(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】毛髪採取具
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20240315BHJP
B26B 13/24 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01N1/04 B
G01N1/04 X
G01N1/04 G
B26B13/24
(21)【出願番号】P 2023516744
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2022029116
(87)【国際公開番号】W WO2023021955
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2021132285
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 亨平
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 千恵
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208403(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230888(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/150589(WO,A1)
【文献】特開2020-201119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
A61B 10/00
B26B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取面を有する薄板状の台座部と、
前記採取面に取り付けられ保持台と、
前記保持台を介して、または直接、前記採取面に取り付けられた固定部と、
を備え、
前記保持台は、前記台座部の端部から距離1だけ離れた位置に立設した側面と、前記側面の前記採取面から距離2だけ上方の位置から、前記端部から離れる方向に前記採取面に沿って延びた保持面と、を有し、
前記距離1が毛髪を切断するハサミの刃の厚みより長く、前記距離2が該ハサミの刃の幅より長く、
前記端部を頭皮に当てた状態で、所定の量の毛髪を前記保持面に載せるように頭皮側から引き出して、引き出した毛髪を前記固定部で固定し、前記側面、前記採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断して、毛髪サンプルを採取することを特徴とする毛髪採取具。
【請求項2】
前記距離1が3mm以上8mm以下の範囲にあり、前記距離2が4mm以上10mm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の毛髪採取具。
【請求項3】
前記保持台が前記保持面を底面とする溝部を有し、引き出した毛髪が延在する方向と交わる方向の前記溝部の巾寸法が、採取する毛髪の数に応じて定められることを特徴とする請求項
1に記載の毛髪採取具。
【請求項4】
前記溝部の巾寸法が、3mm以上8mm以下の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の毛髪採取具。
【請求項5】
前記固定部が、回転軸を介して前記保持台に回転自在に取り付けられており、
前記保持台の前記保持面及び前記固定部の固定面の間に毛髪を挟んだ前記固定部の回転位置において、前記保持台及び前記固定部を固定することを特徴とする請求項
1に記載の毛髪採取具。
【請求項6】
前記保持台及び前記固定部がスナップフィットにより着脱可能な状態で固定されることを特徴とする請求項5に記載の毛髪採取具。
【請求項7】
前記固定部の弾性を有する梁部分に毛髪と接する前記固定面が形成され、前記梁部分の曲げ変形に伴う力が毛髪に加わることを特徴とする請求項
5に記載の毛髪採取具。
【請求項8】
前記保持台の前記保持面及び前記固定部の固定面の一方に凸部が形成され、他方に凹部が形成され、前記保持面及び前記固定面の間に毛髪を挟んだ状態において、互いに嵌合した前記凸部及び前記凹部の間に毛髪が挟み込まれて保持されることを特徴とする請求項
5に記載の毛髪採取具。
【請求項9】
前記台座部に引き出した毛髪の長さを測定する目盛りが示されていることを特徴とする請求項1から
8の何れか1項に記載の毛髪採取具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪サンプルを採取するために用いる毛髪採取具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毛髪を用いて体内のミネラルバランス等の傾向をみる予防医学検査に関心が高まっている。その中には、美容院でカットされた毛髪を用いて、ミネラルの体内蓄積量を検査する健康状態調査システムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検査を適切に行うには、頭皮近傍の領域を含む毛髪サンプルを採取することが重要である。しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、美容院でカットされた毛髪を用いるので、頭皮近傍の領域を含む毛髪サンプルを確実に採取することができず、毛髪を用いた正確な検査が実施できない虞がある。一方、ユーザが、自分でハサミを用いて自毛を切断して毛髪サンプルを採取する場合には、かなり困難な作業となり、この場合も、毛髪を用いた正確な検査が実施できない虞がある。また、毛髪サンプルを封筒に入れて郵送した場合には、郵送中に毛髪サンプルが損傷する虞もある。
【0005】
よって、本発明は、上記を問題に鑑みてなされたものであり、分析に適した毛髪サンプルを誰でも容易に採取することができ、採取した毛髪サンプルを損傷させることなく検査機関へ送付できる毛髪採取具を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の1つの態様に係る毛髪採取具は、
採取面を有する薄板状の台座部と、
前記採取面に取り付けられ保持台と、
前記保持台を介して、または直接、前記採取面に取り付けられた固定部と、
を備え、
前記保持台は、前記台座部の端部から距離1だけ離れた位置に立設した側面と、前記側面の前記採取面から距離2だけ上方の位置から、前記端部から離れる方向に前記採取面に沿って延びた保持面と、を有し、
前記距離1が毛髪を切断するハサミの刃の厚みより長く、前記距離2が該ハサミの刃の幅より長く、
前記端部を頭皮に当てた状態で、所定の量の毛髪を前記保持面に載せるように頭皮側から引き出して、引き出した毛髪を前記固定部で固定し、前記側面、前記採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断して、毛髪サンプルを採取する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明では、分析に適した毛髪サンプルを誰でも容易に採取することができ、採取した毛髪サンプルを損傷させることなく検査機関へ送付できる毛髪採取具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
【
図3A】毛髪サンプルを採取する位置を模式的に示す図であって、後頭部を示す側面図である。
【
図3B】本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、毛髪採取具を頭皮に当てたところを模式的に示す図である。
【
図3C】
図3Bの状態から、毛髪サンプルを採取するため、毛髪を保持面に載せるように頭皮から引き出したところを模式的に示す側面図である。
【
図3E】
図3C、
図3Dに示す状態から、引き出した毛髪を固定部の粘着層で固定したところを模式的に示す側面図である。
【
図3F】
図3Eに示す状態から、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
【
図5A】本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。
【
図7A】本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
【
図7B】
図7Aに示す毛髪採取具の保持台及び固定部の周辺を模式的に示す斜視図である。
【
図8A】本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
【
図9A】
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、特に、固定部が開いた状態を示す図である。
【
図9B】
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、特に、
図9Aに示す状態から固定部を更に閉じる方向に回転させた状態を示す図である。
【
図9C】
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、特に、固定部が閉じられた状態を示す図である。
【
図10A】
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、特に、固定部を閉じる直前における梁部により毛髪を保持する機能を示す図である。
【
図10B】
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、特に、固定部が閉じた状態における梁部により毛髪を保持する機能を示す図である。
【
図11A】
図8Aの矢視J-Jを示す側面図であって、特に、保持用凸部及び保持用凹部の機能を示す図であり、固定部が開いた状態を示す図である。
【
図11B】
図8Aの矢視J-Jを示す側面図であって、特に、保持用凸部及び保持用凹部の機能を示す図であり、固定部が閉じた状態を示す図である。
【
図12A】本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、毛髪採取具を頭皮に当て、毛髪を保持台の保持面に載せるように頭皮から引き出したところを模式的に示す側面図である。
【
図12B】
図12Aに示す状態から、引き出した毛髪を保持台の保持面及び固定部の固定面で挟み込んで固定し、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態では前述の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
(第1の実施形態に係る毛髪採取具)
はじめに、
図1、
図2Aから
図2Cを参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具の説明を行う。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
図2Aは、本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
図2Bは、
図2Aの矢視A-Aを示す側面図である。
図2Cは、
図2Aの矢視B-Bを示す側面図である。
【0011】
本実施形態に係る毛髪採取具2は、採取面4Aを有する薄板状の台座部4と、採取面4Aに取り付けられ保持台10と、保持台10の上面に取り付けられた固定部20とを備える。つまり、固定部20は、保持台10を介して採取面4Aに取り付けられている。
【0012】
台座部4は、紙や樹脂シートから形成された薄板状の部材である。台座部4は、紙からなる芯材の表面に樹脂からなるカバー部材を備える場合もあり得る。例えば、台座部4の端部4Bを頭皮に当てて反対側の端部から指で押しても、容易に曲がることのない剛性を有することが好ましい。本実施形態に係る台座部4の平面形状は略矩形である。この略矩形の長さが、50mm以上150mm以下の範囲にあり、略矩形の幅が、30mm以上80mm以下の範囲にあることを例示できる。ただし、台座部4の平面形状は略矩形に限られるものではなく、楕円形をはじめとするその他の任意の平面形状を有することができる。
【0013】
保持台10は、台座部4の端部4Bから距離K1だけ離れた位置に立設した側面10Bと、側面10Bの採取面4Aから距離K2だけ上方の位置から、端部4Bから離れる方向に採取面4Aに沿って延びた保持面10Aとを有する。距離K1及び距離K2により、後述するように、毛髪を切断するハサミの刃を入れる空間を形成することができる。このため、距離K1は、毛髪を切断するハサミの刃の厚みより長くなっており、距離K2は、ハサミの刃の幅より長くなっている。ここでいう刃の厚み及び幅とは、ハサミの上刃及び下刃の切断領域の厚み及び幅のうち、大きな値となる厚み及び幅を意味する。
【0014】
本実施形態では、保持面10Aが採取面4Aに対して略平行に配置されているが、これに限られるものでない。例えば、保持面10Aが採取面4Aに対して、少し傾斜して配置されている場合もあり得る。
【0015】
更に、保持台10には、2つの凸部12Aの間に凹部12Bが配置された溝部12を有する。保持面10Aが、この溝部12の底面に相当する。保持台10は、概ね扁平な略直方体の形状を有し、側面4B側で、2つの凸部12Aが上面から突出して形成されている。このような扁平な形状により、郵送等においても嵩張らず、郵送中に保持台10が台座部4から外れる虞も少ない。保持台10は、例えば、樹脂の一体成形で製造することができる。
【0016】
図2Bでは、2つの凸部12Aの間の距離である溝部12の巾寸法、つまり保持面10Aの巾寸法がWで示されている。溝部12の巾寸法(保持面10Aの巾寸法)Wについては後述する。後述するように、頭皮側から引き出された毛髪は、溝部12の巾方向に対して略直交する方向に延びるように配置される。溝部12を構成する凸部12Aの上面と保持面10Aとの間の距離K3については、2mm以上6mm以下の範囲にあることを例示できる。
【0017】
本実施形態では、固定部20が保持台10に取り付けられており、保持面10Aよりも台座部4の端部4Bから離れた位置に配置されている。固定部20は、例えば、一方の面に剥離紙で覆われた粘着層が設けられた細長いシート部材が、粘着層が設けられた面が内側になるように、”くの字状”または”Lの字状”に折り曲げられて形成されている。シート部材の折れ曲がって繋がった2つの外面のうちの一方の面が、保持台10に接合されている(
図1参照)。シート部材として、紙または樹脂シートを用いることができる。後述するように、剥離紙を剥がして、対向する2つの接着面の間に毛髪を挟み込んで、接着面どうしを貼り合わせることにより、毛髪を保持台10に固定することができる。
【0018】
保持台10が、保持面10Aより高さが低い上面を有しており、固定部20は、この保持面10Aより低い上面に取り付けられている。ただし、これに限られるものではなく、例えば、固定部20が、保持面10Aと同じ高さの保持台10の上面に取り付けられている場合もあり得る。固定部20のシート部材や粘着層の厚みは僅かなので、固定部20は保持面10Aと略同一な高さに配置されているといえる。
【0019】
何れの場合でも、本実施形態に係る毛髪採取具2では、固定部20が、保持面10Aよりも台座部4の端部4Bから離れた位置の保持台10の上面に取り付けられているので、保持面10Aに載せられた毛髪を十分な剛性を有する保持台10で確実に固定して保持することができる。
【0020】
また、台座部4の上面の採取面4Aの固定部20よりも側面10Bから離れた領域に、滑り止め用の凹凸面10Cが設けられている。更に、台座部4の採取面4Aには、引き出した毛髪の長さを測定する目盛りが設けられている。図では、5cm及び10cmの目盛りが描かれているが、これに限られるものではなく、用途に応じて任意の長さの目盛りを示すことができる。更に、採取面4Aの台座部4の端部4Bと保持台10の側面10Bとの間の領域には、ハサミで毛髪を切断する位置の目安となる点線が示されている。
【0021】
(毛髪の採取方法)
次に、
図3Aから
図3Fを参照しながら、上記の第1の実施形態に係る毛髪採取具2を用いて、毛髪を採取する方法を説明する。
図3Aは、毛髪サンプルを採取する位置を模式的に示す図であって、後頭部を示す側面図である。
図3Bは、本発明の第1の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、毛髪採取具を頭皮に当てたところを模式的に示す図である。
図3Cは、
図3Bの状態から、毛髪サンプルを採取するため、毛髪を保持面に載せるように頭皮から引き出したところを模式的に示す側面図である。
図3Dは、
図3Cに示す状態を採取面側から見た平面図である。
図3Eは、
図3C、
図3Dに示す状態から、引き出した毛髪を固定部の粘着層で固定したところを模式的に示す側面図である。
図3Fは、
図3Eに示す状態から、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。図面では、引き出した複数の毛髪のうちの1本の毛髪のみを示している。
【0022】
図3Aでは、後頭部の最も出っ張っている箇所Xのやや下側と、頭部の縦の中心線Yとが交差する採取領域Tの毛髪を採取する場合を示す。はじめに、櫛等を使って、縦の中心線Yに沿って毛髪を左右にかき分ける。かき分けた採取領域Tの周辺の毛髪を、ピン102等を用いて、採取領域Tに毛髪がかからないように仮留めする(
図3A参照)。次に、固定部20の粘着層を覆う剥離紙を剥がす。そして、採取領域Tの1cm角程度の面積分(約1cm
2分)の毛髪をつまむ。このとき、四角内で毛髪を均等につまむのが好ましい。これにより、検査に適した50~60本程度の本数の毛髪を採取することができる。ただし、採取する毛髪の本数は、50~60本に限られるものではなく、検査の種類、用途に応じて、最適な本数の毛髪を採取することができる。
【0023】
次に、採取部位の毛髪根元の頭皮Pに対して、台座部4が直角になるように当てる(
図3B参照)。このとき、採取面4Aが上側を向くような状態で、台座部4を頭皮Pに当てる。そして、一方の手で端部4Bを頭皮Pに押し当てた状態で、もう一方の手で、毛髪を保持台10の保持面10Aに載せるように頭皮側から引き出す(
図3C、3D参照)。
【0024】
引き出された毛髪は、保持面10Aを通過し、固定部20の対向する2つの粘着面の間を通過して、凹凸面10Cが設けられた領域まで延びている。引き出す毛髪の長さとしては、5cm以上が好ましい。また、引き出した毛髪の長さが10cmを越える場合には、後述するように、採取面4Aに示された目盛りを用いてハサミで切断して、全長を10cm以内にすることもできる。
【0025】
そして、引き出した毛髪が保持面10Aに接し、固定部20の対向する2つの粘着面の間を通過して、滑り止め用の凹凸面10Cにまで延びた状態において、指で毛髪を凹凸面10Cに押し当てて、その状態を保持する。このとき、毛髪が保持面10A上で互いに重なることなく、弛むことがないようにした状態で保持する。本実施形態に係る髪採取具2では、このような滑り止め用の凹凸面10Cを有するので、確実に引き出した毛髪を保持することができる。
【0026】
本実施形態に係る髪採取具2では、保持台10が、保持面10Aを底面とする溝部12を有し、引き出した毛髪が延在する方向と交わる方向の溝部12の巾寸法(つまり、保持面10Aの巾寸法)Wが、採取する毛髪の数に応じて定められている。上記のように、頭皮Pにおいて、1cm角の領域の毛髪を引き出すことで、50~60本の毛髪を引き出すことができるが、これはあくまで目安であり、頭皮に生えた毛髪の密度には個人差があるのも事実である。本実施形態では、溝部12の巾(保持面10Aの幅)いっぱいに毛髪を重ならないように並べることにより、所望の本数の毛髪をより確実に採取することができる。
【0027】
更に詳細に述べれば、例えば、50~60本の毛髪を互いに重ならないように並べた場合、毛髪が延びる方向と直交する方向の巾寸法が、5~6mm程度になる。よって、溝部12の巾寸法(保持面10Aの巾寸法)Wを5~6mmにすることにより、容易に50~60本の毛髪を採取することができる。
【0028】
ミネラルの蓄積量をはじめとする毛髪を用いた検査では、50~60本程度の毛髪を採取するのが一般的であるが、検査の内容や用途によっては、それよりも少ない本数の毛髪を採取する場合も、それより多い毛髪を採取する場合もあり得る。
これらを考慮すると、溝部12の巾寸法(保持面10Aの巾寸法)Wが、3mm以上8mm以下の範囲にあることが好ましく、5mm以上6mm以下の範囲にあることがより好ましいといえる。これにより、溝部12の巾(保持面10Aの巾)いっぱいに毛髪を互いに重ならないように並べることにより、容易にかつ確実に検査に適した量の毛髪を採取することができる。
【0029】
次に、
図3C、3Dの矢印に示すように、固定部20の対向する2つの粘着面の間を毛髪が通った状態で、固定部20の上側のシート部材を指で下側に押して、毛髪を挟んだ状態で上下の粘着面を貼り合わせる。更に、貼り合わせた箇所を指で強く押さえて、固定部20から毛髪が外れないようにしっかり固定する。このようにして、引き出した毛髪が固定部20の粘着層で固定された状態を、
図3Eに示す。
【0030】
次に、
図3Fに示すように、頭皮Pから固定部20の間の毛髪がピンと張られた状態にして、保持台10の側面10B、台座部4の採取面4A及び頭皮Pで囲まれた空間Sにハサミの刃100を入れて、毛髪を切断する。このとき、採取面4Aに示された点線に沿ってハサミを進めることにより、適切な位置で真っ直ぐに毛髪を切断することができる。
【0031】
ハサミは様々な大きなものがあるが、毛髪サンプルを採取するために毛髪を切断する用途であれば、文房具として販売されているような中、小型なハサミで十分機能を満たす。また、大型のハサミであっても、刃先近傍の領域の幅は、中、小型のハサミの刃の幅と同様である。
【0032】
ハサミの刃を入れる側面10B、採取面4A及び頭皮Pで囲まれた空間Sは、台座部4の端部4Bと保持台10の側面10Bとの間の距離K1、及び保持面10Aの採取面4Aからの距離K2で画定される。
仮に、距離K1が短すぎると、ハサミの刃100の厚みより狭くなって、ハサミの刃100を挿入できなくなる虞がある。一方、距離K1が長すぎると、頭皮Pから離れすぎて毛髪の頭皮Pから離れた領域で毛髪を切断する可能性がある。その場合には、検査に適した頭皮近傍の毛髪を採取できなくなる。これらを考慮すると、距離K1として、3mm以上8mm以下の範囲にあることが好ましく、4mm以上6mm以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、ハサミの刃100を容易に空間P内に挿入することができるとともに、確実に頭皮近傍の毛髪を採取することができる。
【0033】
仮に、距離K2が短すぎると、ハサミの刃100の幅より狭くなってハサミの刃100を挿入できなくなる虞がある。一方、距離K2が長すぎると、頭皮Pから離れすぎて毛髪の頭皮Pから離れた領域で毛髪を切断する可能性がある。また、保持台10の高さが高くなりすぎて、台座部4への取り付けが不安定になり、輸送においても嵩張る可能性がある。これらを考慮すると、距離K2として、4mm以上10mm以下の範囲にあることが好ましく、5mm以上8mm以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、ハサミの刃100を容易に空間P内に挿入することができ、確実に頭皮近傍の毛髪を採取することができるとともに、コンパクトな髪採取具2が得られる。
【0034】
仮に、切断した毛髪の長さが10cmよりも長く、台座部4からはみ出すように延びている場合には、台座部4の採取面4Aに設けられた10cmの目盛りを用いて、ハサミで毛髪を切断して、毛髪の長さを10cm以内にすることもできる。本実施形態では、台座部4に引き出した毛髪の長さを測定する目盛りが示されているので、採取した毛髪の長さを確実に所望の長さ以内に揃えることができる。
【0035】
そして、採取した毛髪が固定された毛髪採取具2を、例えば、シール機能を有する樹脂製の袋に収め、この袋を封筒に入れて、郵送で検査機関へ送ることができる。毛髪採取具2の台座部4は、所定の剛性を有するので、輸送中に毛髪サンプルが損傷するとのを防ぐことができる。なお、袋に収める場合には、毛髪の頭皮側、つまり、台座部4の端部4B側が袋の底側にくるように収めるのが好ましい。これにより、袋に入れる、袋から取り出す等のハンドリング時に、検査に重要な毛髪の頭皮側が損傷するのを抑制することができる。
【0036】
(第2の実施形態に係る毛髪採取具)
次に、
図4、
図5Aから
図5Cを参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具2’の説明を行う。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
図5Bは、
図5Aの矢視C-Cを示す側面図である。
図5Cは、
図5Aの矢視D-Dを示す側面図である。
【0037】
上記の第1の実施形態では、固定部20が保持台10の上面に取り付けられていたが、本実施形態では、固定部20が台座部4の採取面4Aに取り付けられている点で異なる。これに伴い、本実施形態に係る保持台30は、第1の実施形態に係る保持台10と形状が異なる。保持台30は、主に、2つの凸部32Aの間に凹部32Bが配置された溝部32と、その土台領域のみで構成されている。
【0038】
本実施形態では、固定部20が、保持面30Aよりも台座部4の端部4Bから離れた位置の採取面4A上に取り付けられている。
図5Cに示すように、固定部20は、上記の第1の実施形態の場合よりも、保持面30Aからやや離間して配置され、保持面30Aよりも低い位置に配置されている。
【0039】
本実施形態では、固定部20が採取面4Aに取り付けられているので、採取面4Aの配置位置を比較的自由に変更することができる。更に、固定部20が保持面30Aよりも低い位置に配置されるので、保持面30Aと固定部20との間の高低差を用いて、引き出した毛髪に引っ張り力をかけ易く(ピンと張り易く)することができる。
【0040】
更に、採取面4A上に、滑り止め用の凹凸面4Cを設けることもできる。これにより、確実に引き出した毛髪を保持することができる。その他の点については、上記の第1の実施形態と基本的に同様なので、更なる説明は省略する。
【0041】
このような第2の実施形態に係る髪採取具2’を用いて毛髪を採取する方法は、上記の第1の実施形態に係る髪採取具2’を用いて毛髪を採取する方法とほぼ同様である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。
【0042】
第2の実施形態に係る髪採取具2’では、上記のように、固定部20が、保持面30Aよりも低い位置に配置されているので、毛髪を切断するときに、頭皮側の毛の根元から固定部20の間の毛髪をピンと張り易くなる。また、保持面30Aが高く固定部20が低く配置されている場合、
図3Cに対応する工程において、指で毛髪を凹凸面4Cに押しつけて保持するとき、固定部20の対向する2つの粘着層の間を通過する毛髪が、下側の粘着層からクリアランスをとり易くなる。
【0043】
(第3の実施形態に係る毛髪採取具)
次に、
図7A、
図7B及び
図8Aから
図8Cを参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具2’’の説明を行う。
図7Aは、本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す斜視図である。
図7Bは、
図7Aに示す毛髪採取具の保持台及び固定部の周辺を模式的に示す斜視図である。
図8Aは、本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を模式的に示す平面図である。
図8Bは、
図8Aの矢視E-Eを示す側面図である。
図8Cは、
図8Aの矢視F-Fを示す側面図である。
【0044】
本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具2’’では、台座部4に取り付けられた保持台40を備え、固定部50が回転軸を介して保持台40に回転自在に取り付けられた構造を有する。固定部50が保持台40に対して開いた状態で、毛髪Hを保持台40の保持面40A上に載せ、固定部50を閉じて、保持台40の保持面40A及び固定部50の固定面50Aの間で毛髪Hを挟み込んで保持する。
【0045】
このとき、固定部50に形成されたスナップアーム56と保持台40に形成されたスナップ溝44と間の嵌合によるスナップフィットで、固定部50及び保持台40が着脱可能な状態で固定される。ここで、スナップフィットとは、金属や樹脂のような弾性材料からなる部材の結合に用いられる機械的な接続方法であり、材料の弾性を利用してはめ込むことにより固定する方式である。本実施形態では、保持台40及び固定部50は、ともに弾性を有する樹脂材料から形成されている。
【0046】
図8Aから
図8Cに示すように、本実施形態においても、上記の第1、第2の実施形態と同様な距離K1、K2及びK3を有する配置となっている。つまり、本実施形態でも、距離K1が毛髪を切断するハサミの刃の厚みより長く、距離K2がハサミの刃の幅より長くなっている。具体的には、距離K1として、3mm以上8mm以下の範囲にあることが好ましく、4mm以上6mm以下の範囲にあることがより好ましい。距離K2として、4mm以上10mm以下の範囲にあることが好ましく、5mm以上8mm以下の範囲にあることがより好ましい。
また、溝部42を構成する凸部42Aの上面と保持面40Aとの間の距離K3についても、2mm以上6mm以下の範囲にあることを例示できる。
【0047】
次に、
図9Aから
図9Cを参照しながら、保持台40及び固定部50の構造を更に詳細に説明し、固定部50の動きについても更に詳細に説明する。
図9Aから
図9Cは、
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、
図9Aは、固定部が開いた状態を示す図であり、
図9Bは、
図9Aに示す状態から固定部を更に閉じる方向に回転させた状態を示す図であり、
図9Cは、固定部が閉じられた状態を示す図である。
【0048】
固定部50は、回転軸60を介して保持台40に回転自在に取り付けられている。本実施形態では、回転軸60を有する蝶番で固定部50及び保持台40が連結されている。ただし、これに限られるものではなく、回転軸60を中心に固定部50が開閉可能な構造であれば、その他の任意の構造を採用することができる。
【0049】
固定部50は、基部52Aと、回転軸60側で基部52Aと繋がった梁部52Bとを備える。更に、梁部52の回転軸60と反対側の先端には、支持部54が形成されている。また、基部52Aの回転軸60と反対側の先端には、スナップアーム56が形成され、スナップアーム56の上側には、グリップ58が形成されている。一方、保持台40には、固定部50のスナップアーム56と嵌合するスナップ溝44が形成されている。
【0050】
荷重のかからない状態では、梁部52Bの支持部54と、基部52Aとの間に隙間Uが存在する。つまり、荷重のかからない状態では、基部52A及び梁部52Bは、コの字形またはC字形の形状を有し、梁部52Bは片持ち梁の形態で基部52Aに繋がっている。
図10Bを用いて後述するように、保持台40及び固定部50で毛髪Hを挟み込んで固定するとき、樹脂製の梁部52Bが弾性変形して隙間Uがなくなり、梁部52Bの支持部54と基部52Aとが接触した状態になる。
【0051】
図9Aに示すような、固定部50が保持台40に対して大きく開いた状態から、使用者がグリップ58を持って、固定部50を閉じる方向に回転させると、
図9Bに示すような位置まで回転する。更に閉じる方向に回転させると、梁部52Bの先端のスナップアーム56が、保持台40に設けられたスナップ溝44の上外側のコーナ部Qと当接する。更に、グリップ58を持って梁部52Bを押し込むと、スナップアーム56が弾性変形して、スナップアーム56及びスナップ溝44が嵌合した固定状態となる。
【0052】
この固定状態から、グリップ58を持って、固定部50を開く方向に回転させると、スナップアーム56が弾性変形して、スナップアーム56及びスナップ溝44の嵌合状態が解除され、スナップアーム56がスナップ溝44から離間する。更に、固定部50を開く方向に回転させることにより、
図9Bに示す状態を経て、
図9Aに示す位置に戻すことができる。固定部50は更に開く方向に回転させることができ、保持台40に対して180度以上回転させることができる。グリップ58は、非常に持ちやすい形状を有しており、容易にスナップアーム56及びスナップ溝44の嵌合及び嵌合解除を行うことができる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、保持台40及び固定部50がスナップフィットにより着脱可能な状態で固定される。これにより、使用者は、容易に毛髪Hを保持台40及び固定部50の間に挟み込むことができ、また容易に毛髪Hの拘束を解除することができる。
【0054】
<毛髪を保持する機能>
次に、
図10A及び
図10Bを参照しながら、保持台40及び固定部50で毛髪Hを保持する機能を更に詳細に説明する。
図10A及び
図10Bは、
図8Aの矢視G-Gを示す側面図であって、
図10Aは、固定部を閉じる直前における梁部により毛髪を保持する機能を示す図であり、
図10Bは、固定部が閉じた状態における梁部により毛髪を保持する機能を示す図である。
【0055】
保持台40上に毛髪Hを載置した状態で固定部50を閉じる方向に回転させていくと、固定部50のスナップアーム56が保持台40のスナップ溝44の上外側のコーナ部Qに当接する。更に固定部50を閉じる方向に押し込むと、スナップアーム56が弾性変形しながら閉じる方向に回転する。すると、
図10Aに示すように、固定部50の固定面50Aと毛髪Hとが当接するようになる。これにより、固定部50の固定面50Aで毛髪Hを下側に押し込んでいくことになる。
【0056】
このとき、固定部50の梁部52Bには、保持台40の保持面40A及び毛髪Hから上向きの力Fがかかる。よって、弾性を有する樹脂製の片持ち梁の形態の梁部52Bは、基部52Aとの連結領域で曲げモーメントMを受け、曲げ変形(弾性変形)する。この曲げ変形(弾性変形)に伴う力で、毛髪Hに十分な下向きの力を加えることができる。そして、
図10Bに示すように、固定部50のスナップアーム56と保持台40のスナップ溝44とが嵌合して固定状態となったとき、梁部52Bの支持部54と基部52Aとの間の隙間Uがなくなり、支持部54が基部52Aに当接した状態となる。
【0057】
これにより、梁部52Bは両持ち梁の形態となり、保持台40の保持面40A及び毛髪Hからかかった上向きの力Fを、両側の反力R及びR’で支えるようになる。弾性を有する両持ち梁の形態の梁部52Bは、この力により曲げ変形(弾性変形)するが、この曲げ変形(弾性変形)に伴う力で、毛髪Hに十分な下向きの力を加えることができる。これにより、保持台40の保持面40Aとの間で毛髪Hを強固に保持することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態では、固定部50の弾性を有する梁部分52Bに毛髪Hと接する固定面50Aが形成され、梁部分52Bの曲げ変形に伴う力が毛髪Hに加わるようになっている。これにより、固定部50の弾性を有する梁部分52Bの曲げ変形に伴う力で毛髪Hを保持できるので、仮に、毛髪採取具2’’に衝撃等が加わったとしても、曲げ変形した梁部分52Bが急激な変動に追従して、常に安定した状態で毛髪Hを保持することができる。
【0059】
<保持用凸部及び保持用凹部の機能>
次に、
図11A及び
図11Bを参照しながら、毛髪を保持する保持用凸部及び保持用凹部の機能の説明を行う。
図11A及び
図11Bは、
図8Aの矢視J-Jを示す側面図であって、保持用凸部及び保持用凹部の機能を示す図であり、
図11Aは、固定部が開いた状態を示す図であり、
図11Bは、固定部が閉じた状態を示す図である。
【0060】
本実施形態では、固定部50の固定面50Aに保持用凸部62が形成され、保持台40の保持面40Aに保持用凹部64が形成されている。ただし、これに限られるものではなく、固定面50A及び保持面50Aで凹凸が逆転している場合もあり得る。保持用凸部62及び保持用凹部64は、保持する毛髪Hが延びる方向に対して交差する方向に延びており、毛髪Hが延びる方向において、2カ所に形成されている。保持用凸部62及び保持用凹部64は、保持する毛髪Hが延びる方向に対して直交する場合もあり得るし、保持する毛髪Hが延びる方向に対して斜めの方向に延びる場合もあり得る。保持用凸部62及び保持用凹部64は、固定面50A及び保持面40Aの毛髪Hが延びる方向に対して交差する方向の一方の端部から他方の端部まで形成されているのが好ましい。
【0061】
保持用凸部62及び保持用凹部64は、固定部50が保持台40に対して閉じられた回転位置において、互いに嵌合する位置に配置されている。更に詳細に述べれば、保持用凸部62の寸法が保持用凹部64の寸法より若干小さく形成されており、保持用凸部62の寸法が、僅かな隙間を介して、保持用凹部64の中に挿入されるようになっている。
【0062】
図11Aに示すように、固定部50が開いた回転位置で、保持台40の保持面40A上に毛髪Hを載置する。その状態で、固定部50を閉じる方向に回転させて、スナップアーム56及びスナップ溝44の嵌合により、固定部50及び保持台40を固定させる。その状態を、
図11Bに示す。このとき、保持用凸部62が保持用凹部64の中に挿入されるが、毛髪Hは、挿入された保持用凸部62に沿って、湾曲して保持用凹部64内に入る。これにより、毛髪Hは、嵌合する保持用凸部62及び保持用凹部64の間に挟まれるので、更に強固に、固定部50及び保持台40の間に固定される。
【0063】
以上のように、本実施形態では、保持台40の保持面40A及び固定部50の固定面50Aの一方に凸部62が形成され、他方に凹部64が形成され、保持面40A及び固定面50Aの間に毛髪Hを挟んだ状態において、互いに嵌合した凸部62及び凹部64の間に毛髪Hが挟み込まれて保持される。これにより、毛髪Hを更に強固に、固定部50及び保持台40の間に固定することができる。
【0064】
<毛髪の採取方法>
次に、
図12A及び
図12Bを参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具2’’を用いて毛髪サンプルを採取する方法を説明する。
図12Aは、本発明の第3の実施形態に係る毛髪採取具を用いて毛髪サンプルを採取するため、毛髪採取具を頭皮に当て、毛髪を保持台の保持面に載せるように頭皮から引き出したところを模式的に示す側面図である。
図12Bは、
図12Aに示す状態から、引き出した毛髪を保持台の保持面及び固定部の固定面で挟み込んで固定し、側面、採取面及び頭皮で囲まれた空間にハサミの刃を入れて毛髪を切断するところを模式的に示す側面図である。
【0065】
第3の実施形態に係る毛髪採取具2’’では、固定部50の構造が上記の実施形態と異なるが、毛髪サンプルを採取する方法は、基本的に上記の実施形態と同様である。
図12Aに示すように、毛髪採取具2’’の端部4Bを頭皮Pに当てた状態で、所定の量の毛髪Hを保持台40の保持面40Aに載せるように頭皮P側から引き出す。そして、毛髪Hがピンと張られた状態で固定部50を閉じる方向に回転させ、スナップフィットで固定部50及び保持台40を固定する。これにより、毛髪Hが保持台40及び固定部50の間に挟んだ状態で保持される。
【0066】
そして、
図12Bに示すように、頭皮Pから保持台40及び固定部50の間の毛髪がピンと張られた状態にして、保持台40の側面40B、台座部4の採取面4A及び頭皮Pで囲まれた空間Sにハサミの刃100を入れて、毛髪を切断する。
【0067】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る髪採取具2’’は、固定部50が、回転軸60を介して保持台40に回転自在に取り付けられており、保持台40の保持面40A及び固定部50の固定面50Aの間に毛髪Hを挟んだ固定部50の回転位置において、保持台40及び固定部50を固定する。
【0068】
これにより、固定部50が保持台40に対して開いた回転位置で、毛髪Hを両者の間に配置し、固定部50を閉じる方向に回転させて、保持台40の保持面40A及び固定部50の固定面50Aの間に毛髪Hを挟んだ状態にし、両者を固定することできる。よって、容易な操作で、確実に保持台40及び固定部50の間で毛髪Hを保持することができる。
【0069】
(全般)
以上のように、本発明に第1から第3の実施形態に係る髪採取具2、2’、2’’は、採取面4Aを有する薄板状の台座部4と、採取面4Aに取り付けられ保持台10、30、40と、保持台10、40を介して、または直接、採取面4Aに取り付けられた固定部20、50と、を備え、保持台10、30、40は、台座部4の端部4Bから距離K1だけ離れた位置に立設した側面10B、30B、40Bと、側面10B、30B、40Bの採取面4Aから距離K2だけ上方の位置から、端部4Bから離れる方向に採取面4Aに沿って延びた保持面10A、30A、40Aと、を有し、距離K1が毛髪を切断するハサミの刃100の厚みより長く、距離K2が該ハサミの刃100の幅より長く、端部4Bを頭皮Pに当てた状態で、所定の量の毛髪を保持面10A、30A、40Aに載せるように頭皮側から引き出して、引き出した毛髪を固定部20、50で固定し、側面10B、30B、40B、採取面4A及び頭皮Pで囲まれた空間Pにハサミの刃100を入れて毛髪を切断して、毛髪サンプルを採取する。
【0070】
髪採取具2、2’、2’’がハサミの刃100の厚み及び幅より長い距離K1、K2を有するので、保持台10の側面10B、30B、台座部4の採取面4A及び頭皮Pで囲まれた空間Pに、容易にハサミの刃100を入れて、確実に毛髪を切断することができる。これにより、分析に有用な毛髪の根元近傍の領域を容易に採取できる。また、採取された毛髪は、固定部20、50により台座部4に固定されるので、採取された毛髪は台座部4で保護されて、郵送中等に損傷するのを防ぐことができる。これにより、分析に適した毛髪サンプルを誰でも容易に採取することができ、採取した毛髪サンプルを損傷させることなく検査機関へ送付できる。
【0071】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0072】
2、2’、2’’ 毛髪採取具
4 台座部
4A 採取面
4B 端部
4C 凹凸面
10 保持台
10A 保持面
10B 側面
10C 凹凸面
12 溝部
12A 凸部
12B 凹部
20 固定部
30 保持台
30A 保持面
30B 側面
32 溝部
32A 凸部
32B 凹部
40 保持台
40A 保持面
40B 側面
42 溝部
42A 凸部
42B 凹部
44 スナップ溝
50 固定部
50A 固定面
52A 基部
52B 梁部
54 支持部
56 スナップアーム
58 グリップ
60 回転軸
62 保持用凸部
64 保持用凹部
100 ハサミの刃
102 ピン
H 毛髪
T 採取領域
K1、K2、K3 距離
X 中心線
Y 最も出っ張っている箇所
S 空間
U 隙間
Q コーナ部
F 力
R、R’ 反力