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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ダイアフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
F04B43/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021110165
(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公開番号】P2023007122
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】593145179
【氏名又は名称】株式会社ワイ・テイ・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】521289892
【氏名又は名称】村田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】村田 茂
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-080782(JP,A)
【文献】特開平05-195999(JP,A)
【文献】特開2014-177881(JP,A)
【文献】実開平01-121788(JP,U)
【文献】特開2002-250487(JP,A)
【文献】特開2016-061209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 53/16
F04B 39/12
F04D 29/42
F16L 23/024
F16B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の作動流体室に流体を供給する供給手段と、送流体室と前記作動流体室とを区画するダイアフラム体と、一対の前記ダイアフラム体に接続されて往復移動するセンターロッドと、を備えたダイアフラムポンプであって、
前記ダイアフラム体に対向する外壁部を有するとともに熱可塑性材料によって形成された筐体と、
前記外壁部の外側に取り付けられる補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記外壁部のうち前記送流体室を構成する内側領域に固定されることで前記ダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部と、前記内側領域に当接することで前記ダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部と、を有することを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記送流体室に接続される管状部材と、
前記管状部材の管側フランジ部と前記筐体の筐体側フランジ部とを固定するための固定ユニットと、をさらに備え、
前記固定ユニットの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイアフラムポンプ。
【請求項3】
一対の作動流体室に流体を供給する供給手段と、送流体室と前記作動流体室とを区画するダイアフラム体と、一対の前記ダイアフラム体に接続されて往復移動するセンターロッドと、を備えたダイアフラムポンプであって、
前記ダイアフラム体に対向する外壁部を有するとともに熱可塑性材料によって形成された筐体と、
前記外壁部の外側に取り付けられる補強部材と、を備え、
前記補強部材は、前記外壁部に固定されることで前記ダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部と、前記外壁部に当接することで前記ダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部と、を有し、
前記送流体室に接続される管状部材と、
前記管状部材の管側フランジ部と前記筐体の筐体側フランジ部とを固定するための固定ユニットと、をさらに備え、
前記固定ユニットの一部が、前記補強部材と一体に形成され、
前記固定ユニットは、前記筐体側フランジ部の外側に設けられるとともに周方向に分割された第1分割リングと、前記第1分割リングの外側に設けられる第1固定リングと、前記管側フランジ部の外側に設けられるとともに周方向に分割された第2分割リングと、前記第2分割リングの外側に設けられる第2固定リングと、を有するとともに、前記第1固定リングと前記第2固定リングとが固定され、
前記第1分割リングの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記第1固定リングは、前記第2固定リングに近づく方向の力を前記第1分割リングに伝達する爪部を有し、
前記第1分割リングは、軸方向において前記爪部が通過可能な通過部と、前記通過部と周方向に連続するとともに前記爪部を係止可能な係止部と、を有することを特徴とする請求項3に記載のダイアフラムポンプ。
【請求項5】
前記第1分割リング及び前記第2分割リングは、内周面から突出することで前記管側フランジ部及び前記筐体側フランジ部の一部を挟み込む突出部を有し、
前記突出部は、前記管側フランジ部と前記筐体側フランジ部との間に密封部材が配置される配置部に対し、軸方向において重なる位置まで突出していることを特徴とする請求項3又は4に記載のダイアフラムポンプ。
【請求項6】
一対の作動流体室に流体を供給する供給手段と、送流体室と前記作動流体室とを区画するダイアフラム体と、一対の前記ダイアフラム体に接続されて往復移動するセンターロッドと、を備えたダイアフラムポンプであって、
前記ダイアフラム体に対向する外壁部を有する筐体と、
前記外壁部の外側に取り付けられる補強部材と、
前記送流体室に接続される管状部材と、
前記管状部材の管側フランジ部と前記筐体の筐体側フランジ部とを固定するための固定ユニットと、を備え、
前記補強部材は、前記外壁部のうち前記送流体室を構成する内側領域に固定されることで前記ダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部と、前記内側領域に当接することで前記ダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部と、を有し、
前記固定ユニットの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイアフラムによって区画された一対の作動流体室及び一対の送流体室を備え、センターロッドを往復移動させることで流体を吐出するダイアフラムポンプが知られている。このようなダイアフラムポンプでは、ダイアフラムを軟質な材料によって形成する必要があるため、センターロッドとの接続部分において意図しない変形が生じやすかった。そこで、ダイアフラムとセンターロッドとの接続部に対して補強部材を設けたダイアフラムポンプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたダイアフラムポンプでは、ダイアフラムの筒部の爪部が補強部材に係止されるようになっており、補強部材が外れることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-27281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようなダイアフラムポンプでは、例えば吐出対象となる流体の種類に応じて、各部の材質が決定される場合がある。このとき、ダイアフラム以外の部材も比較的軟質な材料によって形成される可能性があり、意図しない変形を抑制することが望まれていた。特に、筐体のうち送流体室や作動流体室を構成する部分は、圧力変化によって変形が生じやすく、変形によって密封性が低下したり、送流体効率が低下したり、ポンプの破損につながるといった不都合が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、筐体の変形を抑制することができるダイアフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダイアフラムポンプは、一対の作動流体室に流体を供給する供給手段と、送流体室と前記作動流体室とを区画するダイアフラム体と、一対の前記ダイアフラム体に接続されて往復移動するセンターロッドと、を備えたダイアフラムポンプであって、前記ダイアフラム体に対向する外壁部を有するとともに熱可塑性材料によって形成された筐体と、前記外壁部の外側に取り付けられる補強部材と、を備え、前記補強部材は、前記外壁部に固定されることで前記ダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部と、前記外壁部に当接することで前記ダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部と、を有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、補強部材がダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部を有することで、ダイアフラム体が外壁部から遠ざかってこれらの間の空間の圧力が低下した際に、外壁部の変形を抑制することができる。また、補強部材がダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部を有することで、ダイアフラム体が外壁部に近づいてこれらの間の空間の圧力が上昇した際に、外壁部の変形を抑制することができる。これにより、筐体が熱可塑性材料によって形成されて比較的変形しやすい場合であっても、筐体の変形を抑制することができる。
【0008】
この際、本発明のダイアフラムポンプでは、前記送流体室に接続される管状部材と、前記管状部材の管側フランジ部と前記筐体の筐体側フランジ部とを固定するための固定ユニットと、をさらに備え、前記固定ユニットの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、固定ユニットの一部が補強部材と一体に形成されていることで、補強部材によって外壁部だけでなく管側フランジ部と筐体側フランジ部との固定部分も補強することができ、変形を抑制してこれらの間からの流体の漏れを抑制することができる。
【0009】
また、本発明のダイアフラムポンプでは、前記固定ユニットは、前記筐体側フランジ部の外側に設けられるとともに周方向に分割された第1分割リングと、前記第1分割リングの外側に設けられる第1固定リングと、前記管側フランジ部の外側に設けられるとともに周方向に分割された第2分割リングと、前記第2分割リングの外側に設けられる第2固定リングと、を有するとともに、前記第1固定リングと前記第2固定リングとが固定され、前記第1分割リングの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、補強部材と一体に形成された第1分割リングによって筐体側フランジ部を外周側から保持して補強することができる。
【0010】
また、本発明のダイアフラムポンプでは、前記第1固定リングは、前記第2固定リングに近づく方向の力を前記第1分割リングに伝達する爪部を有し、前記第1分割リングは、軸方向において前記爪部が通過可能な通過部と、前記通過部と周方向に連続するとともに前記爪部を係止可能な係止部と、を有することが好ましい。このような構成によれば、爪部が通過部を通過するように第1分割リングに対して第1固定リングを軸方向に移動させた後、第1分割リングに対して第1固定リングを回転させることにより、爪部が係止部に係止された状態とすることができる。これにより、第1分割リングが補強部材と一体に形成されている構成において、組立性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のダイアフラムポンプでは、前記第1分割リング及び前記第2分割リングは、内周面から突出することで前記管側フランジ部及び前記筐体側フランジ部の一部を挟み込む突出部を有し、前記突出部は、前記管側フランジ部と前記筐体側フランジ部との間に密封部材が配置される配置部に対し、軸方向において重なる位置まで突出していることが好ましい。このような構成によれば、第1分割リング及び第2分割リングの内周面から突出した突出部によって、管側フランジ部及び筐体側フランジ部の一部を挟み込むとともに、Oリング等の密封部材を圧縮しやすく、密封性を向上させやすい。
【0012】
本発明のダイアフラムポンプは、一対の作動流体室に流体を供給する供給手段と、送流体室と前記作動流体室とを区画するダイアフラム体と、一対の前記ダイアフラム体に接続されて往復移動するセンターロッドと、を備えたダイアフラムポンプであって、前記ダイアフラム体に対向する外壁部を有する筐体と、前記外壁部の外側に取り付けられる補強部材と、前記送流体室に接続される管状部材と、前記管状部材の管側フランジ部と前記筐体の筐体側フランジ部とを固定するための固定ユニットと、を備え、前記補強部材は、前記外壁部に固定されることで前記ダイアフラム体に近づく方向の力を受ける第1受力部と、前記外壁部に当接することで前記ダイアフラム体から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部と、を有し、前記固定ユニットの一部が、前記補強部材と一体に形成されていることを特徴とする。
【0013】
以上のような本発明によれば、上記のように、第1受力部及び第2受力部によって筐体の変形を抑制するとともに、管側フランジ部と筐体側フランジ部との固定部分も補強することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダイアフラムポンプによれば、筐体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一例である実施形態にかかるダイアフラムポンプを示す断面図である。
図2】前記ダイアフラムポンプを示す側面図である。
図3】前記ダイアフラムポンプの補強部材を示す斜視図である。
図4】前記ダイアフラムポンプの要部を拡大して示す断面図である。
図5】前記ダイアフラムポンプの要部を拡大して示す分解斜視図である。
図6】前記ダイアフラムポンプの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のダイアフラムポンプ10は、図1,2に示すように、ポンプ本体1と切換装置20と供給手段と補強部材6とを備え、例えば空気等の気体を作動流体として用い、液体等の流体を吐出するものである(吐出される流体を「対象流体」と呼ぶ)。本実施形態では、ポンプ本体1の上下方向をZ方向とし、後述するセンターロッド3の軸方向(延在方向)をX方向とし、X方向及びZ方向の両方に略直交する方向をY方向とする。尚、ポンプ本体1は、Z方向が鉛直方向に沿うように設置されてもよいし、多少の傾きを有して設置されてもよい。
【0017】
ポンプ本体1は、一対のポンプ部2A,2Bと、センターロッド3と、検出装置4と、ケーシング5と、を備える。一対のポンプ部2A,2Bは、互いに対称に形成され、センターロッド3に接続されたダイアフラム体21と、入口側逆止弁22と、出口側逆止弁23と、を備える。
【0018】
ダイアフラム体21は、センターロッド3の両端部に設けられたディスク31,32によって挟み込まれることによりセンターロッド3に接続(固定)される。
【0019】
ケーシング5は、筐体51と、筐体51の内側に配置されてセンターロッド3が貫通する本体部52と、筐体51の入口側及び出口側のそれぞれに対して接続される管状部材53A,53Bと、を有する。ダイアフラム体21は、筐体51と本体部52との間の空間を、送流体室(ポンプ室)A1と作動流体室A2とに区画する。即ち、筐体51とダイアフラム体21との間に送流体室A1が形成され、本体部52とダイアフラム体21との間に作動流体室A2が形成される。筐体51及び管状部材53A,53Bは、例えばポリプロピレンやフッ素樹脂(PTFE等)等の熱可塑性樹脂によって形成されており、対象流体の種類に応じて適宜な材質が選択されればよい。尚、筐体51及び管状部材53A,53Bは、熱可塑性材料により形成されていればよく、熱可塑性材料としては上記の熱可塑性樹脂以外に熱可塑性エラストマ(ゴム)が例示される。
【0020】
筐体51は、ダイアフラム体21に対向する外壁部511と、筐体側フランジ部512と、を有する。以下では、X方向においてダイアフラム体21に対する外壁部511側を「外側」と呼び、その反対側を「内側」と呼ぶ。筐体側フランジ部512は、入口側及び出口側のそれぞれに設けられ、送流体室A1に連通するとともに、管状部材53A,53Bの管側フランジ部531が固定される。入口側において、管状部材53Aと筐体51との接続部分に入口側逆止弁22が設けられ、出口側において、管状部材53Bと筐体51との接続部分に出口側逆止弁23が設けられる。筐体側フランジ部512と管側フランジ部531とは、固定ユニット7によって固定される。
【0021】
X方向を軸方向として延在するセンターロッド3がX方向に移動することによりダイアフラム体21が変形し、一方のポンプ部2Aにおいて送流体室A1が膨張する(作動流体室A2が収縮する) と、他方のポンプ部2Bにおいて送流体室A1が収縮する(作動流体室A2が膨張する)。また、一方のポンプ部2Aにおいて送流体室A1が収縮すると、他方のポンプ部2Bにおいて送流体室A1が膨張する。
【0022】
送流体室A1が膨張して減圧されると、入口側逆止弁22が弁開して入口側開口10Aから送流体室A1に対象流体が導入される。一方、送流体室A1が収縮して昇圧されると、出口側逆止弁23が弁開して送流体室A1内の対象流体が出口側開口10Bから外部に排出される。
【0023】
検出装置4は、ディスク31,32に対してX方向の中央側(内側)に配置された検出子を有し、この検出子がディスク31に当接することで移動可能となっている。尚、図1では、検出装置4を示すために、一部断面を変更している。
【0024】
他方のポンプ部2Bの作動流体室A2に作動流体が供給されている際、一方のポンプ部2Aにおいて作動流体室A2が収縮していくことにより、ダイアフラム体21及びディスク31が検出装置4の検出子に対して接近していき、ディスク31によって検出装置4の検出子が押圧される。これにより、切換装置20が作動して供給先が切り換えられ、即ち、他方のポンプ部2Bの作動流体室A2には作動流体が供給されなくなり、一方のポンプ部2Aの作動流体室A2に作動流体が供給されるようになり、一方のポンプ部2Aの作動流体室A2が膨張していく。尚、切換装置20は従来のダイアフラムポンプと同様の構成を有するものが用いられればよく、ここでは説明を省略する。上記を繰り返すことにより、一対のポンプ部2A,2Bにおいて作動流体室A2が互い違いに膨張及び収縮を繰り返す。これにより、入口側開口10Aから導入された対象流体が出口側開口10Bから排出され、対象流体が外部に供給される。
【0025】
ここで、補強部材6の詳細な形状及び補強構造について説明する。補強部材6は、筐体51よりも硬質な材料(例えばステンレス等)によって構成され、筐体51に対し、X方向の両側それぞれに取り付けられることで、筐体51を補強して変形を抑制する。補強部材6は、図3にも示すように、円環状に形成されるとともに逆止弁22,23よりもX方向内側に配置される外側円環部61と、外側円環部61からX方向の外側に向かって延びる複数の放射状板部62と、放射状板部62に接続されて外壁部511のX方向外側に配置される内側円環部63と、を一体に有する。外側円環部61は、円環状の板部から3つの円柱状リブが突出した形状を有する。内側円環部63は、2つの円環(円筒)によって構成されている。また、内側円環部63の最外円は、外側円環部61の最内円よりも内側に配置されている。
【0026】
外側円環部61は、リブ同士の間に挿通孔611を有するとともに、外壁部511のうちダイアフラム体21を挟み込むための挟持円部513の外側に重ねられる。挟持円部513にも挿通孔が形成されており(図5参照)、ボルト等の固定部材100が、外側円環部61の挿通孔611及び挟持円部513の挿通孔に挿通され、本体部52に形成された雌ねじ部に対して締結されるようになっている。即ち、補強部材6及び筐体51が共締めによって本体部52に対して固定される。
【0027】
放射状板部62と内側円環部63との接続部分には、挿通孔64が形成されている。また、外壁部511のうち挟持円部513の内側に位置する(送流体室A1を構成する部分である)内側領域514には、挿通孔64に対応した位置に、X方向外側に向かって突出するボス515が形成されている。図6に示すように、ボス515は、挿通孔64に対してX方向内側から挿通可能となっており、挿通孔64に対してX方向外側からタッピングビス等の固定部材200を挿通してボス515に対して固定することにより、補強部材6が外壁部511に固定される。このとき、内側円環部63のうちX方向内側の端縁631が、外壁部511の内側領域514に対して当接する。
【0028】
内側領域514は、送流体室A1を構成する部分であり、送流体室A1の膨張又は収縮(ダイアフラム体21の移動)によって力を受ける。内側領域514は、ダイアフラム体21が内側に向かって変形して送流体室A1が膨張する際には、X方向内側への力(ダイアフラム体21に近づく方向の力)を受け、内側に凹むように変形しようとする。このとき、上記のように固定部材200によって外壁部511と補強部材6とが固定されていることにより、挿通孔614の周囲がX方向内側の力を受けて第1受力部として機能し、内側領域514の変形が抑制される。
【0029】
内側領域514は、送流体室A1が収縮する際にはX方向外側への力(ダイアフラム体21から遠ざかる方向の力)を受け、外側に膨らむように変形しようとする。このとき、上記のように内側円環部63の端縁631が内側領域514に対して当接することにより、内側円環部63がX方向内側の力を受けて第2受力部として機能し、内側領域514の変形が抑制される。
【0030】
次に、固定ユニット7の詳細な形状及び固定構造について説明する。尚、固定ユニット7は、入口側及び出口側の両方に設けられ、以下では主として出口側について説明するが、特に説明がない限りは入口側も同様の構造を有するものとする。固定ユニット7は、筐体側フランジ部512の外側に設けられるとともに周方向に分割された第1分割リング71と、第1分割リング71の外側に設けられる第1固定リング72と、管側フランジ部531の外側に設けられるとともに周方向に分割された第2分割リング73と、第2分割リング73の外側に設けられる第2固定リング74と、を有する。固定ユニット7の各部品は、例えば補強部材6と同様の材質を有していればよい。また、各リングの軸方向はZ方向に略一致している。
【0031】
第1分割リング71は、半円状の第1部材711及び第2部材712を有して2分割されており、第1部材711は、2つの放射状板部62の間に配置され、補強部材6と一体に形成されている。第1分割リング71は、内周面から突出した2つの突出部713,714を有し、筐体側フランジ部512の外周面もこれに応じた凹凸形状を有している。第1分割リング71は、外周面に4つの溝部715を有しており、溝部715は、Z方向に沿って延びる通過部715Aと、通過部715Aのうち管側フランジ部531とは反対側の端縁に連続するとともに周方向に沿って延びる溝状の係止部715Bと、を有する。
【0032】
第1固定リング72は、円環状に形成され、4つの固定孔721と、4つの爪部722と、を有する。爪部722は、内周側に向かって延びるように形成されており、通過部715AをZ方向に沿って通過することができるようになっている。補強部材6と一体に形成された第1部材711と、第2部材712と、によって筐体側フランジ部512を挟み込んだ状態において、4つの爪部722のそれぞれを、管側フランジ部531側(図5における上側)から4つの溝部715内に導入し、第1固定リング72を第1分割リング71に対してZ方向に移動させることで爪部722が通過部715Aを通過するようにし、第1固定リング72を第1分割リング71に対して回転させることで係止部715Bにおいて爪部722を周方向に移動させる。これにより、爪部722が係止部715Bによって係止され、第1固定リング72が第2固定リング74に近づこうとした際に、この力が第1分割リング71に伝達されるようになる。
【0033】
第2分割リング73は、第1部材731及び第2部材732によって構成され、補強部材6と一体に形成されていない点以外は、第1分割リング71と同様の構成を有する。即ち、第2分割リング73は、内周面に突出部733,734を有し、外周面に溝部735を有する。第2固定リング74は、第1固定リング72と共通の部品によって構成され、4つの固定孔と4つの爪部と、を有する。
【0034】
固定ユニット7は、以下のようにして固定される。上記のように爪部722が係止部715Bによって係止された状態とし、同様に、第2分割リング73及び第2固定リング74側においても、爪部が係止部によって係止された状態とする。このような状態において、第1固定リング72の固定孔721と第2固定リング74の固定孔とにボルト等の固定部材300を挿通してナットを締結する。これにより、第1固定リング72と第2固定リング74とをZ方向において近づける力が作用する。上記のように爪部722が係止されていることから、この力が第1分割リング71及び第2分割リング73に伝達され、第1分割リング71と第2分割リング73とZ方向においてが接近しようとする。
【0035】
第1分割リング71及び第2分割リング73には、突出部713,714,733,734が形成されており、筐体側フランジ部512及び管側フランジ部531のそれぞれと噛み合うようになっている。これにより力が伝達され、筐体側フランジ部512と管側フランジ部531とがZ方向において接近しようとする。このとき、筐体側フランジ部512の端面には、Oリング(密封部材)8を配置するための配置部としての溝部516が形成されている(図4ではOリング8は不図示)。従って、筐体側フランジ部512及び管側フランジ部531の端面同士によって、Oリング8が圧縮される。
【0036】
上記のような固定ユニット7の固定構造において、突出部713,714,733,734は、溝部516に対してZ方向において重なる位置まで突出している。即ち、突出部713,714,733,734の先端が、溝部516に対してZ方向に並ぶ。また、第1分割リング71及び第2分割リング73のそれぞれに2つの突出部713,714,733,734が形成されていることで、第1分割リング71及び第2分割リング73から筐体側フランジ部512及び管側フランジ部531に力が伝達される際、伝達箇所が2箇所となり、力の集中が抑制される。
【0037】
以上の本実施形態によれば、補強部材6がダイアフラム体21に近づく方向の力を受ける第1受力部としての挿通孔614を有することで、ダイアフラム体21が外壁部511から遠ざかって送流体室A1の圧力が低下した際に、外壁部511の変形を抑制することができる。また、補強部材6がダイアフラム体21から遠ざかる方向の力を受ける第2受力部としての内側円環部63を有することで、ダイアフラム体21が外壁部511に近づいて送流体室A1の圧力が上昇した際に、外壁部511の変形を抑制することができる。これにより、筐体51が熱可塑性樹脂(熱可塑性材料)によって形成されて比較的変形しやすい場合であっても、筐体51の変形を抑制することができる。
【0038】
また、固定ユニット7の一部である第1分割リング71の第1部材711が補強部材6と一体に形成されていることで、補強部材6によって外壁部511だけでなく管側フランジ部531と筐体側フランジ部512との固定部分も補強することができ、変形を抑制してこれらの間からの流体の漏れを抑制することができる。また、補強部材6と一体に形成された第1分割リング71によって筐体側フランジ部512を外周側から保持して補強することができる。
【0039】
また、第1分割リング71に通過部715A及び係止部715Bが形成されていることで、爪部722が通過部715Aを通過するように第1分割リング71に対して第1固定リング72をZ方向に移動させた後、第1分割リング71に対して第1固定リング72を回転させることにより、爪部722が係止部715Bに係止された状態とすることができる。これにより、第1分割リング71が補強部材6と一体に形成されている構成において、組立性を向上させることができる。
【0040】
また、第1分割リング71及び第2分割リング73の突出部713,714,733,734が配置部としての溝部516に対してZ方向において重なる位置まで突出していることで、管側フランジ部531及び筐体側フランジ部512の一部を挟み込むとともに、Oリング8を圧縮しやすく、密封性を向上させやすい。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、固定ユニット7の一部である第1分割リング71の第1部材711が補強部材6と一体に形成されているものとしたが、固定ユニットと補強部材とが別体に形成されていてもよい。このような構成によれば、補強部材及び固定ユニットの形状の自由度を向上させるとともに、組立性を確保しやすい。
【0042】
また、前記実施形態では、固定ユニット7が第1分割リング71と第1固定リング72と第2分割リング73と第2固定リング74とを有するものとしたが、筐体と管状部材とを接続するための構成はこれに限定されない。例えば、上記のように固定ユニットと補強部材とが別体に形成される場合、クランプ等を固定ユニットとして用いてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、第1分割リング71及び第2分割リング73の突出部713,714,733,734が配置部としての溝部516に対してZ方向において重なる位置まで突出しているものとしたが、このような構成に限定されない。即ち、各分割リングは、各フランジ部に対して適切に力を伝達することができるように凹凸を有していればよく、その突出寸法は、各部の材質等に応じて決定されればよい。
【0044】
また、前記実施形態では、タッピングビス等の固定部材200を用いて補強部材6を外壁部511に対して固定し、第1受力部が構成されるものとしたが、第1受力部を構成するための固定構造は、他の構造であってもよく、例えば係止構造であってもよい。即ち、ボス515に代えて、外壁部511から外側に向かって延びるアーム部と、アーム部の先端に設けられた係止爪と、を有する係止部を設け、内側円環部63の外側端縁を係止するような構成としてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、筐体51が熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマ等の熱可塑性材料によって形成されているものとしたが、筐体の材質は、対象流体の種類等に応じて決定されればよく、熱可塑性材料に限定されない。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10…ダイアフラムポンプ、21…ダイアフラム体、3…センターロッド、51…筐体、516…配置部、53A,53B…管状部材、6…補強部材、63…内側円環部(第2受力部)、64…挿通孔(第1受力部)、7…固定ユニット、71…第1分割リング、715A…通過部、715B…係止部、72…第1固定リング、722…爪部、73…第2分割リング、74…第2固定リング、8…Oリング(密封部材)、A1…送流体室、A2…作動流体室
図1
図2
図3
図4
図5
図6