IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ESEコンサルティング合同会社の特許一覧

<>
  • 特許-異質箇所検出装置 図1
  • 特許-異質箇所検出装置 図2
  • 特許-異質箇所検出装置 図3
  • 特許-異質箇所検出装置 図4
  • 特許-異質箇所検出装置 図5
  • 特許-異質箇所検出装置 図6
  • 特許-異質箇所検出装置 図7
  • 特許-異質箇所検出装置 図8
  • 特許-異質箇所検出装置 図9
  • 特許-異質箇所検出装置 図10
  • 特許-異質箇所検出装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】異質箇所検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020035252
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139654
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523070388
【氏名又は名称】ESEコンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼ 利博
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-125003(JP,A)
【文献】特開平11-064176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109406903(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に沿って配置される線状検出部と、
前記線状検出部に接続される測定装置と、を備え、
前記線状検出部は、光ファイバ芯線を備える光ファイバケーブルであり、
前記光ファイバケーブルは、互いに絶縁された二本の導電材を平行に配置した平行部と、前記平行部のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されるマーキング部と、を有し、
前記導電材は、前記光ファイバ芯線の周囲に設けられている保護材または導線であり、
前記測定装置は、前記導電材にパルスを発信し、前記発信したパルスの反射波を検出することにより、前記被検体の異質箇所を検出することを特徴とする異質箇所検出装置。
【請求項2】
前記導電材は、導線であり、
前記マーキング部は、前記導線の間隔を近接または離間させることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の異質箇所検出装置。
【請求項3】
被検体に沿って配置される線状検出部と、
前記線状検出部に接続される測定装置と、を備え、
前記線状検出部は、通電により加熱する導電材を光ファイバ芯線の周囲に設けた光ファイバケーブルであり、
一本の前記光ファイバケーブルを折返すことにより、一定間隔で二本が平行となる平行部と、前記平行部のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されるマーキング部とが形成されており、
前記測定装置は、前記光ファイバ芯線に一端から入射した光の散乱光を検知して、前記導電材の発熱による二本の前記光ファイバケーブルの温度変化に基づいて、異質箇所および異質箇所となる予兆を検知することを特徴とする異質箇所検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異質箇所検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の異質箇所検出装置としては、被検出体に沿って配置される被覆導線と、反射パルス波を検出する測定装置とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
被覆導線は、長尺状の導線と、導線の周囲を覆う絶縁被覆層とを含む。導線は、一定間隔で平行に配置されて、先端部を開放端として一対設けられている。また、絶縁被覆層は、各導線を被覆することにより一対の導線間を絶縁している。
そして、測定装置は、被覆導線の基端部にパルス波を印加する。測定装置は、被覆導線の基端部から先端部までの間で反射された反射パルス波を測定する。これにより、空隙に起因する局所的な反射を検出して、異質箇所の一種である未充填箇所を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3204605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の異質箇所検出装置では、未充填の位置を大まかに検出することはできる。
しかしながら、未充填箇所の正確な位置や、未充填箇所の規模を測定することは困難であり、更なる改善が求められている。
また、検出の対象としては、他の部分と異質となっている部分が局所的にあればどのようなものでもよい。たとえば、充填不良で空洞になっている箇所、濡れている箇所、乾いている箇所、目詰まりしている箇所等、幅広い検出対象を検出できることが望まれている。
さらに、水の流動があって今後空洞になるかもしれない箇所の位置や規模を予見することも求められている。
そこで、本発明は、異質箇所の位置や、異質箇所の規模をより正確に測定することができる異質箇所検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の異質箇所検出装置は、被検体に沿って配置される線状検出部と、線状検出部に接続される測定装置とを備える。線状検出部は、光ファイバ芯線を備える光ファイバケーブルであり、光ファイバケーブルは、互いに絶縁された二本の導電材を平行に配置した平行部と、平行部のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されるマーキング部とを有する。導電材は、光ファイバ芯線の周囲に設けられている保護材または導線である。測定装置は、導電材にパルスを発信し、そのパルスの反射波を検出することにより、被検体の異質箇所を検出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、異質箇所の位置や、異質箇所の規模をより正確に測定することができる異質箇所検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態1の異質箇所検出装置で、全体の構成を説明する斜視図である。
図2】実施形態1の異質箇所検出装置で、マーキング反射の一例を示すグラフである。
図3】実施形態1の変形例1の異質箇所検出装置で、全体の構成を説明する斜視図である。
図4】実施形態1の変形例2の異質箇所検出装置で、全体の構成を説明する斜視図である。
図5】実施形態1の変形例2の異質箇所検出装置で、マーキング反射の一例を示すグラフである。
図6】実施形態1の変形例3の異質箇所検出装置で、線状検出部に装着されるスペーサの構成を説明する平面図である。
図7】実施形態1の変形例4の異質箇所検出装置で、線状検出部に装着されるスペーサおよびストッパの構成を説明する平面図である。
図8】実施形態2の異質箇所検出装置で、マーキング反射の一例を示すグラフである。
図9】実施形態2の異質箇所検出装置で、線状検出部として用いる光ファイバケーブルの構成を示す縦断面図である。
図10】実施形態2の異質箇所検出装置で、図8に示す浸透流が上流側から下流側に向けて生じた様子を検出する一例が示されるグラフである。
図11】実施形態2の異質箇所検出装置で、図8に示す浸透流が下流側から上流側に向けて生じた様子を検出する一例が示されるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る異質箇所検出装置1の構成を示すものである。
本実施形態の異質箇所検出装置1は、被検体に沿って配置される線状検出部2と、線状検出部2の一端部2aに接続される測定装置3とを備えている。なお、一端部2aと測定装置3との間を同軸ケーブルで接続してもよい。
線状検出部2は、二本の被覆導線14,14を平行に設けた平行部4と、平行部4のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されるマーキング部5とを有している。被覆導線14,14の各他端2b,2bは、開放されている。
線状検出部2の被覆導線14は、金属製で長尺状の導電材により構成される通電可能な導線と、導線の周囲を覆うビニル被膜等の絶縁材料製の絶縁層とを備えている。
これにより、被覆導線14,14に設けられる二本の導線間は、互いに絶縁されている。
【0010】
本実施形態の線状検出部2は、平行部4とマーキング部5とを長手方向に交互に設けることにより、被検体としての構造物に適応した長さとなるように形成されている。ここで構造物とは、例えばトンネル、ダム、河川堤防等であるが、これに限定されるものではなく、コンクリートなどを充填する構造物や水の浸透などにより周辺地盤に空隙が生じるおそれのある構造物であればどのような構造物であってもよい。
線状検出部2の各平行部4は、同じ長さの一対の被覆導線14,14を有している。被覆導線14,14は、中心同士の離間距離W1だけ離間しており、互いに絶縁された状態で敷設される。これにより、各平行部4は、等間隔で平行に被覆導線14,14を有して、同様のインピーダンスとなるように構成されている。なお、ここでは、平行部4の二本の被覆導線14,14間の間隔が一定の中心同士の離間距離W(W=0.3cm~1.0cm程度、好ましくは、W=0.5cm~0.8cm程度)になるように構成されている。
【0011】
被覆導線14には、所定のパルス波が印加されることにより、周囲に感度領域が形成される。この感度領域のうち、被覆導線14,14間に最も強い感度領域が形成され、パルス波エネルギの大部分が被覆内部を伝播することで減衰が抑制される。
打設直後のコンクリートやグラウトのような材料と空気との誘電特性に大きな差異があるため、被覆導線14,14の外側に形成される第1感度領域S1に空気溜まりが存在する場合には、異なるインピーダンスとして計測される。
【0012】
また、第1感度領域S1の外側には、第1感度領域S1よりも電磁力が弱い第2感度領域S2が形成される。第2感度領域S2は、被覆導線14,14間の中心同士の離間距離W1の2~3倍程度の範囲まで分布している。第2感度領域S2の範囲に空気溜まりが存在する場合、第1感度領域S1よりも低い感度で反射パルス波を生じさせる。
【0013】
これらの第1感度領域S1および第2感度領域S2は、比較的少ない印加電圧で形成されパルス波エネルギの大部分が絶縁体である被覆部内を伝播することで減衰が抑制される。このため、パルス波の進行方向に対する減衰量は極めて小さく、長尺状を呈する被覆導線14の全域(例えば、250mV程度の電磁波ステップパルス(以下、パルス波または反射パルス波とも記す)で数メートル~ 数十メートル)にわたる道程の検出可能領域を得ることができる。
【0014】
図1に示す測定装置3は、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射率計)測定装置を用いて構成されている。測定装置3の入出力部には、線状検出部2の一端部2aと接続した同軸ケーブルが接続されている。そして、測定装置3は、一端部2aにパルス波を発生させる電圧を印加する。本実施形態の測定装置3では、被覆導線14の一端部2aにパルス波(数十kHz~数GHz程度)が印加される。ここで、同軸ケーブルは、測定装置3と線状検出部2との間の距離を延長する通信線のように機能する。同軸ケーブルにより、測定装置3から離れた被検体に、測定範囲に応じた長さの線状検出部2を配置できる。なお、同軸ケーブルに限定されることなく、通信線として用いることができるものであれば、他の種類の導電線を用いて測定装置3と線状検出部2との間を接続してもよい。
パルス波は、被覆導線14の一端部2aとは反対側に位置する他端2bまでの間にて反射され、反射パルス波は、再び一端部2aを介して、測定装置3に入力して検出される。
【0015】
また、測定装置3に接続されるモニタ装置は、液晶表示部などを有する画面を含む。そして、モニタ装置は、測定装置3で検出された反射パルス波の強さを伝播時間に対応させて液晶表示部などの画面上に表示する(図2参照)。
本実施形態では、測定装置3とは別体でモニタ装置を設ける構成としている。しかしながら特にこれに限らず、測定装置に設けられたオシロスコープなどの画面に表示するようにしてもよい。
【0016】
マーキング部5は、長手方向に隣り合う平行部4,4の間に位置している。複数のマーキング部5,5は、等間隔で設けられている。本実施形態では、長手方向に隣り合うマーキング部5,5の中心同士の中心間距離は、所定の寸法L(例えば、L=2m)に設定されている。
なお、寸法Lは、長手方向に隣り合うマーキング部5,5が判別可能であれば、さらに小さくしてもよい。マーキング部5,5の中心間距離は、想定される空隙の位置や大きさに応じて等間隔であることが望ましい。しかしながらマーキング部5,5の中心間距離(寸法L)は、等間隔でなくてもよい。また、被検体の大きさに応じて適宜、寸法Lを拡大させてもよい。例えば寸法Lは、数cm~数m、場合によっては10m以上の範囲で設定されていればよい。
【0017】
マーキング部5は、平行部4と異なるインピーダンスを有する。本実施形態では、二本の被覆導線14,14を互いに離間する方向へ山型となるように湾曲させることでマーキング部5を形成する。
すなわち、図1に示すようにマーキング部5における被覆導線14,14の最大中心間距離W2は、平行部4における被覆導線14,14の中心同士の離間距離W1よりも大きい(W2>W1)。これにより、本実施形態のマーキング部5のインピーダンスは、平行部4のインピーダンスと比較して大きくなる。
【0018】
なお、マーキング部5の形状は、例えば、三角形を含む多角形状や楕円、長円を含む円形形状でもよい。すなわち、平行部4のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されているものであれば、どのような形状にマーキング部5が形成されていてもよい。
【0019】
図2に示すように、測定装置3は、線状検出部2の一端部2aに接続される。そして測定装置3は、各被覆導線14,14へ発信したパルスの反射波を検出する。
また、測定装置3は、検出結果(反射係数)を表示するモニタ部を備えている(図2参照)。マーキング部5のインピーダンスは、平行部4のインピーダンスと比較して大きいため、反射係数は、マーキング部5に相当する箇所において局所的に大きくなる。
なお、本実施形態に示す被覆導線14,14の他端2b,2bは、開放されている。しかしながら特にこれに限らない。たとえば、被覆導線14,14の他端2bをループ状に接続していてもよい。
【0020】
次に、異質箇所検出装置1を用いた被検体の異質箇所の検出について説明する。
線状検出部2は、例えばトンネル内の岩盤壁面に沿って敷設されて、壁面を構成するコンクリートを打設した際に未充填(異質)となっている箇所の検出に用いられる。
線状検出部2の一端部2aに接続された測定装置3は、被覆導線14に発信したパルスの反射波を被覆導線14から検出する。
コンクリートの打設により、線状検出部2の周縁に未充填箇所20が存在すると、図2のグラフに示すように、被検体の未充填箇所20に相当する部分にインピーダンスが他の平行部4と比較して高く変化する高反射領域27が上向きの反射として表示される。
【0021】
本実施形態では、測定装置3から所定の寸法L(L=2m)ごとに設けられたマーキング部5においてもパルス波が反射する。このため、モニタ部には、マーキング部5の存在を示すピーク波形16が表示される。
そして、複数のマーキング部5の位置の像(ピーク波形)と未充填箇所により生じた高反射領域27とを対比させることにより、未充填箇所の位置および規模を知ることができる。
たとえば、図2に示す一例では、測定装置3から一つ目のマーキング部5と、二つ目のマーキング部5との間の位置に高反射領域27が表示される。このため、未充填箇所20の位置は、測定装置3から2m以上4m未満であると判定できる。
ここで、マーキング部5,5間の寸法Lは、2mである。したがって、ピーク波形16,16と高反射領域27とを対比させることにより、未充填箇所20は、長さ方向に約1.5m以上2m未満の規模を有していることが分かる。
このように本実施形態の異質箇所検出装置1では、未充填箇所20の正確な位置や、未充填の規模を測定することができる。
【0022】
このように構成された異質箇所検出装置1は、解体できない地上構造物や、目視しにくい地中構造物においても、未充填箇所20までの距離および規模を把握することができる。
このため、トンネルの壁面やPC鋼材を設置するシース管等、流動するコンクート、モルタル、グラウト等を見えない部分に充填する際の異質箇所の検出に好適である。
【0023】
また、トンネルにおいてコンクリートの異質箇所を検出する場合、トンネル長手方向に沿って、線状検出部2を敷設してもよい。さらに、トンネルの周方向の少なくとも一部に沿って線状検出部2を敷設してもよい。あるいは、未充填箇所が発生しやすいトンネル頂部に重点的に敷設してもよい。
なお、構造物内部に線状検出部2を残存させておけば、ある程度時間をおいて再検査することにより、経年劣化により生じた未充填箇所についても検出できる。
【0024】
[変形例1]
図3は、実施形態1の変形例1である。なお、実施形態1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略する。
変形例1の線状検出部12は、長手方向に平行部4とマーキング部25とを交互に設けることにより、被検体としての構造物に適応した長さとなるように形成されている。
【0025】
マーキング部25は、スペーサ26を備えている。スペーサ26は、一対の半円形状の被覆導線14,14により略円形に囲まれた部分に装着されている。
スペーサ26は、扁平状の円柱の外側面に沿って凹設される凹溝部26aと、円柱の上下に一体に設けられる円盤状の円形フランジ26b,26bとを有している。これらの円形フランジ26b,26bの中心軸は、円柱の中心軸と一致している。
凹溝部26aの凹溝は、外周面に沿って環状に形成されている。凹溝部26aの軸方向の両側には、円形フランジ26b,26bが一体に設けられている。円形フランジ26b,26bは、凹溝部26aと比較して径方向に大径となるように形成されている。
【0026】
このように、各マーキング部25において被覆導線14,14間にスペーサ26を介装させているため、一対の被覆導線14,14は、凹溝部26aの形状に沿って湾曲してほぼ円形に保持される。
したがって、各マーキング部25の形状は、同一形状となる。よって各マーキング部25において発生する反射パルス波の大きさに差異が生じにくくなる。
また、スペーサ26の凹溝部26aに被覆導線14,14が係合して外れにくいため、マーキング部25はほぼ円形に湾曲した状態で保持される。また、ケーブルに張力が作用した場合でもマーキング部の被覆導線14,14間の離間距離は維持される。
なお、マーキング部25の形状は反射を発生させるだけの離間距離の変化を保持し得るものであれば、スペーサの形状、数量および材質は特に限定されるものではない。
【0027】
[変形例2]
図4および図5は、本発明の実施形態1の変形例2に係る異質箇所検出装置21を示すものである。なお、実施形態1および変形例1の異質箇所検出装置1,11と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
変形例2の異質箇所検出装置21は、測定装置3と、測定装置3に接続される線状検出部22とを備えている。
このうち、線状検出部22は、平行部23と、平行部23のインピーダンスと異なるインピーダンスに設定されるマーキング部25とを交互に有している。
【0028】
平行部23は、二本の被覆導線24a,24bを離間させた状態で平行に設けている。本変形例2の平行部23では、被覆導線24a,24bの間の中心同士の離間距離W3が実施形態1の被覆導線14,14の離間距離W1(図1参照)と比べて大きく設定されている。
これにより、平行部23の未充填箇所を計測できる領域(図4中二点鎖線で示す領域S3参照)は、図1に示す平行部4の未充填箇所を計測できる領域より大きい。なお、本変形例2の線状検出部22は、一本の被覆導線を折り返すことにより被覆導線24a,24bの重複部(並列部)を形成したものであるが、以下の説明においては、二本の被覆導線24a,24bを備えるものとして説明する。なお、一本の被覆導線を折り返すものでは、終点の反射は上下逆方向となる。
【0029】
また、本変形例2では、マーキング部25において被覆導線24a,24bが近接方向に湾曲させられている。すなわち、マーキング部25の被覆導線24a,24bの中心同士の離間距離W5は、平行部23における被覆導線24a,24bの離間距離W3よりも小さくなるように設定されている。例えば、実施形態1の線状検出部2では、図1に示すように被覆導線14,14の離間距離W2を離間距離W1よりも大きく設定して、インピーダンスの変化を与えている。これに対して、本変形例2の線状検出部22では、被覆導線24a,24bの離間距離W3を平行部23の離間距離W5よりも小さくなるように設定して、マーキング部25を形成している。このため、余分なケーブル長や場所をとらずに効率よくインピーダンスの変化の「比率」を大きくすることができる。これにより、明瞭なマーキング反射を得られる。
【0030】
次に、変形例2の異質箇所検出装置21の作用効果について説明する。
図4に示すようにマーキング部25の離間距離W5は、平行部23の離間距離W3よりも小さく、平行部23と比較してインピーダンスが小さく設定されている。このため、図5に示すように、測定装置3のモニタ部では、マーキング部25の位置に対応して、下向きのピーク波形16d,16dとして検出される。
一方、未充填箇所20では、空隙がない充填箇所よりもインピーダンスが上昇する。
したがって、未充填箇所20に該当する箇所における測定波は、比較的高いインピーダンスの高反射領域27として測定装置3にて検出される。
【0031】
このように、本変形例2の測定装置3では、マーキング部25,25に対応するピーク波形16dが高反射領域27とは逆向きに現れる。このため、未充填箇所20を容易に識別できる。
他の構成、および作用効果については、実施形態1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0032】
[変形例3]
図6は、実施形態1の変形例3の異質箇所検出装置に用いられる線状検出部32を示すものである。なお、実施形態1および変形例1~2の異質箇所検出装置1,11,21と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
本変形例3の線状検出部32は、被覆導線24a,24b間の距離を所望の離間距離Wに維持するため、複数の平行部スペーサ33およびマーキング部スペーサ34をそれぞれ平行部23およびマーキング部25に装着している。
【0033】
平行部スペーサ33は、棒状の長桁部33aと、長桁部33aの両端にそれぞれ設けられる導線係合部33b,33bとを有している。図6においては、一か所の平行部23に三本の平行部スペーサ33が使用されている。
導線係合部33bは、側面視で略C字状を呈している。導線係合部33bの開放されている先端間は、拡開方向へ弾性変形可能である。
【0034】
本変形例3では、被覆導線24a,24bに対して、導線係合部33b,33bをそれぞれ係合させる。長桁部33aは、被覆導線24a,24bの延設方向と直交する状態で装着される。
このように平行部23では、複数の平行部スペーサ33が所定の間隔で配置されて被覆導線24a,24b間の離間距離Wを所望の大きさに維持している。
【0035】
マーキング部スペーサ34は、マーキング部25に装着される。
マーキング部スペーサ34は、棒状の短桁部34aと、短桁部34aの両端に設けられた導線係合部34b,34bとを有している。
短桁部34aは、平行部スペーサ33の長桁部33aと比べて短く設定されている。導線係合部34bは、側面視で略C字状を呈し、開放されている先端間は、拡開方向へ弾性変形可能である。
【0036】
そして、マーキング部25において、一対の各被覆導線24a,24bに導線係合部34b,34bをそれぞれ係合させる。
これによりマーキング部25では、被覆導線24a,24b間の間隔が平行部23における被覆導線24a,24b間の間隔より狭く維持される。
このため、マーキング部25では、平行部23のインピーダンスよりも低いインピーダンスを安定して得られる。
他の構成、および作用効果については、実施形態1および変形例1~2と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0037】
[変形例4]
図7は、実施形態1の変形例4の異質箇所検出装置50に用いられる線状検出部42を示すものである。なお、実施形態1および変形例1~3の異質箇所検出装置1,11,21と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
本変形例4の線状検出部42の平行部23には、被覆導線24a,24b間の離間距離Wを保つため、複数の平行部スペーサ33が装着されている。
【0038】
また、マーキング部45の被覆導線24a,24bは、交差するように配置されている。マーキング部45には、交差した状態で被覆導線24a,24b同士を固定するクリップ46が嵌着されている。
本変形例4のクリップ46は、側面視で略C字状を呈している。クリップ46は、開放された両先端間を拡開方向へ弾性変形可能である。
なお、図7に示すクリップ46については、二本の被覆導線14,14をお互いに隣接させる方向へ屈曲または湾曲させるものであればどのようなクリップであってもよく、形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【0039】
次に、本変形例4の異質箇所検出装置50に用いられる線状検出部42の作用効果について説明する。
変形例4の線状検出部42では、さらにマーキング部45にクリップ46が嵌着される。これにより、交差した状態で被覆導線24a,24b間が固定される。
このため、マーキング部45のインピーダンスを平行部23のインピーダンスよりも確実に低くすることができる。
他の構成、および作用効果については、実施形態1および変形例1~3と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0040】
[実施形態2]
本実施形態2の異質箇所検出装置50は、線状検出部として光ファイバケーブル60を用いたものであり、異質箇所を検出する機能に加えて、光ファイバ温度分布計測によって温度変化を計測する機能を備えている。
図8は、本発明の実施形態2の異質箇所検出装置50を示すものである。なお、実施形態1および変形例1~4の異質箇所検出装置1,11と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0041】
本実施形態2の異質箇所検出装置50は、測定装置13および線状検出部としての光ファイバケーブル60を備えている。なお、本実施形態の線状検出部は、一本の光ファイバケーブル60を折り返すことにより光ファイバケーブル60の重複部(並列部)を形成したものであるが、以下の説明においては二本の光ファイバケーブルを備えるものとして説明する。
異質箇所検出装置50の線状検出部は、二本の光ファイバケーブル60を平行に設けた平行部65と、所定の間隔で二本の光ファイバケーブル60を交差(または近接でもよい)させたマーキング部66とを交互に有している(図8参照)。そして、光ファイバケーブル60は、被検体に沿って配置される。
【0042】
図9は、一般的な光ファイバケーブル60の構成を示す断面図である。
光ファイバケーブル60は、光ファイバ芯線61と、保護材62と、導線63とを備える。光ファイバ芯線61は、主に透明のガラス製の線材から構成されている。
光ファイバ芯線61は、ステンレス鋼製の保護材62内に挿通されている。
導線63は、保護材62の周囲に設けられている。なお、保護材62を導電性金属で構成して導線63とともにまたは単独で導線として用いてもよい。
なお、本実施形態2では、一本の光ファイバ芯線61を有する光ファイバケーブル60を例示している。
しかしながら特にこれに限らない。たとえば、一本の光ファイバケーブル60内に二本以上の光ファイバ芯線61を設けてもよい。また、導線63は、銅線とニクロム線等の他の金属素材線とを交互に周状に配置してもよく、複数の金属素材線を混在させてもよい。
【0043】
そして、図8に示すように、光ファイバケーブル60の光ファイバ芯線61および導線63は、測定装置13に接続されている。
本実施形態2における計測は、二種類の異なる計測を合わせた体系となっている。本実施形態2の異質箇所検出装置50で用いる測定装置13は、実施形態1の測定装置(TDR装置)3と同様に構成されている。
さらに、測定装置13の筐体内に一体に若しくは別体で、光パルスジェネレータおよびサンプラを含む光ファイバ温度分布計測器(例えばDTS装置(Distributed Temperature Sensing))、および、通電用の電源装置等を有する。このうち、導電材には、TDR装置と電源装置とが接続されている。また、光ファイバ芯線61には、DTS光ファイバ温度分布計測装置が接続される。
この状態で、導線63に測定装置13若しくは電源装置から通電すると、保護材62および導線63が発熱する。
また、TDR装置から発信された電気的なパルス波は、光ファイバケーブル60の先端で反射されて測定装置13で検出される。本実施形態2の光ファイバケーブル60を用いることにより、変形例4の線状検出部42と同様に被検体の異質箇所を検出することができる。ケーブルが導線63を持たないタイプの場合は保護材62に通電して加熱させたり、TDR装置を接続してもよい。
【0044】
光ファイバケーブル60の導線63の周囲は、絶縁材を含む被覆材64で覆われている。マーキング部66では、光ファイバケーブル60,60が交差する部分をクリップで係止する。
これにより、光ファイバケーブル60は、マーキング部66を維持した状態で、被検体に沿わせて配置できる。
光ファイバ芯線61は、緩やかに湾曲して延設されるため、一端部から入光した測定光を少ない損失で他端部から出光させるとともに散乱光を入射側に戻すことができる。
【0045】
さらに、測定装置13は、一本の光ファイバケーブル60を折返して接続することにより、離間した2か所の測定箇所P1,P2(図8参照)において、光ファイバケーブル60の温度の変化を計測することができる。光ファイバケーブル60を用いて測定箇所の温度変化を光ファイバ温度分布計測により計測する方法は、下記参考文献1に記載されているものが知られている。
(参考文献1)
(1)Sakaki, T., B. Firat-Luthi, T. Vogt, M. Uyama and S. Niunoya (2019), Heated fiber-optic cables for distributed dry density measurements of granulated bentonite mixtures: Feasibility experiments, Geomechanics for Energy and the Environment, Vol. 17, 56-65
(2)榊利博,B. Firat-Luthi, T. Vogt, 鵜山雅夫,西村政展,丹生屋純夫(2018), 加熱型光ファイバケーブルによる緩衝材未充填部の検出, 第73回土木学会年次学術講演会CS7-028, 北海道大学,2018/8/29-31
【0046】
次に、本実施形態2に係る異質箇所検出装置50の作用効果について説明する。
図10は、測定箇所P1における温度変化T1を示し、図11は、測定箇所P2における温度変化T2を示している。異質箇所検出装置50によると、地下水の流動を検出できる。
まず、図10および図11に示すように、測定装置13により、導線63に通電を行い、保護材62および導線63を加熱する(時刻0~t,t)。保護材62および導線63を加熱すると、図10および図11に示すように、測定箇所P1,P2の温度T1,T2も上昇する。加熱を停止すると、保護材62および導線63の温度が低下し、反対側に位置する他方の光ファイバケーブル60の熱がそれぞれ伝播して、互いに温度ピークF,Fとして出現する。図10および図11では、山型の温度ピークF,Fを例示しているが、特にこれに限らず例えば、加熱時間が長いと加熱中に対面の影響がでてくるなど、他の形状の温度ピークF,Fが出現する場合もある。
【0047】
図8中の測定箇所P1,P2間にて、一方から他方に向けて流体の流れが生じている場合には、測定箇所P1,P2における温度ピークF,Fの出現にタイムラグが生じる。
たとえば、図8中の測定箇所P1,P2間にて、測定箇所P2から測定箇所P1に向けて地下水の流動が生じている場合(例えば図8に示す浸透流R1)、図10に示す下流側の測定箇所P1における温度ピークFの出現時刻は、図11に示す上流側の測定箇所P2における温度ピークFの出現時刻よりも早い。
このように、盛土や地盤内において浸透流や地下水の流れが生じていると、図10に示す測定箇所P1から先に対となる反対側の保護材62および導線63の発熱の影響が検出されて、続いて図11に示す測定箇所P2から対となる反対側の保護材62および導線63の発熱の影響が検出される。
【0048】
このため、本実施形態2では、マーキング部66に基づく、異質箇所の検出および規模の測定に加えて、同じ光ファイバケーブル60を用いて熱の計時変化を測定することにより、浸透流R1またはR2の方向や規模を知ることができる。
したがって、被検体内に今後生じる可能性がある異質箇所を予見することができる。
また、被検体内に浸食、洗堀が進行して水で満たされた空洞が発生すると、図9に示すように他の平行部65と比較してインピーダンスが低い低反射領域121として表示される。空洞が空気で満たされている場合はインピーダンスが大きくなるためにその領域は反射係数が増加する形で発生する。検知対象はインピーダンスや熱特性が異なればよく、例えば、他の箇所より湿潤した箇所、目詰まりした箇所、植生の影響を受けた箇所などの不具合が生じているまたは生じる可能性のある箇所も含まれる。なお、異質箇所は、光ファイバケーブル60にマーキング部66が設けられていなくても予見できる。
上述してきたように、本実施形態2の異質箇所検出装置50では、現在の異質箇所に加えて、空洞の発生する可能性を予見できる。
【符号の説明】
【0049】
1,50 異質箇所検出装置
2 線状検出部
3,13 測定装置
4 平行部
5 マーキング部
14 被覆導線(導電材)
60 光ファイバケーブル(導電材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11