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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】エレベーターのロープ外れ止め装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20240315BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B66B11/08 J
B66B7/06 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023134357
(22)【出願日】2023-08-22
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 英人
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/220546(WO,A1)
【文献】特開2003-276972(JP,A)
【文献】特開2009-214981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが巻き掛けられる綱車の軸線を中心として固定部材に対して回転可能なピニオンギヤと、
前記固定部材にそれぞれ設けられる第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部と
を備え、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記ピニオンギヤに噛み合うラックギヤと、前記ラックギヤに取り付けられた外れ止め部材とを有しており、
前記外れ止め部材は、前記ロープを介して前記綱車の外周部に対向し、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれでは、前記ピニオンギヤの回転に応じて前記ラックギヤが前記外れ止め部材とともに前記固定部材に対して移動することにより、前記ロープと前記外れ止め部材との隙間の寸法が変化するエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項2】
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のうち、前記第1外れ止め機構部においてのみ、前記ラックギヤに対する前記外れ止め部材の位置が前記ラックギヤの移動方向において調整可能である請求項1に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項3】
前記第1外れ止め機構部では、第1通し穴が前記ラックギヤ及び前記外れ止め部材のいずれか一方に設けられているとともに、前記第1通し穴に通された取付具によって前記外れ止め部材が前記ラックギヤに取り付けられており、
前記第1通し穴は、前記ラックギヤの移動方向に沿った長穴である請求項2に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項4】
爪を有するロック機構部を備え、
前記爪は、前記爪が前記ピニオンギヤに掛かるロック位置と、前記爪が前記ピニオンギヤから外れる解除位置との間で前記固定部材に対して移動可能になっており、
前記爪の位置が前記ロック位置となることにより、前記ピニオンギヤの回転が阻止される請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項5】
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記固定部材に対する前記ラックギヤの移動を案内するガイド部材を有しており、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のいずれか一方においてのみ、前記ガイド部材及び前記ラックギヤのいずれか一方に目盛りが表示されている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項6】
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記固定部材に対する前記ラックギヤの移動を案内するガイド部材を有しており、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれでは、第2通し穴が前記ガイド部材及び前記ラックギヤのいずれか一方に設けられているとともに、前記第2通し穴に通された位置固定具によって前記ガイド部材に対する前記ラックギヤの位置が固定可能になっており、
前記第2通し穴は、前記ラックギヤの移動方向に沿った長穴である請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【請求項7】
前記ピニオンギヤは、前記固定部材に対して着脱可能に取り付けられる請求項6に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのロープ外れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたエレベーターでは、ロープが綱車から外れることを防止するために、綱車が設けられた基体に2つのロープ外れ止め装置が取り付けられている。各ロープ外れ止め装置は、ロープに隙間を介して対向する外れ止めを有している。ロープと外れ止めとの隙間の寸法は、ロープ外れ止め装置ごとに個別に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-303049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来のエレベーターでは、ロープと外れ止めとの隙間の寸法をロープ外れ止め装置ごとに個別に調整する必要がある。このため、ロープと各外れ止めとの隙間の寸法を調整する作業に時間がかかってしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、ロープと各外れ止め部材との隙間の寸法を調整する作業にかかる時間の短縮化を図ることができるエレベーターのロープ外れ止め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターのロープ外れ止め装置は、ロープが巻き掛けられる綱車の軸線を中心として固定部材に対して回転可能なピニオンギヤと、固定部材にそれぞれ設けられる第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部とを備え、第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部のそれぞれは、ピニオンギヤに噛み合うラックギヤと、ラックギヤに取り付けられた外れ止め部材とを有しており、外れ止め部材は、ロープを介して綱車の外周部に対向し、第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部のそれぞれでは、ピニオンギヤの回転に応じてラックギヤが外れ止め部材とともに固定部材に対して移動することにより、ロープと外れ止め部材との隙間の寸法が変化するものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロープと各外れ止め部材との隙間の寸法を調整する作業を行う時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るロープ外れ止め装置が設けられたエレベーターを示す構成図である。
図2図1のロープ外れ止め装置が巻上機に設けられている状態を示す正面図である。
図3図2のロープ外れ止め装置が巻上機に設けられている状態を示す側面図である。
図4図2のロック機構部を示す拡大図である。
図5図2の第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部のそれぞれにおいて外れ止め部材がロープに接触している状態を示す正面図である。
図6図5の第2外れ止め機構部における外れ止め部材を示す拡大図である。
図7図5のピニオンギヤの回転量が調整されるときの巻上機及びロープ外れ止め装置を示す正面図である。
図8図7の第1外れ止め機構部における外れ止め部材を示す拡大図である。
図9図7の爪がピニオンギヤに掛かっている状態を示す正面図である。
図10】実施の形態2に係るロープ外れ止め装置が巻上機に設けられている状態を示す正面図である。
図11図10の第1外れ止め機構部において外れ止め部材がロープに接触している状態を示す拡大図である。
図12】実施の形態3に係るロープ外れ止め装置が巻上機に設けられている状態を示す正面図である。
図13図12のロープ外れ止め装置が巻上機に設けられている状態を示す側面図である。
図14】実施の形態4に係るロープ外れ止め装置における第2外れ止め機構部の要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示の対象は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、又は実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置が設けられたエレベーターを示す構成図である。図において、昇降路1内には、かご2及び釣合おもり3が上下方向へ移動可能に設けられている。
【0011】
かご2は、かご本体21と、一対のかご吊り車22とを有している。かご本体21には、不図示のかご出入口が設けられている。かご本体21には、かご出入口を通して乗客の乗降が可能になっている。一対のかご吊り車22のそれぞれは、かご本体21の下部に設けられた綱車である。
【0012】
釣合おもり3は、おもり本体31と、おもり吊り車32とを有している。おもり吊り車32は、おもり本体31の上部に設けられた綱車である。
【0013】
昇降路1内の上部には、巻上機4が設けられている。巻上機4は、巻上機本体41と、駆動綱車42と、主軸43とを有している。
【0014】
主軸43は、巻上機本体41に固定部材として固定されている。本実施の形態では、主軸43が水平に配置されている。
【0015】
駆動綱車42は、主軸43に設けられた綱車である。駆動綱車42の軸線Pは、主軸43の軸線と一致している。駆動綱車42は、駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転可能になっている。
【0016】
巻上機本体41は、モータを有している。巻上機本体41への給電が行われると、巻上機本体41のモータの駆動力によって、駆動綱車42が駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転する。
【0017】
昇降路1内の上部には、第1ロープ止め装置6及び第2ロープ止め装置7が設けられている。本実施の形態では、昇降路1内に固定された不図示の支持梁に巻上機4、第1ロープ止め装置6及び第2ロープ止め装置7が支持されている。
【0018】
かご2及び釣合おもり3は、複数本のロープ5によって昇降路1内に吊り下げられている。図1では、簡単のため、1本のロープ5のみを示している。各ロープ5の一端部は、第1ロープ止め装置6に接続されている。各ロープ5の他端部は、第2ロープ止め装置7に接続されている。
【0019】
各ロープ5は、第1ロープ止め装置6から、一対のかご吊り車22、駆動綱車42、おもり吊り車32の順に巻き掛けられ、第2ロープ止め装置7に達している。これにより、各ロープ5によるかご2及び釣合おもり3の吊り下げ方式は、2:1ローピング方式となっている。かご2及び釣合おもり3は、駆動綱車42の回転により昇降路1内を上下方向へ移動する。
【0020】
巻上機4には、ロープ外れ止め装置8が設けられている。ロープ外れ止め装置8は、主軸43に支持されている。
【0021】
図2は、図1のロープ外れ止め装置8が巻上機4に設けられている状態を示す正面図である。図3は、図2のロープ外れ止め装置8が巻上機4に設けられている状態を示す側面図である。駆動綱車42の外周部には、図3に示すように、複数のロープ用溝421が駆動綱車42の周方向に沿って形成されている。複数のロープ5は、ロープ用溝421に挿入された状態で駆動綱車42に巻き掛けられている。ロープ外れ止め装置8は、各ロープ5が駆動綱車42から外れたり、ロープ5がロープ用溝421に対してずれたりすることを防止する。
【0022】
主軸43は、図2に示すように、軸本体431と、支持部432とを有している。軸本体431は、主軸43の軸線上に位置している。駆動綱車42は、軸本体431に回転可能に設けられている。
【0023】
支持部432は、軸本体431に固定されている。支持部432の形状は、円板状である。支持部432は、主軸43の軸線に対して直交している。支持部432は、駆動綱車42の内側に形成された空間に配置されている。
【0024】
ロープ外れ止め装置8は、第1外れ止め機構部81と、第2外れ止め機構部82と、ピニオンギヤ83と、ロック機構部84とを有している。
【0025】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82は、支持部432にそれぞれ設けられている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82は、駆動綱車42の軸線Pを挟んで互いに離して配置されている。
【0026】
ピニオンギヤ83は、軸本体431の端部に取り付けられている。また、ピニオンギヤ83は、駆動綱車42及び主軸43と同軸に配置されている。ピニオンギヤ83は、第1外れ止め機構部81と第2外れ止め機構部82との間に配置されている。
【0027】
ピニオンギヤ83は、駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転可能になっている。ピニオンギヤ83は、駆動綱車42とは独立して主軸43に対して回転可能になっている。ピニオンギヤ83の外周部には、ピニオンギヤ83の周方向へ並ぶ複数の歯が形成されている。
【0028】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれは、ラックギヤ85と、外れ止め部材86と、レール87とを有している。
【0029】
ラックギヤ85は、駆動綱車42の軸線Pに沿ってロープ外れ止め装置8を見たとき、駆動綱車42の内側から駆動綱車42の外側に達している。ラックギヤ85には、ラックギヤ85の長手方向へ並ぶ複数の歯が形成されている。ラックギヤ85は、ラックギヤ85の長手方向へ主軸43に対して移動可能になっている。
【0030】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85は、ピニオンギヤ83に噛み合っている。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85は、ピニオンギヤ83の回転に応じて、ラックギヤ85の長手方向へ主軸43に対して移動する。
【0031】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86は、ラックギヤ85に取り付けられている。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、ラックギヤ85が外れ止め部材86とともに主軸43に対して移動する。外れ止め部材86は、駆動綱車42の径方向外側に位置している。外れ止め部材86は、駆動綱車42に巻き掛けられる複数のロープ5を介して駆動綱車42の外周部に対向している。
【0032】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86と複数のロープ5との間には、隙間が生じている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86と複数のロープ5との隙間の寸法は、ラックギヤ85が外れ止め部材86とともに主軸43に対して移動することにより変化する。外れ止め部材86と複数のロープ5との隙間の寸法は、各ロープ5の直径よりも小さい適正範囲内に調整されている。
【0033】
ラックギヤ85には、複数の第1通し穴88が設けられている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおける各第1通し穴88は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴である。
【0034】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86は、各第1通し穴88に通された取付具としての複数のねじ89によってラックギヤ85に取り付けられている。各ねじ89は、外れ止め部材86に形成された不図示のねじ穴にねじ込まれている。本実施の形態では、2つの第1通し穴88がラックギヤ85に設けられており、外れ止め部材86が2つのねじ89によってラックギヤ85に取り付けられている。
【0035】
従って、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、各ねじ89を締め付けることにより、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置が固定される。また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、各ねじ89を緩めることにより、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置がラックギヤ85の移動方向において調整可能になる。
【0036】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、レール87は、主軸43の支持部432に固定されている。レール87は、ラックギヤ85の移動を案内するガイド部材である。レール87は、ラックギヤ85の長手方向に沿って配置されている。ラックギヤ85は、レール87に対してスライドしながら移動する。
【0037】
第1外れ止め機構部81におけるラックギヤ85と、第2外れ止め機構部82におけるラックギヤ85とは、互いに平行に配置されている。第1外れ止め機構部81におけるラックギヤ85の一部は、第2外れ止め機構部82におけるラックギヤ85の一部とピニオンギヤ83を介して対向している。
【0038】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85は、主軸43に対するピニオンギヤ83の回転に応じて、レール87に案内されながら主軸43に対して移動する。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおけるラックギヤ85の移動距離は、同じになる。本実施の形態では、主軸43に対するピニオンギヤ83の回転に応じて、第1外れ止め機構部81におけるラックギヤ85と、第2外れ止め機構部82におけるラックギヤ85とが互いに反対方向へ移動する。
【0039】
ロック機構部84は、主軸43の支持部432に設けられている。ロック機構部84は、ピニオンギヤ83に隣接して配置されている。
【0040】
図4は、図2のロック機構部84を示す拡大図である。ロック機構部84は、爪841と、ロックねじ842とを有している。
【0041】
ロックねじ842は、爪841を支持部432に取り付ける締結具である。爪841は、ロックねじ842を緩めることにより、ロックねじ842を中心として回転可能になる。
【0042】
爪841は、ロックねじ842を中心として回転することにより、爪841がピニオンギヤ83に掛かるロック位置と、爪841がピニオンギヤ83から外れる解除位置との間で支持部432に対して移動する。支持部432に対する爪841の位置は、ロックねじ842を締め付けることにより固定される。
【0043】
爪841の位置が解除位置であるときには、ピニオンギヤ83が駆動綱車42の軸線Pを中心として自由に回転可能になっている。爪841の位置がロック位置となることにより、爪841がピニオンギヤ83の歯に掛かって、ピニオンギヤ83の回転が阻止される。
【0044】
エレベーターの据付時、据付後のメンテナンス時などには、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法が適正範囲から外れることがある。この場合、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に調整する必要がある。
【0045】
次に、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときの手順について説明する。通常運転時には、図2に示すように、ロック機構部84における爪841の位置がロック位置に固定されている。これにより、主軸43に対するピニオンギヤ83の回転が阻止されている。一方、駆動綱車42は、ピニオンギヤ83とは独立して主軸43に対して回転可能になっている。
【0046】
ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときには、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいてラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を調整することにより、各外れ止め部材86をロープ5に接触させる。
【0047】
図5は、図2の第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて外れ止め部材86がロープ5に接触している状態を示す正面図である。図6は、図5の第2外れ止め機構部82における外れ止め部材86を示す拡大図である。ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の調整は、各ねじ89を緩めた後、ラックギヤ85に対して外れ止め部材86を各第1通し穴88に沿ってスライドさせることによって行う。また、各ねじ89を締め付けることにより、外れ止め部材86がロープ5に接触した状態でラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を固定する。
【0048】
この後、ロックねじ842を緩めて爪841をロック位置から解除位置へ移動させる。これにより、ピニオンギヤ83は、駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転可能になる。
【0049】
この後、駆動綱車42の軸線Pを中心としてピニオンギヤ83を主軸43に対して回転させる。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86がロープ5から遠ざかる方向へラックギヤ85がレール87に案内されながら移動する。
【0050】
このとき、ピニオンギヤ83の回転量を調整することにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に調整する。ロープ5とラックギヤ85との隙間の寸法は、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうちの一方においてのみ測定して確認する。
【0051】
図7は、図5のピニオンギヤ83の回転量が調整されるときの巻上機4及びロープ外れ止め装置8を示す正面図である。図8は、図7の第1外れ止め機構部81における外れ止め部材86を示す拡大図である。ピニオンギヤ83が回転すると、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおけるラックギヤ85の移動距離はいずれも、ピニオンギヤ83の回転に応じた同じ距離となる。従って、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうちの一方においてのみ、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を測定すればよい。本実施の形態では、第2外れ止め機構部82においてのみ、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を測定する。また、本実施の形態では、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法をノギス、定規、メジャーなどの測定器具を用いて測定する。
【0052】
この後、爪841を解除位置からロック位置へ回転させた後、ロックねじ842を締め付ける。図9は、図7の爪841がピニオンギヤ83に掛かっている状態を示す正面図である。爪841の位置がロック位置となると、爪841がピニオンギヤ83に掛かる。これにより、ピニオンギヤ83の回転が阻止され、各外れ止め部材86の位置が固定される。このようにして、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に調整する。
【0053】
このようなエレベーターのロープ外れ止め装置8では、ピニオンギヤ83が駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転可能になっている。また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ピニオンギヤ83の回転に応じてラックギヤ85が外れ止め部材86とともに主軸43に対して移動する。さらに、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法は、ラックギヤ85の移動により変化する。このため、ピニオンギヤ83の回転量を調整するだけで、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて同時に調整することができる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整する作業にかかる時間の短縮化を図ることができる。
【0054】
また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置がラックギヤ85の移動方向において調整可能である。このため、第1外れ止め機構部81と第2外れ止め機構部82との間においてロープ5に対する外れ止め部材86の位置に違いが生じた場合でも、ロープ5に対する外れ止め部材86の位置の違いがなくなるように容易に調整することができる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整する作業を容易にすることができる。
【0055】
また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、第1通し穴88がラックギヤ85に設けられている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおける第1通し穴88は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴である。外れ止め部材86は、第1通し穴88に通されたねじ89によってラックギヤ85に取り付けられている。このため、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を簡単な構成によって調整可能にすることができる。
【0056】
また、ロック機構部84における爪841は、爪841がピニオンギヤ83に掛かるロック位置と、爪841がピニオンギヤ83から外れる解除位置との間で主軸43に対して移動可能になっている。このため、爪841の位置をロック位置とすることにより、ピニオンギヤ83が回転しないようにすることができる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に維持することができる。従って、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整した後に、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法が変化してしまう不具合の発生を抑制することができる。
【0057】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係るロープ外れ止め装置8が巻上機4に設けられている状態を示す正面図である。本実施の形態では、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうち、第1外れ止め機構部81においてのみ、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置がラックギヤ85の移動方向において調整可能である。従って、本実施の形態における第1外れ止め機構部81の構成は、実施の形態1と同様である。
【0058】
第2外れ止め機構部82では、ラックギヤ85に設けられた複数の第1通し穴が丸穴になっている。第2外れ止め機構部82では、丸穴である各第1通し穴に通された複数のねじ89によって外れ止め部材86がラックギヤ85に取り付けられている。これにより、第2外れ止め機構部82では、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置の調整が不可能になっている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0059】
次に、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときの手順について説明する。まず、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、外れ止め部材86をロープ5に接触させる。
【0060】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて外れ止め部材86をロープ5に接触させるときには、まずロック機構部84の爪841をロック位置から解除位置へ移動させる。これにより、ピニオンギヤ83は、駆動綱車42の軸線Pを中心として主軸43に対して回転可能になる。
【0061】
この後、ピニオンギヤ83を主軸43に対して回転させて、第2外れ止め機構部82における外れ止め部材86をロープ5に接触させる。
【0062】
図11は、図10の第1外れ止め機構部81において外れ止め部材86がロープ5に接触している状態を示す拡大図である。第1外れ止め機構部81において外れ止め部材86がロープ5に接触していない場合、第1外れ止め機構部81においてラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置をラックギヤ85の移動方向において調整する。第1外れ止め機構部81においてラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を調整する手順は、実施の形態1と同様である。これにより、第1外れ止め機構部81においても、外れ止め部材86がロープ5に接触する。
【0063】
第1外れ止め機構部81における外れ止め部材86が先にロープ5に接触した場合も、第1外れ止め機構部81においてラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を調整して、各外れ止め部材86をロープ5に接触させる。この後の手順は、実施の形態1と同様である。
【0064】
このようなエレベーターのロープ外れ止め装置8では、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうち、第1外れ止め機構部81においてのみ、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置がラックギヤ85の移動方向において調整可能である。このため、第2外れ止め機構部82においてラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を調整する必要がなくなる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整する作業にかかる時間の短縮化をさらに図ることができる。
【0065】
また、第1外れ止め機構部81では、ラックギヤ85に設けられた第1通し穴88がラックギヤ85の移動方向に沿った長穴である。外れ止め部材86は、第1通し穴88に通されたねじ89によってラックギヤ85に取り付けられている。このため、第1外れ止め機構部81において、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を簡単な構成によって調整可能にすることができる。
【0066】
なお、第1外れ止め機構部81では、第1通し穴88を外れ止め部材86に設けてもよい。この場合、第1通し穴88は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴とされる。また、第1通し穴88に通されたねじ89は、ラックギヤ85に形成されたねじ穴にねじ込まれる。さらに、外れ止め部材86は、第1通し穴88に通されたねじ89によってラックギヤ85に取り付けられる。このようにしても、第1外れ止め機構部81において、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を簡単な構成によって調整可能にすることができる。
【0067】
また、第2外れ止め機構部82では、丸穴である第1通し穴を外れ止め部材86に設けてもよい。この場合、第1通し穴に通されたねじ89は、ラックギヤ85に形成されたねじ穴にねじ込まれる。また、外れ止め部材86は、第1通し穴に通されたねじ89によってラックギヤ85に取り付けられる。このようにしても、第2外れ止め機構部82において、ラックギヤ85に外れ止め部材86を簡単な構成によって取り付けることができる。
【0068】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3に係るロープ外れ止め装置8が巻上機4に設けられている状態を示す正面図である。図13は、図12のロープ外れ止め装置8が巻上機4に設けられている状態を示す側面図である。なお、図12及び図13では、ピニオンギヤ83が主軸43から取り外された状態が示されている。ピニオンギヤ83は、主軸43に対して着脱可能に取り付けられている。本実施の形態では、ピニオンギヤ83が軸本体431の端部に着脱可能に取り付けられている。
【0069】
第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、複数の第2通し穴91がレール87に設けられている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおける各第2通し穴91は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴である。
【0070】
また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、各第2通し穴91に通された位置固定具としての複数のねじ92によってレール87に対するラックギヤ85の位置が固定可能になっている。各ねじ92は、ラックギヤ85に形成された不図示のねじ穴にねじ込まれている。
【0071】
レール87に対するラックギヤ85の位置は、各ねじ92を締め付けることにより固定される。また、ラックギヤ85は、各ねじ92を緩めることにより、長穴である各第2通し穴91の制限範囲内においてレール87に案内されながらレール87に対して移動可能になる。本実施の形態では、2つの第2通し穴91がレール87に設けられており、2つのねじ92によってレール87に対するラックギヤ85の位置が固定される。本実施の形態では、支持部432にロック機構部84が設けられていない。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0072】
次に、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときの手順について説明する。通常運転時には、各ねじ92が締め付けられている。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、レール87に対するラックギヤ85の位置が固定されている。また、通常運転時には、図12に示すように、ピニオンギヤ83が主軸43から取り外されている。
【0073】
ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときには、まず、各ねじ92を緩める。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85が主軸43に対して移動可能になる。
【0074】
この後、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85を主軸43に対して移動させることにより、外れ止め部材86をロープ5に接触させる。
【0075】
この後、ピニオンギヤ83を主軸43の軸本体431に回転可能に取り付ける。これにより、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85がピニオンギヤ83に噛み合う。
【0076】
この後、駆動綱車42の軸線Pを中心としてピニオンギヤ83を主軸43に対して回転させる。このとき、ピニオンギヤ83の回転量を調整することにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に調整する。ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法は、実施の形態1と同様に、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうちの一方においてのみ測定して確認する。本実施の形態では、第2外れ止め機構部82においてのみ、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を測定する。
【0077】
この後、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、各ねじ92を締め付けることにより、レール87に対するラックギヤ85の位置を固定する。
【0078】
この後、ピニオンギヤ83を主軸43から取り外す。このようにして、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整する。
【0079】
このようなエレベーターのロープ外れ止め装置8では、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、第2通し穴91がレール87に設けられている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおける第2通し穴91は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴である。レール87に対するラックギヤ85の位置は、第2通し穴91に通されたねじ92によって固定可能になっている。このため、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、ラックギヤ85及び外れ止め部材86の位置をより確実に固定することができる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法をより確実に適正範囲内に維持することができる。従って、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整した後に、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法が変化してしまう不具合の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0080】
また、ピニオンギヤ83は、主軸43に対して着脱可能に取り付けられている。このため、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整した後に、ピニオンギヤ83を主軸43から取り外すことができる。これにより、他のロープ外れ止め装置におけるロープ5と外れ止め部材との隙間の寸法の調整のために、取り外したピニオンギヤ83を用いることができる。従って、複数のロープ外れ止め装置のそれぞれにおいてロープ5と各外れ止め部材との隙間の寸法を調整するための共通の調整治具としてピニオンギヤ83を用いることができる。これにより、部品点数の低減化を図ることができる。
【0081】
なお、上記の実施の形態では、ロック機構部84が支持部432に設けられていない。しかし、ロック機構部84を支持部432に設けてもよい。このようにすれば、例えば、各ねじ92を締め付けてレール87に対するラックギヤ85の位置を固定するときに、ロック機構部84の爪841によってピニオンギヤ83の回転を阻止することができる。これにより、各ねじ92を締め付けるときにレール87に対するラックギヤ85の位置が誤ってずれてしまうことを抑制することができる。
【0082】
また、ピニオンギヤ83が主軸43に対して着脱可能に取り付けられた構成は、実施の形態2におけるロープ外れ止め装置8に適用してもよい。この場合、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、第2通し穴91がレール87に設けられ、第2通し穴91に通されたねじ92によってレール87に対するラックギヤ85の位置が固定可能になる。
【0083】
実施の形態4.
図14は、実施の形態4に係るロープ外れ止め装置8における第2外れ止め機構部82の要部を示す正面図である。第2外れ止め機構部82では、目盛り95がラックギヤ85に表示されている。目盛り95は、レール87に沿って設けられている。ラックギヤ85がレール87に対して移動すると、目盛り95がラックギヤ85とともにレール87に対して移動する。
【0084】
レール87には、基準目印96が表示されている。第2外れ止め機構部82では、基準目印96を基準として目盛り95を読み取ることにより、レール87に対するラックギヤ85の移動距離が特定される。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうち、第2外れ止め機構部82においてのみ、目盛り95がラックギヤ85に表示され、基準目印96がレール87に表示されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0085】
ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整するときには、実施の形態1と同様にして、各外れ止め部材86をロープ5に接触させる。このとき、基準目印96を基準として目盛り95を読み取る。
【0086】
この後、実施の形態1と同様にしてピニオンギヤ83の回転量を調整することにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を適正範囲内に調整する。このとき、基準目印96を基準として目盛り95を読み取る。基準目印96を基準とする目盛り95の値の変化から、レール87に対するラックギヤ85の移動距離を特定する。これにより、第2外れ止め機構部82におけるロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を特定する。この後の手順は、実施の形態1と同様である。
【0087】
このようなエレベーターのロープ外れ止め装置8では、第2外れ止め機構部82においてのみ、ラックギヤ85に目盛り95が表示されている。このため、ノギス、定規、メジャーなどの測定器具を用いずに、第2外れ止め機構部82におけるロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を容易に特定することができる。これにより、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法を調整する作業にかかる時間の短縮化をさらに図ることができる。
【0088】
なお、上記の実施の形態では、目盛り95がラックギヤ85に表示されている。しかし、目盛り95をレール87に表示してもよい。この場合、基準目印96は、ラックギヤ85に表示される。このようにしても、基準目印96を基準として目盛り95を読み取ることができる。即ち、目盛り95は、ラックギヤ85及びレール87のいずれか一方に表示されていればよい。
【0089】
また、上記の実施の形態では、基準目印96がレール87に表示されている。しかし、基準目印96はなくてもよい。基準目印96がなくても、例えばレール87の端部を基準として目盛り95を読み取ることができる。さらに、基準目印96を表示しない場合、目盛り95をレール87に表示してもよい。このようにしても、例えばラックギヤ85の端部を基準として目盛り95を読み取ることができる。
【0090】
また、上記の実施の形態では、第2外れ止め機構部82においてのみ、目盛り95がラックギヤ85に表示されている。しかし、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のうち、第1外れ止め機構部81においてのみ、目盛り95をラックギヤ85に表示してもよい。この場合、第1外れ止め機構部81において、基準目印96がレール87に表示される。このようにしても、ノギス、定規、メジャーなどの測定器具を用いずに、第1外れ止め機構部81におけるロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を容易に特定することができる。
【0091】
また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、目盛り95をラックギヤ85に表示してもよい。この場合、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、基準目印96がレール87に表示される。このようにすれば、第1外れ止め機構部81においても、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法を特定することができる。従って、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法が適正範囲内に調整されているかどうかの確認をより確実に行うことができる。この場合、基準目印96はなくてもよい。
【0092】
また、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、目盛り95をレール87に表示してもよい。この場合、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、基準目印96がラックギヤ85に表示される。このようにしても、ロープ5と各外れ止め部材86との隙間の寸法が適正範囲内に調整されているかどうかの確認をより確実に行うことができる。この場合も、基準目印96はなくてもよい。
【0093】
また、目盛り95がラックギヤ85及びレール87のいずれか一方に表示された構成を実施の形態2及び3におけるロープ外れ止め装置8に適用してもよい。この場合、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82の少なくともいずれか一方において、目盛り95がラックギヤ85及びレール87のいずれか一方に表示されていればよい。
【0094】
また、各上記の実施の形態では、第1外れ止め機構部81におけるラックギヤ85と、第2外れ止め機構部82におけるラックギヤ85とが、互いに平行に配置されている。しかし、第2外れ止め機構部82におけるラックギヤ85が、第1外れ止め機構部81におけるラックギヤ85に対して傾斜して配置されていてもよい。
【0095】
また、実施の形態1、3及び4では、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれにおいて、第1通し穴88がラックギヤ85に設けられている。しかし、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82の少なくともいずれか一方において、第1通し穴88を外れ止め部材86に設けてもよい。この場合、第1通し穴88は、ラックギヤ85の移動方向に沿った長穴とされる。また、第1通し穴88に通されたねじ89は、ラックギヤ85に形成されたねじ穴にねじ込まれる。さらに、外れ止め部材86は、第1通し穴88に通されたねじ89によってラックギヤ85に取り付けられる。このようにしても、ラックギヤ85に対する外れ止め部材86の位置を簡単な構成によって調整可能にすることができる。
【0096】
また、各上記の実施の形態では、ロックねじ842を締め付けることにより支持部432に対する爪841の位置が固定される。しかし、支持部432に対する爪841の移動を阻止するストッパを支持部432に着脱可能に取り付けてもよい。この場合、ストッパが支持部432に取り付けられた状態で爪841がストッパに接触することにより、爪841の移動が阻止される。また、この場合、ストッパが支持部432から取り外されることにより、ロック位置と解除位置との間で爪841の移動が可能になる。
【0097】
また、各上記の実施の形態では、ラックギヤ85の移動を案内するガイド部材としてレール87が用いられている。しかし、ガイド部材は、レール87に限定されない。ラックギヤ85の移動を案内するガイド部材として、例えばラックギヤ85の移動方向へ並ぶ複数のガイドローラを用いてもよい。
【0098】
また、各上記の実施の形態では、ロープ外れ止め装置8が巻上機4の駆動綱車42に適用されている。しかし、かご吊り車22、おもり吊り車32などの綱車にロープ外れ止め装置8を適用してもよい。
【0099】
また、各上記の実施の形態では、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82が設けられる固定部材として主軸43が用いられている。しかし、例えば、主軸43とは別の支持金具を巻上機本体41に固定部材として固定し、第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82を支持金具に設けてもよい。
【0100】
以上、上記の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【0101】
以下に、本開示に含まれ得る態様の例について、付記として明記する。
(付記1)
ロープが巻き掛けられる綱車の軸線を中心として固定部材に対して回転可能なピニオンギヤと、
前記固定部材にそれぞれ設けられる第1外れ止め機構部及び第2外れ止め機構部と
を備え、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記ピニオンギヤに噛み合うラックギヤと、前記ラックギヤに取り付けられた外れ止め部材とを有しており、
前記外れ止め部材は、前記ロープを介して前記綱車の外周部に対向し、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれでは、前記ピニオンギヤの回転に応じて前記ラックギヤが前記外れ止め部材とともに前記固定部材に対して移動することにより、前記ロープと前記外れ止め部材との隙間の寸法が変化するエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記2)
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のうち、前記第1外れ止め機構部においてのみ、前記ラックギヤに対する前記外れ止め部材の位置が前記ラックギヤの移動方向において調整可能である付記1に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記3)
前記第1外れ止め機構部では、第1通し穴が前記ラックギヤ及び前記外れ止め部材のいずれか一方に設けられているとともに、前記第1通し穴に通された取付具によって前記外れ止め部材が前記ラックギヤに取り付けられており、
前記第1通し穴は、前記ラックギヤの移動方向に沿った長穴である付記2に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記4)
爪を有するロック機構部を備え、
前記爪は、前記爪が前記ピニオンギヤに掛かるロック位置と、前記爪が前記ピニオンギヤから外れる解除位置との間で前記固定部材に対して移動可能になっており、
前記爪の位置が前記ロック位置となることにより、前記ピニオンギヤの回転が阻止される付記1から付記3までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記5)
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記固定部材に対する前記ラックギヤの移動を案内するガイド部材を有しており、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のいずれか一方においてのみ、前記ガイド部材及び前記ラックギヤのいずれか一方に目盛りが表示されている付記1から付記4までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記6)
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれは、前記固定部材に対する前記ラックギヤの移動を案内するガイド部材を有しており、
前記第1外れ止め機構部及び前記第2外れ止め機構部のそれぞれでは、第2通し穴が前記ガイド部材及び前記ラックギヤのいずれか一方に設けられているとともに、前記第2通し穴に通された位置固定具によって前記ガイド部材に対する前記ラックギヤの位置が固定可能になっており、
前記第2通し穴は、前記ラックギヤの移動方向に沿った長穴である付記1から付記5までのいずれか一項に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
(付記7)
前記ピニオンギヤは、前記固定部材に対して着脱可能に取り付けられる付記6に記載のエレベーターのロープ外れ止め装置。
【符号の説明】
【0102】
5 ロープ、8 ロープ外れ止め装置、42 駆動綱車(綱車)、43 主軸(固定部材)、81 第1外れ止め機構部、82 第2外れ止め機構部、83 ピニオンギヤ、84 ロック機構部、85 ラックギヤ、86 外れ止め部材、87 レール(ガイド部材)、88 第1通し穴、89 ねじ(取付具)、91 第2通し穴、92 ねじ(位置固定具)、841 爪。
【要約】
【課題】ロープと各外れ止め部材との隙間の寸法を調整する作業にかかる時間の短縮化を図ることができるエレベーターのロープ外れ止め装置を提供する。
【解決手段】エレベーターのロープ外れ止め装置において、ピニオンギヤ83は、駆動綱車42の軸線を中心として主軸43に対して回転可能になっている。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれは、ピニオンギヤ83に噛み合うラックギヤ85と、ラックギヤ85に取り付けられた外れ止め部材86とを有している。第1外れ止め機構部81及び第2外れ止め機構部82のそれぞれでは、ピニオンギヤ83の回転に応じてラックギヤ85が外れ止め部材86とともに主軸43に対して移動することにより、ロープ5と外れ止め部材86との隙間の寸法が変化する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14