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特許7455190多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法
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  • 特許-多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法 図1
  • 特許-多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法 図2
  • 特許-多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20240315BHJP
   C07C 41/16 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C07C43/23 C CSP
C07C41/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022508182
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007767
(87)【国際公開番号】W WO2021187075
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2020049449
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193548(JP,A)
【文献】特開2001-072872(JP,A)
【文献】特開2017-179323(JP,A)
【文献】国際公開第10/027676(WO,A1)
【文献】REINELT,S. et al.,Synthesis and Photopolymerization of Thiol-Modified Triazine-Based Monomers and Oligomers for the Us,Macromolecular Chemistry and Physics,2014年,Vol.215, No.14,pp.1415-1425,DOI 10.1002/macp.201400174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンである、下記式(3)で表される多環芳香族炭化水素化合物。
【化1】
【請求項2】
HPLC純度が95面積%以上である、請求項1に記載の多環芳香族炭化水素化合物。
【請求項3】
多環芳香族炭化水素化合物をジメチルホルムアミドに溶解させた5重量%溶液のAPHAが100以下である、請求項1または2に記載の多環芳香族炭化水素化合物。
【請求項4】
230~250℃の範囲に示差走査熱量分析による吸熱ピークを有する、請求項に記載の多環芳香族炭化水素化合物の結晶。
【請求項5】
下記式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物とエチレンカーボネートとを塩基存在下で反応させて、前記式(3)で表される多環芳香族炭化水素化合物を製造する方法であって、反応溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いる、請求項1に記載の多環芳香族炭化水素化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Zはフェナントレンであり、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、n0である。)
【請求項6】
反応溶媒としてジメチルホルムアミドを用いる、請求項に記載の多環芳香族炭化水素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BN2EOと省略することがある)に代表される、ビナフタレン骨格を有するアルコールを原料としたポリカーボネート、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂材料は、光学特性、耐熱性、成形性などに優れることから、光学レンズや光学シートなどの光学部材として注目されている。例えば、特許文献1には、BN2EOからなるポリカーボネート樹脂の屈折率は1.668であることが開示されている。また、特許文献2には、6,6’-ジフェニル-2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレンからなるポリカーボネート樹脂の屈折率は1.697であることが開示されている。しかしながら、近年の急速な技術革新に伴い、屈折率のさらなる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/073496号パンフレット
【文献】国際公開第2019/043060号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高屈折率である新規な多環芳香族炭化水素化合物、その結晶およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
下記式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、Zは3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素であり、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、mは1~5の整数であり、nは0~8の整数である。)
【0008】
《態様2》
前記式(1)中のZがフェナントレンである、態様1に記載の多環芳香族炭化水素化合物。
《態様3》
前記式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物が下記式(2)で表される多環芳香族炭化水素化合物である、態様1または2に記載の多環芳香族炭化水素化合物。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、n、nは0~4の整数であり、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0011】
《態様4》
前記式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物が下記式(3)で表される10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンである、態様1~3のいずれかに記載の多環芳香族炭化水素化合物。
【0012】
【化3】
【0013】
《態様5》
HPLC純度が95面積%以上である、態様1~4のいずれかに記載の多環芳香族炭化水素化合物。
《態様6》
多環芳香族炭化水素化合物をジメチルホルムアミドに溶解させた5重量%溶液のハーゼン単位色数(以下、APHAともいう)が100以下である、態様1~5のいずれかに記載の多環芳香族炭化水素化合物。
《態様7》
230~250℃の範囲に示差走査熱量分析による吸熱ピークを有する、態様4に記載の多環芳香族炭化水素化合物の結晶。
《態様8》
下記式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物とエチレンカーボネートとを塩基存在下で反応させて、前記式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物を製造する方法であって、反応溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いる、態様1に記載の多環芳香族炭化水素化合物の製造方法。
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Zは3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素であり、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、nは0~8の整数である。)
【0016】
《態様9》
反応溶媒としてジメチルホルムアミドを用いる、態様8に記載の多環芳香族炭化水素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高屈折率であり、色相、純度ともに良好である新規な多環芳香族炭化水素化合物を提供することができる。また、加工性、生産性、取扱性に優れる新規な多環芳香族炭化水素化合物の結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で得られた10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9, 9’-ビフェナントレン化合物のNMRチャートを示す図である。
図2】実施例1で得られた10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9, 9’-ビフェナントレン化合物の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図3】実施例2で得られた10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9, 9’-ビフェナントレン化合物の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《多環芳香族炭化水素化合物》
本発明における新規な多環芳香族炭化水素化合物は下記式(1)で表される。
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、Zは3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素であり、Lは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、mは1~5の整数であり、nは0~8の整数である。)
【0022】
式(1)中のZは3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素であり、アントラセン、フェナントレン、フェナレンが好ましく、フェナントレンがより好ましい。
【0023】
式(1)中のLは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、炭素原子数1~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0024】
式(1)中のRは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ナフチル基、アラルキル基などが例示できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基が好ましく、C1-4アルキル基がより好ましく、C1-3アルキル基がさらに好ましく、その中でメチル基、エチル基が特に好ましい。
【0025】
また、シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-8シクロアルキル基が好ましく、C5-6シクロアルキル基がより好ましい。
【0026】
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、アルキルフェニル基(モノまたはジメチルフェニル基、トリル基、2-メチルフェニル基、キシリル基など)、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0027】
また、アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが好ましく例示できる。
【0028】
式(1)中のmは1~5の整数であり、1~2の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0029】
式(1)中のnは0~8の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0030】
また、式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物の中で、下記式(2)で表されるビフェナントレン化合物が好ましい。
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、R、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、n、nは0~4の整数であり、L、mは前記式(1)と同様である。)
【0033】
式(2)中のR、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、具体的には上述した式(1)中のRと同様である。
【0034】
式(2)中のn、nは0~4の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0035】
式(2)中のL、mは上述した式(1)中のL、mと同様である。
【0036】
式(2)で表されるビフェナントレン化合物の具体例として、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビフェナントレン、3,3’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-4,4’-ビフェナントレン、10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンが好ましく、下記式(3)で表される10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンが特に好ましい。
【0037】
【化7】
【0038】
本発明の多環芳香族炭化水素化合物は、HPLCで測定したHPLC純度が95面積%以上であることが好ましく、97面積%以上であることがより好ましく、98面積%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の多環芳香族炭化水素化合物は、該化合物をジメチルホルムアミドに溶解させた5重量%溶液のAPHAが100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。APHAが100以下であると化合物の色相が良好となり好ましい。
【0040】
《多環芳香族炭化水素化合物の結晶》
本発明で得られる上記式(3)で表される化合物の結晶は、示差走査熱量分析による吸熱ピークを230~250℃の範囲に有することが好ましく、235~250℃の範囲に有することがより好ましく、240~248℃の範囲に有することがさらに好ましく、243~246℃の範囲に有することが特に好ましい。本発明で得られる上記式(3)で表される化合物の結晶は、加工性、生産性、取扱性に優れ、かつ、色相、純度ともに良好である。
【0041】
《多環芳香族炭化水素化合物の製造方法》
本発明の多環芳香族炭化水素化合物は、下記式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物とエチレンカーボネートとを非プロトン性極性溶媒および塩基の存在下で反応させて、製造することができる。
【0042】
【化8】
【0043】
(式中、Zは3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素であり、Rは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、nは0~8の整数である。)
【0044】
本発明の製造方法で使用する非プロトン性極性溶媒として、N-メチルピロリドン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられ、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法で使用する非プロトン性極性溶媒の使用量は、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物に対して0.1~10重量倍が好ましく、0.3~7重量倍がより好ましく、0.5~5重量倍がさらに好ましい。溶媒の使用量が0.1重量倍より少ないと式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物や生成した式(1)で表される多環芳香族炭化水素化合物が攪拌困難となることがある。溶媒の使用量が10重量倍より多いと反応時間の遅延や容積効率が低下するなど、生産効率が悪化し経済的に不利となることがあり、また、長期の加熱操作は副反応物の増加や着色原因となることがある。
【0046】
本発明の製造方法において、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物とエチレンカーボネートの使用量(モル比)は、1:1.9~1:2.9が好ましく、1:2~1:2.7がより好ましく、1:2.1~1:2.5がさらに好ましい。エチレンカーボネートの使用量が1:1.9より少ないと、反応時間が長くなることがある。また、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物が未反応のまま残ることや、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物1モルとエチレンカーボネート1モルが反応した副生物が多くなることにより、収率や純度が低下する場合がある。エチレンカーボネートの使用量が1:2.9より多いと、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物1モルとエチレンカーボネート3モル以上が反応した副生物が多くなることにより、収率や純度が低下する場合がある。
【0047】
本発明の製造方法において、反応温度は特に限定されるものではないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは140~40℃、さらに好ましくは130~70℃である。反応温度が高すぎると副反応物の増加による収率低下や色相悪化の原因となる場合がある。反応温度が低すぎると反応が速やかに進行しない場合がある。
【0048】
本発明の製造方法で使用する塩基として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムが好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
【0049】
本発明の製造方法で使用する塩基の使用量は特に限定されるものではないが、式(4)で表される多環芳香族炭化水素化合物1モルに対して0.01~0.5モルが好ましく、0.05~0.3モルがより好ましい。塩基の使用量が少ないと反応が進行しないか、反応が遅延することがある。使用量が多いと副生物の増加による収率や純度の低下、着色原因となることがある。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
なお、実施例において、各種測定は以下のように行った。
(1)HPLC測定
日立製高速液体クロマトグラフL-2350を用い、以下の表1に示す測定条件で測定した。実施例中、特に断らない限り%はHPLCにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値である。
【0052】
【表1】
【0053】
(2)NMR測定
実施例で得られた化合物をCDClに溶解させ、日本電子社製JNM-AL400(400MHz)を用い測定した。
溶媒:CDCl(3)示差走査熱量測定(DSC)
TA Instruments製Discovery DSC25を用い、窒素フロー下、昇温速度:20℃/minで測定した。
【0054】
(4)屈折率(nD)
実施例で得られた化合物をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を測定した。各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値を実施例で得られた化合物の屈折率(nD)とした。
【0055】
(5)APHA測定
測定試料0.5gをジメチルホルムアミド10mlに溶解させた溶液をφ25mmの試験管に入れ、日本電色製工業(株)製TZ6000を用いて測定した。
【0056】
[実施例1]
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、温度計を備え付けたフラスコに10,10’-ジヒドロキシ-9,9’-ビフェナントレン10.00g、エチレンカーボネート5.24g、炭酸カリウム0.36g、ジメチルホルムアミド20mlを加え、120℃で5時間反応させた。反応液を冷却後、ジメチルホルムアミド15ml、10%NaOH水溶液2mlを加え、110℃で3時間アルカリ処理を行った。反応液を冷却後、反応液を蒸留水中に撹拌しながら滴下し、得られた結晶を回収した。回収した結晶を蒸留水でスラリー洗浄した後、結晶を回収、乾燥し、10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンの白色結晶を10.3g得た(収率84%)。得られた結晶の純度は97.27%、APHAは70、示差走査熱量分析による吸熱ピークは237℃、屈折率は1.713であった。また、得られた10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンのNMRチャートを図1に、示差走査熱量分析結果を図2に示した。
【0057】
[実施例2]
実施例1で得られた結晶10.3gをクロロホルム10mlに溶解後、ヘキサン100mlを加え再結晶した。結晶を回収、乾燥し、10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンの白色結晶を8.4g得た。得られた結晶の純度は98.96%、APHAは50、示差走査熱量分析による吸熱ピークは245℃であった。また、得られた結晶の示差走査熱量分析結果を図3に示した。
【0058】
[比較例1]
実施例1のジメチルホルムアミド20mlをトルエン70mlに変更し、反応温度を120℃から110℃に変更する以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。7時間反応後の反応液をHPLC分析すると、目的物である10,10’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-9,9’-ビフェナントレンは約4%、原料である10,10’-ジヒドロキシ-9,9’-ビフェナントレンが約90%残存し、反応速度が著しく遅く、目的物を得ることができなかった。
【0059】
[比較例2]
国際公開2019/043060号に記載の通り、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフタレンを合成し、該化合物の屈折率を測定した結果、1.694であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明で得られる新規な多環芳香族炭化水素化合物は高屈折率であることから、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂を形成するモノマーとして好適である。
図1
図2
図3