IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネオシス・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】誘導手術ロボット用スプリント器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20240315BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240315BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
A61B90/00
A61B34/20
A61B34/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022560281
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2021052651
(87)【国際公開番号】W WO2021198923
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】63/002,074
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518432274
【氏名又は名称】ネオシス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーバイ,ウダイ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】フィッティパルディ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス,アロン
(72)【発明者】
【氏名】サルセド,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ラストベイダー,デイビッド・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ボイル・ザ・サード,リチャード・プレンティス
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0228256(US,A1)
【文献】国際公開第2018/158551(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209852(US,A1)
【文献】米国特許第06269148(US,B1)
【文献】特開2018-110841(JP,A)
【文献】特表2017-509450(JP,A)
【文献】特表2019-506929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0281991(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0009657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0133956(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0278875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0367343(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0237265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
A61B 34/20
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ロボット手術用スプリント器具であって、前記器具は、
第1及び第2の端部と、対向する凹面及び凸面とを有する弧状スプリント本体であって、スプリント本体は第1及び第2の端部の間で間隔を置いて配置された複数の孔を画定し、各孔は凹面と凸面との間に延在するスプリント本体と、
複数の孔それぞれに受容され、かつ、ドリルガイドまたは締結具ガイドとして構成されるスリーブと、
追跡部であって、孔の少なくとも1つが追跡部と第1及び第2の端部のそれぞれとの間に配置されるように、第1及び第2の端部の間でスプリント本体の凸面と係合し、、該追跡部は凸面から外側に延在する追跡部と、
追跡部と係合するキネマティックマウントと、
を備える、スプリント器具。
【請求項2】
スリーブは金属材料又はセラミック材料からなる、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
キネマティックマウントは追跡部と一体的に形成される、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
隣接する孔の間でスプリント本体を横切って延在する分離可能部を備え、分離可能部はスプリント本体の長さの調整を容易にするように切断可能に構成される、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
分離可能部は、隣接する孔の間でスプリント本体の減少した断面厚さを備える、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
スプリント本体又は追跡部の外面によって画定された凹部によって受容される基準マーカ要素であって、キネマティックマウントに対して所定の位置に受容される基準マーカ要素を備える、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
基準マーカ要素は球形であり、凹部は球形の基準マーカ要素を受容するように構成された半球形又は細長凹状チャネルである、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
スプリント本体又は追跡部と係合する工具較正部であって、キネマティックマウントに対して所定の位置に配置される工具較正部を備える、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
スプリント本体の凹面は下顎の湾曲又は上顎の湾曲に一致するように構成される、請求項1に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、手術ロボット及び関連する誘導システムに関し、より詳細には、完全に又は部分的に無歯顎の患者の場合に手術ロボットの誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを形成するためのスプリント器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、手術用途において実施されることがますます多くなっている。その1つの例には、歯科手術に使用される手術ロボットが含まれる。そのようなロボットは、手術ロボットによって実施される手術器具を誘導するために使用される誘導システムに関連付けられることが多い。誘導システムはまた、患者データを収集しかつ/又は分析して外科手術を計画することに関与することによるか、外科手術を行うために事前計画データに依存して手術器具を誘導することによるかにかかわらず、手術の事前計画プロセスに関与するように構成されてもよい。
【0003】
特に外科手術においては、手術ロボットシステムのいくつかは、手術ロボットを誘導するために患者の身体に関連付けられた固定基準点に依存する。すなわち、そのような手術ロボットシステムのいくつかは、事前計画中であるか実際の外科手術自体の間であるかにかかわらず、処置中の患者の移動又は動きを考慮又は補正するように、患者の身体に対する基準枠を画定する。この基準点はまた、複数の係合/離脱(すなわち、事前計画と実際の外科手術との間の期間)によって手術ロボット又はそれに関連する誘導システムに実施される基準枠が変更しないように反復可能でなければならない。
【0004】
特定の例では、手術ロボット用誘導システムによって実施される基準点(又はその基準点を画定するための誘導システムと患者との間の接続部)は、例えば、光学的モダリティ、機械的モダリティ、音響的モダリティ、又は他の好適かつ好適な追跡/誘導モダリティ、又はそれらの組合せによって達成され得る。特に歯科手術用途で使用されるいくつかのモダリティでは、基準点(すなわち、「基準マーカ」)を形成するためのある機械的モダリティが、例えば、剛性要素を患者の頭部/歯に取り付ける/固定することによって達成されてもよい。そのような剛性要素は、いくつかの例では、スプリントと呼ばれることがあり、またスプリントを備えてもよい。そのようなスプリントは、一般に、例えば、(すなわち、保持部と歯との間に塗布されるアクリル材料などの接着物質によって)歯の1つ又は複数を把持する保持部と、保持部を別個のキネマティックマウントに接続する取付け部(すなわち、取付けアーム)と、キネマティックマウント自体とを含んでもよく、キネマティックマウントは、手術ロボット用誘導システムに関連付けられた追跡部のための取付け点を備えてもよい(すなわち、例えば、基準マーカの光学的追跡のために反射マーカが取付け点に取り付けられてもよいし、基準マーカの機械的追跡のために取付け点が取付け点との機械的接続部を形成するための固定部位を含んでもよいし、任意の他の好適な追跡装置に関連付けられる適切な基準マーカの要素を受容するように取付け点が他の方法で構成されてもよい)。
【0005】
そのような場合、保持部は、外科手術中に亘って可能な限り剛性(すなわち、保持部自体の構造、並びに患者の歯への保持部の固定)を有することが好適となり得る。しかしながら、保持部は、外科手術が完了したときに容易に取り外し可能であることも好適となり得る。いくつかの例では、例えば、ある日に発生し得る事前計画処置(すなわち、CTスキャン。スプリントはそれに関連付けられた基準マーカがスキャンに取り込まれるように所定位置になければならない)と、別の日に発生し得る外科手術(外科手術は、外科手術を追跡/誘導するためにスプリントが所定の位置にあることを必要とする)との間にスプリントを再現可能に取り外して交換することが好適となり得る。他の例では、単一のスプリント構成が、例えばユニバーサルフィット(サイズ)器具として、幅広い患者集団にわたって使用可能又は適合可能であることが好適となり得る。さらに、そのようなスプリントは、完全に又は部分的に無歯顎の患者(すなわち、従来のスプリントを適用されることに対応できる十分な歯又は歯構造を有さない患者)に容易に適用可能であることが望ましいであろう。そのようなスプリント器具はその適用のために歯又は十分な歯構造を有する患者に依存しないため、スプリント器具が患者の他の部分に適用可能で他の種類の誘導ロボット手術を容易にすることも望ましい。さらに、スプリントの別個の構成要素を最小限有すること、別個の構成要素が含まれていれば、そのような別個の構成要素がスプリントアセンブリ全体の一部として一体化されるか固く強固に取り付けられることが望ましい場合がある。いくつかの例では、スプリントが特定の患者に再使用可能であることが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、例えば、歯科手術、特に歯科技術において完全に又は部分的に無歯顎の患者向け、又は他の種類の手術において使用され、従来技術の器具のこれらの制限及び他の制限に対処する、手術ロボットの誘導システム用の基準マーカを形成するためのスプリント器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記及び他の必要性は、誘導ロボット手術用スプリント器具を1つの特定の態様において提供する本開示の態様によって満たされる。そのような器具は、第1及び第2の端部と、対向する凹面及び凸面とを有する弧状スプリント本体を備える。スプリント本体は、第1及び第2の端部の間で間隔を置いて配置された複数の孔を画定し、各孔は凹面と凸面との間に延在する。追跡部は、孔の少なくとも1つが追跡部と第1及び第2の端部のそれぞれとの間に配置されるように、第1及び第2の端部の間でスプリント本体の凸面と係合する。追跡部は凸面から外側に延在し、追跡部にキネマティックマウントが係合する。
【0008】
したがって、本開示は、限定するものではないが、以下の例示的な実施形態を含む。
【0009】
例示的な実施形態1:誘導ロボット手術用スプリント器具であって、前記器具は、第1及び第2の端部と、対向する凹面及び凸面と、を有する弧状スプリント本体であって、スプリント本体は第1及び第2の端部の間で間隔を置いて配置された複数の孔を画定し、各孔が凹面と凸面との間に延在するスプリント本体と、追跡部であって、孔の少なくとも1つが追跡部と第1及び第2の端部のそれぞれとの間に配置されるように、第1及び第2の端部の間でスプリント本体の凸面と係合し、該追跡部は凸面から外側に延在し、該追跡部は、それと係合するキネマティックマウントを有する、追跡部と、を備える、スプリント器具。
【0010】
例示的な実施形態2:各孔は、その中にスリーブを受容するように構成される、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0011】
例示的な実施形態3:スリーブは金属材料又はセラミック材料からなる、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0012】
例示的な実施形態4:スリーブはドリルガイド又は締結具ガイドとして構成される、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0013】
例示的な実施形態5:キネマティックマウントは追跡部と一体的に形成される、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0014】
例示的な実施形態6:隣接する孔の間でスプリント本体を横切って延在する分離可能部を備え、分離可能部はスプリント本体の長さの調整を容易にするように切断可能に構成される、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0015】
例示的な実施形態7:分離可能部は、隣接する孔の間でスプリント本体の減少した断面厚さを備える、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0016】
例示的な実施形態8:スプリント本体又は追跡部の外面によって画定された凹部によって受容される基準マーカ要素であって、キネマティックマウントに対して所定の位置で受容される基準マーカ要素を備える、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0017】
例示的な実施形態9:基準マーカ要素は球形であり、凹部は球形の基準マーカ要素を受容するように構成された半球形又は細長凹状チャネルである、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0018】
例示的な実施形態10:スプリント本体又は追跡部と係合する工具較正部であって、キネマティックマウントに対して所定の位置に配置される工具較正部を備える、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0019】
例示的な実施形態11:スプリント本体の凹面は下顎の湾曲又は上顎の湾曲に一致するように構成される、前述及び後述の例示的な実施形態のいずれか又はそれらの組合せの器具。
【0020】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下で簡単に説明される添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。本開示は、本開示に記載の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の特徴又は要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされたり、他の方法で記載されたりしているかどうかにかかわらず、それらの特徴又は要素の任意の組合せを含む。本開示は、本開示の文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、本開示の任意の分離可能な特徴又は要素が、態様及び実施形態のいずれにおいても、意図されるように、すなわち組み合わせ可能であるように全体的に読まれることを意図している。
【0021】
本明細書の概要は、本開示の基本的な理解を提供するために、いくつかの例示的な態様を要約する目的でのみ提供されていることが理解されよう。したがって、上述の例示的な態様は単なる例であり、決して本開示の範囲又は趣旨を狭めると解釈されるべきではないことが理解されよう。本開示の範囲は、本明細書に要約されたものに加えて、そのいくつかが以下でさらに説明される多くの潜在的な態様を包含することが理解されよう。さらに、本明細書に開示されたそのような態様の他の態様及び利点は、記載された態様の原理を例として示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0022】
本開示を一般的な用語で説明してきたが、ここで、添付の図面を参照するが、これらは必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本開示の一態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の斜視図を概略的に示す図である。
図1B】本開示の一態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の異なる斜視図を概略的に示す図である。
図2A】本開示の別の態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎又は下顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の上面図を概略的に示す図である。
図2B】本開示の別の態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎又は下顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の側面図を概略的に示す図である。
図2C図2A及び図2Bに示す本開示の態様によるスプリント器具を概略的に示し、そのようなスプリント器具の第1のスプリント器具が下顎に取り付けられ、そのようなスプリント器具の第2のスプリント器具が反転されて上顎に取り付けられた図である。
図3A】本開示のさらに別の態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の上面図を概略的に示す図である。
図3B】本開示のさらに別の態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具の下面図を概略的に示す図である。
図3C図3A及び図3Bに示す本開示の態様によるスプリント器具を概略的に示し、そのようなスプリント器具の1つが上顎に取り付けられた図である。
図3D図3A及び図3Bに示す本開示の態様によるスプリント器具を概略的に示し、そのようなスプリント器具の1つが上顎に取り付けられた図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、本開示のすべてではないが一部の態様が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。実際、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの態様は適用される法的要件を本開示が満たすように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0025】
本開示の特定の態様は、例えば図1A及び図1Bに示すように、例えば歯科手術において手術ロボットの誘導システムと併用されるスプリント器具100を提供する。しかしながら、当業者であれば、基準マーカ及び/又は追跡マーカ、あるいは手術ロボットシステム用の他の基準枠を形成するものとして本明細書に開示されたスプリント器具の概念が、例えば整形外科手術、ENT手術、及び神経外科手術などの歯科手術を含まない他の手術プロセスへの適用性を見出すことができることを理解するであろう。したがって、本明細書に提示される本開示の態様は、開示された概念の適用性の単なる例であり、決して限定することを意図するものではない。すなわち、本明細書に開示されるスプリント器具の態様は、歯科手術以外の他の種類の手術を容易にするために患者の様々な部分に適用可能であり得る。本明細書に開示されるように、スプリント器具100の態様は、誘導ロボット歯科手術を容易にするための外科用スプリントを提供するために部分的又は完全に無歯顎の患者に適用可能であるとして特に説明及び図示されているが、これらの態様に関連するスプリントの概念が歯科手術以外の他の種類の手術を容易にするために患者の様々な別の部分に適用可能であり得ることを当業者は理解するであろう。
【0026】
例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者用のそのようなスプリント器具100は、誘導手術ロボットと共に実施され、対向する第1及び第2の端部200A、200Bと、凸面400に対向する凹面300とを有する弧状スプリント本体200を備えてもよい。スプリント本体200は、さらに、第1及び第2の端部200A、200Bの間で間隔を置いて配置された複数又は一連の孔を画定し、各孔500は凹面及び凸面300、400の間に延在する(例えば、各孔500は凹面300までかつそれを貫通して、凸面400までかつそれを貫通して延在する)。追跡部600は、スプリント本体200の第1及び第2の端部200A、200Bの間で、スプリント本体200の凸面400と係合する。特定の態様では、追跡部600は、孔500の少なくとも1つが追跡部600と第1及び第2の端部200A、200Bのそれぞれとの間に配置されるように、スプリント本体200の第1及び第2の端部200A、200Bの間でスプリント本体200の凸面400と係合する。追跡部600は凸面400から外側に延在し、追跡部にキネマティックマウント700が係合する。
【0027】
いくつかの態様では、歯科手術などの例示的な用途において、弧状スプリント本体200の少なくとも凹面300は、患者の解剖学的構造の下顎の湾曲又は上顎の湾曲に実質的に一致するように構成されかつ配置される。他の態様では、分離可能部800は、2つの隣接する孔の間でスプリント本体200を横切って(例えば、凸面400を横切って)延在する。いくつかの例では、分離可能部800は、スプリント本体200の長さの調整を容易にするように、例えば、異なる寸法の下顎/上顎の曲線によりよく一致するために、切断可能に構成される。すなわち、分離可能部800を介したスプリント本体100の長さの調整は、例えば、スプリント器具100が様々な異なるサイズの用途(例えば、成人又は小児の下顎/上顎)に実施されることを容易にすることができる。いくつかの態様では、分離可能部800は、スプリント本体200の凹面300に対するか凸面400に対するかにかかわらず、隣接する孔500の間でスプリント本体200の減少した断面厚さを備える。他の例では、スプリント器具100のスプリント本体200の長さを複数回調整するために、複数の分離可能部800がスプリント本体200の凹面300及び/又は凸面400に沿って設けられることができる。
【0028】
いくつかの態様では、スプリント本体200及び分離可能部800は単一のアセンブリとして一体的に形成される。他の態様では、スプリント本体200、分離可能部800、及び追跡部600は単一のアセンブリとして一体的に形成される。さらに他の態様では、キネマティックマウント700は追跡部600と一体的に形成される。いくつかの例では、キネマティックマウント700は、角度的に離間した3つ以上の突出部750によって囲まれた中央位置決め受け部725を画定する。そのようなキネマティックマウント700は、一般に、追跡装置を含むか又はそれと係合する相補的に構成されたマウント(図示せず)を受容するように構成される。追跡装置は、例えば、手術ロボットに接続された追跡アームなどの物理的に接続された(例えば、機械的な)追跡装置を含むことができる。他の例では、追跡装置は、例えば、光学追跡装置、磁気追跡装置、無線もしくはWiFi追跡装置、電磁追跡装置、誘導追跡装置、又はキネマティックマウント700に取り付けられた追跡装置と手術ロボットとの間に物理的接続部を必要としない任意の他の形態の追跡装置などの非物理的に接続された追跡装置を含むことができる。いずれの場合も、キネマティックマウント700が追跡部600に一体化されることによって追跡装置と反復可能に係合され、異なるタイプの追跡装置間で交換可能に係合される。キネマティックマウント700の一体化は、さらに、例えば、成形、機械加工、及び、又は3Dプリントによって達成することができる。一体型アセンブリとして形成される場合、スプリント器具100は、例えば、必要又は適切な場合、射出成形、鋳造、又は機械加工などの任意の好適な形成手順を用いて形成されてもよい。
【0029】
前述のように、スプリント本体200は、第1及び第2の端部200A、200Bの間で間隔を置いて配置された複数の又は一連の孔を画定し、各孔500は、凹面と凸面300、400の間に延在し(例えば、各孔500は凹面300まで、かつそれを貫通して、凸面400まで、かつそれを貫通して延在する)、追跡部600は、孔500の少なくとも1つが追跡部600と第1及び第2の端部200A、200Bのそれぞれとの間に配置されるようにスプリント本体200の第1及び第2の端部200A、200Bの間でスプリント本体200の凸面400と係合する。いくつかの態様では、追跡部600のすぐ両側にある孔500は、追跡部600から実質的に等距離に離間している。
【0030】
いくつかの態様では、スプリント本体200に沿った各孔500は、その中にスリーブ550を受容するように構成される。いくつかの例では、スリーブ550は、例えば金属材料又はセラミック材料などの耐久性のある材料で構成される。このようにして、例えば、スリーブ550は、例えば下顎/上顎に下穴を穿孔するためのドリルガイドとして構成されてもよい(すなわち、スプリント本体200が歯科手術において下顎/上顎に対して配置され、対応する孔500内に配置された対応するスリーブ550を通して適切なドリルビットで下穴が穿孔される)。下顎/上顎に下穴が開けられると、固定ねじなどの締結具(図示せず)を、スリーブ550を通して(例えば、スリーブ550が締結具ガイドとして配置される)下顎/上顎の下穴に前進させて、スプリント本体200を患者の下顎/上顎の定位置に固定することができる。当業者は、本明細書に開示されるドリルガイド及び/又は締結具ガイドに対するスリーブ550の機能及び/又は目的を達成するように孔500/スプリント本体200自体が構成されかつ配置され得るという点で、スリーブ550が任意であることを理解するであろう。いずれの例においても、スプリント器具100は、開示された締結具によって歯科手術において下顎/上顎に固定される。
【0031】
いくつかの例では、工具較正部1000はスプリント本体200又は追跡部600と係合し、工具較正部1000はキネマティックマウント700に対して所定の位置に配置される。工具較正部1000は、例えば、外科ロボットに取り付けられた外科器具のエンドエフェクタ(例えば、ドリルビットの先端)を受容するための受け部又は他の好適な表面特徴部として構成されてもよい。工具較正部1000は、いくつかの例ではスプリント器具100の特定の構成要素と一体的に形成され、又は他の例では別個の個別要素(例えば、金属要素、セラミック要素、又は他の好適な要素などの耐久性のある要素)とすることができる。工具較正部1000はキネマティックマウント700に対して既知の位置にあるため、工具較正部1000が手術ロボットのエンドエフェクタと相互作用すると、エンドエフェクタが処置手術を実行するために外科ロボットに対して正確に追跡されるように確定又は較正を行う。いくつかの例では、工具較正部1000は、キネマティックマウント700に対する位置が撮像分析によって決定及び/又は確認されることができるように放射線不透過性である。
【0032】
さらに他の例では、基準マーカ要素900(例えば、図1B参照)は、スプリント本体200又は追跡部600の外面(例えば、凸面400)によって画定された凹部(図示せず)によって受容され、基準マーカ要素900はキネマティックマウント700に対して所定の位置に受容される。特定の態様では、スプリント器具100の外面は、対応する複数の基準マーカ要素900を受容するために構成された複数の凹部を画定する。例えば、いくつかの態様では、基準マーカ要素900は球形であり、凹部は球形の基準マーカ要素900を受容するように構成された半球形又は細長凹状チャネルである。締まりばめ(例えば、圧入)によるか、オーバーモールディングによるか、又は凹部と共に配置された接着材料(例えば、エポキシ)によるかにかかわらず、それぞれの凹部に固定されると、基準マーカ要素900はスプリント器具100内に本質的に埋め込まれる。さらに、いくつかの態様では、凹部は、基準マーカ要素900が固定/埋め込まれる凹部内の位置に接着材料(例えば、エポキシ)が重力などによって保持されるように配向される。いくつかの態様では、基準マーカ要素900は放射線不透過性であるため、基準マーカ要素900は撮像分析(例えば、CTスキャン)によって検出されることができる。したがって、特定の例では、基準マーカ要素900は放射線不透過性であり、スプリント器具100(例えば、プラスチック/ポリマー材料から形成される)、スリーブ550(例えば、金属又はセラミック材料から形成される)、及びスプリント器具100を患者に固定するのに使用される締結具(例えば、金属)から区別されることができる。基準マーカ要素900はすべてスプリント器具100に埋め込まれているので、撮像分析(例えば、CTスキャン)の視野は減少されることができる。
【0033】
前述の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有する、これらの開示された実施形態に関連する当業者には、本明細書に記載された本発明の多くの修正及び他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本発明の実施形態は開示された特定の実施形態に限定されるものではないこと、修正及び他の実施形態が本発明の範囲内に含まれることを意図していることを理解されたい。例えば、図2A及び図2Bは、本開示の一態様による、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎又は下顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成されたスプリント器具100の上面図及び側面図を概略的に示す図である。図示のように、そのようなスプリント器具100は、図1A及び図1Bに示す実施形態と同様に構成され、スプリント本体200は、中心線から第1及び第2の端部200A、200Bに向かって各方向に円弧に対して実質的に対称に延在するように構成される。したがって、スプリント本体200の中心線は下顎の中間部に取り付けられるように構成され、第1及び第2の端部200A、200Bは下顎周辺でいずれの方向にも実質的に同様に延在する。また、追跡部600はスプリント本体200の凸面400の中間部から延在する。さらに、ここでは特に説明しないが、図2A及び図2Bに示す実施形態は、特に図示しなくても当業者によって理解されるように、図1A及び図1Bに関連する前述の列挙された要素を含むことができる。それらの列挙された要素のいくつかは図2A及び図2Bに示されている。
【0034】
図2Cは、図2A及び図2Bに示す本開示の態様によるスプリント器具を概略的に示し、そのようなスプリント器具の第1のスプリント器具100Aが下顎に取り付けられ、そのようなスプリント器具の第2のスプリント器具100Bが反転されて上顎に取り付けられた図である。図2A及び図2Bに示す実施形態に関してさらに注目すべきは、スプリント本体200と追跡部600との間に画定される鈍角である。これに関して、図2Cに示すように下顎又は上顎に取り付けられる場合、この鈍角によって、スプリント本体200が下顎又は上顎に設置されたときに追跡部600が患者の(下側又は上側の)の唇から離れることができる。例えば、そのようなスプリント器具の構成により、患者は唇を開いたままにする代わりに、追跡部600の周辺で口及び唇を閉じることができる。
【0035】
図3A及び図3Bは、本開示のさらに別の態様による、スプリント器具100の上面図及び下面図を概略的に示す図であり、スプリント器具100は、例えば完全に又は部分的に無歯顎の患者の上顎の中間部に適用可能であり、手術ロボット用誘導システムのための基準マーカ及び/又は追跡マーカを提供するように構成される。より具体的には、上顎(例えば、上顎の中間部の周辺の上唇と歯肉との間に延在する鼻棘)の周辺の特定の軟組織の解剖学的構造に起因して、図3A及び図3Bに示す実施形態のスプリント本体200は、スプリント本体200の中間部の周辺に(例えば、第1及び第2の端部200A、200B間の中間で)鼻棘をその中に受け入れて収容するように構成された凹状逃げ部200Cを含みかつ画定する。したがって、凹状逃げ部200Cは上顎を伴う手術において、より快適なスプリント器具100を提供する。
【0036】
他の点では、特に上顎に適用可能であるとして示されているが、図3A及び図3Bに示す実施形態は、他の点において図2A及び図2Bに示す実施形態と同様であり、当業者によって理解されるように、反転されて下顎に取り付けられることもできる。また、図3A及び図3Bに示す実施形態は、必要又は所望に応じて、図2A及び図2Bに示す実施形態による、スプリント本体200と追跡部600との間に画定される鈍角も含むことができる。さらに、ここでは特に説明しないが、図3A及び図3Bに示す実施形態は、特に図示しなくても当業者によって理解されるように、図1A図1B及び図2A図2Bに関連して前述の列挙された要素を含むことができる。それらの列挙された要素のいくつかは図3A及び図3Bに示されている。図3C及び図3Dは、図3A及び図3Bに示す本開示の態様によるスプリント器具100を概略的に示し、上顎に取り付けられた図である。
【0037】
さらに、前述の説明及び関連する図面は、要素及び/又は機能の特定の例示的な組合せの文脈で例示的な実施形態を説明するものであるが、本開示の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態によって要素及び/又は機能の異なる組合せが提供されてもよいことを理解されたい。これに関して、例えば、上記で明示的に説明したものとは異なる要素及び/又は機能の組合せも本開示の範囲内で考えられる。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0038】
本明細書では、様々なステップ又は計算を説明するために第1、第2などの用語が使用されることがあるが、これらのステップ又は計算はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある動作又は計算を別の動作又は計算から区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の計算を第2の計算と呼んでもよく、同様に、第2のステップを第1のステップと呼んでもよい。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語及び「/」記号は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組合せを含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。したがって、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D