(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】積層体および車両用内装材の表皮材
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240315BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240315BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240315BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240315BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240315BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240315BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240315BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240315BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240315BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240315BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/40
B32B27/18 B
B32B27/26
B32B27/00 D
C09J175/04
C09J11/06
C09J175/06
C09J175/08
B60R13/02 Z
B60N2/58
(21)【出願番号】P 2023032197
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019027291の分割
【原出願日】2019-02-19
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海 真平
(72)【発明者】
【氏名】長野 祐也
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴博
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136735(JP,A)
【文献】特開2013-151676(JP,A)
【文献】特開2016-010912(JP,A)
【文献】特開2014-104741(JP,A)
【文献】特表2014-516321(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131507(WO,A1)
【文献】特開2015-063579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B60N2/00-2/90
B60R13/01-13/04
13/08
C08G18/00-18/87
71/00-71/04
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤を含む発泡ポリウレタン層に被覆層が載置された、VOCが100ppm未満の積層体において、
前記発泡ポリウレタン層と前記被覆層とは、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)を原料とするポリウレタンプレポリマー(I)を含むポリウレタンホットメルト接着剤によって接着され、
前記ポリウレタンホットメルト接着剤における前記ポリイソシアネート成分(B)は、ポリイソシアネート成分(B)全体に対して、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートを0.5質量%超10質量%以下含むことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
難燃剤を含む発泡ポリウレタン層に被覆層が載置された、VOCが100ppm未満の積層体において、
前記発泡ポリウレタン層と前記被覆層とは、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)を原料とするポリウレタンプレポリマー(I)を含むポリウレタンホットメルト接着剤によって接着され、
前記ポリウレタンホットメルト接着剤における前記ポリイソシアネート成分(B)はカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、
前記ポリウレタンホットメルト接着剤の下記熱安定性が200%以下であることを特徴とする、積層体。
<熱安定性>
140℃で窒素雰囲気下の中、4時間加熱したホットメルト接着剤組成物の粘度上昇率(試験後粘度/試験前粘度×100)として評価される値。
【請求項3】
FMVSS302による燃焼性試験にて燃焼速度が102mm/min以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリオール成分(A)は、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応物からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とを含み、
前記ポリオール成分(A)における前記ポリエーテルポリオール(a-2)の含有量が、前記ポリオール成分(A)100質量%に対して30~80質量%であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の積層体を用いてなる、車両用内装材の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体およびそれを用いた車両用内装材の表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材として、発泡ポリウレタン層の一方の表面に被覆層が接着されてなる積層体の他方の表面に表面層が接着されたものがある。表皮材は、裁断及び縫製によってシートクッションに被さる形状にされる。
【0003】
被覆層は、縫製時の作業や表皮材をシートクッションに被せる際の作業を良好にするための滑り性向上、及び発泡ポリウレタン層の裏面保護等のために設けられている。
他方、表面層は、車両のシートに要求される装飾性や感触性などに応じて本革や合成皮革あるいはファブリック等からなる適宜の材質で構成されている。
【0004】
また、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材は、耐熱性が求められるため、発泡ポリウレタン層と被覆層及び表面層との接着にポリウレタン反応型ホットメルト接着剤を用いるものがある(特許文献1)。ポリウレタン反応型ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンプレポリマーを主成分とするものである。
【0005】
車両のシートクッションに使用される接着剤としては、人体に影響を与える有機揮発分が少ないことが望まれている。このような低アウトガス性ホットメルト接着剤として、特許文献2では、低アウトガス性のオレフィン系ホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-136735号公報
【文献】特開2017-031273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両のシートクッションの表面に被さる表皮材自体においても、人体に悪影響を与えるVOC(揮発性有機化合物)の量が少ないものが求められる。また、車両のシートクッションの表面に被さる表皮材は、表面層の材質によってVOCの量が異なり、さらに、同一種類の本革等であっても、使用される部位によってVOCの量にバラツキが生じる。また、オレフィン系ホットメルト接着剤では、低VOCを達成することは可能であっても、耐熱性等の観点からその用途が限られており、車両用等とすることは困難であった。
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、材質などによってVOCの量にバラツキを生じ易い表面層が接着されていない、発泡ポリウレタン層と被覆層とからなる積層体のVOCの量を少なくし、それにより、所定の材質からなる表面層が接着された車両用内装材の表皮材のVOCの量を少なくすることを目的とする。
さらに、車両用内装材の表皮材には、車両火災の場合などを考慮して難燃性が求められる。また、車両に用いるために良好な熱特性(特に、耐熱性や熱安定性)が求められる。本発明は、低VOC、良好な難燃性および良好な熱特性を備える積層体および車両用内装材の表皮材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含む発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られた発泡ポリウレタン層に、被覆層が載置された積層体において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物は、前記触媒として活性水素基を含むリシノール酸スズと、前記難燃剤としてリン含有固体難燃剤と、を含み、前記発泡ポリウレタン層と前記被覆層とは、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)を原料とするポリウレタンプレポリマ-(I)と、触媒(II)と、を含むポリウレタンホットメルト接着剤によって接着され、前記ポリウレタンホットメルト接着剤における前記ポリイソシアネート成分(B)は、ポリイソシアネート成分(B)全体に対して、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートを0.5質量%超10質量%以下含み、前記触媒(II)は、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応型触媒を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記反応型触媒は、前記イソシアネート基と反応する官能基を1つ有し、三級アミン構造をもつ触媒であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ポリオール成分(A)は、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応物からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とを含み、前記ポリオール成分(A)における前記ポリエーテルポリオール(a-2)の含有量が、前記ポリオール成分(A)100質量%に対して30~80質量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、数平均分子量が1000~5000であり、前記ポリエーテルポリオール(a-2)は、数平均分子量が1000~4000であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物は、前記難燃剤として、前記リン含有固体難燃剤と、平均粒子径0.1~0.5μmのメラミン粉末とを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、前記発泡ポリウレタン樹脂組成物における前記リン含有固体難燃剤は、リン酸工ステル化合物であることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか一項において、前記ホットメルト接着剤における前記ポリウレタンプレポリマー(I)の前記ポリオール成分(A)は、その他のポリオール(a-3)として、非晶性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および数平均分子量500以下の低分子量ジオールからなる群より選択される1以上のポリオールを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1から7の何れか一項において、前記発泡ポリウレタン層の前記被覆層が載置された面とは反対側の面に、前記ポリウレタンホットメルト接着剤によって表面層が接着されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項8の積層体を用いてなる車両用内装材の表皮材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低VOC、良好な難燃性および良好な熱特性(特に、耐湿熱性や熱安定性)を備える積層体および車両用内装材の表皮材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の積層体を示す断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態の積層体を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例と比較例の構成と熱特性、燃焼性及びVOC等を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す本発明の一実施形態に係る積層体10は、発泡ポリウレタン層11の一方の表面に被覆層15が載置されたものからなる。
発泡ポリウレタン層11は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒及び難燃剤を含む発泡ポリウレタン樹脂組成物が発泡して得られたものである。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールは、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られる化合物のほか、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン等が用いられる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が用いられる。
【0021】
ポリエーテルポリオールは、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させたトリオール、それにさらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物と環状エーテル基を有する化合物とを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールでもよい。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸等の無水物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。ポリエーテルポリオールはポリエステルポリオールに比べ、ポリイソシアネート類との反応性に優れているという点と、加水分解をしないという点から好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリエステルポリオールが用いられる。
【0024】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等を使用することができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,6-へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3,6-へキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。また、その他プレポリマーも使用することができる。ポリイソシアネートは単独でもよく、あるいは2種以上を用いてもよい。
【0025】
イソシアネートインデックスは80~110が好ましい。イソシアネートインデックスが80未満では、引張強さ、伸び等の機械的物性の良い発泡ポリウレタン層11が得られ難くなる一方、110を越えると発泡ポリウレタン層11の柔軟性が低下する。なお、イソシアネートインデックス(INDEX)は、ウレタン原料中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(発泡ポリウレタン樹脂組成物中のイソシアネート当量/発泡ポリウレタン樹脂組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0026】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100質量部に対して2~5質量部程度が好ましい。また、水と共に他の発泡剤を併用する場合における他の発泡剤の量は適宜決定される。
【0027】
触媒としては、活性水素基を含むリシノール酸スズが好適であり、アミン触媒と併用されるのがさらに好適である。触媒にリシノール酸スズを含むことにより、発泡ポリウレタン層11及び積層体10のVOCの量を減らすことができる。アミン触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等を挙げることができる。
【0028】
難燃剤としては、リン含有固体難燃剤が使用される。リン含有固体難燃剤は、揮発性の低い化合物であり、非ハロゲン、含ハロゲンの何れも使用することができ、リン酸工ステル化合物が使用される。具体的には、トリフェニルホスフェート(白色、フレーク状)、芳香族縮合リン酸エステル(白色粉体~粒状)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート(白色、結晶状、粉体)等を使用することができる。リン含有固体難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部当たり3~15質量部であることが好ましい。この含有量が3質量部未満の場合には、発泡ポリウレタン層11の低燃焼性を十分に向上させることができなくなる。一方、15質量部を越える場合には、発泡のバランスが崩れて良好な発泡ポリウレタン層11を得難くなる傾向がある。
【0029】
なお、リン含有難燃剤には、本実施形態で使用するリン含有固体難燃剤の他にリン含有液体難燃剤がある。しかし、リン含有液体難燃剤は、リン含有固体難燃剤と比べ、揮発性が高いため、発泡ポリウレタン層11及び積層体10のVOC量が多くなる。
【0030】
本実施形態の難燃剤には、リン含有固体難燃剤と共にメラミン粉末を併用するのが好ましい。メラミン〔C3N3(NH2)3〕は、酸素を含まないため燃焼の進行を抑えることができる。メラミン粉末の平均粒子径は0.1~0.5μmが好ましい。ここで、メラミンの『平均粒子径』は、粒子径分布測定装置(例えば、SALD-7000H(島津製作所製))を用いて算出されるものである。具体的には、この装置を用いて、溶媒(例えば、酢酸エチル)に試料が分散した分散液を評価して得られた、重量平均(重量(体積)基準分布の平均)の粒子径が『平均粒子径』である。平均粒子径が0.1~0.5μmという微細なメラミン粉末が発泡ポリウレタン層11中に分散され、発泡ポリウレタン層11の燃焼時に溶融して皮膜となり、酸素が遮断されて燃焼が抑えられるものと推測される。メラミン粉末の平均粒子径が0.1μm未満の場合には、メラミン粉末の製造が煩雑になり、製造コストが上昇する。一方、0.5μmを越える場合には、発泡ポリウレタン層11中におけるメラミン粉末の分散性が低下し、低燃焼性を向上させる作用を十分に果たすことができなくなる。
【0031】
メラミン粉末の含有量は、ポリオール100質量部当たり3~13質量部が好適である。その含有量が3質量部未満の場合には、発泡ポリウレタン層11の低燃焼性を促す作用を十分に果たすことができなくなる。一方、13質量部を越える場合、発泡のバランスが崩れやすくなり、良好な発泡ポリウレタン層11を得ることができなくなるおそれがある。
【0032】
発泡ポリウレタン層11の密度及び厚みは適宜決定されるが、積層体10を車両のシートクッションなどの車両用内装材の表皮材に使用する場合、車両用内装材の表面に沿わせて撓ませることができるようにするため、例えば、密度20~35kg/m3、厚み3~10mm程度が好ましい。
【0033】
発泡ポリウレタン樹脂組成物には、その他の添加剤として、例えば整泡剤を含むのが好ましい。整泡剤としては、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が挙げられる。整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.5~2.5質量部を例示する。
さらにその他の添加剤の例として、必要に応じて充填剤、安定剤、着色剤、可塑剤、抗菌剤等、公知の添加剤を挙げることができる。
【0034】
発泡ポリウレタン層11の製造は、公知のポリウレタン発泡体の製造方法によって行われる。公知のポリウレタン発泡体の製造方法として、モールド発泡とスラブ発泡がある。モールド発泡は、モールドに発泡ポリウレタン樹脂組成物を充填してモールド内で発泡させる方法である。一方、スラブ発泡は、発泡ポリウレタン樹脂組成物を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。本実施形態の発泡ポリウレタン層としては、スラブ発泡で製造された発泡ポリウレタンを所定厚みに裁断したスラブ発泡体が、より好ましい。
【0035】
被覆層15としては、不織布や織布あるいは編物が好ましい。特に編物の中でもトリコットは、弾力及び伸縮性があるために被覆層15として用いた場合、積層体11を車両用内装材の表皮材に使用する際に、車両用内装材の表面に沿って変形し易く、表皮材に皺を生じ難くできる。また、被覆層15の材質として、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。
【0036】
発泡ポリウレタン層11と被覆層15とは、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)を原料とするポリウレタンプレポリマー(I)と、触媒(II)と、を含むポリウレタンホットメルト接着剤13によって接着されている。ポリウレタンプレポリマー(I)は、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート(B)を原料とし、ポリイソシアネート(B)を化学量論的に過剰量にしてポリオール成分(A)と反応させることで得られ、末端にイソシアネート基(NCO)を有するポリウレタンプレポリマーである。
【0037】
ここで、本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤13として採用され得るホットメルト接着剤組成物について以下の順番で具体的に説明する。ただし、本発明はここで説明される具体例に限定されるものではない。
1 成分
2 製造方法
3 物性
4 用途
5 適用方法
【0038】
<<<成分>>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、低アウトガス性の反応型ウレタンホットメルトである。本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、ベース樹脂であるイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー(I)と、触媒(II)と、を含む。更に、必要に応じて、接着剤組成物中にその他の成分を含んでいてもよい。
【0039】
このようなホットメルト接着剤組成物を用いると、加熱されて溶融状態となったポリウレタンプレポリマーが冷却・固化する際に、接着性が発現する。更に、未硬化のイソシアネート末端が空気中の水分と反応し架橋構造を形成することで、より強固な接着性が発現する。このようなホットメルト接着剤組成物を、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物、又は、反応型ホットメルト接着剤組成物等と呼称してもよい。
【0040】
<<ポリウレタンプレポリマー(I)>>
ポリウレタンプレポリマー(I)は、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)を原料とし、通常、ポリイソシアネート成分(B)を化学量論的に過剰量にしてポリオール成分(A)と反応させることで得られる。
【0041】
<ポリオール成分(A)>
ポリオール成分(A)としては、ポリウレタンプレポリマーの製造において通常使用されるものであれば特に限定されないが、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。より具体的には、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応物からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とを含むことが好ましい。
【0042】
炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸は、デカン二酸(セバシン酸、C10)、ウンデカンニ酸(C11)及びドデカン二酸(C12)が挙げられる。また、炭素数4~6の脂肪族ジオールは、プタンジオール(例えば、1,3-ブタンジオールや1,4-ブタンジオール等)、ペンタンジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール等)及びへキサンジオール(例えば、1,6-へキサンジオール等)が挙げられる。
【0043】
本実施形態において、「結晶性ポリエステルポリオール」とは、融点30℃以上であるポリエステルポリオールを示し、「非晶性ポリエステルポリオール」とは、融点30℃未満であるポリエステルポリオールもしくは融点が存在しないポリエステルポリオールを示す。なおこのような結晶性は、ポリエステルポリオールを構成するカルボン酸・アルコールを適宜選択することによって調整可能である。融点は、示差走査熱量計を用いて、温度プログラム25℃→-80℃→100℃(昇温速度5℃/min)における-80℃→100℃範囲での融解ピークが現れる温度とする。
【0044】
結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、数平均分子量が、1000~5000の範囲内であることが好適であり、2000~4500の範囲内であることがより好適である。ここで、『数平均分子量』は、原料の水酸基価より算出される値である。本明細書において記載される他の『数平均分子量』も、ここで説明したものと同様にして算出される値である。
【0045】
ポリエーテルポリオール(a-2)としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0046】
ポリエーテルポリオール(a-2)は、数平均分子量が1000~4000の範囲内であることが好適であり、1500~3000の範囲内であることがより好適である。
【0047】
また、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)およびポリエーテルポリオール(a-2)以外のポリオールとして、非晶性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及び数平均分子量500以下の低分子ジオールからなる群より選択される1つ以上のポリオール(a-3)が例示される。ポリオール成分(A)は、その他のポリオール(a-3)のみを含むものであってもよいが、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)およびポリエーテルポリオール(a-2)を含有し、ポリオール(a-3)を更に含有することが好ましい。
【0048】
非晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びへキサヒドロイソフタル酸等)、またはこれらのエステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ぺンタンジオール、1,6-へキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
【0049】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ぺンタンジオール、1,6-へキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、脂環式ジヒドロキシ化合物等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0050】
低分子量ジオールとしては、分子量500以下のジオールであれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、2-メチルー1.3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロバンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-へキサンジオールが挙げられる。
【0051】
その他のポリオール(a-3)は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、その他のポリオール(a-3)として、上記以外のポリオールを含んでいてもよい。
【0052】
<ポリイソシアネート成分(B)>
ポリイソシアネート成分(B)として含まれるポリイソシアネート(イソシアネート基を複数有するもの)について説明する。
【0053】
ポリイソシアネート成分(B)は、少なくとも、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(b-1)と、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート以外のポリイソシアネート(その他のポリイソシアネート(b-2)))を含む。
【0054】
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(b-1)は、下記の式で示される化合物である。
【0055】
【0056】
その他のポリイソシアネート(b-2)としては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,6-へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-へキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロへプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。
【0057】
その他のポリイソシアネート(b-2)は、MDI(ピュアMDI)を含むことが好ましい。
【0058】
ポリイソシアネート成分(B)に含まれる全てのポリイソシアネートの平均官能基数(平均イソシアネート基数)は、2.0~4.0であることが好ましく、2.0~3.0であるとより好ましく、2.0~2.5であると更に好ましく、2.0~2.3であると更に一層好ましく、2.0~2.1であると特に好ましい。
【0059】
なお、ポリイソシアネート成分(B)に含まれる全てのポリイソシアネートの平均官能基数は、特開平10-231347号公報等に開示された方法に基づき計算できる。例えば、変性ジフェニルメタンジイソシアネートと、ジフェニルメタンジイソシアネート(精製p-MDI、4,4’-MDI)とを含む場合、変性ジフェニルメタンジイソシアネートと、ジフェニルメタンジイソシアネートとが同様の比率となるように計量した場合のNCO基含有率の測定結果に基づき、以下の式1から計算することができる。
【0060】
【0061】
ポリウレタンプレポリマー(I)のNCO基含有率は、特に限定されないが、好ましくは1.0~2.5%である。このような範囲とすることで、作業中の発泡等を抑制しつつも、湿気による硬化を促進することが可能となる。なお、NCO基含有率は、JIS K1603-1に従って測定されるものである。
【0062】
<触媒(II)>
触媒(II)としては、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応型触媒を含む。
【0063】
反応型触媒においてイソシアネート基と反応する官能基とは、例えば、ポリイソシアネートと反応する活性水素基であり、水酸基及びアミノ基のうちの少なくとも一種の官能基であることが好ましい。
【0064】
反応型触媒は、イソシアネート基と反応する官能基を1つ有し、三級アミン構造をもつ触媒であることが好ましい。
【0065】
反応型触媒としては、例えば、(1)官能基として水酸基を有するアミン系触媒(例えば、N,N-ジメチルアミノへキサノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)、及び、(2)官能基としてアミノ基を有するアミン系触媒(例えば、N,N,N”,N”-テトラメチルジエチレントリアミン)等が挙げられる。
【0066】
これらの反応型触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0067】
また、触媒(II)としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、反応型触媒以外の触媒(例えば、金属系触媒や上記官能基を有しないアミン系触媒等)を含んでいてもよい。
【0068】
<その他の成分>
その他の成分として、好ましくはVOCが150ppm以下になる範囲内で、ホットメルト接着剤に使用される公知の添加剤、例えば、オイル成分(可塑剤)、粘着付与樹脂、酸化防止剤、ワックス等を配合可能である。また、熱安定剤、充填剤等を配合してもよい。
【0069】
オイル成分としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイル等が例示される。なお、オイル成分として植物性油等を用いてもよい。
【0070】
粘着付与樹脂は、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添脂肪族系石油樹脂、水添芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂およびこれらの変性樹脂からなる群より選択される1種以上の粘着付与樹脂を例示できる。
【0071】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox1010(BASF社製))、イオウ系酸化防止剤(例えば、SUMILIZER TP-D(住友化学社製))及びリン系酸化防止剤等(例えば、Irgafos168(BASF社製)、JP-650(城北化学社製))を例示できる。
【0072】
ワックスとしては、天然ろう(例えば、動物系ろう(みつろう、鯨ろう等)、植物系ろう(木ろう等)、石油系ろう(パラフィンワックス等)等)、及び、合成ろう{例えば、合成炭化水素(低分子ポリエチレン等)、脂肪酸工ステル(ポリエチレングリコール等)等}を例示できる。
【0073】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
<<各成分の含有量>>
ポリウレタンプレポリマー(I)の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは80~99.99質量%(より好ましくは95~99.99質量%)である。
【0075】
触媒(II)の含有量は、ポリウレタンプレポリマー(I)の種類によっても異なるが、組成物全体に対して、好ましくは0.01~0.1質量%(より好ましくは0.01~0.05質量%)である。
【0076】
ポリオール成分(A)が、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)と、ポリエーテルポリオール(a-2)とを含有する場合、ポリオール成分(A)における結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の含有量は、ポリオール成分(A)全体に対して、10~60質量%であることが好適であり、20~40質量%とすることがより好適である。このような範囲とすることにより、適正な固化時間かつ、高い剥離強度を維持することが可能となる。
【0077】
また、ポリオール成分(A)におけるポリエーテルポリオール(a-2)の含有量は、ポリオール成分(A)全体に対して、30~80質量%であることが好適であり、40~60質量%とすることがより好適である。このような範囲とすることにより、高い柔軟性と剥離強度の両立が可能となる。
【0078】
なお、ポリオール成分(A)における、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の含有量とポリエーテルポリオール(a-2)の含有量との比は、20:80~70:30であることが好適であり、30:70~50:50であることがより好適である。
【0079】
更に、ポリオール成分(A)におけるその他のポリオール(a-3)の含有量は、ポリオール成分(A)全体に対して30質量%以下であることが好適である。このような範囲とすることにより、耐湿熱老化性・剥離強度等の物性を満たすことが可能となる。なお、下限値は特に限定されないが、例えば、ポリオール成分(A)全体に対して5質量%以上である。
【0080】
ポリイソシアネート成分(B)中、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(b-1)の含有量は、ポリイソシアネート成分(B)全体に対して、0.5質量%超10質量%以下である。さらに、当該含有量は、ポリイソシアネート成分(B)全体に対して、0.6質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.7質量%以上10質量%以下であるとより好ましく、0.8質量%以上10質量%以下であると更に好ましく、0.9質量%以上10質量%以下であると更に一層好ましく、1質量%以上10質量%以下であると特に好ましい。カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(b-1)の配合量をこの範囲とすることで、組成物の粘度上昇を抑えつつも、変性した基団により接着剤の耐湿熱性および熱安定性を向上させることができる。中でも、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(b-1)の含有量を、ポリイソシアネート成分(B)全体に対して、1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
【0081】
その他のポリイソシアネート(b-2)全体に対して、50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上または100質量%がMDI(ピュアMDI )であることが好ましい。
【0082】
<<<製造方法>>>
本実施形態に係るウレタンホットメルト接着剤組成物の製造方法は、公知の方法であればよく、製造されたウレタンホットメルト接着剤組成物が本発明の目的を損なわない限りにおいて、特に限定されない。例えば、以下のように製造することができる。(1)所定量のポリオールの入った反応容器に、所定量のポリイソシアネートを滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基が、前記ポリオールの有する水酸基に対して化学量論的に過剰となる条件で反応させ、ポリウレタンプレポリマー(I)を調製する。(2)前記ポリウレタンプレポリマー(I)に触媒(II)を含むその他の成分を所定量滴下し、撹拌することで所望のウレタンホットメルト接着剤組成物を製造する方法が挙げられる。
前記反応は、例えば50~120℃、好ましくは60~100℃の温度で行われる。反応時間は例えば1~15時間である。
【0083】
<<<物性>>>
次に、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物の各物性について説明する。
【0084】
<<VOC>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、90℃で加熱したときに発生する有機揮発分の量がトルエン換算値で150ppm以下であることが好ましい。VOCをこの範囲とすることで車両シートの全製品に対して規制値を満たすことができる。
【0085】
<<耐湿熱性>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、耐湿熱性として、湿熱環境(80℃95%)で静置した際に、常態剥離強度に対して80%以上の剥離強度を維持可能な時間として評価される耐湿熱性が、400時間以上であることが好ましい。
【0086】
<<熱安定性1(貯蔵安定性):中温/長期熱安定性>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、アルミ袋に密封された状態で50℃3ヶ月間静置された状態で、NCO%の残存率(静置後のNCO%/静置前のNCO%×100)として評価される貯蔵安定性が、80%以上であることが好ましい。
【0087】
<<熱安定性2:高温/短期熱安定性>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、140℃で窒素雰囲気下の中、4時間加熱したホットメルト接着剤組成物の粘度上昇率(試験後粘度/試験前粘度×100)として評価される熱安定性が、200%以下であることが好ましい。
【0088】
<測定方法>
Brookfield社のブルックフィールドデジタル粘度計LVDV-I+に接続したローターNo.4を、円筒状ガラス容器中の140℃に加熱溶融した試料150士15gに入れ、粘度を測定することができる。試験前粘度は0時間後の粘度、試験後粘度は4時間後の粘度である。
【0089】
<<常態剥離強度>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、ウレタンフォームと表皮材を貼り合わせ、1日後の剥離強度として評価される常態剥離強度が、3N/25mm以上となることが好ましい。
【0090】
<<<用途>>>
本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物は、表皮材と基材を積層接着可能な反応型ホットメルト接着剤組成物である。特に、後述する特定の繊維状とした際に、風合い、通気性、及び浸み込み防止性に優れる接着剤層(硬化したホットメルト接着剤組成物からなる層)を形成する。従って、表皮材および基材が、樹脂発泡体、樹脂フィルム、合成皮革、天然皮革、織布又は不織布等、種類を問わずに適用可能である。また、基材がウレタン樹脂発泡体に対しても適用可能であるため、連続シートからなる基材と表皮材を積層接着する長尺製品に適用することや、通常の熱可塑性ホットメルト接着剤では適用することが困難な、車両用部材用(特に、車両内装用)とすることもできる。
【0091】
<<<適用方法>>>
次に、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物の適用方法の一例について説明する。なお本例では、ホットメルト接着剤組成物を非接触方式(例えば、スプレー方式)を用いて、所定の粘着剤層となるように塗布する場合について説明するが、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物の適用方法はこれには限定されず、公知の方法により接着対象面に塗布されてもよい。
【0092】
<<溶融工程>>
先ず、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物を加熱して溶融した状態で保持する(溶融工程)。通常、溶融工程においては水分非含有雰囲気とする必要がある。
【0093】
<<塗布工程>>
次に、適宜の塗布方法(好ましくは非接触方式の塗布方法)により、溶融状態であるホットメルト接着剤組成物を、被接着物の接着対象面(好ましくは発泡体の表面)に対して塗布する。具体的な塗布時の形状としては特に限定されないが、例えば、線形状、ドット状、繊維状等に塗布し、接着剤層を形成すればよい。その他にも、シート状に接着剤層を形成してもよい。なお、接着剤層は、接着剤組成物の塗布量を、好ましくは5~50g/m2(より好ましくは10~30g/m2)等とすればよい。なお、接着対象面となる両方の面に接着剤組成物を塗布してもよい。
【0094】
なお、具体的な塗布条件としては特に限定されず、例えば、上記のように非接触方式の塗布方法を使用する場合、圧力0.01~0.4MPa、温度100~160℃等にて行えばよい。
【0095】
ここで、非接触方式の塗布方法とは、接着対象部材に塗布設備が接触することがなく接着剤組成物を塗布する方法であり、例えば、スプレー方式による塗布が挙げられる。
【0096】
なお、塗布工程前に、接着対象面に公知の前処理(例えば、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等)を行ってもよい。
【0097】
<<接触工程、硬化工程>>
塗布工程後、接着剤層が設けられた接着対象面(塗布面)に他の部材を接触させ、ホットメルト接着剤組成物を冷却硬化させる。通常、前述のように、冷却硬化後、未硬化のイソシアネート末端が空気中の水分と反応し架橋構造を形成することで、より強固な接着性が発現する。
【0098】
上記塗布工程に記載された方法にて、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物を塗布する場合、接着対象を問わずに接着可能である。具体的には、樹脂発泡体、樹脂フィルム、合成皮革、天然皮革、織布又は不織布であっても、風合い、通気性、接着性に優れると共に、接着対象への浸み込みを防止できる。特に、接着対象をウレタン樹脂発泡体とした場合においても、このような効果を奏する。
【0099】
以上のようにして、本実施形態に係るホットメルト接着剤組成物の硬化物である接着層を有する積層体、特には、発泡体と当該発泡体の表面上に設けられた接着剤層とを有する積層体が得られる。なお積層体は、具体的な構成としては、基材であるウレタンフォームと、表皮材もしくは裏基布からなる積層体であることが好ましい。このような積層体は、好ましくは車両用内装材すなわち、基材である(発泡体からなる緩衝層の、裏面に裏基布層が形成された積層シートの表面に表皮層が貼着されてなる積層材(積層シ-ト))として利用可能である。
【0100】
ここで、再び
図1を参照して、本実施形態の積層体10について説明する。積層体10の製造は、発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15との何れか片方又は両方にポリウレタンホットメルト接着剤13を所定量塗布し、その後、発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15を重ね合わせ、その状態でポリウレタンホットメルト接着剤13を冷却硬化させることにより行う。
【0101】
ポリウレタンホットメルト接着剤13の塗布方法は、スプレー塗布などの非接触方式、あるいはロールコータ塗布などの接触方式のいずれでもよい。ポリウレタンホットメルト接着剤13の塗布量は、5~50g/m2が好適であり、10~30g/m2がより好適である。非接触方式の場合の条件とし、圧力0.01~0.4MPa、温度100~160℃を例示する。
【0102】
ポリウレタンホットメルト接着剤13は、冷却硬化後、ポリウレタンプレポリマー(I)における未硬化の末端イソシアネートが、空気中の水分と反応して架橋構造を形成することで、より強固な接着強度を発揮する。
【0103】
図2に示す他の実施形態の積層体20は、発泡ポリウレタン層11の一方の表面に被覆層15が載置され、被覆層15が載置された面とは反対側の発泡ポリウレタン層11の表面に表面層19が載置されたものからなる。被覆層15と発泡ポリウレタン層11とはポリウレタンホットメルト接着剤13によって接着され、また表面層19と発泡ポリウレタン層11とはポリウレタンホットメルト接着剤17によって接着されている。ポリウレタンホットメルト接着剤13及び17は、
図1の積層体10で説明したホットメルト接着剤13と同一である。
【0104】
表面層19は、天然革、合成革、ファブリック(プラスチックフィルム裏打品)等、適宜の材質で構成される。
【0105】
積層体20の製造は、次の方法によって行える。まず、
図1の積層体10と同様にして発泡ポリウレタン層11の片面と被覆層15とをポリウレタンホットメルト接着剤13で接着する。その後、発泡ポリウレタン層11の他方の面と表面層19の何れか片方又は両方にポリウレタンホットメルト接着剤17を所定量塗布する。その後、発泡ポリウレタン層11の表面と表面層19を重ね合わせ、その状態でポリウレタンホットメルト接着剤17を冷却硬化させる。これにより積層体20を得ることができる。ポリウレタンホットメルト接着剤17は、冷却硬化後、ポリウレタンプレポリマーにおける未硬化の末端イソシアネートが、空気中の水分と反応して架橋構造を形成することで、より強固な接着強度を発揮する。なお、先に表面層19をポリウレタンホットメルト接着剤17によって発泡ポリウレタン層11の片面に接着し、その後に被覆層15をポリウレタンホットメルト接着剤13によって発泡ポリウレタン層11の反対面に接着してもよい。
【0106】
積層体20は、車両のシートクッションやヘッドレストあるいはインストルメントパネルのような車両用内装材の表皮材として好適なものである。車両用内装材は、発泡ポリウレタンなどからなるクッション材を主要構成材とするものであり、クッション材の表面に表皮材が被せられる。積層体20を車両用内装材の表皮材として用いる場合、積層体20を所定サイズに裁断して得た複数の積層体片を、表面層19が表側となるようにして縫製することにより、車両用内装材に被さる形状にする。
【実施例】
【0107】
次に、実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0108】
[ウレタンホットメルト接着剤組成物に係る実施例A]
<<<ウレタンホットメルト接着剤組成物の製造>>>
以下、各実施例及び各比較例に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物の製造方法について述べる。
【0109】
<<実施例A1>>
ポリオール成分(A)を反応器へ投入し、ポリイソシアネート成分(B-1)を添加し、100℃にて3~4時間反応させた後、OH基含有三級アミン触媒を添加してさらに1時間反応させ、NCO基含有率が2.0%であるウレタンプレポリマーを含むポリウレタンホットメルト接着剤組成物を得た。各成分の配合量は、ポリオール成分(A)が80質量部、ポリイソシアネート成分(B-1)が20質量部、アミン触媒が0.03質量部である。
【0110】
<ポリオール成分(A)>
結晶性ポリエステルポリオール(セバシン酸/ブタンジオール)融点60℃、数平均分子量4000、40質量部
ポリプロピレングリコール 付加形式PO単独、数平均分子量2000、50質量部
ポリカーボネートジオール、数平均分子量1000、10質量部
【0111】
<ポリイソシアネート成分(B-1)>
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、99質量部
カルボジイミド変性MDI、1質量部
【0112】
<<実施例A2>>
ポリイソシアネート成分(B-1)をポリイソシアネート成分(B-2)に変更した以外は実施例A1と同様に、実施例A2に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0113】
<ポリイソシアネート成分(B-2)>
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、90質量部
カルボジイミド変性MDI、10質量部
【0114】
<<比較例A1>>
ポリイソシアネート成分(B-1)をポリイソシアネート成分(B-3)に変更した以外は実施例A1と同様に、比較例A1に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0115】
<ポリイソシアネート成分(B-3)>
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、100質量部
【0116】
<<比較例A2>>
OH基含有三級アミン触媒を、高分子量型三級アミン触媒(主成分:N,N’-ジメチルドデシルアミン)に変更した以外は実施例A1と同様に、比較例A2に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0117】
<<比較例A3>>
ポリイソシアネート成分(B-1)をポリイソシアネート成分(B-4)に変更した以外は実施例A1と同様に、比較例A3に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0118】
<ポリイソシアネート成分(B-4)>
ジフニェルメタンジイソシアネート(MDI)、99.5質量部
カルボジイミド変性MDI、0.5質量部
【0119】
<<比較例A4>>
ポリイソシアネート成分(B-1)をポリイソシアネート成分(B-5)に変更した以外は実施例A1と同様に、比較例A4に係るポリウレタンホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0120】
<ポリイソシアネート成分(B-5)>
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、89質量部
カルボジイミド変性MDI、11質量部
【0121】
<<<評価>>
次に、上記にて得られた各ホットメルト接着剤組成物について、具体的に以下の方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0122】
<<VOC>>
加熱脱着装置(Markes社 TD-100)のガラスチューブにホットメルト接着剤を直接入れ、アウトガスをGC/MS(Agilent 社 GC/MS(6890/5973))で測定した。試料は90℃で30分加熱し、C20までをトルエン換算値で算出した。測定結果が150ppm以下の場合、合格と判定した。
【0123】
<<耐湿熱性>>
ウレタンフォーム(150×25×5mm)にハンドガン(REKA社製)140℃に溶融したホットメルト接着剤を20g/m2でスプレー塗布し、表皮材を圧着した。3日後に、80℃95%環境下で静置させ、100時間毎に剥離強度を測定した。常態剥離強度から80%維持できた時間までを測定した。測定結果が400時間以上の場合、合格と判定した。常態剥離強度は、以下の方法で測定した。
【0124】
<常態剥離強度>
ウレタンフォーム(150×25×5mm)にハンドガン(REKA社製)で140℃に溶融したホットメルト接着剤を20g/m2でスプレー塗布し、表皮材を圧着した。1日後にオートグラフ(島津社製AG-Xplus)を用いて、引張速度200mm/minにて剥離強度を測定した。最大値・最小値それぞれ3点の剥離強度を平均化した数値を、N=3の中央値で算出した。
【0125】
<<貯蔵安定性>>
ホットメルト接着剤(12.5g)をアルミ袋(容積110cc)に入れ、密封状態で50℃3ヶ月間静置させ、NCO%の減少率を測定した。測定結果が80%以上の場合、合格と判定した。
【0126】
<<熱安定性>>
140℃で窒素雰囲気下の中、4時間加熱した後のホットメルト接着剤の粘度上昇率を測定した。測定結果が200%以下の場合、合格と判定した。
【0127】
【0128】
[積層体に係る実施例B]
以下の原料を使用し、
図3に示す各実施例及び各比較例の配合からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物を調製し、スラブ発泡させた後に厚み5mmに裁断して実施例B1、実施例B2及び比較例B1~比較例B12の発泡ポリウレタン層を製造した。なお、
図3の発泡ポリウレタン樹脂組成物欄における原料の数値は質量部である。
【0129】
ポリオール:ポリエーテルポリオール、官能基数3、分子量3000、水酸基価56mgKOH/g、品名;GP3050NS、三洋化成工業(株)製
難燃剤1:メラミン粉末、平均粒子径0.3μm、品名;メラミン、三井化学株式会社製
難燃剤2:リン含有固体難燃剤、脂肪族リン酸アミデート、品名;DAIGURD-850、大八化学工業株式会社製
難燃剤3:リン含有液体難燃剤、縮合リン酸エステル、品名;DAIGURD-880、大八化学工業株式会社製
発泡剤:水
整泡剤:シリコーン系整泡剤、品名;B-8244、Evonik社製 アミン触媒:N,N-ジメチルアミノへキサノール、品名;No.25、花王株式会社製
金属触媒1:活性水素基を含むリシノール酸スズ、品名;KOSMOSEF、Evonik社製
金属触媒2:オクチル酸第1スズ、城北化学工業(株)製
ポリイソシアネート:TDI(2,4-TDI80%と2,6-TDI20%との混合物)、品名:コロネートT-80、東ソー株式会社製
【0130】
各実施例及び各比較例の発泡ポリウレタン層について、密度(見掛け密度、JIS K 7222準拠)、引張強度(JIS K 6700-5 3準拠)、伸び(JIS K 6400-5 3準拠)を測定した。
【0131】
また、実施例B1の発泡ポリウレタン層の片面に、ホットメルト接着剤6によって被覆層を接着して実施例B1の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤6を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0132】
ポリウレタンホットメルト接着剤6としては、上述の実施例A1において製造されたポリウレタンホットメルト接着剤組成物を使用した。
【0133】
また、実施例B2の発泡ポリウレタン層の片面に、ホットメルト接着剤7によって被覆層を接着して実施例B2の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ホットメルト接着剤7を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0134】
ポリウレタンホットメルト接着剤7としては、上述の実施例A2において製造されたポリウレタンホットメルト接着剤組成物を使用した。
【0135】
また、比較例B1~比較例B3及び比較例B7~比較例B10の発泡ポリウレタン層の片面に、ポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層を接着して比較例B1~比較例B3及び比較例B7~比較例B10の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ポリウレタンホットメルト接着剤1を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0136】
ポリウレタンホットメルト接着剤1は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ポリウレタンホットメルト接着剤1とした。
【0137】
(ポリウレタンホットメルト接着剤1)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):セバシン酸/ブタンジオール、融点60℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):非晶性ポリエステルポリオール、フタル酸/ネオペンチルグリコール、数平均分子量1000、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、24質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0138】
比較例B4の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ポリウレタンホットメルト接着剤2によって被覆層を接着して比較例B4の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ポリウレタンホットメルト接着剤2を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0139】
ポリウレタンホットメルト接着剤2は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ポリウレタンホットメルト接着剤2とした。
【0140】
(ポリウレタンホットメルト接着剤2)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):ドデカン二酸/へキサンジオール、融点70℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):ポリカーボネートジオール(付加形式PO単独)、融点50℃、数平均分子量1000、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、24質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0141】
比較例B5の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ポリウレタンホットメルト接着剤3によって被覆層を接着して比較例B5の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ポリウレタンホットメルト接着剤3を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0142】
ポリウレタンホットメルト接着剤3は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ポリウレタンホットメルト接着剤3とした。
【0143】
(ポリウレタンホットメルト接着剤3)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):ドデカン二酸/へキサンジオール、融点70℃、数平均分子量4000、35質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、50質量部
その他のポリオール(a-3):ブチルエチルプロパンジオール(付加形式PO単独)、融点43℃、15質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、40質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0144】
比較例B6の発泡ポリウレタン層については、その片面に、ポリウレタンホットメルト接着剤4によって被覆層を接着して比較例B6の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ポリウレタンホットメルト接着剤4を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0145】
ポリウレタンホットメルト接着剤4は、以下のポリオール成分(A)を反応容器に投入し、ポリイソシアネートと、アミン触媒とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ポリウレタンホットメルト接着剤4とした。
【0146】
(ポリウレタンホットメルト接着剤4)
・ポリオール成分(A)
結晶性ポリエステルポリオール(a-1):セバシン酸/へキサンジオール、融点65℃、数平均分子量4000、20質量部
ポリエーテルポリオール(a-2):ポリプロピレングリコール(付加形式PO単独)、数平均分子量2000、80質量部
・ポリイソシアネート(B)
ジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、18質量部
・アミン触媒:N,N-ジメチルドデシルアミン、0.05質量部
【0147】
比較例B11の発泡ポリウレタン層については、フレームラミネーションによって被覆層(ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製)を接着して比較例B11の積層体を製造した。
【0148】
比較例B12の発泡ポリウレタン層については、ポリウレタンホットメルト接着剤5により被覆層を接着して、比較例B12の積層体を製造した。被覆層は、ナイロントリコット15d、桐生トリコット株式会社製であり、ポリウレタンホットメルト接着剤5を塗布量20g/m2でスプレー塗布した。
【0149】
ポリウレタンホットメルト接着剤5は、ポリオール成分として、結晶性ポリエステルポリオール(アジピン酸/プタンジオール)、融点58℃、数平均分子量2000、30質量部と、ポリプロピレングリコール、数平均分子量1000、70質量部を反応容器に投入し、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート、NCO%=33%、20質量部と、アミン触媒(N,N-ジメチルドデシルアミン)、0.05質量部とを添加し、100℃にて3~4時間反応させてNCO%=2.0%のポリウレタンプレポリマーを製造し、ポリウレタンホットメルト接着剤5とした。
【0150】
実施例B1、実施例B2及び比較例B1~B12の積層体について、燃焼性と、VOC値、FOG値、TVOC値と、耐湿熱性、貯蔵安定性、熱安定性とを評価した。
燃焼性の測定は、FMVSS302に基づき行った。燃焼性の判定は、燃焼距離51mm以内且つ60秒以内で炎が消える場合に「自消」、試験片に着火しないまたはA標線手前で炎が消える場合に「不燃」、燃焼速度が102mm/min以下の場合に「合格」であり、「合格」→「自消」→「不燃」の順に難燃性が高くなり、「不燃」が最も難燃性に優れる。
【0151】
VOC値の測定は、実施例B1、実施例B2及び比較例B1~B12の積層体から、7mgの試験片(被覆層付き)を作製し、その試験片をガラスチューブ内に入れ、熱脱着装置(品名:TDSA(KAS、KAS-3+、KAS-4を含む);Gestel製)を使用することで、「ドイツ自動車工業会 VDA278」に規定されるVOC測定法を実施した。具体的には、各試験片を温度90℃、時間30分の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスをガスクロマトグラフ質量分析計(品名:ガスクロマトグラフ質量分析計(品番:6890-5973N);アジレント製)により分析し、VOC値を算出した。また「ドイツ自動車工業会VDA278」の規定に従い、前記VOC値測定に引き続き、温度120℃、時間1時間の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスを同様にガスクロマトグラフ質量分析計で分析するFOG値についても、併せて算出した。FOGは、揮発した物質がガラスに付着して白く曇る現象である。
【0152】
TVOC値は、揮発性有機化合物の総放散量であり、PV-3341に基づいて測定した。具体的には、温度120℃、時間5時間の条件下で加熱し、該加熱時に発生したガスをガスクロマトグラフで分析したピーク面積により算出する。
また、VOC等の評価を行った。評価基準は、VOC<100ppm、FOG<250ppm、TVOC<30μgC/gを全て満たす場合に「〇」、いずれかひとつでも満たさない場合に「×」とした。
【0153】
各実施例および各比較例で使用したポリウレタンホットメルト接着剤の耐湿熱性を、次の方法に従って評価した。積層体を作成して3日後に、80℃95%環境下で積層体を静置させ、100時間毎に剥離強度を測定した。常態剥離強度から80%維持できた時間までを測定した。測定結果が400時間以上の場合、合格と判定した。常態剥離強度は、次の手順によって測定した。積層体を作成して1日後に、オートグラフ(島津社製AG-Xplus)を用いて、引張速度200mm/minにて剥離強度を測定した。最大値・最小値それぞれ3点の剥離強度を平均化した数値を、N=3の中央値で算出し、常態剥離強度とした。
【0154】
各実施例および各比較例で使用したポリウレタンホットメルト接着剤の貯蔵安定性を、次の方法に従って評価した。ホットメルト接着剤(12.5g)をアルミ袋(容積110cc)に入れ、密封状態で50℃3ヶ月間静置させ、NCO%の減少率を測定した。測定結果が80%以上の場合、合格と判定した。
【0155】
各実施例および各比較例で使用したポリウレタンホットメルト接着剤の熱安定性を、次の方法に従って評価した。140℃で窒素雰囲気下の中、4時間加熱した後のホットメルト接着剤の粘度上昇率を測定した。測定結果が200%以下の場合、合格と判定した。
【0156】
また、実施例B1、実施例B2及び比較例B1~B12の積層体について総合評価を行った。総合評価の基準は、燃焼性の判定が不燃、VOC等の評価が「〇」且つ耐湿熱等の評価が「〇」の場合に総合評価「〇」、燃焼性の判定が不燃、且つVOC等の評価が「〇」であるが、耐湿熱等の評価が「×」の場合に総合評価「△」、燃焼性判定が不燃ではない、又はVOC評価が「×」の場合に総合評価「×」とした。
なお、
図3におけるFOG、TVOCの結果欄における「-」は未測定を意味する。
【0157】
(実施例B1)
実施例B1の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)4重量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部、発泡剤(水)3.95質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)1.3質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例B1の発泡ポリウレタン層は、密度25.7kg/m3、引張強度90kPa、伸び216%である。
【0158】
実施例B1の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤6によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値70ppm、FOG値31ppm、TVOC値13μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「〇」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例B1の積層体は、低VOC、良好な難燃性および良好な熱特性を備えている。
【0159】
(実施例B2)
実施例B2の発泡ポリウレタン層は、実施例B1と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例B1の発泡ポリウレタン層と同じである。実施例B2の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤7によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値72ppm、FOG値30ppm、TVOC値13μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「〇」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「〇」である。実施例B2の積層体は、低VOC、良好な難燃性および良好な熱特性を備えている。
【0160】
(比較例B1)
比較例B1の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)5質量部、発泡剤(水)3.9質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)0.8質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例B1の発泡ポリウレタン層は、密度25.0kg/m3、引張強度97kPa、伸び198%である。
【0161】
比較例B1の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面に、ポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値79ppm、FOG値30ppm、TVOC値18μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B1の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0162】
(比較例B2)
比較例B2の発泡ポリウレタン層は、実施例B1と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例B1の発泡ポリウレタン層と同じである。比較例B2の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値74ppm、FOG値42ppm、TVOC値15μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B2の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである
【0163】
(比較例B3)
比較例B3の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)4重量部、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部、発泡剤(水)3質量部、整泡剤1.5質量部、アミン触媒0.1質量部、金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)2.75質量部、イソシアネートインデックス110からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例B3の発泡ポリウレタン層は、密度34.9kg/m3、引張強度132kPa、伸び204%である。
【0164】
比較例B3の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値86ppm、FOG値59ppm、TVOC値3μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B3の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0165】
(比較例B4)
比較例B4の発泡ポリウレタン層は、実施例B1と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例B1の発泡ポリウレタン層と同じである。
比較例B4の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤2によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値70ppm、FOG値34ppm、TVOC値14μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B4の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0166】
(比較例B5)
比較例B5の発泡ポリウレタン層は、実施例B1と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例B1の発泡ポリウレタン層と同じである。
比較例B5の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤3によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値69ppm、FOG値41ppm、TVOC値8μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B5の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0167】
(比較例B6)
比較例B6の発泡ポリウレタン層は、実施例B1と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は実施例B1の発泡ポリウレタン層と同じである。
比較例B6の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤4によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、VOC値88ppm、FOG値53ppm、TVOC値10μgC/g、VOC等の評価「〇」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「△」である。比較例B6の積層体は、難燃性が良好、かつ低VOCである。
【0168】
(比較例B7)
比較例B7の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)15質量部、発泡剤(水)4.3質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例B7の発泡ポリウレタン層は、密度24.6kg/m3、引張強度70kPa、伸び97%である。
【0169】
比較例B7の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離10mm、燃焼性の判定「自消」、VOC値446ppm、FOG値43ppm、VOC等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B7は、難燃剤にリン含有固体難燃剤を含まず、かつ金属触媒に活性水素基を含むリシノール酸スズを含まないため、難燃性に劣り、かつ高VOCである。
【0170】
(比較例B8)
比較例B8の発泡ポリウレタン層は、ポリオール100質量部、難燃剤1(メラミン粉末)20質量部、発泡剤(水)4.7質量部、整泡剤1.1質量部、アミン触媒0.18質量部、金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部、イソシアネートインデックス103からなる発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものである。比較例B8の発泡ポリウレタン層は、密度25.5kg/m3、引張強度56kPa、伸び64%である。
【0171】
比較例B8の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、V0C値434ppm、F0G値61ppm、V0C等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B8は、比較例B7よりもメラミン粉末の含有量が多いため、燃焼性の判定が「不燃」となったが、金属触媒に活性水素基を含むリシノール酸スズを含まないため、高VOCである。
【0172】
(比較例B9)
比較例B9の発泡ポリウレタン層は、比較例B1における金属触媒1(活性水素基を含むリシノール酸スズ)に代えて金属触媒2(オクチル酸第1スズ)0.31質量部を用い、他を比較例B1と同一にした例である。比較例B9の発泡ポリウレタン層は、密度25.6kg/m3、引張強度114kPa、伸び206%である。
【0173】
比較例B9の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、V0C値639ppm、F0G値78ppm、V0C等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B9は、比較例B1と比べると、金属触媒1(活性水素基を含むリシノ-ル酸スズ)を含まないため、VOC値が極めて大になった。
【0174】
(比較例B10)
比較例B10の発泡ポリウレタン層は、比較例B2における難燃剤2(リン含有固体難燃剤)4質量部に代えて難燃剤3(リン含有液体難燃剤)4質量部を使用し、他を比較例B2と同様とした例である。比較例B10の発泡ポリウレタン層は、密度24.8kg/m3、引張強度105kPa、伸び201%である。
【0175】
比較例B10の積層体は、ポリウレタン発泡層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤1によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」、V0C値219ppm、F0G値1242ppm、V0C等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B10は、比較例B2と比べると、難燃剤2(リン含有固体難燃剤)に代えて難燃剤3(リン含有液体難燃剤)を使用したため、VOC値及びFOG値が非常に大になった。
【0176】
(比較例B11)
比較例B11の発泡ポリウレタン層は、比較例B3と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は比較例B3の発泡ポリウレタン層と同じである。
【0177】
比較例B11の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にフレームラミネーションによって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」であったが、V0C値は260であり、V0C等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B11は、フレームラミネーションによる接着であるため、比較例B3と比べると、VOC値が非常に大になった。
【0178】
(比較例B12)
比較例B12の発泡ポリウレタン層は、比較例B3と同一の発泡ポリウレタン樹脂組成物から得られたものであり、物性値は比較例B3の発泡ポリウレタン層と同じである。
【0179】
比較例B12の積層体は、発泡ポリウレタン層の片面にポリウレタンホットメルト接着剤5によって被覆層が接着されたものであり、燃焼距離0mm、燃焼性の判定「不燃」であったが、V0C値128ppm、F0G値219ppm、TV0C値16μgC/g、V0C等の評価「×」、耐湿熱性の評価「×」、貯蔵安定性の評価「〇」、熱安定性の評価「〇」、総合評価「×」である。比較例B12は、比較例B3と比べると、炭素数10~12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数4~6の脂肪族ジオールの縮合反応物からなる結晶性ポリエステルポリオール(a-1)を含まないポリオール成分(A)を原料とするホットメルト接着剤を使用したため、V0C値及びF0G値が非常に大きくなった。
【0180】
このように、本発明の発泡ポリウレタン層の片面に本発明のポリウレタンホットメルト接着剤で被覆層が接着された実施例B1および実施例B2の積層体は、低VOC、良好な難燃性および良好な熱特性を備えるため、車両用内装材の表皮材を構成する部材として好適である。
さらに、実施例B1および実施例B2の積層体は、低V0C、良好な難燃性および良好な熱特性を備えるため、本革や合成皮革、ファブリック等からなる表面層が本発明のポリウレタンホットメルト接着剤により接着された積層体も、フレームラミネートで表面層が接着されたものと比べて低V0C、良好な難燃性および良好な熱特性を備え、車両用内装材の表皮材として好適である。
【0181】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0182】
10、20 積層体
11 発泡ポリウレタン層
13、17 ポリウレタンホットメルト接着剤
15 被覆層
19 表面層