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特許7455335脳組織刺激の方法、装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】脳組織刺激の方法、装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182817
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2018551866の分割
【原出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2022031700
(43)【公開日】2022-02-22
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】16000751.4
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523150772
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ
(73)【特許権者】
【識別番号】517074989
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】バンケ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドリング,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】モドロ,ジュリアン
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0360033(US,A1)
【文献】国際公開第2016/029226(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/025226(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0226138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224752(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100378(US,A1)
【文献】特表2011-502576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティングデバイスにおいて実行されると局所刺激方法を実行させるためのプログラムコードの命令を有する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記局所刺激方法は、少なくともGABA作動性タイプのニューロンを含む脳組織の所定領域を局所的に刺激し、刺激された前記脳組織の特性を明らかにする方法であり、
主要ステップ群として、
一組の双極電極を用いて、第1の所定の電気的強度と0.5Hz~10Hzにある第1の所定の二相パルス周波数とによる第1の所定の電場をもたらすことにより、所定数の第1アクティベーションを行うステップであって、前記第1の所定の電場により前記GABA作動性タイプのニューロンの活性化が誘発される、ステップと、
前記第1アクティベーションの各々の後に同アクティベーションに対する前記脳組織の反応を記録するステップであって、前記所定数の第1アクティベーションの組により前記所定数の反応がもたらされる、ステップと、
複数の、記録された前記所定数の反応に基づいて、前記脳組織のGABA作動性タイプのニューロンの興奮性を評価する特性評価のステップと
を含み、
前記特性評価のステップは、
前記所定数の反応に応じ前記脳組織の少なくとも1つの部分領域に関する、0から1の値を有する神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)を計算するステップであって、前記NNEIは前記反応の位相コヒーレンスを定量化したものである、ステップと、
前記脳組織の前記少なくとも1つの部分領域に関するNNEIの値が0.5を上回る場合に、1kHzの第2の所定の二相パルス周波数による所定数の第2アクティベーションの組が行われるステップと
を含み、
前記NNEIの計算は、
NNEI=1-PCI(f)により行われ、
前記第1アクティベーションの際に記録された反応に含まれる局所電場電位信号を複数の反応時期(s)に分割するステップと、
前記複数の反応時期()の各々に高速フーリエ変換を適用し、前記複数の反応時期(s)の各々の周波数成分の振幅及び位相の両方を複素数値の係数(Z)として得るステップと、
前記第1の所定の二相パルス周波数(f)の各々について、前記反応時期(につき、その大きさによって正規化された前記複素数値の係数の平均として、位相クラスタリング指標(PCI)が
【数1】
により計算されるステップと
を含む、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記第1アクティベーション及び前記第2アクティベーションの少なくともいずれかの持続時間が3分~7分にわたって続く、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記所定数の反応の数が300である、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
少なくともGABA作動性タイプのニューロンを含む脳組織の所定領域を刺激する局所刺激デバイスであって、
プロセッサと、
前記プロセッサにより計算されると前記局所刺激デバイスに対し処理を実行させる命令が保存された非一時的なコンピュータ可読媒体と
を備え、
前記処理は、
一組の双極電極を用いて、第1の所定の電気的強度と0.5Hz~10Hzにある第1の所定の二相パルス周波数とによる第1の所定の電場をもたらすことにより、所定数の第1アクティベーションを行うステップであって、前記第1の所定の電場により前記GABA作動性タイプのニューロンの活性化が誘発される、ステップと、
前記第1アクティベーションの各々の後に同アクティベーションに対する前記脳組織の反応を記録するステップであって、前記所定数の第1アクティベーションの組により前記所定数の反応がもたらされる、ステップと、
複数の、記録された前記所定数の反応に基づいて、前記脳組織のGABA作動性タイプのニューロンの興奮性を評価する特性評価のステップと
を含み、
前記特性評価のステップは、
前記所定数の反応に応じ前記脳組織の少なくとも1つの部分領域に関する、0から1の値を有する神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)を計算するステップであって、前記NNEIは前記反応の位相コヒーレンスを定量化したものである、ステップと、
前記脳組織の前記少なくとも1つの部分領域に関するNNEIの値が0.5を上回る場合に、1kHzの第2の所定の二相パルス周波数による所定数の第2アクティベーションの組が行われるステップと
を含み、
前記NNEIの計算は、
NNEI=1-PCI(f)により行われ、
前記第1アクティベーションの際に記録された反応に含まれる局所電場電位信号を複数の反応時期(s)に分割するステップと、
前記複数の反応時期()の各々に高速フーリエ変換を適用し、前記複数の反応時期(s)の各々の周波数成分の振幅及び位相の両方を複素数値の係数(Z)として得るステップと、
前記第1の所定の二相パルス周波数(f)の各々について、前記反応時期(につき、その大きさによって正規化された前記複素数値の係数の平均として、位相クラスタリング指標(PCI)が
【数2】
により計算されるステップと
を含む、
局所刺激デバイス。
【請求項5】
前記主要ステップ群の前に、前記第1の所定の電気的強度を求めるための準備ステップ群が行われ、
前記準備ステップ群は、
準備刺激パルスの組を生じさせるステップであって、前記準備刺激パルスの組は前記脳組織の所定領域に出力され、前記準備刺激パルスの強度が徐々に増加する、ステップと、
前記準備刺激パルスの各々に対する局所電場電位(LFP)の反応を記録するステップと、
前記LFPの反応の分析に基づき最適な強度の範囲を評価するステップであって、前記LFPの信号が負の偏差を示す場合に前記準備刺激パルスの強度が最適な状態にある、ステップと、
前記最適な強度の範囲を有する少なくとも1つの前記第1の所定の電気的強度を選択するステップと
を含む、
請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記主要ステップ群における前記所定数の反応の数が100から500である、請求項5に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記主要ステップ群における前記所定数の反応の数が300である、請求項6に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技法は脳組織刺激の分野に関する。より具体的には、本技法は、脳組織内の特定のタ
イプのニューロンの刺激の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の脳の完全な理解は、科学における最も大きな難題のうちの1つである。その理解
の成功は、日々の生活の大きな改善につながることになり、中でも、新たなコンピューテ
ィング技術と併せて脳疾患に関する新たな治療につながることになる。脳は情報を受け取
り、処理し、記憶し、及び引き出すことができる。これは、シナプスと呼ばれるインター
フェース(接合部)を介して互いに情報伝達する、ニューロンのネットワークによってか
なりの程度まで行われる。さまざまな神経伝達物質がシナプスのレベルにおいて電気的な
刺激(impulsion)の伝達を引き起こす。かかる神経伝達物質は、興奮性(ニューロン活
動を促進する)か、又は抑制性(ニューロン活動を減少させる)の場合がある。
【0003】
哺乳類の脳では、全てのニューロンネットワークが、相互接続される興奮性ニューロン
(神経伝達物質としてグルタミン酸を用いる)及び抑制性ニューロン(神経伝達物質とし
て、GABAすなわちガンマ-アミノ酪酸を用いる)を特徴づける。ネットワークが生理
学的に機能するには、興奮と抑制との動的な均衡が求められる。一時的な過剰興奮性(す
なわち、興奮と抑制との比が正)は、生理的なもの(学習、知覚、記憶・・・)である場
合がある。しかし、シナプス抑制障害に起因する過剰で長期にわたる興奮性は、いくつか
の神経疾患に対する原因となる。したがって、GABA作動性ニューロンの生理的反応を
評価することは、ネットワーク興奮性のレベルを定量化し、組織が健康であるか、過剰興
奮性(障害のあるGABA作動性反応)であるかを判断する1つの方法である。それゆえ
、GABA作動性ニューロンの誘発反応を記録できるようにする解決策を提供することが
望ましい。
【0004】
脳組織興奮性のレベルを評価するために、従来技術の解決策が既に提案されていること
に留意されたい。しかし、これらの解決策は、GABA作動性ニューロンのみを刺激する
ことはできない。これは、例えば、特許文献1において提案される方法及びデバイスの事
例である。この特許文献1において提案される方法はてんかん治療に関するという事実の
中で、この方法は、GABA作動性ニューロンの活動のみを記録することはできない。実
際には、提案されている方法(及び電極)は、所与のエリア内の全ての細胞を刺激するも
のであり、これは、かかるGABA作動性ニューロンの機能を観察し、記録しようとする
ときに望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2331192 A1号
【発明の概要】
【0006】
ここで提案される技法は、従来技術の刺激解決策のこれらの短所を有しない。提案され
る技法は、GABA作動性ニューロン活動を選択的に記録できるようにする。提案される
技法は、錐体ニューロンからの反応を避けることによって、GABA作動性ニューロンの
機能を捉えるために用いることができる。
【0007】
より具体的には、GABA作動性ニューロンを刺激する方法及びデバイスが提案される
。本技法によれば、この方法は、所定の強度、周波数及びパルス長における一組の双極電
極のアクティベーションの複数回のステップを含み、所定の電場がもたらされ、該所定の
電場は上記GABA作動性ニューロンの活性化と、上記神経組織の他のタイプのニューロ
ンの最小限の活性化とを誘発する。
【0008】
本発明は、より具体的には、脳組織の所定の領域の局所刺激方法であって、上記脳組織
は少なくとも1つのGABA作動性ニューロンタイプを含む、局所刺激方法に関する。本
発明によれば、該方法は、所定の電気的強度及び所定の二相パルス周波数による、一組の
双極電極の少なくとも1つのアクティベーションステップを含み、所定の電場がもたらさ
れ、該所定の電場は上記GABA作動性タイプニューロンの活性化及び他のタイプのニュ
ーロンの活性化の実質上の欠如を誘発する。
【0009】
したがって、提案される方法は、双極電極の陽極と陰極との間に所定の電場(電位の空
間的勾配である)をもたらしながら、あるタイプのニューロン、すなわち、GABA作動
性ニューロンを特に刺激できるようにする。
【0010】
特定の特徴によれば、上記一組の双極電極のアクティベーションは、該双極電極に、二
相パルスを送ることを含み、各二相パルスは、約200マイクロ秒にわたって継続する。
【0011】
特定の特徴によれば、上記所定の双極パルス周波数は0.5Hz~10Hzを含む。
【0012】
特定の特徴によれば、上記所定の双極パルス周波数は約1kHzである。
【0013】
特定の実施形態によれば、少なくとも1回のアクティベーションステップの後に記録ス
テップが続き、この記録ステップにおいて、上記一組の双極電極の上記アクティベーショ
ンに対する脳組織の反応が記録される。
【0014】
特定の実施形態によれば、本方法は、それまでに記録された複数の反応に基づいて、神
経ネットワーク興奮性指標(Neural Network Excitability Index)が計算される少なく
とも1回の計算ステップを含む。
【0015】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1回の計算ステップは、
周期的なパルス刺激の際に記録された反応(RESP)に含まれるLFP信号を複数の
反応時期sに分割することと、
各時期sに、高速フーリエ変換(FFT)を適用し、その周波数成分の振幅及び位相の
両方を複素数値係数として得ることと、
各刺激周波数fにおいて、複数の時期にわたる、その大きさによって正規化されたこれ
らの複素係数の平均として、位相クラスタリング指標(Phase Clustering Index, PCI
)が
【数1】
のように計算されることと、
NNEI=1-PCI(f)によって、上記神経ネットワーク興奮性指標(NNEI
)を得ることと
を含む。
【0016】
特定の実施形態によれば、アクティベーションステップの持続時間は3分~7分にわた
って継続する。
【0017】
特定の実施形態によれば、上記一組の双極電極の約300回のアクティベーションステ
ップが実行され、各アクティベーションステップの後に記録ステップが続き、この記録ス
テップにおいて、上記一組の双極電極の先行するアクティベーションに対する脳組織の反
応が記録される。
【0018】
特定の実施形態によれば、本方法は、
所定の数のアクティベーションステップの組であって、各アクティベーションステップ
の後に記録ステップが続き、この記録ステップにおいて、上記一組の双極電極のアクティ
ベーションに対する脳組織の反応が記録され、上記所定の双極パルス周波数は0.5Hz
~10Hzを含み、上記所定数の反応の組が得られる、所定の数のアクティベーションス
テップと、
上記反応の組に応じた、上記脳組織の少なくとも1つの小領域に対する、神経ネットワ
ーク興奮性指標の計算ステップと、
上記脳組織の上記少なくとも1つの小領域に対する上記神経ネットワーク興奮性指標の
値が0.5より大きいときに、所定の数のアクティベーションステップの組と
を含み、上記所定の双極パルス周波数は約1kHzである。
【0019】
また、本発明は刺激デバイスに関する。そのようなデバイスは、先行する実施形態の任
意の組み合わせを適用するために必要な手段を備える。
【0020】
本技法によれば、このデバイスは、一組の双極電極に対して所定の強度及び所定の周波
数において電流を繰り返し送り、所定の電流を(上記電極の組の各双極電極の陽極と陰極
との間に)送るための電子回路、メモリ及びプロセッサを備え、上記所定の電流値は、上
記GABA作動性ニューロンの活性化と、上記神経組織の他のニューロンタイプの最小限
の活性化とを誘発するものである。
【0021】
一実施形態によれば、そのデバイスは、上記一組の双極電極への電流の送出の少なくと
も一度の繰り返し後に、上記GABA作動性ニューロンの活動を記録する手段も備える。
【0022】
好ましい実施態様によれば、本発明による方法の種々のステップは、本発明による刺激
及び記録デバイスのデータプロセッサによって実行され、方法の種々のステップの実行を
指示するように設計されるソフトウェア命令を含む、1つ以上のソフトウェアプログラム
又はコンピュータプログラムによって実施される。
【0023】
結果として、本発明はまた、コンピュータ又はデータプロセッサによって実行すること
ができるプロセッサに関連し、このプログラムは、本明細書において上記で言及されたよ
うな方法のステップの実行を指示する命令を含む。
【0024】
このプログラムは、いずれにしても任意のプログラミング言語を使用することができ、
ソースコードの形をとるか、オブジェクトコードの形をとるか、若しくは部分的にコンパ
イルされた形のような、ソースコードとオブジェクトコードとの間の中間コードの形をと
るか、又は任意の他の所望の形をとることができる。
【0025】
また、本発明は、データプロセッサによって読取り可能であり、本明細書において上記
で言及されたようなプログラムの命令を含む情報担体を提供することを目的とする。
【0026】
その情報担体は、プログラムを記憶することができる任意のエンティティ又はデバイス
とすることができる。例えば、担体は、ROM、例えばCD ROM若しくは超小型電子
回路ROM、又は再び磁気記録手段、例えば、フロッピーディスク若しくはハードディス
クドライブ等の記憶手段を含むことができる。
【0027】
さらに、情報担体は、電線若しくは光ケーブルを介して、無線通信によって、又は他の
手段によって搬送することができる、電気信号又は光信号等の伝送可能担体とすることが
できる。本発明によるプログラムは特に、インターネットタイプのネットワークからダウ
ンロードすることができる。
【0028】
代替形態として、情報担体は、プログラムがその中に組み込まれる集積回路とすること
ができ、その回路は、当該方法を実行するように、又は当該方法の実行において使用され
るように構成される。
【0029】
一実施形態によれば、本発明は、ソフトウェア及び/又はハードウェア構成要素によっ
て実現される。この点において、本明細書における「モジュール」という用語は、ソフト
ウェア構成要素と同様に、ハードウェア構成要素に、又はハードウェア若しくはソフトウ
ェア構成要素の組にも対応することができる。
【0030】
ソフトウェア構成要素は、1つ以上のコンピュータプログラム若しくはプログラムのい
くつかのサブプログラムに対応するか、又はより一般的には、関連するモジュールに関し
て本明細書において上記で説明されたものに従って、機能若しくは機能の組を実施するこ
とができるプログラム若しくはソフトウェアパッケージの任意の要素に対応する。そのよ
うなソフトウェア構成要素は、物理的エンティティ(端末、サーバ、ゲートウェイ、ルー
タ等)のデータプロセッサによって実行され、この物理的エンティティのハードウェアリ
ソース(メモリ、記録媒体、通信バス、入力/出力電子ボード、ユーザインターフェース
等)にアクセスすることができる。
【0031】
同様に、ハードウェア構成要素は、関連するモジュールに関して本明細書において以下
に説明されるものに従って、機能又は機能の組を実施することができるハードウェアアセ
ンブリの任意の要素に対応する。ハードウェア構成要素は、プログラマブルハードウェア
構成要素、又は、ソフトウェアを実行するための内蔵プロセッサを備える構成要素、例え
ば、集積回路、スマートカード、メモリカード、ファームウェアを実行するための電子カ
ード等とすることができる。
【0032】
本明細書において上記で説明された方法及び装置の各構成要素は必然的に、自らのソフ
トウェアモジュールを実現する。本明細書において上記で言及された種々の実施形態は、
本発明を実施するために互いに組み合わせることができる。
【0033】
特許請求の範囲によって定められるような保護の範囲を限定することなく、提案される
方法及びデバイスを添付の図面に関連して例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態による刺激方法の図である。
図2】本発明の特定の特徴による補完的な刺激調整方法を示す図である。
図3】本発明の方法を実施する特定のデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1 包括的説明
既に説明したように、提案される方法は、双極電極を用いて行われる脳組織の局所刺激
に関する。提案される方法において、重要な要素は電場の分布及び値であり、刺激強度で
はない。すなわち、実際に、接点間の距離とともに、接点の配置が電場分布における決定
的な要因である。提案される方法において最も重要なことは、電極設計の物理的パラメー
タを統合し、統合されたパラメータを考慮して、所定の電場を与えることである。所定の
電場は、刺激中に測定される電位の値に依存する。
【0036】
生物物理学的な観点から、ニューロンの膜電位に影響を及ぼすのは電場であり、刺激電
流は直接影響を及ぼさない。それゆえ、刺激強度自体は、ニューロン活性化に関して無意
味である。
【0037】
開示される実施形態において、2つのタイプの刺激が提案される。これら2つのタイプ
の刺激は、主に、刺激時に加えられる(二相パルスの)周波数(「二相パルス周波数」と
も呼ばれる)によって異なる。第1の場合においては、(0.5Hz~10Hzを含む)
低い周波数が使用される。第2の場合においては、(比較的)高い周波数が使用される(
約1Khz)。
【0038】
いずれの場合も、例えば、マウス内の脳内電極によって誘発される等価in situ
電場を計算し、ヒト脳組織内に相当する電場を誘発するために必要とされる刺激電流を評
価することによって、最適な強度範囲をカイニン酸マウス脳組織からヒト脳組織へと変換
することができる。
【0039】
これは、刺激接点のそれぞれによって誘発される電位を計算し、重ね合わせの原理を適
用して、空間内の各点における等価電位を計算することによって行うことができる。その
後、電位の空間的勾配の逆数(opposite)として電場が計算される。マウス及びヒトの海
馬ニューロンはサイズ及び神経生理学的特性が酷似しており、いずれも、印加される電場
に対して神経生理学的反応(例えば、膜分極)を引き起こすため、マウスとヒトとの間の
かかる電場値の変換を用いることができる。
【0040】
脳内には2つの主なタイプ、すなわち、興奮性及び抑制性のニューロンが存在する。興
奮性ニューロン(錐体)は、その神経伝達物質として主にグルタミン酸を使用し、軸索を
伸ばしたニューロンの活動を増加させることができる。その一方で、抑制性ニューロン(
通常、その神経伝達物質としてGABAを使用する)は、軸索を伸ばしたニューロンの活
動を減少させることになる。生理学的状況において、興奮と抑制との間に均衡がある。G
ABA作動性ニューロンの調節不全は、興奮性プロセスと抑制性プロセスとの間の不均衡
につながる。特定のタイプのニューロンからのみ到来する信号を記録することは困難な場
合がある。そのような記録は、間接的なプロセスを用いて、すなわち、例えば、信号全体
を測定し、その後、既知の信号を「差し引く」ことによって得ることができる。これが、
提案される技法の数多くの適用例のうちの1つである。
【0041】
したがって、組織興奮性のレベルに関するウインドウを設けて、興奮性ニューロン又は
抑制性ニューロンのいずれかを特異的に活性化することが興味深い。提案される技法にお
いて、本発明者らは、これらのGABA作動性ニューロンが、特定の形態学的特性(伸長
した軸索枝)及び電気生理学的特性(より脱分極した静止膜電位、より高い入力抵抗)を
有し、それにより、強度の低い電気的刺激を受けて、より放電しやすくなるという事実を
利用する。
【0042】
提案される技法を図1に関連して示す。一般的に、提案される技法は、脳組織の所定領
域の局所刺激方法に関する。この脳組織は少なくともGABA作動性(GABAergic)ニュ
ーロンタイプを含む。本方法は、所定の電気的強度(predetermined electric intensity
, PEI)と所定の二相パルス周波数(predetermined biphasic pulse frequency, PB
PF)とによる一組の双極電極(set of bipolar electrodes, SBE)の少なくとも1
つのアクティベーションステップ(10)を含み、電場(及び/又は電場分布(PEF)
)を誘発する。この電場(及び/又は電場分布(PEF))は、GABA作動性タイプニ
ューロンの活性化及び他のタイプのニューロンの最小限の活性化を誘発する。「最小限の
活性化」という用語は、「他のタイプのニューロンの刺激がほとんどない」ことを表すシ
ンプルで、簡潔な方法である。ニューロンのサイズ及び電極のサイズを考えると、電極は
ニューロンよりはるかに大きいため、脳組織内の特定のニューロンをターゲットとするこ
とは難しいことが知られている。したがって、脳組織を刺激する際に、数多くのタイプの
ニューロンが刺激される可能性があることも知られている。本発明の目的は、これまでに
述べたことを考慮して、(所定の電場(PEF)及び/又は所定の電場分布をもたらす結
果として)「他のタイプのニューロンの活性化がほとんどない」ようにする方法を提供す
ることである。しかし、当然、電極が十分に小さい場合には、最小限の活性化というもの
は活性化が全くないというものになるであろう。
【0043】
特定の特徴によれば、上記一組の双極電極のアクティベーションは、該双極電極に二相
パルスを送ることを含む。各二相パルスは、約200マイクロ秒にわたって継続する。
【0044】
特定の特徴によれば、少なくとも1回のアクティベーションステップ(10)の後に記
録ステップ(20)が続く。この記録ステップでは、上記一組の双極電極のアクティベー
ションに対する脳組織の反応(RESP)が記録される。
【0045】
包括的な実施形態において、複数のアクティベーションのうちの各アクティベーション
(10)の後に1回の記録(20)が続く。アクティベーションは、所定の持続時間(3
分~7分、例えば、5分)にわたって継続し、得られた信号の測定値に関する記録が行わ
れる。刺激の目的に照らして、所定数のアクティベーション(10)及び記録(20)が
行われる。
【0046】
別の実施形態において、数回のシミュレーション(10)の後に一度の記録(20)を
行うことができる。この実施形態は、例えば、数回の刺激列の効果をモニタするのに有用
である可能性があり、テスト対象の脳組織が記録デバイス又はシステムに接続されたまま
である必要はない。これはまた、脳組織の興奮性の経時的変動を理解しようとするのに有
用な場合がある。
【0047】
そして、神経ネットワーク興奮性指標(Neural Network Excitability Index, NNE
I)を計算するために、刺激後(アクティベーション後)に記録される種々の反応を計算
することができる。この指標は、刺激下にある脳組織を特徴付けるために使用される場合
がある。そのような指標は、その後、種々の作業において使用される場合がある。
【0048】
特定の実施形態によれば、提案される方法は2度使用される。より具体的には、この実
施形態において、本方法は、
上記一組の双極電極のアクティベーション(10)に対する脳組織の反応(RESP)
が記録される記録ステップ(20)が続き、上記所定の双極パルス周波数(predetermine
d bipolar pulse frequency, PBPF)は0.5Hz~10Hzを含み、上記所定数の
応答(RESP)の組を送り、
上記応答(RESP)の組に応じて、上記脳組織の少なくとも1つの小領域に関する神
経ネットワーク興奮性指標(NNEI)を計算するステップと、
上記脳組織の少なくとも1つの小領域についての上記神経ネットワーク興奮性指標(N
NEI)の値が0.5より大きいときに、所定の数のアクティベーションステップ(10
)の組であって、上記所定の双極パルス周波数(PBPF)は約1kHzである、ステッ
プの組と
を含む。
【0049】
2 第1の実施形態の説明
この第1の実施形態において、比較的低い二相パルス周波数(0.5Hz~10Hz)
における、提案される方法の一例が開示される。
【0050】
本方法のこの実施形態において、その目的は、所与の数の刺激後誘発反応を得ること(
記録すること)(すなわち、刺激直後の信号を取得し、記録すること)である。この実施
形態において、1分~5分にわたって継続する低強度の電気的刺激列が用いられる。
【0051】
GABA作動性介在ニューロンを選択的に活性化するために、マウス脳組織内の400
マイクロメートルだけ離間された脳内双極電極と、120マイクロメートルの接点径とを
用いて、約1.2マイクロアンペアほど、強度が徐々に調整される。組織ごとに組織特性
は異なる場合があるので、所与のパラメータを用いて1.2マイクロアンペアの値を直接
使用することは適していない場合がある。双極電極及び接点の配置に応じて、その値は他
のパラメータの場合に異なることがある。
【0052】
本方法は、組織内に電極を埋め込むことを対象としないため、外科的方法ではないこと
に留意されたい。その代わりに、脳組織内に既に埋め込まれている双極電極が使用される
【0053】
ヒト脳組織において、使用される強度は約0.3ミリアンペアである(ステレオ脳波記
録法(sEEG:stereoelectroencephalography)頭蓋内電極が使用され、1.5mmだ
け離間された、高さ2mm、直径0.8mmの接点を備える特定の場合)。
【0054】
全ての場合に(マウス脳組織、ヒト脳組織)、全二相パルス幅は200マイクロ秒(位
相あたり100マイクロ秒)である。二相パルス周波数は0.5Hz~10Hzを含み、
GABA作動性ニューロンの反応に適合する。すなわち、これより高い周波数では、各刺
激パルスに対する系統的反応をトリガすることができない。特定の事例では、最適な刺激
強度を設定するのを支援するために、頭蓋内EEG(LFPすなわち局所電場電位(loca
l field potential))が同時に記録される。
【0055】
図2に関連して説明されるこの実施形態において、所与のパラメータ(すなわち、電極
)を考慮して、そして対象である脳組織を考慮して正確な強度を求めるために、以下の方
法が適用される。
・刺激パルスの強度(EI)を徐々に増加させ(P01)、その間、各パルスに対する
LFP反応が記録され(P02)、その後、電場(EF)が誘発される。
・LFP反応に基づいて、最適な強度範囲(OIR)が以下のように数値計算される(
P03)。最適な強度範囲において、各刺激パルスが刺激後抑制性反応(LFP信号にお
ける負の偏差)を系統的にトリガし、より低い強度値の場合、刺激後抑制性反応がトリガ
されないか、又は系統的にトリガされず、より高い強度値の場合、グルタミン酸作動性(
興奮性)ニューロンも補充され、純粋な刺激後抑制性反応が消失するので、LFP信号内
の負の偏差は、加えられた強度(IE)が範囲内にあることを意味する。
・最適な強度範囲(OIR)が数値計算されると、使用可能な刺激後反応の所定の数の
反応(RESP)について取得するために、約2、3分の持続時間にわたって刺激列が送
られる。これは、刺激後反応を得るための、図1に関連して提示された記録方法に対応し
、最適な強度範囲(OIR)のいくつかの強度値が所定の電気的強度(PEI)として使
用され、刺激後反応はまた、LFP反応である(これは、同じ種類の反応である)。
【0056】
所定の数の反応(RESP)は、使用可能な統計的指標を導出するのに十分でなければ
ならない。所定の数は100~500を含むことができ、平均の使用可能な数は約300
である(すなわち、取得するのに長すぎない)。
【0057】
これらの反応は記録され、それ自体において、脳組織興奮性を特徴付けるために使用す
ることができる。そのような特徴付けの一例は以下の通りである。
・刺激後誘発反応(約300)を用いて、0~1の値を有する指標(NNEI:「神経
ネットワーク興奮性指標」)を計算する。この指標は、記録された反応の位相コヒーレン
スを定量化する。指標を得る方法は上記で説明したとおりである。
・0に近いNNEI値は、弱い興奮性である組織を特徴付け、高いNNEI値(例えば
、0.5以上)は、高い興奮性の組織を特徴付ける。
【0058】
2.1 神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)の計算
NNEIは、信号の中の位相類似性を測定する正規化された量(0から1の範囲に及ぶ
)である。これは、信号内に存在する振動性成分の振幅及び位相の両方を与えるフーリエ
変換(FT)から導かれる。実際には、NNEI計算は3つのステップを伴う。
・周期的なパルス刺激中に記録された反応(RESP)に含まれるLFP信号を複数の
反応時期sに分割する、
・各時期sに、高速フーリエ変換(FFT)を適用し、その周波数成分の振幅及び位相
の両方を複素数値係数として生成する、
・各刺激周波数fにおいて、複数の時期にわたる、その大きさによって正規化されたこ
れらの複素係数の平均として、位相クラスタリング指標(PCI)が計算される。
【数2】
・NNEI=1-PCI(f)によって、上記神経ネットワーク興奮性指標(NNE
I)を得る。
【0059】
実際には、PCI(f)はランダムに分布した位相の場合に0に近く、コヒーレント位
相の場合に1に近い。最後に、PCI(fs)から、興奮性レベルに一致する指標を導く
ために、NNEIはNNEI=1-PCI(f)によって定められる。ただし、f
、刺激周波数を示す。NNEIは、刺激強度が適切に調整されるという条件で、低い興奮
性レベルにおいて低い値を示し、その場合、(刺激列の各パルスに時間同期した)LFP
誘発反応は類似の時間経過を有し、また、高い興奮性レベルにおいて高い値を示し、その
場合、LFPは不規則な時間経過を有する。
【0060】
2.2 最適な刺激強度を得るための統計的検定
最適な強度値は、刺激誘発LFP反応間の相互相関が有意になり、それゆえ、帰無仮説
【数3】
を棄却できる強度に対応する。提案される検定は、誘発反応X及びYの任意の対iに関す
る線形相関係数の値
【数4】
の計算から開始する。
【数5】
の対数変換が導入される。
【数6】
【0061】
得られた確率変数γは、帰無仮説
【数7】
下で平均が
【数8】
であり、分散が
【数9】
である正規分布であることを示すことができ、ただし、mは誘発LFP反応のサイズ(サ
ンプル数)である。
【0062】
n個のパルスの刺激列から記録される誘発反応の
【数10】
個の対にわたるγ値の和Γ(簡単にするために、独立していると見なされる)もガウス
分布である。
【数11】
【0063】
したがって、誘発反応間に相関がないという仮説に関する(1-p)信頼度における採
択域は、
【数12】
によって与えられる。ただし、zは正規化された変数である。区間[-2.576,+2
.576]の外側の値が、99%信頼度において誘発反応間に相関があるという証拠を構
成することになる(p値=0.01、z0.005=-2.576)。
【0064】
NNEIの変化は、3つの興奮性状態(低、中及び高)、及び3つの刺激強度値(最適
値、最適値を3で割った値及び最適値の3倍の値)の場合にシミュレートされたLFPか
ら計算される。最適なI値(1.5a.u)は、w=2.6に対応する(すなわち、統計
的閾値2.576より少し高い)値であった。示されるように、この正確な強度の場合、
NNEIは、3つの興奮性状態を実効的に区別することができる。対照的に、強度が低す
ぎる(w≪2.576)か、又は高すぎる(w≫2.576)とき、NNEI値は、その
モデルにおいて興奮性レベルを示さない。
【0065】
3 第2の実施形態の説明
本方法のこの実施形態において、その目的は、所与の数の刺激後反応を取得すること(
記録すること)(すなわち、刺激後の信号を取得し、その後、記録すること)である。こ
の実施形態において、NNEIより高い強度の列が、それぞれ数分(例えば、5分)にわ
たって継続する列の反復内にある。刺激列は、数分だけ分離される。周波数は約1000
Hzであり、信号内に存在するマーカ(例えば、マウスにおける海馬発作波(HPD:hi
ppocampal paroxysmal discharges)、それは、興奮性が高くなるときに、より頻繁にな
り/持続時間が長くなる)の数を削減するために最適化される。
【0066】
著しく低い刺激周波数(例えば、100Hz)の場合、HPDの著しい減少は観測され
ない。パルス幅は、先行する実施形態と同様に、200マイクロ秒である(二相パルスの
全幅、位相ごとに100マイクロ秒)。
【0067】
この実施形態において、刺激の効率を定量化するために、マーカのタイプが選択される
。マーカは、例えば、(カイニン酸)マウス内の海馬発作波(HPD)とすることができ
る。
【0068】
信号内に存在するマーカの数によって定量化されるような、刺激効率を評価するために
、EEG(例えば、頭蓋内EEG(LFP))が同時に記録される。
【0069】
使用される強度は、マウス内の400マイクロメートルだけ離間された脳内双極電極(
撚線)及び120マイクロメートルの接点径の場合に5マイクロアンペア以上とすること
ができる(カイニン酸マウス内の10マイクロアンペア~20マイクロアンペアの強度値
の場合に著しいHPD減少が観測された)。
【0070】
この実施形態において、所与のパラメータ(例えば、電極)を考慮して、そして研究対
象である脳組織を考慮して正確な強度を得るために、以下の方法が適用される。
・刺激の強度を2~3ブロックごとに(例えば、2ブロックごとに)徐々に増加させて
、その間、2つの刺激パルス間のEEGが記録される。
・HPDの数が、(刺激ブロック間の)EEG記録ブロックごとに定量化される(単位
時間あたりのHPDの数)。
以下の刺激結果が得られる。
・最適な強度範囲において、刺激強度を増加させるとHPD速度が低下する。最適な強
度範囲の外側では、HPD速度の値は刺激によって変更されないか、増加する場合もある

・正確な刺激極性では、HPD速度の値は減少し、一方、他方の刺激極性では、マーカ
の発生率が増加する(例えば、単位時間あたりのスパイク又はHPDの数が増加する)可
能性がある。それゆえ、これは、マーカの数が増加する領域の過剰興奮性を探索する方法
として使用することもできる。
【0071】
4 対応するデバイスの説明
別の実施形態において、提案される技法はデバイスにも関連する。そのデバイスは、上
記の方法が使用されるときに生じる刺激効果を記録するために、in situで使用す
ることができる。より一般的には、デバイスは、上記の方法を実施するために必要な手段
を備える。典型的な例は、患者において上記の方法を使用することであり、該患者は頭蓋
内電極を既に埋め込まれている。従来の環境(例えば、病院の外部)において刺激の効果
を記録することへの関心が生じる場合がある。提案されるデバイスは、その際、電極に接
続することができ、要求される結果を考慮して、所定の方式、例えば、低い周波数の二相
パルスを使用する方式(方法の第1の実施形態)又は高い周波数の二相パルスを使用する
方式(方法の第2の実施形態)又は両方の方法の1つ以上の繰り返しを実施する方式に応
じて、刺激衝撃を電極に伝達するために使用することができる。したがって、そのデバイ
スはウェアラブルとすることができる。そのデバイスは図3に関連して説明される。
【0072】
具体的には、このタイプのデバイス(DRS)は、メモリ(M)に接続されるプロセッ
サ(P)を備える。このメモリは、提案される方法に従って、電気的刺激を送り込むため
の命令の少なくとも1つの組を含む。プロセッサは、少なくとも1つの電流供給モジュー
ル(CDM)への接続を備えている。電流供給モジュール(CDM)は、患者に既に設置
されている頭蓋内電極(IE)に接続可能である。プロセッサ(P)、回路、電流供給モ
ジュール(CDM)及びデバイスの他の構成要素は、電源(PS)に接続される。電源(
PS)は、内部電池又は外部電池の形をとることができる。電池は、例えば、デバイスの
構成要素が機能するのに適した電流を供給することができる、イオンポリマー電池等であ
る。
【0073】
また、デバイスは、付加機能を実施するための複数のインターフェース(InFs)を
備えることもできる。したがって、そのデバイスは、少なくとも1つの記録デバイス又は
システムに接続される第1の通信インターフェース(CI)を備えることができる。この
第1の通信インターフェース(CI)は2つの機能を有することができる。第1の機能は
、記録デバイスに、刺激のパラメータに関連するデータを送信することである。これは、
記録デバイスがこれらのパラメータに応じて自らを較正する必要があるときに有用である
可能性がある。第2の機能は、記録デバイスから、記録されたデータを受信することであ
る。例えば、記録デバイスがEEGヘルメットであるとき、記録デバイスは、記録された
データを別のデバイスに送信することが必要な場合がある。それゆえ、刺激デバイスは、
記録ユニットの役割を果たすことができる。これは、例えば、スタンドアローンの実施態
様の場合に有用である。その際、患者は特定の場所に属する必要はなく、自律的なままで
ある。そのような事例では、その際、インターフェースが、記録デバイスによって必要と
される電流を供給するための電力供給源も備えると考えることができる。
【0074】
また、そのデバイスは、1つ又は2つのマスストレージインターフェース(MSI#1
、MSI#2)を備えることができる。これらのインターフェースは、いくつかの目的の
ために使用することができる。第1のインターフェース(MSI#1)は、外部記録デバ
イスを使用すること、又は内蔵記録デバイスを使用することのいずれかによって、自ら刺
激を記録する。第2のインターフェース(MSI#2)は、例えば、マイクロコードプロ
グラムを更新することによって、又は新たなパラメータを含むファイルを送信することに
よって、デバイスが新たな刺激パラメータを受信できるようにする。
【0075】
そのデバイスは画面(SCR)を備えることもできる。この画面は、電源(例えば、電
池)の状態及び刺激の種々のパラメータを確認するのに適している場合がある。そのデバ
イスは、外部記録デバイス又はシステム(EEGヘルメット等)にリンクされるときに、
記録命令を記録デバイスに送信する手段も備える。これらの手段は、例えば、シリアルイ
ンターフェース又はUSBインターフェースである。これらの命令は、例えば、1つ又は
いくつかの刺激列後に得られた信号を記録するために、刺激列の最後(刺激期間の最後)
に送信される。また、そのデバイスは、記録デバイスによって受信された信号を解析する
手段も備える。これに関連して、そのデバイスは、例えば、神経ネットワーク興奮性指標
(NNEI)、又は信号内に存在するマーカの数を計算するために、受信された信号を処
理する手段も備えることができる。これらの手段は、専用プロセッサの形をとることがで
きる。画面(SCR)は、その際、指標又はマーカを表示するために使用することができ
る。
【0076】
それらの手段は、上記の方法を実施するためのハードウェア又はソフトウェアモジュー
ルを備える、プロセッサによって駆動される(又はプロセッサに含まれる)。
【0077】
さらに、そのデバイスは、通信インターフェース(CI)にリンクされる通信手段を備
えることもできる。これらの手段は、WiFi又はBluetooth(登録商標)(l
ow energy)モジュールの形をとることができる。これらの手段の目的は、例え
ば、スマートフォン又はタブレット又はサーバの場合がある別のデバイスと通信するのを
可能にすることである。その際、結果の解析、又は指標及び/又はマーカの計算は、他の
デバイスによって行うことができる。これはいくつかの利点を有する。その際、刺激デバ
イスは製造するのが安価になり、広範な状況において使用することができる。別の利点は
、刺激デバイスによって生成された種々のデータを記録するために他のデバイスの記憶空
間を使用できることである。別の利点は、デバイスをリモートで管理できることである。
【0078】
当然、そのデバイスは、提案される方法を実施するための全ての必要な手段を備える。
このために、脳組織の所定の領域を刺激する局所刺激デバイスが提案され、上記脳組織は
少なくともGABA作動性ニューロンタイプを含む。このデバイスは、所定の電気的強度
及び所定の二相パルス周波数(PBPF)による、一組の双極電極(SBE)のアクティ
ベーション手段(10)を備え、所定の電場を送り、該所定の電場(PEF)は、上記G
ABA作動性タイプニューロンの支配的な活性化を誘発する。
【0079】
特定の実施形態において、上記一組の双極電極のアクティベーション手段は、上記双極
電極に、二相パルスを送ることを含み、各二相パルスは、約200マイクロ秒にわたって
継続する。
【0080】
特定の実施形態において、上記所定の双極パルス周波数(PBPF)は0.5Hz~1
0Hzを含む。
【0081】
特定の実施形態において、上記所定の双極パルス周波数(PBPF)は約1kHzであ
る。
【0082】
特定の実施形態において、そのデバイスは、記録手段(20)を備え、その記録手段に
よって、アクティベーション手段による上記一組の双極電極の上記アクティベーション(
10)に対する脳組織の反応(RESP)が記録される。
【0083】
特定の実施形態において、そのデバイスは、上記記録手段によって以前に記録された複
数の反応(RESP)に基づいて、神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)を計算する
計算手段を備える。
【0084】
特定の実施形態において、計算手段は、
・周期的なパルス刺激中に記録された反応(RESP)に含まれるLFP信号を複数の
反応時期sに分割することと、
・各時期sに、高速フーリエ変換(FFT)を適用し、その周波数成分の振幅及び位相
の両方を複素数値係数として生成することと、
・各刺激周波数fにおいて、複数の時期にわたる、その大きさによって正規化されたこ
れらの複素係数の平均として、位相クラスタリング指標(PCI)が計算されることと、
【数13】
・NNEI=1-PCI(f)により上記神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)
を得ることと
を行う手段を備える。
【0085】
特定の実施形態において、アクティベーション手段は、アクティベーション手段のアク
ティベーションの持続時間が3分~7分にわたって継続するように構成される。
【0086】
特定の実施形態において、アクティベーション手段は、上記一組の双極電極の約300
回のアクティベーションを実行するように構成され、それぞれに後続して記録手段がアク
ティベートされ、上記一組の双極電極の先行するアクティベーションに対する脳組織の反
応が記録される。
【0087】
特定の実施形態において、上記デバイスは、
・上記一組の双極電極(SBE)の所定数のアクティベーション(10)の組を実行す
ることであって、各アクティベーション(10)後に、上記一組の双極電極の上記アクテ
ィベーション(10)に対する脳組織の反応(RESP)を記録する(20)記録手段を
使用し、上記所定の双極パルス周波数(PBPF)は0.5Hz~10Hzを含み、上記
所定の数の反応(RESP)の組を送る、実行することと、
・上記記録手段によって記録された上記反応(RESP)の組に応じて、上記脳組織の
少なくとも1つの小領域に関する神経ネットワーク興奮性指標(NNEI)を計算するこ
とと、
・上記脳組織の上記少なくとも1つ小領域に関する上記神経ネットワーク興奮性指標(
NNEI)の値が0.5より大きいときに、所定数のアクティベーションステップ(10
)の組を実行することであって、上記所定の双極パルス周波数(PBPF)は約1kHz
である、実行することと
を行う。
図1
図2
図3