(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】電力管理システム及び電力管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240315BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2022008198
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克史
(72)【発明者】
【氏名】家親 正典
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-295670(JP,A)
【文献】特開2016-119805(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013754(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザの各住居への電力供給と外部系統への売電とが実施できるように構成された共用電源と、
前記外部系統への売電を前記共用電源に指示する売電指示部と、
前記売電の対価を前記複数のユーザの各々に分配する対価分配部と
を備え、
前記対価分配部は、前記共用電源からの電力使用量が少ないユーザに対して前記売電の対価が多く付与されるように前記売電の対価を分配
し、
前記外部系統における電力需給状況を受信する需給状況受信部と、
前記外部系統において電力が不足している状況での前記電力使用量が少ないユーザに対して前記売電の対価が多く付与されるように、前記売電の対価の分配を補正する第1補正部と
をさらに備えている、電力管理システム。
【請求項2】
前記共用電源は、発電装置を備えている、請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記共用電源は、蓄電装置を備えている、請求項1または2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記外部系統における電力需給状況を受信する需給状況受信部と、
前記外部系統において電力が不足している状況で前記売電を開始するように前記売電指示部を制御する売電制御部と
を備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記複数のユーザの各々の過去の電力使用量を示す使用実績を記憶する実績記憶部と、
予め設定された使用基準値と前記使用実績とを比較し、前記使用実績が前記使用基準値を下回った回数が多いユーザに対して前記売電の対価が多く付与されるように、前記売電の対価の分配を補正する第2補正部と
を備えている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項6】
第2補正部は、前記使用実績が前記使用基準値を連続して下回った回数が多いユーザに対して前記売電の対価がさらに多く付与されるように前記売電の対価の分配を補正する、
請求項5に記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記外部系統からの買電を制御する買電処理部をさらに備え、
前記買電処理部は、
前記共用電源における使用可能電力を前記複数のユーザの各々に設定する使用可能電力設定部と、
前記各住居の合計使用電力が所定の閾値を上回った際に、前記外部系統からの買電を前記共用電源に指示する買電指示部と、
前記使用可能電力を超えた電力を使用したユーザを対象にして前記買電に要した費用を分配する費用分配部と
を備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電力管理システム。
【請求項8】
複数のユーザが共有する共用電源から外部系統への売電をコンピュータに実行させる電力管理プログラムであって、
前記共用電源から前記外部系統への売電を制御するステップと、
前記共用電源からの電力使用量が少ないユーザに対して前記売電の対価が多く付与されるように、前記売電の対価を前記複数のユーザの各々に分配するステップと
、
前記外部系統における電力需給状況を受信するステップと、
前記外部系統において電力が不足している状況での前記電力使用量が少ないユーザに対して前記売電の対価が多く付与されるように、前記売電の対価の分配を補正するステップと
を前記コンピュータに実行させるように構成された、電力管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム及び電力管理プログラムに関する。詳しくは、複数のユーザが共有する共用電源から外部系統への売電を管理する電力管理システムと、当該電力管理システムをコンピュータに実行させる電力管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数の住戸を有する集合住宅の電力供給と売電処理を管理する集合住宅用電力供給システムが開示されている。この集合住宅用電力供給システムは、複数の住戸(ユーザ)が共有する太陽光発電装置で発電された電力の蓄電池への蓄電と電力会社への売電の割合を設定するための設定手段と、設定手段によって設定された割合に従って蓄電と売電を制御する制御手段とを備えている。かかる構成の電力供給システムでは、設定手段によって蓄電と売電の割合を設定するだけで、ユーザの意図に従った電力利用が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の通り、複数のユーザが共有する共用電源(発電装置、蓄電装置等)から外部系統への売電を制御する電力管理システムは従来から種々提案されている。しかしながら、かかる電力管理システムにおいて、売電の対価(インセンティブ)を各ユーザに分配する方法については十分に検討されていない。例えば、売電の対価を各ユーザに均等に分配すると、節電に努めて売電量の増加に貢献したユーザが相対的に損をすることになるため、節電へのモチベーションが低下しやすい。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、共用電源を利用する複数のユーザ間での売電の対価を適切に分配することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される電力管理システムは、複数のユーザの各住居への電力供給と外部系統への売電とが実施できるように構成された共用電源と、外部系統への売電を共用電源に指示する売電指示部と、売電の対価を複数のユーザの各々に分配する対価分配部とを備えている。そして、かかる電力管理システムの対価分配部は、共用電源からの電力使用量が少ないユーザに対して売電の対価が多く付与されるように売電の対価を分配する。
【0007】
上記構成の電力管理システムによると、節電に努めて売電量の増加に貢献したユーザに対して売電対価を多く付与できる。これによって、共用電源を利用する複数のユーザの間で売電の対価を適切に分配できるため、節電へのモチベーション低下を防止できる。
【0008】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、共用電源は、発電装置を備えている。これによって、共用電源における電力を十分に確保し、各住居への電力供給と外部系統への売電の両方を好適に実施できる。
【0009】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、共用電源は、蓄電装置を備えている。これによって、共用電源における電力を十分に確保し、各住居への電力供給と外部系統への売電の両方を好適に実施できる。
【0010】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、外部系統における電力需給状況を受信する需給状況受信部と、外部系統において電力が不足している状況で売電を開始するように売電指示部を制御する売電制御部とを備えている。これによって、売電価格が高額になる電力逼迫時に売電を実施できるため、売電対価を効率よく取得できる。
【0011】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、外部系統における電力需給状況を受信する需給状況受信部と、外部系統において電力が不足している状況での電力使用量が少ないユーザに対して売電の対価が多く付与されるように、売電の対価の分配を補正する第1補正部とを備えている。かかる態様では、売電価格が高額になる電力逼迫時に節電に努めたユーザに対して多くの売電対価が付与される。これによって、電力逼迫時における節電へのモチベーションを向上させ、より多くの売電対価を取得できる。
【0012】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、複数のユーザの各々の過去の電力使用量を示す使用実績を記憶する実績記憶部と、予め設定された使用基準値と使用実績とを比較し、使用実績が使用基準値を下回った回数が多いユーザに対して売電の対価が多く付与されるように、売電の対価の分配を補正する第2補正部とを備えている。かかる態様によると、各ユーザの過去の使用実績を売電対価の分配に反映できるため、継続的な節電へのモチベーションを向上させることができる。
【0013】
また、上記実績記憶部と第2補正部を備える態様において、第2補正部は、使用実績が使用基準値を連続して下回った回数が多いユーザに対して売電の対価がさらに多く付与されるように売電の対価の分配を補正することが好ましい。これによって、継続的な節電へのモチベーションをさらに向上させることができる。
【0014】
ここに開示される電力管理システムの好適な一態様では、外部系統からの買電を制御する買電処理部をさらに備え、買電処理部は、共用電源における使用可能電力を複数のユーザの各々に設定する使用可能電力設定部と、各住居の合計使用電力が所定の閾値を上回った際に、外部系統からの買電を共用電源に指示する買電指示部と、使用可能電力を超えた電力を使用したユーザを対象にして買電に要した費用を分配する費用分配部とを備える。かかる態様によると、買電を行う原因となったユーザに対して、買電に要した費用を請求できる。これによって、節電に努めたユーザに買電費用が請求されることを防止できる。
【0015】
また、ここに開示される技術の他の側面として、複数のユーザが共有する共用電源から外部系統への売電をコンピュータに実行させる電力管理プログラムが提供される。かかる電力管理プログラムは、共用電源から外部系統への売電を制御するステップと、共用電源からの電力使用量が少ないユーザに対して売電の対価が多く付与されるように、売電の対価を複数のユーザの各々に分配するステップとをコンピュータに実行させるように構成されている。かかる電力管理プログラムを用いることによって、ここに開示される電力管理システムを容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る電力管理システムを示す概念図である。
【
図2】一実施形態に係る電力管理システムを示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る電力管理システムにおける売電から対価付与までの処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る電力管理システムにおける売電処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】第1補正部による分配比率の補正手順を示すフローチャートである。
【
図6】第2補正部による分配比率の補正手順を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る電力管理システムにおける売電から費用請求までの手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、ここで開示される技術の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電力管理システムを構築する各機器の構成等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の説明で参照する図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付している。
【0018】
1.電力管理システムの構成
図1は、本実施形態に係る電力管理システムを示す概念図である。また、
図2は、本実施形態に係る電力管理システムを示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る電力管理システム1は、各ユーザA~Nの住居10と、共用電源20と、システム制御装置30とを備えている。以下、各構成について説明する。
【0020】
(1)住居
図1に示すように、本実施形態に係る電力管理システム1では、複数のユーザA~Nが共用電源20を利用する。換言すると、各ユーザA~Nの住居10A~10Nは、共用電源20と電気的に接続されており、共用電源20から供給された電力を使用することができる。なお、各住居10A~10Nは、一軒家でもよいし、集合住宅(マンション等)の一部屋でもよい。また、本明細書における「住居」とは、ユーザが利用するスペースを意味し、ユーザが実際に居住することを要求しない。すなわち、本明細書における「住居」は、オフィスビル、ホテルなどのユーザが一時的に滞在する建築物または部屋を包含するものとする。なお、住居10A~10Nの戸数は、複数(例えば2戸以上)であればよく、特に限定されない。
【0021】
そして、本実施形態に係る電力管理システム1のユーザA~Nは、それぞれ、システム制御装置30と通信可能なユーザ用端末12を所有している。
図2に示すように、このユーザ用端末12は、ユーザA~Nの電力使用に関する情報が入力される入力手段12aと、入力手段12aに入力された情報をシステム制御装置30に送信する送信手段12bと、システム制御装置30からの情報を受信する受信手段12cとを備えている。また、ユーザ用端末12は、各種情報を表示する画像表示手段(ディスプレイ等)を有していてもよい。ユーザ用端末12の具体的な構成の一例として、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどが挙げられる。但し、ユーザ用端末12の構成は、ここに開示される技術を限定するものではなく、必要に応じて構成を適宜変更できる。
【0022】
(2)共用電源
共用電源20は、各住居10A~10Nへの電力供給と外部系統100への売電とが実施できるように構成されている。
図1に示すように、本実施形態における共用電源20は、発電装置22と、蓄電装置24とを備えている。発電装置22は、複数のユーザA~Nが共有する自家発電設備である。発電装置22は、従来公知の発電設備を特に制限なく使用できる。かかる発電装置22の一例として、太陽光発電装置、ガス発電装置、風力発電装置などが挙げられる。次に、蓄電装置24は、複数のユーザA~Nが共有する蓄電設備である。この蓄電装置24も、特に限定されず、従来公知の蓄電設備を制限なく使用できる。かかる蓄電装置24の一例として、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池などの二次電池を複数接続した組電池などが挙げられる。そして、蓄電装置24は、発電装置22と、外部系統100と、各住居10A~10Dに電気的に接続されている。これによって、発電装置22で生じた電力を蓄電装置24に蓄電できると共に、各住居10A~10Nへの電力供給と外部系統100への売電の両方を実施できる。
【0023】
また、本実施形態に係る共用電源20は、システム制御装置30と通信可能な電源制御装置26を備えている。
図2に示すように、この電源制御装置26は、共用電源20における電力の入出力情報が入力される入力手段26aと、入力手段26aに入力された情報をシステム制御装置30に送信する送信手段26bと、システム制御装置30からの信号を受信する受信手段26cと、受信手段26cが受信した信号に基づいて蓄電装置24の充放電を制御する制御手段26dを備えている。この電源制御装置26は、例えば、蓄電装置24に取り付けられたマイクロコンピュータなどによって構成される。当該マイクロコンピュータは、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMとを備えている。
【0024】
(4)システム制御装置
システム制御装置30は、電力管理システム1の動作を制御する装置である。
図1に示すように、システム制御装置30は、各ユーザA~Nのユーザ用端末12と、共用電源20の電源制御装置26と、外部ネットワーク200と通信可能に接続されている。なお、システム制御装置30は、単一のコンピュータによって実現されてもよいし、複数のコンピュータが協働して実現されるものであってもよい。
【0025】
図2に示すように、本実施形態におけるシステム制御装置30は、通信部40と、売電処理部50と、対価分配部60と、需給状況受信部70と、実績記憶部80とを備えている。以下、システム制御装置30の各部について説明する。
【0026】
通信部40は、他の端末・機器との通信を実施する部分である。
図2に示すように、本実施形態における通信部40は、ユーザ用端末12と通信可能な第1通信部41と、電源制御装置26と通信可能な第2通信部42と、外部ネットワーク200と通信可能な第3通信部43とを備えている。
【0027】
売電処理部50は、共用電源20から外部系統100への売電を制御する部分である。この売電処理部50は、外部系統100への売電(電力供給)を共用電源20に指示する売電指示部51を備えている。詳しくは後述するが、共用電源20の電源制御装置26は、売電指示部51からの売電開始信号を受信した際に蓄電装置24から外部系統100への売電を実施する。また、本実施形態における売電処理部50は、売電指示部51が売電開始信号を送信するタイミングを制御する売電制御部52をさらに備えている。
【0028】
対価分配部60は、売電の対価を複数のユーザA~Nの各々に分配する部分である。本明細書における「売電の対価」とは、外部系統への電力供給に対して支払われる報酬である。かかる売電の対価は、金銭に限定されず、商品等と交換可能なポイント、電気料金の割引などが挙げられる。また、本実施形態における対価分配部60は、対価記憶部61と、ユーザ情報記憶部62と、分配比率計算部63と、対価付与部64とを備えている。対価記憶部61は、売電相手から支払われた売電対価を記憶する部分である。ユーザ情報記憶部62は、共用電源20から各住居10A~10Nに供給された電力量(各ユーザA~Nの電力使用量)を記憶する部分である。分配比率計算部63は、各ユーザA~Nに対する売電対価の分配比率を計算する部分である。そして、対価付与部64は、分配比率計算部63が計算した分配比率に基づいて各ユーザA~Nに対価を付与する部分である。詳しくは後述するが、本実施形態における対価分配部60は、これらの部分が協働することによって、共用電源20からの電力使用量が少ないユーザに対して売電対価が多く付与されるように売電対価を分配する。また、本実施形態における対価分配部60は、第1補正部65と第2補正部66を備えている。これらの補正部は、分配比率計算部63で算出された分配比率を補正する部分である。
【0029】
次に、需給状況受信部70は、外部系統における電力需給状況を受信する部分である。この需給状況受信部70が取得した情報は、売電制御部52による制御処理や、第1補正部65による補正処理などに用いられる。また、実績記憶部80は、各ユーザA~Nの過去の電力使用量(使用実績)を記憶する部分である。この実績記憶部80に記憶された使用実績は、第2補正部66による補正処理に使用される。
【0030】
なお、上述した各部は、システム制御装置30のハードウェアと、当該ハードウェアに記憶されたプログラムによって実現される。すなわち、ここに開示される技術によると、上述の構成を有するシステム制御装置(コンピューター)を実現する電力管理プログラムも提供される。
【0031】
2.売電処理と対価の分配
次に、上記構成の電力管理システム1における売電処理と対価の分配について
図3~
図6を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る電力管理システムにおける売電から対価付与までの処理手順を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態に係る電力管理システムにおける売電処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
図5は、第1補正部による分配比率の補正手順を示すフローチャートである。
図6は、第2補正部による分配比率の補正手順を示すフローチャートである。
【0032】
(1)売電処理S10
図3に示すように、本実施形態に係る電力管理システム1は、共用電源20から外部系統100へ売電する売電処理S10を実施する。本ステップにおいて、売電指示部51は、第2通信部42を介して、共用電源20の電源制御装置26に売電開始信号を送信する。そして、売電開始信号を受信した電源制御装置26は、外部系統100に電力が送電されるように蓄電装置24の充放電を制御する。さらに、売電指示部51は、第3通信部43と外部ネットワーク200を介して、売電相手に売電情報(売電者名、売電量など)を送信する。なお、ここでの売電相手は、電力会社に限定されず、特定の個人(法人等を含む)であってもよい。すなわち、本明細書における「売電」は、送電相手を特定せずに外部系統に電力を供給して電力会社から対価を得る売電と、外部系統を介して特定の売電相手に直接送電して売電相手から対価を得る売電の両方を包含する。
【0033】
なお、本実施形態に係る電力管理システム1は、外部系統100において電力が不足している状況で売電を開始するように構成されている。具体的には、
図4に示すように、本実施形態における売電処理S10は、需給状況取得処理S12と、第1判定処理S14と、売電開始処理S16を備えている。以下、売電処理S10における各ステップを説明する。
【0034】
(a)需給状況取得処理S12
この需給状況取得処理S12では、外部系統100における電力需給状況を取得する。上述した通り、本実施形態におけるシステム制御装置30は、外部系統における電力需給状況を受信する需給状況受信部70を備えている。具体的には、本実施形態におけるシステム制御装置30には、外部系統100において電力が不足しているか否かを示す情報(需給情報ISD)が外部ネットワーク200を介して入力される。そして、この需給情報ISDは、一定の期間、需給状況受信部70に記憶される。なお、需給情報ISDは、外部系統における電力需給状況を数値化したものであれば特に限定されない。かかる需給情報ISDの一例として、一定期間における電力供給量と電力需要との差分の平均値、一定期間における電気料金の平均値などが挙げられる。
【0035】
(b)第1判定処理S14
次に、第1判定処理S14では、電力需給状況(需給情報ISD)に基づいて売電処理S10を開始するか否かを判定する。具体的には、本ステップにおいて、売電制御部52は、需給状況受信部70に記憶された需給情報ISDを取得する。そして、売電制御部52は、予め設定した第1閾値D1と需給情報ISDと比較する。かかる比較の結果、需給情報ISDが第1閾値D1未満(ISD<D1)である場合、売電制御部52は、外部系統100に十分な電力が供給されているため、売電対価が低額になると判断して売電を開始しない。この場合、売電制御部52は、需給状況取得処理S12と第1判定処理S14を繰り返し実施する(S14のNo)。一方、需給情報ISDが第1閾値D1以上(ISD≧D1)である場合、売電制御部52は、外部系統100における電力が不足しているため、売電対価が高額になると判断し、売電開始処理S16に進む(S14のYes)。
【0036】
(c)売電開始処理S16
売電開始処理S16では、売電を開始するように売電指示部51を制御する。具体的には、本ステップにおいて、売電制御部52は、売電開始信号を電源制御装置26に送信するように売電指示部51を制御する。そして、上述した通り、売電開始信号を受信した電源制御装置26は、外部系統100に電力が送電されるように蓄電装置24の充放電を制御する。以上の通り、本実施形態に係る電力管理システム1は、外部系統において電力が不足している状況(電力逼迫時)に売電を開始するように売電指示部51を制御する。これによって、売電価格が高額になる時に売電を実施できるため、売電対価を効率よく取得することができる。
【0037】
(2)分配処理
次に、本実施形態に係る電力管理システム1は、売電処理S10によって得た売電対価Xを各ユーザA~Nに分配する分配処理を実施する。
図3に示すように、本実施形態における分配処理は、対価記憶処理S20と、ユーザ使用量取得処理S30と、配分計算処理S40と、対価付与処理S50を備えている。以下、各々のステップについて説明する。
【0038】
(a)対価記憶処理S20
本ステップでは、上記売電処理S10によって得た売電対価Xを記憶する。具体的には、上記売電処理S10において売電情報を受信した売電相手は、外部ネットワーク200を介してシステム制御装置30に売電対価Xを送信する。かかる売電対価Xは、対価分配部60の対価記憶部61に記憶される。ここに開示される技術を限定するものではないが、システム制御装置30は、例えば、所定の期間(例えば一ヶ月間)、受信した売電対価Xを加算し続けることが好ましい。これによって、一定期間の売電対価Xをまとめて分配できるため、売電対価Xの分配・付与に関する処理を簡略化することができる。
【0039】
(b)ユーザ使用量取得処理S30
本ステップでは、各ユーザA~Nの共用電源20からの電力使用量を取得する。本実施形態に係る電力管理システム1では、共用電源20から各住居10A~10Nに供給された電力量が、「各ユーザの電力使用量EA~EN」としてシステム制御装置30に継続的に送信される。そして、システム制御装置30は、この電力使用量EA~ENをユーザ情報記憶部62に記憶する。なお、一定期間の売電対価Xをまとめて分配する場合、ユーザ情報記憶部62は、当該期間における電力使用量EA~ENを加算し、加算した電力使用量EA~ENと同期間における売電対価Xとを紐付ける処理を行うことが好ましい。
【0040】
(c)配分計算処理S40
本ステップでは、各ユーザの電力使用量EA~ENに基づいて売電対価Xを分配し、各ユーザA~Nへの売電対価XA~XNを算出する。具体的には、この配分計算処理S40において、対価分配部60の分配比率計算部63は、ユーザ情報記憶部62から各ユーザの電力使用量EA~ENを取得する。そして、分配比率計算部63は、この各ユーザの電力使用量EA~ENに基づいて、各ユーザA~Nへの分配比率RA~RNを算出する。具体的には、電力使用量が少ないユーザは、節電に努めており、売電量の増加に貢献しているため、分配比率が相対的に高くなるように算出される。一方、電力使用量が多いユーザは、売電への貢献度が低いため、分配比率が相対的に低くなるように算出される。次に、分配比率計算部63は、対価記憶部61から売電対価Xを取得する。そして、分配比率計算部63は、分配比率RA~RNの各々と売電対価Xとを乗算することによって、各ユーザA~Nへの売電対価XA~XNを算出する。
【0041】
(d)対価付与処理S50
本ステップでは、分配比率計算部63が算出した売電対価XA~XNを各ユーザA~Nに付与する。なお、各ユーザA~Nに売電対価XA~XNを付与する手段は、特に限定されず、従来公知の種々の手段を採用できる。例えば、売電対価XA~XNが金銭の場合、対価付与部64は、第3通信部43と外部ネットワーク200を介して、各ユーザA~Nの銀行口座に売電対価XA~XNを振り込む旨の信号を送信するとよい。
【0042】
以上の通り、本実施形態における電力管理システム1は、各ユーザの電力使用量EA~ENに基づいて、各ユーザA~Nへの売電対価XA~XNを算出する。これによって、節電に努めており、売電量の増加に貢献するユーザに多くの売電対価を付与できる。この結果、共用電源20を利用する複数のユーザA~Nに対して売電対価Xを適切に分配できるため、節電へのモチベーションの低下を防止できる。
【0043】
(3)分配比率の補正
次に、本実施形態に係る電力管理システム1は、分配比率計算部63で算出された分配比率RA~RNを補正する補正部(第1補正部65、第2補正部66)を備えている。以下、これらの補正部による分配比率の補正について説明する。
【0044】
(a)第1補正部による補正
図5は、第1補正部65による分配比率の補正手順を示したフローチャートである。この
図5に示すように、第1補正部65による補正処理は、需給状況取得処理S41と、第1補正値算出処理S42と、第1補正処理S43を備えている。
【0045】
第1補正部65による補正処理は、最初に、外部系統100における電力需給状況を取得する需給状況取得処理S41を実施する。この需給状況取得処理S41は、上述した売電処理S10における需給状況取得処理S12(
図4参照)と同じ手順で実施できる。すなわち、本処理においても、外部ネットワーク200を介して入力された電力需給状況に関する情報(需給情報I
SD)が需給状況受信部70に記憶される。
【0046】
次に、第1補正値算出処理S42では、電力需給状況に関する情報と各ユーザA~Nの電力使用情報に基づいて第1補正値を算出する。具体的には、第1補正部65は、需給状況受信部70から需給情報ISDを取得すると共に、ユーザ情報記憶部62から各ユーザA~Nの電力使用情報を受信する。そして、第1補正部65は、各ユーザA~Nの電力使用情報と需給情報ISDとを比較し、外部系統において電力が不足している状況での電力使用量が少ないユーザに対して売電対価が多く付与されるように第1補正値を算出する。具体的には、電力逼迫時に節電して売電量を増加させたユーザは、売電対価の向上に貢献したといえる。第1補正部65は、この電力逼迫時に節電したユーザの分配比率が増加するように第1補正値を算出する。なお、第1補正値を算出する具体的な手段は、特に限定されない。例えば、ユーザの電力使用状況と需給情報ISDと第1補正値の対応関係を設定した第1補正テーブルを第1補正部65に記憶させ、当該第1補正テーブルに基づいて第1補正値を算出するという手順を採用することもできる。
【0047】
そして、第1補正処理S43では、第1補正部65が算出した第1補正値に基づいて、各ユーザA~Nの分配比率R
A~R
Nを補正する。具体的には、算出後の第1補正値は、分配比率計算部63に送信される。分配比率計算部63は、上記配分計算処理S40(
図3参照)にて算出した分配比率R
A~R
Nを第1補正値で補正し、当該補正後の分配比率R
A~R
Nと売電対価Xとを乗算することによって、各ユーザA~Nへの売電対価X
A~X
Nを算出する。これによって、電力逼迫時に節電して売電対価の増加に貢献したユーザに、多くの売電対価を分配することができる。以上のように、電力需給状況に基づいて売電対価の分配を補正することによって、電力逼迫時における節電へのモチベーションを向上させ、より多くの売電対価を取得できる。
【0048】
(b)第2補正部による補正
図6は、第2補正部66による分配比率の補正手順を示したフローチャートである。
図6に示すように、第2補正部66による補正処理は、実績記憶処理S44と、第2補正値算出処理S45と、第2補正処理S46を備えている。
【0049】
実績記憶処理S44では、各ユーザA~Nの過去の電力使用量を示す使用実績Yを記憶する。上述した通り、システム制御装置30は、各ユーザの電力使用量EA~ENをユーザ情報記憶部62に記憶する。そして、本実施形態におけるユーザ情報記憶部62は、所定期間における各ユーザの電力使用量EA~ENを加算したものを使用実績Yとして記憶する。一例として、ユーザ情報記憶部62は、1ヶ月間の使用実績Yを1年分記憶するように設定できる。この場合、ユーザ情報記憶部62には、一人のユーザに対して、12ヶ月分の使用実績(使用実績Y1~Y12)が記憶される。便宜上、以下の説明では、この12個の使用実績Y1~Y12を使用した補正処理を例に挙げて説明する。しかし、使用実績を取得する期間は、ここに開示される技術を限定するものではない。
【0050】
次に、第2補正値算出処理S45では、各ユーザA~Nの使用実績に基づいて第2補正値を算出する。具体的には、第2補正部66は、各ユーザA~Nの使用実績Y1~Y12をユーザ情報記憶部62から取得する。第2補正部66は、予め設定された使用基準値と、使用実績Y1~Y12の各々を比較する。この使用基準値は、使用実績の取得期間(本実施形態では1ヶ月)における一般的な電力使用量などが採用される。そして、上記複数の使用実績Y1~Y12の中で使用基準値を下回る使用実績が多いユーザは、継続的な節電を実施しており、長期間における売電量の増加に貢献していると判断できる。このため、第2補正部66は、使用実績Y1~Y12が使用基準値を下回った回数が多いユーザの分配比率が増加するように第2補正値を算出する。なお、第2補正値を算出する具体的な手段も、特に限定されない。例えば、使用基準値を下回った使用実績Yの数と第2補正値の対応関係を設定した第2補正テーブルを第2補正部66に記憶させ、当該第2補正テーブルに基づいて第2補正値を算出するという手順を採用することもできる。
【0051】
そして、第2補正処理S46では、第2補正部66が算出した第2補正値に基づいて、各ユーザA~Nの分配比率R
A~R
Nを補正する。具体的には、算出後の第2補正値は、分配比率計算部63に送信される。分配比率計算部63は、上記配分計算処理S40(
図3参照)にて算出した分配比率R
A~R
Nを第2補正値で補正し、当該補正後の分配比率R
A~R
Nと売電対価Xとを乗算することによって、各ユーザA~Nへの売電対価X
A~X
Nを算出する。これによって、継続して売電量の増加に貢献しているユーザに、多くの売電対価を分配することができる。以上のように、過去の使用実績に基づいて売電対価の分配を補正することによって、継続的な節電へのモチベーションを向上させることができる。なお、また、第2補正部66は、使用実績Y
1~Y
12が使用基準値を連続して下回った回数に基づいて分配比率R
A~R
Nを補正するとより好ましい。これによって、継続的な節電へのモチベーションをさらに向上させることができる。
【0052】
2.買電処理と費用の分配
以上、本実施形態に係る電力管理システム1における売電処理と対価の分配について説明した。なお、ここに開示される技術を限定するものではないが、電力管理システム1は、外部系統から共用電源への電力受領(買電)と、当該買電に要する費用の各ユーザA~Nへの分配を実施できるように構成されていることが好ましい。以下、本実施形態に係る電力管理システム1における買電処理と費用の分配について説明する。
【0053】
まず、
図2に示すように、本実施形態における電力管理システム1のシステム制御装置30は、外部系統100からの買電を制御する買電処理部90を備えている。この買電処理部90は、使用可能電力設定部91と、買電指示部92と、費用記憶部93と、費用分配部94とを備えている。使用可能電力設定部91は、共用電源20における使用可能電力を複数のユーザA~Nの各々に設定する部分である。また、買電指示部92は、各住居10A~10Nの合計使用電力が所定の閾値を上回った際に、外部系統100からの買電を共用電源20に指示する部分である。費用記憶部93は、上記買電に要した費用を記憶する部分である。そして、費用分配部94は、使用可能電力を超えた電力を使用したユーザを対象にして買電の費用を分配する部分である。本実施形態における買電処理部90は、これらの部分が協働することによって、共用電源20からの電力使用量が多いユーザに対して買電費用が多く請求されるように買電費用を分配する。
【0054】
以下、本実施形態に係る電力管理システム1における買電処理と費用の分配について
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態に係る電力管理システムにおける売電から費用請求までの手順を示したフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態に係る電力管理システム1の買電処理は、使用可能電力設定処理S61と、ユーザ使用量取得処理S62と、第2判定処理S63と、買電開始処理S64と、費用分配処理S65とを備えている。以下、各ステップについて説明する。
【0055】
(a)使用可能電力設定処理S61
本ステップでは、複数のユーザA~Nの各々に対して使用可能電力LA~LNを設定する。そして、この使用可能電力LA~LNは、使用可能電力設定部91に記憶される。なお、使用可能電力LA~LNを設定する手段は、特に限定されない。例えば、共用電源20からの総供給電力をユーザA~Nの人数で割った値を使用可能電力LA~LNとしてもよい。また、使用可能電力設定部91は、追加料金の支払いなどによって、特定のユーザに対して、他のユーザよりも多い使用可能電力を設定できるように構成されていてもよい。
【0056】
(b)ユーザ使用量取得処理S62
図7に示すように、本実施形態に係る電力管理システム1は、買電処理を実施する際もユーザ使用量取得処理S62を実施する。なお、ここでのユーザ使用量取得処理S62は、分配処理におけるユーザ使用量取得処理S30(
図3参照)と同様の手順を採用することができる。
【0057】
(c)第2判定処理S63
第2判定処理S63では、外部系統100からの買電を実施するか否かが判定される。具体的には、本ステップにおいて、買電処理部90の買電指示部92は、ユーザ情報記憶部62から各住居10A~10Nの電力使用量EA~ENを取得する。そして、買電指示部92は、各々の電力使用量EA~ENの合計値(合計使用電力ET)を算出し、予め設定された第2閾値D2と比較する。この第2閾値D2は、共用電源20の総電力量よりも低い値に設定された閾値である。そして、これらの値の比較の結果、合計使用電力ETが第2閾値D2未満(ET<D2)であった場合、買電指示部92は、各住居10A~10Nに不足なく電力が供給されていると判断して買電を開始しない。この場合、買電指示部92は、ユーザ使用量取得処理S62と第2判定処理S63を繰り返し実施する(S63のNo)。一方、合計使用電力ETが第2閾値D2以上(ET≧D2)である場合、買電指示部92は、各住居10A~10Nの合計使用電力ETが共用電源20の総電力量に近づいており、各住居10A~10Nへの電力供給が不足するおそれがあると判断し、買電開始処理S64に進む(S63のYes)。なお、本ステップにおける第2閾値D2は、共用電源20の総電力量の75%~95%の範囲内に設定されていることが好ましい。これによって、共用電源20における電力量が不足して各住居10A~10Nに停電が生じる前に、外部系統100からの買電を実施できる。
【0058】
(d)買電開始処理S64
本ステップにおいて、買電指示部92は、外部系統100からの買電を共用電源20に指示する。具体的には、買電指示部92は、第2通信部42を介して、共用電源20の電源制御装置26に買電開始信号を送信する。そして、買電開始信号を受信した電源制御装置26は、外部系統100から電力が供給されるように蓄電装置24の充放電を制御する。さらに、買電指示部92は、第3通信部43と外部ネットワーク200を介して、電力会社に買電情報(買電者名、買電量など)を送信する。これによって、電力会社からシステム制御装置30に買電費用に関する情報が送信される。そして、システム制御装置30は、受信した買電費用を費用記憶部93に記憶する。
【0059】
(e)費用分配処理S65
次に、本実施形態に係る電力管理システム1は、買電費用を各住居に分配する費用分配処理S65を実施する。この費用分配処理S65において、費用分配部94は、使用可能電力設定部91から各ユーザA~Nの使用可能電力LA~LNを取得すると共に、ユーザ情報記憶部62から各ユーザA~Nの電力使用量EA~ENを取得する。そして、費用分配部94は、各々のユーザA~Nにおいて、使用可能電力LA~LNと電力使用量EA~ENとを比較し、電力使用量EA~ENが使用可能電力LA~LNを超えたユーザを費用請求の対象とする。さらに、費用分配部94は、使用可能電力LA~LNに対する電力使用量EA~ENの超過量(EA-LA~EN-LN)を算出する。そして、この超過量が多いユーザに対して多くの買電費用が請求されるように、費用記憶部93に記憶された買電費用を分配する。そして、買電費用の請求対象となったユーザに対して、ユーザ用端末12に、分配後の買電費用の支払いを要求する通知を送信する。
【0060】
以上の通り、本実施形態に係る電力管理システム1は、使用可能電力LA~LNを超過したユーザを対象にして買電費用を分配するように構成されている。これによって、多量の電力を使用して買電の原因となったユーザに、買電に要した費用を請求できる。これによって、節電に努めたユーザに買電費用が請求されることを防止できる。
【0061】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は、ここに開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここに開示される技術を限定するものではない。
【0062】
例えば、
図1に示すように、上述の実施形態における共用電源20は、発電装置22と蓄電装置24を備えている。しかしながら、ここに開示される技術における「共用電源」は、各住居への電力供給と外部系統への売電とを実施できるように構成されていればよく、発電装置と蓄電装置の両方を備えた形態に限定されない。例えば、発電装置のみを有する共用電源を使用する形態であっても、各住居に電力を分配して供給することができ、かつ、発電装置で発電した電力を外部系統へ直接売電することができる。また、蓄電装置のみを有する共用電源を使用する形態では、各ユーザの発電装置で発電した電力を共用の蓄電装置で蓄電することができる。この場合には、共用の蓄電装置(共用電源)から各住居に電力を分配して供給でき、かつ、蓄電装置から外部系統へ売電することができる。このように、発電装置と蓄電装置のいずれか一方のみを備えた共用電源を使用する場合でも、ここに開示される技術を適切に実施することができる。また、ここに開示される技術は、上記構成の電力管理システムを利用する各ユーザが個人的に蓄電装置や発電装置を所有することを妨げるものではない。すなわち、
図1中の各住居10A~10Nは、共用電源20とは異なる電源(蓄電装置、発電装置等)と接続されていてもよい。
【0063】
また、
図4に示すように、上述の実施形態に係る電力管理システム1は、外部系統100における電力需給状況に基づいて、売電を開始するタイミングを制御している。しかしながら、上述した通り、
図4に示す売電開始制御は、売電価格が高額になる電力逼迫時に売電を実施して売電対価を効率よく取得することを目的としている。このため、この売電開始制御を実施しない場合でも、ここに開示される技術の効果(売電対価の適切な分配)は阻害されない。すなわち、ここに開示される技術は、予め設定した売電時間(例えば毎日24時)に売電を実施するような電力管理システムに適用することもできる。
【0064】
また、
図5及び
図6に示すように、上述の実施形態に係る電力管理システム1は、分配比率計算部63で算出された分配比率R
A~R
Nを補正する補正処理を実施している。しかしながら、これらの補正処理は、ここに開示される技術の効果を発揮させるための必須の処理ではない。例えば、共用電源からの電力使用量のみに基づいて売電対価を分配した場合でも、売電対価を複数のユーザの間で十分に適切に分配できる。
【0065】
また、
図7に示すように、上述の実施形態に係る電力管理システム1は、各ユーザの使用電力量に基づいて買電費用を分配できるように構成されている。しかしながら、この買電費用の分配も、ここに開示される技術の効果を発揮させるための必須の処理ではない。この
図7に示す買電費用の分配を実施しない場合でも、節電に努めて売電量の増加に貢献したユーザに対して売電対価を多く付与できるため、複数のユーザの間で売電対価を適切に分配できる。また、特定のユーザが過剰な電力を使用して売電ができなかった場合は、電力管理システムは、節電に努めたユーザに対して売電の対価とは異なる利益を、節電に努めたユーザに付与してもよい。かかる売電対価とは異なる利益としては、次回以降の売電対価の優先的な分配、次回の共用電源の優先的な使用権限の付与などが挙げられる。
【0066】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 電力管理システム
10 住居
12 ユーザ用端末
20 共用電源
22 発電装置
24 蓄電装置
26 電源制御装置
30 システム制御装置
40 通信部
50 売電処理部
60 対価分配部
70 需給状況受信部
80 実績記憶部
90 買電処理部
100 外部系統
200 外部ネットワーク