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特許7455179ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/04 20060101AFI20240315BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240315BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20240315BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L9/04
C08L67/02
B29C41/14
A41D19/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022187937
(22)【出願日】2022-11-25
(65)【公開番号】P2023175610
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066035
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0120033
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユンソ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スン フン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009272(JP,A)
【文献】特開2017-036459(JP,A)
【文献】特開2017-057322(JP,A)
【文献】特許第4368311(JP,B2)
【文献】特開2021-042385(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B29C 41/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックス;及び
ポリエステルポリオール;を含み、
前記ポリエステルポリオールの酸価は、5.0以下であり、前記エチレン性不飽和酸単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として1~10重量%であり、前記ポリエステルポリオールの含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.1~10重量部である、ディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールは、フタル酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、フタル酸系化合物とトリオール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とトリオール系化合物の反応物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項6】
前記共役ジエン系単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として45~80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として15~45重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールの酸価は、2.0以上であることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項9】
(a)共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックスを準備する段階;
(b)前記共重合体ラテックスにポリエステルポリオールを含む架橋剤組成物を添加する段階;及び
(c)ディップ成形する段階を含み、
ここで、前記ポリエステルポリオールの酸価は、5.0以下であり、前記エチレン性不飽和酸単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として1~10重量%であり、前記ポリエステルポリオールの含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.1~10重量部である、ディップ成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたことを特徴とする、ディップ成形品。
【請求項11】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群より選択される一つであることを特徴とする、請求項10に記載のディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用、農畜産物加工用、産業用に用いられる手袋の主原料は、天然ゴムラテックスであった。しかし、天然ゴムラテックスから製造された手袋を用いる場合、天然ゴムラテックスに含有されたタンパク質により手袋の使用者が接触性アレルギー疾患を患う問題が頻繁に発生した。そのため、ニトリル系共重合体ラテックスのようにタンパク質を含まない合成ゴムラテックスを適用して手袋を製造しようとする試みが行われた。ニトリル系共重合体ラテックス手袋は、天然ゴムラテックス手袋に比べて機械的強度に優れているので、鋭い物体と接触が頻繁に発生する医療乃至食品分野で需要が増加しているのが実情である。
【0003】
しかし、ニトリル系共重合体ラテックスは、その配合過程で架橋剤として硫黄及び加硫促進剤が必須成分で投入されるので、長期間接触するとき、使用者のアレルギー反応を誘発する問題があった。また、既存のニトリル系共重合体ラテックス手袋は、使用後に自然分解が難しいため、その廃棄物処理による深刻な環境汚染問題を発生させている。そのため、硫黄及び加硫促進剤を使用せず、埋め立てたときに自然分解が可能な生分解性を示すと共にラテックス手袋に要求される引張強度、伸び率、耐久性などの機械的物性を満足する生分解性ニトリル系共重合体ラテックス手袋の開発に対する社会的な要求が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書の記載事項は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本明細書の一つの目的は、硫黄及び加硫促進剤を使用せず、ポリエステルポリオールを架橋剤に用いて生分解性に優れたディップ成形用ラテックス組成物を提供することである。
【0005】
本明細書の他の一つの目的は、引張強度、伸び率、耐久性などの機械的物性に優れると共に生分解性を示すディップ成形用ラテックス組成物及びそれから製造されたディップ成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によると、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックス;及びポリエステルポリオール;を含む、ディップ成形用ラテックス組成物が提供される。
【0007】
一実施例において、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよい。
【0008】
一実施例において、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよい。
【0009】
一実施例において、前記エチレン性不飽和酸単量体は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよい。
【0010】
一実施例において、前記ポリエステルポリオールは、フタル酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、フタル酸系化合物とトリオール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とトリオール系化合物の反応物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記共役ジエン系単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として45~80重量%であってもよい。
【0012】
一実施例において、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として15~45重量%であってもよい。
【0013】
一実施例において、前記エチレン性不飽和酸単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として1~10重量%であってもよい。
【0014】
一実施例において、前記ポリエステルポリオールの含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~10重量部であってもよい。
【0015】
一実施例において、前記ポリエステルポリオールの酸価は、2.0以上であってもよい。
【0016】
他の一側面によると、(a)共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックスを準備する段階;(b)前記共重合体ラテックスにポリエステルポリオールを含む架橋剤組成物を添加する段階;及び(c)ディップ成形する段階を含む、ディップ成形品の製造方法が提供される。
【0017】
また他の一側面によると、上述したディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造された、ディップ成形品が提供される。
【0018】
一実施例において、前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群より選択される一つであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本明細書の一側面によるディップ成形用ラテックス組成物は、ポリエステルポリオールを含むことによって生分解性が優秀であり得る。
【0020】
本明細書の他の一側面によるディップ成形用ラテックス組成物及びディップ成形品は、引張強度、伸び率、耐久性などの機械的物性及び品質に優れると共に生分解性を示すことによって、環境にやさしい医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋などの製造に広く適用され得る。
【0021】
本明細書の一側面の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明又は請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、本明細書の一側面を説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は種々の異なる形態で具現することができる。したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において明細書の一側面を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略する。
【0023】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0024】
本明細書で数値的値の範囲が記載されたとき、これの具体的な範囲が異に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0025】
ディップ成形用ラテックス組成物
一側面によるディップ成形用ラテックス組成物は、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックス;及びポリエステルポリオール;を含むことができる。
【0026】
前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造した成形品は、ポリエステルポリオール由来の架橋構造を含むことができる。ポリエステルポリオールによる架橋構造は、ディップ成形品に優れた生分解性を付与すると共に従来の加硫された成形品と類似するレベルの機械的物性を有することができる。
【0027】
前記単量体混合物の組成によって共重合体ラテックスの特性とディップ成形品の物性を調節することができる。
【0028】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
ポリエステルポリオールは、カルボン酸系化合物と二つ以上のアルコール基を含む化合物が重合して製造されたものであってもよい。前記ポリエステルポリオールは、架橋剤に適用されて硫黄を代替することによって、使用者が発癌物質に露出されず、アレルギー反応を防止し、従来と同等乃至それ以上の機械的物性を有すると同時に着用感に優れたディップ成形品を提供することができる。前記ポリエステルポリオールは、前記共重合体ラテックスのカルボキシ基と反応して架橋構造を形成することができる。
【0032】
本明細書の非制限的な一例として、前記ポリエステルポリオールは、フタル酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、フタル酸系化合物とトリオール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とグリコール系化合物の反応物、アジピン酸系化合物とトリオール系化合物の反応物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記フタル酸系化合物は、例えば、フタル酸、フタル酸無水物、メチルフタル酸、イソフタル酸、イソフタル酸無水物、2-メチルイソフタル酸、4-メチルイソフタル酸、5-メチルイソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸無水物、ジメチルテレフタレート及びこれらのハロゲン化物などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記アジピン酸系化合物は、例えば、アジピン酸、アジピン酸無水物、エチレンアジペート、プロピレンアジペート、ブチレンアジペート、1,6-ヘキサンアジペート、ジエチレンアジペート及びこれらのハロゲン化物などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記グリコール系化合物は、例えば、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール(プロピレングリコール)、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジフェノール、1,3-ジフェノール、1,4-ジフェノール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキセンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記トリオール系化合物は、例えば、グリセロール、ベンゼントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(メチルアルコール)プロパン、トリス(メチルアルコール)エタン、トリス(メチルアルコール)ニトロプロパン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレンオキシドトリオール、ポリエステルトリオールなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記ポリエステルポリオールは、重量平均分子量が500~2,500g/mol、例えば、500g/mol、750g/mol、1,000g/mol、1,250g/mol、1,500g/mol、1,750g/mol、2,000g/mol、2,250g/mol、2,500g/mol又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。前記ポリエステルポリオールは、酸価が5.0以下、例えば、5.0、4.5、4.0又はそれ以下のものであってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記ポリエステルポリオールの酸価が5.0以下である場合、ディップ成形品の生分解性の確保に有利であり得る。また、前記ポリエステルポリオールは、酸価が2.0以上、例えば、2.0、2.5、3.0、3.5又はその以上のものであってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記ポリエステルポリオールの酸価が2.0以上である場合、ディップ成形品の耐久性がより改善され得る。前記ポリエステルポリオールは、OH価が25~500、例えば、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本明細書の非制限的な一例として、前記共役ジエン系単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として、45~80重量%、例えば、45重量%、47.5重量%、50重量%、52.5重量%、55重量%、57.5重量%、60重量%、62.5重量%、65重量%、67.5重量%、70重量%、72.5重量%、75重量%、77.5重量%、80重量%又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲を満足すれば、ディップ成形品の硬化が抑制されて着用感が優秀であり得る。
【0039】
本明細書の非制限的な一例として、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として15~45重量%、例えば、15重量%、17.5重量%、20重量%、22.5重量%、25重量%、27.5重量%、30重量%、32.5重量%、35重量%、37.5重量%、40重量%、42.5重量%、45重量%又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲を満足すれば、ディップ成形品の耐油性、引張強度が優秀であり得る。
【0040】
本明細書の非制限的な一例として、前記エチレン性不飽和酸単量体の含量は、前記共重合体ラテックスの総重量を基準として1~10重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲を満足すればディップ成形品の架橋構造が十分に形成されて機械的物性が優秀であり得る。
【0041】
本明細書の非制限的な一例として、前記共重合体ラテックスは、下記化学式1のように表現され得る。
【0042】
【化1】
【0043】
前記化学式1は、前記共重合体ラテックスの3種構成単位である共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位及びエチレン性不飽和酸単量体単位の一例を表現したものであって、前記共重合体がこれに限定されるものではない。また、前記化学式1は、便宜上各単位を順に示したものであって、前記共重合体は、各単位が前記化学式1の順序とは関係なく混合してランダムに分布されているか、使用者の必要によって少なくとも一部がブロック単位で分布されたものであってもよい。
【0044】
前記ポリエステルポリオールの含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.1~10重量部、例えば、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部、7.5重量部、8重量部、8.5重量部、9重量部、9.5重量部、10重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲を満足すれば、ディップ成形品の機械的強度が十分であると共に生分解性を有することができる。
【0045】
前記共重合体ラテックスのうちエチレン性不飽和酸単量体由来の構造と前記ポリエステルポリオールの重量比は、それぞれ1:0.15~0.75であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記エチレン性不飽和酸単量体1重量部に対して前記ポリエステルポリオールは、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。前記範囲を満足すれば、ディップ成形品の機械的強度がより優秀であり得る。
【0046】
ディップ成形品の製造方法
他の一側面によると、(a)共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体を含む単量体混合物を重合した共重合体ラテックスを準備する段階;(b)前記共重合体ラテックスにポリエステルポリオールを含む架橋剤組成物を添加する段階;及び(c)ディップ成形する段階を含む、ディップ成形品の製造方法が提供される。
【0047】
前記(a)段階で、共重合体ラテックスは、既に製造されたものを用いるか、重合を通じて準備することができる。
【0048】
共重合体ラテックスを重合して製造する場合、上述した事項を満足する単量体混合物から共重合体ラテックスを重合することができる。前記単量体混合物に乳化剤及び無機溶媒を投入して乳化重合を準備し、重合開始剤を投入して乳化重合を行うことができる。
【0049】
前記乳化剤は、イオン性界面活性剤であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記乳化剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよい。
【0050】
前記乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキシドスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエテル硫酸エステル塩及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよく、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate)及び二ナトリウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate)を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び二ナトリウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートを含む乳化剤を用いることによって、前記単量体混合物の凝固を防止し、重合反応の転換率を高めることができ、ラテックス組成物の機械的安定性、化学的安定性及び重合安定性を向上させ得る。前記乳化剤の含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.1~5重量部であってもよい。
【0051】
前記無機溶媒は、水であってもよく、例えば、イオン交換水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0052】
共重合体ラテックスの重合時に選択的に単量体混合物に分子量調節剤をさらに投入して重合を行うことができる。前記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよく、例えば、t-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記分子量調節剤をさらに投入する場合、その含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.1~1.0重量部であってもよい。
【0053】
前記乳化重合は、重合開始剤を投入して反応を開始する段階;重合禁止剤を投入して重合を停止する段階;及び未反応単量体を除去して固形分の濃度及びpHを調節して共重合体ラテックスを得る段階を含んで行うことができる。
【0054】
前記重合開始剤は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合開始剤の含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0055】
前記乳化重合は、活性化剤をさらに含んで行うことができる。前記活性化剤は、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。前記活性化剤をさらに投入する場合、その含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.01~0.3重量部であってもよい。
【0056】
前記乳化重合は、10~90℃で行われ得、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃又はこれらうち二つの温度の間の温度で行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記重合禁止剤は、前記重合反応の転換率が90%以上であるときに投入するものであってもよく、例えば、前記重合禁止剤は、前記重合反応の転換率が90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%又はこれらのうち二つの値の間の値であるときに投入するものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記重合禁止剤の例示としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属イオン、ナトリウムジメチルジチオカルバメート、ヒドロキノン誘導体、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合禁止剤の含量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0059】
前記共重合体ラテックスの重合後、pH調節剤、酸化防止剤、消泡剤などの添加剤を投入することによって適合する固形分の濃度及びpHで調節することができる。
【0060】
前記pH調節剤は、水酸化カリウム水溶液又はアンモニア水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
前記共重合体ラテックスは、固形分の濃度が30~60重量%、例えば、30重量%、32重量%、34重量%、36重量%、38重量%、40重量%、42重量%、44重量%、46重量%、48重量%、50重量%、52重量%、54重量%、56重量%、58重量%、60重量%又はこれらのうち二つの値の間の範囲であり、pH7~12、例えば、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0又はこれらのうち二つの値の間の範囲に調節され得るが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記共重合体ラテックスは、機械的安定性、生分解性及び重合安定性に優れているので、環境にやさしく安定的なディップ成形用ラテックス組成物の製造に適用され得る。
【0063】
前記(b)段階は、共重合体ラテックスに架橋剤を含む架橋剤組成物を添加してディップ成形用ラテックス組成物を製造する段階であってもよい。
【0064】
従来の通常的なディップ組成物には、硫黄、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)などの加硫剤及び加硫促進剤などが添加された後に加硫(vulcanization)工程を経ることによって架橋構造が形成され得る。通常的に、加硫促進剤は、カバーメート(carbamate)系列の化合物が用いられ得る。しかし、このようなカバーメート系列の化合物の場合、120℃以上の高温で架橋化が行われ得る。また、架橋化工程後、N-ニトロソアミン(N-nitrosamine)類の発癌物質が生成される得るだけでなく、カバーメート系列の化合物の使用は、IV型アレルギー(遅延型アレルギー)の原因となって、接触性皮膚炎のような症状を誘発し得る。
【0065】
これに反して、上述したディップ成形用ラテックス組成物は、硫黄(S)を代替して、ポリエステルポリオールを架橋剤として用いることができる。したがって、ポリオール化合物を架橋剤に用いることによって、N-ニトロソアミン(N-nitrosamine)類の発癌物質が生成されず、カバーメート系列の化合物の使用時に発生するIV型アレルギー症状(例えば、接触性皮膚炎)も防止することができる。
【0066】
また、前記ポリエステルポリオールを含む架橋剤組成物は、ディップ成形品に生分解性を付与することができるので、環境にやさしいディップ成形品を製造することができる。
【0067】
前記架橋剤組成物は、必要によってポリエステルポリオール以外に酸化亜鉛、二酸化チタン、老化防止剤、分散剤、pH調節剤、防腐剤、乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤及びキレート剤のうち少なくとも一つをさらに含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
例えば、前記架橋剤組成物は、ポリエステルポリオール以外に酸化亜鉛をさらに含むことができる。酸化亜鉛をポリオール化合物とともにディップ成形用組成物に含んで老化防止効果を向上させ得る。例えば、ディップ成形組成物に老化防止剤がさらに添加される場合、ポリオール化合物のみを含むよりポリオール化合物及び酸化亜鉛を全て含んで製造されたディップ成形品の耐老化性がより優秀であり得る。
【0069】
前記架橋剤組成物が酸化亜鉛を含む場合、その含量が共重合体ラテックス100重量部を基準として1.0~1.8重量部、例えば、1.0重量部、1.1重量部、1.2量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。前記範囲を満足すれば、ディップ成形品に適合する引張強度を有することができる。
【0070】
前記架橋剤組成物が酸化亜鉛を含む場合、その含量が共重合体ラテックス100重量部を基準として0.5~1.5重量部、例えば、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1.0重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部又はこれらのうち二つの値の間の範囲であってもよい。
【0071】
前記ディップ成形用ラテックス組成物にpH調節剤、酸化防止剤、消泡剤などの添加剤を投入することによって適合する固形分の濃度及びpHに調節することができる。
【0072】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、固形分の濃度が15~25重量%、例えば、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%又はこれらのうち二つの値の間の範囲であり、pH8~12、例えば、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0又はこれらのうち二つの値の間の範囲に調節され得るが、これに限定されるものではない。
【0073】
前記(c)段階は、ディップ成形用ラテックス組成物を用いてディップ成形品を製造する段階であってもよい。
【0074】
ディップ成形品の製造方法は、凝固溶液を製造する段階、前記凝固溶液をモールド(mold)に塗布した後乾燥する段階、前記凝固溶液が塗布されたモールドをディップ成形用ラテックス組成物にデイッピング(dipping)してディップ成形品を形成する段階、前記ディップ成形品を架橋する(curing)段階及び前記架橋されたディップ成形品を前記モールドから剥離してディップ成形品を収得する段階を含むことができる。このとき、ディップ成形用ラテックス組成物は上述したものを用いることができる。
【0075】
前記凝固溶液は、通常的なものを用いることができ、例えば、窒酸カルシウム(calcium nitrate、Ca(NO)を含むことができる。また、凝固溶液は、湿潤剤(例えば、Teric 320)などの添加剤をさらに含むことができる。凝固溶液をモールドに塗布する方式は、例えば、モールドを凝固溶液にデイッピング(dipping)する方式を含むことができる。
【0076】
一方、ディップ成形品を得るためのディップ成形方法として、例えば、直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法又はティーグ(Teague)凝着浸漬法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0077】
ディップ成形品
本明細書のまた他の一側面によるディップ成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたものであってもよい。
【0078】
前記ディップ成形品は、引張強度、伸び率、耐久性などの機械的物性に優れ、不良率が低く、触感など品質に優れているので、多様な分野のディップ成形品に適用され得る。
【0079】
前記ディップ成形品は、生分解性に優れているので、使用後に自然分解される多様な分野の環境にやさしいディップ成形品に適用され得る。
【0080】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群より選択される一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0081】
以下、本明細書の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容を縮小又は制限して解釈してはならない。下で明示的に提示しない本明細書の多くの具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0082】
製造例
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素ガスの引入口が具備されており、単量体、乳化剤、重合開始剤などの各構成要素を連続的に投入できるように装置された10L高圧反応器を準備した。前記反応器を窒素に置換した後、混合物の総重量を基準として、1,3-ブタジエン65重量%、アクリロニトリル30重量%、メタクリル酸5重量%である単量体混合物を投入した。その後、前記単量体混合物100重量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸2重量部、ナトリウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート1重量部、t-ドデシルメルカプタン0.5重量部、イオン交換水120重量部を投入した。前記反応器の温度を約25℃まで昇温させた後、過硫酸カリウムを0.3重量部投入した。
【0083】
転換率が約95%に至ったとき、ナトリウムジメチルジチオカルバメート(sodium dimethyldithiocarbamate)を0.1重量部投入して重合反応を停止させた。その後、脱臭工程を通じて未反応単量体などを除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤などを添加して固形分の濃度45重量%、pH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0084】
比較例1
製造例のラテックス100重量部に対して、硫黄1.0重量部、ZDBC(Zincdibutyldithiocarbamate)0.6重量部、酸化亜鉛1.4重量部、TiO 1.0重量部を添加した。4重量%の水酸化カリウム水溶液及び2次蒸溜水をさらに投入して固形分の濃度18重量%、pH10.0であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。
【0085】
実施例1
製造例のラテックス100重量部に対して、第1ポリエステルポリオール0.5~10重量部、酸化亜鉛1.4重量部、TiO 1.0重量部を添加した。4重量%の水酸化カリウム水溶液及び2次蒸溜水をさらに投入して固形分の濃度18重量%、pH10.0であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。
【0086】
-第1ポリエステルポリオール:無水フタル酸ジエチレングリコール(phthalic anhydride diethylene glycol、OH価65、酸価1.0、重量平均分子量1,000)
実施例2
製造例のラテックス100重量部に対して、第2ポリエステルポリオール0.5~10重量部、酸化亜鉛1.4重量部、TiO 1.0重量部を添加した。4重量%の水酸化カリウム水溶液及び2次蒸溜水をさらに投入して固形分の濃度18重量%、pH10.0であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。
【0087】
-第2ポリエステルポリオール:無水フタル酸ジエチレングリコール(phthalic anhydride diethylene glycol、OH価315、酸価4.0、重量平均分子量2,000)
実施例3
製造例のラテックス100重量部に対して、第3ポリエステルポリオール0.5~10重量部、酸化亜鉛1.4重量部、TiO 1.0重量部を添加した。4重量%の水酸化カリウム水溶液及び2次蒸溜水をさらに投入して固形分の濃度18重量%、pH10.0であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。
【0088】
-第3ポリエステルポリオール:ポリプロピレングリコールアジペート(polypropylene glycol adipate、酸価0.3以下、重量平均分子量1,850~2,150)
実施例4
製造例のラテックス100重量部に対して、第4ポリエステルポリオール1重量部、酸化亜鉛1.4重量部、TiO 1.0重量部を添加した。4重量%の水酸化カリウム水溶液及び2次蒸溜水をさらに投入して固形分の濃度18重量%、pH10.0であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。
【0089】
-第4ポリエステルポリオール:ポリジエチレングリコールアジペート(polydiethylene glycol adipate、酸価0.5以下、重量平均分子量1,850~2,150)
実験例1:機械的物性の評価
比較例1、実施例1~4によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物からASTM D-412に準じてダンベル形状の試験片を製作した。UTM(Universal Testing Machine)を用いて前記試験片を伸長速度500mm/minで伸長し、300%モジュラス、破断時の引張強度及び伸び率を測定して機械的物性を評価した。通常的に、ラテックス成形品の引張強度及び伸び率は、その数値が高いほどディップ品質が優秀であると評価する。各試験片の機械的物性の評価結果を下表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
前記表1を参考すると、硫黄の代わりにポリエステルポリオールを用いた実施例1~4のラテックスから製作した試験片は、硫黄を用いた比較例1のラテックスから製造した試験片と同等のレベルを維持した。
【0092】
実験例2:耐久性の評価
比較例1、実施例1~4によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物からディップ成形を通じて収得されたフィルムを20mm X 120mmの直四角形形態で裁断して試験片を製作した。前記試験片を人工汗(人工汗1リットル当たり塩化ナトリウム30g、塩化アンモニウム17g、クエン酸10g、乳酸10gを含み、水酸化ナトリウム溶液でpH4.2に合わせた溶液)に浸漬して試験片の耐久性を評価した。具体的に、試験片の下部及び上部を142mm距離のクランプに固定させ、試験片の下部80mmまで人工汗に浸漬した状態で試験片の上部を引き張った。その後、試験片を長手方向に192mmまで8.5秒にわたって伸ばした後、持続的に伸縮を繰り返し実行して試験片が破断するまでの時間を測定し、その結果を下表2に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
前記表2を参考すると、硫黄の代わりにポリエステルポリオールを用いた実施例1~4のラテックスから製作した試験片は、硫黄を用いた比較例1のラテックスから製造した試験片に比べても耐久性が優秀であることが確認できる。特に、実施例2のラテックスは、ポリエステルポリオールの酸価が2.0以上であって、より向上した耐久性を示すことが確認できる。
【0095】
実験例3:生分解性の評価
比較例1、実施例1~4によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物からASTM D-412に準じてダンベル形状の試験片を製作した。前記試験片を自然土壌に埋めた後に常温で一ヶ月間保管した。その後、試験片の物性を実験例1の方法によって試験し、その結果を下表3に示した。
【0096】
【表3】
【0097】
前記表3を参考すると、硫黄の代わりにポリエステルポリオールを用いた実施例1~4のラテックスから製作した試験片は、硫黄を用いた比較例1のラテックスから製造した試験片とは異なり生分解性により引張強度と伸び率が全て大幅に減少したことが確認できる。
【0098】
前述した本明細書の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の一側面が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能である。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0099】
本明細書の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。