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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】制振性塗膜
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240318BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240318BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240318BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240318BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240318BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240318BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240318BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240318BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
C08K3/26
C09D5/00 Z
C09D133/00
C09D7/61
C09K3/00 P
B05D5/00 D
B05D7/24 302P
B05D7/24 303B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020063770
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160210
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 修一
(72)【発明者】
【氏名】波元 冬子
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210722(JP,A)
【文献】特開平08-276153(JP,A)
【文献】特開2004-204578(JP,A)
【文献】特開2003-193025(JP,A)
【文献】特開2016-003252(JP,A)
【文献】特開2015-196118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C08K 3/00-13/08
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
C09K 3/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された制振性塗膜であって、
該塗膜は、平均厚みが0.1~1mmであり、基材側の下層、及び、上層からなり、
該上層は、アクリル系樹脂、酸化亜鉛、及び、炭酸カルシウムを含み、炭酸カルシウムの含有割合が、上層100質量%中、20質量%以上、90質量%以下であり、
該下層は、アクリル系樹脂を含み、炭酸カルシウムの含有割合が、下層100質量%中、15質量%以下である
ことを特徴とする制振性塗膜。
【請求項2】
前記下層の平均厚みと、前記上層の平均厚みの比は、10/90~90/10であることを特徴とする請求項1に記載の制振性塗膜。
【請求項3】
前記下層の平均厚みと、前記上層の平均厚みの比は、30/70~70/30であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振性塗膜。
【請求項4】
前記上層における酸化亜鉛の含有割合は、上層100質量%中、1~10質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項5】
前記上層における酸化亜鉛の含有割合は、アクリル系樹脂100質量%に対し、1~50質量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項6】
前記下層における酸化亜鉛の含有割合は、アクリル系樹脂100質量%に対し、3質量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項7】
前記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、前記下層における炭酸カルシウムの含有割合よりも20質量%以上多いことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項8】
前記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、該上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対して、50質量%以上、400質量%以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項9】
前記下層における炭酸カルシウムの含有割合は、該下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対して、70質量%以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項10】
前記上層が含むアクリル系樹脂及び/又は前記下層が含むアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体由来の構造単位及び(メタ)アクリル酸系単量体由来の構造単位を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項11】
前記上層が含むアクリル系樹脂及び/又は前記下層が含むアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が-30~40℃であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の制振性塗膜。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の制振性塗膜が表面に形成されてなることを特徴とする制振材付き基材。
【請求項13】
前記基材の平均厚みよりも前記上層の平均厚みが薄いことを特徴とする請求項12に記載の制振材付き基材。
【請求項14】
請求項1~11のいずれかに記載の制振性塗膜を用いて構成されることを特徴とする、輸送機関、電気機器、建築構造物、又は、建設機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振性塗膜に関し、より詳しくは、各種構造体、特に自動車の車内床下における振動や騒音を防止して静寂性を保つために使用される制振性塗膜、及び、該制振性塗膜が表面に形成されてなる制振材付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
制振材は、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、例えば、自動車の車内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されている。このような制振材に用いられる材料としては、従来、振動吸収性能及び吸音性能を有する材料を素材とする板状成形体やシート状成形体等の成形加工品が使用されているが、成形加工品の代替材料として、塗布型制振材配合物(塗料)が開発されており、例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法で塗布することにより形成される制振性塗膜が種々提案されている。
【0003】
従来の制振性塗膜としては、例えば、基材上に形成された制振性塗膜であって、該塗膜は、基材と接する側の塗膜表面の硬度よりも基材と接する側とは反対側の塗膜表面の硬度が高く、その硬度の差が鉛筆硬度で2段階以上である制振性塗膜が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-196118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、制振性塗膜が種々提案されている。複雑な形状の基材の上にも塗膜を容易に形成できる塗布型制振材の需要は年々高まってきており、そのようにして形成される制振性塗膜に求められる制振性も更に高くなっている。例えば、薄膜でありながら充分な制振性を発揮でき、車両等の設計、デザインの自由度が高まるような制振性塗膜が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、薄膜でありながら優れた制振性を発揮する制振性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、優れた制振性を発揮する制振性塗膜について種々検討したところ、基材上に形成された制振性塗膜を、平均厚み1mm以下とし、上層がアクリル系樹脂、酸化亜鉛、及び、炭酸カルシウムを含むものとすると、制振性塗膜が薄膜ながらもその制振性が優れたものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、基材上に形成された制振性塗膜であって、該塗膜は、平均厚みが1mm以下であり、基材側の下層、及び、上層からなり、該上層がアクリル系樹脂、酸化亜鉛、及び、炭酸カルシウムを含むことを特徴とする制振性塗膜である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制振性塗膜は、薄膜でありながら優れた制振性を発揮できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
<本発明の制振性塗膜>
本発明の制振性塗膜は、基材上に形成された制振性塗膜であって、該塗膜は、平均厚みが1mm以下であり、基材側の下層、及び、上層からなり、該上層がアクリル系樹脂、酸化亜鉛、及び、炭酸カルシウムを含む。
【0012】
上記上層は、上記下層(基材側の下層)の上側(基材側とは反対側)に位置する層をいう。
なお、上記上層と上記下層の境界線付近において、これら2層の成分同士が部分的に混ざり合っていても構わない。
【0013】
[炭酸カルシウム]
本発明の制振性塗膜における上記上層は、炭酸カルシウムを含む。
上記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、上層100質量%中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
上記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、上層100質量%中、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
【0014】
上記下層における炭酸カルシウムの含有割合は、下層100質量%中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、実質的に0質量%であることが最も好ましい。
このように上記下層における炭酸カルシウムの含有割合が低い範囲内に特定されていることにより、基材との密着性が優れることになり、制振性塗膜が基材から剥離することや、これに伴う制振性の低下も充分に防止できる。
【0015】
上記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、上記下層における炭酸カルシウムの含有割合よりも多いものであることが好ましい。
中でも、上記上層における炭酸カルシウムの含有割合が、上記下層における炭酸カルシウムの含有割合よりも20質量%以上多いことがより好ましく、30質量%以上多いことが更に好ましく、40質量%以上多いことが一層好ましく、50質量%以上多いことがより一層好ましく、60質量%以上多いことが特に好ましい。
上記上層における炭酸カルシウムの含有割合は、上記下層における炭酸カルシウムの含有割合よりも90質量%以下多いものであることが好ましく、80質量%以下多いものであることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
このように上層における炭酸カルシウムの含有割合を下層における炭酸カルシウムの含有割合に対して多くすることで、下層との組合せで、実用温度領域内の幅広い温度範囲において制振性をより優れたものとすることができる。
【0016】
また上記上層は、アクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合が、50質量%以上であることが好ましく、100質量%以上であることがより好ましく、150質量%以上であることが更に好ましく、200質量%以上であることが特に好ましい。
上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合は、400質量%以下であることが好ましく、300質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
以下では、本発明の制振性塗膜における基材側の下層がアクリル系樹脂を含む場合の本発明の好ましい形態について説明する。
本発明の制振性塗膜は、上記下層が、アクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合が0質量%以上、70質量%以下であり、上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合が、該下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合よりも多いことが好ましい。
上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合は、55質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、実質的に0質量%であることが最も好ましい。
このように上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合が低い範囲内に特定されていることにより、基材との密着性が優れることになり、制振性塗膜が基材から剥離することや、これに伴う制振性の低下を充分に防止できる。
【0018】
上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合は、例えば、上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合よりも50質量%以上多いことが好ましい。
上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合は、上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合よりも100質量%以上多いことがより好ましく、150質量%以上多いことが更に好ましく、200質量%以上多いことが特に好ましい。
上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合は、上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合よりも400質量%以下多いものであることが好ましく、300質量%以下多いものであることがより好ましい。
このように上記上層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合を上記下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの含有割合に対して多くすることで、上記下層との組合せで、実用温度領域内の幅広い温度範囲において制振性をより優れたものとすることができる。
【0019】
上記炭酸カルシウムとしては、平均粒子径が0.1~200μmのものが好ましく、0.5~100μmのものがより好ましく、1~50μmのものが更に好ましい。
炭酸カルシウムの平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置により測定することができ、粒度分布からの重量50%径の値である。
【0020】
なお、上述した上層・下層における炭酸カルシウムの好ましい含有割合は、上層・下層における充填材の好ましい含有割合と言い換えることができる。また、上述した上層・下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する炭酸カルシウムの好ましい含有割合は、上層・下層における樹脂100質量%に対する充填材の好ましい含有割合と言い換えることができる。
【0021】
[アクリル系樹脂]
本発明の制振性塗膜は、上記上層がアクリル系樹脂を含む。
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位を有するものであればよく、(メタ)アクリル系単量体から誘導されていてもいなくてもよい。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体が含まれる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体とは、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基がアルキルアルコールでエステル化したかたちのカルボン酸エステル基を有する単量体であり、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基とアルキル基とを有する化合物(単量体)を言う。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが好適である。
【0023】
上記アクリル系樹脂の原料となる単量体成分としては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することが更に好ましく、65質量%以上含有することが特に好ましい。また、上記(メタ)アクリル系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、99.9質量%以下含有することが好ましく、99.8質量%以下含有することがより好ましく、99.6質量%以下含有することが更に好ましく、99.5質量%以下含有することが特に好ましい。
【0024】
上記アクリル系樹脂は、更に、(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位を有することが好ましい。上記(メタ)アクリル酸系単量体とは、アクリロイルオキシ基若しくはメタクリロイルオキシ基における水素原子が結合した化合物(単量体)、又は、該水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった化合物(単量体)であって、該基中のカルボニル基をもつカルボキシル基(-COOH基)、カルボキシル基が塩となったカルボン酸塩基、又は、カルボキシル基の酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-基)を有する単量体である。上記アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸系単量体由来の構成単位を有することにより、本発明の制振性塗膜の原料である制振材配合物において、例えば炭酸カルシウム等の充填材等の分散性が向上し、得られる塗膜の機能がより優れたものとなる。
上記(メタ)アクリル酸系単量体は、(メタ)アクリル酸(塩)であることが好ましい。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を言う。
上記(メタ)アクリル酸系単量体の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
【0025】
上記アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、0.1~5質量%を共重合して得られるものであることが好ましい。上記単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体が0.3質量%以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体が0.5質量%以上であることが更に好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体が0.7質量%以上であることが特に好ましい。また、上記単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体が5質量%以下であることが好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体が4質量%以下であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体が3質量%以下であることが更に好ましい。このような範囲内とすることにより、単量体成分が安定に共重合する。
【0026】
上記アクリル系樹脂は、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体以外のその他の共重合可能な不飽和単量体由来の構成単位を有していてもよい。
その他の共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等;これら以外の(メタ)アクリル酸系単量体のエステル化物;アクリルアミド、メタクリルアミド等:これら以外の(メタ)アクリル酸系単量体のアミド化物;アクリロニトリルや、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等の多官能性不飽和単量体;酢酸ビニル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが好適である。
【0027】
上記アクリル系樹脂は、例えば、芳香環を有する不飽和単量体由来の構成単位を有する重合体を含んでいてもよい。
上記芳香環を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。このような形態によって、コストを削減しつつ本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0028】
上記アクリル系樹脂の原料となる単量体成分は、上記芳香環を有する不飽和単量体を含む場合は、全単量体成分100質量%に対して、1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことが更に好ましく、15質量%以上含むことが一層好ましく、25質量%以上含むことが特に好ましい。また、該単量体成分は、上記芳香環を有する不飽和単量体を、全単量体成分100質量%に対して、80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましく、60質量%以下含むことが更に好ましく、40質量%以下含むことが特に好ましい。
【0029】
上記アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が-30~40℃であることが好ましい。アクリル系樹脂としてこのようなガラス転移温度を有するものを用いると、制振材の実用温度領域での制振性能を効果的に発現することができることとなる。上記アクリル系樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは-20~35℃であり、更に好ましくは-15~30℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、使用した単量体組成から、下記計算式(1)を用いて算出されるものである。
【0030】
【数1】
【0031】
式中、Tg′は、重合体のTg(絶対温度)である。W′、W′、・・・Wn′は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T、T、・・・Tnは、各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
なお、本発明に係るアクリル系樹脂が2種以上の重合体を含む場合、または、重合体の少なくとも1種が多段重合して得られるものである場合(例えば、コア部とシェル部とを有するエマルション樹脂粒子である場合)は、上記ガラス転移温度は、全ての段で用いた単量体組成から算出したTg(トータルTg)を意味する。
【0032】
上記上層は、上層100質量%中、アクリル系樹脂の含有割合が、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、上記上層は、上層100質量%中、アクリル系樹脂の含有割合が、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが一層好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の制振性塗膜において、上記下層もまた、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
上記下層がアクリル樹脂を含む場合、上記下層は、下層100質量%中、アクリル系樹脂の含有割合が、75質量%以上、100質量%以下であることが好ましい。該含有割合は、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
なお、上記上層と、上記下層で、アクリル系樹脂の種類、重量平均分子量、ガラス転移温度等は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
また上述した上層・下層におけるアクリル系樹脂の好ましい含有割合は、上層・下層における樹脂の好ましい含有割合と言い換えることができる。
【0033】
[酸化亜鉛]
本発明の制振性塗膜は、上記上層が酸化亜鉛を含む。
なお、本発明の制振性塗膜の上層の原料(制振材配合物)が酸化亜鉛を含むことで、基材とは逆側の塗膜表面近傍で充分に架橋反応を進行させ、得られる上層の硬度を上げることができ、本発明の制振性塗膜が実用温度領域内の幅広い温度範囲での制振性により優れたものとなる。
【0034】
上記上層における酸化亜鉛の配合量は、例えば、アクリル系樹脂100質量%に対し、固形分で1~50質量%とすることが好ましく、10~45質量%とすることがより好ましい。
また上記上層における酸化亜鉛の配合量は、上層100質量%に対し、1~10質量%であることが好ましい。
本発明の制振性塗膜において、上記下層もまた、アクリル系樹脂を含んでいてもよい。
上記下層がアクリル樹脂を含む場合、上記下層における架橋剤成分の配合量は、例えば、アクリル系樹脂100質量%に対し、固形分で3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0035】
上記酸化亜鉛は、架橋剤が制振性塗膜中で樹脂等と架橋したものも含まれるものであり、酸化亜鉛成分と言い換えることができる。
なお、上述した上層・下層におけるアクリル系樹脂100質量%に対する酸化亜鉛の好ましい含有割合は、上層・下層における樹脂100質量%に対する架橋剤の好ましい含有割合と言い換えることができる。
【0036】
[その他の成分]
本発明の制振性塗膜は、更にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、有機充填材;炭酸カルシウム以外の無機充填材;アクリル系樹脂以外の樹脂;酸化亜鉛以外の架橋剤;界面活性剤;分散剤;増粘剤;発泡剤;ゲル化剤;消泡剤;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;これら剤由来の成分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
なお、上記他の成分は、本発明の制振性塗膜の原料である制振材配合物を調製する際に、例えば、ディスパー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、本発明に係る炭酸カルシウムやアクリル系樹脂等と混合され得る。
【0037】
本発明の制振性塗膜は、平均厚みが1mm以下である。本発明の制振性塗膜は、薄膜であり、車両等の設計、デザインの自由度を高めたり、軽量化したりできるものでありながら、充分な制振性を発揮できる。本発明の制振性塗膜の平均厚みは、より好ましくは、0.1~1mmであり、更に好ましくは、0.2~1mmであり、特に好ましくは、0.5~1mmである。
なお、本発明の制振性塗膜は上層と下層を積層したものであるので、上記平均厚みは、上層と下層の合計の平均厚みである。
本発明の制振性塗膜の平均厚みは、ノギスにより任意の5点を測定し、その平均値を求めることで算出することができる。
【0038】
本発明の制振性塗膜は、上記下層の平均厚みと、上記上層の平均厚みの比が、10/90~90/10であることが好ましい。
上記下層の平均厚みと、上記上層の平均厚みの比は、制振性をより優れたものとする観点からは、10/90~80/20であることがより好ましく、10/90~60/40であることが更に好ましく、20/80~60/40であることが一層好ましく、40/60~60/40であることが特に好ましい。
上記下層の平均厚みと、上記上層の平均厚みの比は、塗膜をより軽量化する観点からは、上層の平均厚みの比率が小さいほど好ましい。
軽量化と制振性のバランスを良好なものとする観点からは、例えば、上記下層の平均厚みと、上記上層の平均厚みの比が30/70~70/30であることが、本発明の制振性塗膜における好ましい形態の1つである。
上記下層の平均厚みと、上記上層の平均厚みの比は、制振性塗膜の断面を任意に5箇所切り出し、その断面のマイクロスコープ画像解析により測定することができる。また基材、基材と制振性塗膜の下層(基材+下層)、基材と制振性塗膜(基材+下層+上層)の平均厚みをそれぞれノギスで任意に5箇所測定し、それぞれ差し引きし、平均することで上層/下層の平均厚み比を算出することができる。
【0039】
本発明の制振性塗膜の制振性は、膜の損失係数を測定することにより評価することができる。
損失係数は、通常ηで表され、塗膜に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。
上記損失係数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
本発明の制振性塗膜は、基本的に、制振性塗膜を形成するための原料(制振材配合物)を塗布して得ることができ、例えば、炭酸カルシウムの含有量が異なる2種の制振材配合物をそれぞれ塗布して得ることができる。例えば、上記下層を得るための第1の制振材配合物を基材上に塗布して下層を形成する工程と、該下層の上に、第1の制振材配合物とは炭酸カルシウムの含有割合が異なる第2の制振材配合物を塗布して上層を形成する工程により、本発明の制振性塗膜を得ることができる。
制振材配合物を塗布する方法は特に制限されず、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布する方法を用いることができる。
また離型紙上に塗膜を積層した上で、その上に基材を張り合わせ、最後に離型紙を剥がすといった工程や、モールド成形を行う工程によっても、本発明の制振性塗膜を得ることが可能である。これらの場合は、最初に塗って得られた層が最終的に表面側の上層となる。
なお、本発明の制振性塗膜は、塗布した制振材配合物を加熱乾燥して得られるものであることが好ましい。
【0041】
上記制振材配合物は、水系溶媒を含み、上記アクリル系樹脂等の樹脂は、水系溶媒中に分散しているか、又は、溶解していることが好ましく、水系溶媒中に分散していることがより好ましい。すなわち、制振材配合物がエマルションであることがより好ましい。なお、本明細書中、水系溶媒中に分散しているとは、水系溶媒中に溶解することなく分散していることを意味する。
また上記樹脂は、例えば、溶液重合、懸濁重合等、公知の方法により重合することができるが、その形態は、制振材配合物中では、単量体成分を乳化重合してなるエマルション樹脂粒子(エマルションに存在する樹脂粒子)であることが好ましい。
【0042】
本発明の制振材配合物は、上述したように、水系溶媒等の溶媒を含むことが好ましい。
なお、本明細書中、水系溶媒は、水を含む限りエチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等の有機溶媒を含んでいてもよいが、水であることが好ましい。溶媒の配合量は、本発明の制振材配合物の固形分濃度を適切に調整するために適宜設定すればよい。
【0043】
本発明の制振材配合物のpHとしては特に限定されないが、2~10であることが好ましく、3~9.5であることがより好ましく、7~9であることが更に好ましい。pHは、アクリル系樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
本明細書中、pHは、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
本発明の制振材配合物の粘度としては特に限定されないが、1~10000mPa・sであることが好ましく、10~4000mPa・sであることがより好ましく、20~3000mPa・sであることが更に好ましく、40~1000mPa・sであることが特に好ましい。
本明細書中、粘度は、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
【0045】
本発明の制振性塗膜は、優れた制振性を発揮できる。具体的には、本発明の塗膜では、実用温度領域内の幅広い温度範囲において制振性をより優れたものとすることができ、また、基材との密着性を高めて塗膜の品質を長期間維持することができる。よって、本発明の塗膜は、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の輸送機関や電気機器、建築構造物、建設機器等に好適に用いることができる。
【0046】
<本発明の制振材付き基材>
本発明は更に、本発明の制振性塗膜が表面に形成されてなることを特徴とする制振材付き基材でもある。
【0047】
上記基材は、塗膜を形成することができる限り特に制限されず、鋼板等の金属材料、プラスチック材料等いずれのものであってもよい。中でも、基材が金属材料であることが、本発明の制振材付き基材における好ましい実施形態の1つである。
金属材料としては、特に限定されないが、例えば鋼、アルミ等が挙げられる。
本発明の制振材付き基材における上記上層(拘束層)は、基材よりも弾性率が低い材料であることが好ましい。
本発明の制振材付き基材において、上記基材の平均厚みよりも上記上層の平均厚みが薄いことが好ましい。
例えば、上記基材の平均厚みよりも上記上層の平均厚みが0.1mm以上薄いことが好ましく、0.3mm以上薄いことがより好ましく、0.5mm以上薄いことが更に好ましく、0.7mm以上薄いことが特に好ましい。これにより、本発明の制振材付き基材をより軽量化できる。
上記基材の平均厚みは、0.1~3mmであることが好ましく、0.3~2mmであることがより好ましく、0.5~1.6mmであることが更に好ましい。
上記基材の平均厚みは、上記塗膜の平均厚みと同様の方法で求めることができる。
【実施例
【0048】
以下に発明を実施するための形態を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの発明を実施するための形態のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の製造例において、各種物性等は以下のように評価した。
<平均粒子径>
エマルション樹脂粒子の平均粒子径は動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社製FPAR-1000)を用い測定した。
<不揮発分(N.V.)>
得られたエマルション約1gを秤量、熱風乾燥機で150℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を%(質量%)で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F-23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製「VISCOMETER TUB-10」)を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した。
【0049】
製造例1
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水285部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン170部、メチルメタクリレート130部、ブチルアクリレート95部、2-エチルヘキシルアクリレート95部、アクリル酸10部、重合連鎖移動剤であるt-ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整した乳化剤ハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)90部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの11部、重合開始剤(酸化剤)である3%過硫酸カリウム水溶液6.6部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン60部、メチルメタクリレート140部、ブチルアクリレート190部、2-エチルヘキシルアクリレート100部、アクリル酸10部、t-ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)75部及び脱イオン水100部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、2-ジメチルエタノールアミン25部を添加し、不揮発分54.9%、pH7.9、粘度360mPa・s、エマルションの平均粒子径190nm、重量平均分子量51000、1段目のTg16℃、2段目のTg-13℃、トータルTg0℃のエマルションを得た。
【0050】
実施例1
製造例1において得られたエマルションを50部、酸化亜鉛を6部、充填材として炭酸カルシウム(NN#200、日東粉化工業株式会社製)を68部混合し、制振材配合物1を得た。
基材(冷間圧延鋼板、250*10*1.0mm)上に、製造例1において得られたエマルションを用いて100μmの第1層を形成し、乾燥した。その後、更にその上に、上記で得られた制振材配合物1を用いて900μmの第2層を形成し、乾燥することで、基材上に厚み比が10/90の第1層/第2層から成る制振性塗膜が形成された評価用テストピースを得た。
【0051】
実施例2~5
第1層の厚み、第2層の厚みを下記表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、第1層/第2層から成る制振性塗膜が形成された評価用テストピースを得た。
【0052】
比較例1
基材(冷間圧延鋼板、250*10*1.0mm)上に、実施例1において得られた制振材配合物1を用いて1000μmの層を形成し、乾燥することで、基材上に単層から成る制振性塗膜が形成された評価用テストピースを得た。
【0053】
評価方法
(制振性試験)
作製した評価用テストピースを用い、中央加振法(損失係数評価システム、ブリュエル・ケアー(B&K)社製)を用いて10℃、20℃、30℃、40℃における損失係数を測定し、これらの合計(総損失係数)を算出した。
損失係数の値が大きいほど制振性に優れる。
【0054】
(塗膜重量)
予め、基材の重量を計量しておき、第1層および第2層が形成された評価用テストピースの重量から差し引くことで、制振性塗膜の重量を算出した。塗膜重量が小さいほど優れる。
【0055】
【表1】
【0056】
上記表1の結果から、実施例の制振性塗膜は、薄膜であり、軽量でありながら、優れた制振性を発揮できることが分かった。