(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】オストミー装具用潤滑消臭剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240318BHJP
A61F 5/441 20060101ALI20240318BHJP
A61F 5/445 20060101ALI20240318BHJP
A61L 24/08 20060101ALI20240318BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20240318BHJP
A61L 28/00 20060101ALI20240318BHJP
C10M 173/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61F5/441
A61F5/445
A61L24/08
A61L24/00 200
A61L28/00
C10M173/02
(21)【出願番号】P 2022177870
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2018195778の分割
【原出願日】2018-10-17
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107284
【氏名又は名称】ジェクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 麻美子
(72)【発明者】
【氏名】沼田 悟
(72)【発明者】
【氏名】坂田 真理
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165849(JP,A)
【文献】特開2000-342672(JP,A)
【文献】特開2008-259570(JP,A)
【文献】特開2007-215831(JP,A)
【文献】特開2001-095909(JP,A)
【文献】特開2017-013369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/441
A61F 5/445
A61L 28/00
A61L 9/00 - 9/22
A61L 15/00 - 15/64
A61L 24/00 - 24/12
C10M 101/00 - 177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A1)、(B1)、(C)及び(D)を含有し、
15~25℃における粘度が800~1,800mPa・sである、
オストミー装具用潤滑消臭剤組成物。
(A1)柿抽出物 2.5~10質量%
(B1)サトウキビ抽出物 0.05~10質量%
(C)カルボキシメチルセルロース 0.05~4.5質量%
(D)水 76~94質量%
【請求項2】
成分(A1)及び(B1)の質量割合(A1)/(B1)が0.1~20である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
次の成分(A2)、(B2)、(C)及び(D)を含有し、
15~25℃における粘度が800~1,800mPa・sである、
オストミー装具用潤滑消臭剤組成物。
(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分 2.5~10質量%
前記タンニン系化合物は、柿に由来する縮合型タンニン及び加水分解性タンニンから選択される1種又は2種以上
(B2)
サトウキビ由来のスチルベンを含む消臭成分 0.05~10質量%
(C)カルボキシメチルセルロース 0.05~4.5質量%
(D)水 76~94質量%
【請求項4】
成分(A2)及び(B2)の質量割合(A2)/(B2)が0.1~20である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
25℃におけるpHが6~12である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
更に、(E)着色料を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
次の成分(A1)、(B1)、(C)及び(D)を含有し、炭酸塩及び炭酸水素塩を含
有しない、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物。
(A1)柿抽出物 2.5~10質量%
(B1)サトウキビ抽出物 0.05~10質量%
(C)親水性高分子化合物 0.05~4.5質量%
(D)水 76~94質量%
【請求項8】
次の成分(A2)、(B2)、(C)及び(D)を含有し、炭酸塩及び炭酸水素塩を含有しない、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物。
(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分 2.5~10質量%
前記タンニン系化合物は、柿に由来する縮合型タンニン及び加水分解性タンニンから選択される1種又は2種以上
(B2)
サトウキビ由来のスチルベンを含む消臭成分 0.05~10質量%
(C)親水性高分子化合物 0.05~4.5質量%
(D)水 76~94質量%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オストミー装具用の潤滑消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消化器、泌尿器等の疾患がある場合や、排泄を自らの意思で制御できない場合に、消化管や尿路を体表まで導き体表面にストーマ(人工肛門、人工膀胱等)を造設することがある。ストーマは排泄を自己制御できないため、ストーマからの排泄物等を一時的に貯留するための袋(オストミー装具)をストーマ開口部に装着することが行われている。オストミー装具を使用する際の問題点として、特にオストミー装具から排泄物等を取り出す際に、排泄物等の臭気が拡散してしまうという問題があった。
【0003】
これまでに、排泄物等の臭気を除去するための様々な消臭剤が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリフェノールを含有することを特徴とするストーマ装具用消臭剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、a)柿渋タンニン、b)非イオン性セルロース系水溶性ポリマーおよび陰イオン性セルロース系水溶性ポリマーからなる群より選択される1種または2種以上、ならびにc)炭酸塩および炭酸水素塩からなる群より選択される1種または2種以上を、d)水に含有させてなる、オストミーパウチ用潤滑剤組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、さとうきび由来の糖蜜類である糖蜜および/または糖蜜アルコール発酵蒸留残渣および/または黒糖アルコール発酵蒸留残渣より得られる分子量2万以下の消臭作用を有することを特徴とする糖蜜分画物が開示されている。また、特許文献4には、水溶性潤滑剤および糞便物の発臭分子と錯体形成してそれを中和することが可能な相溶性水溶性錯化剤の両方を含有する水溶液を含む、オストミーパウチ用潤滑消臭剤が開示されている。
【0004】
さらに、オストミー装具内の排泄物等を取り出し易くする潤滑剤として、例えば、特許文献5には、鉱油、植物油、動物油及び合成油からなる群から選ばれた1種以上を含有し、水分が90重量%以下であり且つ25℃における粘度が30mPa・s以下であるストーマ装具用潤滑剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-215831号公報
【文献】特開2013-165849号公報
【文献】特開2012-219086号公報
【文献】特表2007-525251号公報
【文献】特開2004-081299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オストミー装具用の潤滑消臭剤は依然として消臭性や取扱性等の性能においてさらなる改良が求められている。そこで、本発明は、性能をさらに改良したオストミー装具用潤滑消臭剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記実情に鑑み、潤滑消臭剤の構成成分について鋭意検討を行ったところ、特定の消臭成分を組み合わせ、さらに親水性高分子化合物と水とを含有させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A1)、(B1)、(C)及び(D)を含有し、15~25℃における粘度が800~1,800mPa・sである、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物を提供する。
(A1)柿抽出物
(B1)サトウキビ抽出物
(C)カルボキシメチルセルロース
(D)水
また、本発明は、次の成分(A1)、(B1)、(C)及び(D)を含有し、炭酸塩及び炭酸水素塩を含有しない、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物も提供する。
(A1)柿抽出物
(B1)サトウキビ抽出物
(C)親水性高分子化合物
(D)水
【0009】
また、本発明は、次の成分(A2)、(B2)、(C)及び(D)を含有し、15~25℃における粘度が800~1,800mPa・sである、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物も提供する。
(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分
(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分
(C)カルボキシメチルセルロース
(D)水
また、本発明は、次の成分(A2)、(B2)、(C)及び(D)を含有し、炭酸塩及び炭酸水素塩を含有しない、オストミー装具用潤滑消臭剤組成物も提供する。
(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分
(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分
(C)親水性高分子化合物
(D)水
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消臭性及び取扱性に優れたオストミー装具用潤滑消臭剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く限定されることはない。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態のオストミー装具用潤滑消臭剤組成物(以下、単に「潤滑消臭剤組成物」という)は、成分(A1)柿抽出物、成分(B1)サトウキビ抽出物、成分(C)親水性高分子化合物及び成分(D)水を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態における成分(A1)柿抽出物は、柿抽出物中に含まれるカキタンニン等の消臭成分によって消臭効果を有すると考えられる。
柿抽出物の抽出方法は、上記消臭成分が抽出できる方法であれば特に限定されない。例えば、原料となる柿を粉砕して圧搾した圧搾汁より分画、精製等を行って得られる抽出物を用いることができる。また、柿抽出物を含む市販品として、例えばリリース科学工業株式会社製「パンシル」シリーズ(「パンシルFG-22」、「パンシルCOS-17」等)を用いることができる。
【0014】
本実施形態における成分(A1)柿抽出物は、オストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)の観点で、潤滑消臭剤組成物中に2.5~10質量%の範囲で含有されていることが好ましく、3~8質量%含有されていることがより好ましい。
【0015】
一方、本実施形態における成分(B1)サトウキビ抽出物は、サトウキビ抽出物中に含まれるスチルベン誘導体等の消臭成分によって消臭効果を有すると考えられる。
サトウキビ抽出物の抽出方法は、上記消臭成分が抽出できる方法であれば特に限定されない。例えば、サトウキビ汁又はサトウキビの溶媒抽出物を蒸留して得られる蒸留物より分画、精製等を行って得られる抽出物を用いることができる。上記サトウキビ汁の具体例としては、原料となるサトウキビを圧搾した圧搾汁、サトウキビを水で浸出して得られる浸出汁、又は原糖製造工場において石灰処理した清浄汁及び濃縮汁等が挙げられる。一方、サトウキビの溶媒抽出物の具体例としては、サトウキビをメタノール、エタノール等の
汎用の有機溶媒で抽出した抽出液が挙げられる。また、サトウキビ抽出物を含む市販品として、例えば三井製糖株式会社製「MSX-245」、「MSX-201」等を用いることができる。
【0016】
本実施形態における成分(B1)サトウキビ抽出物は、オストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)の観点で、潤滑消臭剤組成物中に0.05~10質量%の範囲で含有されていることが好ましく、0.1~5質量%含有されていることがより好ましい。
【0017】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A1)柿抽出物と成分(B1)サトウキビ抽出物とを組み合わせることによって、オストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)を向上させることができる。
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物の消臭機構としては、化学的消臭機構及び感覚的消臭機構が考えられる。化学的消臭機構とは、排泄物等の悪臭成分を不揮発性化、中和、酸化・還元又は分解することによって、消臭を行う機構である。一方、感覚的消臭機構とは、消臭成分の香気によって排泄物等の悪臭を目立たなくして、消臭を行う機構である。後述の実施例に示すとおり、本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A1)柿抽出物のみ又は成分(B1)サトウキビ抽出物のみを含有する潤滑消臭剤組成物(比較例1及び2)に比べて、排泄物等の悪臭成分(硫化水素ガス)を分解等する効果にも優れており、さらに排泄物等の臭いを感じにくくする効果にも優れている。このように、本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A1)柿抽出物と成分(B1)サトウキビ抽出物とを組み合わせることによって、化学的消臭機構及び感覚的消臭機構による消臭効果を発揮し、排泄物等に対する消臭性が向上していると考えられる。
【0018】
本実施形態における成分(A1)柿抽出物及び成分(B1)サトウキビ抽出物の質量割合(A1)/(B1)は0.1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。成分(A1)及び成分(B1)の質量割合を上記範囲とすることによって、より効果的にオストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)を向上させることができる。
【0019】
本実施形態における成分(C)親水性高分子化合物は、潤滑消臭剤組成物に対する増粘作用をもち、潤滑消臭剤組成物をオストミー装具のパウチ内表面に持続的に付着しやすくする。その結果、排泄物等とオストミー装具のパウチ内表面に付着した潤滑消臭剤組成物との間で潤滑効果を発揮し、排泄物等をパウチ内表面から除去する際の取扱性を向上することができる。また、親水性高分子化合物が排泄物等の悪臭成分を吸着することで、排泄物等に対する消臭効果を持続させることができる。
【0020】
親水性高分子化合物としては、天然、半合成又は合成の親水性高分子化合物を用いることができる。なお、「半合成」とは、部分化学合成とも称され、例えば植物材料、微生物又は細胞培養物等の天然資源から単離された化合物を出発物質として使用する化学合成をいう。
【0021】
天然親水性高分子化合物の具体例としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン及びデンプン(例えば、コメ、トウモロコシ、バレイショ及びコムギのデンプン)等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、サクシノグルカン、マンナン、ローカストビーンガム及びプルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン及びゼラチン等の動物系高分子等が挙げられる。
【0022】
半合成親水性高分子化合物の具体例としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒド
ロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。
【0023】
合成親水性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシエチレン系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0024】
本実施形態において、親水性高分子化合物は上記のうちから1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの親水性高分子化合物のうち、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、カラヤガム、マンナン、ローカストビーンガム、及びゼラチンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。さらに、カルボキシメチルセルロースを用いることが特に好ましい。これらの親水性高分子化合物を潤滑消臭剤組成物に含有することにより、排泄物等とオストミー装具のパウチ内表面との間の潤滑性をより向上させることができる。
【0025】
本実施形態における成分(C)親水性高分子化合物は、潤滑消臭剤組成物中に0.05~4.5質量%の範囲で含有されていることが好ましく、0.1~3質量%含有されていることがより好ましい。親水性高分子化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、潤滑消臭剤組成物をオストミー装具のパウチ内全体にまんべんなく持続的に付着させることができ、排泄物等をオストミー装具のパウチ内表面から除去する際の取扱性をさらに向上することができる。
【0026】
本実施形態における成分(D)水は、成分(C)親水性高分子化合物とともに潤滑消臭剤組成物に含有されることで、潤滑消臭剤組成物が適度な流動性を有するため、潤滑消臭剤組成物をオストミー装具のパウチ内全体にまんべんなく付着させることができる。その結果、排泄物等とオストミー装具のパウチ内表面に付着した潤滑消臭剤組成物との間で潤滑効果を発揮し、排泄物等をパウチ内表面から除去する際の取扱性を向上することができる。
【0027】
本実施形態では水道水、常水、精製水等を用いることができ、精製水を用いることが好ましい。
また、本実施形態における成分(D)水は、潤滑消臭剤組成物中に76~94質量%の範囲で含有されていることが好ましく、80~90質量%含有されていることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲で上記(A1)、(B1)、(C)及び(D)以外の任意成分を含有してもよい。任意成分としては、成分(E)着色料、上記成分(A1)及び(B1)以外の消臭成分、上記成分(C)以外の増粘剤、可溶化剤、保存料、香料等が挙げられる。
【0029】
成分(E)着色料は、化粧料等で通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、
紺青、群青等の無機顔料;黄色4号、黄色5号、黄色401号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、青色1号、青色404号等の有機顔料等が挙げられる。着色料を含有した潤滑消臭剤組成物がオストミー装具のパウチ部の色と互いに異色であることにより、オストミー装具のパウチ内全体にいきわたっているかを目視で容易に確認することができる。また、着色料を含有した潤滑消臭剤組成物がその保存容器の色と互いに異色であることにより、保存容器にどれだけ残っているかも目視で容易に確認することができる。
【0030】
上記成分(A1)及び(B1)以外の消臭成分の具体例としては、化学的消臭性化合物、生物学的消臭性化合物等が挙げられる。
【0031】
化学的消臭性化合物は、有機系消臭性化合物であっても無機系消臭性化合物であってもよい。有機系消臭性化合物の具体例としては、酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、アクリル酸、乳酸、フタル酸、安息香酸、ニコチン酸等の有機酸若しくはその塩;(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸エステル等のエステル化合物;グリオキザール等のアルデヒド化合物;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩等の第4級アンモニウム塩;等が挙げられる。一方、無機系消臭性化合物の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉄、酸化チタン、ミョウバン等の金属酸化物;二酸化塩素等が挙げられる。
【0032】
また、生物学的消臭性化合物の具体例としては、酵素、微生物(細菌、酵母)等の有機物分解作用を有する物質;エタノール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐・殺菌作用を有する化合物等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、25℃におけるpHが6~12の範囲であることが好ましく、7~11であることがより好ましく、7.5~10であることが特に好ましい。pHを上記範囲内にすることにより、排泄物等に対する消臭性を向上させながらも、皮膚刺激性を低減することができる。
【0034】
本実施形態において、潤滑消臭剤組成物のpHは上記各成分の配合により調整され得るが、本発明の特徴を損なわない範囲で更にpH調整剤を用いて調整することもできる。
pH調整剤の具体例としては、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸等の有機酸若しくはその塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。これらのpH調整剤は、潤滑消臭剤組成物中に0.05質量%以下で含有されていることが好ましく、0.01質量%以下で配合されていることがより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、15~25℃における粘度が400~3,000mPa・sの範囲であることが好ましく、600~2,000mPa・sであることがより好ましく、800~1,800mPa・sであることが特に好ましい。粘度を上記範囲内にすることにより、潤滑消臭剤組成物が適度な流動性を有するため、潤滑消臭剤組成物をオストミー装具のパウチ内全体にまんべんなく付着させることができる。また、粘度を上記範囲内にすることにより、排泄物等とオストミー装具のパウチ内表面に付着した潤滑消臭剤組成物との間で潤滑効果を発揮し、排泄物等をパウチ内表面から除去する際の取扱性を向上することができる。なお、本実施形態における潤滑消臭剤組成物の粘度は、15~25℃において、B型粘度計を用い、ローター番号:3番、ローター回転数:12rpm、回転時間:10分の条件で測定することにより得られる値である。
【0036】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、常法に従って製造することができる。例えば、上記各成分を混合、溶解等させることによって製造することができる。
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、液状若しくは粘性を有する液状の組成物又は半流動体組成物として、ガラス製、プラスチック製等の保存容器に充填して提供され得る。
【0037】
また、本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、オストミー装具のパウチ内に注入又は噴霧等してオストミー装具のパウチ内表面に付着又はコーティングさせる。その方法は特に限定されないが、例えば、保存容器から直接オストミー装具のパウチ内に注入し、パウチ内全体に潤滑消臭剤組成物をいきわたらせて付着又はコーティングさせることができる。また、ポンプディスペンサー付き容器に充填し、オストミー装具のパウチ内にスプレーして付着又はコーティングさせることもできる。本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、使用の都度、必要量をオストミー装具のパウチ内に添加してもよく、予め複数回使用可能な量をパウチ内に添加しておいてもよい。また、本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、上記オストミー装具用に限らず、おむつ、尿パッド、生理用ナプキン、医療用吸収パッド等、比較的長時間にわたって人体に装着されるその他の排泄物等処理用品用としても有効に用いることができる。
【0038】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態の潤滑消臭剤組成物は、成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分、成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分、成分(C)親水性高分子化合物及び成分(D)水を含有する。なお、上述した第1実施形態における成分(A1)柿抽出物及び成分(B1)サトウキビ抽出物以外の構成については、第1実施形態で説明した構成を同様に採用することができるため、本実施形態については説明を省略する。
【0039】
本実施形態における成分(A2)のタンニン系化合物は、化学構造によりカテコール系に属する縮合型タンニンとピロガロール系に属する加水分解性タンニンとに分類できる。縮合型タンニンの具体例としては、カキタンニン、ケブラチョタンニン、ミモザ(ワットル)タンニン、ガンビアタンニン、アカシアタンニン、カラマツタンニン、テアフラビン、テアルビジン等が挙げられる。一方、加水分解性タンニンの具体例としては、茶タンニン、チェストナット・タンニン、ミラボラムタンニン、オークタンニン、タラタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン等が挙げられる。本実施形態ではこれらのタンニン系化合物のうちから1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、本実施形態においては縮合型タンニンを含む消臭成分を用いることが好ましく、なかでもカキタンニンを含む消臭成分を用いることがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態における成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分は、植物から抽出等した植物由来の消臭成分であることが好ましい。植物由来の消臭成分の具体例としては、コーヒー、リンゴ、ブドウ、茶類(緑茶、焙じ茶、紅茶、ウーロン茶、マテ茶等)、柿、大豆、ピーナッツ、カカオ、ローズマリー、アロエ等由来のものが挙げられ、なかでも、柿由来の消臭成分であることが好ましい。
【0041】
本実施形態における成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分は、潤滑消臭剤組成物中に2.5~10質量%の範囲で含有されていることが好ましく、3~8質量%含有されていることがより好ましい。
【0042】
本実施形態における成分(B2)のスチルベン系化合物は、スチルベン及びその誘導体を包含する。また、本実施形態における成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分は、植物から抽出等した植物由来の消臭成分であることが好ましい。植物由来の消臭成分の具体例としては、サトウキビ、ブドウ、ピーナッツ、カカオ等由来のものが挙げられる。本実施形態ではこれらのスチルベン系化合物のうちから1種を単独で使用しても、2種
以上を併用してもよい。なかでも、サトウキビ由来の消臭成分を用いることが好ましい。
【0043】
本実施形態における成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分は、潤滑消臭剤組成物中に0.05~10質量%の範囲で含有されていることが好ましく、0.1~5質量%含有されていることがより好ましい。
【0044】
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分と成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分とを組み合わせることによって、オストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)を向上させることができる。
本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物の消臭機構は、第1実施形態に係る潤滑消臭剤組成物と同様であると考えられる。すなわち、本実施形態に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分と成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分とを組み合わせることによって、化学的消臭機構及び感覚的消臭機構による消臭効果を発揮し、排泄物等に対する消臭性が向上していると考えられる。
【0045】
本実施形態における成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分及び成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分の質量割合(A2)/(B2)は0.1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。成分(A2)及び成分(B2)の質量割合を上記範囲とすることによって、より効果的にオストミー装具の使用における消臭性と取扱性(便排出時の潤滑性)を向上させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く限定されることはない。
【0047】
表1に示した各成分を混合、溶解等させて潤滑消臭剤組成物を調製した。得られた潤滑消臭剤組成物について、以下に示す方法に従って評価を行った。
なお、柿抽出物としては、リリース科学工業株式会社製「パンシルFG-22」を用い、サトウキビ抽出物としては、三井製糖株式会社製「MSX-201」を用いた。また、親水性高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロースは三晶株式会社製「CEKOL 30000」、ヒドロキシエチルセルロースは三晶株式会社製「SANHEC HH」、ヒドロキシプロピルセルロースは三晶株式会社製「NEOVISCO-MC RM30000S」を用いた。
【0048】
[潤滑消臭剤組成物のpH]
JIS Z8802に準拠して、校正したpH計電極を洗浄後、各潤滑消臭剤組成物のpHを3回測定し、平均値を求めた。
【0049】
[潤滑消臭剤組成物の粘度]
各潤滑消臭剤組成物について、BLII型粘度計(東機産業社製)を用い、溶液温度:15~25℃、ローター番号:3番、ローター回転数:12rpm、回転時間:10分の条件で測定した。
【0050】
[潤滑性評価]
排出口付きオストミー装具のパウチ内に各潤滑消臭剤組成物を約6g投入して全面に広げ、次いで、疑似便40gを投入した。オストミー装具のパウチを地面に対して垂直に30分間保持した後、排出口から疑似便を排出し、パウチ内の疑似便の残存の程度を評価した。潤滑消臭剤組成物を使用せずに疑似便40gのみをパウチ内に投入し、排出口から疑
似便を排出した時(以下、「未使用時」という)にパウチ内に残存する疑似便の量を基準として、以下の指標により評価を行った。以下の指標では、★の数が多いほど潤滑性に優れていることを示している。
★:未使用時よりも疑似便の残量がわずかに減少した
★★:未使用時よりも疑似便の残量が減少した
★★★:未使用時よりも疑似便の残量が大幅に減少した
なお、疑似便としては、ドッグフード(アイリスオーヤマ製「ヘルシーステッププラス1 角切りビーフ」)から大部分のグリセリンを除去した後の塊を潰したものを用いた。
【0051】
[硫化水素ガス消臭率]
オストミー装具に一般的に用いられる防臭性フィルムで作成したバッグの中に各潤滑消臭剤組成物を10g投入し、次いで、標準ガス発生機(ガステック社製「PD-1B-2」)を用いて発生させた硫化水素ガス300mLを入れた。その後、バッグの口を封止し、ガスと潤滑消臭剤組成物とが十分接触するようにバッグを外から揉んだ。30分静置後に、防臭性フィルム内の硫化水素ガス濃度をガス検知管(光明理化学工業社製「120SE」)にて測定し、以下の式によって消臭率(%)を算出した。
【0052】
【0053】
[実便消臭性官能評価]
オストミー装具のパウチに各潤滑消臭剤組成物を約6g投入して全面に広げ、次いで、水道水で2倍希釈した人便を30g投入し、地面に対して垂直に保持した。2時間後、以下の指標により消臭性の評価を行った。
1:強烈な便臭がある
2:強い便臭がある
3:容易に便臭とわかる臭いがある
4:便臭とわかる臭いがあるが、弱い
5:臭気はあるが、便臭は感じない
【0054】
[皮膚刺激性評価]
約0.05~0.1gの各潤滑消臭剤組成物を皮膚感作テスト用テープ(SmartPractice社製「フィンチャンバー」)の濾紙(φ8mm)に滴下し、被験者の上腕部内側に貼付し、その上からフィルムドレッシングで被覆して24時間放置した。その後、テスト用テープを剥がし、その時点から1時間、24時間後の皮膚状態を観察し、以下の指標により評価を行った。
○:1時間後及び24時間後において、紅斑なし
△:1時間後及び/又は24時間後において、非常に軽度な紅斑がある
×:1時間後及び/又は24時間後において、はっきりとした紅斑、中等度~高度の紅斑又は高度紅斑~わずかな痂皮がある
【0055】
【0056】
表1に示すように、実施例の潤滑消臭剤組成物は、比較例の潤滑消臭剤組成物と比べて実便消臭性評価が良好であった。柿抽出物とサトウキビ抽出物とを組み合わせることにより、排泄物等の悪臭成分が分解等され、かつ排泄物等の臭いも感じにくくなるため、柿抽出物又はサトウキビ抽出物単独と比べて消臭性をより向上させることができると考えられる。オストミー装具の使用者にとって、排泄物等の臭いを感じにくくすることは重要な課題であるから、実便消臭性が高いことは、オストミー装具用の潤滑消臭剤組成物として特に有効であると考えられる。
さらに、実施例2~5、7は硫化水素ガス消臭率及び実便消臭性評価において特に優れていたことから、pHを本発明の好ましい範囲とすることで、消臭性をさらに向上させることができることがわかった。
また、実施例の潤滑消臭剤組成物は、[潤滑性評価]において基準とした「未使用時」の場合と比べて潤滑性評価が向上していたことから、排泄物等とオストミー装具のパウチ内表面との間の潤滑性に優れ、排泄物等をパウチ内表面から除去する際の取扱性が良好であることがわかった。なかでも、実施例5~7の潤滑消臭剤組成物は潤滑性評価が特に良好であったことから、親水性高分子化合物としてカルボキシメチルセルロースを用い、さらに粘度を本発明の好ましい範囲とすることで、さらに取扱性を向上させることができることがわかった。
さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、柿抽出物の量が多いほど、消臭性や潤滑性が向上していた。このことから、柿抽出物を用いることは、消臭効果だけでなく、潤滑消臭剤組成物の潤滑性にも寄与しているのではないかと考えられる。
そのうえ、実施例の潤滑消臭剤組成物は、皮膚刺激性評価も良好であり、皮膚に対して刺激が少ないことがわかった。
【0057】
以上のとおり、本発明に係る潤滑消臭剤組成物は、成分(A1)柿抽出物、成分(B1)サトウキビ抽出物、成分(C)親水性高分子化合物及び成分(D)水を含有することによって、消臭性及び潤滑性を向上させることができる。換言すると、成分(A2)タンニン系化合物を含む消臭成分、成分(B2)スチルベン系化合物を含む消臭成分、成分(C)親水性高分子化合物及び成分(D)水を含有することによって、消臭性及び潤滑性を向上させることができる。