.1mL=8.75mg/mL
【0323】
第2の溶液におけるTRE濃度(10.7mg/mL)の導出
〇 ラットの体重は550gであると仮定する
〇 注入したTRE=810ng/kg/分;=445.5ng/分;=26.73μg/時;=641.52μg/日;=22.45mg/35日
〇 ALZET注入速度=2.5μL/時;=60μL/日;=2100μL/35日;=2.1mL/35日
〇 TRE濃度=22.45mg/2.1mL=10.7mg/mL
8.群9-経口投与によるセレキシパグのためのビヒクルによる処置群
【0324】
セレキシパグのためのビヒクルは、0.5%(w/v)のメチルセルロースを含有する、pHが7.5~8.0の水性溶液である。群10と並行して、この群のラットに、1日に2回、35日間、経口胃管栄養法によりビヒクルを投薬する。
9.群10-経口投与によるセレキシパグによる処置群
【0325】
0.5%(w/v)のメチルセルロース中に3.0mg/mLのセレキシパグを含有する、pHが7.5のセレキシパグ溶液を調製する。この溶液を室温で保存し、使用期限を調製の7日後に設定する。投与ごとに10mL/kgの体積で30mg/kgの標的用量のために、この溶液を、1日に2回、経口胃管栄養法によりこの群のラット(群10)に投与する。セレキシパグ処置は35日間続くことになる。
研究設計
【0326】
表39は、研究設計を概説し、その詳細は以下の通りである。
1.PAHの誘導
【0327】
ラットを、21日目に、上記のようにそれらの体重に基づいて、処置群に無作為化する。
【0328】
0日目に、DMSO中10mg/mLのsugen溶液を調製し、群2~10由来のラット(表39を参照されたい)は、sugen(2mL/kgの体積中20mg/kg)溶液の単回皮下注射を受け、それらのケージに戻される。また、0日目に群1由来のラットは、2mL/kgの100%のDMSO(sugenのためのビヒクル)の1回の皮下注射を受け、それらの各ゲージに戻される。
【0329】
群2~10のラットを、窒素の混合物を使用して0.10(10%)に等しいFiOを受けるよう制御された空気で調整され、換気されたケージシステムによって周囲空気が制御されたケージ内に配置する。これらは、これらの低酸素条件下に21日間保たれる。低酸素である間、ケージは1週間に1回清掃および交換され、ラットを10分未満の間周囲酸素レベルに曝露する。これらは、22日目から56日目まで周囲酸素レベルに曝露される。群1のラットは、56日間、周囲酸素(正常酸素圧)レベルに曝露されたケージ内のままである。ラットは、日常的に、それらの行動および健康全般の状態のいずれかの変化について観察される。
【0330】
試験物またはビヒクルによる処置が、22日目~56日目に投与される。食餌および水は自由に摂取される。ラットの行動および健康全般の状態について毎日観察される。1週間ごとに体重を測定する。
2.心エコー検査
【0331】
疾患の進行についての心エコー検査によるモニタリングは、すべてのラットについて、0日目、21日目(処置前)および手術日(56日目)に行われる。
3.血液および肺のPKサンプリング
【0332】
23日目(2回目の投薬の直前)、38日目(次の投薬の直前)および57日目(最終投薬の24時間後)に、静脈血(0.5ml、EDTAで抗凝固剤処理済)をすべてのラット(正常酸素圧群およびビヒクル群を含む)からサンプリングする。ALZETポンプを有するラットのために伏在静脈から、および他のすべてのラットのために頸静脈によって、血液をサンプリングする。全血を遠心分離して血漿を得て、これを分析のために-80℃で凍結し保存する。
4.乾燥粉末の吸入(群2~4)
【0333】
処置期間中、各ラットを、12ポートの鼻部吸入チャンバー(CH Technologies)に接続されたノーズコーン拘束チャンバー内に配置する。トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dまたはそのビヒクルを、VAGを使用して送達する。空気流を7L/分の流量でVAGに導入し、鼻部吸入チャンバーに接続する。低用量のトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dで処置した群3について、90mgのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dを秤量し、VAGデアグロメレーターに負荷する。VAGを、0.5mg/Lの粉末濃度(約7μg/Lのトレプロスチニルパルミチル)に対応する、0.5Vの電圧に設定する。より高用量のトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dで処置した群4について、170mgのトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dを秤量し、VAGデアグロメレーターに負荷し、1.0mg/Lの粉末濃度(約14.7μg/Lのトレプロスチニルパルミチル)に対応する、1Vの電圧で送達する。粉末エアロゾル出力濃度を、ポータブルエアロゾルモニター(Casella MicroDust Pro)で継続的にモニターする。正確な送達時間を記録する。VAGデアグロメレーター内に残った乾燥粉末を秤量し、エアロゾル化された試験乾燥粉末の実際の量を計算する。0.5L/分の真空流の真空源に接続されたガラス繊維フィルターをエアロゾル化開始の5分後に曝露ポートのうちの1つに配置し、チャンバーからのエアロゾルを5分間の間、フィルター上で収集する。すべてのフィルター試料を分析まで4℃に保つ。
【0334】
群2由来のラットは、1.0Vの設定で投与される、トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dのためのビヒクル170mgを受ける。
【0335】
この研究では、2つの異なる吸入タワーおよびVAGとレーザーのセット、すなわち乾燥粉末ビヒクルのための1つとトレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dのためのもう1つを使用する。
【0336】
残っている粉末をVAGのデアグロメレーターから取り除いた後、VAGのすべての部品に乾燥空気をあてる。群3(低用量)と群4(高用量)の投薬の間に、タワーに乾燥空気をあて、群4の投薬後に0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水溶液、水道水および蒸留水で浄化する。
5.霧化吸入(群5および6)
【0337】
トレプロスチニルおよびそのビヒクルであるPBSを、2.5から4μmの間の質量平均エアロゾル直径(MMAD)を0.2~0.4mL/分の範囲の流量で送達するために製造された、Aerogenからのネブライザーとコントローラー(Aeroneb Pro)を使用して投与する。処置期間中、12ポートの鼻部吸入チャンバー(CH Technologies)に接続されたノーズコーン拘束チャンバーに各ラットを配置する。霧化される溶液の体積は、6L/分の空気流で6mLであり、トレプロスチニルの濃度は0.5mMである。ガラス繊維フィルターを曝露ポートのうちの1つに配置し、0.5L/分の真空流で5分の期間(すなわち霧化開始の5分後に開始し、10分で終了する)真空源に接続する。
【0338】
2つの吸入タワーと2つ別々のノーズコーンのセットを使用する;1つはPBSを受ける群5のためのものであり、1つはTREを受ける群6のためのものである。
【0339】
ネブライザーを介して0.5%のSDS、水道水および蒸留水の水性溶液を経時的にランすることによって、および各使用間にPBSを霧化して、すべての残留薬物を薬品カップからおよび開口板を通して洗い流すことによって、ネブライザーの浄化を実施する。霧化タワーチューブと霧化プロセスにおいて使用する他の材料も、1日に1回上記薬剤で浄化される。さらに、エアロゾル化タワーチューブおよびエアロゾル化プロセスで使用する他の材料は、各チャンバーへの投薬後に上記薬剤で浄化される。
6.IV持続注入(群7および8)
【0340】
群8由来のラットに2%のイソフルランおよび医療用空気で麻酔する。各ラットの背中を切開し、8.75mg/mLのTREを含む第1の溶液を満たしたALZETポンプを配置する。カテーテルを頸静脈に埋め込み、ALZETポンプに接続する。35日間の期間にわたる持続注入のために、注入の19日目に、カテーテルを一時的にクランプし、ALZETポンプを、10.7mg/mLのTREを含む第2の溶液で満たした新しいものと置き換える。群7由来の各ラットに、ビヒクルで満たしたALZETポンプを埋め込む。
7.経口投与(群9および10)
【0341】
群10由来のラットは、22日目~56日目に(35日間)、1日に2回、経口胃管栄養法により参照化合物であるセレキシパグを受ける。連続して撹拌することによってセレキシパグの均一な懸濁液を維持するために注意を払うが、用量を胃管栄養法シリンジ中に吸い取り、1つの胃管栄養法シリンジを一気に満たし、次のシリンジを満たす前にその用量を投与する。用量は、各投与において体重1kg当たり10mLで、経口胃管栄養法により与えられる。群9由来のラットは、22日目~56日目に(35日間)、経口胃管栄養法により1日に2回、ビヒクルを投薬される。
外科用器具および有効性研究ラットにおける血行動態および機能的パラメーターの測定
【0342】
1.最終投薬の24時間後である選択された手術日に、酸素中2~2.5%のイソフルランUSP(Abbot Laboratories)の混合物でラットに麻酔し、温熱パッド上に配置して体温を維持する。
【0343】
2.ラットを気管切開し、90ストローク/分の頻度で体重1kg当たり約10mlに設定した陽圧の齧歯類用レスピレーターによって直ちに換気する。
【0344】
3.圧力変換器に接続したカニューレを左側の大腿動脈に挿入し、全身動脈血圧(SAP)を測定する。
【0345】
4.胸骨切開術により心臓を曝露させ、Insyteの20GA 1.16を右心室に導入し、変換器に接続した食塩水を満たしたPE-50カテーテルに迅速に引っかける。
【0346】
5.数秒の右心室圧力の記録後に、Insyteを肺動脈にさらに進め、さらに60秒間PAPを記録させる。
【0347】
6.この手順の期間またはPAPシグナルが喪失するまで、血行動態パラメーターを連続的に記録する。
【0348】
7.血行動態のモニタリング後、バイオマーカー分析(以下に記載される)のために、心穿刺によって血液を得る。
【0349】
8.血液試料の収集後、胸腔をさらに開口させて肺を曝露する。気管を覆う筋肉を切除し、肺および心臓を取り除く。採取した組織をPBSで濯ぎ、秤量する前にすべての余分な血液を取り除く。
【0350】
9.4つの葉を分離し、これらを秤量し、液体窒素中で凍結させ、-80℃で保存することによって、薬物濃度およびバイオマーカー分析のために、右側の肺を結紮し、直ちに収集する。
【0351】
10.心臓の組織学およびキャスティングについて、プロセスは以下の通りである;1)群2~10のそれぞれにおいて11匹のラットのうちの5匹を確保し、心臓の組織学および生化学パラメーターを評価し、したがって、以下のポイント11で記載されるように処置する;2)群2~10のそれぞれにおける他の6匹のラットは、Fulton指数を決定するための役割を果たし、ポイント12に記載するように処置される。Fulton指数のためのデータを収集した後、心組織をバイオマーカー分析のために-80℃で保存する。
【0352】
11.組織学のために、左側の肺を0.9%のNaClでフラッシングする。先端の丸いニードル(23g)を取り付けた、定着性の10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)で満たした10mLのシリンジを使用して、左側の肺を膨張させる。ニードルの先端を気管内に挿入し、縫合して固定する一方で、別のシリンジを肺動脈に結び付ける。肺が完全に、均一に、および一貫して拡大するまで(定着を可能とせず、肺表面を通ってにじみ出る)、肺を生理学的圧力で穏やかに膨張させる。これは、過剰な組織破壊を引き起こすことなく、最適な血管および気道の拡大をもたらす。次いで、ニードルを取り除き、気管周辺を縫合し、1:20の組織対固定液の比で肺を10%のNBFに浸漬する。心臓をPBSで濯ぎ、次いで1:20の組織対固定液の比で10%のNBFに浸漬する。組織を24~48時間ホルマリン中に保つ。次いで、左側の肺および心臓を切断し、70%エタノール中に移す。
【0353】
固定した組織をすべて包埋し、スライスして染色する。肺切片を、形態決定のためにヘマトキシリンエオシン(H&E)で、または内皮細胞染色のためにフォンビルブランド因子(VWF)で染色する。心臓切片を、コラーゲン線維の可視化および定量のために、H&Eおよびシリウスレッドまたはトリクローム染色のいずれかで染色する。
【0354】
12.Fulton指数の一部として、心臓を切除し、隔壁で右心室を左心室から分離し、次いで別々に秤量する。Fulton指数のためのデータを収集した後、心組織をバイオマーカー分析のために-80℃で保存する。
実験データの獲得および分析
【0355】
実験追跡は、Axon InstrumentsからのClampfitソフトウェアによって分析する。
【0356】
少なくとも1分間またはシグナルの喪失まで連続的に記録したPAPを使用して、平均、拡張期、および収縮期の肺圧を抽出する。
【0357】
連続的に記録した全身動脈圧(SAP)を使用して、平均、拡張期および収縮期の動脈圧を抽出する。
【0358】
血行動態パラメーターの記録の終わりに、隔壁を含む右心室と左心室および肺葉を摘出して、湿重量を決定する。
【0359】
以下の血行動態および心機能のパラメーターを、適切な統計分析で定量する。
- 平均全身動脈圧
- 平均肺動脈圧
- 拡張期肺圧
- 収縮期肺圧
- 収縮期右心室圧
- 飽和度(SO2)
- 体重増加
- 肺重量
- Fulton指数
- 心拍数
- 脈圧
【0360】
さらに、酸化ストレスのバイオマーカー、コラーゲン(Sircolアッセイ)およびヒドロキシプロリン含量、尿酸、ナトリウム利尿ペプチド(natriretic peptide):BNP、NT-proBNP(心筋ストレスのバイオマーカー)、エンドセリン-1(心不全)、アンギオポエチン(血管新生)、フォンビルブランド因子(内皮細胞)、インターロイキン-6(心臓発作、脳卒中のバイオマーカー)、Toll受容体C(心疾患のバイオマーカー)、血漿中サイトカイン、心房性ナトリウム利尿ペプチドANP(脳卒中、冠動脈疾患、心筋梗塞および心不全のバイオマーカー)、トポニンT/I(心虚血のバイオマーカー)、ならびにCPK-MB(心筋梗塞に関する心臓バイオマーカー)を含む、心臓生化学を表示する分子を検査する。
【0361】
PAHに関連する遺伝子、例えば骨形成型2(BMPR1)、BMP-9、ABCC8、TBX4、ACVRL、SMAD 4/9、KCNA5およびTET2も、この実施例で調査される。さらに、心臓および肺において、コラーゲン1型アルファ1(COL1A1)、コラーゲン1型アルファ2(COL1A2)、およびコラーゲン3型アルファ1(COL3A1)は、コラーゲンの形成および分泌に関連する。コラーゲン生合成の重要な酵素であるP4HA1。ACTG2は、筋線維芽細胞の分化に関連する遺伝子である。これらの遺伝子の発現における変化についても調査する。
【0362】
トレプロスチニルパルミチル乾燥粉末製剤Dが、Su/Hxを負荷したラットの肺血管および心臓における病態生理および組織病理を向上させることが期待される。
【0363】
記載された発明は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な変更がなされ、均等物に置き換え得ることが当業者によって理解されるべきである。さらに、記載された発明の目的の趣旨および範囲に対して、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスのステップ(複数可)を採用するために多くの修正がなされ得る。このような修正のすべては、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0364】
本明細書において言及した特許、特許出願、特許出願公報、雑誌論文およびプロトコールは、すべての目的で、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)約0.1wt%~約3wt%の式(I)の化合物:
【化4】

またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩(式中、R は、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルである)、
(b)約0.01wt%~約3wt%のDSPE-PEG2000、
(c)約10wt%~約50wt%のロイシン、ならびに
(d)トレハロースおよびマンニトールからなる群から選択された糖である残部
を含み、
(a)、(b)、(c)、および(d)の全体が100wt%である、
乾燥粉末組成物。
(項目2)
(a)が、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項目1に記載の乾燥粉末組成物。
(項目3)
(a)が式(I)の化合物である、項目1または2に記載の乾燥粉末組成物。
(項目4)
がテトラデシルである、項目1から3のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目5)
が直鎖状テトラデシルである、項目4に記載の乾燥粉末組成物。
(項目6)
がペンタデシルである、項目1から3のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目7)
が直鎖状ペンタデシルである、項目6に記載の乾燥粉末組成物。
(項目8)
がヘプタデシルである、項目1から3のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目9)
が直鎖状ヘプタデシルである、項目8に記載の乾燥粉末組成物。
(項目10)
がオクタデシルである、項目1から3のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目11)
が直鎖状オクタデシルである、項目10に記載の乾燥粉末組成物。
(項目12)
がヘキサデシルである、項目1から3のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目13)
が直鎖状ヘキサデシルである、項目12に記載の乾燥粉末組成物。
(項目14)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約0.03wt%~約2.1wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目15)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約0.05wt%~約1.5wt%で存在する、項目1から14のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目16)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.05wt%~約2wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目17)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.05wt%~約2wt%で存在する、項目16に記載の乾燥粉末組成物。
(項目18)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.05wt%~約2wt%で存在する、項目16または17に記載の乾燥粉末組成物。
(項目19)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.15wt%~約1.4wt%で存在する、項目16から18のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目20)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.25wt%~約1wt%で存在する、項目16から19のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目21)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約2wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目22)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約2wt%で存在する、項目21に記載の乾燥粉末組成物。
(項目23)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%~約2wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約2wt%で存在する、項目21または22に記載の乾燥粉末組成物。
(項目24)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.3wt%~約1.4wt%で存在する、項目21から23のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目25)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.5wt%~約1wt%で存在する、項目21から24のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目26)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.12wt%~約1.8wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目27)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.12wt%~約1.8wt%で存在する、項目26に記載の乾燥粉末組成物。
(項目28)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.12wt%~約1.8wt%で存在する、項目26または27に記載の乾燥粉末組成物。
(項目29)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.36wt%~約1.26wt%で存在する、項目26から28のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目30)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.6wt%~約0.9wt%で存在する、項目26から29のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目31)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1.5wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目32)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1.5wt%で存在する、項目31に記載の乾燥粉末組成物。
(項目33)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1.5wt%で存在する、項目31または32に記載の乾燥粉末組成物。
(項目34)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.3wt%~約1.05wt%で存在する、項目31から33のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目35)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.5wt%~約0.75wt%で存在する、項目31から34のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目36)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.14wt%~約1.6wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目37)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.14wt%~約1.6wt%で存在する、項目36に記載の乾燥粉末組成物。
(項目38)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.14wt%~約1.6wt%で存在する、項目36または37に記載の乾燥粉末組成物。
(項目39)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.42wt%~約1.12wt%で存在する、項目36から38のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目40)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.7wt%~約0.8wt%で存在する、項目36から39のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目41)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目42)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1wt%で存在する、項目41に記載の乾燥粉末組成物。
(項目43)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.1wt%~約1wt%で存在する、項目41または42に記載の乾燥粉末組成物。
(項目44)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.3wt%~約0.7wt%で存在する、項目41から43のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目45)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.5wt%で存在する、項目41から44のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目46)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.15wt%~約1.5wt%で存在する、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目47)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.15wt%~約1.5wt%で存在する、項目46に記載の乾燥粉末組成物。
(項目48)
前記式(I)の化合物が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約1.5wt%で存在し、そして前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.15wt%~約1.5wt%で存在する、項目46または47に記載の乾燥粉末組成物。
(項目49)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.45wt%~約1.05wt%で存在する、項目46から48のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目50)
前記DSPE-PEG2000が、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約0.75wt%で存在する、項目46から49のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目51)
(a)約0.1wt%~約3wt%の式(I)の化合物:
【化5】

またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩(式中、R は、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルである)、
(b)DSPE-PEG2000であって、前記DSPE-PEG2000と、前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比が約0.1:1(DSPE-PEG2000:前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)~約1:1(DSPE-PEG2000:前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)の範囲内にある、DSPE-PEG2000、
(c)約10wt%~約50wt%のロイシン、ならびに
(d)トレハロースおよびマンニトールからなる群から選択された糖である残部
を含み、
(a)、(b)、(c)、および(d)の全体が100wt%である、
乾燥粉末組成物。
(項目52)
(a)が、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項目51に記載の乾燥粉末組成物。
(項目53)
(a)が式(I)の化合物である、項目51または52に記載の乾燥粉末組成物。
(項目54)
がテトラデシルである、項目51から53のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目55)
が直鎖状テトラデシルである、項目54に記載の乾燥粉末組成物。
(項目56)
がペンタデシルである、項目51から53のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目57)
が直鎖状ペンタデシルである、項目56に記載の乾燥粉末組成物。
(項目58)
がヘプタデシルである、項目51から53のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目59)
が直鎖状ヘプタデシルである、項目58に記載の乾燥粉末組成物。
(項目60)
がオクタデシルである、項目51から53のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目61)
が直鎖状オクタデシルである、項目60に記載の乾燥粉末組成物。
(項目62)
がヘキサデシルである、項目51から53のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目63)
が直鎖状ヘキサデシルである、項目62に記載の乾燥粉末組成物。
(項目64)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約0.5wt%~約2wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目65)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約2wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目66)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.2wt%~約1.8wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目67)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%~約1.5wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目68)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.4wt%~約1.6wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目69)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目70)
前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩が、前記乾燥粉末組成物の総重量の約1.5wt%で存在する、項目51から63のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目71)
前記DSPE-PEG2000と、前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比が、約0.3:1(DSPE-PEG2000:前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)~約0.7:1(DSPE-PEG2000:前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)の範囲内にある、項目51から70のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目72)
前記DSPE-PEG2000と、前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩との重量比が、約0.5:1(DSPE-PEG2000:前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩)である、項目51から71のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目73)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の総重量の約15wt%~約40wt%で存在する、項目1から72のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目74)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約18wt%~約33wt%で存在する、項目73に記載の乾燥粉末組成物。
(項目75)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約20wt%~約30wt%で存在する、項目74に記載の乾燥粉末組成物。
(項目76)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約25wt%~約30wt%で存在する、項目75に記載の乾燥粉末組成物。
(項目77)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約27wt%~約30wt%で存在する、項目76に記載の乾燥粉末組成物。
(項目78)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約20wt%で存在する、項目75に記載の乾燥粉末組成物。
(項目79)
前記ロイシンが、前記乾燥粉末組成物の前記総重量の約30wt%で存在する、項目75に記載の乾燥粉末組成物。
(項目80)
前記糖がトレハロースである、項目1から79のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目81)
前記糖がマンニトールである、項目1から79のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目82)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目83)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目82に記載の乾燥粉末組成物。
(項目84)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目82または83に記載の乾燥粉末組成物。
(項目85)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目86)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目85に記載の乾燥粉末組成物。
(項目87)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目85または86に記載の乾燥粉末組成物。
(項目88)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目89)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目88に記載の乾燥粉末組成物。
(項目90)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目88または89に記載の乾燥粉末組成物。
(項目91)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目92)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目91に記載の乾燥粉末組成物。
(項目93)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)トレハロースである残部を含む、項目91または92に記載の乾燥粉末組成物。
(項目94)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目95)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目94に記載の乾燥粉末組成物。
(項目96)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.3wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目94または95に記載の乾燥粉末組成物。
(項目97)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.75wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%の前記ロイシン、および(d)約68.45wt%のマンニトールを含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目98)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.75wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%の前記ロイシン、および(d)約68.45wt%の前記マンニトールを含む、項目97に記載の乾燥粉末組成物。
(項目99)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.75wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.30wt%の前記ロイシン、および(d)約68.45wt%の前記マンニトールを含む、項目97または98に記載の乾燥粉末組成物。
(項目100)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目101)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目100に記載の乾燥粉末組成物。
(項目102)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約29.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目100または101に記載の乾燥粉末組成物。
(項目103)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目104)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目103に記載の乾燥粉末組成物。
(項目105)
(a)約1.5wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.7wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.6wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目103または104に記載の乾燥粉末組成物。
(項目106)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目1から13のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目107)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目106に記載の乾燥粉末組成物。
(項目108)
(a)約1wt%の前記式(I)の化合物、(b)約0.5wt%の前記DSPE-PEG2000、(c)約19.7wt%の前記ロイシン、および(d)マンニトールである残部を含む、項目106または107に記載の乾燥粉末組成物。
(項目109)
前記乾燥粉末組成物が、次世代インパクター(NGI)によって測定した場合、約1μm~約3μmの空気動力学的質量中央粒子径(MMAD)を有する粒子を含むエアロゾルの形態で存在する、項目1から108のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目110)
前記乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約1.3μm~約2.0μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾルの形態で存在する、項目1から109のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目111)
前記乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約1.7μm~約2.7μmのMMADを有する粒子を含むエアロゾルの形態で存在する、項目81および94から108のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目112)
前記乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約30%~約60%の微粒子率を有する粒子を含むエアロゾルの形態で存在する、項目1から111のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物。
(項目113)
それを必要とする患者における肺高血圧症を処置するための方法であって、項目1から112のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、前記患者の肺に投与するステップを含む、方法。
(項目114)
前記肺高血圧症が、肺動脈性肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記肺動脈性肺高血圧症が、ニューヨーク心臓協会(NYHA)によって特徴付けされたクラスIの肺動脈性肺高血圧症である、項目114に記載の方法。
(項目116)
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAによって特徴付けされたクラスIIの肺動脈性肺高血圧症である、項目114に記載の方法。
(項目117)
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAによって特徴付けされたクラスIIIの肺動脈性肺高血圧症である、項目114に記載の方法。
(項目118)
前記肺動脈性肺高血圧症が、NYHAによって特徴付けされたクラスIVの肺動脈性肺高血圧症である、項目114に記載の方法。
(項目119)
前記肺高血圧症が、世界保健機関(WHO)によって特徴付けされた群1の肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目120)
前記肺高血圧症が、WHOによって特徴付けされた群2の肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目121)
前記肺高血圧症が、WHOによって特徴付けされた群3の肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目122)
前記肺高血圧症が、WHOによって特徴付けされた群4の肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目123)
前記肺高血圧症が、WHOによって特徴付けされた群5の肺高血圧症である、項目113に記載の方法。
(項目124)
それを必要とする患者における門脈肺高血圧症または肺線維症を処置するための方法であって、項目1から112のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物の有効量を、乾燥粉末吸入器による吸入によって、前記患者の肺に投与するステップを含む、方法。
(項目125)
前記投与するステップが、1日に1回、1日に2回、または1日に3回の投薬で実行される、項目113から124のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記投与するステップが、前記乾燥粉末組成物をエアロゾル化することと、エアロゾル化された乾燥粉末組成物を、吸入により前記患者の前記肺に投与することとを含む、項目113から125のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
前記エアロゾル化された乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約1μm~約3μmのMMADを有する粒子を含む、項目126に記載の方法。
(項目128)
前記エアロゾル化された乾燥粉末組成物が、NGIで測定した場合、約30%~約60%の微粒子率を有する粒子を含む、項目126または127に記載の方法。
(項目129)
肺高血圧症、門脈肺高血圧症、または肺線維症を処置するためのシステムであって、
項目1から112のいずれか一項に記載の乾燥粉末組成物、および
乾燥粉末吸入器(DPI)
を含む、システム。
(項目130)
前記DPIが、単回用量または複数回用量のいずれかの吸入器である、項目129に記載のシステム。
(項目131)
前記DPIが、予め計量されているか、またはデバイスで計量される、項目129に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A-15B】
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A-18B】
図19
図20
図21A
図21B
図22A-22B】
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41