(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】生体情報処理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20240318BHJP
【FI】
A61B5/346
(21)【出願番号】P 2020004651
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)発行日:平成31年1月15日 刊行物:日本メディカルAI学会誌 第1巻「第1回 日本メディカルAI学会学術集会 プログラム・抄録集」 (2)開催日:平成31年1月25日 集会名:第一回日本メディカルAI学会学術集会 (3)第66回日本不整脈心電学会学術大会におけるプログラムアプリ発行日: 令和1年7月12日 ウェブサイトのアドレス:http://new.jhrs.or.jp/contents_web/jhrs66/ (4)開催日:令和1年7月25日 集会名:第66回日本不整脈心電学会学術大会 (5)開催日:令和1年6月8日 集会名:第39回日本ホルター・ノンインベイシブ心電学研究会
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】笹野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】浜本 隆二
(72)【発明者】
【氏名】小林 和馬
(72)【発明者】
【氏名】三枝 凌太
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041247(JP,A)
【文献】特表2018-519122(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004369(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/070978(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107103182(CN,A)
【文献】古林せなみ,深層学習を用いた心電図波形の正常異常判定に関する研究,医療情報学会・人工知能学会 AIM 合同研究会資料,2018巻,005号,日本,2018年,1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報処理装置であって、
対象疾患を有する者及び前記対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、複数の誘導の波形データを含む洞調律時の心電図データを取得する取得手段と、
前記取得された心電図データに含まれる1つの誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる前記1つの誘導の波形データに基づいて前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する決定手段と、
を備える、生体情報処理装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記取得された心電図データに含まれる前記複数の誘導のそれぞれの波形データを個別に使用して機械学習を行うことによって得られた複数のモデルの判定性能を比較することによって、前記1つの誘導を特定する、請求項1に記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記複数のモデルのうち、前記特定された1つの誘導の波形データを使用して得られたモデルを用いて、前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定する判定手段をさらに備える、請求項2に記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
生体情報処理装置であって、
対象疾患を有する者及び前記対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、複数の誘導の波形データを含む洞調律時の心電図データを取得する取得手段と、
前記取得された心電図データに含まれる前記複数の誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる前記複数の誘導の波形データに基づいて前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する決定手段と、
を備え、
前記モデルは、
前記被検者の心電図に含まれる個別の誘導の波形データに基づいて前記被検者が対象疾患を有するかどうかをそれぞれ判定するための複数の小モデルと、
前記複数の小モデルによる判定結果を合成する合成器と、
を含む、生体情報処理装置。
【請求項5】
前記合成器は、多数決によって前記複数の小モデルによる判定結果を合成する、請求項
4に記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記機械学習は、畳み込みニューラルネットワークを使用する、請求項1乃至
5の何れか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記対象疾患は、発作性心房細動を含む、請求項1乃至
6の何れか1項に記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至
7の何れか1項に記載の生体情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
生体情報処理装置の制御方法であって、
対象疾患を有する者及び前記対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、複数の誘導の波形データを含む洞調律時の心電図データを取得する取得工程と、
前記取得された心電図データに含まれる1つの誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる前記1つの誘導の波形データに基づいて前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する決定工程と、
を有する、制御方法。
【請求項10】
生体情報処理装置の制御方法であって、
対象疾患を有する者及び前記対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、複数の誘導の波形データを含む洞調律時の心電図データを取得する取得工程と、
前記取得された心電図データに含まれる前記複数の誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる前記複数の誘導の波形データに基づいて前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する決定工程と、
を有し、
前記モデルは、
前記被検者の心電図に含まれる個別の誘導の波形データに基づいて前記被検者が対象疾患を有するかどうかをそれぞれ判定するための複数の小モデルと、
前記複数の小モデルによる判定結果を合成する合成器と、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓疾患の1つとして心房細動が知られている。心房細動は、発作性から始まり、その後慢性に移行する。心房細動は脳梗塞の原因となる血栓の形成に関与するため、心房細動を発作性の段階で発見することが望ましい。発作性心房細動の有無を診断する方法として、非特許文献1に、非発作時(洞調律時)のP波加算平均心電図を用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】山田貴久、福並正剛、「P波加算平均心電図の臨床的意義」、心臓、平成18年2月、第38巻、Supplement1号、p.28―32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
P波加算平均心電図を用いた診断方法では、検者バイアスやノイズの混入に起因して十分な診断性能が得られない。本発明の1つの側面は、心電図データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを精度よく判定するため技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、生体情報処理装置であって、対象疾患を有する者及び前記対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、複数の誘導の波形データを含む洞調律時の心電図データを取得する取得手段と、前記取得された心電図データに含まれる1つの誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる前記1つの誘導の波形データに基づいて前記被検者が前記対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する決定手段と、を備える、生体情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、心電図データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを精度よく判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一部の実施形態に係る生体情報処理装置の構成を説明するブロック図。
【
図2】一部の実施形態に係る学習フェーズの動作を説明するフロー図。
【
図3】一部の実施形態に係るモデルの構造を説明するブロック図。
【
図4】一部の実施形態に係る推論フェーズの動作を説明するフロー図。
【
図5】別の実施形態に係る学習フェーズの動作を説明するフロー図。
【
図6】別の実施形態に係るモデルの構造を説明するブロック図。
【
図7】一部の実施形態に係る学習によって得られる決定木を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1を参照して、一部の実施形態に係る生体情報処理装置100の構成について説明する。生体情報処理装置100は、被検者の心電図データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。対象疾患とは、判定対象の疾患のことである。対象疾患は、例えば心臓疾患であってよい。さらに、対象疾患は、不整脈、例えば発作性心房細動(PAF:Paroxysmal Atrial Fibrillation)であってもよい。以下に説明する実施形態は、PAFのような心臓疾患に限らず、心電図データに相関を有する任意の疾患を判定可能である。
【0010】
生体情報処理装置100は、
図1に示す構成要素を備えてもよい。プロセッサ101は、生体情報処理装置100の全体的な動作を制御する装置である。プロセッサ101は、例えばCPU(中央処理装置)として機能する。メモリ102は、生体情報処理装置100の動作に必要なプログラム及び一時データを記憶する装置である。メモリ102は、例えばRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリメモリ)によって構成される。生体情報処理装置100の動作は、例えばメモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することによって行われてもよい。これにかえて、生体情報処理装置100の動作の一部又は全部は、ASIC(特定用途向け集積回路)やFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)のような専用回路によって実行されてもよい。
【0011】
入力装置103は、生体情報処理装置100のユーザからの入力を取得するための装置である。入力装置103は、例えばキーボードやマウスによって構成される。出力装置104は、生体情報処理装置100のユーザへの出力を行うための装置である。出力装置104は、例えばディスプレイやスピーカによって構成される。通信装置105は、生体情報処理装置100が他の装置と通信するための装置である。他の装置は、ネットワーク(例えば、インターネットやローカルエリアネットワーク)に接続されたコンピュータであってもよい。
【0012】
記憶装置106は、生体情報処理装置100の動作に使用されるデータを記憶する装置である。記憶装置106は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)又はDVD(デジタル多目的ディスク)のような記憶媒体によって構成される。
【0013】
図2~
図4を参照して、1つの実施形態に係る生体情報処理装置100の動作について説明する。生体情報処理装置100は、機械学習を行うことによって、被検者が対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定し、このモデルを用いて判定を行う。生体情報処理装置100による動作は、学習フェーズと推論フェーズとに分かれる。生体情報処理装置100は、学習フェーズにおいて、心電図データのサンプル集合に基づいてモデルを決定し、推論フェーズにおいて、被検者の心電図データをモデルに適用することによって被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。以下の説明では、学習フェーズと推論フェーズとの両方を生体情報処理装置100が実行する。これにかえて、学習フェーズと推論フェーズとが別個の生体情報処理装置によって実行されてもよい。
【0014】
図2は、学習フェーズにおける生体情報処理装置100の動作について説明する。ステップS201で、生体情報処理装置100は、対象疾患を有する者及び対象疾患を有しない者を含む複数の人間のそれぞれについて、洞調律時の心電図データを取得する。取得された複数の心電図データをサンプル集合と呼ぶ。対象疾患を有するかどうかは、医師によって対象疾患を有すると診断されたかどうかに基づいて決定されてもよい。サンプル集合内の各心電図データには、対象疾患の有無を示すラベルが付されている。
【0015】
サンプル集合は、例えば通信装置105を介して生体情報処理装置100の外部のサーバ(例えば、データサーバ)から読み出されてもよい。これにかえて、サンプル集合は、心電計から直接読み出されてもよい。サンプル集合に含まれる各心電図データは、複数の誘導の波形データを含む。複数の誘導は、標準12誘導であってもよいし、導出18誘導であってもよいし、他の個数の誘導であってもよい。サンプル集合は、学習用データと、評価用データと、検証用データに分割される。
【0016】
ステップS202で、生体情報処理装置100は、学習用データの心電図データに含まれる複数の誘導のそれぞれの波形データを個別に使用して機械学習を行うことによって、各誘導について、対象疾患の有無を判定するためのモデルを決定する。この機械学習は、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して実行されてもよい。
【0017】
図3に、心電図データが標準12誘導を有する場合のモデルについて説明する。12個の誘導のそれぞれについて個別のモデルが決定される。モデル301aは、I誘導の波形データを入力とし、当該波形データを有する被検者が対象疾患を有するかどうかの判定を出力するモデル(関数)である。モデル301aの出力は、被検者が対象疾患を有する確率と、被検者が対象疾患を有しない確率とを含んでもよい。両確率の和は1なので、モデル301aの出力は、被検者が対象疾患を有する確率のみを含んでもよい。モデル301b~301lも同様に、複数の誘導の何れか1つの波形データを入力とし、判定結果を出力するモデルである。モデル301a~301lを個別の機械学習することによって、各モデルで個別のパラメータが決定される。モデル301a~301lの構造(ハイパーパラメータや活性化関数の種類)は同じであってもよいし、異なっていてもよい。このように、複数の誘導のそれぞれについて、1つの誘導(例えば、I誘導)の波形データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデル(例えば、モデル301a)が決定される。
【0018】
ステップS203で、生体情報処理装置100は、評価用データを使用して、各誘導について決定されたモデルの判定性能を比較することによって、推論フェーズで使用すべき誘導を特定する。判定性能は、正確度と、感度と、特異度とのうちの何れか又はこれらの任意の組み合わせを用いて評価されてもよい。モデルによる判定結果は、対象疾患を有する人が対象疾患を有すると判定される真陽性と、対象疾患を有しない人が対象疾患を有すると判定される偽陽性と、対象疾患を有する人が対象疾患を有しないと判定される偽陰性と、対象疾患を有しない人が対象疾患を有しないと判定される真陰性とに分類される。正確度は、(真陽性数+真陰性数)/全体数で与えられる。感度は、真陽性数/(真陽性数+偽陰性数)で与えられる。特異度は、真陰性数/(偽陽性数+真陰性数)で与えられる。例えば、生体情報処理装置100は、正確度と、感度と、特異度と平均値が最大の誘導を、推論フェーズで使用すべき誘導として特定してもよい。ステップS203で特定された誘導のモデルは、ステップS202で既に決定されているため、生体情報処理装置100は、新たに学習する必要はない。
【0019】
以前にステップS201~S203を実行することによって、対象疾患の判定のために有効な誘導が特定できており、別のサンプル集合の心電図データを使用して、対象疾患の有無を判定するモデルを新たに決定する場合について検討する。この場合に、生体情報処理装置100は、ステップS202において、この有効な誘導の波形データのみを使用して学習を行い(すなわち、有効な誘導以外の誘導については学習を省略し)、ステップS203を省略してもよい。有効な誘導が基地の場合に、生体情報処理装置100は、このように一部の処理を省略しても推論フェーズで使用するモデルを決定できる。
【0020】
図2の方法で、ステップS203は、生体情報処理装置100によって実行された。これにかえて、ステップS203は、人間によって実行されてもよい。この場合に、生体情報処理装置100は、出力装置104を通じて、各誘導について決定されたモデルの判定性能を表示する。生体情報処理装置100のユーザ(例えば、医師)は、この判定性能に基づいて、推論フェーズで使用すべき誘導を特定する。
【0021】
図4は、推論フェーズにおける生体情報処理装置100の処理について説明する。ステップS401で、生体情報処理装置100は、被検者の心電図データを取得する。心電図データは、例えば通信装置105を介して生体情報処理装置100の外部のサーバ(例えば、データサーバ)から読み出されてもよい。これにかえて、心電図データは、心電計から直接読み出されてもよい。心電図データは、少なくとも、ステップS203で特定された誘導の波形データを含む。
【0022】
ステップS402で、生体情報処理装置100は、学習フェーズで特定された誘導のモデルに、被検者の心電図データを適用することによって、被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。有効な誘導のモデルを使用するため、精度よく判定を行うことができる。
【0023】
図5~
図6を参照して、別の実施形態に係る生体情報処理装置100の動作について説明する。この実施形態は、アンサンブル学習を使用する点で
図2~
図4の実施形態と異なる。ステップS501で、ステップS201と同様にして、生体情報処理装置100は、心電図データのサンプル集合を取得する。
【0024】
ステップS502で、生体情報処理装置100は、サンプル集合の心電図データに含まれる複数の誘導の波形データを使用して機械学習を行うことによって、被検者の心電図に含まれる複数の誘導の波形データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを判定するためのモデルを決定する。このステップにおいて、生体情報処理装置100は、アンサンブル学習を行う。
【0025】
図6を参照して、アンサンブル学習を行うためのモデル600について説明する。モデル600は、複数の小モデル601a~601lと、合成器602とを有する。小モデル601a~601lの個数は、心電図の複数の誘導の個数に一致する。具体的に、小モデル601a~601lは、心電図の複数の誘導に1対1に対応する。小モデル601a~601lは、
図3のモデル301a~301lに対応する。すなわち、小モデル601a~601lのそれぞれは、被検者の心電図に含まれる個別の誘導の波形データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。例えば、小モデル601aは、被検者の心電図に含まれるI誘導の波形データに基づいて被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。
【0026】
合成器602は、複数の小モデル601a~601lによる判定結果を合成して得られる判定結果を出力する。合成器602からの出力がモデル600からの出力となる。合成器602は、多数決によって複数の判定結果を合成してもよい。
【0027】
学習フェーズによってモデル600が決定された場合に、生体情報処理装置100は、推論フェーズにおいて、モデル600を使用して被検者が対象疾患を有するかどうかを判定する。推論フェーズにおける生体情報処理装置100の動作は、
図4で説明した動作と同様であってもよい。上述のアンサンブル学習において、ランダムフォレストを使用してもよい。
【0028】
上述の各実施形態の実験結果について以下に説明する。PAFを有すると診断された300人と、PAFを有すると診断されていない300人との計600人のそれぞれについて、洞調律時に、サンプリング周波数500Hz及びサンプリング数5000で標準12誘導心電図を取得した。この600件の心電図データを、480件の学習用データと、120件の評価用データとに分割して交差検証を行った。
【0029】
第1シナリオでは、12個の誘導を12チャンネルの1つのデータとして、CNNで学習を行った。第2シナリオでは、上述の
図2の方法に従って、12個の誘導を1チャンネルの個別のデータとして、CNNで学習を行った。第3シナリオでは、上述の
図5の方法に従って、12個の誘導を1チャンネルの個別のデータとしてアンサンブル学習を行った。いずれのCNNも、入力の長さ6秒、畳み込みブロック8個、残差ブロック及びショートカット・コネクションあり、ランダムノイズなし、ランダムスケーリングなし、ランダムトランスレーションなしとした。第3シナリオでは、
図6に示すモデル600による学習結果に基づいて
図7に示す決定木700を生成した。決定木700の内部ノードは各誘導による分岐条件を表し、外部ノードは推定結果(PAFあり又はPAFなし)を示す。第1シナリオから第3シナリオについて、以下の判定性能が得られた。
【0030】
【0031】
判定性能(正確度と、感度と、特異度の平均値)は、第1シナリオよりも第2シナリオの方が高く、第2シナリオよりも第3シナリオの方が高いことが分かった。また、第2シナリオでは、複数の誘導のうち、aVR誘導を用いたモデルの判定性能が最も高いことが分かった。
【0032】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
100 生体情報処理装置、301a~301l モデル、600 モデル