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特許7455349薬液収容容器、薬液供給部材、薬液供給装置およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】薬液収容容器、薬液供給部材、薬液供給装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240318BHJP
   B65D 30/24 20060101ALI20240318BHJP
   B65D 33/36 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B65D33/38
B65D30/24 U
B65D33/36
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019179596
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054484
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】日野 智晴
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-084645(JP,U)
【文献】実開平03-066850(JP,U)
【文献】特開2007-161254(JP,A)
【文献】特開2015-174687(JP,A)
【文献】特開2008-087786(JP,A)
【文献】実開平01-137873(JP,U)
【文献】特開平11-105804(JP,A)
【文献】特開2016-216073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 30/24
B65D 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を収容し、使用時に下方となる面に開口部が設けられたパウチ本体と、
前記パウチ本体内に設けられた環状部材を有し、前記パウチ本体の開口部に設けられたスパウト部と、
前記パウチ本体に薬液を充填した後に前記スパウト部の内側に嵌められ内栓と、を備え、
前記内栓は、
前記スパウト部の内側に位置する第2円筒部材と、
使用前は開口しておらず薬液が前記スパウト部から出るのを防ぎ、使用時に、薬液供給部材のプラグによって押圧されることで、前記環状部材の上面より下方において開口されて薬液が前記スパウト部から排出されるように構成された、前記第2円筒部材の内側であって、前記第2円筒部材の上端部より低い位置に設けられた開口機構と、
前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向一端部に乗る肩部と、
前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向他端部に引っかかるツメと、を有し、
前記プラグは、側面に孔が設けられた尖った先端部と、前記孔と連通する薬液流路と、を備え、薬液収容容器。
【請求項2】
前記開口機構は、
前記スパウト部の内側に嵌められる第1円筒部材と、
蓋と、
前記蓋を前記第1円筒部材に固定する固定部材と、を有し、
使用時には前記蓋の少なくとも一部が前記固定部材から外れることによって、前記開口機構が開口する、請求項1に記載の薬液収容容器。
【請求項3】
使用時には前記蓋の一部のみが前記固定部材から外れ、前記パウチ本体内に前記蓋が落下しない、請求項2に記載の薬液収容容器。
【請求項4】
前記開口機構は、前記環状部材の上面より下方において開口することにより、前記環状部材の上面より上方において開口する場合に比べて、前記パウチ本体内に残る薬液の量を少なくできる、請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液収容容器。
【請求項5】
前記スパウト部の外周面には雄ネジが設けられ、
前記プラグは、内周面に雌ネジが設けられたプラグキャップに固定され、
前記プラグキャップの雌ネジが前記スパウト部の雄ネジに締め込まれることで、前記プラグによって前記開口機構が押圧される、請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液収容容器。
【請求項6】
前記開口機構は、使用時に、前記スパウト部の外周面に設けられた雄ネジより上方において開口される、請求項5に記載の薬液収容容器。
【請求項7】
前記先端部の先端にも前記薬液流路に連通する孔が設けられる、請求項1乃至6のいずれかに記載の薬液収容容器。
【請求項8】
前記内栓は、前記スパウト部から抜けるのを抑制する部分を含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の薬液収容容器。
【請求項9】
使用前は前記スパウト部の外側を覆っており、使用時には外されるキャップを備える、請求項1乃至8のいずれかに記載の薬液収容容器。
【請求項10】
前記キャップには、その上面から下方に延びる円環部が設けられ、
前記円環部が前記第2円筒部材の上端部に嵌まる、請求項9に記載の薬液収容容器
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の薬液収容容器に取り付けられる薬液供給部材であって、
前記内栓の前記第2円筒部材の内側であって、前記第2円筒部材の上端部より低い位置に設けられた開口機構を開口させる、薬液流路に連通する孔が側面に設けられた尖った先端部を有するプラグを備える薬液供給部材。
【請求項12】
内周面に雌ネジが設けられ、前記プラグが固定されるプラグキャップを備え、
前記プラグキャップの雌ネジが前記スパウト部の外周面に設けられた雄ネジに締め込まれることで、前記薬液収容容器と前記薬液供給部材とが固定されるとともに、前記プラグによって前記開口機構が押圧されて開口される、請求項11に記載の薬液供給部材。
【請求項13】
前記プラグに設けられ、前記内栓の内面と密着するシール部材を備える、請求項11または12に記載の薬液供給部材。
【請求項14】
前記プラグには、薬液が通る孔が設けられる、請求項11乃至13のいずれかに記載の薬液供給部材。
【請求項15】
薬液収容容器と、薬液供給部材と、を備える薬液供給装置であって、
前記薬液収容容器は、
薬液を収容し、使用時に下方となる面に開口部が設けられたパウチ本体と、
前記パウチ本体内に設けられた環状部材を有し、前記パウチ本体の開口部に設けられたスパウト部と、
前記パウチ本体に薬液を充填した後に前記スパウト部の内側に嵌められ、薬液が前記スパウト部から排出されるよう、前記環状部材の上面より下方において開口した内栓と、を有し、
前記内栓は、
前記スパウト部の内側に位置する第2円筒部材と、
使用前は開口しておらず薬液が前記スパウト部から出るのを防ぎ、使用時に、薬液供給部材のプラグによって押圧されることで、前記環状部材の上面より下方において開口されて薬液が前記スパウト部から排出されるように構成された、前記第2円筒部材の内側であって、前記第2円筒部材の上端部より低い位置に設けられた開口機構と、
前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向一端部に乗る肩部と、
前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向他端部に引っかかるツメと、を有し、
前記薬液供給部材は、前記内栓の開口を貫通するプラグを有し、
前記プラグは、側面に孔が設けられた尖った先端部と、前記孔と連通する薬液流路と、を備えた、薬液供給装置。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれかに記載の薬液収容容器に、請求項11乃至14のいずれかに記載の薬液供給部材を取り付ける工程を含む、薬液供給装置の製造方法。
【請求項17】
前記薬液収容容器に前記薬液供給部材を取り付けることで、前記薬液収容容器における開口機構を開口させる、請求項16に記載の薬液供給装置の製造方法。
【請求項18】
取り付けた薬液収容容器の薬液を使い切った後に、前記薬液収容容器を前記薬液供給部材から取り外し、
薬液が充填された新たな請求項1乃至10のいずれかに記載の薬液収容容器を前記薬液供給部材に取り付ける工程を含む、請求項16または17に記載の薬液供給装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液収容容器、薬液供給部材、薬液供給装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薬品が充填される容器のスパウト部に逆流防止弁構造を持つ雌部材を設け、雌部材を開閉するプラグと組み合わせる連結システムが開示されている。この連結システムは、使用時にはプラグを雌部材に挿入して雌部材の逆流防止弁を開き、使用を中断する際にはプラグを雌部材から抜いて逆流防止弁を閉じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4292343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆流防止弁構造を有する機構の場合、逆流防止弁の分だけスパウト部の開口が小さくなるため、薬品の充填が容易ではない。また、特殊な逆流防止弁が必要となるため、コスト高となる。さらに、ユーザがプラグを抜き差しする際に、容器内の薬品に触れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、逆流防止弁が不要な薬液収容容器、薬液供給部材、薬液供給装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、薬液を収容し、開口部が設けられたパウチ本体と、前記パウチ本体の開口部に設けられたスパウト部と、前記スパウト部の内側に嵌められた内栓と、を備え、前記内栓は、使用前は開口しておらず薬液が前記スパウト部から出るのを防ぎ、使用時に開口されて薬液が前記スパウト部から排出されるように構成された開口機構を有する、薬液収容容器が提供される。
【0007】
前記開口機構は、前記スパウト部の内側に嵌められる第1円筒部材と、蓋と、前記蓋を前記第1円筒部材に固定する固定部材と、を有し、使用時には前記蓋の少なくとも一部が前記固定部材から外れることによって、前記開口機構が開口してもよい。
【0008】
使用時には前記蓋の一部のみが前記固定部材から外れ、前記パウチ本体内に前記蓋が落下しなくてもよい。
【0009】
前記開口機構は、使用時にプラグによって押圧されることで開口してもよい。
【0010】
前記スパウト部の外周面には雄ネジが設けられ、前記プラグは、内周面に雌ネジが設けられたプラグキャップに固定され、前記プラグキャップの雌ネジが前記スパウト部の雄ネジに締め込まれることで、前記プラグによって前記開口機構が押圧されてもよい。
【0011】
前記開口機構は、使用時に、前記スパウト部の外周面に設けられた雄ネジより上方において開口されてもよい。
【0012】
前記スパウト部は、前記パウチ本体内に設けられた環状部材を有し、前記開口機構は、使用時に、前記環状部材の上面より下方において開口されてもよい。
【0013】
前記内栓は、前記スパウト部から抜けるのを抑制する部分を含んでもよい。
【0014】
前記内栓は、前記スパウト部の内側に位置する第2円筒部材と、前記第2円筒部材の内側に設けられた前記開口機構と、前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向一端部に乗る肩部と、前記第2円筒部材から外側に延びており、前記スパウト部の長手方向他端部に引っかかるツメと、を有してもよい。
【0015】
使用前は前記スパウト部の外側を覆っており、使用時には外されるキャップを備えてもよい。
【0016】
本発明の別の態様によれば、上記薬液収容容器に取り付けられる薬液供給部材であって、前記内栓の開口機構を開口させるプラグを備える薬液供給部材が提供される。
【0017】
内周面に雌ネジが設けられ、前記プラグが固定されるプラグキャップを備え、前記プラグキャップの雌ネジが前記スパウト部の外周面に設けられた雄ネジに締め込まれることで、前記薬液収容容器と前記薬液供給部材とが固定されるとともに、前記プラグによって前記開口機構が押圧されて開口されてもよい。
【0018】
前記プラグに設けられ、前記内栓の内面と密着するシール部材を備えてもよい。
【0019】
前記プラグには、薬液が通る孔が設けられてもよい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、薬液収容容器と、薬液供給部材と、を備える薬液供給装置であって、前記薬液収容容器は、薬液を収容し、開口部が設けられたパウチ本体と、前記パウチ本体の開口部に設けられたスパウト部と、前記スパウト部の内側に嵌められ、薬液が前記スパウト部から排出されるよう開口した内栓と、を有し、前記薬液供給部材は、前記内栓の開口を貫通したプラグを有する、薬液供給装置が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、上記薬液収容容器に、上記薬液供給部材を取り付ける工程を含む、薬液供給装置の製造方法が提供される。
【0022】
前記薬液収容容器に前記薬液供給部材を取り付けることで、前記薬液収容容器における開口機構を開口させてもよい。
【0023】
取り付けた薬液収容容器の薬液を使い切った後に、前記薬液収容容器を前記薬液供給部材から取り外し、薬液が充填された新たな上記薬液収容容器を前記薬液供給部材に取り付ける工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0024】
逆流防止弁を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る薬液供給装置の概略正面図。
図2A】出荷状態(すなわち、薬液供給部材200が取り付けられる前)の薬液収容容器100の概略正面図。
図2B図2Aのキャップ4を外した状態を示す図。
図2C】パウチ本体1およびスパウト部2から内栓3およびキャップ4を取り外した状態を示す分解図。
図3】スパウト部2近傍の拡大断面図。
図4A】内栓3の概略側面図。
図4B】内栓3の概略上面図。
図4C】内栓3の概略下面図。
図4D】ツメ33の側面図。
図4E】ツメ33の斜視図。
図5A】薬液供給部材200の概略平面図。
図5B】薬液供給部材200を斜め下から見た図。
図5C】薬液供給部材200を下方から見た図。
図6A】薬液収容容器100に薬液供給部材200を取り付けた状態におけるスパウト部2近傍の拡大断面図。
図6B】プラグ5の先端部51によって内栓3に開口部34aが形成された様子を示す図。
図7A】薬液供給装置の使用状態を示す図。
図7B】薬液供給装置の使用時におけるスパウト部2近傍の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
図1は、一実施形態に係る薬液供給装置の概略正面図である。薬液供給装置は、薬液を収容した薬液収容容器100と、これに取り付けられた薬液供給部材200とを備える。
【0028】
一例として、薬液は洗浄液であり、薬液供給装置のユーザは店舗スタッフである。また、薬液供給部材200はユーザ店舗の設備に常設されている。そして、薬液が収容された状態で流通する薬液収容容器100を薬液供給部材200に取り付けることで、図1に示す薬液供給装置が製造される。薬液収容容器100はユーザによるリクローズや再充填を想定しておらず、薬液を使い切ると使用済の薬液収容容器100を取り外して廃棄し、新たな薬液収容容器100に薬液供給部材200を取り付ける。
【0029】
まずは、薬液収容容器100について説明する。
図2Aは、出荷状態(すなわち、薬液供給部材200が取り付けられる前)の薬液収容容器100の概略正面図である。薬液収容容器100は、パウチ本体1と、スパウト部2と、内栓3(図2Aには見えない)と、キャップ4とを備えている。なお、図2Bは、図2Aのキャップ4を外した状態を示す図である。また、図2Cは、パウチ本体1およびスパウト部2から内栓3およびキャップ4を取り外した状態を示す分解図である。
【0030】
パウチ本体1は液体状の薬液(不図示)を収容する。パウチ本体1の形状に特に制限はなく、側面に折り込みが設けられたガゼットタイプ、底面に折り込みが設けられたスタンディングタイプ、折り込みが設けられない平袋タイプなどであってよい。パウチ本体1は、例えば薬液耐性を有し、かつ、柔軟に変形可能なポリオレフィン系のPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)などの単層フィルム、また、プラスチックフィルムやアルミ箔など複数素材を貼合したラミネートフィルム製であり、薬液を収容していない状態では折り畳んで体積を小さくすることができ、薬液が入ることで体積が大きくなるのが望ましい。もちろん、パウチ本体1は硬い部材で形成されて、薬液の有無にかかわらず一定の形状であってもよい。
【0031】
そして、パウチ本体1の上方には開口部1aが設けられる。この開口部1aにスパウト部2が設けられる。パウチ本体1およびスパウト部2は、両者が予め一体となった汎用品であってよく、これによりコストを抑えることができる。なお、本明細書では、便宜上、特に断らない限り、パウチ本体1における開口部1aが設けられる側を「上」と定義している。
【0032】
図3は、スパウト部2近傍の拡大断面図である。図3を参照しつつ、スパウト部2、内栓3およびキャップ4について説明する。
【0033】
スパウト部2は、環状部材21と、円筒部材22とを有する。スパウト部2はパウチ本体1の開口部1aを貫通しており、少なくとも環状部材21の底面21aはパウチ本体1内にある。そして、円筒部材22は環状部材21の上面から上方に向かって延びている。円筒部材22の外周面には雄ネジ22aが設けられている。さらに、キャップ4をスパウト部2に嵌め殺しするための円環部23が円筒部材22に設けられてもよい。スパウト部2は、例えばPE(ポリエチレン)あるいはPP(ポリプロピレン)製であり、硬くて変形しにくい部材である。
【0034】
内栓3はスパウト部2の内側に嵌められる。内栓3は、円筒部材31と、肩部32と、ツメ33と、開口機構34とを有する。ここで、内栓3の概略側面図、概略上面図、概略下面図を図4A図4Cにそれぞれ示す。
【0035】
図3に示すように、円筒部材31の外径は、スパウト部2における円筒部材22の内径よりわずかに小さく、円筒部材31の外周面が円筒部材22の内周面に密着する。これにより、薬液が意図せず外部に漏れるのを抑えることができる。また、図4Aおよび図4Cに示すように、円筒部材31の下方には切り込み31aが設けられてよい。これにより、内栓3を円筒部材22に挿入しやすくなる。
【0036】
肩部32は円環状であり、例えば円筒部材31の上端から外側に向かって水平方向に延びている(図3参照)。したがって、肩部32の外径は円筒部材31の外径より大きい。そして、肩部32はスパウト部2における円筒部材22の上部(スパウト部2の長手方向の上端部)に乗っている。言い換えると、円筒部材22の上端面上に肩部32の下面が位置している。これにより、内栓3がスパウト部2から抜けてパウチ本体1内に落ちることなくスパウト部2内の内側に留まるとともに、薬液が意図せず外部に漏れるのを抑えることができる。
【0037】
ツメ33は、例えば円筒部材31の下端から外側に向かって延びている。ツメ33の側面図および斜視図を図4Dおよび図4Eに示す。ツメ33は、円筒部材31から外側に向かって水平方向に延びる受け皿面33aと、下方に向かって尖ったテーパー面33bとを有する。図3に示すように、受け皿面33aがスパウト部2の環状部材21の底面21a(スパウト部2の長手方向の下端部)に引っかかることで、内栓3がスパウト部2から上方に抜けるのを抑えることができる。また、テーパー面33bを設けることで、内栓3を円筒部材22に挿入しやすくなる。
【0038】
図3に示すように、開口機構34は円筒部材31の内部に設けられる。開口機構34は、出荷状態(ユーザが薬液を使用する前)は蓋34bがあって開口しておらず、パウチ本体1内の薬液がスパウト部2から漏れ出るのを抑える。そのため、スパウト部2に逆流防止弁を設けなくてもよい。ユーザが薬液を使用する時には、開口機構34は、蓋34bの少なくとも一部が外れることによって開口部34aが形成され、パウチ本体1内の薬液がスパウト部2から排出される。
【0039】
開口機構34の一例として、開口機構34は、開口部34aに設けられた円板状の蓋34bと、蓋34bを円筒部材31に固定する固定部材34cとを有する。そして、使用時には、ユーザがプラグ(後述)で蓋34bを下方に向かって押圧することにより、蓋34bが固定部材34cから外れて開口機構34に開口部34aが形成される。なお、蓋34bが固定部材34cから完全に外れると、蓋34bが薬液中に落下する。この点が不都合であれば、蓋34bの一部のみが固定部材34cから外れるようにする(ハッチ式)ことで、蓋34bが薬液中に落下することなく開口部34aを形成できる。
【0040】
キャップ4はスパウト部2の上部外側を覆っている。具体的には、キャップ4の内周面に設けられた雌ネジが、スパウト部2の外周面に設けられた雄ネジ22aと係合することで、キャップ4がスパウト部2に嵌まる。また、キャップ4の上面から下方に延びる円環部41が設けられてもよい。円環部41の外径は内栓3の円筒部材31の内径よりわずかに小さく、これにより内栓3をより強固に固定できる。
【0041】
このような薬液収容容器100は以下のようにして製造される。まず、内栓3およびキャップ4が外された状態(図2C参照)で、スパウト部2を介して所望の薬液をパウチ本体1内に充填する。スパウト部2内に逆流防止弁がないので、薬液の充填が容易である。
【0042】
その後、スパウト部2の内側に内栓3を挿入し(図2B参照)、密栓する。次いで、キャップ4をスパウト部2に締め込み(図2A参照)、必要に応じて嵌め殺しとする。この状態でユーザに出荷される。なお、内栓3によって密閉されて薬液がパウチ本体1から出ないのであれば、キャップ4を設けなくてもよい。
【0043】
続いて、薬液供給部材200について説明する。
図5Aは、薬液供給部材200の概略平面図である。図5Bは、薬液供給部材200を斜め下から見た図である。図5Cは、薬液供給部材200を下方から見た図である。薬液供給部材200は、プラグ5と、チューブ6と、プラグキャップ7とを有する。
【0044】
プラグ5は、尖った先端部51と、薬液流路52とを有する。先端部51(の先端および/または側面)には孔51aが設けられ、この孔51aを通って薬液が薬液流路52内に流入できる。薬液流路52はプラグキャップ7の上面を貫通し、上部においてチューブ6と接続されている。また、薬液流路52には、シール部材としてのOリング53が嵌められている。プラグキャップ7の中心にプラグ5の薬液流路52が位置しており、薬液流路52はプラグキャップ7に固定されている。そして、プラグキャップ7の内周面には、雌ネジ7aが設けられる。
【0045】
薬液の使用時、ユーザは薬液収容容器100からキャップ4を外し(図2Bの状態)、薬液供給部材200を取り付ける。具体的には、薬液供給部材200のプラグキャップ7の雌ネジ7aを、薬液収容容器100におけるスパウト部2の外面の雄ネジ22aに締め込み、薬液収容容器100と薬液供給部材200とを固定する。
【0046】
図6Aは、薬液収容容器100に薬液供給部材200を取り付けた状態におけるスパウト部2近傍の拡大断面図である。図示のように、薬液供給部材200を薬液収容容器100に取り付けることで、プラグ5の先端部51が内栓3の蓋34bを押圧し、開口部34aが形成される(すなわち、先端部51は蓋34bを押圧して開口部34aを形成できる程度に尖っていればよい)。図6Bに、プラグ5の先端部51によって内栓3に開口部34aが形成された様子を示す。以下、より詳しく説明する。
【0047】
図6Aに示すように、プラグ5は開口機構34に到達する長さを有する。そのため、薬液供給部材200のプラグキャップ7の雌ネジ7aをスパウト部2の雄ネジ22aに締め込むことで、それほど強い力を加えなくても、真っすぐにプラグ5の先端部51が開口機構34の蓋34bを押圧し、さらには開口部34aを貫通する。その結果、先端部51に形成された孔51aは開口部34aより下方に位置する。また、Oリング53が内栓3(における円筒部材31)の内面に密着する。
【0048】
図7Aは、薬液供給装置の使用状態を示す図である。また、図7Bは、薬液供給装置の使用時におけるスパウト部2近傍の拡大断面図である。これらの図に示すように、使用時には、薬液供給装置が吊り下げられてパウチ本体1の開口部1aが下向きとなる。そして、チューブ6の先に設けたポンプ(不図示)で負圧を生成することにより、パウチ本体1内の薬液が吸引され、プラグ5の孔51aおよび内栓3に形成された開口部34aを通り、薬液流路52を通り、さらにチューブ6を通って薬液が供給される(図7B参照)。
【0049】
なお、Oリング53が内栓3における円筒部材31の内面に密着するため、薬液が薬液流路52の外側を通ってチューブ6の外側から漏れるのを抑えられる。
【0050】
また、パウチ本体1内には、予め薬液のみならず空気が含まれているのが望ましい。薬液を使い切ったあとにもポンプによって吸引が行われるが、その際のポンプに対する負荷を低減するためである。また、チューブ6の近傍に屈折率を検知するセンサを設けることで、チューブ6に薬液が流れているか、薬液を使い切ってしまって空気が流れているかを検知できる。
【0051】
本薬液供給装置は、リクローズや薬液のみの交換を想定しておらず、薬液を使い切った時点で薬液収容容器100を交換する。薬液を使い切った状態で交換するため、ユーザは薬液に触れることなく、交換作業を安全に行うことができる。
【0052】
なお、パウチ本体1内に残ってしまう薬液の量をできるだけ少なくすべく、図7Bに示すように、内栓3の開口機構34に形成される開口部34aは、スパウト部2における環状部材21の底面21a(使用状態の図7では上面として示される)よりプラグキャップ7側(使用時における下方)にあるのが望ましい。ただし、多少(例えば数mm~10mm程度)であれば、底面21aよりプラグキャップ7の反対側(使用時における上方)であってもよい。
【0053】
また、開口部34aは、スパウト部2の雄ネジ22aより環状部材21側(パウチ本体1側、使用時における上方)にあるのが望ましい。プラグキャップ7と一体化しているプラグ5に配置されているOリング53が、スパウト部2の雄ネジ22aと、プラグキャップ7の雌ネジ7aとを締め込み開始する段階で、液漏れしない位置となっているのが望ましく、そのOリング53よりも更にパウチ本体1の内側方向に位置する開口部34aは、必然的にスパウト部2の雄ネジ22aより環状部材21側となるためである。
【0054】
本実施形態によれば、スパウト部2に逆流防止弁を設ける必要がない。そのため、スパウト部2の開口が大きくなり、薬品の充填が容易となる。また、特殊な逆流防止弁が不要であるし、汎用品のパウチ本体1およびスパウト部2を利用できるため、コストを抑えられる。さらに、スパウト部2の雄ネジ22aと、プラグキャップ7の雌ネジ7aとを締め込む構成であるため、強い力をかけなくてもプラグ5の先端部51で内栓3に開口部34aを形成できる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0056】
100 薬液収容容器
1 パウチ本体
1a 開口
2 スパウト部
21 環状部材
21a 底面
22 円筒部材
22a 雄ネジ
23 円環部
3 内栓
31 円筒部材
32 肩部
33 ツメ
33a 受け皿面
33b テーバー面
34 開口機構
34a 開口部
34b 蓋
34c 固定部材
4 キャップ
41 円環部
200 薬液供給部材
5 プラグ
51 先端部
51a 孔
52 薬液流路
53 Oリング
6 チューブ
7 プラグキャップ
7a 雌ネジ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B