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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】トルク及び回転角度検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022132917
(22)【出願日】2022-08-24
(65)【公開番号】P2023066367
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】21205296.3
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタンコ テプシック
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ロシャオ
(72)【発明者】
【氏名】トバイアス ヴァイデル
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-104094(JP,A)
【文献】特表2011-503556(JP,A)
【文献】特開2002-107240(JP,A)
【文献】特開2007-271275(JP,A)
【文献】特開2021-051098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(X)の周りを回転することができるロータユニット(10)を備えるトルク及び回転角度検出システム(1)であって、静止して配置され、前記回転軸(X)に対して半径方向に配置されたラジアルエアギャップ(30)によって前記ロータユニット(10)から分離されたステータユニット(20)を備え、前記ロータユニット(10)が、前記ロータユニット(10)に作用するトルクを検出する歪みゲージ(15)を備え、前記ロータユニット(10)が、互いに離間して配置された複数の双極子磁石(14)を備え、前記ステータユニット(20)が、前記ロータユニット(10)の回転中に前記双極子磁石(14)の磁場を測定する磁場センサ(24)を備え、前記ステータユニット(20)が一次コイル(21)を備え、前記ロータユニット(10)が二次コイル(21)を備え、前記一次コイル(21)の一次電圧が、前記二次コイル(11)の二次電圧を生成し、前記双極子磁石(14)がそれぞれ、1,000mT以上の残留磁気を有し、前記二次コイル(11)が、複数のフェライト素子(110)を備えることを特徴とする、トルク及び回転角度検出システム(1)。
【請求項2】
前記ラジアルエアギャップ(30)の幅が2.0mm以上であり、ラジアルエアギャップ許容値(31)が+/-1.5mmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記ロータユニット(10)が、ロータ本体(100)と、前記ロータ本体(100)の外側に設けられる複数の止まり穴(12)とを備え、前記フェライト素子(110)が、前記止まり穴(12)内に固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記フェライト素子(110)を前記止まり穴(12)内に固定することが、フォームロック接続によって達成されることを特徴とする、請求項3に記載のシステム(1)。
【請求項5】
各止まり穴(12)が、少なくとも1つの内面(1001)を備える内部空間(121)を備え、各フェライト素子(110)が、少なくとも1つの外面(1101)を備え、前記内面(1001)及び前記外面(1101)が、互いにサイズが一致するように機械加工され、前記内面(1001)及び前記外面(1101)の機械的接触が、フォームロック接続をもたらすことを特徴とする、請求項4に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記ロータユニット(10)が、前記フェライト素子(110)の外側に半径方向に取り付けられているコイル巻線(111)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記双極子磁石(14)がネオジム-鉄-ホウ素で作られていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記ロータユニット(10)が、ロータ本体(100)と、前記ロータ本体(100)の外側に半径方向に設けられる溝(16)とを備え、前記双極子磁石(14)が、前記溝(16)内に固定されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記ロータユニット(10)が、前記ロータユニット(10)の外側に半径方向に取り付けられているロータカバー(17)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記ロータカバー(17)が、フォースロック接続によって前記ロータユニット(10)に固定されることを特徴とする、請求項9に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記ロータカバー(17)が、前記ロータユニット(10)に締付されることを特徴とする、請求項9又は10に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記ロータユニット(10)がコイル巻線(111)を備え、前記ロータユニット(10)に締付された前記ロータカバー(17)が、前記コイル巻線(111)及び前記双極子磁石(14)を完全に覆うことを特徴とする、請求項11に記載のシステム(1)。
【請求項13】
前記ステータユニット(20)が、前記回転軸(X)に沿って前記ロータユニット(10)に対して+/-1.0mmの範囲の軸方向オフセット公差(32)で配置されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項14】
前記磁場センサ(24)が、測定された各磁場について磁場信号を生成し、前記ステータユニット(20)が、評価プログラムを実行する評価ユニット(25)を備え、前記磁場センサ(24)が、前記磁場信号を前記評価ユニット(25)に送信し、前記評価プログラムが、前記ロータユニット(10)が移動した回転角度を決定するため、前記双極子磁石(14)間の距離を乗算する前記磁場信号をカウントすることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項15】
前記歪みゲージ(15)が、検出されたトルクの測定信号を生成し、前記ロータユニット(10)が、ロータアンテナ(13)を備え、前記歪みゲージ(15)が、前記測定信号を前記ロータアンテナ(13)に送信し、前記ステータユニット(20)が、ステータアンテナ(23)と評価ユニット(25)とを備え、評価ユニット(25)が、評価プログラムを実行し、前記ロータアンテナ(13)が、前記測定信号を前記ステータアンテナ(23)に送信し、前記ステータアンテナ(23)が、前記ロータアンテナ(13)から受信した前記測定信号を前記評価ユニット(25)に送信し、前記評価プログラムが、送信された前記測定信号から前記ロータユニット(10)に作用するトルクを決定することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文によるトルク及び回転角度検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業測定技術は、工業的に製造された製品のトルク、回転角度などの物理的パラメータを検出するのに役立つ。例えば、試験台技術は、内燃機関、電気モータ、ギヤボックス、ポンプなどの回転部品のトルク及び回転角度を測定するために使用される。また、ワークの切屑除去加工においても、回転部品のトルクや回転角度を測定する。
【0003】
KiTorqとして知られ、data sheet 4550A_000-880d-08.20に文書化されているトルク及び回転角度を検出するためのシステムは、本出願人から入手可能である。KiTorqは、本発明の目的のための先行技術と見なされる。KiTorqは、ロータユニット及びステータユニットを特徴とする。ロータユニットは、ねじ接続を介して任意の回転部品に取り付けることができるフランジとして設計される。ロータユニットは、20000min-1までの回転速度のために構成される。一方、ステータユニットは静止している。それは、ラジアルエアギャップによって回転軸に対してロータユニットから分離されている。
【0004】
ロータユニットは、歪みゲージを備える。歪みゲージは、測定グリッド及びブリッジ回路を備える。電圧が測定グリッドに印加されると、測定グリッドは電気抵抗を示す。電気抵抗は、測定グリッドの膨張又は圧縮時に変化し、電気抵抗の変化は、ブリッジ回路内に測定信号を生成する。このようにして、歪みゲージは、ロータユニットに作用するトルクを検出する。歪みゲージは、最大35kSampleのサンプリングレートで最大1万個の測定信号/秒を生成する動的な方法でトルクを検出する。測定信号は24ビットの分解能を有する。
【0005】
ロータユニットは、互いに離間した複数の双極子磁石を備える。ステータユニットは、ロータユニットの回転中に双極子磁石の磁場を測定する磁場センサを備える。システムは、測定された磁場をカウントし、双極子磁石間の距離が既知であるため、そこからロータユニットが移動する回転角度を決定する。
【0006】
ロータユニットは、ロータアンテナを備え、ステータユニットは、ロータユニットからステータユニットへ測定信号を送信するためのステータアンテナを備える。測定信号の送信は、ロータアンテナが測定信号をステータアンテナに送信することによって非接触で行われる。この目的のために、Industrial Scientific and Medical(ISM)バンドの13.56MHzの送信周波数が使用され、最大1.4Mbitsec-1のデータ送信レートが達成される。
【0007】
歪みゲージ及びロータアンテナの動作のために、ロータユニットに電力が供給されなければならない。この目的のために、ステータユニットは一次コイルを備え、ロータユニットは二次コイルを備える。一次コイル及び二次コイルは、互いに誘導結合される。一次コイルの一次電圧は、二次コイルに二次電圧を生成する。一次コイルと二次コイルとの誘導結合は、115kHz~130kHzの範囲のキャリア周波数を有するISMバンドで非接触方式で生じる。
【0008】
双極子磁石は、フェライト粉末/ゴムの磁化混合物からなる。200mT未満では、双極子磁石の残留磁気は比較的弱い。そのような弱い残留磁気は、したがって回転角度の決定を改ざんする可能性がある、外部磁場によって容易に妨害される。
【0009】
誘導結合を達成するために、二次コイルは鉄粉/樹脂混合物を含む。鉄粉/樹脂混合物は、迅速に混合され、ヘラを使用して湾曲した形状のロータユニットに容易に塗布されて急速に硬化する。特に、異なる曲率半径を有するロータユニットに同じ鉄粉/樹脂混合物を使用することができる。したがって、鉄粉/樹脂混合物の使用は、可変性の高い費用対効果の高い製造をもたらす。しかしながら、新たに混合された鉄粉/樹脂混合物は、鉄粉/樹脂混合物が硬化した後、さらに低い透磁率をもたらすまで持続する空気含有物を含む。結果として、一次コイルと二次コイルとの間の誘導結合は、低効率である。
【0010】
上述の理由から、双極子磁石及び磁場センサ並びに一次コイル及び二次コイルは、互いに近接して配置されなければならない。ステータユニットとロータユニットとの間のラジアルエアギャップは、幅がわずか1.0mmであり、+/-0.5mmのラジアルエアギャップの厳しい許容範囲に適合しなければならない。ラジアルエアギャップのこの狭い許容範囲に適合するために、ロータユニットは、DIN ISO 1940-1に従ってG2.5のバランス品質等級で製造されるが、KiTorqの製造は複雑で高価になる。
【0011】
多くの場合、ロータユニットが回転部品に取り付けられた後、ロータユニットに隣接するステータユニットを取り付けて磁場センサを双極子磁石に近接して配置するためのスペースが回転部品の近傍に十分にない。しかしながら、磁場センサと双極子磁石との間の距離が大きいほど、磁場センサによる双極子磁石の磁場の測定に誤りが生じやすく、回転角度の決定が歪められる可能性がある。
【0012】
本発明の第1の目的は、ロータユニット及びステータユニットが、回転軸に対してラジアルエアギャップによって互いに分離され、エアギャップが、KiTorqによる従来技術から知られているものよりも広く、KiTorqによる従来技術よりも幅に関してより広い許容範囲を有する、ロータユニット及びステータユニットを備えるトルク及び回転角度検出システムを提供することである。
【0013】
本発明の第2の目的は、回転角度の検出が外部磁場によって容易に妨害されないトルク及び回転角度検出システムを提案することである。
【0014】
さらに、本発明の第3の目的は、製造がKiTorqによる従来技術よりも安価である、トルク及び回転角度検出システムを求めることである。
【0015】
最後に、本発明の第4の目的は、磁場センサを双極子磁石に近接して配置するためにステータユニットをロータユニットに隣接して容易かつ迅速に取り付けることができるトルク及び回転角度検出システムを提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】data sheet 4550A_000-880d-08.20
【発明の概要】
【0017】
これらの目的の少なくとも1つは、独立請求項に記載の特徴によって達成されている。
【0018】
本発明は、回転軸の周りを回転することができるロータユニットを備え、静止して配置され、回転軸に対して半径方向であるエアギャップによってロータユニットから分離されたステータユニットを備え、ロータユニットは、ロータユニットに作用するトルクを検出する歪みゲージを備え、ロータユニットは、互いに離間して配置された複数の双極子磁石を備え、ステータユニットは、ロータユニットの回転中に双極子磁石の磁場を測定する磁場センサを備え、ステータユニットは一次コイルを備え、ロータユニットは二次コイルを備え、一次コイルの一次電圧は、二次コイルの二次電圧を生成し、双極子磁石はそれぞれ、1,000mT以上、好ましくは1,400mT以上の残留磁気を有し、二次コイルは、複数のフェライト素子を備える、トルク及び回転角度検出システムに関する。
【0019】
本発明によれば、ロータアセンブリの双極子磁石は、強い残留磁気を有する。本発明による双極子磁石の残留磁気は、KiTorqによる双極子磁石の磁化フェライト粉末/ゴム混合物の残留磁気と比較して少なくとも5倍高い。ステータユニットの磁場センサによる双極子磁石の磁場の測定をより長い距離から実行することを可能にするのは、この強い残留磁気である。さらに、残留磁気は強いので、外部磁場によって容易に妨害されない。
【0020】
フェライト素子は、高圧で均一なペレットにプレスされた非常に純粋な鉄-酸素化合物からなる。そのため、フェライト素子は、磁性材料を多く含むことを特徴とし、緻密性が高い。このため、フェライト素子は透磁率が高い。さらに、フェライト素子は、KiTorqによる鉄粉/樹脂混合物と比較して、一次コイルと二次コイルとの間の誘導結合の効率を改善する。効率が改善されているため、より長い距離にわたって誘導結合が起こり得る。
【0021】
したがって、本発明によるシステムの二次コイルにおける強い残留磁気を有する双極子磁石とフェライト素子との組み合わせは、ロータユニットとステータユニットとの間のラジアルエアギャップを増加させることが可能であり、ラジアルエアギャップの許容幅の許容範囲をさらに増加させることが可能であるという相乗効果を有する。
【0022】
さらに、フェライト素子は、購入するのに安価であり、システムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0023】
トルク及び回転角度検出システムの好ましい実施形態の概要は、従属請求項に提供される。
【0024】
システムの好ましい実施形態では、ラジアルエアギャップの幅は2.0mm以上であり、ラジアルエアギャップの許容範囲は+/-1.5mmである。
【0025】
ここで、ラジアルエアギャップは少なくとも2倍のサイズであり、その許容可能なラジアルエアギャップ許容範囲は、KiTorqによる従来技術のトルク及び回転角度検知システムと比較してさらに3倍大きい。
【0026】
システムの好ましい実施形態では、ロータユニットは、ロータ本体と、ロータ本体の外側に設けられた複数の止まり穴とを備え、フェライト素子は、止まり穴内に固定されている。
【0027】
止まり穴へのフェライト素子のこの固定は達成が容易であり、これによりシステムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0028】
システムの好ましい実施形態では、止まり穴内のフェライト素子の固定は、フォームロック接続によって達成される。
【0029】
システムの好ましい実施形態では、各止まり穴は内部空間を含み、この内部空間は少なくとも1つの内面を備え、各フェライト素子は、少なくとも1つの外面を備え、内面及び外面は、サイズが互いに一致するように機械加工され、内面及び外面の機械的接触は、フォームロック接続をもたらす。
【0030】
フォームロック接続は、20000min-1以上の高い遠心力下でもフェライト素子がロータ本体から取り外されないことを保証する。このフォームロック接続は達成が容易であり、システムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0031】
システムの好ましい実施形態では、ロータユニットはコイル巻線を備え、コイル巻線はフェライト素子の外側に半径方向に取り付けられる。
【0032】
フェライト素子の外側への径方向のコイル巻線のこの取り付けも達成が容易であり、これにより、システムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0033】
システムの好ましい実施形態では、双極子磁石はネオジム-鉄-ホウ素で作られる。
【0034】
ネオジム-鉄-ホウ素で作られた双極子磁石は、購入が安価であり、これはまた、システムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0035】
システムの好ましい実施形態では、ロータユニットは、ロータ本体と、ロータ本体の外側に半径方向に配置された溝とを備え、双極子磁石は、溝内に固定されている。
【0036】
この溝は、ロータ本体内に容易に作製される。このようにして、溝内に固定された双極子磁石は、単純な設計のロータカバーによって双極子磁石及びコイル巻線を覆うことができるようにコイル巻線と回転軸から実質的に同じ半径方向距離に配置される。したがって、溝は、システムの製造を費用対効果の高いものにすることに寄与する。
【0037】
システムの好ましい実施形態では、ロータユニットはロータカバーを備え、ロータカバーはロータユニットの外側に半径方向に取り付けられる。
【0038】
システムの好ましい実施形態では、ロータカバーは、フォースロック接続によってロータユニットに取り付けられる。
【0039】
システムの好ましい実施形態では、ロータカバーは、ロータユニットに締付される。
【0040】
システムの好ましい実施形態では、ロータユニットはコイル巻線を備え、ロータユニットに締付されたロータカバーは、コイル巻線及び双極子磁石を完全に覆う。
【0041】
このロータカバーは、双極子磁石及びコイル巻線を機械的損傷から保護する。このロータカバーは、ロータユニットに容易に取り付けることができ、システムの製造を費用対効果の高いものにする。
【0042】
システムの好ましい実施形態では、ステータユニットは、ロータユニットに対して+/-1.0mmの範囲の軸方向オフセット公差で回転軸に沿って配置される。
【0043】
軸方向オフセット公差は、ステータユニットがロータユニットに隣接して取り付けられるとき、軸方向自由度に対応する。磁場センサによる双極子磁石の磁場の測定は、この軸方向オフセット公差に適合するときに妨害されない。この軸方向自由度により、ステータユニットをロータユニットに隣接して容易かつ迅速に取り付けることができる。
【0044】
システムの好ましい実施形態では、磁場センサは、測定された各磁場について磁場信号を生成し、ステータユニットは、評価ユニットを備え、この評価ユニットは、評価プログラムを実行し、磁場センサは、磁場信号を評価ユニットに送信し、評価プログラムは、磁場信号をカウントし、それに双極子磁石の互いからの距離を乗算して、ロータユニットが移動した回転角度を決定する。
【0045】
システムの好ましい実施形態では、歪みゲージは、検出されたトルクの測定信号を生成し、ロータユニットは、ロータアンテナを備え、歪みゲージは、測定信号をロータアンテナに送信し、ステータユニットは、ステータアンテナと評価ユニットとを備え、評価ユニットは、評価プログラムを実行し、ロータアンテナは、測定信号をステータアンテナに送信し、ステータアンテナは、ロータアンテナから受信した測定信号を評価ユニットに送信し、評価プログラムは、送信された測定信号からロータユニットに作用するトルクを決定する。
【0046】
以下では、図面を参照して、例として本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】ロータユニット10及びステータユニット20を備えるトルク及び回転角度検出システム1の一部分の図を示す。
図2図1の線C-Cに沿った断面によるシステム1の一部分の図を示す。
図3図2によるシステム1の一部分の拡大断面図を示す。
図4図1及び2によるロータユニット10の一部分の拡大図を示す。
図5図3の線D-Dによるロータユニット10の一部分の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、トルク及び回転角度検出システム1の一部分の図を示す。図2は、図1の線C-Cに沿った断面による図を示す。図3は、図2に示すシステム1の一部分の拡大断面図である。図4は、図1及び2に示すロータユニット10の一部分の拡大図である。さらに、図5は、図3の線D-Dによるロータユニット10の一部分の拡大断面図である。同じ参照符号は、図中の同じ物体を示す。
【0049】
システム1は、回転軸X、水平軸Y、及び垂直軸Zを含む3次元座標系で表される。3つの軸は互いに垂直である。
【0050】
システム1は、ロータユニット10及びステータユニット20を備える。
【0051】
ロータユニット10は、中空円筒形状のロータ本体100を備える。ロータ本体100は、鋼、ステンレス鋼などの機械的に耐性のある材料で作られている。ロータユニット10は、ねじ接続により任意の回転部品に取り付けることができるフランジとして設計される。ロータユニット10は、20000min-1以上の回転速度用に構成される。
【0052】
ステータユニット20は、静止して配置される。これは、回転軸Xに対してラジアルエアギャップ30によってロータユニット10から分離されている。ラジアルエアギャップ30の幅は2.0mm以上であり、ラジアルエアギャップの公差31は+/-1.5mmの範囲内である。これにかかわらず、回転軸Xに沿ったロータユニット10に対するオフセットには軸方向オフセット公差32がある。軸方向オフセット公差32は、+/-1.0mmの範囲内である。
【0053】
ロータユニット10は、歪みゲージ15を備える。歪みゲージ15は、測定グリッド及びブリッジ回路を備える。電圧が測定グリッドに印加されると、測定グリッドは電気抵抗を示す。電気抵抗は、測定グリッドの膨張又は圧縮時に変化し、電気抵抗の変化は、ブリッジ回路内に測定信号を生成する。歪みゲージ15は、最大35kSampleのサンプリングレートで最大1万個の測定信号/秒を生成する動的な方法でトルクを検出する。測定信号は24ビットの分解能を有する。歪みゲージ15は、最大公称トルク100Nm以上を0.05%以下の精度で検出する。
【0054】
ロータユニット10は、ロータアンテナ13をさらに備え、ステータユニット20は、ステータアンテナ23を備える。歪みゲージ15とロータアンテナ13とは、電気接続線によって互いに電気的に接続されている。歪みゲージ15は、電気接続線を介して測定信号をロータアンテナ13に送信する。測定信号は、ロータユニット10からステータユニット20に非接触で送信される。この目的のために、ロータアンテナ13は、測定信号をステータアンテナ23に送信する。好ましくは、Industrial Scientific and Medical(ISM)バンドの13.56MHzの送信周波数が使用され、最大1.4Mbitsec-1のデータ送信レートが達成される。
【0055】
ロータユニット10は二次コイル11を備え、ステータユニット20は一次コイル21を備える。一次コイル21と二次コイル11とは誘導結合されている。一次コイル21の一次電圧は、二次コイル11に二次電圧を生成する。誘導結合により、ステータユニット20は、ロータユニット10に電力を供給する。一次コイル21と二次コイル11との間の誘導結合は非接触であり、115kHz~130kHzの範囲のキャリア周波数を有するISMバンドで生じる。
【0056】
二次コイル11及び歪みゲージ15は、電気接続線によって互いに電気的に接続されている。二次コイル11は、電気接続線を介して歪みゲージ15に電力を供給する。二次コイル11及びロータアンテナ13は、電気接続線によって互いに電気的に接続されている。二次コイル11は、電気接続線を介してロータアンテナ13に電力を供給する。
【0057】
ロータユニット10は、複数の止まり穴12を備える。止まり穴12は、ロータ本体100の外側に半径方向に配置される。止まり穴12は、回転軸Xから一定の半径方向距離をおいて円周上に配置される。好ましくは、各止まり穴12は止まり穴開口部120を備える。止まり穴開口部120は、ロータ本体100の回転軸Xに平行に配置される。各止まり穴12は、止まり穴開口部120と、内部空間121とを備える。止まり穴開口部120は、ロータ本体100の回転軸Xに平行に配置される。内部空間121は、止まり穴開口部120を通ってロータユニット10の外側からアクセスすることができる。
【0058】
二次コイル11は、複数のフェライト素子110を備える。フェライト素子110は、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライトなどである。好ましくは、フェライト素子110は、3C90材料から作られる。3C90材料等級は、2,000以上、好ましくは2,300以上の初透磁率を示す。初透磁率は、規格DIN IEC 60401に従って、25°Cの室温で、10kHz以下の低電流周波数及び0.25mT未満の低ピーク磁束を用いて決定される。初透磁率は、+/-20%の散乱を示す。115kHz~130kHzの範囲のキャリア周波数では、3C90材料は165kWm-3~205kWm-3の範囲で低渦電流損を示す。渦電流損は、室温25°C、ピーク磁束100mTで決定される。好ましくは、フェライト素子110は、円筒形状である。各フェライト素子110は、直径2.0mm、長さ7.5mmであることが好ましい。好ましくは、二次コイル10は、100個のフェライト素子110を備える。好ましくは、フェライト素子12の互いの距離は3.7mmである。
【0059】
フェライト素子11は、止まり穴12の周囲に互いに一定の距離をおいて配置されている。フェライト素子110は、止まり穴12内に固定される。各止まり穴12には、一つのフェライト素子110が固定されている。フェライト素子110は、止まり穴開口部120を通って内部空間121に挿入される。フェライト素子110は、係合などのフォームロック接続によって、又は接着接合などの材料接合によって、又は締付などのフォースロック接続によって、又はフォームロック接続、材料接合、及びフォースロック接続の任意の組み合わせによって、止まり穴12内に固定される。好ましくは、内部空間121は少なくとも一つの内面1001を備え、フェライト素子110は少なくとも一つの外面1101を備える。内面1001と外面1101とは互いに一致するように機械加工され、内面1001と外面1101との機械的接触はフォームロック接続をもたらす。そのため、ロータユニット10が20000min-1以上の回転速度で回転し、フェライト素子11に遠心力が作用するとき、フォームロック接続によりフェライト素子11がロータ本体100から分離することが防止されるため、フェライト素子11がロータ本体100から取り外されることがない。
【0060】
ロータユニット10は、コイル巻線111を備える。コイル巻線111は、フェライト素子110の外側に半径方向に取り付けられている。コイル巻線111は、回転軸Xから一定の半径方向距離をおいて円周上に配置される。コイル巻線111は、銅などの導電性材料で作られたワイヤからなる。有利には、ワイヤは直径0.4mmである。
【0061】
ロータユニット10は、溝16を備える。溝16は、ロータ本体100の外側に半径方向に設けられる。溝16は、回転軸Xから一定の半径方向距離をおいて円周上に配置される。
【0062】
ロータユニット10は、1,000mT以上、好ましくは1,400mT以上の残留磁気を有する複数の双極子磁石14を備える。好ましくは、双極子磁石14はネオジム-鉄-ホウ素で作られる。好ましくは、双極子磁石14は溝16内に固定される。双極子磁石14は、接着接合などの材料接合によって、又は締付などのフォースロック接続によって、又は材料接合とフォースロック接続との組み合わせによって固定される。双極子磁石14は、溝16の周囲に互いに一定の距離をおいて配置されている。好ましくは、ロータユニット10は、72個の双極子磁石14を備える。好ましくは、双極子磁石14間の距離は5.0mmである。双極子磁石14は直方体形状であることが好ましい。好ましくは、各双極子磁石14のサイズは3.0x3.0x4.0mmである。したがって、各双極子磁石14は、回転軸Xに沿って3mmの軸方向長さを有する。この3mmの軸方向長さにより、ステータユニット20をロータユニット10に隣接して取り付けるとき、軸方向自由度が可能になる。この理由は、ステータユニット20の磁場センサ24を双極子磁石14に近接して取り付ける必要がもはやなく、むしろ磁場センサ24による双極子磁石14の磁場の測定に影響を及ぼすことなく+/-1.0mmの範囲の軸方向オフセット公差32で取り付けることができるからである。
【0063】
ロータユニット10は、ロータカバー17を備える。ロータカバー17は、ロータユニット10の外側に半径方向に取り付けられる。ロータカバー17は、クランプ等のフォースロック接続によってロータユニット10に取り付けられる。ロータカバー17は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの引張強度及び剛性が高い材料で作られる。ロータカバー17は、回転軸Xから一定の半径方向距離をおいて円周上に配置される。ロータカバー17は、リボン形状である。有利には、ロータカバー17は、弾性変形によってロータユニット10に締付されてもよい。有利には、ロータユニット10に締付されたロータカバー17は、コイル巻線111及び双極子磁石14を完全に覆う。有利には、双極子磁石14の半径方向外側端部は、コイル巻線111の半径方向外側端部と回転軸Xから実質的に同じ半径方向距離に位置する。したがって、ロータユニット10に締付されたロータカバー17は、コイル巻線111と半径方向の外側で直接機械的表面接触し、双極子磁石14と直接機械的表面接触する。ロータカバー17は、コイル巻線111及び双極子磁石14を機械的損傷から保護する。
【0064】
ステータユニット20は、ロータユニット10の回転中に双極子磁石14の磁場を測定する磁場センサ24を備える。磁場センサ24は、ホール効果センサ、磁気抵抗センサなどである。測定された各磁場について、磁場センサ24は磁場信号を生成する。磁場信号は、好ましくはデジタル信号である。
【0065】
ステータユニット20は、評価ユニット25を備える。評価ユニット25は、少なくとも一つのデータプロセッサ及び少なくとも一つのデータメモリを備える電気回路である。評価ユニット25は、少なくとも一つの評価プログラムを含む。評価プログラムは、データメモリに格納され、データメモリからデータプロセッサにロードすることができる。評価ユニット25は、データプロセッサにロードされた評価プログラムを実行する。
【0066】
ステータアンテナ23と評価ユニット25とは、電気接続線によって互いに電気的に接続されている。ステータアンテナ23は、ロータアンテナ13から受信した測定信号を電気接続線を介して評価ユニット25に送信する。データプロセッサにロードされた評価プログラムは、送信された測定信号からロータユニット10に作用するトルクを算出する。
【0067】
磁場センサ24と評価ユニット25とは、電気接続線によって互いに電気的に接続されている。磁場センサ24は、電気接続線を介して磁場信号を評価ユニット25に送信する。データプロセッサにロードされた評価プログラムは、送信された磁界信号をカウントする。双極子磁石14間の距離の量は、データメモリに格納される。データメモリから、データプロセッサにロードされた評価プログラムは、評価プログラムがカウントした磁場信号の数を乗算する双極子磁石14の互いからの距離の量を読み込み、それによりロータユニット10が移動した回転角度を決定する。
【0068】
システム1は、様々な方法で工業測定技術に有用である。したがって、システム1は、例えば、試験台技術においてトルク及び回転角度を測定するために使用され得る。しかしながら、システム1は、回転部品のトルク及び回転角度を測定するためのワークの切削除去加工にも使用され得る。
【符号の説明】
【0069】
1 システム
10 ロータユニット
11 二次コイル
100 ロータ本体
1001 内面
110 フェライト素子
111 コイル巻線
1101 外面
12 止まり穴
120 止まり穴開口部
121 内部空間
13 ロータアンテナ
14 双極子磁石
15 歪みゲージ
16 溝
17 ロータカバー
20 ステータユニット
21 一次コイル
22 ステータカバー
23 ステータアンテナ
24 磁場センサ
25 評価ユニット
30 ラジアルエアギャップ
31 ラジアルエアギャップ許容値
32 軸方向オフセット公差
c-c セクション
d-d セクション
x 回転軸
y 水平軸
z 垂直軸
図1
図2
図3
図4
図5