(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20240315BHJP
H01M 50/375 20210101ALI20240315BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240315BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240315BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240315BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/342 101
H01M50/375
H01M50/209
H01M50/291
H01M50/293
(21)【出願番号】P 2022501783
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004169
(87)【国際公開番号】W WO2021166667
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020025427
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-100273(JP,A)
【文献】特開2008-204816(JP,A)
【文献】特開2016-054127(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073403(WO,A1)
【文献】特開2013-241524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラプチャー弁が設けられたセルを複数含むセルユニットと、凹部を備えるスペーサーとを有し、
前記ラプチャー弁と前記凹部とが対向して配置されて、前記セルユニットが前記スペーサーに覆われ、
前記凹部が、前記スペーサーのラプチャー弁と対向する一方の表面側で開口し、
前記凹部内面のうち、前記スペーサーと前記セルとが接している部分に囲まれた面である底面に対して垂直方向である深さ方向に前記一方の表面に対して対向する表面である他方の表面側で閉塞しており、
前記凹部の深さが0.5mmより大きく、
前記スペーサーが樹脂を含み、
隣り合う前記セル間に、前記スペーサーからなる壁部が設けられる、
ことを特徴とするリチウムイオン電池モジュール。
【請求項2】
ラプチャー弁が設けられたセルを複数含むセルユニットと、凹部を備えるスペーサーとを有し、
前記ラプチャー弁と前記凹部とが対向して配置されて、前記セルユニットが前記スペーサーに覆われ、
前記凹部が、前記スペーサーのラプチャー弁と対向する一方の表面側で開口し、
前記凹部内面のうち、前記スペーサーと前記セルとが接している部分に囲まれた面である底面に対して垂直方向である深さ方向に前記一方の表面に対して対向する表面である他方の表面側で閉塞しており、
前記スペーサーが樹脂を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池モジュール。
【請求項3】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項4】
前記凹部の底面の中心を通る凹部の深さ方向に切断した断面において、該深さ方向に垂直方向の凹部内面距離が、前記ラプチャー弁から離れるにつれて漸減する、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項5】
前記スペーサーがUL-94規格V-0を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項6】
前記スペーサーが発泡体からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項7】
前記発泡体がビーズ発泡体からなる、請求項6に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等において、リチウムイオン二次電池が使用されることが多くなってきている。
従来より、リチウムイオン二次電池(LIB)の開発における一つの課題として、LIBが暴走する際の対策が挙げられる。LIBは充電・放電時や、意図せず破損等が起きた場合に、膨張し最悪の場合には内容物が噴出し、着火源があれば爆発につながることが知られている。特に、電気自動車等の大量にLIBを積載する用途においては、一つのLIBが暴走してしまったとしても、他のセルにその暴走が伝播しないこと(誘爆防止)が必要となっている。
【0003】
LIBの暴走を抑制するリチウムイオン電池としては、特許文献1のリチウムイオン電池モジュールが知られている。また、電解液が発火した場合でも延焼を防止できる材料として、特許文献2の二次電池用発泡体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-91628号公報
【文献】特開2013-241524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリチウムイオン電池モジュールには、LIBセルが暴走した際に発生する高温のガスが、他のLIBセルへ熱を加えないように、LIB上部に逆流防止用のシートを配置する方法が記載されている。しかしながら、シートへの細かい形状の作りこみが必要な点や、シートに開口部が存在するため原理的に完全には高温のガスの逆流防止が不可能であった。
特許文献2に記載の二次電池容器用発泡体は、電池モジュールについて何ら記載がない。
従って、リチウムイオン電池では、暴走した場合でも他のセルにその暴走が伝播しにくく、安全性の高い電池モジュールが求められているのが現状である。
【0006】
従って、本発明の目的は、暴走した場合でも他のセルにその暴走が伝播しにくく、安全性の高いリチウムイオン電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1]
ラプチャー弁が設けられたセルを複数含むセルユニットと、凹部を備えるスペーサーとを有し、
前記ラプチャー弁と前記凹部とが対向して配置されて、前記セルユニットが前記スペーサーに覆われ、
前記凹部が、前記スペーサーのラプチャー弁と対向する一方の表面側で開口し、前記凹部内面のうち、前記スペーサーと前記セルとが接している部分に囲まれた面である底面に対して垂直方向である深さ方向に前記一方の表面に対して対向する表面である他方の表面側で閉塞しており、
前記凹部の深さが0.5mmより大きく、
前記スペーサーが樹脂を含み、
隣り合う前記セル間に、前記スペーサーからなる壁部が設けられている、
ことを特徴とするリチウムイオン電池モジュール。
[2]
ラプチャー弁が設けられたセルを複数含むセルユニットと、凹部を備えるスペーサーとを有し、
前記ラプチャー弁と前記凹部とが対向して配置されて、前記セルユニットが前記スペーサーに覆われ、
前記凹部が、前記スペーサーのラプチャー弁と対向する一方の表面側で開口し、前記凹部内面のうち、前記スペーサーと前記セルとが接している部分に囲まれた面である底面に対して垂直方向である深さ方向に前記一方の表面に対して対向する表面である他方の表面側で閉塞しており、
前記スペーサーが樹脂を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池モジュール。
[3]
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、[1]又は[2]に記載のリチウムイオン電池モジュール。
[4]
前記凹部の底面の中心を通る凹部の深さ方向に切断した断面において、該深さ方向に垂直方向の凹部内面距離が、前記ラプチャー弁から離れるにつれて漸減する、[1]~[3]のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュール。
[5]
前記スペーサーがUL-94規格V-0を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュール。
[6]
前記スペーサーが発泡体からなる、[1]~[5]のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュール。
[7]
前記発泡体がビーズ発泡体からなる、[6]に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明は暴走した場合でも他のセルにその暴走が伝播しにくく、安全性の高いリチウムイオン電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本実施形態のリチウムイオン電池モジュールの一例を示す概略図である。
図1Aは概略斜視図であり、
図1Bは
図1AのX-X断面図(凹部31の深さ方向に切断した断面)である。
【
図1B】本実施形態のリチウムイオン電池モジュールの一例を示す概略図である。
図1Aは概略斜視図であり、
図1Bは
図1AのX-X断面図(凹部31の深さ方向に切断した断面)である。
【
図3】スペーサーの底面の一例を示す概略斜視図である。
【
図4】本実施形態のリチウムイオン電池モジュールの、凹部とラプチャー弁との位置関係の一例を示す概略図である。
【
図6】実施例、比較例の蒸気誘導効果の測定方法を説明する概略図である。
【
図7】実施例、比較例の蒸気誘導効果の測定方法を説明する概略図である。
【
図8】蒸気誘導効果の評価における熱収縮発生箇所の長さの測定個所を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(本明細書において、「本実施形態」という)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
以下、図面を参照して、本実施形態のリチウムイオン電池モジュールについて、例示説明する。
【0011】
本実施形態のリチウムイオン電池モジュールは、ラプチャー弁が設けられたセルを複数含むセルユニットと、凹部を備えるスペーサーとを有し、前記ラプチャー弁と前記凹部とが対向して配置されて、前記セルユニットが前記スペーサーに覆われ、前記凹部の深さが0.5mmより大きく、前記スペーサーが樹脂を含み、隣り合う前記セル間に、前記スペーサーからなる壁部が設けられている。
すなわち、本実施形態のリチウムイオン電池モジュールは、セルユニットのセルが並ぶ方向において、セル/壁部(スペーサー)/セルの積層構造が含まれる(
図1)。上記壁部は、セルの側面の一部に設けられていてもよいし(
図1A)、セルの側面全体に設けられていてもよい。また、隣り合うセル間が複数存在する場合、少なくとも一部のセル間に壁部が設けられていればよく、すべてのセル間に設けられていることが好ましい。また、各セル間の壁部の大きさは同じであってもよいし異なっていてもよい。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池モジュールを、単に「モジュール」と称する場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態のリチウムイオン電池モジュール1の一例であり、上記セルユニット2とスペーサー3とを含む。
図2は、
図1のセルユニット2を鉛直方向上側から見たセルユニットの上面図であり、
図3は
図1のスペーサー3を鉛直方向下側の方向から見たスペーサー3の斜視図である。
図1~3において、鉛直方向がz方向、z方向に垂直であってセル21が並ぶ方向がx方向、z方向に垂直であってセル21の長さ方向がy方向である。
上記モジュール1は、上記セルユニット2と上記スペーサー3とのみから構成されていてもよいし、上記セルユニット2と上記スペーサー3と任意の他の部品とが収納容器等に収納されていてもよい。上記他の部品としては、コネクタ、プラグ、コード、ケーブル、バスバー、スイッチ類、コンデンサ、コイル、ソケット、配線基板、集積回路、制御基板、センサー類、電動機、冷却装置、加熱装置等が挙げられる。
【0013】
(セルユニット)
上記セルユニットは、少なくとも1つのセル21から構成されていてよい(
図1、2)。
複数のセル21を含む場合、各セルの寸法は、同じであってもよいし(
図1)、異なっていてもよい。中でも、スペーサーやセルの製造が容易になる観点、収納容器へ収納しやすくなる観点、収納容器へ収納する場合に不要なスペースを削減しやすい観点から、寸法が同じであることが好ましい。
【0014】
上記セル21の形状としては、特に限定されず、直方体状であってもよいし(
図1)、円柱、多角形柱等の形状であってもよい。また、セルの内容物を、アルミを主材とするシート等でラミネートしたパウチ状の形状であっても良い。
上記セル21が直方体形状の場合の寸法としては、例えば、幅方向(例えば、
図1のx方向)が1~200mm、長さ方向(例えば、
図1のy方向)が1~500mm、高さ方向(例えば、鉛直方向、
図1のz方向)が1~500mmであってよい。
【0015】
上記セルユニット2に含まれる少なくとも1つの上記セル21は、ラプチャー弁22が設けられている。上記セルユニット2に含まれる全てのセル21にラプチャー弁22が設けられていてもよいし、一部のセル21に設けられていてもよいが、セルユニットの安全性を向上させる観点から全てのセル21にラプチャー弁が設けられていることが好ましい。
なお、ラプチャー弁とは、セル内部で発生した高圧のガスや蒸気等が一定以上の圧力を超えた場合に、ガスや蒸気等をセル外部に排出するための弁を指し、セル内部の圧力が高まってセルが破裂するのを防ぐことを目的として設けられる。
【0016】
上記セル21に設けられるラプチャー弁の数は、1個であってもよいし(
図1、2)、複数個であってもよい。中でも、製造容易性の観点、及び高温蒸気やガス等を排出したセルに対向するスペーサーの凹部上面が溶融しやすくなる観点から1個であることが好ましい。
【0017】
上記セル21のラプチャー弁22が設けられる位置としては、セル内で発生した熱、ガス、蒸気等が外に放出される位置であれば特に限定されない。中でも、セルが暴走した際に発生する高温の蒸気、ガスをセル外へ放出するための流路を設計しやすいため、セル21の鉛直方向(例えば、
図1のz方向)の上側の表面に設けられることが好ましい(
図1、2)。
各セル21のラプチャー弁の数、ラプチャー弁が設けられる位置は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0018】
ラプチャー弁22の構造としては、セル内部の圧力が高まるとセル外部へ内部のガス、蒸気等が放出する構造であることが好ましい。
【0019】
ラプチャー弁22の形状としては、特に限定されず、例えば、鉛直方向上側から見て、略円状、略多角形状等の形状であってよい。
ラプチャー弁22の寸法としては、発生する蒸気やガス等を誘導する方向を規定しやすい観点、高温蒸気やガス等を排出したセルに対向するスペーサーの凹部上面が溶融しやすくなる観点から、鉛直方向上側から見た形状の2つの外端を結ぶ線分のうち、最大長さの線分が100mm以下であることが好ましく、0.1~50mmであることがより好ましい。上記最大長さの線分は、例えば、円である場合直径であり、四角形である場合対角線である。
【0020】
上記セル21は、正極と負極とを有する。
複数のセル21を含む場合は、すべてのセル21の電極が電気的に接続されていてもよいし(
図1、2)、一部のセル21の電極が電気的に接続されていてもよいし、各セル21が電気的に独立していてもよい。電気的な接続は、例えば、バスバー等を用いてセルの電極同士を接続する方法等が挙げられる(
図1、2)。上記バスバー4を構成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、アルミ、銅、アルミや銅を含む合金等が挙げられる。
【0021】
セルユニット2中の隣り合うセル21は、間隔をあけて配置されていてもよいし(
図1、2)、接していてもよい。中でも、暴走したセル21の高熱蒸気やガス等が、隣のセルに伝播しにくくなる観点から、間隔をあけて配置されることが好ましい。またセルとセルの間にスペーサー等を配置してもよい。
隣り合うセルの間隔としては、0.01mm~50mmが好ましく、より好ましくは0.1mm~30mmである。
【0022】
上記セルユニット2の寸法は、セル21の個数や隣り合うセル21の間隔等によって任意に決めることが出来るが、例えば、幅方向(一方端に位置するセル21の幅方向の一方の端から他方端に位置するセル21の幅方向の他方の端までの長さ)が1mm~1000mmであってよく、長さ方向及び高さ方向は1mm~500mmであってよい。
【0023】
(スペーサー)
上記スペーサー3は、セルユニットの断熱性が向上し、空気に触れるセルユニット表面が減ることで結露しにくくなるという観点、セル暴走時にラプチャー弁から排出され得る蒸気やガスが意図しない方向に誘導されることを防止しやすくなる観点から、上記セルユニット2に含まれるセル21の少なくとも一部と接していることが好ましく、少なくとも凹部の底面でセル21と接していることがより好ましい。また、スペーサー3の凹部31を除く部分の少なくとも一部(例えば、凹部底面の周囲を含む少なくとも一部)と、セル21の上面(例えば、セル21のラプチャー弁が設けられている面)の少なくとも一部と、が接していることがより好ましい。中でも、暴走したセル21の高熱蒸気やガス等が、他のセルに伝播しにくくなる観点から、凹部31を除き、セル21の上面の全体及び側面の一部と、スペーサー3と、が接していることが好ましい。
【0024】
上記スペーサー3の形状は、上記セルユニット2の少なくとも一部のラプチャー弁22を覆うことができる形状であれば特に限定されない。中でも、隣接するセルに暴走が一層伝播しにくくなる観点から、全てのラプチャー弁22を覆うことが好ましい(
図1、3)。
【0025】
上記スペーサー3は、上記セルユニット2に含まれるセル21のラプチャー弁22が存在する方向(例えば、
図1のz方向)の、セルユニット2の表面の少なくとも一部を覆うことが好ましく、セル21の表面の少なくとも一部を覆うことがより好ましく、該表面に加えて各セル21の側面の少なくとも一部も覆うことがさらに好ましい。また、セルユニット全体を覆ってもよい。なお、セル21の側面とスペーサー3とが接している部分を壁部と呼ぶ。壁部が形成されていると、暴走したセルから周囲のセルへ高温の蒸気やガス等が拡散することを防止しやすくなり、特にすべての隣り合うセル間に壁部が形成されていると、周囲への暴走の伝播を効果的に防止しやすい。
中でも、隣接するセルに暴走が伝播しにくい構造を簡易に形成できる観点、セルユニット組み立て時の組み立て負荷を軽減する観点、セル暴走時に発生する蒸気やガス等の排出方向を誘導しやすい観点から、各セル21の、ラプチャー弁22が存在する表面から鉛直方向高さ100%に対して1%以上、好ましくは5%以上100%以下、より好ましくは10%以上100%以下の位置までの側面を覆うことが好ましい(
図1、3)。
また、結露発生時にショートの原因となりやすい電極付近を覆うことで、防水、防塵、部品固定機能が向上する観点から、スペーサーが電極部の少なくとも一部を覆うことが好ましい(
図1)。
なお、ラプチャー弁22の存在する方向とは、セル21に設けられたラプチャー弁が存在する面を上面としたときの鉛直上向きの方向をいう。
【0026】
上記スペーサー3は、各セル21の上面及び側面を覆う溝32を有することが好ましい(
図3)。セルユニット2に含まれるセル21の数の上記溝が設けられることが好ましく、上記溝に、凹部が設けられることが好ましい。
【0027】
上記スペーサー3は、セル21の電極、及び各セル21の電極を電気的に接続するバスバー4を覆ってもよい(
図1、3)。セルの電極は、上記溝で覆われてよい。また、上記スペーサー3がビーズ発泡体から成る場合、発泡体の成形時にバスバー等の部品を金型にインサートして一体成形しても良い。
【0028】
上記スペーサー3は、少なくとも凹部31を有する。
上記凹部の形状としては、例えば、円錐状、多角錐状等の錐体形状、円錐台状、多角錐台状等の錘台形状、円柱状、多角柱状、球状等が挙げられ、ラプチャー弁から排出された蒸気やガス等を特定方向(例えば、鉛直上方向)に誘導しやすい観点から、凹部の底面の中心を通る凹部の深さ方向に切断した断面において、深さ方向に垂直方向の凹部内面距離が、上記ラプチャー弁から離れるにつれて漸減する形状であることが好ましく、錐体又は錘台形状がより好ましく、略円錐体又は略円錐台形状がさらに好ましい(
図4(a)(b)、
図5(a))。
なお、凹部31の底面は、例えば、凹部内面のうち、スペーサー3とセル21とが接している部分に囲まれた面としてよい。例えば、凹部が錐体、錘台である場合、開口部を底面としてよく、貫通孔である場合、ラプチャー弁側の開口部を底面としてよい。
凹部の底面の中心とは、凹部の底面の重心としてよく、例えば、凹部の底面が円である場合は中心、四角形である場合は対角線の交点としてよい。また、凹部の深さ方向は、鉛直方向であることが好ましい。また、凹部内面距離とは、凹部が形成する内空間の表面の2点に挟まれた距離をいう。
【0029】
上記凹部31は、各セル21のラプチャー弁22と対向する位置に配置される。
上記凹部31は、深さ方向に見たときに、ラプチャー弁22表面の少なくとも一部が、凹部の底面に含まれるように位置することが好ましく(
図4(a)(b))、ラプチャー弁22表面全体が凹部の底面に含まれるように位置することが好ましい(
図4(a))。
また、凹部31の位置としては、凹部の底面の中心を通る鉛直方向に切断した断面において、凹部底面の中心を含む位置にラプチャー弁22が配置されるように位置することが好ましい(
図4(a))。
【0030】
上記凹部31の深さは、蒸気を誘導しやすい観点、蒸気やガス等の逆流を防止しやすい観点から、0.5mmより大きく、1mm~50mmmmであることが好ましく、より好ましくは2mm~40mmである。
凹部の深さとは、凹部の底面から凹部の頂点までの、底面に対して垂直方向長さのうち、最も長い距離としてよい。例えば、スペーサー3とセルユニット2とが接する面が水平方向である場合、鉛直方向長さとしてよい。また、凹部が貫通孔の場合は、一方の開口部から他方の開口部までの一方の開口部に対して垂直方向長さのうち最も長い距離としてよい。なお、凹部の頂点は、必ずしも1点に限定されず、平面等であってもよい。例えば、凹部形状が円錐の場合凹部の頂点は1点であり、円錐台の場合は凹部の頂点は円である。
【0031】
上記凹部31の体積としては、セル内部から排出した蒸気やガス等の方向を誘導しやすい観点から0.5~400000mm3であることが好ましく、より好ましくは1~200000mm3、さらに好ましくは10~100000mm3である。
上記凹部の体積とは、凹部底面と凹部内面とに囲まれた空間(即ち、凹部が形成する内空間)の体積としてよい。なお、貫通孔の場合は、二つの開口部と凹部内面とに囲まれた空間の体積としてよい。
【0032】
上記凹部31の内面の形状としては、底面から凹部の頂点(例えば、凹部の深さが最大となる点)に向かって、直線状であってもよいし(
図4(a)(b)、
図5(a)(b)(c))、曲線状であってもよい。
また、凹部内面の傾きαとしては、任意の角度としてよいが、セル内部から排出した蒸気やガス等を特定方向(例えば、鉛直上方向)に一層誘導しやすくなる観点から、凹部の底面の中心を通る鉛直方向に切断した断面において、10~170°であることが好ましく、より好ましくは10~90°、さらに好ましくは10~85°である。
なお、傾きαは、凹部内面と凹部底面とがなす凹部内部空間側の角度としてよい(
図5(a)(b)(c))。
【0033】
上記凹部は、セル内部から排出した蒸気やガス等が直接凹部の頂点にあたり、凹部の頂点を溶融及び/又は収縮させやすくなる観点から、ラプチャー弁の鉛直上方向に凹部の頂点が位置することが好ましい。セル暴走時の蒸気やガスは、圧力により凹部を貫通して排出してもよいし、熱によって凹部を融解・貫通させて排出してもよいが、圧力で貫通させる場合には気密構造をとる必要があるため、特別な気密構造を設ける必要がない観点から、熱で貫通させる構造が好ましい。
【0034】
上記凹部31は、スペーサーを貫通する孔(例えば、円柱状の貫通孔、多角形状の貫通孔等)であってもよいし、スペーサーの一方の面のみで開口する窪みであってもよい。中でも、上記凹部31は、スペーサー3を貫通しない構造であることが好ましく、スペーサー3のラプチャー弁22と対向する一方の表面側で開口し、スペーサー3の他方の表面側で閉塞している構造がより好ましい(
図1B、3)。
【0035】
セル内部から排出された蒸気やガス等によって、凹部内表面のスペーサーを溶融及び/又は収縮させ、凹部を貫通孔に変形させて、排出した蒸気やガス等をスペーサー外部へ放出できる構造であることが好ましい。
上記凹部31は、例えば、セル内部から排出された蒸気やガス等により、凹部の頂点のスペーサーが溶融及び/又は収縮し、蒸気やガス等が排出された凹部のみが変形(例えば、貫通孔等に変形)する構造であってよい。これにより、1つのセルが暴走した場合でも、暴走セルの蒸気やガス等を外部へ放出してセルユニットの温度急上昇を抑え、且つ、他のセルに暴走が一層伝播しにくくなることで安全性がより向上する。
上記凹部31の頂点から、スペーサー3のセル21と対向する面と反対側の表面までの、鉛直方向長さとしては、500mm以内が好ましく、より好ましくは0.5~500mmmm、さらに好ましくは1~100mmである。鉛直方向長さを上記範囲とすることで、蒸気等が凹部に排出される際に凹部を貫通孔に変形しやすくなるとともに、一定の厚みを付与することで他のセルへの影響を小さくすることができ、安全性が一層向上する。
【0036】
上記スペーサーを有するLIBモジュールは、セルから排出された蒸気やガス等を外部へ導くための蒸気排出用ダクトを有していてもよく、蒸気やガス等が排出されて変形した凹部のみが、該ダクトに連通するように変形する構造であることが好ましい。上記凹部と上記管との最短距離としては、500mm以内が好ましく、より好ましくは1~500mmmm、さらに好ましくは1~100mmである。
【0037】
上記スペーサー3は樹脂を含む。上記スペーサー3は、樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
【0038】
上記樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、中でも、セル内部から排出された蒸気によってスペーサーの凹部を変形させながら蒸気やガス等を排出しやすい観点から熱可塑性樹脂が好ましく、より好ましくはポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネートである。
上記樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。また、スペーサーの異なる部分で異なる樹脂を用いてもよい。例えば、凹部の頂点はガラス転移温度が低い樹脂を使用し、他の部分はガラス転移温度が高い樹脂を用いてもよい。
【0039】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、下記一般式(1)で表される重合体であってよい。
ここで、式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲンと一般式(1)中のベンゼン環との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基若しくはハロアルコキシ基で第3α-炭素を含まないもの、を示す。また、式(1)中、nは、重合度を表す整数である。
【化1】
【0040】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジラウリル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-ジフェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メトキシ-6-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-ステアリルオキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジベンジル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。この中でも特に、R1及びR2が炭素数1~4のアルキル基であり、R3及びR4が水素若しくは炭素数1~4のアルキル基のものが好ましい。
これらは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、20,000~60,000であることが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、樹脂についてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンについての測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量をいう。
【0042】
ポリスチレン系樹脂とは、スチレン及びスチレン誘導体のホモポリマー、スチレン及びスチレン誘導体を主成分(ポリスチレン系樹脂中に50質量%以上含まれる成分)とする共重合体をいう。
スチレン誘導体としては、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ジフェニルエチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0043】
ホモポリマーのポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリクロロスチレン等が挙げられる。
共重合体のポリスチレン系樹脂としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイミド共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体、スチレン-N-アルキルマレイミド共重合体、スチレン-N-アルキル置換フェニルマレイミド共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メチルアクリレート共重合体、スチレン-メチルメタクリレート共重合体、スチレン-n-アルキルアクリレート共重合体、スチレン-n-アルキルメタクリレート共重合体、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体等の二元共重合体;ABS、ブタジエン-アクリロニトリル-α-メチルベンゼン共重合体等の三元共重合体;スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン-酢酸ビニル共重合体、(スチレン-アクリル酸)グラフトポリエチレン、スチレングラフトポリアミド等のグラフト共重合体;等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本実施形態におけるポリスチレン系樹脂の含有量は、上記樹脂組成物中に含まれる樹脂成分100質量%に対して、10~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20~70質量%である。
【0045】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、プロピレン-エチレン共重合体等の樹脂が挙げられる。また、これらのポリエチレン系樹脂は、架橋剤等により適宜架橋構造を有していてもよい。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体、これらの混合物が挙げられる。ポリアミド系樹脂には、アミノカルボン酸の自己縮合、ラクタムの開環重合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により得られる重合体を含んでよい。
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸との重縮合により得られる、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン1212等、ラクタムの開環重合により得られるナイロン6、ナイロン12等が挙げられる。
ポリアミド共重合体としては、例えば、ナイロン6/66、ナイロン66/6、ナイロン66/610、ナイロン66/612、ナイロン66/6T(Tは、テレフタル酸成分を表す)、ナイロン66/6I(Iは、イソフタル酸成分を表す)、ナイロン6T/6I等が挙げられる。
これらの混合物としては、例えば、ナイロン66とナイロン6との混合物、ナイロン66とナイロン612との混合物、ナイロン66とナイロン610との混合物、ナイロン66とナイロン6Iとの混合物、ナイロン66とナイロン6Tとの混合物等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記スペーサー3は、さらに添加剤を含んでいてもよい。すなわち、上記樹脂組成物はさらに添加剤を含んでいてよい。
添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、可塑剤、離型剤、染顔料、ゴム成分等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0048】
上記難燃剤としては、例えば、有機系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。
有機系難燃剤としては、臭素化合物に代表されるハロゲン系化合物や、リン系化合物やシリコーン系化合物に代表される非ハロゲン系化合物等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムに代表される金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンに代表されるアンチモン系化合物等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記難燃剤の中でも、環境性の観点から、有機系難燃剤の非ハロゲン系難燃剤が好ましく、リン系の難燃剤、シリコーン系の難燃剤がより好ましい。
【0050】
リン系の難燃剤には、リン又はリン化合物を含むものを用いることができる。リンとしては赤リンが挙げられる。また、リン化合物として、リン酸エステルや、リン原子と窒素原子の結合を主鎖に有するホスファゼン化合物等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート等が挙げられ、また、これらを各種の置換基で変性したタイプのリン酸エステル化合物や、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物も挙げられる。
この中でも、耐熱性、難燃性、発泡性の観点から、トリフェニルホスフェートや縮合タイプのリン酸エステル化合物が好ましい。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、シリコーン系難燃剤としては、(モノ又はポリ)オルガノシロキサンが挙げられる。
(モノ又はポリ)オルガノシロキサンとしては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のモノオルガノシロキサン;これらを重合して得られるポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン;これらの共重合体等のオルガノポリシロキサン;等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンの場合、主鎖や分岐した側鎖の結合基は、水素、アルキル基、フェニル基であり、好ましくはフェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基であるが、これに限定されない。末端結合基は、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基であってよい。
シリコーン類の形状には、特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状等の任意の形状が利用可能である。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
ゴム成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
これらは、ポリスチレン系樹脂からなる連続相中に粒子状に分散しているものが好ましい。
これらゴム成分を添加する方法として、ゴム成分そのものを加えてもよく、スチレン系エラストマーやスチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂をゴム成分供給源として用いてもよい。
【0053】
ゴム成分を添加する場合、ゴム成分の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~15質量%である。0.2質量%以上であると、樹脂組成物の柔軟性や伸びに優れ、特に発泡させて発泡体とする時に発泡セル膜が破膜しにくく、成形加工性や機械強度に優れる発泡体が得られやすい。
【0054】
上記スペーサーの難燃性を向上させるためには、樹脂組成物に難燃剤をより多く添加する方が好ましいが、難燃剤の添加量が増えると発泡性に悪影響を与える。そのような場合において、樹脂組成物に発泡性を付与させるのにゴム成分は好適に用いられる。特に、常温から徐々に温度を上げ、非溶融状態で樹脂を発泡させるビーズ発泡において、上記ゴム成分は重要である。
【0055】
添加剤の含有量としては、樹脂組成物100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%超30質量%以下である。
【0056】
上記スペーサー3は、発泡体(好ましくは独立気泡発泡体)からなることが好ましい。発泡体であると、軽量性や断熱性が高く、さらに暴走セルの蒸気やガスとともに接した場合に溶けやすい。
また、スペーサー3の熱伝導性は、スペーサー3に含まれる空気の体積が大きくなるほど低くなる傾向がある。そのため、発泡体を用いることによって、1つのセルから高温蒸気やガス等が排出した場合でも、隣接するセルに熱が伝わりにくくなり、安全性が一層向上する。
【0057】
上記発泡体の発泡倍率は、3.0~50cm3/gであることが好ましく、より好ましくは3.0~30cm3/g、さらに好ましくは3.0~25cm3/gである。発泡倍率が上記範囲であると、軽量性や断熱性のメリットを活かしつつ、優れた剛性を維持しやすくなる傾向にある。
なお、発泡倍率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
発泡体としては、例えば、押出発泡体、射出発泡体、ビーズ発泡体(発泡粒子からなる発泡体)、延伸発泡体、溶剤抽出発泡体等が挙げられ、それぞれ後述する押出発泡法、射出発泡法、ビーズ発泡法、延伸発泡法、溶剤抽出発泡法により製造された発泡体を指す。
上記発泡体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、押出発泡法、射出発泡法、ビーズ発泡法(型内発泡法)、延伸発泡法、溶剤抽出発泡法等が挙げられる。
押出発泡法は、押出機を用いて溶融状態の樹脂に有機又は無機発泡剤を圧入し、押出機出口で圧力を開放することによって、一定の断面形状を有する、板状、シート状、又は柱状の発泡体を得る方法である。
射出発泡法は、発泡性を備える樹脂を射出成形し、金型内にて発泡させることによって、空孔を有する発泡体を得る方法である。
ビーズ発泡法(型内発泡法)は、発泡粒子を型内に充填し、水蒸気等で加熱して発泡粒子を膨張させると同時に発泡粒子同士を熱融着させることによって、発泡体を得る方法である。
延伸発泡法は、予めフィラー等の添加剤を樹脂中に混錬させておき、樹脂を延伸させることでマイクロボイドを発生させて発泡体を作る方法である。
溶剤抽出発泡法は、樹脂中に所定の溶剤に溶解する添加剤を添加しておき、成形品を所定の溶剤に浸して添加剤を抽出させて発泡体を作る方法である。
【0059】
押出発泡の場合、得られる発泡体は板状、シート状等となり、これを加工するには所望の形状に切断する抜き工程や、切り取ったパーツを貼り合わせる熱貼り工程等が必要になる。
一方、ビーズ発泡法の場合、所望の形状の型を作製し、そこに発泡粒子を充填させて成形するため、発泡体をより微細な形状や複雑な形状に成形しやすい。ビーズ発泡の場合、例えば、一つの発泡体の中にリブ形状やフック形状を複雑に組み合わせることができ、これにより、発泡体をスペーサーとしてのみではなく、スペーサーやその他部品をビスレスで固定する保持材として用いることが可能になる。ビスレス化することにより、工程の簡略化や部品点数の削減化の効果があり、コストや重量の低減にも大きく貢献する。
射出発泡法の場合でも、発泡体を複雑な形状に成形することは可能であるが、ビーズ発泡法の場合には、発泡体の発泡倍率を高めやすく、断熱性に加えて柔軟性を発現しやすい。
【0060】
上記発泡体は、ビーズ発泡法により製造されることが好ましく、ビーズ発泡体からなることが好ましい。ビーズ発泡法を用いて成形を行うことによって、スペーサーの賦形性を向上させることができる。
【0061】
発泡剤としては、特には限定されず、一般的に用いられているガスを使用することができる。
その例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の無機ガス;トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)ジクロロフルオロエタン(R141b)クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC-245fa、HFC-236ea、HFC-245ca、HFC-225ca等のフルオロカーボン;プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルi-ブチルケトン、メチルn-アミルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、エチルn-プロピルケトン、エチルn-ブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステル等のカルボン酸エステル類;塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類;等が挙げられる。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
難燃性の観点から、発泡剤は可燃性や支燃性がないか又は少ないことが好ましく、ガスの安全性の観点から、無機ガスがより好ましい。また、無機ガスは、炭化水素等の有機ガスに比べて樹脂に溶けにくく、発泡工程や成形工程の後に樹脂からガスが抜けやすいので、成形後の発泡体の経時での寸法安定性がより優れる利点もある。更に、無機ガスを用いた場合、残存ガスによる樹脂の可塑化も起こりにくく、熟成等の工程を経ずに、より早い段階から優れた耐熱性を発現しやすいメリットもある。無機ガスの中でも、樹脂への溶解性、取り扱いの容易さの観点から、炭酸ガスが好ましい。また、炭化水素系の有機ガスは一般に可燃性が高く、発泡体中に残存した場合に難燃性が悪化する傾向にある。
【0063】
上記発泡体を目的の形状に加工する方法としては、特には限定されないが、発泡ビーズや溶融樹脂を金型に充填し成形する方法や、鋸刃や型ぬき刃等の刃物により切断する方法や、ミルにより切削する方法や、複数の発泡体を熱や接着剤により接着させる方法が挙げられる。
【0064】
上記発泡体は、単独で使用してもよいし、金属や未発泡樹脂等と組み合わせて使用してもよい。その際、各々成形加工した物を接着して使用してもよいし、一体成形を行ったうえで使用してもよい。
【0065】
上記スペーサーの荷重たわみ温度(HDT)は、100℃以上であることが好ましい。荷重たわみ温度は、製造時に樹脂の種類や発泡倍率の大小により調整することができる。荷重たわみ温度が100℃以上であると、スペーサーの耐熱性が一層優れる。
なお、荷重たわみ温度(HDT)は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0066】
上記スペーサーは、UL94規格でV-0を満たす難燃性を備えることが好ましい。難燃性は、樹脂の種類や樹脂とともに用いる難燃剤の種類及び含有量により調整することができる。高い難燃性を備えることによって、スペーサーで燃焼が生じたとしても、燃焼の広がりを抑制することができる。
なお、UL94規格による難燃性は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0067】
本実施形態のリチウムイオン電池モジュールイオン電池モジュール1は、セル21内部から高温蒸気やガス等が排出された際に、セルユニット2からスペーサー3が浮上しにくいように、スペーサー3をセルユニット2から離れにくくする構造を有していてもよい。上記構造としては、例えば、スペーサー3をセルユニット2とを接着剤等で接着させた構造、ビス等で固定させた構造、スペーサーをセルユニット側に押さえつける構造等が挙げられる。
【0068】
本実施形態のリチウムイオン電池モジュールは、リチウムイオン電池以外にも、セル内部から蒸気、ガス等が排出する可能性がある他の物品にも使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0070】
実施例、比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
【0071】
(1)発泡倍率、密度
後述の実施例及び比較例に記載のスペーサーの一部より、30mm角、10mm厚みを目安にサンプルを切り出し、当該サンプルの質量W(g)を測定し、サンプル体積V(cm3)を質量で除した値(V/W)を発泡倍率(cm3/g)とし、その逆数(W/V)を密度(g/cm3)とした。
なお、上記切り出しが難しい場合には各実施例及び各比較例と同じ材料を準備してサンプル質量を測定し、水没法により体積を測定し、それぞれの値を使用して密度を算出してもよい。
また、スペーサーが発泡体でない場合には、サンプルの密度のみを測定した。
【0072】
(2)難燃性
後述の実施例及び比較例に記載のスペーサーの製造に用いた樹脂について、米国UL規格のUL-94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠した試験を行い、難燃性(V難燃性)の評価を行った。なお、スペーサーの製造に用いた樹脂は、核磁気共鳴分光法や赤外分光法等の解析により特定することができる。
以下に測定方法の詳細を示す。
スペーサーが発泡体から成る場合は、発泡体を切削して長さ125mm、幅13mm、厚さ5mmの試験片5本を作製した。スペーサーが未発泡樹脂から成る場合は樹脂組成物のペレットを型に入れて熱プレス法でシート状に成形する方法によって、長さ125mm、幅13mm、1.6mm厚の試験片を作製した。試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV-0、V-1、V-2の判定を行った。
V-0:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は10秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V-1:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V-2:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火有り。
なお、上記V-0、V-1、V-2のいずれにも該当しないものは不適合(×)とした。
また、上記試験において燃焼時間が1秒以下であるものについては不燃性とした。
【0073】
(3)荷重たわみ温度(HDT)
荷重たわみ温度はISO75-1、75-2に準拠して、以下に記載の通り測定した。まず、各実施例及び各比較例に記載のスペーサーから長さ80mm×幅13mm×厚み10mmのサンプルを切り出した。得られたサンプルを株式会社東洋精機製作所製のHDT試験装置マシンテスト(型式3M-2)に支点間距離が64mmとなるようにセットした。セットしたサンプルの中央部分に対して、押し込み治具をセットし、0.45MPaの力を加えた状態でオイルバス中に浸漬させた。その後、温度を120℃/時間の速度で上昇させながら、曲げ閾値0.34mmとなるまで押し込み治具が移動した時点でのサンプル温度を荷重たわみ温度(℃)とした。
【0074】
(4)蒸気誘導効果
蒸気誘導効果は、以下の通り測定した。
まず、各実施例及び比較例に記載の方法に準じて作製した発泡体又は樹脂板を縦10cm×横10cmで切り出した。続いて、200mm×300mm×厚み2mmの長方形のアルミ板(材質:A5052)に対して、対角線が交わる点を中心として直径10mmの穴をあけた。また、市販のアルミ板(A5052)から切削により縦30mm×横10mm×厚み10mmのスペーサーを準備した。さらに、一般的なLIBモジュールに設置される蒸気排出用のダクトの模擬品として、Panasonic社製のDS65161Kを用意した。
以上の材料を用いて、
図6、
図7に示すようにダクト模擬品、試験用のサンプル(実施例及び比較例に記載の発泡体又は樹脂板)、スペーサー、アルミ板を設置した。また、上面温度を測定するためにサンプル上面(
図6、7に記載の箇所)に温度計を設置した。続いて、LIBセルが暴走した場合に発生する蒸気やガス等を模して試験を実施するために、熱風発生装置をアルミ板の下面に配置し、アルミ板の穴部分における風速が20.8m/s、温度が200℃となるようにセットした。上記状態のまま90秒間サンプル下面(試験面)に熱風を当て続け、試験後のサンプル試験面側の熱収縮発生箇所の長さ(
図8)、及び上面温度を測定することで、以下に示す通り蒸気誘導効果の有無を判定した。尚、熱収縮発生箇所は熱により樹脂の収縮・変形等が発生している箇所を目視して判定した。また、試験後の反りを下記の通り評価した。
蒸気誘導効果の判定:
〇(蒸気誘導効果がある):熱収縮発生箇所の長さが75mm未満、且つ上面温度が50°未満の場合
△(蒸気誘導効果が少しある):熱収縮発生箇所の長さが75mm以上80mm未満の場合、又は熱収縮発生箇所の長さが75mm未満で上面温度が50℃以上の場合
×(蒸気誘導効果が小さい):熱収縮発生箇所の長さが80mm以上
上面温度:
〇(良好):試験中における上面温度の最高値が50℃未満
×(不良):試験中における上面温度の最高値が50℃以上
反り:
〇(良好):試験後のサンプルを平面に置いた場合の、各角部と平面との距離の平均値が1mm未満
×(不良):試験後のサンプルを平面に置いた場合の、各角部と平面との距離の平均値が1mm以上
【0075】
(実施例1)
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成株式会社製)を60質量%と、非ハロゲン系難燃剤としてビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP)を15質量%と、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を10質量%と、汎用ポリスチレン樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン(株)製)を15質量%とを加え、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。
特開平4-372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、樹脂ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.0MPa、温度10℃の条件下で3時間かけて樹脂ペレットに対して二酸化炭素を含浸させた後、圧力容器から取り出して樹脂ペレットを移送し、樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽を77rpmにて回転させながら最大330kPa・Gの加圧水蒸気により発泡し、発泡粒子を得た。
このとき、発泡粒子の脂肪族炭化水素系ガスの残留濃度を発泡直後に測定したが、検出限界(50ppm)以下であった。その後、この発泡粒子を容器内に入れ、加圧空気を導入(0.4MPaまで4時間かけて昇圧し、その後0.4MPaで16時間保持)することで、加圧処理を施した。
これを、冷却装置を配置したうえで水蒸気孔を有する型内成形金型内に充填し、加圧水蒸気で加熱して発泡粒子相互を膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出して、
図3の形状を有する発泡粒子からなる発泡体のスペーサーを得た。凹部は、円錘台形であり、凹部の深さが5mm、凹部の底面が直径10mmの円状、凹部の頂点が直径2mmの円状であった。また、得られたスペーサーは特段の2次加工等を必要とせず、
図3の構造を形成することができた。
セルユニットとしては、正極及び負極を備えるセルを3個並べ、電極を銅製のバスバーで電気的に接続したユニットを使用した。各セルの大きさは、長さ120mm、高さ80mm、幅20mmであり、鉛直方向上側の表面の幅方向及び長さ方向中心を含む位置に1個のラプチャー弁を設けた。ラプチャー弁は、鉛直上方から見た形状が直径7mmの円状であった。各セル間の間隔は、10mmであった。
セルユニットにスペーサーをかぶせたところ、スペーサーの溝は、凹部を除き、セルユニットに接した。ラプチャー弁の円の中心と凹部底面の円の中心とが重なるように、ラプチャー弁と凹部とが対向して配置した。また、スペーサーは、セルの鉛直方向上側の表面に加え、セルの上側表面から鉛直方向に20mmの位置まで側面を覆っていた。凹部の底面から、スペーサーのセルと対向する面と反対側の表面までの、鉛直方向長さは、10mmであった。
また上記と同様の方法にて、蒸気誘導効果を確認するための発泡体を作製し、更に凹部は上記スペーサーと同じ形状とした。
得られたサンプルを用いて各種評価を行った結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2)
基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する際の加圧水蒸気の最大蒸気圧を260kPa・Gへ変更した以外は、実施例1と同様にしてスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0077】
(実施例3)
基材樹脂ペレットの作製工程を以下のとおり変更したこと、基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する工程において、加圧水蒸気の最大蒸気圧を70kPa・Gへ変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡体のスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製し、上記評価を行った。結果を表1に示す。
基材樹脂ペレット製造工程:
ポリスチレン系樹脂(PS)であるGP685(PSジャパン株式会社製)100質量%を、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。
【0078】
(実施例4)
特開平4-372630号公報の実施例に記載の方法と同様の方法にて発泡粒子(3次発泡粒子)を得た。得られた発泡粒子(3次発泡粒子)の炭化水素ガスの含有量を発泡直後に測定したが、検出限界(0.01質量%)以下であった。得られた発泡粒子を実施例1と同様の方法にて成形してスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製し、上記評価を行った。
【0079】
(実施例5)
基材樹脂ペレットの作製工程を以下のとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして発泡体のスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製し、上記評価を行った。
基材樹脂ペレット製造工程:
ポリスチレン系樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン株式会社製)を60質量%と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成株式会社製)を40質量%とを、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。
【0080】
(実施例6)
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成株式会社製)を60質量%と、非ハロゲン系難燃剤としてビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP)を15質量%と、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を10質量%と、汎用ポリスチレン樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン(株)製)を15質量%とを加え、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。得られた基材樹脂ペレットを型枠内に敷き詰め、270℃の温度で熱プレス法により樹脂板を作製した。作製した板を接着剤で積層していくことで樹脂板の厚みを増加させていき、最後に、切削して、凹部の深さ1mmとしたこと以外は実施例1と同形状のスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の樹脂板を作製した。
なお、密度測定は、得られた樹脂シートより30mm角、10mm厚みのサンプルを切り出し、当該サンプルの質量W(g)を測定し、質量Wをサンプルの体積V(cm3)で除した値(W/V)を密度(g/cm3)として求めた。
また、HDT測定は、厚みを4mmに変更して行った。
【0081】
(実施例7)
凹部底面の中心部とLIBセルのラプチャー弁の中心部との距離が5mm(凹部底面の最外部とラプチャー弁の位置が重なる部分がある状態)となるように凹部位置を調整した事、蒸気誘導効果確認用の発泡体の凹部底面の中心部とアルミ板穴部の中心部との距離を5mmとなるように調整した事以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0082】
(実施例8)
凹部の形状を貫通構造(円柱状)とした以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0083】
(実施例9)
特開2006-077218号公報を参考に、以下の手順で発泡体を作製した。
まず、150mmのバレル内径を有するスクリュー型押出機の供給領域に、900kg/時間の速度で、低密度ポリエチレン(PE)(密度922kg/m3、MI=7.0g/10分)を、この樹脂100質量部に対し気泡核形成剤として1.2質量部のタルク粉末(粒径8.0μm)と0.8質量部のガス透過調整剤(ステアリン酸モノグリセリド)とともに供給した。押出機のバレル温度を190~210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口からn-ブタン100質量%からなる発泡剤をこの樹脂100質量部に対し3質量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。
この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で108℃まで冷却した後、約4.0mmの平均厚みと約226mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押し出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み52mm、幅560mm、長さ1000mm、密度100kg/m3の板状発泡体を得た。この樹脂発泡体中に含まれる炭化水素ガスの含有量は、2.4質量%であった。40℃環境下で3か月保管し、炭化水素ガスの含有量が検出下限以下(0.01質量%)となったことを確認した後、切削により実施例1と同様の形状のスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0084】
(実施例10)
凹部の形状を深さ1mmとした以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0085】
(実施例11)
蒸気誘導効果確認用の発泡体の厚みを600mm、凹部の形状を深さ30mmとした以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0086】
(比較例1)
凹部を形成しなかった事以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0087】
(比較例2)
凹部の形状を深さ0.5mmとした以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0088】
(比較例3)
凹部底面の中心部とLIBセルのラプチャー弁の中心部との距離が15mm(凹部底面の最外部とラプチャー弁の位置が重なる部分が無い状態)となるように凹部位置を調整した事、蒸気誘導効果確認用の発泡体の凹部底面の中心部とアルミ板穴部の中心部との距離を15mmとなるように調整した事以外は、実施例1と同様にスペーサー、及び蒸気誘導効果確認用の発泡体を作製した。
【0089】
【0090】
表1によれば、実施例に記載の方法で作製した蒸気誘導効果確認用の発泡体又は樹脂板は、蒸気誘導効果があることが分かった。すなわち、
図1~3に記載したようなスペーサーを作製した際、LIBセル暴走時の蒸気を効果的に排出し、且つ隣接するセルへ蒸気が当たりにくいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のリチウムイオン電池モジュールは、暴走した場合でも他のセルにその暴走が伝播しにくく、安全性が高いため、電気自動車等の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 リチウムイオン電池モジュール
2 セルユニット
21 セル
22 ラプチャー弁
3 スペーサー
31 凹部
32 溝
4 バスバー