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  • 特許-アッパーアーム用カバー 図1
  • 特許-アッパーアーム用カバー 図2
  • 特許-アッパーアーム用カバー 図3
  • 特許-アッパーアーム用カバー 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】アッパーアーム用カバー
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240318BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240318BHJP
【FI】
B25J19/00 H
B05B12/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023183804
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502089110
【氏名又は名称】株式会社星野商店
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 翔太
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3141165(JP,U)
【文献】特開2011-031365(JP,A)
【文献】実開昭57-021547(JP,U)
【文献】特許第4659786(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直多関節のアームを備えた塗装ロボットのアッパーアームに被せられる布製のアッパーアーム用カバーであって、
脱落防止手段として、孔縁が補強されたボタンホールを備え
前記ボタンホールを前記アッパーアームの表面から突出したいずれかのボルトの頭部に係止させることにより、前記アッパーアームが下向きとなったときに前記アッパーアーム用カバーが脱落することを防止したアッパーアーム用カバー。
【請求項2】
前記ボタンホールの周囲が当て布によって補強されている請求項1に記載のアッパーアーム用カバー。
【請求項3】
合成繊維糸をスムース編みまたは天竺編みした編地によって形成されている請求項1または2に記載のアッパーアーム用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直多関節のアームを備えた塗装ロボットのアッパーアームに被せられるアッパーアーム用カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の製造工程において、車体に塗料を吹き付けて塗装作業を行う塗装ロボットが用いられている。塗装作業中に飛散した塗料が塗装ロボットに付着すると、ワークへの塗料の垂れ落ちが生じるおそれがある。特に、アーム部分などは汚れやすいため保護の必要がある。
【0003】
そこで、従来、塗装ロボットに被せる布製の保護カバーが知られている。塗装ロボットに保護カバーを装着すれば、飛散した塗料を保護カバーが捕捉するため、塗装ロボットの汚れを防ぎ、ワークへの塗装不良を抑制する効果が得られる。
【0004】
特許文献1には、塗装作業ロボットに被せる保護カバーが記載されている。特許文献1の図3に示される保護カバーは、塗装作業ロボットアーム10の全体を1枚のカバーで覆うものである。このように、アーム全体を1枚のカバーで覆うタイプの製品は広く用いられている。しかし、このような保護カバーでは、例えばカバーの一部が汚れた場合であってもカバー全体を交換しなければならず、コスト面で問題がある。
【0005】
そこで、複数の大きさのパーツからなる保護カバーが提案されている。特許文献1の実施例4の保護カバーは、塗料噴射口付近を覆う先端保護カバー21と、中間部の可動部を覆う中間保護カバー24と、ボディー部を覆うボディー保護カバー26とを備えている。特許文献1の図10に示されるように、塗装作業ロボットのアッパーアームを中間保護カバー24が覆い、ロアアームをボディー保護カバー26が覆っている。このように、保護カバーが複数のパーツにより構成されていると、汚れが大きいパーツだけを適宜交換できるため好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4659786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、塗装ロボットのアームは、関節部の働きにより自在に動き、様々な方向を向いて複雑な動作を行う。アッパーアームとロアアームとで分割された保護カバーが用いられる場合、アッパーアームが下向きとなったときに、アッパーアームの一部を覆うカバーが塗装ガンの先端からワーク側へ脱落するおそれがある。保護カバーが塗装中のワークに落下すると製品不良や工程の遅れが生じる。
【0008】
特許文献1記載の発明では、保護カバーの端部を袋縫いして紐やゴムを入れることにより脱落を抑制している。しかし、アッパーアームは連続して大きな動作を行うため、例えば紐やゴムのずれ又はゆるみが生じるなどして、これらの従来の固定手段では脱落を防ぎきれない場合がある。特に、アッパーアームにプラカバーが取り付けられている場合は、アッパーアームの径が大幅に太くなり、保護カバーが脱落しやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、塗装ロボットからの脱落をより確実に抑制できる布製のアッパーアーム用カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、垂直多関節のアームを備えた塗装ロボットのアッパーアームに被せられる布製のアッパーアーム用カバーであって、脱落防止手段として、孔縁が補強されたボタンホールを備え、前記ボタンホールを前記アッパーアームの表面から突出したいずれかのボルトの頭部に係止させることにより、前記アッパーアームが下向きとなったときに前記アッパーアーム用カバーが脱落することを防止したアッパーアーム用カバーとする。
【0011】
また、前記ボタンホールの周囲が当て布によって補強されていることが好ましい。
【0012】
また、前記アッパーアーム用カバーが、合成繊維糸をスムース編みまたは天竺編みした編地によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、塗装ロボットからの脱落をより確実に抑制できる布製のアッパーアーム用カバーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のアッパーアーム用カバーを示す模式図である。
図2】塗装ロボットのアッパーアームの一例を示す図である。
図3】実施形態のアッパーアーム用カバーをアッパーアームに装着した状態を示す模式図である。
図4】実施形態のアッパーアーム用カバーの係止孔を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1に示されるように、実施形態のアッパーアーム用カバー10は、長尺状の外形を有し、長手方向両端が開口する筒状に形成されている。なお、図1はアッパーアーム用カバー10の形状を模式的に示す図であり、図面上の寸法の比率は実寸の比率に対応したものではない。
【0016】
(塗装ロボットの例)
実施形態のアッパーアーム用カバー10は、例えば図2及び図3に示す塗装ロボットのアッパーアーム20に装着され、少なくともアッパーアーム20の中間部を覆う。なお、本明細書において「アッパーアーム」とは、垂直多関節のアームを備えた塗装ロボットの、ロアアームと手首部との間にあるアームを意味する。
【0017】
実施形態における塗装ロボットは、床面に固定される垂直多関節ロボットであり、床面に固定される図示しない固定ベースと、固定ベースに基端側が支持された旋回ベースと、旋回ベースに基端側が支持されたロアアームとを備え、ロアアームの先端側に関節部を介して基端側が接続されたアッパーアーム20と、アッパーアーム20の先端側に接続された手首部30とを備えている。なお、塗装ロボットの稼働時には、手首部30の先端に図示しない塗装ガンが取り付けられる。
【0018】
図2に示す例のアッパーアーム20には、プラカバー21が着脱自在に取り付けられる。プラカバー21は、複数のボルトBによってアッパーアーム20に固定される。なお、アッパーアーム20には必ずしもプラカバー21が取り付けられていなくてもよい。
【0019】
(アッパーアーム用カバーの素材)
実施形態のアッパーアーム用カバー10は、合成繊維を含む糸が編成された編地からなる。前記合成繊維としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどを単独でまたは組み合わせて用いることが好ましい。実施形態のアッパーアーム用カバー10にはポリエステルが使用されている。前記編地にポリエステルが含まれることにより、吸水性が良好で強度が高く、適度なストレッチ性を有するアッパーアーム用カバー10とすることができる。また、塗装工程における引火を抑制するために、これらの合成繊維に導電性素材を複合した導電糸を用いてもよい。
【0020】
前記編地の組織は、スムース編みまたは天竺編みとすることが好ましい。実施形態のアッパーアーム用カバー10はスムース編みの生地からなる。これにより、耐久性が高く、破れにくいアッパーアーム用カバー10とすることができる。また、前記編地に静電気防止加工がなされているとさらに好ましい。
【0021】
(アッパーアーム用カバーの構成)
実施形態のアッパーアーム用カバー10は、アッパーアーム20の外形寸法に対応して、基端側開口11の直径が先端側開口12の直径より大きくなるよう形成されている。
【0022】
実施形態のアッパーアーム用カバー10は、1枚の平面状の布を輪にして縫い合わせることにより筒状に形成されている。アッパーアーム用カバー10はこれに限定されず、丸編みによってシームレスに形成されていてもよい。
【0023】
実施形態の基端側開口11及び先端側開口12の端部はそれぞれ袋縫いされているが、端部がほつれにくい生地であれば切りっぱなしでもよい。実施形態のアッパーアーム用カバー10はストレッチ性が良好なためアッパーアーム20にぴったりと沿うことができる。このため、実施形態では基端側開口11及び先端側開口12にゴム紐などの締め付け手段は設けられていない。アーム用カバー10の編地の性質によっては、基端側開口11及び先端側開口12を締め付けて閉じることができる紐またはゴム紐などが袋縫いの内部に設けられていてもよい。
【0024】
図1に示される実施形態のアッパーアーム用カバー10は、脱落防止手段として、側面に係止孔13を備えている。係止孔13は、アッパーアーム20に取り付けられているボルトの頭部に係合される。
【0025】
実施形態の係止孔13は、図4に示されるようにボタンホール状に形成されている。係止孔13がボタンホール状に形成されていると、係止孔13の開口面積が狭いためボルトの頭部から脱落しにくく好ましい。
【0026】
図4に示されるように、係止孔13の孔縁は孔かがり等によって補強されていることが好ましい。さらに、係止孔13の周囲に補強部材が設けられていることが好ましい。実施形態では、係止孔13の周囲に補強のための当て布14が縫い付けられている。係止孔13が補強されていると、係止孔13の孔縁が破れたりほつれたりすることを防ぐことができる。
【0027】
なお、実施形態ではアッパーアーム用カバー10の両側面に1つずつ計2つの係止孔13が設けられているが、係止孔13の数はこれに限定されない。また、係止孔13の孔縁は布テープが縫い付けられて補強されていてもよい。また、複数のボタンホールが形成されたボタンホールテープがアッパーアーム用カバー10の側面に縫い付けられ、ボルトBに係合する位置のボタンホールが切り開かれることにより係止孔13が形成されていてもよい。
【0028】
図3に示されるように、実施形態の係止孔13は、プラカバー21をアッパーアーム20に固定するボルトBに係合される。なお、実施形態では複数のボルトBのうち最も基端側のボルトBに係止孔13が係合されているが、これに限定されない。また、係止孔13が係止されるボルトはプラカバー固定用のボルトBに限定されず、任意のボルトとすることができる。
【0029】
本発明では、万が一アッパーアーム20の動作に伴ってアッパーアーム用カバー10が外れかけたとしても、アッパーアーム用カバー10の係止孔13がボルトBに係合しているため、脱落をより確実に抑制することができる。
【0030】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 アッパーアーム用カバー
11 基端側開口
12 先端側開口
13 係止孔
14 当て布
20 アッパーアーム
21 プラカバー
B ボルト
30 手首部
【要約】
【課題】塗装ロボットからの脱落をより確実に抑制できるアッパーアーム用カバーを提供すること。
【解決手段】垂直多関節のアームを備えた塗装ロボットのアッパーアーム20に被せられる布製のアッパーアーム用カバー10であって、脱落防止手段として、孔縁が補強された係止孔13が設けられており、係止孔13は、アッパーアーム20の表面から突出したいずれかのボルトBの頭部に係止される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4