(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】酸性白土を主成分とする難脱硫性硫黄化合物除去剤、除去剤の製法及び除去方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20240318BHJP
C10G 29/16 20060101ALI20240318BHJP
C10G 25/05 20060101ALI20240318BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240318BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B01J20/12 A
C10G29/16
C10G25/05
B01D15/00 K
B01D53/04 110
(21)【出願番号】P 2020051211
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019057522
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(73)【特許権者】
【識別番号】301044565
【氏名又は名称】株式会社ホージュン
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 興尚
(72)【発明者】
【氏名】皆瀬 慎
(72)【発明者】
【氏名】牛木 龍二
(72)【発明者】
【氏名】早川 崇之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 貴子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和泉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-288384(JP,A)
【文献】特開昭63-289002(JP,A)
【文献】特開2009-138044(JP,A)
【文献】特開2015-083525(JP,A)
【文献】特開平10-237473(JP,A)
【文献】特開2001-353441(JP,A)
【文献】特開2013-000036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
C10G 1/00-99/00
B01D 15/00-15/42
B01D 53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分とし、
S i O
2
/ A l
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度1 2 0 ℃ で3 時間乾燥した除去剤2 g を水1 0 0 m l に分散させた時の温度2 5℃ でのp Hが3.0以上~8.6以下である除去剤
を、石油系中間留分1000mlに対し、
50g以上~300g以下
の範囲で、温度15℃以上
~50℃以下で浸漬処理する
、
ことを特徴とする難脱硫性硫黄化合物の除去方法。
【請求項2】
空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分と
し、SiO
2
/Al
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度120℃で3時間乾燥した除去剤2gを水100mlに分散させた時の温度25℃でのpHが3.0以上~8.6以下である除去剤を、その長さと内径の比(L/D)が0.5 以上
~20以下である反応器に
充填し、石油系中間留分をゲージ圧力0.01MPa以上
~0.5MPa以下、
流通処理における液空間速度(LHSV)0.01h
-1以上
~10h
-1以下、反応器温度が15℃以上
~50℃以下で通油
する、
ことを特徴とする難脱硫性硫黄化合物の除去方法。
【請求項3】
空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分とし、
SiO
2
/Al
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度120℃で3時間乾燥した除去剤2gを水100mlに分散させた時の温度25℃でのpHが3.0以上~8.6以下である除去剤を、その長さと内径の比(L/D) が0.5 以上
~20以下である反応器に
充填し、燃料ガスをゲージ圧力0.001MPa以上
~0.5MPa以下、ガス空間速度(GHSV)100h
-1以上
~50,000h
-1以下で通気する
、
ことを特徴とする難脱硫性硫黄化合物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキルジベンゾチオフェン類、アルキルメルカプタン類、アルキルスルフィド類、チオフェン類等の難脱硫性硫黄化合物の除去剤、除去剤の製法及び除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料には硫黄分が含まれており、これらが燃焼する際に酸化されて大気汚染物質の硫黄酸化物を生成するため、硫黄分低減が益々求められている。化石燃料の中でも灯油は原油の低圧蒸留におけるナフサと軽油の間の留分で、比較的安全で取り扱いも容易であるため、国内においては家庭暖房用燃料として石油ストーブなどを中心に需要が多い。灯油の硫黄分に関してはJIS K 2203(2009)で8ppm以下に定められている。国内における灯油暖房器具は燃焼ガスを室外に排出するFF 式より室内に排出する開放式が主流で、近年の気密性が高まった住宅で用いられると、室内空気の質の劣化、特に硫黄酸化物濃度の上昇が懸念されている。このため灯油中の硫黄分のさらなる削減が求められている。また、化石燃料の軽油に関してもディーゼル車の排気ガスクリーン化の観点から硫黄分の低減が強く求められている。
【0003】
一方、地球温暖化の進行のため、二酸化炭素排出量が少ない、すなわちエネルギー効率の高いエネルギー変換システムへの要求がさらに増しており、特に燃料電池は作動中の環境負荷が少なく、熱電総合効率が高いことで注目されている。燃料電池の水素源としては、水蒸気改質反応を利用することで天然ガス、LPG、石油系中間留分など多様な原料が利用できる。中でも石油系中間留分の灯油及び軽油は国内のインフラが整っており、貯蔵や取り扱いが容易であるといった点から水素源として有効である。しかし、これら中間留分には天然ガスと比べて硫黄含有量が多いという課題がある。硫黄分は水蒸気改質反応に用いられる触媒を被毒したり、燃料電池の電極活性を低下させるといわれており(非特許文献1) 、水素源となるこれら中間留分中の硫黄分は可能な限り低減させることが求められている。
【0004】
燃料精製工場などで行われている石油系中間留分の脱硫は水素化脱硫(HDS、Hydrodesulfurization)が主体であり、水素と灯軽油をNi-Mo系触媒、Ni-W系、Ni-ZnO触媒などに水素とともに接触させ、灯軽油分に含まれる硫黄分を硫化水素に変えて取り除いている(特許文献1)。これらHDS用の触媒では水素が必須であり、家庭用定置式燃料電池や灯油ストーブに組込んで使用することは非現実的である。また、HDSは石油系中間留分を反応が進む高温に加熱したあとに冷却する必要があり、エネルギー消費量が多いことが課題である。
【0005】
また、水素化脱硫では処理対象物に含まれる硫黄原子と触媒が接触することが必須である。芳香族化合物のベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、アルキル基が付加したジベンゾチオフェンは分解しにくい芳香環を含んでいるので脱硫しにくい。特に4-メチルジベンゾチオフェンや4,6-ジメチルジベンゾチオフェンはメチル基の立体障害により触媒活性点が硫黄原子に接近することが困難なため、最も水素化脱硫が難しい物質と言われる。
【0006】
非特許文献2 は市販軽油に含まれる硫黄化合物として難脱硫性硫黄化合物の4,6-ジメチルジベンゾチオフェン及びアルキルジベンゾチオフェンの存在を報告している。また非特許文献3は軽油にアルキルベンゾチオフェン及びアルキルジベンゾチオフェン類が含まれることを報告している。このように近年市場で流通している灯軽油に含まれる硫黄化合物の多くはベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキルジベンゾチオフェン類等の難脱硫性硫黄化合物と推定される。
【0007】
水素化脱硫以外で石油系中間留分中の硫黄分を除去する方法には吸着がある。例えば特許文献2 にはゼオライト、アルミナ、活性白土など固体酸系脱硫剤または金属系脱硫剤を用いて水素化脱硫工程を経た低硫黄軽油留分を脱硫する方法が報告されている。特許文献3には活性炭やゼオライトを用いる物理吸着脱硫法が報告されている。また特許文献4 にはガリウム等を担持した酸化アルミニウムを用いて炭化水素油中のチオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類を除去する方法が報告されている。
【0008】
優れた吸着能を示す天然資源に酸性白土がある。酸性白土はスメクタイト系粘土鉱物が地表付近で風化作用を受けて交換性陽イオンがプロトン化したものである。新潟県、山形県など主に日本海沿岸各県に良質なものを算出するほか、ベントナイト鉱床の上層にも産出するなど資源量が豊富である。その懸濁液が酸性を示すことが特徴である。酸性白土の構成粘土鉱物種はモンモリロナイトを主体としている。モンモリロナイトはSiO2/Al2O3H2Oからなる層状の含水ケイ酸塩で、Alを主体にした八面体層を2つのSiO4の四面体層で挟んだ三層構造を有している。モンモリロナイトは層を形成しているアルミナ八面体中におけるAl3+のMg2+、Fe2+による同形置換のために層構造全体が負の電荷を持つ。結晶全体の電荷バランスを保つため、層間に交換性陽イオンが存在し、イオン交換作用が起きる。酸性白土はプロトンなど交換性陽イオンによる固体酸性を示す。このように、国産の天然資源であり優れた吸着能を示す酸性白土をそのままもしくは金属を担持して難脱硫性硫黄化合物の除去に用いる技術は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-062297号公報
【文献】特開2008-255254号公報
【文献】特開2005-002317号公報
【文献】特開2010-209154号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】石油学会誌,42(6),365-375(1999)
【文献】法科学技術,11(2),159-162(2006)
【文献】第1回日本エネルギー学会講演要旨集, 209-214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のように灯油、軽油等の石油系中間留分は水素化脱硫工程を経て硫黄分の低減が図られているが、難脱硫性硫黄化合物であるベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキルベンゾチオフェン類、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェン等の除去が不十分である。また上記の吸着を用いる脱硫技術は合成吸着剤を用いる方法がほとんどで、豊富な国産資源である酸性白土の利用が考慮されていない。国産資源の有効活用には地域経済の維持発展、世界的な資源獲得競争からのリスク回避といった社会的意義もある。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、酸性白土を主成分とする除去剤を灯軽油等の石油系中間留分または燃料ガスに添加して低温・低圧の穏和な条件で処理することで、水素を必要とせず前記石油系中間留分中の難脱硫性硫黄化合物を簡便に取り除く難脱硫性硫黄化合物の除去剤、除去剤の製法及び除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、特許請求の範囲に記載した通り、
( 1 ) 空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分とし、S i O
2
/ A l
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度1 2 0 ℃ で3 時間乾燥した除去剤2 g を水1 0 0 m l に分散させた時の温度2 5℃ でのp Hが3.0以上~8.6以下である除去剤を、石油系中間留分1000mlに対し、50g以上~300g以下の範囲で、温度15℃以上~50℃以下で浸漬処理する、難脱硫性硫黄化合物の除去方法を提供した。
( 2 ) また、空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分とし、S i O
2
/ A l
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度1 2 0 ℃ で3 時間乾燥した除去剤2 g を水1 0 0 m l に分散させた時の温度2 5℃ でのp Hが3.0以上~8.6以下である除去剤を、その長さと内径の比( L/ D ) が0 . 5 以上~2 0 以下である反応器に充填し、石油系中間留分をゲージ圧力0.01MPa以上~0.5MPa以下、流通処理における液空間速度( L H S V )0.01h-1以上~10h-1以下、反応器温度が15℃以上~50℃以下で通油する、難脱硫性硫黄化合物の除去方法を提供した。
( 3 ) 空気中で80℃以上~300℃以下で熱処理された酸性白土を主成分とし、S i O
2
/ A l
2
O
3
重量比が3.0以上~5.8以下であり、温度1 2 0 ℃ で3 時間乾燥した除去剤2 g を水1 0 0 m l に分散させた時の温度2 5℃ でのp Hが3.0以上~8.6以下である除去剤を、その長さと内径の比( L/ D ) が0 . 5 以上~2 0 以下である反応器に充填し、燃料ガスをゲージ圧力0 . 0 0 1 M P a 以上~0 . 5 M P a 以下、ガス空間速度( G H S V ) 1 0 0 h-1 以上~5 0 , 0 0 0 h-1 以下で通気する、難脱硫性硫黄化合物の除去方法を提供した。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば酸性白土を用いて低温・低圧の穏和な条件で処理することで石油系中間留分または燃料ガス中の難脱硫性硫黄化合物を簡便に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明の技術内容をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0016】
( 処理対象の石油系中間留分)
処理対象の石油系中間留分に特に制限はない。すなわち、灯油のJ I S 規格( J I S K 2 2 0 3 ) による1 号、軽油のJ I S 規格( J I S K 2 2 0 4 ) による1 号、3 号軽油に対し、好ましく用いることができる。
【0017】
( 酸性白土)
本発明における難脱硫性硫黄化合物の除去剤は酸性白土を主成分とする。酸性白土を主成分とする該試料2 g を蒸留水1 0 0 m l に分散させた液の2 5 ℃ におけるp H については3 . 0 以上8 . 6 以下が好ましく、4 . 2 以上5 . 8 以下がより好ましい。天然に得られる酸性白土ではp H 3 . 0 が下限と考えられる。またp H の上限は8 . 6 である。これを超えると硫黄化合物除去性能が低下する傾向がある。モンモリロナイト鉱物を主成分とする酸性白土は天然から得られるものである。酸性白土には石英、α - クリストパライトなどのケイ酸鉱物、長石、マイカ、イライト、ゼオライトなどのケイ酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイトなどの炭酸塩鉱物が少量含まれることを妨げない。
【0018】
( 酸性白土のS i O 2 / A l 2 O 3 重量比、比表面積)
酸性白土のS i O 2 / A l 2 O 3重量比( ケイバン比) は3 以上7 以下が好ましい。天然の酸性白土においては、S i O 2 / A l 2 O 3重量比の下限は3 程度と考えられる。より好ましくはS i O 2 / A l 2 O 3重量比は3 . 5 以上5 . 8 以下のものが有効である。比表面積は特に限定されないが、2 0 以上2 0 0 m 2 / g 以下のものを好ましく用いることができる。
【0019】
( 酸性白土の粒度調整と精製)
酸性白土は鉱床から採掘後、粗砕、乾燥を経てローラーミルなどにより粉砕する。その後風力選別機などを用いて1 0 0 から3 5 0 メッシュに分級したものを好ましく利用できる。3 5 0 メッシュのふるいを通過したものを利用することも妨げない。
【0020】
( 難脱硫性硫黄化合物)
本発明における除去対象の難脱硫性硫黄化合物は、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキルジベンゾチオフェン類、アルキルメルカプタン類、アルキルスルフィド類、チオフェン類からなる群より選ばれる1 種以上の脱硫性硫黄化合物である。ベンゾチオフェン類には、チオナフテンとも呼ばれる分子式C 8 H 6 S で表されるベンゾチオフェンのほか、メチルベンゾチオフェン、ジメチルベンゾチオフェン、トリメチルベンゾチオフェン、テトラメチルベンゾチオフェン、ペンタメチルベンゾチオフェン、ヘキサメチルベンゾチオフェンなどが挙げられる。
ジベンゾチオフェン類は分子式C 1 2 H 8 S で表されるジベンゾチオフェンのほか、1 -メチルジベンゾチオフェン、2 - メチルジベンゾチオフェン、3 - メチルジベンゾチオフェン、4 - メチルジベンゾチオフェン、ジメチルジベンゾチオフェン類が挙げられる。またジメチルジベンゾチオフェン類にはメチル基の位置によって異なる構造異性体が複数有り、例えば4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェン、4 , 7 - ジメチルジベンゾチオフェン、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェン、4 , 9 - ジメチルジベンゾチオフェン、2 , 8- ジメチルジベンゾチオフェンが挙げられる。ジベンゾチオフェン類の中でも4 - メチルジベンゾチオフェンや4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンに対して本発明を好ましく用いることができる。
アルキルジベンゾチオフェン類は、前記ジベンゾチオフェン類以外のアルキルジベンゾチオフェン類であって、メチルエチルジベンゾチオフェン、エチルジベンゾチオフェン、トリメチルジベンゾチオフェンなどが挙げられる。
アルキルメルカプタン類は、分子式C 4 H 1 0 S で表されるtert-ブチルメルカプタンのほか、n - ブチルメルカプタン、s e c - ブチルメルカプタン、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アルキルスルフィド類は、分子式C 3 H 6 S で表されるジメチルスルフィドのほか、ジエチルスルフィド、メチルエチルスルフィド、ジメチルジスルフィドなどが挙げられる。チオフェン類は、分子式C 4 H 8 S で表されるテトラヒドロチオフェンのほか、チオフェン、メチルチオフェンなどが挙げられる。
【0021】
( 酸性白土の熱処理条件)
酸性白土は、空気流通下で熱処理して水分等吸着物質を除去することで活性化することができる。酸性白土を空気流通下で熱処理して熱処理白土を得るときの熱処理温度は8 0 ℃以上が好ましい。8 0 ℃ 未満では酸性白土中に水分等が残留する傾向があり活性不十分な面がある。前記熱処理は1 2 0 ℃ 以上がより好ましく、1 3 0 ℃ 以上が最も好ましい。熱処理温度の上限は3 0 0 ℃ である。3 0 0 ℃ を超過すると酸性白土の構造が変化して難脱硫性硫黄化合物除去効果が低下する傾向があるからである。前記熱処理温度の上限は230℃がより好ましく、2 0 0 ℃ が最も好ましい。また、前記熱処理の時間は特に限定されず、酸性白土の量にもよるが3 時間以上2 4 時間以下が好ましい。
【0022】
( 酸性白土への金属担持)
酸性白土には前述のように交換性陽イオンが含まれている。前記陽イオンを銅、鉄、アルミニウムから選ばれる1 種類以上の金属イオンで交換するなど金属を担持することで酸性白土の難脱硫性硫黄化合物除去性能を向上させることができる。酸性白土への金属担持は、前記金属の硝酸塩水溶液、硫酸塩水溶液、塩化物水溶液などに酸性白土を浸漬したり、前記水溶液を酸性白土に噴霧することでなされる。陽イオン交換後の酸性白土中の金属イオンの含有量は0 . 1 重量% 以上3 重量% 以下が好ましく、0 . 3 重量% 以上2 % 以下が好ましく、0 . 5 重量% 以上1 % 以下が最も好ましい。なお、金属イオンは酸性白土の表面に付着しているだけの状態のものも含まれる。
【0023】
( バッチ処理における反応装置)
バッチ処理における反応装置は原料供給口及び処理物取り出し口を備え、酸性白土を充填することができる密閉または開放容器である。撹拌することは原料と酸性白土の接触効率が向上するので好ましい。また、別途用意した水分除去装置を用いて処理対象物中の水分を予め除去しておくことも好ましい。
【0024】
( バッチ処理における酸性白土の添加量)
バッチ処理における酸性白土の添加量は石油系中間留分1 0 0 0 m l に対して5 0 g 以上3 0 0 g 以下が好ましく、7 0 g 以上2 0 0 g 以下がより好ましく、1 0 0 g 以上1 5 0g 以下が最も好ましい。この範囲未満では十分な難脱硫性硫黄化合物除去効果が得られない傾向がある。この範囲を超過すると、不経済な面がある。
【0025】
( バッチ処理における反応温度及び時間)
バッチ処理における反応温度は1 5 ℃ 以上5 0 ℃ 以下が好ましく、1 7 ℃ 以上4 0 ℃ 以下がより好ましく、2 0 ℃ 以上3 0 ℃ 以下が最も好ましい。反応時間は特に限定されず、処理量によっても異なるが2 時間以上7 2 時間以下が実用的である。
【0026】
( 流通処理における反応器)
流通処理における反応器は原料供給口及び処理物取り出し口を備え、酸性白土を充填することができる密閉容器である。酸性白土は不織布など酸性白土を通過しないものに包んで反応器内に設置することができる。また反応器の長さと内径の比( L / D ) は0 . 5 以上2 0 以下が好ましい。
【0027】
( 流通処理における反応温度及び液空間速度)
流通処理における反応温度は1 5 ℃ 以上5 0 ℃ 以下が好ましく、1 7 ℃ 以上4 0 ℃ 以下がより好ましく、2 0 ℃ 以上3 0 ℃ 以下が最も好ましい。液空間速度L H S V は0 . 0 1 h- 1以上~1 0 h- 1以下が好ましく、0 . 0 5 h - 1 以上~5 h - 1 以下がより好ましく、0 . 1 h - 1 以上~3 h - 1 以下が最も好ましい。この範囲未満では生産性が悪くなる傾向があり、この範囲を超過すると酸性白土と石油系中間留分との接触時間が短くなるため難脱硫性硫黄化合物が十分除去できない傾向がある。また、流通処理における入り口ゲージ圧は0 . 0 1 M P a 以上~0 . 5 M P a 以下が好ましく、0 . 0 2 M P a 以上~0 . 2 M P a以下がより好ましい。
【0028】
< 酸性白土のp H 測定方法>
酸性白土のp H は温度1 2 0 ℃ で3 時間乾燥した酸性白土2 g を蒸留水1 0 0 m l に分散させ、1 時間振とうさせたときの分散液について堀場製作所製D - 7 3 L A B で25 ℃ におけるp H を測定した。
【0029】
< 酸性白土の比表面積測定方法>
酸性白土の比表面積は、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン製A u t o s o r b i Q を用いて真空下2 0 0 ℃ で2 4 時間熱処理した酸性白土の液体窒素温度における窒素ガスの吸着量を測定し、B E T 式で算出した。
【0030】
< 模擬灯軽油>
難脱硫性硫黄化合物の除去効果を評価するため、次のように模擬灯油A 、模擬灯油B 及び模擬軽油A を調製した。模擬灯油A はノルマルドデカンにベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン及び4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンを各1 0 p p m ( 硫黄換算濃度)となるよう混合して調製した。模擬灯油B はノルマルドデカンに7 - メチルベンゾチオフェン、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェン、4 - エチルジベンゾチオフェンを各1 0 p p m となるよう混合して調製した。模擬軽油A はノルマルヘキサデカンにベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン及び4 , 6- ジメチルジベンゾチオフェンを各3 p p m となるよう混合して調製した。
【0031】
< 硫黄化合物除去効果の評価方法>
処理前後の石油系中間留分中の硫黄化合物濃度は、アジレントテクノロジー社製ガスクロマトグラフ質量分析装置6 9 8 0 G C / 5 9 7 3 N M S で測定した。定量限界以下の濃度( 概ね0 . 2 p p m 以下) は未検出と記載した。以下の実施例及び比較例における硫黄化合物除去効果の評価は、模擬灯油では合計硫黄化合物濃度5 p p m 未満を適、5 p p m 以上を否とし、模擬軽油では合計硫黄化合物濃度2 p p m 未満を適、2 p p m 以上を否とする。
【0032】
( 燃料ガス)
燃料電池の水素源として用いることができる天然ガス( 都市ガス) 、液化石油ガス( LPG ) など燃料ガスに関してみると、その主原料であるメタン、プロパン、ブタンにはほとんど臭いがなく、微量な漏れでもガス漏洩を発見できるよう保安上の目的から付臭剤が加えられている。付臭剤には微量でも生活臭と区別ができて臭いが検知できるように、多くの場合微量で臭いが検知できる硫黄化合物が用いられている。付臭剤として用いられる代表的な硫黄化合物としては、t e r t - ブチルメルカプタン( T B M ) 、ジメチルスルフィド( D M S ) 、テトラヒドロチオフェン( T H T ) が挙げられる。燃料ガスを燃料電池に供する際は、これら硫黄化合物を低減させることが求められている。都市ガス、LPG等燃料ガス中の付臭剤を除去するのに、銀担持ゼオライトなどの比較的高価な除去剤が使われることが多く、より低コストな除去剤が求められていた。
【0033】
( ガス流通処理における反応器)
ガス流通処理における反応器は原料供給口及び処理物取り出し口を備え、酸性白土を充填することができる密閉容器である。また反応器の長さと内径の比( L / D ) は0 . 5 以上2 0 以下が好ましい。
【0034】
( ガス流通処理における反応温度及びガス空間速度)
ガス空間速度G H S V は1 0 0 h - 1 以上5 0 , 0 0 0 h - 1 以下が好ましく、1 0 0 h- 1 以上2 0 , 0 0 0 h - 1 以下がより好ましく、1 0 0 h - 1 以上1 0 , 0 0 0 h- 1以下が最も好ましい。この範囲未満では生産性が悪くなる傾向があり、この範囲を超過すると酸性白土と燃料ガスとの接触時間が短くなるため難脱硫性硫黄化合物が十分除去できない傾向がある。
【0035】
< 模擬燃料ガス>
低分子硫黄化合物の除去効果を評価するため、次のように模擬燃料ガスA 、B 及びC を調製した。模擬燃料ガスA はメタンガスにt e r t - ブチルメルカプタンを1 0 p p m( 硫黄換算濃度) となるよう混合して調製した。模擬燃料ガスB はメタンガスにジメチルスルフィドを1 0 p p m となるよう混合して調製した。模擬燃料ガスC はプロパンガスにテトラヒドロチオフェン及びエチルメルカプタンを各1 0 p p m となるよう混合して調製した。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に開示する。また、これらの実施例は表1 及び2に、比較例は表3 に概要をまとめた。
【実施例1】
【0037】
酸性白土の原土を粗砕、乾燥したものをローラーミルで粉砕して2 0 0 メッシュ以上2 50 メッシュ以下に分級することで酸性白土1 を得た。酸性白土1 のS i O 2 / A l 2 O 3重量比は4 、p H は4 . 8 、比表面積は5 0 m 2 / g であった。前記酸性白土1 を空気中8 0 ℃ で3 時間熱処理したもの5 0 g を反応槽内に模擬灯油A 1 0 0 0 m l とともに投入した。次に前記反応槽を1 5 ℃ に保ち槽内を3 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は4 p p m 、ジベンゾチオフェン濃度は3 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェン濃度は3 p p m であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例2】
【0038】
酸性白土1 を空気中3 0 0 ℃ で5 時間熱処理したもの7 0 g と模擬灯油A 1 0 0 0 m l を反応槽内に投入した。次に前記反応槽を2 0 ℃ に保ち槽内を1 2 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は4 p p m 、ジベンゾチオフェン濃度は3 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェン濃度は3 p p m であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例3】
【0039】
酸性白土の原土を粗砕、乾燥したものをローラーミルで粉砕して1 0 0 メッシュ以上2 70 メッシュ以下に分級することで酸性白土2 を得た。酸性白土2 のS i O 2 / A l 2 O 3重量比は5 . 5 、p H は5 . 8 で比表面積は5 7 m 2 / g であった。前記酸性白土2 を空気中1 2 0 ℃ で1 0 時間熱処理したもの1 0 0 g を反応槽内に模擬灯油A 1 0 0 0 m l とともに投入した。次に前記反応槽を4 0 ℃ に保ち槽内を7 2 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は3 p p m 、ジベンゾチオフェン濃度は2 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェン濃度は2 p p m であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例4】
【0040】
酸性白土2 を空気中2 0 0 ℃ で6 時間熱処理した。反応槽内に模擬軽油A 1 0 0 0 m l と熱処理した酸性白土2 を1 5 0 g 投入した。次に前記反応槽を3 0 ℃ に保ち槽内を1 2 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬軽油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は1 p p m 、ジベンゾチオフェン濃度は1 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例5】
【0041】
酸性白土の原土を粗砕、乾燥したものをローラーミルで粉砕して1 0 0 メッシュ以上2 00 メッシュ以下に分級することで酸性白土3 を得た。酸性白土3 のS i O 2 / A l 2 O 3重量比は5 . 8 、p H は6 . 2 で比表面積は7 0 m 2 / g であった。酸性白土3 を空気中2 3 0 ℃ で8 時間熱処理したもの2 0 0 g を反応槽内に模擬軽油A 1 0 0 0 m l とともに投入した。次に前記反応槽を5 0 ℃ に保ち槽内を6 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬軽油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は1 p p m 、ジベンゾチオフェン及び4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
(参考例1)
【0042】
酸性白土の原土を粗砕、乾燥したものをローラーミルで粉砕して2 0 0 メッシュ以上3 50 メッシュ以下に分級することで酸性白土4 を得た。酸性白土4 のS i O 2 / A l 2 O 3重量比は7 、p H は8 . 6 で比表面積は9 3 m 2 / g であった。酸性白土4 を空気中1 30 ℃ で5 時間熱処理したもの1 0 0 g を反応槽内に模擬灯油B 1 0 0 0 m l とともに投入した。次に前記反応槽を1 7 ℃ に保ち槽内を6 0 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油B 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、7 - メチルベンゾチオフェン濃度は3 p p m 、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェンは2 p p m 、4 - エチルジベンゾチオフェンは2 p p m であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例6】
【0043】
酸性白土の原土を粗砕、乾燥したものをローラーミルで粉砕して1 0 0 メッシュ以上2 50 メッシュ以下に分級することで酸性白土5 を得た。酸性白土5 のS i O 2 / A l 2 O 3重量比は3 . 5 、p H は4 で比表面積は4 5 m 2 / g であった。酸性白土5 を空気中2 50 ℃ で1 0 時間熱処理したもの3 0 0 g を反応槽内に模擬灯油B 1 0 0 0 m l とともに投入した。次に前記反応槽を2 0 ℃ に保ち槽内を6 0 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油B 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、7 - メチルベンゾチオフェン濃度は1 p p m 、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェン及び4 - エチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適あった。
(参考例2)
【0044】
硝酸銅( II) 三水和物2 4 g を蒸留水2 0 0 0 m L に溶かすことで硝酸銅水溶液を調製し、同硝酸銅水溶液に酸性白土2 を2 0 0 g 添加して2 4 時間撹拌処理することで、銅担持酸性白土を調製した。なお、銅硝酸銅水溶液の波長8 1 0 n m における吸光度は処理前0. 5 9 4 から処理後では0 . 4 8 2 に減少した。よって硝酸銅水溶液中の銅量は初期6 .3 2 g から処理後5 . 1 2 g に減少した。硝酸銅水溶液から失われた銅がすべて陽イオン交換などで銅担持酸性白土に担持されたと仮定すると、銅担持酸性白土に担持された銅量は0 . 6 重量% と試算された。反応槽内に模擬灯油A 1 0 0 0 m l と空気中1 2 0 ℃ で10 時間熱処理した銅担持酸性白土を1 0 0 g 加えた。次に前記反応槽を4 0 ℃ に保ち槽内を7 2 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は1 p p m で、ジベンゾチオフェン及び4, 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。本実施例は酸性白土に銅を担持することで難脱硫性硫黄化合物除去効果が向上することを示す例である。
(参考例3)
【0045】
硝酸アルミニウム九水和物1 8 . 8 g を蒸留水1 5 0 0 m L に溶かすことで硝酸アルミニウム水溶液を調製し、同硝酸アルミニウム水溶液に酸性白土2 を1 5 0 g 添加して2 4 時間撹拌処理することで、アルミニウム担持酸性白土を調製した。反応槽内に模擬灯油A 10 0 0 m l と空気中1 2 0 ℃ で1 0 時間熱処理したアルミニウム担持酸性白土を1 0 0 g投入し、前記反応槽を4 0 ℃ に保ち槽内を7 2 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、ベンゾチオフェン濃度は1 p p m で、ジベンゾチオフェン及び4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。本実施例は酸性白土にアルミニウムを担持することで難脱硫性硫黄化合物除去効果が向上することを示す例である。
(参考例4)
【0046】
硝酸鉄( III) 九水和物1 3 . 5 g を蒸留水1 0 0 0 m L に溶かすことで硝酸鉄水溶液を調製し、同硝酸鉄水溶液に酸性白土4 を1 0 0 g 添加して2 4 時間撹拌処理することで、鉄担持酸性白土を調製した。反応槽内に前記模擬灯油B 1 0 0 0 m l と空気中1 3 0 ℃ で5 時間乾燥した鉄担持酸性白土を1 0 0 g 投入した。次に前記反応槽を1 7 ℃ に保ち槽内を6 0 時間撹拌することでバッチ処理した。処理後の前記模擬灯油A 中の硫黄化合物濃度を測定したところ、7 - メチルベンゾチオフェン濃度は1 p p m で、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェン濃度は1 p p m 、4 - エチルジベンゾチオフェンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。本実施例は酸性白土に鉄を担持することで難脱硫性硫黄化合物除去効果が向上することを示す例である。
【実施例7】
【0047】
内径8 c m で長さ2 0 c m の反応器( L / D = 2 . 5 ) の中に空気中3 0 0 ℃ で1 0 時間熱処理した酸性白土5 を9 0 0 g ( 1 0 0 0 c m 3 ) 充填した。次に2 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬灯油A を流量3 . 3 c m 3 / m i n で供給した( L H S V = 0 . 2 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0 . 0 5 M P a であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後3 時間まではベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンともに未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例8】
【0048】
内径1 2 c m で長さ6 c m の反応器( L / D = 0 . 5 ) の中に空気中2 3 0 ℃ で4 時間熱処理した酸性白土2 を5 9 4 g ( 6 6 0 c m 3 ) 充填した。次に1 7 ℃ に保った前記反応器内に模擬灯油A を流量3 3 c m 3 / m i n で供給した( L H S V = 3 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0 . 1 3 M P a であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後1 2 分まではベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンともに未検出、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは処理開始後2 4 分まで未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例9】
【0049】
内径8 c m で長さ8 c m の反応器( L / D = 1 ) の中に空気中1 2 0 ℃ で5 時間熱処理した酸性白土1 を3 6 0 g ( 4 0 0 c m 3 ) 充填した。次に2 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬灯油B を流量6 7 c m 3 / m i n で供給した( L H S V = 1 0 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0 . 4 6 M P a であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後4 分までは7 - メチルベンゾチオフェン、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェンともに未検出、4 - エチルジベンゾチオフェンは処理開始後8 分まで未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
(参考例5)
【0050】
硝酸銅( II三水和物7 5 g と硝酸鉄( III) 九水和物8 5 g を蒸留水1 2 . 5 L に溶かすことで硝酸銅と硝酸鉄の混合溶液を調製した。S i O 2 / A l 2 O 3重量比が3 、p H が3 . 0 で比表面積4 0 m 2 / g の酸性白土6 を1 2 5 0 g 量り取り、同混合溶液に添加して2 4 時間撹拌処理し、ろ過することで銅鉄担持酸性白土を得た。内径4 c m で長さ8 0c m の流通式反応器( L / D = 2 0 ) の中に2 0 0 ℃ で6 時間乾燥した銅鉄担持酸性白土を9 0 0 g ( 1 0 0 0 c m 3 ) 充填した。次に5 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬軽油Aを流量0 . 1 7 c m 3 / m i n で供給した( L H S V = 0 . 0 1 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0 . 0 1 M P a であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後60 時間まではベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンともに未検出、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは処理開始後1 2 0 時間まで未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
(参考例6)
【0051】
硝酸銅( II三水和物2 9 g を蒸留水1 5 0 m L に溶かすことで硝酸銅水溶液を調製し、予め1 2 0 ℃ で6 時間乾燥した酸性白土2 の1 2 5 0 g に対し、かきまぜながら前記硝酸銅水溶液を噴霧して1 0 分ほどさらに撹拌し、空気中2 0 0 ℃ で2 4 時間乾燥することで銅担持酸性白土2 を得た。銅担持酸性白土2 に担持された銅量は0 . 6 重量% と計算された。内径6 c m で長さ3 6 c m の流通式反応器( L / D = 6 ) の中に前記銅担持酸性白土2を9 0 0 g ( 1 0 0 0 c m 3 ) 充填した。次に3 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬軽油Aを流量1 7 c m 3 / m i n で供給した( L H S V = 1 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0. 0 8 M P a , G であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後7 2 分まではベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンともに未検出、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは処理開始後1 4 4 分まで未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例10】
【0052】
内径2 c m で長さ4 0 c m の反応器( L / D = 2 0 ) の中に、空気中2 0 0 ℃ 2 4 時間熱処理した酸性白土1 を8 1 g ( 9 0 c m 3 ) に充填した。次に2 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬燃料ガスA を流量0 . 1 5 L / m i n ( G H S V = 1 0 0 ) で通気し、反応器出口における硫黄化合物濃度を測定したところ、通気開始後6 0 0 時間までt e r t - ブチルメルカプタンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例11】
【0053】
内径4 c m で長さ8 c m の反応器( L / D = 2 ) の中に、空気中1 2 0 ℃ で5 時間熱処理した酸性白土2 を8 1 g ( 9 0 c m 3 ) 充填した。次に3 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬燃料ガスB を流量0 . 7 5 L / m i n ( G H S V = 5 0 0 ) で通気し、反応器出口における硫黄化合物濃度を測定したところ、通気開始後2 2 0 時間までジメチルスルフィドは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例12】
【0054】
内径7c m で長さ3 . 5 c m の反応器( L / D = 0 . 5 ) の中に、空気中1 3 0 ℃ で5 時間熱処理した酸性白土3 を8 1 g ( 9 0 c m 3 ) 充填した。次に2 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬燃料ガスC を流量1 5 L / m i n で供給した( G H S V = 1 0 , 0 0 0 ) 。このときの入り口ゲージ圧は0 . 4 6 M P a であった。反応器出口における硫黄化合物濃度は、処理開始後9 時間まではテトラヒドロチオフェン及びエチルメルカプタンともに未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
【実施例13】
【0055】
内径3 c m で長さ1 5 c m の反応器( L / D = 5 ) の中に、空気中2 3 0 ℃ で3 時間熱処理した酸性白土6 を8 1 g ( 9 0 c m 3 ) に充填した。次に4 0 ℃ に保った前記反応器内に模擬燃料ガスA を流量0 . 3 L / m i n ( G H S V = 2 0 0 ) で通気し、反応器出口における硫黄化合物濃度を測定したところ、通気開始後3 5 0 時間までt e r t - ブチルメルカプタンは未検出であった。よって、本実施例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は適であった。
(参考例7)
【0056】
実施例1 6 において、酸性白土1 を銅担持酸性白土2 ( 8 1 g 、9 0 c m 3 ) に変えた以外同じ条件で実験したところ、通気開始後9 0 0 時間までt e r t - ブチルメルカプタンは未検出であった。よって、本実施例による硫黄化合物除去効果は適であった。本実施例は酸性白土に銅を担持することで難脱硫性難脱硫性硫黄化合物除去効果が向上することを示す例である。
(比較例1)
【0057】
実施例1 において反応温度3 ℃ で処理を行ったところ、処理後の硫黄化合物濃度はベンゾチオフェンが6 p p m 、ジベンゾチオフェンは4 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは4 p p m であった。よって、本比較例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は否であった。本比較例は反応温度が好適な範囲を満たさないと所望の性能が得られないことを示す例である。
(比較例2)
【0058】
実施例2 において酸性白土1 の熱処理温度を4 0 0 ℃ にしたところ、バッチ処理後の硫黄化合物濃度はベンゾチオフェンが6 p p m 、ジベンゾチオフェンは4 p p m 、4, 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは3 p p m であった。よって、本比較例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は否であった。本比較例は酸性白土の熱処理温度が好適な範囲を満たさないと所望の性能が得られないことを示す例である。
(比較例3)
【0059】
参考例1において酸性白土を、2 0 0 メッシュ以上3 5 0 メッシュ以下の粒度でS i O 2 / A l 2 O 3 重量比6 . 6 、p H 8 . 8 、比表面積5 3 m 2 / g の酸性白土7 に変えたほかは同じ条件でバッチ処理を行ったところ、バッチ処理後の硫黄化合物濃度は7 - メチルベンゾチオフェンが6 p p m 、4 , 8 - ジメチルジベンゾチオフェンは4 p p m、4 - エチルジベンゾチオフェンは2 p p m であった。よって、本比較例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は否であった。本比較例は酸性白土のp H が好適な範囲を満たさないと所望の性能が得られないことを示す例である。
(比較例4)
【0060】
実施例3 において酸性白土添加量を2 0 g に変えたほかは同じ条件で処理したところ、処理後の硫黄化合物濃度はベンゾチオフェンが6 p p m 、ジベンゾチオフェンは4 p p m 、4 , 6 - ジメチルジベンゾチオフェンは4 p p m であった。よって、本比較例による難脱硫性硫黄化合物除去効果は否であった。本比較例は酸性白土の添加量が好適な範囲を満たさないと所望の性能が得られないことを示す例である。
【0061】
【0062】
【0063】
【産業上の利用可能性】
【0064】
灯油や軽油など石油系中間留分や燃料ガスに酸性白土を主成分とする除去剤を加えて処理することにより、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類、アルキルジベンゾチオフェン類、アルキルメルカプタン類、アルキルスルフィド類、チオフェン類等の難脱硫性硫黄化合物を除去することができるので、硫黄化合物が少ないために環境汚染物質の硫黄酸化物発生量が少ない石油系中間留分及び燃料ガスを提供できる。また、本発明における難脱硫性硫黄化合物除去方法は低温・低圧の穏和な処理方法なので省エネルギー性にも優れている。また灯軽油や燃料ガスを用いた家庭用燃料電池システムにおける脱硫プロセスにも利用できる。