(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】人形用眼エレメント、人形用眼ユニット、および人形
(51)【国際特許分類】
A63H 3/38 20060101AFI20240315BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A63H3/38 Z
A63H3/36 C
(21)【出願番号】P 2022066107
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2019207040の分割
【原出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】岸 太一
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-067790(JP,U)
【文献】米国特許第04705488(US,A)
【文献】米国特許第02670569(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0118863(KR,A)
【文献】特開2009-011458(JP,A)
【文献】米国特許第01740675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/00-3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形用眼ユニットであって、
人形用眼エレメント
と、
前記人形用眼エレメントを連結可能な支持エレメントと、を備え、
前記人形用眼エレメントは
、第1方向に凸面が形成された前側凸曲面と、第1方向とは反対方向である第2方向に凸面が形成され
、前記前側凸曲面とは曲率半径が異なる後側凸曲面とから成る透光部と、前記後側凸曲面の一部に設けられ、眼模様を有する模様部と
、前記透光部から上下方向に張り出す第1張出部と、を含み、
前記支持エレメントは、支持本体と、前記支持本体から上下方向に張り出す第2張出部と、を含み、
前記透光部は、前記前側凸曲面の端部と前記後側凸曲面の端部とが連な
り、前記人形用眼エレメントが前記支持エレメントに連結された状態において、前記模様部が前記支持本体と対向するように構成されている、
人形用眼ユニット。
【請求項2】
前記透光部は、前記人形用眼エレメントが前記支持エレメントに連結された状態において、前記模様部が設けられた前記後側凸曲面は、前記支持本体と接触または近接するように構成されている、
請求項
1に記載の人形用眼ユニット。
【請求項3】
前記透光部の前面視輪郭は、円状であり、
前記透光部の前記前側凸曲面の前面
視輪郭の形状および大きさは、前記後側凸曲面の前面
視輪郭の形状および大きさと同じである、
請求項1
または2に記載の人形用眼ユニット。
【請求項4】
前記透光部の前記前側凸曲面の厚さ寸法は、前記後側凸曲面の厚さ寸法よりも大きい、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項5】
前記透光部の前記前側凸曲面の断面曲線と前記後側凸曲面の断面曲線は、中央から周囲に向かって曲率半径が小さくなる曲線から成る、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項6】
前記透光部は、透明と半透明のいずれかである、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項7】
前記模様部は、前記後側凸曲面に印刷された印刷層から成る、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項8】
前記模様部は、前記後側凸曲面に貼り付けられた印刷シートから成る、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項9】
前記模様部の前記眼模様は、瞳孔部と虹彩部と結膜部とを備える、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項10】
前記模様部の前記結膜部の色は、白色系であり、
前記模様部の前記瞳孔部の色と前記虹彩部の色は、白色系以外の色である、
請求項
9に記載の人形用眼ユニット。
【請求項11】
前記人形用眼エレメントが前記支持エレメントに連結された状態において、前記模様部の前記瞳孔部と前記虹彩部は、前記支持本体と接触または近接し、前記模様部の前記結膜部は、前記支持本体と接触または近接しないように構成されている、
請求項
9または
10に記載の人形用眼ユニット
【請求項12】
前記眼エレメントが左眼用と右眼用の1対の場合、前記左眼用の眼エレメントと前記右眼用の眼エレメントが一体化されている、
請求項1~
11のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項13】
前記支持エレメントの前記支持本体の厚さ寸法は、前記眼エレメントの前記透光部の厚さ寸法以下である、
請求項1~
12のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項14】
前記支持エレメントの前記支持本体の前面視輪郭の形状および大きさは、前記眼エレメントの前記透光部の前面視輪郭の形状および大きさと同じである、
請求項1~
13のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項15】
前記支持エレメントの色は、少なくとも前記支持本体の前面の色が白色系である、
請求項1~
14のいずれか1項に記載の人形用眼ユニット。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載の人形用眼ユニットを取付可能な頭部を少なくとも備えた人形であって、
前記頭部は、顔面を含む前側頭部と、前記前側頭部に着脱可能な後側頭部とに分割され、
前記前側頭部は、前記人形用眼ユニットの前記透光部の前記前側凸曲面の一部を露出可能な開口部を備える、
人形。
【請求項17】
前記頭部を構成する前記前側頭部と前記後側頭部との分割線は、前記頭部の中心を通る横線を基準とした場合に当該横線に対して後下がりに傾斜している、
請求項
16に記載の人形。
【請求項18】
前記人形は、前記頭部を着脱可能に覆う頭髪部をさらに備え、
前記頭髪部は、前側頭髪部と、前記前側頭髪部に着脱可能な後側頭髪部とに分割され、前記頭部の分割線は、前記頭部に前記頭髪部を装着することにより視認不可能に構成されている、
請求項
17に記載の人形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形用眼エレメントと、当該眼エレメントを用いた人形用眼ユニットと、当該眼ユニットを用いた人形に関する。
【背景技術】
【0002】
後記特許文献1には、瞳を有する眼球部と目線調節凸部とから成る義眼部材と、目線調節凸部用の貫通口と結合凸部(または結合孔部)とを有する義眼支持部材と、を備えた人形頭が開示されている。
【0003】
前掲の人形頭では、義眼部材の眼球部を顔部内側の義眼収納凹部(開口部の周囲内側部分)に配し、当該義眼部材の目線調節凸部が貫通口に入るようにして義眼支持部材の結合凸部(または結合孔部)を顔部内側の結合凹部(または結合凸部)に嵌めて、当該義眼支持部材の弾性に基づく貫通口の周縁部による付勢によって、義眼部材の眼球部を顔部内側の義眼収納凹部(開口部の周囲内側部分)に密着させている。
【0004】
後記特許文献1には詳しい説明は為されていないが、その図面ならびに周知の人形用眼構造からすると、前掲の眼球部は、半球状の眼球部の瞳を除く部分が眼の結膜(白目)を表す部分であり、瞳が眼の瞳孔(瞳)および虹彩を表す部分である。一般に、前掲の瞳は、半球状で平坦な後面を有する透光部と、その後面側に配された模様部(眼の瞳孔(瞳)および虹彩を表す模様)とから構成されている。
【0005】
ところで、前掲の眼球部を含む人形用眼構造には、追視(追い目)現象、具体的には角度を変えて見ても視線が追ってくるように感じられる現象が求められる場合が多い。この追視現象は前記透光部の厚さ寸法を大きくするほど(半球形に近付けるほど)得やすくなるが、追視現象を得るために前記透光部の厚さ寸法を大きくすると、角膜に該当する部分が過度に前に飛び出したような形態となるため、模倣対象の実際の眼形態との相違に基づく違和感を生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、厚さ寸法を大きくしなくても所期の追視現象が得られる人形用眼エレメントと、当該眼エレメントを用いた人形用眼ユニットと、当該眼ユニットを用いた人形を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である人形用眼エレメントは、透光部と、眼模様を有する模様部とを備え、透光部は、前側凸曲面と、前側凸曲面と向き合う後側凸曲面とに形成され、模様部は、透光部の前記後側凸曲面に設けられている。
【0009】
また、本発明の一態様である人形用眼ユニットは、前掲の眼エレメントと、眼エレメントを連結可能な支持エレメントとから成り、支持エレメントは、眼エレメントの模様部の後面と対向可能な前面を有する支持本体と、眼エレメントの連結部を連結可能な被連結部と、支持エレメントを他の部品に取付可能な取付部とを備える。
【0010】
さらに、本発明の一態様である人形は、前掲の眼ユニットを取付可能な頭部を少なくとも備え、頭部は、顔面を含む前側頭部と、前側頭部に着脱可能な後側頭部とに分割され、前側頭部は、前側頭部の内側に設けられ眼ユニットの取付部を取付可能な被取付部と、眼ユニットの透光部の前側凸曲面の一部を露出可能な開口部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
厚さ寸法を大きくしなくても所期の追視現象が得られる人形用眼エレメントと、当該眼エレメントを用いた人形用眼ユニットと、当該眼ユニットを用いた人形を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)本発明に係る眼エレメントの前面図、
図1(B)は同側面図、
図1(C)は同拡大縦断面図、
図1(D)は他の態様を示す眼エレメントの拡大縦断面図である。
【
図2】
図2(A)は前記眼エレメントに対応する支持エレメントの前面図、
図2(B)は同側面図である。
【
図3】
図3(A)は本発明に係る眼ユニットの前面図、
図3(B)は同側面図である。
【
図4】
図4(A)は前記眼ユニットの取り付け構造を示す部分前面図、
図4(B)は同縦断面図である。
【
図5】
図5(A)は本発明に係る人形の頭部および胴部の分解側面図、
図5(B)は同組み立て図である。
【
図6】
図6(A)は本発明に係る人形の頭髪部の分解側面図、
図6(B)は同組み立て図である。
【
図7】
図7(A)~
図7(C)は
図1に示した眼エレメントおよび
図3に示した眼ユニットの変形例の説明図である。
【
図8】
図8(A)~
図8(C)は
図1に示した眼エレメントおよび
図3に示した眼ユニットの他の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明を適用した人形用眼エレメントと、当該眼エレメントを用いた人形用眼ユニットと、当該眼ユニットを用いた人形について順に説明する。
【0014】
なお、以下の説明では、便宜上、
図1(A)の手前側を前、後側を後、左側を右、右側を左、上側を上、下側を下と表記し、他の図においてもこれと同様に向きを表記する。また、以下の説明中の「厚さ寸法」は「前後方向寸法」を意味する。
【0015】
《人形用眼エレメントの構成》
まず、
図1を用いて、人形用眼エレメント10(以下、単に眼エレメント10と言う)の構成を説明する。
【0016】
眼エレメント10は、
図1(A)および
図1(B)に示したように、前側凸曲面11aと当該前側凸曲面11aと前後方向で向き合う後側凸曲面11bとに形成される透光部11と、後側凸曲面11bに設けられた眼模様(瞳孔部12a、虹彩部12bおよび結膜部12c)を有する模様部12とを備え、さらに、眼エレメント10を他の部品に連結可能な連結部13aを有する上下1対の張出部13を備える。
【0017】
透光部11の前面視輪郭は円状、好ましくは円形であり、前側凸曲面11aの外形(前面視輪郭が円形の場合は直径)は後側凸曲面11bの外形(前面視輪郭が円形の場合は直径)と同じである。また、前側凸曲面11aの厚さ寸法T11aは、後側凸曲面11bの厚さ寸法T11bよりも大きい(
図1(C)および
図1(D)を参照)。
【0018】
前側凸曲面11aの断面曲線と後側凸曲面11bの断面曲線には、好ましくは、(A)中央から周囲に向かって曲率半径が小さくなる曲線(
図1(C)を参照)と、(B)所定の曲率半径を持つ曲線(
図1(D)を参照)とが挙げられる。
【0019】
前記Aの場合、前側凸曲面11aの断面曲線と後側凸曲面11bの断面曲線は、曲率半径が異なる複数、好ましくは4以上の曲線セグメントが滑らかに連続するように作成されている。この場合、前側凸曲面11aの断面曲線で最も大きな中央の曲率半径は、後側凸曲面11bの断面曲線で最も大きな中央の曲率半径よりも小さくなる場合と同じ場合と大きくなる場合とが含まれる。
【0020】
一方、前記Bの場合、前側凸曲面11aの厚さ寸法T11aが後側凸曲面11bの厚さ寸法T11bよりも大きいため、前側凸曲面11aの断面曲線の曲率半径は、後側凸曲面11bの断面曲線の曲率半径よりも小さくなる。
【0021】
参考までに透光部11(前面視輪郭が円形)の寸法を例示すると、透光部11の直径と前側凸曲面11aの直径と後側凸曲面11bの直径は22mm、前側凸曲面11aの厚さ寸法T11aは4.08mm、後側凸曲面11bの厚さ寸法T11bは1.62mm、透光部11の厚さ寸法(T11a+T11b)は5.7mmである。すなわち、透光部11の厚さ寸法(T11a+T11b)は、曲率半径が11mm(透光部11の直径22mmの1/2)の断面曲線から成る半球形のものの厚さ寸法よりもかなり小さい。
【0022】
透光部11は好ましくは透明と半透明のいずれかである。半透明の場合、模様部12の眼模様(瞳孔部12a、虹彩部12bおよび結膜部12c)を透視可能であれば、淡い乳白色で色付けされた半透明や淡い乳白色になるように加工された半透明の他、淡い有彩色で色付けされた半透明も採用可能である。ちなみに、透光部11の材料は好ましくはABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂であるが、合成樹脂の代わりにガラスを用いることも可能である。
【0023】
模様部12は眼模様として、好ましくは、中央から周囲に向かって、眼の瞳孔(瞳)を表す円状の瞳孔部12aと、眼の虹彩を表す環状の虹彩部12bと、眼の結膜(白目)を表す環状の結膜部12cとを有している。
【0024】
模様部12は、透光部11の後側凸曲面11bに設けられており、好ましくは、透光部11の後側凸曲面11bに印刷された印刷層、または、透光部11の後側凸曲面11bに貼り付けられた印刷シートから成る。
【0025】
結膜部12cの色は好ましくは白色系であるが、淡い灰色や淡い有彩色とすることも可能である。瞳孔部12aの色と虹彩部12bの色は白色系以外の色であれば特段の制限はなく、白色系以外の色には黒色や灰色や有彩色やこれらを組み合わせた多色等が挙げられる。
【0026】
なお、模様部12の眼模様の瞳孔部12aの外形と虹彩部12bの外形は、模倣対象のキャラクターや動物等に応じて、楕円状等の他の形としてもよい。また、模様部12の眼模様は結膜部12cを有しないもの(瞳孔部12aおよび虹彩部12bのみを有するもの)であってもよい。この場合、透光部11を前からみたとき、結膜部12cに該当する領域の後側が透けて見えてしまうが、透光部11の後側に白色系等の他の部品があればその色を結膜部12cの色の代用とすることも可能である。
【0027】
各張出部13は、透光部11の周囲から上下方向に張り出すように、好ましくは透光部11に一体に設けられている。各連結部13aは、好ましくは円柱状の突起部から成り、各張出部13の後面から後方に向かって同じ前後方向寸法で延びている。各張出部13が透光部11と重なる前面視面積は、模様部12の眼模様のうちの瞳孔部12aおよび虹彩部12bに入り込まない面積以下とすることが望ましい。ちなみに、各連結部13aは、眼エレメント10を後述の支持エレメント20に連結する際に使用されるものである。
【0028】
《人形用眼ユニットの構成》
次に、
図2および
図3を用いて、人形用眼ユニット30(以下、単に眼ユニット30と言う)の構成を説明する。
【0029】
眼ユニット30は、
図3(A)および
図3(B)に示したように、前述の眼エレメント10と、前述の眼エレメント10を連結可能な支持エレメント20(
図2(A)および
図2(B)を参照)とから成る。支持エレメント20は、眼エレメント10の模様部12の後面と対向可能な前面21aを有する支持本体21と、眼エレメント10の各連結部13aを連結可能な被連結部22aと、支持エレメント20を他の部品に取付可能な取付部22bとを有する上下一対の張出部22とを備える。
【0030】
支持エレメント20の支持本体21の厚さ寸法(前面21aと後面21bとの間の寸法)に特段の制限はないが、眼ユニット30の実質的な厚さ寸法(連結部13aと取付部22bを除く)を小さくするには、支持本体21の厚さ寸法を透光部11の厚さ寸法(前後方向寸法)以下にすることが好ましい。換言すれば、支持本体21の厚さ寸法を大きくとる必要がないため、眼ユニット30の実質的な厚さ寸法を小さくしやすい。
【0031】
支持本体21の前面視輪郭は、眼エレメント10の透光部11の前面視輪郭に相当する。ここでの「相当」は、支持本体21の前面視輪郭が透光部11の前面視輪郭よりも僅かに大きい場合、支持本体21の前面視輪郭が透光部11の前面視輪郭と同じ場合、支持本体21の前面視輪郭が透光部11の前面視輪郭よりも僅かに小さい場合を含む。
【0032】
支持本体21は不透明でも透明でもよいが、いずれの場合も少なくとも支持本体21の前面21aの色を、眼エレメント10の模様部12の結膜部12cの色と合わせること、例えば、模様部12の結膜部12cの色が白色系の場合には、少なくとも支持本体21の前面21aの色を同じ白色系とすることが望ましい。このことは、眼エレメント10の模様部12の眼模様が結膜部12cを有しない場合でも同様である。
【0033】
各張出部22は、支持本体21の周囲から上下方向に張り出すように、好ましくは、支持本体21と同じ厚さ寸法にて当該支持本体21と一体に設けられている。各被連結部22aは、好ましくは各張出部22を前後方向に貫通した円柱状の穴部から成り、眼エレメント10の各連結部(円柱状の突起部)13aの嵌め込みによる連結を可能としている。
【0034】
また、各取付部22bは、好ましくは円柱状の突起部から成り、各張出部22の前面から前方に向かって同じ前後方向寸法で延びている。ちなみに、各取付部22bは、眼ユニット30を後述の人形(符号省略)の前側頭部41に取り付ける際に使用されるものである。
【0035】
なお、
図3(B)には、眼エレメント10の各連結部(円柱状の突起部)13aの後端が、各張出部22の被連結部22a(円柱状の穴部)の後端から突出しているものを示してあるが、各連結部13aの前後方向寸法を各被連結部22aの前後方向寸法以下にして突出しないようにしてもよい。
【0036】
前述の眼エレメント10と前述の支持エレメント20によって
図3(A)および
図3(B)に示した眼ニット30を組み立てるときには、眼エレメント10の模様部12を支持エレメント20の支持本体21の前面21aに向き合わせて、眼エレメント10の各連結部13aを支持エレメント20の各被連結部22aに嵌め込めばよい。
【0037】
前記嵌め込みによる連結は、眼エレメント10の各張出部13の後面が支持エレメント20の各張出部22の前面に接したところで完了する。この連結完了状態では、
図3(B)に示したように、支持エレメント20の支持本体21の前面21aと、眼エレメント10の模様部12の後面とが接触した状態、または、近接した状態のいずれかとなる。
【0038】
連結後の安定性を考慮すれば、連結完了状態で、支持エレメント20の支持本体21の前面21aと、眼エレメント10の模様部12の後面とが接触した方が好ましいが、接触の程度が強いと模様部12に歪み等を生じる可能性があるため、前記接触は点接触またはこれに近い状態(近接状態)とすることが望ましい。
【0039】
《人形の構成》
次に、
図4~
図6を用いて、人形(符号省略)の構成について説明する。
【0040】
人形は、
図5(A)および
図5(B)に示したように、前述の眼ユニット30を取り付け可能な頭部40を少なくとも備え、頭部40は、顔面を含む前側頭部41と、前側頭部41に着脱可能な後側頭部42とに分割されている。
【0041】
頭部40を構成する前側頭部41と後側頭部42との分割線(符号省略)は、頭部40の中心を通る横線SLを基準とした場合に、当該横線SLに対して後下がりに傾斜している(
図5(A)および
図5(B)を参照)。ちなみに、傾斜角度は30°~60°の範囲内の角度が好ましく、45°前後がより好ましい。また、前側頭部41と後側頭部42の分割線近傍には、双方を着脱可能とするための凹凸嵌合部41dおよび42aが設けられている。
【0042】
前側頭部41は、
図4(A)および
図4(B)に示したように、前側頭部41の内側に設けられ眼ユニット30の各取付部22bを取付可能な被取付部41cと、眼ユニット30の透光部11の前側凸曲面11aの一部を露出可能な左右1対の開口部41aとを備える。
【0043】
前側頭部41の各開口部41aは上瞼と下瞼で囲まれた部分を表すものであり、各々の周囲内側部分41bは眼ユニット30の透光部11の前側凸曲面11aに接触可能な部分となっている。
【0044】
各被取付部41cは、好ましくは前側頭部41の各開口部41aの内側上下位置に設けられた前後方向の非貫通の円柱状の穴部から成り、眼ユニット30の各取付部(円柱状の突起部)22bの嵌め込みによる取り付けを可能としている。
【0045】
前述の眼ユニット30を頭部40の前側頭部41に取り付けるときには、2個の眼ユニット30を用意し、頭部40から後側頭部42を取り外してから、各眼ユニット30の眼エレメント10の前側凸曲面11aを前側頭部41の開口部41aの周囲内側部分41bに向き合わせて、各眼ユニット30の支持エレメント20の各取付部22bを前側頭部41の被取付部41cに嵌め込めばよい。
【0046】
前記嵌め込みによる取り付けは、各眼ユニット30の眼エレメント10の前側凸曲面11aが前側頭部41の開口部41aの周囲内側部分41bに接したところで完了する。この取り付け完了状態では、
図4(B)に示したように、各眼ユニット30の眼エレメント10の前側凸曲面11aと、前側頭部41の各開口部41aの周囲内側部分41bとが接触した状態、または、近接した状態のいずれかとなる。
【0047】
取付後の安定性を考慮すれば、取り付け完了状態で、各眼ユニット30の眼エレメント10の前側凸曲面11aと、前側頭部41の各開口部41aの周囲内側部分41bとが隙間なく接触した方が好ましいが、仮に僅かな隙間が空いた状態(近接状態)でも、上下2箇所の取付部22bと被取付部41cとの嵌め合わせに基づく保持力が得られため、各眼ユニット30が簡単に脱落することはない。
【0048】
前側頭部41に各眼ユニット30を取り付けた後に頭部40を組み立てるときには、凹凸嵌合部41dおよび42aを利用して、前側頭部41に後側頭部42を取り付ければよい(
図5(B)を参照)。
【0049】
頭部40を構成する前側頭部41と後側頭部42との分割線を横線SLに対して後下がりに傾斜させた理由は、頭部40から後側頭部42を取り外したときに前側頭部41の開口部41aの周囲内側部分41bを真後ろから直視できる状態にして、前記嵌め込みによる取り付けを容易に行えるようにしたことにある。他の理由は、頭部40が前後に分割されている場合に比べて、後側頭部42に外力が加わったときに当該後側頭部42が脱落しにくくなるようにしたことにある。
【0050】
人形は、
図5(A)および
図5(B)に示した胴部50をさらに備えていてもよい。胴部50は、胴部本体51の上端から上方に突出した円柱状の首部52と、首部52の上端から上方に突出した円柱状の挿入部53を少なくとも有する。これに対し、前側頭部41の下部には、首部52の上部を回転可能に受容する窪み部41eと、挿入部53を回転可能に受容する被挿入部41fとが設けられている。
【0051】
すなわち、首部52を前側頭部41の窪み部41eに差し込み、かつ、挿入部53を前側頭部41の被挿入部41fに差し込んだ状態では、頭部40を首部52に対し前面視で左右方向に回転させることができる(
図5(B)を参照)。
【0052】
人形は、頭部40を着脱可能に覆う
図6(A)および
図6(B)に示した頭髪部60をさらに備えていてもよい。頭髪部60は、顔面側の前側頭髪部61と、前側頭髪部61に着脱可能な後側頭髪部62とに分割されている。
【0053】
頭髪部60を構成する前側頭髪部61と後側頭髪部62との分割線(符号省略)は、頭部40の中心を通る横線SLを基準とした場合に、横線SLに対して直交または略直交している。ここでの「直交」は分割線と横線SLとが90°を成す場合の他、公差との関係から90°に近い角度を成す場合も含む。また、前側頭髪部61と後側頭髪部62の分割線近傍には、双方を着脱可能とするための凹凸嵌合部61aおよび62aが設けられている。
【0054】
頭部40を前述の頭髪部60によって覆うときには、前側頭髪部61と後側頭髪部62の一方を頭部40の前後方向から当該頭部40に被せ、凹凸嵌合部61aおよび62aを利用して、他方を一方に取り付ければよい(
図6(B)を参照)。
【0055】
頭髪部60を構成する前側頭髪部61と後側頭髪部62との分割線を横線SLに対して直交させた理由は、頭部40を構成する前側頭部41と後側頭部42との分割線を横線SLに対して後下がりに傾斜させた点に関連する。
【0056】
すなわち、頭髪部60を構成する前側頭髪部61と後側頭髪部62との分割線の向きを、頭部40を構成する前側頭部41と後側頭部42との分割線の向きと異ならせることにより、両分割線の向きが同じ場合に比べて、後側頭髪部62に外力が加わったときに当該後側頭髪部62と後側頭部42が一緒に脱落しにくくなるようにしたことにある。
【0057】
なお、
図5および
図6には、胴部50以外の腕部や脚部等を例示していないが、人形は、模倣対象のキャラクターや動物等に応じた腕部をさらに備えていてもよいし、腕部の他にさらに脚部を備えていてもよい。無論、人形を頭部40および頭髪部60のみで構成してもよいし、この場合、頭髪部60は頭部40に一体形成されていてもよい。
【0058】
《眼エレメントによる作用効果》
次に、前述の眼エレメント10によって得られる主たる作用効果について説明する。
【0059】
眼エレメント10の透光部11が前側凸曲面11aとこれと向き合う後側凸曲面11bとを有し、後側凸曲面11bに眼模様を有する模様部12が設けられているため、透光部11の厚さ寸法が小さくても前側凸曲面11aおよび後側凸曲面11bの光の屈折率の相乗によって優れた追視(追い目)現象を得ることができる。すなわち、透光部11の厚さ寸法を大きくしなくても所期の追視現象が得られるため、模倣対象の実際の眼形態に近付けることが容易となる。
【0060】
《眼ユニットによる作用効果》
次に、前述の眼ユニット30によって得られる主たる作用効果について説明する。
【0061】
支持エレメント20が、眼エレメント10の透光部11の模様部12の後面と対向可能な前面を有する支持本体21と、眼エレメント10の連結部13aを連結可能な被連結部22aと、支持エレメント20を他の部品(人形の前側頭部41)に取付可能な取付部22bとを備えているため、支持エレメント20への眼エレメント10の連結を容易に行うことができるとともに、人形の前側頭部41への眼ユニット30の取り付けも容易に行うことができる。
【0062】
また、支持エレメント20の支持本体21の厚さ寸法を大きくとる必要がなないことから、眼ユニット30の実質的な厚さ寸法を小さくしやすく、眼ユニット30の取り付けおよび配置に大きな3次元スペースが確保する必要がないため、とりわけ人形がキャラクターや動物等の模倣対象をスケールダウンしたものである場合に極めて有用である。
【0063】
《人形による作用効果》
次に、前述の人形(符号省略)によって得られる主たる作用効果について説明する。
【0064】
頭部40の前側頭部41に、眼ユニット30の取付部22を取付可能な被取付部41cと、眼ユニット30の透光部11の前側凸曲面11aの一部を露出可能な開口部41aが設けられており、しかも、前側頭部41と後側頭部42との分割線を横線SLに対して後下がりに傾斜させて、前側頭部41の開口部41aの周囲内側部分41bを真後ろから直視できる状態にできるので、前側頭部41への眼ユニット30の取り付けを容易に行うことができる。
【0065】
《眼エレメントおよび眼ユニットの変形例》
次に、
図7と
図8を用いて、前述の眼エレメント10および眼ユニット30の変形例を説明する。
【0066】
図7(A)および
図7(B)に示した眼エレメント10-1が、前述の眼エレメント10と異なるところは、各張出部13を排除して、連結部13aと同様の連結部13a1を透光部11の後側凸曲面11bの周囲上下に形成した点にある。また、
図7(C)に示した眼ユニット30-1が、前述の眼ユニット30と異なるところは、眼エレメント10-1の各連結部13a1の位置に合わせて、被連結部22aと同様の被連結部22a1を支持エレメント20-1に形成した点にある。
【0067】
図8(A)および
図8(B)に示した眼エレメント10-2が、前述の眼エレメント10と異なるところは、各張出部13を排除して、連結部13a(円柱状の突起部)の代わりとなる前後方向に貫通した円柱状の穴部から成る連結部13a2を透光部11の上下に形成した点にある。また、
図8(C)に示した眼ユニット30-2が、前述の眼ユニット30と異なるところは、被連結部22a(円柱状の穴部)の代わりとなる円柱状の突起部から成る被連結部22a2を、眼エレメント10-2の各連結部13a2の位置に合わせて、支持エレメント20-2に形成した点にある。
【0068】
図7に示した眼エレメント10-1および眼ユニット30-1であっても、前述の眼エレメント10および前述の眼ユニット30と同様の作用効果を得ることができ、
図8に示した眼エレメント10-2および眼ユニット30-2であっても、前述の眼エレメント10および前述の眼ユニット30と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
図示を省略したが、眼ユニット30の支持エレメント20の取付部22b(円柱状の突起部)をその代わりとなる前後方向に貫通した円柱状の穴部とし、前側頭部41の被取付部41cをその代わりとなる円柱状の突起部として、両者の嵌め込みによって前側頭部41への眼ユニット30の取り付けを可能としてもよい。
【0070】
また、図示を省略したが、前述の眼エレメント10が左眼用と右眼用の1対の場合、眼エレメントを、左眼用の眼エレメントと右眼用の眼エレメントとが一体化されたものとしてもよく、また、前述の眼ユニット30の支持エレメント20が左眼用と右眼用の1対の場合、支持エレメントを、左眼用の支持エレメントと右眼用の支持エレメントが一体化されたものとしてもよい。このようにすれば、一体化された眼エレメントを、一体化された支持エレメントに一度に連結することができ、また、一体化された支持エレメントを有する左右眼用の眼ユニットを、前側頭部41に一度に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…眼エレメント、11…透光部、11a…前側凸曲面、11b…後側凸曲面、12…模様部、12a…瞳孔部、12b…虹彩部、12c…結膜部、13…張出部、13a…連結部、20…支持エレメント、21…支持本体、21a…対向面、22…張出部,22a…被連結部、22b…取付部、40…頭部、41…前側頭部、41a…開口部、41b…開口部の周囲内側部分、41c…被取付部、41e…窪み部、41f…被挿入部、42…後側頭部、50…胴部、51…胴部本体、52…首部、53…挿入部、60…頭髪部、61…前側頭髪部、62…後側頭髪部、10-1…眼エレメント、13a1…連結部、20-1…支持エレメント、22a1…被連結部、30-1…眼ユニット、10-2…眼エレメント、13a2…連結部、20-2…支持エレメント、22a2…被連結部、30-2…眼ユニット。