(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ヘッドマウント情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/64 20060101AFI20240315BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240315BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240315BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20240315BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
G06F3/01 510
G09G5/00 510A
G09G5/00 530D
G09G5/00 550B
G09G5/00 550C
G09G5/00 550H
G09G5/02 B
G09G5/37 110
(21)【出願番号】P 2022132869
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2020551019の分割
【原出願日】2018-10-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴賀 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康宣
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 義憲
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/005557(WO,A1)
【文献】特開平11-249064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048-3/04895
G09G 5/00-5/42
H04N 5/64-5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像または音声を視聴する機能を有し頭部に装着されるヘッドマウント情報処理装置であって、
仮想空間情報または現実空間情報を含む所定の情報をユーザに表示する表示部と、
前記ユーザの両眼の動きを検出する右目視線センサ及び左目視線センサと、
前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適した状態か否かを判別するユーザ状態判別部と、
前記ヘッドマウント情報処理装置の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記ユーザ状態判別部は、
前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、前記ユーザが前記表示部における前記現実空間情報に注視しているとみなされる場合には、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態と判別し、
前記制御部は、
前記ユーザ状態判別部の判別結果に基づき、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適した状態の場合には、前記表示部に表示を行わせ、
前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態の場合には、前記表示部に表示の中断を指示する、
ヘッドマウント情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウント情報処理装置において、
前記ユーザ状態判別部は、
前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、
前記ユーザが前記表示部における前記現実空間情報に注視しており、かつ前記ユーザが急速な眼球運動を行っているとみなされる場合には、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態と判別する、
ヘッドマウント情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドマウント情報処理装置において、
前記ユーザ状態判別部は、
前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、
前記ユーザが前記表示部における前記現実空間情報に注視しており、かつ前記ユーザが漫然としているとみなされる場合には、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態と判別する、
ヘッドマウント情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッドマウント情報処理装置において、
前記ユーザ状態判別部は、
前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき
、前記ユーザが前記表示部における前記現実空間情報に注視しており、かつ前記ユーザの眼球が前記表示部における前記仮想空間情報を捉えた動きをしておらず前記ユーザは前記仮想空間情報を意識していないあるいは、気づいていないとみなされる場合には、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態と判別する、
ヘッドマウント情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウント情報処理装置に係り、特に仮想空間情報の表示態様に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが頭部に装着したヘッドマウントディスプレイに仮想空間情報(仮想オブジェクト)を表示し、これを現実空間に重畳してユーザに視認させる技術がある。このヘッドマウントディスプレイによれば、現実世界と仮想世界をリアルタイムかつシームレスに融合させて、あたかもその場に仮想オブジェクトが存在するかのような体験を行わせることができる。そして、ユーザは仮想世界を現実世界と錯覚するような深い没入感を得ることが可能になってきた。しかしながら、一方で、深い没入感により、ユーザが仮想世界と現実世界との識別や判別をしにくくなるという問題があった。
【0003】
この問題に対し、特許文献1には、「少なくとも一部に仮想オブジェクトを含む情報が提供される世界を体験しているユーザのユーザ状態に基づいて、ユーザに対するフィードバックを決定するフィードバック決定部を備える」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザにとって、仮想空間と現実空間とを認識するために必要とされる注意力は、ヘッドマウントディスプレイの使用状況によって異なる。例えば、日常生活を過ごす空間内に静止した状態では、仮想オブジェクト、例えばテーブル上に仮想的に表示されたコップや花瓶を現実のオブジェクトと誤認識してもユーザにとってそれほど重要な問題とは考えにくい。一方、戸外で歩行中にヘッドマウントディスプレイを用いた場合、歩道脇に放置自転車があるにも関わらず、広く広がって障害物がない歩道を仮想表示すると、それを現実空間と誤認識した結果、放置自転車に躓くおそれもある。
【0006】
このように、ユーザが現実空間と仮想空間との誤認識を避けるためにユーザに求められる注意力は、ユーザの固有の注意力だけではなく周囲環境の状態に応じて相対的に決まるという実情がある。この点について、特許文献1では、ユーザの状態のみを監視し、周囲環境について考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、仮想空間を現実空間と誤って認識することについての注意喚起をユーザに提供するヘッドマウント情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、請求の範囲に記載の構成を備える。その一例を挙げるならば、本発明は、画像または音声を視聴する機能を有し頭部に装着されるヘッドマウント情報処理装置であって、仮想空間情報または現実空間情報を含む所定の情報をユーザに表示する表示部と、前記ユーザの両眼の動きを検出する右目視線センサ及び左目視線センサと、前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適した状態か否かを判別するユーザ状態判別部と、前記ヘッドマウント情報処理装置の動作を制御する制御部と、を具備し、前記ユーザ状態判別部は、前記右目視線センサ及び前記左目視線センサの検出結果に基づき、前記ユーザが前記表示部における前記現実空間情報に注視しているとみなされる場合には、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態と判別し、前記制御部は、前記ユーザ状態判別部の判別結果に基づき、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適した状態の場合には、前記表示部に表示を行わせ、前記ユーザの状態が、前記仮想空間情報を視聴するのに適していない状態の場合には、前記表示部に表示の中断を指示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仮想空間を現実空間と誤って認識することについての注意喚起をユーザに提供するヘッドマウント情報処理装置を提供することができる。上述した以外の目的、構成、効果については以下の実施形態において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイシステムの外観模式図
【
図2】
図1に示したヘッドマウントディスプレイシステムの構成例を示すブロック図
【
図4】ヘッドマウントディスプレイシステムの処理の流れを示すフローチャート
【
図5】表示制御部が決定する表示態様の種別を示す図
【
図6】カメラから現実空間をみた際の座標系を示す図
【
図7】注視している被写体と両眼の位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を用いて説明する。全図を通じて同一の構成、処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るHMDシステム1(HMD:ヘッドマウントディスプレイ)の外観模式図である。
図1において、HMDシステム1は、ユーザの頭部に装着されたHMD100、ユーザの胸部に装着された第1ウエアラブル端末200(胸部装着型ウエアラブル端末)、ユーザの腕部に装着された第2ウエアラブル端末300(リストバンド型ウエアラブル端末)、及び入力コントローラ400を含む。そして、第1ウエアラブル端末200、第2ウエアラブル端末300、入力コントローラ400の其々は、近距離無線通信によりHMD100に通信接続され、情報の送受信を行う。なお、有線で情報の送受信を行ってもよい。
【0013】
サーバ500は仮想空間情報を生成し、HMD100に対して無線通信回線を介して送信する。HMD100が自ら仮想空間情報を生成し、表示するように構成してもよい。
【0014】
HMD100は、カメラ111、右目視線センサ112、左目視線センサ113、加速度センサ114、ジャイロセンサ115、地磁気センサ116、温湿度センサ117及び周囲監視センサ118を備え、ユーザ前方映像(周辺の物体の映像を含む)、ユーザの視線、ユーザ頭部の動き、及び周辺の温湿度を検出する。
【0015】
更に、HMD100は、両眼の前方に設置されたディスプレイ119を備え、カメラ111で撮影された現実空間情報の映像やサーバ500で生成された仮想空間情報の映像130を表示する。
【0016】
またHMD100は、外周音マイク120、発声音マイク121を備えて外部からの音声やユーザ自身の発声を集音する。
【0017】
HMD100は、ユーザの耳付近にヘッドフォン122を備えて、音声や音楽をヘッドフォン122から出力する。
【0018】
更にHMD100はアンテナ129を備える。そして外部ネットワーク600を介してサーバ500と情報の送受信を行い、サーバ500が生成した仮想空間情報をHMD100が受信し、ディスプレイ119に表示する。
【0019】
カメラ111は、ユーザの周囲状態を検知するセンサとしての機能と、ユーザの視線検出に用いる場合はユーザの状態を検知するセンサとしての機能を有する。また右目視線センサ112、左目視線センサ113、加速度センサ114、及びジャイロセンサ115の其々は状態監視センサに相当する。
【0020】
第1ウエアラブル端末200は、心拍センサ201を備えて一定時間内に心臓が拍動する回数である心拍数を検出する。
【0021】
第2ウエアラブル端末300は、血圧センサ301を備え、ユーザの血圧を検出する。なお、第2ウエアラブル端末300で脈拍センサを備え、動脈の拍動回数である脈拍数を検出してもよい。
【0022】
第1ウエアラブル端末200及び第2ウエアラブル端末300の其々は、ユーザの状態監視センサに相当する。
【0023】
入力コントローラ400はユーザが各種の入力操作を行うものである。入力コントローラ400が受け付けたユーザ入力操作に基づいて、ユーザの両眼前方に備えられたディスプレイ119では、現実空間情報にサーバ500で生成された仮想空間情報の映像130やHMD100が自ら生成した仮想空間情報の映像130を重畳表示したり、現実空間情報から仮想空間情報に入れ替えて表示したりすることが可能となる。
【0024】
本実施形態に係るHMD100は、ユーザに密接して装着されたHMD100や第1ウエアラブル端末200及び第2ウエアラブル端末300の其々に具備された各種のセンサにより、ユーザの身体やユーザの周囲の状態を検出し、両方の状態に基づいてディスプレイ119に表示させる仮想空間情報の映像130の表示態様を変更する点に特徴がある。表示態様は、ユーザの身体状態や周囲の状態が共に正常な場合の表示態様である通常表示態様と、ユーザの身体状態や周囲の状態の少なくとも一つに異常がある場合の表示態様であって、通常表示態様とは異なる表示態様からなる特定表示態様と、がある。また、本明細書において、特定表示態様の一つとして非表示を含む。これらの詳細は後述する。
【0025】
図2は、
図1に示したHMDシステム1の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図2において、HMD100は、カメラ111、右目視線センサ112、左目視線センサ113、加速度センサ114、ジャイロセンサ115、地磁気センサ116、温湿度センサ117、周囲監視センサ118、ディスプレイ119、外周音マイク120、発声音マイク121、ヘッドフォン122、本体側バイブレータ124、本体側制御器125、プログラム126及び情報データ127等を格納するメモリ128、アンテナ129、本体側ネットワーク通信器131、本体側近距離無線通信器132(本体側通信器に相当)、及びタイマー133を用いて構成される。これらの各構要素はアンテナ129を除きそれぞれバス140を介して相互に接続されている。
【0027】
カメラ111は、HMD100の前面に設置され、ユーザ前方の風景を撮影し、撮影された映像は現実空間の映像として没入型のディスプレイ119にて表示される。ディスプレイ119が透過型ディスプレイである場合、ユーザは自分の目で現実空間情報を視認すればよいので、カメラ111の画像をディスプレイ119に表示しなくてもよい。
【0028】
右目視線センサ112、左目視線センサ113は、それぞれ右目、左目の視線を検出する。なお、視線を検出する処理は、アイトラッキング処理として一般的に用いられている周知技術を利用すればよく、例えば、角膜反射を利用した方法では、赤外線LED(Light Emitting Diode)を顔に照射し赤外線カメラで撮影し、赤外線LED照射でできた反射光の角膜上の位置(角膜反射)を基準点とし、角膜反射の位置に対する瞳孔の位置に基づいて視線を検出する技術が知られている。
【0029】
加速度センサ114は、1秒当たりの速度の変化である加速度を検出するセンサであり、動き・振動・衝撃などを捉えることができる。
【0030】
ジャイロセンサ115は、回転方向の角速度を検出するセンサであり、縦・横・斜めの姿勢の状態を捉えることができる。よって、HMD100に搭載されている加速度センサ114及びジャイロセンサ115を用いて、HMD100を装着しているユーザの頭部の動きを検出することができる。
【0031】
地磁気センサ116は、地球の磁力を検出するセンサであり、HMD100が向いている方向を検出するものである。前後方向と左右方向に加え上下方向の地磁気も検出する3軸タイプを用い、頭部の動きに対する地磁気変化を捉まえることにより、頭部の動きを検出することも可能である。これらにより、HMD100を装着中のユーザ頭部の動き変動を詳しく検出することができる。
【0032】
温湿度センサ117は、ユーザの周りの温度、湿度を検出するセンサである。
【0033】
周囲監視センサ118は、電波、光波、超音波などを発射しその反射波を捉まえて反射している対象物までの距離や方向を検出するセンサであり、ユーザの頭部に装着し、ユーザ周辺の物体の距離や方向を検出することができる。なお、点線で囲われた部分141は、各種のセンサデバイスを示している。
【0034】
本体側制御器125は、HMD100の制御コントローラを構成し、メモリ128に記憶格納されているOS(Operating System)や動作制御用アプリケーションなどのプログラム126を実行するプロセッサや、これらのプログラム126と同等の機能を実現するサーキットを用いて構成される。本体側制御器125は、HMD100の各構成要素を制御し、HMD100全体の動作制御処理を行っている。
【0035】
本体側制御器125は、周囲状態の異常の有無及びユーザ状態の異常の有無に応じて、現実空間情報に仮想空間情報を重畳してディスプレイ119にて表示したり、或いは現実空間情報から仮想空間情報に入れ替えてディスプレイ119にて表示したりするときの動作を制御する。
【0036】
本体側制御器125は、各種のセンサデバイスにより検出された情報を基に、ユーザの身体の状態が仮想空間情報と現実空間情報とを誤って認識する異常な状態か否かを識別し判定したり、またユーザの外周の状態が仮想空間情報を表示するに当たってユーザにとって危険性のある異常な状態か否かを識別し判定したりするものである。
【0037】
また本体側制御器125は、ユーザの注意力が低下し、仮想空間情報と現実空間情報とを誤って認識する異常な状態と判定し、現実空間情報に仮想空間情報を重畳して、或いは現実空間情報から仮想空間情報に入れ替えてディスプレイ119にて表示する際の表示態様を通常表示態様又は特定表示態様に切り替える。
【0038】
また本体側制御器125は、ユーザ周辺の物体を検出し周辺物体がユーザの一定範囲以内に接近し仮想空間情報表示に当たってユーザにとって危険性のある異常な状態、即ち周囲に異常があると判定する場合には、現実空間情報に仮想空間情報を重畳して、或いは現実空間情報から仮想空間情報に入れ替えてディスプレイ119にて表示する際の表示態様を通常特定表示から特定表示態様又は非表示に切り替える。
【0039】
メモリ128は、フラッシュメモリなどであり、本体側制御器125が使用する各種のプログラム126を、またサーバ500から送信された仮想空間情報や第1ウエアラブル端末200から受信した第1センサ出力や、第2ウエアラブル端末300から受信した第2センサ出力などの情報データ127を記憶している。
【0040】
ディスプレイ119は、液晶パネルなどにより構成され、現実空間情報や仮想空間情報の映像130を表示し、またユーザへの呈示通知情報や動作状態等の表示内容を画面表示するものである。ディスプレイ119では、例えば、
図2に示すように、カメラ111で撮影された現実空間情報の映像と、サーバ500が生成してHMD100に対して送信し、HMD100が受信した仮想空間情報の映像130とを重畳させて画面表示する。
【0041】
本体側バイブレータ124は、本体側制御器125からの制御によって振動を発生させるもので、HMD100で発信されたユーザへの通知情報を振動に変換する。本体側バイブレータ124は密接装着されているユーザ頭部で振動を発生させることにより、ユーザへの通知を確実に伝えることができる。
【0042】
本体側ネットワーク通信器131は、無線LAN、有線LAN或いは基地局通信により外部のサーバ500と通信を行う通信インターフェースであり、無線通信に際してはアンテナ129を介して外部ネットワーク600に接続し情報の送受信を行う。本体側ネットワーク通信器131では、外部ネットワーク600経由などによりサーバ500で生成された仮想空間情報を受信することができ、またサーバ500と動作制御信号情報などの送受信を行うことができる。なお、基地局通信方式としては、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)やGSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)などの遠距離の無線通信を用いればよい。
【0043】
本体側近距離無線通信器132は、近距離無線通信が可能な範囲にある第1ウエアラブル端末200、第2ウエアラブル端末300、入力コントローラ400のそれぞれと、近距離無線通信を行う通信インターフェースである。本体側近距離無線通信器132は、例えば電子タグを用いて行われるが、これに限定されず、HMD100が第1ウエアラブル端末200、第2ウエアラブル端末300、入力コントローラ400の近くにある場合に少なくとも無線通信可能であるものであれば、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、Zigbee(登録商標)、HomeRF(Home Radio Frequency、登録商標)、又は、無線LAN(IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g)を用いて行なわれるようにしてもよい。
【0044】
第1ウエアラブル端末200は、心拍センサ201、第1バイブレータ202、第1近距離無線通信器203(端末側通信器に相当する)を有している。心拍センサ201は、ユーザの胸部に密接して装着され精度よくユーザの心拍数を検出する。第1近距離無線通信器203では検出された心拍数情報を近距離無線通信によりHMD100に送信し、HMD100側では送信された心拍数情報を本体側近距離無線通信器132にて受信して、HMD100内に取り込む。
【0045】
第1バイブレータ202は、バイブレータ制御信号(
図3参照)に応じて振動を発生させるもので、ユーザ胸部に密接して装着されることにより、発生振動を確実にユーザに伝えることができる。HMD100から発信されたユーザへの通知情報は、本体側近距離無線通信器132及び第1近距離無線通信器203を介して第1バイブレータ202に伝達され、第1バイブレータ202にて通知情報を振動に変換してユーザに知らしめることができる。
【0046】
第2ウエアラブル端末300は、血圧センサ301、第2バイブレータ302、第2近距離無線通信器303(端末側通信器に相当する)を有している。血圧センサ301は、ユーザの腕部に巻きつけて装着され精度よくユーザの血圧を検出し、第2近距離無線通信器303では検出された血圧情報を近距離無線通信によりHMD100に送信し、HMD100では送信された血圧情報を本体側近距離無線通信器132にて受信して、HMD100内に取り込む。
【0047】
第2バイブレータ302は、バイブレータ制御信号(
図3参照)に応じて振動を発生させるもので、ユーザ腕部に巻きつけて装着されることにより、発生振動を確実にユーザに伝えることができる。HMD100から発信されたユーザへの通知情報は、本体側近距離無線通信器132、第2近距離無線通信器303を介して第2バイブレータ302に伝達され、第2バイブレータ302にて通知情報を振動に変換してユーザに知らしめることができる。
【0048】
なお、本体側バイブレータ124、第1バイブレータ202、第2バイブレータ302では、ユーザの身体或いは外周に異常な状態がなく仮想空間情報の重畳表示や入替表示の動作が開始されるときや、ユーザの身体或いは外周に異常な状態があり仮想空間情報の重畳表示や入替表示の動作が開始されないときには、仮想空間情報表示の動作の開始や動作開始の不可を知らしめる振動を発生し、ユーザに通知する。また、同様に、仮想空間情報表示の動作の開始や動作開始の不可を知らしめる音声をヘッドフォン122から発声させて、ユーザに通知する。
【0049】
入力コントローラ400は、入力操作器401、第3近距離無線通信器402を有する。入力操作器401は、例えばキーボードやキーボタン等による操作部材であり、ユーザが入力したい情報を設定入力できる。
【0050】
またディスプレイ119が有する表示画面内に入力操作器401を形成してもよい。例えば静電容量式などのタッチパッド方式の入力部材では指やタッチペンなどによる接近又は接触操作を操作入力として検出するものである。入力操作器401で入力された情報は、第3近距離無線通信器402を介してHMD100に送信され、HMD100内の本体側近距離無線通信器132にて受信し、HMD100内に取り込まれる。なお、第1ウエアラブル端末200、第2ウエアラブル端末300、入力コントローラ400の其々は、HMD100と近距離無線通信により使い勝手よく情報の送受信を行う場合を示しているが、有線で接続してもよい。
【0051】
サーバ500は、イメージプロセッサ501(仮想空間情報生成処理部)、サーバ側メモリ502、サーバ側制御器503、サーバ側ネットワーク通信器504、アンテナ505を備え、これらがバス506を介して相互に接続されて構成される。
【0052】
イメージプロセッサ501は、現実空間とは異なる仮想空間を映像や音声で表現する仮想空間情報を生成する。
【0053】
サーバ側メモリ502は、フラッシュメモリなどであり、イメージプロセッサ501で生成した仮想空間情報や、サーバ500内のサーバ側制御器503が使用する各種プログラムなどを記憶している。
【0054】
サーバ側ネットワーク通信器504は、アンテナ505を経由し外部ネットワーク600を介してHMD100と通信を行う通信インターフェースであり、HMD100と接続し情報の送受信を行う。
【0055】
サーバ側制御器503は、CPUやMPU等のプロセッサで構成され、サーバ側メモリ502に記憶格納されているOS(Operating System)や動作制御用アプリケーションなどのプログラム126を実行することによって、各構成部を制御し、サーバ500全体の動作制御処理を行っている。サーバ側制御器503は、本体側制御器125と同様、サーキットにより構成されてもよい。
【0056】
サーバ側制御器503は、HMD100からの要求に応じて、イメージプロセッサ501で生成された仮想空間情報、或いはサーバ側メモリ502に保存されている仮想空間情報をHMD100に送信供給するように、各構成部を動作制御する。
【0057】
図3は、本体側制御器125の機能を示す機能ブロック図である。本体側制御器125は、大きくは周囲監視判定部1251、状態判定部1252、及び表示制御部1253を備える。各構成要素の処理の詳細は、以下、
図4、
図5を用いて説明する。
【0058】
図4は、HMDシステム1の処理の流れを示すフローチャートである。
図5は、表示制御部1253が決定する表示態様の種別を示す図である。
【0059】
図4に示すように、HMDシステム1の主電源が投入されと、周囲監視処理(S101、S102)とユーザの状態監視処理(S201、S202)が並行して開始する。
【0060】
具体的には、周囲監視判定部1251がカメラ111で撮影された現実空間情報や周囲監視センサ118が検出した周囲物体の位置や動きを示す第1センサ出力を取得し(S101)、ユーザの外周の状態が仮想空間情報を表示するに当たってユーザにとって危険性のある異常な状態であるか否かを判定する(S102)。周囲監視判定部1251は周囲監視判定結果を表示制御部1253へ出力する。
【0061】
一方、状態判定部1252は、第1ウエアラブル端末200及び第2ウエアラブル端末300の其々から第2センサ出力を取得し(S201)、ユーザの身体状態が仮想空間情報と現実空間情報とを誤って認識する異常な状態か否かを判定する(S202)。ここでいう「ユーザの身体状態が異常」とは、ユーザが現実空間情報と仮想空間情報とを誤認識する程度に注意力が落ちている状態を意味し、風邪や骨折等の病状、症状を意味するものではない。
【0062】
ユーザの身体状態が異常とは、例えばユーザの血圧が予め決められた正常血圧範囲内になく、低血圧又は高血圧を示していたり、心拍数が正常心拍数範囲内になく、心拍数が低すぎたり又は高すぎたりする場合は、ユーザの身体状態に異常があると判定する。状態判定部1252はユーザの身体状態判定結果を表示制御部1253へ出力する。
【0063】
表示制御部1253は、周囲監視判定結果、及びユーザの身体状態判定結果の双方を用いて仮想空間情報の表示形態を決定する。
【0064】
図5に示すように、表示制御部1253は、ユーザの身体状態が正常かつ周囲が正常な場合(ステータス1)は通常表示態様、即ち仮想空間情報の表示態様をHMD100において基本設定された画質や色調で表示する。換言すると、通常表示態様では、ユーザに現実空間の映像や風景と、仮想空間情報との区別をさせるための特別な工夫を凝らすことなく、仮想空間情報を表示する。
【0065】
ユーザの身体状態に異常があるが周囲が正常な場合(ステータス2)、又はユーザの身体状態は正常であるが周囲に注意レベルの異常がある場合(ステータス3)は特定表示態様で表示する。
【0066】
特定表示態様とは、現実空間情報と明らかに異なるリアリティを下げた形で仮想空間情報を表示する態様である。これにより、ユーザに対し表示開始された情報が仮想空間情報であることを明確に意識させることが可能となる。
【0067】
例えば、重畳表示或いは入替表示する仮想空間情報の色、輝度、コントラスト、解像度などの映像画質を、カメラ111で撮影され検出された現実空間情報の映像画質と明らかに異なるように、サーバ500内のイメージプロセッサ501で、或いはHMD100のメモリ128に格納された仮想空間情報を本体側制御器125にて制御して、調整する。
【0068】
また、仮想空間情報の表示として、透過モードを用いてもよいし、物体の曲面表現の際に用いられる多角形であるポリゴンの数を少なくしてもよいし、輪郭線の強調表示のみにしてもよい。また、仮想空間情報であることを示すメッセージを仮想空間情報の映像130と共に並列表示してもよい。更に通常表示態様における表示色とは異なる表示色で仮想空間情報を表示させてもよい。また仮想空間情報を点滅表示させてもよい。
【0069】
特定表示態様は、仮想空間情報の表示開始時だけでなく、仮想空間情報の表示中も継続して表示してもよい。而して、仮想空間情報の表示リアリティを下げ仮想空間であることをわかりやすくし、ユーザにとって仮想空間情報の表示開始やその表示自体が仮想空間情報であることを意識させることができる。
【0070】
ユーザの身体状態に異常があり、かつ周囲に注意レベルの異常がある場合(ステータス4)は、仮想空間情報を暫定的に非表示にする。そして予め定めた非表示待機時間Tth内にユーザの身体状態が回復して正常となるか(ステータス4からステータス3へ遷移)、周囲が正常になれば(ステータス4からステータス2へ遷移)、特定表示態様により仮想空間情報の表示を再開する。ステータス4になってからの経過時間Tが非表示待機時間Tthを過ぎると、仮想空間情報の表示を強制停止する。
【0071】
周囲に警戒レベルの異常がある場合(ステータス5)は、ユーザの身体状態が正常又は異常に関らず、仮想空間情報の表示を強制停止する。
【0072】
図4に戻り、本体側制御器125は、周囲監視判定結果及びユーザの身体状態判定結果を取得し、現在の表示態様を決定する。表示態様の決定手順の一例を下記に示すが、いずれの表示態様とするかの決定手順は下記に限定されない。
【0073】
本体側制御器125は、周囲監視判定結果を基に周囲環境が警戒レベルであると判定すると(S301)、仮想空間情報の表示を強制停止すると決定し、表示制御部1253に対して仮想空間情報の強制停止し(S302:
図5のステータス5)、ステップS312へ進む。
【0074】
仮想空間情報を再表示する場合は、ユーザが入力コントローラ400の入力操作器401から再表示の入力指示を入力する。再表示の入力指示の操作を容易にするために、ステップS302で仮想空間情報の出力を停止すると共に、ディスプレイ119に再表示アイコンを表示させ、この再表示アイコンをユーザがタッチすることで(S312/Noに相当)、再度ステップS101、S201の操作を再開してもよい。
【0075】
本体側制御器125は、周囲監視判定結果を基に周囲環境が注意レベルであると判定すると(S301/No、S303/Yes)、ユーザの身体情報判定結果を基にユーザの身体状態が正常であるか異常であるかを判定する(S304)。
【0076】
ユーザの身体情報が正常であれば(S304/Yes)、仮想空間情報の表示態様は特定表示態様にすると決定し、表示制御部1253に特定表示態様を用いる指示を出力する。表示制御部1253は、仮想空間情報を特定表示態様による表示用データに変換し、ディスプレイ119に出力する(S305:
図5のステータス3)。
【0077】
ユーザの身体情報が異常であれば(S304/No)、仮想空間情報の表示を暫定的に停止し(S306:
図5のステータス4)、タイマー133により暫定的に停止してからの経過時間Tを計測する(S307)。経過時間Tが予め定めた非表示待機時間T
th未満であれば(S308/Yes)、ステップS101、S201へ戻る。処理を繰り返した結果、経過時間Tが非表示待機時間T
th以上になると(S308/No)、強制停止し(S309)、ステップS312へ進む。
【0078】
本体側制御器125は、周囲監視判定結果を基に周囲環境が正常であると判定すると(S303/No)、ユーザの身体情報判定結果を基にユーザの身体状態が正常であるか異常であるかを判定する(S310)。
【0079】
ユーザの身体情報が正常であれば(S310/Yes)、仮想空間情報の表示態様は通常表示態様にすると決定し(S311:
図5のステータス1)、表示制御部1253に通常表示態様を用いる指示を出力する。表示制御部1253は、仮想空間情報を通常表示態様による表示用データに変換し、ディスプレイ119に出力する(S311)。
【0080】
ユーザの身体情報が異常であれば(S310/No)、仮想空間情報の表示態様は特定表示態様にすると決定する(S305:
図5のステータス2)。
【0081】
上記ステップS302、S309における強制停止、またステップS306の暫定的に非表示とする場合、仮想空間情報の表示が行えないことを示すメッセージをディスプレイ119に表示してユーザに対して通知してもよい。また、この通知はヘッドフォン122からユーザへの発声音声や、本体側バイブレータ124、第1バイブレータ202、第2バイブレータ302の少なくとも一つによるユーザへの触感振動により通知してもよい。
【0082】
またステップS305の特定表示態様やステップS311の通常表示態様による仮想空間情報の表示を行う場合も、仮想空間情報の表示を行うことを示すメッセージをディスプレイ119に表示してユーザに対して通知してもよい。また、この通知はヘッドフォン122からユーザへの発声音声や、本体側バイブレータ124、第1バイブレータ202、第2バイブレータ302の少なくとも一つによるユーザへの触感振動により通知してもよい。
【0083】
以下、ユーザの身体状態、及び周囲環境に起因する注意力の低下要因の有無を判定する例について説明する。
【0084】
<ユーザの身体状態の判定例:サッカード検出>
ステップS201、S202におけるユーザの身体状態判定に用いるセンサデバイスとして右目視線センサ112及び左目視線センサ113を用いる例について説明する。
【0085】
右目視線センサ112が出力した右目視線データ、及び左目視線センサ113が出力した左目視線データを本体側制御器125が取得し、両眼の動きを検出する。
【0086】
本体側制御器125の状態判定部1252は、右目視線データ及び左目視線データを基に、両眼が小刻みに込み高速で動くような急速な眼球運動(サッカード)をしているか否かを識別する。そして、急速眼球運動をしている場合は、ユーザが仮想空間情報と現実空間情報とを誤って認識する異常な状態と判定する。
【0087】
<ユーザの身体状態の判定例:ユーザが現実空間の対象物を注視しているかを検出>
視線検出を用いた他の例としては、ユーザが現実空間の特定の対象を注視しているかどうかで周囲に対する注意力の程度を判断する方法がある。ここで、注視とは、一定時間以上対象物に視線を合わせている状態、と定義できる。
図6は、カメラ111から現実空間をみた際の座標系を示す図である。
図7は、注視している被写体Oと両眼の位置関係を示す図である。
【0088】
まず、状態判定部1252がカメラ111により現実空間情報を取得する。また、状態判定部1252が右目視線データ及び左目視線データを基にユーザの視線を検出する。カメラ111のHMD100における取付け位置は固定されており、ユーザがHMD100を装着すれば、眼球とカメラ111の相対的位置が固定される。ここでは、カメラ111は両眼を結ぶ線分の中点近くに配置されているものとする。カメラ111により撮影された現実空間は、カメラ111から見た方位(θ
C、φ
C)の座標系にマッピングされる(
図6)。この現実空間の画像中のどの点にユーザの視線が向いているかは、右目視線データ及び左目視線データから次のように計算できる。
【0089】
図7において、Rが右目の位置、Lが左目の位置を表す。両眼の距離をSとする。Cはカメラ111の位置であり、両眼を結ぶ基線LRの中点とする。厳密には、カメラ111の位置は、基線の中点からはずれるが、通常は、被写体の位置は、このずれの量に比べて十分に遠いので、カメラ111からみた被写体の方向を求める際には、このカメラ位置の誤差は無視できる。
【0090】
被写体までの距離と方向を考える際に、基線LRとカメラ111の光軸方向で形成される基準面Pを考える。各点から被写体までのベクトルとこの基準面Pとなす角をθで表し、基準面Pの上側方向を正にとる。また、各点から被写体までのベクトルを基準面Pに射影したベクトルと、各点からカメラ111の光軸方向となす角をφで表す。基準面Pを上から見て、右方向の角度を正にとる。
【0091】
左右の視線センサにより、左右それぞれの目からみた被写体の方向(θ
L,φ
L)及び(θ
R,φ
R)が測定できる。このデータから、カメラ111からみた注視している被写体Oの方向(θ
C,φ
C)とカメラ111から被写体Oまでの距離d
COを計算で求めることができる。具体的な表式は下記である。
【数1】
【数2】
【数3】
【0092】
なお、注視点の距離まで分かるので、カメラ111が測距機能も備えて、被写体までの距離も分かる場合、より正確に対象物に対する注視の判定を行うことができる(カメラの他に測距デバイスを備えても構わない)。
【0093】
ユーザの注視点が現実世界の同じ対象物に、予め定めた一定時間以上留まっている場合、その対象物を注視しており、その他の周囲状況に対する注意力が低下しているとの判断により身体状態を異常と判定し、どの対象物も注視をしていない時に身体状態を正常と判定してもよい。
【0094】
これにより、ユーザにとって現実空間情報を見ている状態では仮想空間情報表示による擾乱や邪魔が生じることはなく、安全で使い勝手よくHMD100を使用できる。
【0095】
<ユーザの身体状態の判定例:ユーザが目を閉じているか否かを検出>
視線検出を用いた他の例として、状態判定部1252は、右目視線データ及び左目視線データを用いて両眼の動きを検出して、瞬き以外で目が閉じているか否かを識別判定してもよい。
【0096】
そして、状態判定部1252は、瞬き以外で目が閉じているときにはユーザの身体状態が異常、特に警戒レベルと判定し、瞬き以外で目が閉じていないときにはユーザの身体状態が正常と判定してもよい。
【0097】
これにより、瞬き以外で目が閉じていて意識が集中していない場合には、仮想空間情報の表示を行わないようして、ユーザの安全性を高めることができる。なお、瞬き以外で目が閉じている状態の検出として、視線検出以外にカメラ111を用いて検出してもよい。
【0098】
<ユーザの身体状態の判定例:視線の動きの検出>
また、両眼の視線の動きがあまり見られない場合は、ユーザが眠気を感じてはっきりとした意識を持っておらず、漫然とした状態である可能性がある。よって、状態判定部1252は、所定時間内における視線の動きが少なく、緩慢な場合は、ユーザの意識が漫然とした状態である可能性が否定できないことからユーザの身体状態を異常、特に警戒レベルと判定してもよい。
【0099】
これにより、例えば酔っているとき、具合が悪いときなど、ユーザの身体状態が漫然とした状態で意識がはっきりしていない場合には、仮想空間情報の映像130の表示を行わないようして、ユーザの安全性を高めることができる。
【0100】
以上、検出した眼球の動きを基に、ユーザ身体の異常状態の有無を判定して仮想空間情報の表示動作を制御する場合について説明したが、仮想空間情報を表示しているときに、右目視線センサ112、左目視線センサ113にて眼球の動きを検出し、眼球が仮想空間情報に向けて固視微動や追従運動をしているか否かを識別判定し、眼球が仮想空間情報を捉えた動きをしておらずユーザは仮想空間情報を意識していない、気づいていないと判定した場合には、仮想空間情報の表示を暫定的に非表示(ステータス4)又は強制停止(ステータス5)として扱ってもよい。
【0101】
この場合は、ユーザにとって表示情報は意識している現実空間情報のみで充分な状態であり、意識していない仮想空間情報の表示をなくし、より安全な状態でヘッドマウントディスプレイを使用できるという効果が期待できる。
【0102】
<ユーザの身体状態の検出例:頭部の動き>
ステップS201、S202において、ユーザの身体の状態を検出するセンサデバイスとして、加速度センサ114、ジャイロセンサ115、地磁気センサ116を用い、ユーザの頭部の動きを検出して身体状態を検出してもよい。
【0103】
ステップS201において状態判定部1252は、加速度センサ114、ジャイロセンサ115、地磁気センサ116の其々が出力したセンサ出力を取得する。
【0104】
ステップS202において状態判定部1252は、頭部が大きく変動しているか否かを識別し、頭部が大きく変動している場合、具体的には各センサ出力のうちの少なくとも一つが、各センサ出力の種類に対してそれぞれ定められた動き判定閾値(加速度閾値、角速度閾値、地磁気変化閾値がある)を超える場合には、ユーザの身体の状態が仮想空間情報と現実空間情報とを誤って認識する異常な状態と判定する。
【0105】
一方、状態判定部1252は、頭部が大きく変動していない、具体的には各センサ出力のうちの全てが動き判定閾値以下の場合は、身体状態に異常がないと判定する。
【0106】
<ユーザの身体状態の検出例:音声情報を用いる例>
ステップS201において状態判定部1252は、外周音マイク120、発声音マイク121により音声を捉える。加えて状態判定部1252は、右目視線センサ112及び左目視線センサ113を用いて眼球の動きを捉える。
【0107】
ステップS202において状態判定部1252は、捉えた音声及び眼球運動を基にユーザの意識がどこにあるかを識別判定し、人と会話しているとか電話をしている場合のように、仮想空間情報とは異なる情報を視聴していると判定すると身体状態に異常があると判定する。一方、仮想空間情報だけを視聴していると判定した場合は、身体状態は正常であると判定する。
【0108】
<周囲環境の検出例:接近物体を検出>
ユーザの周囲環境の状態を検出するセンサデバイスとして、周囲監視センサ118を用いる場合について説明する。
【0109】
周囲監視センサ118は、ユーザ周辺の物体の距離や方向を検出する。そこで、ステップS101では、周囲監視センサ118がユーザ周辺に存在する物体までの距離や方向を検出して出力した第1センサ出力を周囲監視判定部1251が取得する。
【0110】
ステップS202では、周囲監視判定部1251が周囲監視センサ118からの第1センサ出力を基に、ユーザに対して、例えば車、人、動物などの物体が一定範囲以内に接近してきているか否かを識別し、物体が一定範囲以内に接近してきている場合には、ユーザの外周の状態が仮想空間情報を表示するに当たってユーザにとって危険性のある状態、即ち予め定められた距離範囲内に物体があると判定した場合は周囲環境に異常があると判定し、距離範囲内に接近してくる物体がなければ周囲環境は正常と判定する。接近物体がある場合は、特に警戒レベルと判定してもよい。
【0111】
これにより、ユーザから距離範囲内に接近してくる物体がある場合は仮想空間情報を特定表示態様又は表示停止することができ、ユーザにとって危険性のある環境下で仮想空間情報を表示させることによる不都合の発生を抑止する。また、仮想空間情報を視聴しているユーザに対して首位環境が異常になったことを知らせることができる。
【0112】
<周囲環境の検出例:接近物体を検出>
ユーザの周囲状態を検出するセンサデバイスとして、温湿度センサ117を用いて、ユーザ周辺の温度や湿度を検出してもよい。
【0113】
ステップS101では、周囲監視判定部1251は、温湿度センサ117が検出した温度や湿度を検出して出力したセンサ出力を取得する。取得した温度や湿度はメモリ128に一時的に記憶しておく。
【0114】
ステップS102では、周囲監視判定部1251は、メモリ128に記憶した温度や湿度の変化を演算し、温度の変化が予め定めた温度変化閾値を超える、又は湿度の変化が予め定めた湿度変化閾値を超える事象の少なくとも一方が発生すると、ユーザの周囲環境に異常があると判定する。一方、温度の変化が温度変化閾値以下であり、かつ湿度の変化が予め定めた湿度変化閾値以下であればユーザの周囲環境は正常であると判定する。
【0115】
また、温度や湿度に限らず、例えば、気圧、外周音などユーザの外周の状態を検出できる情報であれば、その情報のセンサ、例えば気圧センサ、外周音マイク120などをユーザの周囲監視センサ118として用いてもよい。
【0116】
本実施形態に係るHMDシステム1の作用効果について説明する。ユーザが仮想空間情報を現実空間情報と誤認識するかどうか、及び誤認識した際の不都合の程度は、ユーザの身体状態と周囲環境との組み合わせによって異なる。
【0117】
一般にユーザの身体状態が正常であれば、それだけ注意力が高いので仮想空間情報の誤認識が発生しにくいと考えられる。
【0118】
また、ユーザの身体状態が異常であり注意力が低下した結果仮想空間情報を誤認識したとしても、周囲環境が正常で安全な場合、例えば室内でソファーに座り、テーブル上にコップが仮想空間情報として表示されており、それを現実のコップと誤認識しても不都合の程度は低い。一方で、戸外を歩行中に仮想空間情報を誤認識すると、つまずいたり路上の物体と干渉するなど大きな不都合が発生しうる。
【0119】
更に、ユーザの身体状態の如何に関らず、例えば戸外を歩行中に車両や自転車がユーザに向かって走行している状態は、仮想空間情報に気を取られている状況からいち早くユーザを離脱させた方がよい。
【0120】
本実施形態によるHMDシステム1によれば、ユーザの身体状態及び周囲環境の正常・異常の両方を組みあわせて、仮想空間情報の表示態様を決定するので、ユーザの身体状態だけに注目した場合に比べて、より仮想空間情報の誤認識の発生の抑制が行え、HMD100の使い勝手が向上する。
【0121】
また周囲環境の状態も注意レベルと警戒レベルとに分けることで、周囲環境に異常があればすぐに仮想空間情報が非表示とされることがなく、仮想空間情報の映像130の表示を楽しむことと、周囲環境の異常への対応との両立を図ることができる。
【0122】
またユーザの身体状態に異常があり、かつ周囲環境に注意レベルの異常がある場合(ステータス4)では、仮想空間情報の表示を暫定的に停止する。その後、周囲環境に注意レベルの異常が非表示待機時間内に解消すれば、特定表示態様にて仮想空間情報の表示を再開できる。注意レベルの異常は短時間に期間に解消することもありうるので、その場合は仮想空間情報の表示を再開し、HMD100の使い勝手が向上する。
【0123】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0124】
例えば、上記では仮想空間情報を生成するイメージプロセッサ501をサーバ500に備え、仮想空間情報を外部ネットワーク600を介して受信し、表示した。しかし、イメージプロセッサ501をHMD100に組み込んでもよい。これにより、サーバ500との通信を行うことなく、仮想空間情報、或いはモディファイされた仮想空間情報を上記の表示態様により表示してもよい。
【0125】
また第1ウエアラブル端末200内の心拍センサ201、第2ウエアラブル端末300内の血圧センサ301、入力コントローラ400内の入力操作器401を、HMD100内に取り込んでもよい。この場合、心拍センサ201は頭部に密接して設けられ心拍数を検出する。血圧センサ301も頭部に密接して設けられ頭皮直下の頭部動脈で血圧値を検出する。入力操作器401は、HMD100内でユーザが入力操作を行いやすい位置に設ければよい。
【0126】
或いは、ユーザが入力操作を示す音声を発声し、発声音マイク121で集音して入力操作情報を取り込んでもよい。
【0127】
また、ディスプレイ119に入力操作画面を表示させ、右目視線データ及び左目視線データから検出した視線が向いている入力操作画面上の位置により入力操作情報を取り込んでもよいし、ポインタを入力操作画面上に表示させ手の動作などにより指定させて入力操作情報を取り込んでもよい。入力操作に発声や表示を用いることにより、使い勝手を一層向上させることが可能である。
【0128】
このように第1ウエアラブル端末200、第2ウエアラブル端末300、入力コントローラ400も含めて一体化してもよいし、イメージプロセッサ501だけをHMD100に取り込んでもよい。
【0129】
また、ユーザの身体状態を検出するセンサとして、発汗センサ、呼吸センサ等、他の生体情報を取得するセンサを用いてもよい。
【0130】
以上、各種センサデバイスを用いユーザの身体状態或いは周囲状態を識別判定し、仮想空間情報表示を制御する際の動作について説明したが、ステータス3,4のいずれかにあると表示制御部1253が判定すると、表示制御部1253は、ユーザの目に強い光を与えるとか、或いは点滅した2個以上の光をユーザの視野内に表示させ、再び周囲監視判定部1251及び状態判定部1252からの判定結果に基づき、脳が目覚めて意識がはっきりしている覚醒状態(ステータス1、2)に遷移させてから、仮想空間情報を重畳表示、或いは入替表示してもよい。
【0131】
また、ユーザにとって、ゲーム、映画など没入感を大切にしてHMD100を使用する場合には、ユーザの身体状態或いは周囲環境の状態に応じた仮想空間情報の表示制御を行わないようにしてもよい。この場合、例えば入力コントローラ400から仮想空間情報の表示制御を行うか或いは行わないかを設定入力するようにすればよい。
【0132】
上記各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラム126を解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム126、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0133】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 :HMDシステム
100 :HMD
111 :カメラ
112 :右目視線センサ
113 :左目視線センサ
114 :加速度センサ
115 :ジャイロセンサ
116 :地磁気センサ
117 :温湿度センサ
118 :周囲監視センサ
119 :ディスプレイ
120 :外周音マイク
121 :発声音マイク
122 :ヘッドフォン
124 :本体側バイブレータ
125 :本体側制御器
126 :プログラム
127 :情報データ
128 :メモリ
129 :アンテナ
130 :映像
131 :本体側ネットワーク通信器
132 :本体側近距離無線通信器
133 :タイマー
140 :バス
200 :第1ウエアラブル端末
300 :第2ウエアラブル端末
400 :入力コントローラ
500 :サーバ
600 :外部ネットワーク