(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240315BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G03F7/20 505
H05K3/00 H
H05K3/00 D
(21)【出願番号】P 2023136160
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056167(JP,A)
【文献】特開2009-157168(JP,A)
【文献】特開2005-332987(JP,A)
【文献】特開2011-164268(JP,A)
【文献】特許第5881313(JP,B2)
【文献】特開2000-058440(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126457(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調素子アレイの露光エリアが相対移動する走査バンド領域に対し、ベクタデータ分割のため露光エリア相対移動方向に沿って連なるように定められた単位領域に合わせて、ベクタデータを分割し、分割ベクタデータを生成する分割ベクタデータ生成部と、
前記分割ベクタデータを、光変調素子アレイを構成する光変調素子の投影領域よりもサイズの小さいセル単位で構成される細分ラスタデータに変換するラスタデータ変換部と、
前記光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、前記細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出し、描画ラスタデータを生成するラスタデータ抽出部と、
生成した前記描画ラスタデータに基づいて、各光変調素子を駆動制御する露光部とを備え
、
前記単位領域が、前記細分ラスタデータのセル単位のサイズに応じて、定められることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記細分ラスタデータを格納可能なラスタメモリをさらに備え、
前記ラスタデータ抽出部が、前記光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、前記ラスタメモリに格納された前記細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出し、描画ラスタデータを生成し、
前記ラスタメモリのメモリ領域が、前記走査バンド領域における、前記光変調素子アレイの露光エリアよりも大きい領域に相当するメモリ領域であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記細分ラスタデータのセル単位のサイズが、光変調素子の投影領域の1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記単位領域
の露光エリア相対移動方向に沿った幅が、前記露光エリアの相対移動方向に沿った幅よりも小さく、かつ、露光ピッチよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項5】
光変調素子アレイの露光エリアが相対移動する走査バンド領域に対し、ベクタデータ分割のため露光エリア相対移動方向に沿って連なるように定められ
るとともに、前記細分ラスタデータのセル単位のサイズに応じて定められる単位領域に合わせて、ベクタデータを分割し、
ベクタデータ分割によって生成された分割ベクタデータを、光変調素子の投影領域よりもサイズの小さいセル単位で構成される細分ラスタデータに変換し、
前記光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出して、描画ラスタデータを生成し、
生成した描画ラスタデータに基づいて、各光変調素子を駆動制御することを特徴とする露光方法。
【請求項6】
前記走査バンド領域における、前記光変調素子アレイの露光エリアよりも大きい領域に相当するメモリ領域を有するラスタメモリに、前記細分ラスタデータを格納し、
前記光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、前記ラスタメモリに格納された前記細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出して、描画ラスタデータを生成することを特徴とする請求項5に記載の露光方法。
【請求項7】
前記ラスタメモリの空き状態に応じて、前記細分ラスタデータに変換することを特徴とする請求項6に記載の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMDなどの光変調素子アレイを用いてパターニングするマスクレス露光装置に関し、特に、描画データの入力から露光動作までの一連のデータ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板などの製造工程では、フォトレジスト等の感光材料を塗布または貼り付けた基板に対し、描画処理(露光動作)が施される。描画処理では、CADシステム等から送信されるパターンデータ(ベクタデータ)をラスタデータに変換し、ラスタデータに基づいて、DMDを駆動制御する。
【0003】
描画処理では、オーバラップ露光を伴う多重露光動作が行われ、それに合わせてデータ変換処理、データ転送、データ更新処理などが施される。膨大なデータ量のデータ変換、データ更新などを頻繁に行う必要があるため、スループットにデータ転送、データ変換処理に時間を要し、全体の影響を与える。
【0004】
データ処理の軽減のため、例えば、ベクタデータの一部のみを抽出し、抽出したベクタデータをラスタデータに変換した後、DMDを駆動制御する(特許文献1参照)。また、ラスタデータに対して複数のメモリ(第1~第Nメモリ)を用意し、各メモリに格納されたラスタデータを隣のメモリに順次シフトさせながら、DMDを駆動制御する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4203649号
【文献】特許第5258226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、マスクレス露光装置に対し、より解像度の高いパターン形成が要求されている。しかしながら、DMDなどの光変調素子アレイの特性、性能などにより、解像力が制限されてしまう。
【0007】
したがって、より高い解像度のパターンを形成するデータ処理を実行可能な露光装置を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ベクタデータのラスタ変換処理において、各光変調素子のセル単位(セルサイズ)とは異なるセル単位のビットデータに基づいたラスタデータを生成するラスタ変換処理に対して、技術的動向が向けられる。
【0009】
本発明の一態様である露光装置は、ベクタデータを、光変調素子アレイを構成する光変調素子の投影領域よりもサイズの小さいセル単位で構成されるラスタデータ(ここでは、細分ラスタデータという)に変換するラスタデータ変換部を備える。
【0010】
細分ラスタデータは、データ間隔が光変調素子のセルサイズに応じたビットデータのデータ間隔よりも小さいデータ間隔で画素データがマトリクス状に並ぶビットデータとして構成することができる。例えば、ラスタデータ変換部は、細分ラスタデータのセル単位のサイズが、光変調素子の投影領域の1/10以下となるように、細分ラスタデータを生成することが可能である。
【0011】
そして、露光装置は、光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出し、描画ラスタデータを生成するラスタデータ抽出部と、生成した描画ラスタデータに基づいて、各光変調素子を駆動制御する露光部とを備える。例えば、ラスタデータ抽出部は、露光動作時の光変調素子の投影領域中心位置に応じた画素データを抽出することが可能である。
【0012】
露光装置は、細分ラスタデータを書き込み可能なラスタメモリをさらに備えることが可能である。例えば、ラスタメモリのメモリ領域は、光変調素子アレイの露光エリアよりも大きいバンドエリアに相当するように構成することができる。
【0013】
露光装置は、光変調素子アレイの走査バンド領域に沿って定められた単位領域に合わせてベクタデータを分割し、分割ベクタデータを生成する分割ベクタデータ生成部を備えることが可能である。ラスタデータ変換部が、分割ベクタデータを、各々、細分ラスタデータに変換することができる。例えば、ラスタデータ変換部は、細分ラスタデータのセル単位のサイズに応じて、上記分割ベクタデータの単位領域を定めることができる。
【0014】
ラスタ変換処理は、細分ラスタデータのセル単位のサイズによってその処理速度などが影響される。露光装置は、光変調素子アレイの走査バンド領域に沿って定められた単位領域に合わせてベクタデータを分割し、分割ベクタデータを生成する分割ベクタデータ生成部を備えることが可能である。例えば、ラスタデータ変換部は、分割ベクタデータを、各々、細分ラスタデータに変換することができる。
【0015】
例えば、露光装置は、分割ベクタデータごとに生成されるラスタデータを書き込み可能なラスタメモリを備え、ラスタデータ変換部は、ラスタメモリの空き状態(例えば、分割ベクタデータに応じたメモリ領域相応の空き容量)に応じて、ラスタデータに変換することができる。
【0016】
また、ラスタメモリのメモリ領域は、光変調素子アレイの露光エリアよりも大きいバンドエリアに相当するように構成することが可能であり、ラスタデータ変換部におけるデータ処理は、ラスタメモリに対してラスタデータを順次送り出し続けることが容易となる。
【0017】
本発明の他の一態様である露光方法は、ベクタデータを、光変調素子の投影領域よりもサイズの小さいセル単位で構成される細分ラスタデータに変換し、光変調素子アレイの露光エリアの相対位置に応じて、細分ラスタデータの中から、各光変調素子に対応する画素データを抽出して、描画ラスタデータを生成し、生成した描画ラスタデータに基づいて、各光変調素子を駆動制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マスクレス露光装置に対し、より高い解像度のパターンを形成するデータ処理を実行可能な露光装置を提供することが求められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態である露光装置のブロック図である。
【
図2】ラスタ変換部において実行されるラスタ変換処理の一部を示した図である。
【
図3】抽出部において実行される細分ラスタデータの抽出処理を示した図である。
【
図4】ラスタ変換部、抽出部、露光部の処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本実施形態である露光装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態である露光装置のブロック図である。露光装置10は、プリント回路基板などの基板Wに対してパターンを形成可能なマスクレス露光装置として構成されている。基板Wはステージ50に搭載され、ステージ50は、図示しないX-Yステージ機構によって主走査方向(X方向)、副走査方向(Y方向)に移動可能である。
【0022】
露光装置10は、照明光学系(図示せず)、DMD(Digital Micro-mirror Device)30、投影光学系40などを含む露光ヘッド20を複数備え、副走査方向(Y方向)に沿って所定間隔で並んで配置されている(
図1では1つの露光ヘッド20のみ図示)。レーザーなどの光源(図示せず)から出力された光は、照明光学系、DMD30、投影光学系40を介して基板Wに投影される。
【0023】
矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させたDMD30では、各マイクロミラーが、ON/OFF制御される。マイクロミラーで反射した光は、パターン光となって投影光学系40へ導かれ、基板Wに塗布、あるいは貼り付けられた感光材料表面に結像する。結像倍率は、投影光学系40の光学性能などに従って定められ、ここでは1倍に定められている。
【0024】
露光装置10は、CADシステムなどと接続し、コントローラ90が、露光装置10の動作を制御する。CADシステムなどから送られてくる描画データが入力されるのに伴い、一連の露光に関連するデータ処理が実行される。
【0025】
図1では、露光装置10の一部構成を、機能ごとにまとめて示している。露光装置10は、ラスタ変換部60、抽出部70、露光部80を備えている。
【0026】
ラスタ変換部60は、ベクタデータ分割部62、ラスタデータ変換部64を備える。ラスタ変換部60では、ベクタデータである描画データをラスタデータに変換するラスタ変換処理が実行される。ラスタ変換処理により生成されたラスタデータは、ラスタメモリ92に格納される。なお、ベクタデータである描画データは、アライメント補正処理、座標変換処理などを経て、ラスタデータに変換されるようにしてもよい。
【0027】
抽出部70は、ラスタデータ抽出部72、イメージデータメモリ74を備える。抽出部70では、ラスタメモリ92に格納されたラスタデータの中で、DMD30の各マイクロミラーの位置に応じた画素(ピクセル、ビット)によって構成されるラスタデータ(描画ラスタデータ)が抽出される。これにより、DMD30の各マイクロミラーに対するON/OFFの状態が定められる。以下では、このDMD30のマイクロミラーによって形成されるパターンイメージを構成するラスタデータを、必要に応じて「画面データ」という。画面データは、一時的にイメージデータメモリ74に格納される。
【0028】
露光部80は、上述した露光ヘッド20とともに、ステージ計測部82、データ転送部84を備える。データ転送部84は、ステージ計測部82から送られてくるステージ位置情報に基づき、イメージデータメモリ74から露光エリアの相対位置に応じた画面データをDMD30に転送する。DMD30の各マイクロミラーは、送られてくる画面データに基づいて、ON/OFF制御(駆動制御)される。
【0029】
露光動作では、ステージ50が主走査方向(X方向)に沿って移動するのに伴い、DMD30の投影領域となる露光エリアが基板Wに対し、主走査方向(X方向)に沿って相対移動する。ここでは、露光エリアが主走査方向(X方向)に対して微小傾斜角度αだけ傾くように、露光ヘッド20が配置されている。
【0030】
ステージ50が一定速度で移動する間、あらかじめ定められた露光ピッチに従い、多重露光動作(オーバラップ露光)が実行される。それぞれの帯状の走査領域(以下、走査バンド領域という)に対して多重露光動作が行われることにより、基板W全体に対する描画処理が行われる。
【0031】
一連の露光に関するデータ処理において、露光装置10では、ラスタ変換部60のラスタデータ変換処理と、抽出部70のラスタデータ抽出処理は、独立してそれぞれ実行される。また、抽出部70のラスタデータ抽出処理、露光部80の多重露光動作の処理状況に従い、ラスタ変換部60のラスタデータ変換処理が実行される。
【0032】
また、ラスタ変換部60のラスタデータ変換処理によって生成されるラスタデータは、DMD30の各マイクロミラーの投影領域(微小スポット領域)サイズに合わせてデータ間隔が定められたラスタデータではなく、投影領域サイズよりも小さいセルサイズ単位(画素サイズ単位)でデータ間隔が定められたラスタデータ(以下、細分ラスタデータという)として構成される。
【0033】
以下、
図2、3を用いて、このようなデータ処理の独立性(非連動性)、および細分ラスタデータの生成処理について説明する。
【0034】
図2は、ラスタ変換部60において実行されるラスタ変換処理の一部を示した図である。ここでは、DMD30による走査バンド領域を、符号「BD」で示している。
【0035】
走査バンド領域BDに対しては、あらかじめ単位領域が定められている。単位領域は、描画データ(ベクタデータ)を部分的に抽出し、データ分割するときの1つの塊となるデータ領域を表す。ラスタ変換処理の処理速度などに従って、単位領域のサイズが定められている。
図2では、走査バンド領域BDに定められた単位領域を、符号VP0~VPnで表している。
【0036】
ベクタデータである描画データは、単位領域に従って分割される。分割によって得られるベクタデータ(以下、分割ベクタデータという)には、単位領域を規定する境界ライン(以下、パーティションともいう)L上に、パターンの特徴点Bdが現れる。そのため、各単位領域の分割ベクタデータに対し、境界ラインL上に位置する特徴点Bdの位置座標(X、Y座標)が演算される。
【0037】
ラスタデータ変換部64は、分割ベクタデータをラスタデータに変換する。このとき、上述したように、マイクロミラーの投影領域のサイズよりも小さいセルサイズ単位で構成されるビットマップデータである細分ラスタデータが生成される。ここでは、細分ラスタデータを構成する各ビットデータ(画素データ)のサイズは、マイクロミラーの投影領域のサイズの数十分の一以下に定められている。
【0038】
細分ラスタデータは、分割ベクタデータごとに生成され、ラスタメモリ92に格納される。ラスタメモリ92は、ここではリングバッファ機能を有するバッファメモリとして構成されている。
【0039】
ラスタメモリ92では、生成される細分ラスタデータが必要に応じて書き込まれる。コントローラ90は、細分ラスタデータをラスタメモリ92へ書き込む制御を行い、ラスタメモリ92の空き状態に応じて、細分ラスタデータをラスタメモリ92へ書き込む。
【0040】
図3は、抽出部70において実行される細分ラスタデータの抽出処理を示した図である。
【0041】
細分ラスタデータは、ラスタメモリ92においてパターンを統合させたイメージデータとして構成される。
図3に示すように、ラスタメモリ92のメモリ領域は、DMD30の露光エリアEAのサイズより大きいバンドエリアに相当する。細分ラスタデータは、露光ピッチPPに従ってメモリ領域の格納位置を変えていく。コントローラ90は、ラスタメモリ92における細分ラスタデータの読み出し制御を行う。
【0042】
ラスタデータ抽出部72では、DMD30の露光エリアの相対位置に応じて、ラスタメモリ92に格納されている細分ラスタデータの中から、各マイクロミラーの位置に相当する画素データ(ビットデータ)が抽出される。具体的には、各マイクロミラーの露光動作時におけるショット中心位置CCを演算し、その位置に応じた細分ラスタデータの中の画素データ(ビットデータ)を抽出する。
【0043】
そして、抽出されたビットデータをマイクロミラー配列に従って配置したビットマップデータに基づいて、描画ラスタデータが生成される。前述のとおり、細分ラスタデータは、DMD30の画面解像度より小さい解像度で生成されるラスタデータであるが、描画ラスタデータの解像度は、DMD30の画面解像度と一致する。
【0044】
図3では、ショット中心位置を符号CCで示し、また、抽出された細分ラスタデータを、符号RMで示している。なお、ショット中心位置CC、抽出した細分ラスタデータRMは、抽出前の細分ラスタデータBRよりもセルサイズ単位が大きい、すなわちデータ間隔が大きいドット状パターンとして図示している。
【0045】
抽出された細分ラスタデータRMは、対応するマイクロミラーのON/OFF状態を定めるデータとなる。したがって、露光動作に合わせた細分ラスタデータRMの抽出は、DMD30を構成するマイクロミラーによって表されるパターンのイメージデータ、すなわち画面データを生成することに繋がる。
図3では、露光ピッチPPに合わせて順次生成される画面データを示している。
【0046】
ここで、ラスタ変換部60における分割ベクタデータ、細分ラスタデータの生成は、一連のデータ処理として連続的、かつ繰り返し実行される、一方、抽出部70の細分ラスタデータの抽出は、ラスタ変換部60におけるデータ処理と連動して行われるものではなく、独立して実行される。
【0047】
すなわち、生成された細分ラスタデータが、バッファメモリであるラスタメモリ92に一時的に格納されることにより、細分ラスタデータの抽出処理、画面データの生成は、ラスタ変換処理と関係なく行うことが可能となる。
【0048】
露光部80は、画面データの生成、すなわち露光ピッチPPに合わせて多重露光動作を実行する。したがって、抽出部70、露光部80のデータ処理は、露光ピッチPPに応じて連続的で繰り返し実行されるデータ処理となる。これらのデータ処理は、バッファメモリであるラスタメモリ92を介することにより、ラスタ変換部60のラスタ変換処理と連動せず、行われる。
【0049】
ところで、ラスタメモリ92への書き込み可能か否かは、ラスタメモリ92の空き状態に従う。上述したように、抽出部70および露光部80のデータ処理は、露光ピッチPPに従って実行され、細分ラスタデータの抽出処理によって、ラスタメモリ92における細分ラスタデータの書き込み可能な状態が生じる。分割ベクタデータ、および細分ラスタデータの生成処理は、ラスタメモリ92の空き状態に合わせて繰り返し行われる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の露光装置10では、ラスタ変換部60と、抽出部70におけるデータ処理を、ラスタメモリ92を介することによって、それぞれ独立して実行させる。一連の露光に関する処理に対し、機能的観点から処理内容を分け、分けた処理群の中で反復実行させる構成により、スループットを維持しながら、効果的にデータ処理を行うことができる。
【0051】
さらに本実施形態では、ラスタ変換部60が、ベクタデータを、単位領域BDに合わせて分割ベクタデータを生成し、また、マイクロミラーの投影領域よりもサイズの小さいセルサイズで構成される細分ラスタデータBRを生成する。
【0052】
DMD30のマイクロミラーの投影領域サイズよりもはるかにセルサイズの小さい細分ラスタデータの中から、各マイクロミラーのショット中心位置に該当する細分ラスタデータを選択、抽出する。そのため、露光エリアEAの相対位置(マイクロミラーのショット中心位置)に対し、各マイクロミラーのON/OFF状態を適切に定めることが可能となり、精度よくパターを形成することができる。
【0053】
図4は、ラスタ変換部60、抽出部70、露光部80の処理の流れを示したフローチャートである。
【0054】
ラスタ変換部60では、ラスタメモリ92の空き状態に応じて、ラスタ変換処理を繰り返し実行する(S101~106)。ただし、ここでは単位領域が、パーティション番号として管理されている。
【0055】
抽出部70では、ラスタメモリ92に格納された細分ラスタデータの中から、各マイクロミラーの位置に応じた画素データ(ビットデータ)が選択され、画面データ、すなわちDMD30の解像度に応じたビットマップデータである描画ラスタデータが、イメージデータメモリ74に格納される(S201~S208)。ただし、ここでは、画面データの番号が生成画面番号として管理されている。
【0056】
露光部80では、画面データの読み出しにしたがって多重露光動作が行われる(S301~S306)。ただし、露光ピッチに応じた露光動作のタイミングを、露光番号として管理している。
【0057】
露光装置10に関し、ラスタ変換部60と抽出部70とを非連動させてデータ処理する構成に着目すれば、細分ラスタデータを生成しない構成にしてもよい。一方、細分ラスタデータを生成する構成に着目すれば、ラスタ変換部60と抽出部70とを非連動させてデータ処理する構成にしなくてもよい。
【0058】
露光装置10については、分割光学系(分岐光学系)によって、光変調素子アレイのパターン光を副走査方向に沿って分岐させ、それぞれ異なる走査バンドに沿って走査させる構成にすることができる。このような露光装置10においても、上述したデータ処理を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 露光装置
30 DMD
60 ラスタ変換部
70 抽出部
80 露光部
【要約】
【課題】マスクレス露光装置に対し、より高い解像度のパターンを形成するデータ処理を実行可能な露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置10は、ラスタ変換部60を備える。ラスタ変換部60は、ベクタデータを単位領域に合わせて分割ベクタデータを生成するとともに、マイクロミラーの投影領域よりもサイズの小さいセルサイズで構成される細分ラスタデータを生成する。
【選択図】
図2