(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-14
(45)【発行日】2024-03-25
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20240315BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240315BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20240315BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F15B11/08 A
F15B11/02 M
F15B11/028 G
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2023545660
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2022032866
(87)【国際公開番号】W WO2023033080
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021141560
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮平
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔太
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065925(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/188920(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027791(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0333551(US,A1)
【文献】特開2021-148154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/08
F15B 11/02
F15B 11/028
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に連結したフロント作業機と、前記フロント作業機を上下に駆動するブームシリンダと、原動機と、前記原動機によって駆動される第1油圧ポンプと、前記原動機によって駆動される第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに流れる圧油を制御する第1方向制御弁と、前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに流れる圧油を制御する第2方向制御弁と、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁を駆動するパイロット油を吐出するパイロットポンプと、前記パイロット油を元圧として、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁をブーム下げ方向に駆動するブーム下げパイロット圧を出力するブーム下げ減圧弁と、前記パイロット油を元圧として、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁をブーム上げ方向に駆動するブーム上げパイロット圧を出力するブーム上げ減圧弁と、前記ブーム下げ減圧弁及び前記ブーム上げ減圧弁を操作するブーム操作レバーとを備えた建設機械において、
前記ブームシリンダのボトム圧を測定するボトム圧センサと、
前記ブーム操作レバーの操作量を測定する操作量センサと、
前記ブーム下げ減圧弁と前記第2方向制御弁の受圧室とを繋ぐパイロット油路に設けられ、前記第2方向制御弁に対するブーム下げパイロット圧を減圧する電磁弁と、
前記ボトム圧センサで測定される前記ボトム圧及び前記操作量センサで測定される前記操作量に基づき前記電磁弁を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記ボトム圧センサで測定されたボトム圧に基づき、前記ブーム下げ減圧弁と前記第2方向制御弁の受圧室との連通面積が前記ボトム圧の増加に伴って減少するように第1開度指令値を演算し、
前記操作量センサで測定されたブーム下げ操作量に基づき、前記連通面積が前記ブーム下げ操作量の増加に伴って増加するように第2開度指令値を演算し、
ブーム上げ操作後の経過時間に基づき、前記経過時間が設定時間未満である場合は前記連通面積を最小とする最小開度指令値を、前記経過時間が前記設定時間以上である場合は前記第1開度指令値及び前記第2開度指令値の最小選択値を、前記電磁弁の開度指令値に決定し、
決定した開度指令値に応じた指令信号を前記電磁弁に出力する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械おいて、
前記コントローラは、
横軸に前記ボトム圧、縦軸に前記第1開度指令値をとる座標系において、前記ボトム圧の増加に伴って前記第1開度指令値が減少するように規定され、前記横軸の方向にオフセットした第1制御線及び第2制御線を記憶しており、
前記ボトム圧の上昇時には前記第1制御線を参照して前記第1開度指令値を演算し、前記ボトム圧の下降時には前記第2制御線を参照して前記第1開度指令値を演算する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械おいて、
前記ブームシリンダのロッド圧を測定するロッド圧センサと、
前記コントローラは、前記ボトム圧センサで測定されたボトム圧と前記ロッド圧センサで測定されたロッド圧との差分を演算し、前記差分に基づき第1開度指令値を演算することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械では、掘削作業の他、土羽打ち作業や整地作業等といった様々な作業が行われる。ブームシリンダの駆動に必要な圧油の流量や圧力は、作業によって異なる。例えばブーム上げ操作時には、複数の油圧ポンプの吐出油を合流させる等してブームシリンダへのメータイン流量を増加させる。それに対し、バケットが宙に浮いた状態でブーム下げ操作が行わる場合、ブームシリンダへのメータイン流量を制限してエネルギーロスを抑制する。更には、バケットが接地した状態でブーム下げ操作が行われる場合、ブームシリンダへのメータイン流量を増加させてジャッキアップ動作を可能とする。
【0003】
このようなブームシリンダへのメータイン流量の制御は、例えばブームシリンダのボトム圧に応じてブームシリンダへの圧油の供給流量を電磁弁で制御することにより行われる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バケットが宙に浮いた状態で行われるブーム下げ動作、あるいはバケットの底面を地面に押し付けブームを下げて行われるジャッキアップ動作については、ブームシリンダのボトム圧が急変することがないので特許文献1に開示された技術によりメータイン流量を適正に制御することができる。
【0006】
しかし、例えばブームを繰り返し上げ下げする土羽打ち作業時には、ブームシリンダのボトム圧の激しい変動により、メータイン流量の制御がオペレータの意図に反して働いてしまう場合がある。バケットが宙に浮いた状態でのブーム下げ時には、ブームシリンダのボトム圧は高くブームシリンダのロッド圧は低くなって、メータイン流量が少なくなるように制御される。一方、バケットが地面に押し付けられるジャッキアップ時には、ブームシリンダのボトム圧は低くブームシリンダのロッド圧は高くなって、メータイン流量が多くなるように制御される。しかし、ブームを短時間で繰り返し上げ下げ操作する土羽打ち作業時には、ブームシリンダのボトム圧の変動に起因し、ブーム上げ操作からブーム下げ操作への切換え後にも、ジャッキアップに対応したメータイン流量が選択され、メータイン流量が多い状態が継続する可能性がある。結果として、要求されるブームの動作速度と一致しない状態となって、操作性に影響が及び得る。
【0007】
本発明の目的は、ブームの動作速度を要求される速度に一致させ、操作性を向上させることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に連結したフロント作業機と、前記フロント作業機を上下に駆動するブームシリンダと、原動機と、前記原動機によって駆動される第1油圧ポンプと、前記原動機によって駆動される第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに流れる圧油を制御する第1方向制御弁と、前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに流れる圧油を制御する第2方向制御弁と、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁を駆動するパイロット油を吐出するパイロットポンプと、前記パイロット油を元圧として、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁をブーム下げ方向に駆動するブーム下げパイロット圧を出力するブーム下げ減圧弁と、前記パイロット油を元圧として、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁をブーム上げ方向に駆動するブーム上げパイロット圧を出力するブーム上げ減圧弁と、前記ブーム下げ減圧弁及び前記ブーム上げ減圧弁を操作するブーム操作レバーとを備えた建設機械において、前記ブームシリンダのボトム圧を測定するボトム圧センサと、前記ブーム操作レバーの操作量を測定する操作量センサと、前記ブーム下げ減圧弁と前記第2方向制御弁の受圧室とを繋ぐパイロット油路に設けられ、前記第2方向制御弁に対するブーム下げパイロット圧を減圧する電磁弁と、前記ボトム圧センサで測定される前記ボトム圧及び前記操作量センサで測定される前記操作量に基づき前記電磁弁を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記ボトム圧センサで測定されたボトム圧に基づき、前記ブーム下げ減圧弁と前記第2方向制御弁の受圧室との連通面積が前記ボトム圧の増加に伴って減少するように第1開度指令値を演算し、前記操作量センサで測定されたブーム下げ操作量に基づき、前記連通面積が前記ブーム下げ操作量の増加に伴って増加するように第2開度指令値を演算し、ブーム上げ操作後の経過時間に基づき、前記経過時間が設定時間未満である場合は前記連通面積を最小とする最小開度指令値を、前記経過時間が前記設定時間以上である場合は前記第1開度指令値及び前記第2開度指令値の最小選択値を、前記電磁弁の開度指令値に決定し、決定した開度指令値に応じた指令信号を前記電磁弁に出力する建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブームの動作速度を要求される速度に一致させることができ、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械を表す側面図
【
図2】本発明の一実施形態に係る建設機械に搭載された油圧システムの要部を表す回路図
【
図3】本発明の一実施形態に係る建設機械に搭載されたコントローラによる電磁弁の制御手順を表すフローチャート
【
図4】
図3のフローを実行するためのコントローラの機能ブロックの一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
-建設機械-
図1は本発明の一実施形態に係る建設機械を表す側面図である。同図では、建設機械として油圧ショベル1を例示しているが、ホイールローダ、クレーン等、土木作業、建設作業、解体作業等の各種作業に用いられる他種の建設機械に本発明は適用可能である。油圧ショベル1はクローラ式であるが、ホイール式の建設機械にも本発明は適用可能である。
【0013】
油圧ショベル1は、車体4と、車体4に取り付けられたフロント作業機10とを含んで構成されている。車体4は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けた旋回体3とを含んで構成されている。走行体2は、左右のクローラを走行用油圧モータで駆動することにより走行する。旋回体3は、オペレータが搭乗する運転室7を有しており、車体4に設けられた旋回用油圧モータにより走行体2に対して旋回駆動される。運転室7の内部には、上記の走行用油圧モータや旋回用油圧モータの他、後述するブームシリンダ15、アームシリンダ16及びバケットシリンダ17等、油圧ショベル1に搭載した各油圧アクチュエータを操作するための各操作装置が設けられている。
【0014】
フロント作業機10は、多関節型の作業腕11に作業に応じたアタッチメントであるバケット14を装着した作業機であり、旋回体3に連結されている。作業腕11は、旋回体3の前部に上下に回動可能に連結されたブーム12と、ブーム12の先端に前後に回動可能に連結されたアーム13とを含んでいる。ブーム12はブームシリンダ15により、アーム13はアームシリンダ16により、バケット14はバケットシリンダ17により、それぞれ駆動される。
図1ではバケット14をアタッチメントとして作業腕11に装着した構成を例示しているが、バケット14はグラップル等の他のアタッチメントと交換可能である。
【0015】
-油圧システム-
図2は
図1に示した建設機械に搭載された油圧システムの要部を表す回路図である。
図2ではブームシリンダ15の駆動回路を抜き出して表している。同図に示した油圧システムは、原動機51、第1油圧ポンプ52、第2油圧ポンプ53、第1方向制御弁54、第2方向制御弁55、パイロットポンプ56、操作レバー装置57、電磁弁58、コントローラ60を備えている。
【0016】
・油圧ポンプ
第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53は、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータを駆動する作動油を吐出する可変容量型のポンプであり、原動機51により駆動される。本実施形態における原動機51は内燃機関等の燃焼エネルギーを動力に変換するエンジンであるが、電動機を原動機51に用いる場合もある。
図2では第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53を各1個のみ図示しているが、第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53の少なくとも一方を複数にする場合もある。作動油タンク59から吸入されて第1油圧ポンプ52から吐出された圧油は、第1方向制御弁54を経由してブームシリンダ15に供給される。作動油タンク59から吸入されて第2油圧ポンプ53から吐出された圧油は、第2方向制御弁55を経由してブームシリンダ15に供給される。ブームシリンダ15からの戻り油は、第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55を介して作動油タンク59に戻る。
【0017】
・パイロットポンプ
パイロットポンプ56は、第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55等の油圧駆動式の制御弁を駆動するパイロット油を吐出する固定容量型ポンプである。第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53と同じく、パイロットポンプ56は原動機51により駆動される。原動機51とは別の動力源でパイロットポンプ56を駆動する構成とすることもできる。パイロットポンプ56の吐出油路56mは、分岐して操作レバー装置57のブーム下げ減圧弁57dやブーム上げ減圧弁57u等に接続している。吐出管路57aを介してパイロットポンプ56の吐出圧がブーム下げ減圧弁57dやブーム上げ減圧弁57u等にパイロット圧の元圧として入力される。
【0018】
・第1方向制御弁
第1方向制御弁54は、第1油圧ポンプ52からブームシリンダ15に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の方向切換弁であり、受圧室に入力されるパイロット圧により駆動される。第1方向制御弁54は、ブーム下げ位置54d、ブーム上げ位置54u、中立位置54nを有する比例式の3位置切換弁である。パイロット圧が作用していない状態では、第1方向制御弁54のスプールは、ばね力により中立位置54nに位置する。
【0019】
第1方向制御弁54が中立位置54nである場合、第1油圧ポンプ52がブームシリンダ15をバイパスして作動油タンク59に接続し、ブームシリンダ15のロッド側油室及びボトム側油室は閉止される。これによりブームシリンダ15は伸縮することなく保持される。
【0020】
第1方向制御弁54がブーム下げ位置54dである場合、第1油圧ポンプ52がブームシリンダ15をバイパスして作動油タンク59に接続し、ブームシリンダ15のボトム側油室がロッド側油室及び作動油タンク59に接続される。これによりフロント作業機10の重量でボトム側油室から押し退けられた圧油の一部がロッド側油室に供給され、ブームシリンダ15が収縮する。
【0021】
第1方向制御弁54がブーム上げ位置54uである場合、第1油圧ポンプ52がブームシリンダ15のボトム側油室に接続し、ブームシリンダ15のロッド側油室が作動油タンク59に接続する。これにより第1油圧ポンプ52から吐出される圧油によりブームシリンダ15が伸長する。
【0022】
・第2方向制御弁
第2方向制御弁55は、第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の方向切換弁であり、受圧室に入力されるパイロット圧により駆動される。第2方向制御弁55は、ブーム下げ位置55d、ブーム上げ位置55u、中立位置55nを有する比例式の3位置切換弁である。パイロット圧が作用していない状態では、第2方向制御弁55のスプールは、ばね力により中立位置55nに位置する。
【0023】
第2方向制御弁55が中立位置55nである場合、第2油圧ポンプ53がブームシリンダ15をバイパスして作動油タンク59に接続し、ブームシリンダ15のロッド側油室及びボトム側油室は閉止される。これによりブームシリンダ15は伸縮することなく保持される。
【0024】
第2方向制御弁55がブーム下げ位置55dである場合、第2油圧ポンプ53がブームシリンダ15のロッド側油室に接続し、ブームシリンダ15のボトム側油室が作動油タンク59に接続する。これにより第2油圧ポンプ53から吐出される圧油によりブームシリンダ15が収縮する。
【0025】
第2方向制御弁55がブーム上げ位置55uである場合、第2油圧ポンプ53がブームシリンダ15のボトム側油室に接続し、ブームシリンダ15のロッド側油室が作動油タンク59に接続する。これにより第2油圧ポンプ53から吐出される圧油によりブームシリンダ15が伸長する。
【0026】
・ブーム下げ減圧弁
第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室は、各々パイロット油路56a,56bを介してブーム下げ減圧弁57dに接続し、更にブーム下げ減圧弁57dを介してパイロットポンプ56に接続している。ブーム下げ減圧弁57dは、ブーム操作レバー57lにより操作される。ブーム操作レバー57lがブーム下げ方向(
図2では左方向)に操作されると、ブーム操作レバー57lの操作量に応じてブーム下げ減圧弁57dが作動する。これによりパイロットポンプ56の吐出油路56mとパイロット油路56a,56bとが接続されると共に、パイロットポンプ56からのパイロット油の圧力を元圧として、ブーム操作レバー57lのブーム下げ操作量に応じたブーム下げパイロット圧が出力される。このパイロット圧が第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室に作用すると、第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55が中立位置54n,55nからブーム下げ方向に駆動され、ブーム下げ位置54d,55dに切り換わる。
【0027】
・ブーム上げ減圧弁
第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55のブーム上げ側の受圧室は、各々パイロット油路56c,56dを介してブーム上げ減圧弁57uに接続し、更にブーム上げ減圧弁57uを介してパイロットポンプ56に接続している。ブーム上げ減圧弁57uも、ブーム下げ減圧弁57dと同じくブーム操作レバー57lにより操作される。ブーム操作レバー57lがブーム上げ方向(
図2では右方向)に操作されると、ブーム操作レバー57lの操作量に応じてブーム上げ減圧弁57uが作動する。これによりパイロットポンプ56の吐出油路56mとパイロット油路56c,56dとが接続され、パイロットポンプ56からのパイロット油の圧力を元圧として、ブーム操作レバー57lのブーム上げ操作量に応じたブーム上げパイロット圧が出力される。このパイロット圧が第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55のブーム上げ側の受圧室に作用すると、第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55が中立位置54n,55nからブーム上げ方向に駆動され、ブーム上げ位置54u,55uに切り換わる。
【0028】
・電磁弁
上記電磁弁58は、ブーム下げ減圧弁57dが出力するブーム下げパイロット圧を減圧し、第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室に対する補正ブーム下げパイロット圧(補正されたブーム下げパイロット圧)を出力する比例電磁減圧弁である。この電磁弁58は、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室とを繋ぐパイロット油路56bに設けられている。電磁弁58は、開通位置58a及び遮断位置58bを有している。本実施形態において、電磁弁58のスプールは、ソレノイドが消磁された状態でばね力により遮断位置58b側に押し付けられ、ソレノイドが励磁されるとばね力に抗して開通位置58a側に移動する。但し、消磁状態でスプールが開通位置58aに押し付けられ、励磁されると遮断位置58b側にスプールが移動する構成としても良い。
【0029】
電磁弁58は、開通位置58aと遮断位置58bとに切換え可能に設けられた2位置を有した弁である。電磁弁58が開通位置58aに切換えられると、第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室は、ブーム下げ減圧弁57dに繋げられる。電磁弁58が遮断位置58bに切り換えられると、第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室は、作動油タンク59に繋げられる。電磁弁58のソレノイドへの励磁電流でスプールの位置を調整することで、第2方向制御弁55の受圧室をブーム下げ減圧弁57dに繋ぐ開口面積と、受圧室を作動油タンク59に繋ぐ開口面積との割合が変化する。この開口面積の割合によりブーム下げパイロット圧の減圧量が調整でき、第2方向制御弁55に対する補正ブーム下げパイロット圧が制御できる。第2方向制御弁55に対するブーム下げパイロット圧の電磁弁58による減圧量が大きい(補正ブーム下げパイロット圧が小さい)ほど、同じブーム下げ操作量でも第2方向制御弁55のブーム下げ方向への移動量が減少する。そして、第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15のロッド側油室に流れる圧油の供給量が減少する。その結果、第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15のロッド側油室へのメータイン流量が、同じブーム下げ操作量でも減少することとなる。
【0030】
本実施形態では、電磁弁58が完全に遮断位置58bに切り換わると、第2方向制御弁55に対してブーム下げパイロット圧が作用せず、仮にブーム下げ操作がされても第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15のロッド側油室に対して圧油は供給されなくなる。他方、電磁弁58が完全に開通位置58aに切り換わると、ブーム下げパイロット圧の減圧量が最小になる。これにより、第1方向制御弁54と同程度にブーム下げ操作量に応じて第2方向制御弁55が動作し、第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15のロッド側油室に圧油が供給される。
【0031】
-センサ-
ブーム操作レバー57lの操作量が、操作量センサS3,S4により測定される。操作量センサS3はブーム下げ操作量Adを、操作量センサS3はブーム上げ操作量Auをそれぞれ測定する。操作量センサS3,S4は、いずれも圧力センサである。操作量センサS3は、ブーム下げ減圧弁57dを第1方向制御弁54のブーム下げ側の受圧室及び電磁弁58に接続するパイロット油路56a又は56b(例えばブーム下げ減圧弁57dの出力ポート又はそのすぐ下流)に設けられている。ブーム下げパイロット圧を操作量センサS3で測定することで、ブーム下げ操作量Adが測定される。操作量センサS4は、ブーム上げ減圧弁57uを第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55のブーム上げ側の受圧室に接続するパイロット油路56c又は56d(例えばブーム上げ減圧弁57uの出力ポート又はそのすぐ下流)に設けられている。ブーム上げパイロット圧を操作量センサS4で測定することで、ブーム上げ操作量Auが測定される。なお、圧力センサに代えてポテンショメータ等を操作量センサS3,S4に用い、ブーム操作レバー57lの角度を測定してブーム下げ操作量Ad及びブーム上げ操作量Auを測定する構成とすることもできる。
【0032】
ブームシリンダ15のボトム圧Pb(ボトム側油室の圧力)が、ボトム圧センサS1により測定される。ボトム圧センサS1は、ブームシリンダ15のボトム側油室を第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55に接続する油路(例えばボトム側油室の入出力ポート又はその付近)に設けた圧力センサである。
【0033】
なお、本実施形態では必ずしも必要ないが、ブームシリンダ15のロッド圧Pr(ロッド側油室の圧力)がロッド圧センサS2により測定される。ロッド圧センサS2は、ブームシリンダ15のロッド側油室を第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55に接続する油路(例えばロッド側油室の入出力ポート又はその付近)に設けた圧力センサである。
【0034】
以上のボトム圧センサS1、ロッド圧センサS2及び操作量センサS3,S4の測定値は、コントローラ60に入力される。
【0035】
-コントローラ-
ブームシリンダ15のボトム圧Pb及びブーム操作レバー57lの操作量に基づき、電磁弁58の動作がコントローラ60により制御される。コントローラ60は、CPUやメモリ、タイマ等を含んで構成された車載コンピュータであり、メモリに予め記憶されたプログラムをCPUにより実行して各種処理を実行する。本実施形態において、コントローラ60には、ブーム下げ操作時に、ボトム圧センサS1で測定されるボトム圧、操作量センサS3で測定されるブーム下げ操作量及びブーム上げ操作後の経過時間に基づいて電磁弁58を制御する特徴的機能が備わっている。この機能について次に説明する。
【0036】
図3はコントローラ60による電磁弁58の制御手順を表すフローチャートである。コントローラ60は、通電時(例えばキースイッチオン時)に
図3のフローを短いサイクルタイム(例えば0.1s)で繰り返し実行する。
【0037】
同図のフローを開始すると、コントローラ60は、まずボトム圧センサS1及び操作量センサS3,S4の測定値(出力信号)を入力する(ステップS01)。
【0038】
続いて、コントローラ60は、操作量センサS3の測定値に基づき、ブーム下げ操作がされているか(ブーム下げ操作量Ad>0であるか)を判定する(ステップS02)。ブーム下げ操作がされている場合、コントローラ60は、ステップS02からステップS03に手順を移す。ブーム下げ操作がされていない場合、コントローラ60は、ステップS02からステップS07に手順を移す。
【0039】
ブーム下げ操作がされている場合、コントローラ60は、ボトム圧センサS1で測定されたブームシリンダ15のボトム圧Pbに基づいて電磁弁58の第1開度指令値V1を演算する(ステップS03)。第1開度指令値V1は、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55の受圧室との連通面積(開通位置58aの油路の開口面積)がボトム圧Pbの増加に伴って減少するように設定された制御テーブルに基づいて演算される。
【0040】
次に、コントローラ60は、操作量センサS3で測定されたブーム下げ操作量Adに基づいて電磁弁58の第2開度指令値V2を演算する(ステップS04)。ステップS03,S04の順序は逆であっても同時であっても良い。第2開度指令値V2は、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55の受圧室との連通面積(開通位置58aの油路の開口面積)がブーム下げ操作量Adの増加に伴って増加するように設定された制御テーブルに基づいて演算される。
【0041】
続いて、コントローラ60は、操作量センサS4の測定値に基づき、直近のブーム上げ操作後の経過時間Tを演算し、経過時間Tが予め設定された設定時間Ts以上であるかを判定する(ステップS05)。経過時間Tは、例えば直近に入力されたブーム上げ操作量Au(>0)が0になった時刻から現在時刻までの時間である。なお、経過時間Tの始期は、ブーム上げ操作量が所定のパイロット圧に達した時刻としても良い。経過時間Tが設定時間Ts以上である場合、コントローラ60は、ステップS05からステップS06に手順を移す。経過時間Tが設定時間Ts未満である場合、コントローラ60は、ステップS05からステップS07に手順を移す。
【0042】
ブーム上げ操作後の経過時間Tが設定時間Ts以上である場合、コントローラ60は、第1開度指令値V1及び第2開度指令値V2の最小選択値(小さい方の値)を最終的な開度指令値Vとして決定する(ステップS06)。
【0043】
ブーム上げ操作後の経過時間Tが設定時間Ts未満である場合、コントローラ60は、最小開度指令値Vminを最終的な開度指令値Vとして決定する(ステップS07)。ステップS02においてブーム下げ操作がされていないと判定された場合も同様である。最小開度指令値Vminは、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55の受圧室との連通面積(開通位置58aの油路の開口面積)を最小とする値である。連通面積(開通位置58aの油路の開口面積)の最小値は例えば0であり、この場合、第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室とブーム下げ減圧弁57dとの間は遮断され、同受圧室は作動油タンク59とのみ接続される。
【0044】
ステップS06又はS07で開度指令値Vを決定したら、コントローラ60は、決定した開度指令値Vに応じた指令信号(電流又は電圧)を生成し、生成した指令信号を電磁弁58に出力(ソレノイドに印加)してステップS01に手順を戻す(ステップS08)。
【0045】
以上のように電磁弁58を制御することで、ブーム下げ操作時の第2方向制御弁55の動作が、条件によって制限される。第2方向制御弁55の動作が制限されると、同じブーム下げ操作量Adでも第2油圧ポンプ53からブームシリンダ15のボトム側油室へのメータイン流量が減少する。
【0046】
図4は
図3のフローを実行するためのコントローラ60の機能ブロックの一例を表す図である。
図4に示す例において、コントローラ60には、第1開度指令値演算61、第2開度指令値演算62、ブーム上げ操作後経過時間演算63、第3開度指令値演算64、開度指令値決定65の処理を実行する機能が備わっている。
【0047】
第1開度指令値演算61は、メモリに記憶された制御線(制御テーブル)に従い、ボトム圧センサS1で測定されたボトム圧Pbに基づき、第1開度指令値V1を演算する処理である。第1開度指令値演算61のブロックに表示した通り、制御線は、横軸にPb、縦軸にV1をとるPb-V1座標系において、Pbの増加に伴ってV1が減少するように規定されている。第1開度指令値V1は、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室との連通面積を指令する値に相当し、V1が大きいほど連通面積が増加する。第1開度指令値演算61のブロックに表示した制御線の下で演算されるV1は、ボトム圧Pbの増加に伴って減少する。
【0048】
このとき、本実施形態において、第1開度指令値演算61で参照する制御線には、第1制御線L1と第2制御線L2が含まれている。第1制御線L1はボトム圧Pbの上昇時に参照される制御線であり、第2制御線L2はボトム圧Pbの下降時に参照される制御線である。第1開度指令値演算61のブロックに示したP1-P4は、Pbについての設定値である(P1<P2<P3<P4)。
【0049】
第1制御線L1は、Pb<P2の領域でV1=Vmax(最大開度指令値)となり、P2≦Pb≦P4の領域でPbの増加に伴ってVmaxからVminまでV1が単調に減少し、Pb>P4の領域でV1=Vmin(最小開度指令値)となるように規定されている。他方の第2制御線L2は、Pb>P3の領域でV1=Vminとなり、P1≦Pb≦P3の領域でPbの減少に伴ってVminからVmaxまでV1が単調に増加し、Pb<P1の領域でV1=Vmaxとなるように規定されている。このように、PB-V1座標系において、第1制御線L1に対し、第2制御線L2はPbの減少方向(-Pb方向)に所定値ΔPb(=P2-P1=P4-P3)だけオフセットしている。
【0050】
制御線の下でコントローラ60によりPbの増減に伴って演算されるV1の値について詳しく説明する。PbがP2以下の値(つまりV1がVmaxをとる値)から上昇する場合、コントローラ60は、第1制御線L1に沿ってV1を減少させる(第1制御線L1上でPbに対応するV1を演算する)。反対にPbがP3以上の値(つまりV1がVminをとる値)から下降する場合、コントローラ60は、第2制御線L2に沿ってV1を増加させる(第2制御線L2上でPbに対応するV1を演算する)。従って、例えばPbがP1からP4まで上昇した後、P1まで減少する場合、単純にPbの上昇に伴って第1制御線L1に沿ってV1がVmaxからVminまで減少した後、Pbの下降に伴って第2制御線L2に沿ってV1がVminからVmaxまで増加する。
【0051】
それに対し、Pbの値がP2以下の値からP4まで上昇する前にPx(P2<Px<P4)まで上昇したところで)で下降に転じる場合、V1はPbがΔP下降する間だけ第1制御線L1上のPxに対するVxで維持される。そして、PbがPy(=Px-ΔPb)から下降する際、V1は第2制御線L2に沿って増加する。
【0052】
Pbの値がP3以上の値からP1まで下降する前に下降に転じる場合も同様であり、V1は第2制御線L2上の値から第1制御線L1上の値まで値を維持し、その後は第1制御線L1に沿ってPbの上昇に伴って減少する。
【0053】
第2開度指令値演算62は、メモリに記憶された制御線(制御テーブル)に従い、操作量センサS3で測定されたブーム下げ操作量Adに基づき、第2開度指令値V2を演算する処理である。第2開度指令値演算62のブロックに表示した通り、制御線は、横軸にAd、縦軸にV2をとるAd-V2座標系において、Adの増加に伴ってV2が増加するように規定されている。第2開度指令値V2も、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室との連通面積を指令する値に相当し、V2が大きいほど連通面積が増加する。第2開度指令値演算62のブロックに表示した制御線の下で演算されるV2は、Adの増加に伴って増加する。
【0054】
第2開度指令値演算62のブロックに示したA1,A2は、Adについての設定値である(0<A1<A2)。第2開度指令値演算62で参照する制御線は、Ad<A1の領域でV2=Vminとなり、A1≦Ad≦A2の領域でAdの増加に伴ってVminからVmaxまでV2が単調に増加し、Ad>A2の領域でV2=Vmaxとなるように規定されている。第1開度指令値演算61で参照する制御線と異なり、第2開度指令値演算62で参照する制御線は単一であり、Adに対して常に制御線上の値がV2として演算される。
【0055】
ブーム上げ操作後経過時間演算63は、操作量センサS4で測定されるブーム上げ操作量Auとタイマの計測時刻に基づき、直近のブーム上げ操作の停止から現在までの経過時間Tを演算する処理である。経過時間Tの始期は、直近のブーム上げ操作量Au(>0)が0になった時刻である。ブーム上げ操作量Auが0になった時刻は、例えばメモリに記憶されているブーム上げ操作量Auのログデータから特定でき、この特定した時刻と現在時刻との差分をとってブーム上げ操作後の経過時間Tが演算される。
【0056】
第3開度指令値演算64は、ブーム上げ操作後の経過時間Tに基づき、電磁弁58の第3開度指令値第3を演算する処理である。第3開度指令値演算64の処理では、経過時間Tが設定時間Ts未満である場合、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室との連通面積が最小値となるように、電磁弁58の第3開度指令値第3が演算される(V3=Vmin)。また、経過時間Tが設定時間Ts以上である場合、ブーム下げ減圧弁57dと第2方向制御弁55のブーム下げ側の受圧室との連通面積が最大値となるように、電磁弁58の第3開度指令値第3が演算される(V3=Vmax)。
【0057】
開度指令値決定65は、第1開度指令値V1、第2開度指令値V2及び第3開度指令値V3の最小選択値を開度指令値Vとして決定し、決定した開度指令値Vに基づいて電磁弁58に対する指令信号を生成し電磁弁58に出力する処理である。第3開度指令値V3は、ブーム上げ操作後の経過時間Tが設定時間Ts未満であれば最小開度指令値Vminであるため、T<Tsであれば必然的にV=Vminとなる。また、ブーム上げ操作後の経過時間Tが設定時間Ts以上であればV3=Vmaxであるため、T≧Tsであれば必然的にV1,V2の最小選択値がVとなる。
【0058】
以上に例示した処理により電磁弁58を制御することで、
図3で先に説明したようにブーム下げ操作時におけるブームシリンダ15のボトム側油室へのメータイン流量の制限量が好適に制御される。
【0059】
本実施形態においては、ブーム下げ操作量Adが小さい場合やボトム圧Pbが高い場合、第2方向制御弁55の動作が制限されて(動作制限が強まって)ブームシリンダ15のロッド側油室へのメータイン流量が減少する。ブーム下げ操作量Adが小さい場合やボトム圧Pbが高い場合は、バケット14が宙に浮いた状態でブーム下げ動作が行われていることが推定され、このような場面でブーム下げ用の不必要なメータイン流量を抑えることで、エネルギーロスを抑制することができる。
【0060】
また、ブーム下げ操作量Adが大きくかつボトム圧Pbが低い場合、第2方向制御弁55の動作制限が解除されて(動作制限が弱まって)ブームシリンダ15のロッド側油室へのメータイン流量が増加する。ブーム下げ操作量Adが大きくボトム圧Pbが低い場合、ジャッキアップ動作等のようにバケット14が地面に強く押し込まれている状況が推定され、このような高負荷作業の場面でブーム下げ用のメータイン流量を確保することができる。
【0061】
更に、直近のブーム上げ操作後の経過時間Tが設定時間Tsに到達するまでの間、第2方向制御弁55の動作が禁止されて(動作制限が最大になり)、ブーム下げ操作がされてもブームシリンダ15のロッド側油室へのメータイン流量が直ちに増加することがない。例えば土羽打ち作業のようにブーム上げ操作とブーム下げ操作が短周期で交互に繰り返される場合、例えばブーム上げからブーム下げに動作が切り返される際にブームシリンダ15のボトム圧Pbが大きく変動する場合がある。このような場合に電磁弁58の制御条件が偶発的に満たされると、望まない場面で電磁弁58が作動し操作性が悪くなる可能性があるが、ブーム上げ操作から設定時間Tsが経過するまで電磁弁58が作動しないので操作性の悪化を抑制できる。
【0062】
-効果-
(1)上記の通り、本実施形態によれば、バケット14が宙に浮いた状態で行われるような低負荷のブーム下げ動作が推定される場面では、ブーム下げ用のメータイン流量を抑えることで、エネルギーロスを抑制することができる。また、ジャッキアップ動作等のようにバケット14を地面に強く押し付ける高負荷のブーム下げ動作が推定される場面では、ブーム下げ用のメータイン流量を増加させて所要の出力を確保することができる。更に、土羽打ち作業等のようにブーム上げ操作とブーム下げ操作が繰り返されるような場合に望まない形で電磁弁58が作動し得る場面では、ブーム上げ操作から設定時間Tsが経過するまで電磁弁58の作動を抑止することで、ブーム下げ時においてメータイン流量が多く発生するのを抑えられ、操作性の悪化を抑制することができる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、ブームの動作速度を要求される速度に一致させ、エネルギーロスの低減と操作性の向上を両立することができる。
【0064】
(2)例えばブーム下げ動作中にバケット14が宙に浮いた状態からジャッキアップ動作に移行する場合や、急操作でブームシリンダ15を急速に収縮させる場合等、フロント作業機10の操作中にはボトム圧Pbが増減する瞬間がある。こうした瞬間的なボトム圧Pbの増減に応じて第1開度指令値V1を増減させると、電磁弁58が過敏に作動して操作性に影響が及ぶ可能性がある。
【0065】
それに対し、本実施形態では、第1制御線L1及び第2制御線L2を用意し、Pbの上昇時には第1制御線L1の下で第1開度指令値V1が演算され、Pbの下降時には第2制御線L2の下で第1開度指令値V1が演算される。第1制御線L1と第2制御線L2はPb-V1座標系でPb軸方向にΔPbだけオフセットしているため、Pbの値が増加から減少(又は減少から増加)に転じる際にはPbの変化が一定量(ΔPb)を超えるまで第1開度指令値V1は変化しない。従って、上記のようにボトム圧Pbが増減する場面で電磁弁58が過敏に動作することを抑制することができる。
【0066】
-変形例-
以上に本発明の一実施形態を説明したが、本発明の実施形態は以上の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。以下に幾つか変形例を例示する。
【0067】
例えば、第1開度指令値V1がブームシリンダ15のボトム圧Pbのみに基づいて演算される例を説明した。この点に関し、コントローラ60が、ロッド圧センサS2で測定されたロッド圧Prとボトム圧Pbとの差分を演算し、この差分に基づき第1開度指令値V1を演算する構成にすることもできる。
【0068】
また、ブーム下げ減圧弁57d及びブーム上げ減圧弁57uに機械的に連動するブーム操作レバー57lを備えた操作レバー装置57を説明したが、操作レバー装置57に電気レバー装置を採用することもできる。この場合、ブーム下げ減圧弁57d及びブーム上げ減圧弁57uを電磁駆動式にして、電気レバー装置の操作信号に応じてコントローラ60から出力される指令信号によりブーム下げ減圧弁57d及びブーム上げ減圧弁57uが動作する構成となる。操作レバー装置57に電気レバー装置を採用した場合でも、ブーム操作レバー57lの操作量はポテンショメータ等で検出可能であり、本発明を適用することができる。
【0069】
また、第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53が各1つの構成を例に挙げて説明したが、第1油圧ポンプ52及び第2油圧ポンプ53の少なくとも一方を複数にした構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1…油圧ショベル(建設機械)、4…車体、10…フロント作業機、15…ブームシリンダ、51…原動機、52…第1油圧ポンプ、53…第2油圧ポンプ、54…第1方向制御弁、55…第2方向制御弁、56…パイロットポンプ、56b…パイロット油路、57d…ブーム下げ減圧弁、57l…ブーム操作レバー、57u…ブーム上げ減圧弁、58…電磁弁、60…コントローラ、Ad…ブーム下げ操作量(操作量)、Au…ブーム上げ操作量(操作量)、L1…第1制御線、L2…第2制御線、Pb…ボトム圧、Pr…ロッド圧、S1…ボトム圧センサ、S2…ロッド圧センサ、S3,S4…操作量センサ、T…経過時間、Ts…設定時間、V…開度指令値、V1…第1開度指令値、V2…第2開度指令値、V3…第3開度指令値、Vmax…最大開度指令値、Vmin…最小開度指令値