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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ふっ素樹脂粘着テープ巻回体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20240318BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240318BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240318BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
B32B27/30 D
B32B27/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020065614
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161303
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚形 昂生
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2013/069784(JP,A1)
【文献】特開2009-024042(JP,A)
【文献】特開2018-176747(JP,A)
【文献】特開2014-173037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0048231(US,A1)
【文献】実開昭50-070161(JP,U)
【文献】実開昭48-077474(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふっ素樹脂を含み、第1主面と前記第1主面の裏側の第2主面とを有している帯形状を有する原反と、
粘着剤を含み、前記第2主面に設けられた粘着層と、
を具備し150以下の引裂き強度を有するふっ素樹脂粘着テープを含むふっ素樹脂粘着テープ巻回体であって、
前記ふっ素樹脂粘着テープ巻回体は前記ふっ素樹脂粘着テープが巻回された巻回構造を有し、前記巻回構造において前記第1主面が外周側を向くように前記原反と前記粘着層とが交互に放射方向へ積層されており、前記巻回構造は前記原反と前記粘着層との積層構造の側面が露出する第1端面と第2端面とを有し、
前記第1端面と前記第2端面との少なくとも一方に設けられている複数の切込を有し、 前記切込の、前記第1端面および前記第2端面と交差する方向への深さは、前記第1端面および前記第2端面と交差する方向への前記ふっ素樹脂粘着テープの幅に対し0.1%を上回り36.6%以下である、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項2】
前記ふっ素樹脂粘着テープの厚さは0.08mm以上0.26mm以下である、請求項1に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項3】
前記ふっ素樹脂粘着テープの前記幅は10mm以上50mm以下である、請求項1又は2に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項4】
複数の前記切込は、2mm以上3mm以下の平均ピッチで配置されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項5】
複数の前記切込は、前記第1端面と前記第2端面との両方に設けられている、請求項1乃至4の何れか1項に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項6】
前記ふっ素樹脂は四フッ化エチレン樹脂を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【請求項7】
前記粘着剤はシリコーン粘着剤を含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載のふっ素樹脂粘着テープ巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
ふっ素樹脂は、耐熱性と非粘着性とを併せ持つという特性を有している。また、ふっ素樹脂は、摺動剤としての性質も示す。シート状の材料やフィルム等の薄型のふっ素樹脂の製品や部材、並びに立体的な構造を有するふっ素樹脂の製品や部材など様々な用途において、ふっ素樹脂の性質は利用されている。例えば、原反としてのふっ素樹脂フィルムに粘着剤が塗布されて構成されるふっ素樹脂粘着テープの用途として、電線を束ねるための絶縁テープとしての用途を挙げることができる。
【0003】
ふっ素樹脂粘着テープを使用する現場では、所望の長さにテープを切断するにあたってテープロールとハサミ等の切断器具との持ち替えが難しかったり、切断器具の使用や持ち込みが望ましくなかったりする場合がある。例えば、電線を束ねるためにふっ素樹脂テープを用いる際、束ねた電線に巻いた後のテープの切断に切断器具を用いると、誤って電線を切断してしまう恐れがある。なお、電線がビニール被覆されている場合は、切断器具の使用により誤って電線を傷つけてしまっていても切り傷が目立たないため、後の断線や出火の原因になり得るダメージを見過ごしやすい。そのため、切断器具を使用せずに、例えば、手でちぎったり引き裂いたりして所望の長さに切ることができるふっ素樹脂テープが望まれている。
【0004】
特許文献1(特表2018-508596号公報)には、ポリオレフィン等の熱誘発弾性回復(thermally-induced elastic recovery)が可能なポリマーフィルムから成る前駆体フィルムから作製される、手切れ性を有するフィルムが記載されている。具体的には、前駆体フィルムの特定領域を選択的に加熱することで凹凸形状が形成され、それにより引裂特性が付与される。当該フィルムは、様々な用途のテープのバッキングとして使用できる。
【0005】
特許文献2(特開2003-341712号公報)には、熱接着性を有する合成樹脂フィルムの単層の帯状フィルムを用いて構成される結束テープが記載されている。帯状フィルムの側辺部に沿って、複数の押切傷が設けられており、それにより結束テープはせん断容易性を有する。押切傷の深さを0.001mmから5mm程度の範囲内に設定することで、押切傷を目立たせずに、手で容易にせん断することが可能な結束テープとなる。なお、帯状フィルムには熱接着性を有する合成樹脂フィルムが用いられているため、当該結束テープは熱接着性を有する。熱接着性を有する合成樹脂フィルムを形成する材料としては、ポリプロピレン等が挙げられている。
【0006】
しかし何れもの文献にも、ふっ素樹脂粘着テープについて、手でちぎったり引き裂いたりすることでテープを切ることができる性質を付与することが記載されていない。なお、ここでは、そのような性質を手切れ性と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2018-508596号公報
【文献】特開2003-341712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
手切れ性が付与されたふっ素樹脂粘着テープを備えたふっ素樹脂粘着テープ巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によると、ふっ素樹脂を含む原反と、粘着剤を含む粘着層とを具備するふっ素樹脂粘着テープを含むふっ素樹脂粘着テープ巻回体が提供される。原反は、第1主面とこの第1主面の裏側の第2主面とを有している帯形状を有する。粘着層は、第2主面に設けられている。ふっ素樹脂粘着テープは150以下の引裂き強度を有する。ふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、ふっ素樹脂粘着テープが巻回された巻回構造を有している。巻回構造において、第1主面が外周側を向くように、原反と粘着層とが交互に放射方向へ積層されている。巻回構造は、原反と粘着層との積層構造の側面が露出する第1端面と第2端面とを有する。巻回構造は、第1端面と第2端面との少なくとも一方に設けられている複数の切込を有している。切込の、第1端面および第2端面と交差する方向への深さは、第1端面および第2端面と交差する方向へのふっ素樹脂粘着テープの幅に対し0.1%を上回り36.6%以下である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有するふっ素樹脂粘着テープ巻回体によれば、ふっ素樹脂の特性を示し、且つ、手切れ性を示すふっ素樹脂粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例を概略的に表す斜視図。
図2図1におけるA部の拡大斜視図。
図3】実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープの一例を表す概略図。
図4図3のIV-IV’線に沿った断面を表す概略断面図。
図5】実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例の端面を表す概略図。
図6】テープ巻回体の前駆体であるログロールを概略的に表す斜視図。
図7】ログロールの押切加工を概略的に表す斜視図。
図8】ログロールを用いたスリット加工を概略的に表す斜視図。
図9】実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の前駆体を概略的に表す斜視図。
図10】実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例を概略的に表す斜視図。
図11】従来のテープロールの一例を概略的に表す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
粘着テープに手切れ性を付与する手段として、例えば、次のように原反自体に手切れ性を付与することができる。粘着テープの原反は、芯体として繊維質を含み得るが、その場合は、例えば、タテ方向(Machine Direction;MD)とヨコ方向(Transverse Direction;TD)との間で強度差を付けることができる。具体的には、“MD強度<TD強度”となるように調整することで、TD方向に切れるようにできる。原反が芯体を含まないフィルムである場合は、例えば、強度差を生む凹凸形状を付けたフィルムに形成したり、フィルムの延伸により切れ方向を制御したりすることで、原反自体に手切れ性を付与できる。原反自体に手切れ性が無いテープについては、後加工により手切れ性を付与することができる。例えば、ミシン目加工を入れる方法がある。何れも、手切れ性のある状態のログロールを得てから所望の幅へのスリット加工を行う方式である。
【0013】
手切れ性を付与する芯体の使用が不可の場合や、フィルムの表面加飾および分子配向制御が困難な場合は、手切れ性のある原反の製造自体が困難である。例えば、ふっ素樹脂粘着テープには、芯体としてガラスクロスを含んでいるものと、原反がふっ素樹脂フィルムのみのものとがある。ガラスクロスを含んでいるテープは、手でちぎることが可能であるものの、ある程度の力を入れる必要があるうえ、きれいにちぎることが難しい。さらに、クロス飛散が生じるおそれもある。テープに伸びが要求されたり、起伏の少ない表面が望まれたりする場合は、ガラスクロスを含まないフィルム系のふっ素樹脂粘着テープが望ましい。ガラスクロス自体の厚さに起因してガラスクロス入りのふっ素樹脂フィルムの厚みがどうしても一定以上になることからも、用途によっては芯体を用いないフィルム系のテープが望ましい場合もある。四フッ化エチレン樹脂の様に溶融粘度が高いふっ素樹脂が用いられる場合は、フィルム表面の加飾が難しい。また、ふっ素樹脂フィルムの製造において、皺や歪みの発生を抑えるためにMD方向へ引っ張りながらフィルム製造が行われる。この際、ふっ素樹脂の分子配向がMD方向へ配向しやすいため、TD方向への手切れ性が良好な分子配向が得られにくい。
【0014】
また、剥離フィルムのないロール状粘着テープでの後加工では、次の問題が生じる。一方において、粘着塗工ライン中で巻取り直前にミシン目加工を入れる場合、破断させずに巻取りまで行うには、張力コントロールが必要になる。その他方、一度ロール状粘着テープとした後にミシン目加工を入れる場合、粘着テープを巻出して剥離フィルムとラミネートしてからミシン目加工を入れ、剥離フィルムから剥がしながら再度巻き取るという煩雑な工程となる。このような後加工は、いずれの場合も極めて低張力で巻き取らないとミシン目に開きが生じ、巻取り時のエア噛みやシワ発生の原因となる。また、粘着剤がシリコーン系の材料である場合は適用可能な剥離フィルムが非常に高価であり、高コストとなる問題もある。
【0015】
上述したとおり、ふっ素樹脂粘着テープに用いられるフィルムを含め、ふっ素樹脂フィルムでは製造の都合上、タテ方向(MD)に分子配向が揃いやすい。そのため、ふっ素樹脂粘着テープには、引き裂こうとする場合にTD方向に裂けるよりはMD方向に沿って裂けやすい傾向がある。図11に、ふっ素樹脂を用いた従来のテープロールの一例を概略的に表す斜視図を示す。
【0016】
図11に示すテープロール100は、ふっ素樹脂粘着テープ200と巻芯300とを含む。ふっ素樹脂粘着テープ200は、例えば、帯形状のふっ素樹脂フィルムから成る原反と、その片面に塗布された粘着剤からなる粘着層とから構成され得る。ここでは、芯体を含まないふっ素樹脂フィルムを原反に用いているテープを例に説明する。巻芯300は、例えば、円筒形状を有し得る。ふっ素樹脂粘着テープ200は、巻芯300の円筒外周に巻き付けられており、渦巻き状の巻回構造を成している。
【0017】
その製造工程に起因して、ふっ素樹脂粘着テープ200におけるふっ素樹脂フィルムの配向はMD方向111に沿っている。即ち、ふっ素樹脂フィルムの分子配向がふっ素樹脂粘着テープ200の巻き出し方向101に沿っている。従って、巻き出し方向101へのふっ素樹脂粘着テープ200の引張強度が高く、テープ巻き出しの際に意図しない箇所でのちぎれが生じにくい。その反面、巻き出したテープを長さ調節のために刃物を用いて切断する代わりに手でちぎろうとしても、テープがきれいに切れにくい。具体的には、巻き出し方向101に沿った長さ方向にテープが裂けてしまって幅の短いテープに分かれてしまったり、テープが伸びてしまい、伸ばし切ってからでないとテープを引き裂けず変形が生じてしまったりする。つまり、当該テープロール100が備えるふっ素樹脂粘着テープ200は、手切れ性に乏しい。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0019】
<ふっ素樹脂粘着テープ巻回体>
実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、手切れ性を付与したふっ素樹脂粘着テープを備える。具体的には、ふっ素樹脂粘着テープは、ふっ素樹脂を含む原反と、粘着剤を含む粘着層とを具備する。原反は、第1主面とこの第1主面の裏側の第2主面とを有している帯形状を有する。粘着層は、第2主面に設けられている。ふっ素樹脂粘着テープは150以下の引裂き強度を有する。ふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、ふっ素樹脂粘着テープが巻回された巻回構造を有している。巻回構造において、第1主面が外周側を向くように、原反と粘着層とが交互に放射方向へ積層されている。巻回構造は、原反と粘着層との積層構造の側面が露出する第1端面と第2端面とを有する。巻回構造は、第1端面と第2端面との少なくとも一方に設けられている複数の切込を有している。切込の深さは、ふっ素樹脂粘着テープの幅に対し0.1%を上回り36.6%以下である。ここでいう切込の深さは、第1端面および第2端面と交差する方向への深さを指す。また、ふっ素樹脂粘着テープの幅とは、第1端面および第2端面と交差する方向への幅を指す。
【0020】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体を詳細に説明する。図1図5に、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例を概略的に示す。
【0021】
図1は、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例を概略的に表す斜視図である。図2は、図1におけるA部の拡大斜視図である。図示するふっ素樹脂粘着テープロール10は、ふっ素樹脂粘着テープ20と巻芯30とを含む。図2に示すとおり、ふっ素樹脂粘着テープ20は、原反21と粘着層22とを含む。原反21は、帯形状を有し、第1主面23と第2主面24とを有する。原反21は、ふっ素樹脂を含む。原反21は、例えば、ふっ素樹脂フィルムであり得る。粘着層22は、粘着剤を含む。原反21の第2主面24側に粘着層22が設けられる形で原反21と粘着層22とが積層されて、ふっ素樹脂粘着テープ20が構成されている。
【0022】
ふっ素樹脂粘着テープ20は帯形状を有しており、その長辺方向、つまり巻き出し方向11(MD方向に沿う方向)に沿う縁に沿って複数の切込40を有する。図示する例では、ふっ素樹脂粘着テープ20の両側の縁、つまりふっ素樹脂粘着テープ20の側辺部に沿って複数の切込40が設けられている。複数の切込40が設けられる側辺部は、ふっ素樹脂粘着テープ20の両側の側辺部であってもよく、何れか一方の側辺部のみであってもよい。各々の切込40は、その厚み方向、つまり原反21と粘着層22との積層方向に、ふっ素樹脂粘着テープ20を貫通している。但し、それぞれの切込40がふっ素樹脂粘着テープ20の側辺の縁を亘る距離は、ふっ素樹脂粘着テープ20の厚みと必ずしも一致しない。例えば、切込40の向きは、第1主面23に直交する方向に限られない。また、各々の切込40の向きは、互いに揃わなくてもよい。
【0023】
ふっ素樹脂粘着テープ20は、150以下の引裂き強度を有する。ここでいう引裂き強度は、JIS L 1096(トラペゾイド法)に準ずる引裂き強さ試験法によって求められるものを指す。ふっ素樹脂粘着テープ20の引裂き強度は、例えば、原反21の成形に用いられた原料粉末によって異なり得る。例えば、四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)の粉末を用いた圧縮成形により得られる原反を用いたふっ素樹脂粘着テープについては、後述するモールディングパウダーを原料粉末として用いて得られるPTFEフィルムを原反21に用いることで、150以下の引裂き強度を有するふっ素樹脂粘着テープ20を得ることができる。対して、樹脂の粒子径がより微細であるファインパウダーを原料粉末に用いて得られるPTFEフィルムを原反21に用いた場合は、150以下の引裂き強度を有するふっ素樹脂粘着テープ20が得られにくい。なお、後述のとおりモールディングパウダーは懸濁重合で得られるPTFE粉末であるが、ファインパウダーは、乳化重合で得られた水性分散液を凝析・乾燥して得られるものである。
【0024】
巻芯30は、例えば、円筒形状を有し得る。巻芯30としては、例えば、紙製の巻芯等、粘着テープ用に汎用されている巻芯を用いることができる。巻芯30の形状は図示するものに限られない。ふっ素樹脂粘着テープ20は、巻芯30の円筒外周に巻き付けられており、そうして巻回されていることで渦巻き状の巻回構造を有するふっ素樹脂粘着テープ巻回体を成している。このような巻回構造が構成されていることで、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体では原反21及び粘着層22は、第1主面23が外周側を向き且つ原反21と粘着層22とが交互に放射方向へ積層されるように配置されている。ここで、巻回構造の捲回軸方向は、例えば、ふっ素樹脂粘着テープ20が有する帯形状の短辺方向、つまり幅方向9(TDに沿う方向)に沿っている。また、原反21の側辺面(第1主面23と第2主面24と交差する面であって、帯形状の長辺方向に沿う面)と粘着層22の側辺面(第2主面24と交差する面であって、ふっ素樹脂粘着テープ20の長辺方向に沿う面)とが巻回構造の巻回周ごとに交互に配置されて、巻回構造の端面が構成されている。巻回構造の端面において、原反21と粘着層22との積層構造の側面が露出していることになる。また、巻回構造の端面は、ふっ素樹脂粘着テープ20の短辺方向、つまり幅方向9と交差する。
【0025】
巻回構造は、円筒形状を有し得る。ふっ素樹脂粘着テープ巻回体の巻回構造を肉厚で中空な円筒形状として表すと、ふっ素樹脂粘着テープ20のうち最外周に位置する部分の第1主面23が円筒形状の外側面(outer lateral face)に対応し、巻回構造の端面が円筒形状の端部にある円盤面に対応する。また、このような円筒形状において、最内周に位置する部分の粘着層22の内側の面が、円筒形状の内側面(inner lateral surface)に対応する。
【0026】
ふっ素樹脂粘着テープ20の側辺部にある複数の切込40は、ふっ素樹脂粘着テープ20が巻回されている状態では、巻回構造の端面に配置されることになる。図示する例では、巻回構造を構成すべく原反21と粘着層22とが交互に積層されていることにより、巻回構造の端面における複数の切込40の配置が碁盤目(checkerboard)状になっている。
【0027】
図3は、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープの一例を表す概略図である。図3は、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体の巻回構造を円筒形状で表した場合に、外周から円筒の中心に向かって巻回構造を見た状態の一部を表す。また図3は、円筒を円柱のように立てるのではなく、転がした車輪を縁から見たような状態の巻回体の一部を表している。図示するとおり、ふっ素樹脂粘着テープ20が巻回されて成る巻回体が有する巻回構造の第1端面31及び第2端面32のそれぞれに、複数の切込40が設けられている。図3の横方向に対応する幅方向9は、第1端面31及び第2端面32と交差する方向である。
【0028】
ふっ素樹脂粘着テープ20の幅方向9への各切込40の深さDは、ふっ素樹脂粘着テープ20の帯形状の短辺幅に対し0.1%を上回り36.6%以下である。150以下の引裂き強度を有するふっ素樹脂粘着テープ20が含む帯形状の原反21の側辺部に設けられた切込40の深さがこの範囲内であると、MD方向への強度を維持しつつふっ素樹脂粘着テープ20が良い手切れ性を示すことができる。従って、ふっ素樹脂粘着テープ20の巻き出し容易性と良好な手切れ性とを両立することができる。
【0029】
詳細には、テープ幅に対し0.1%を超える深さの切込40が入っていることで、ふっ素樹脂粘着テープ20を手でちぎるなどして切ろうとした際に、切ろうとしてる位置に近い切込40に応力が集中する。そのため、ふっ素樹脂粘着テープ20に過度な変形を生じさせたり縦裂けを発生させたりすることなく、そこでふっ素樹脂粘着テープ20を切ることができる。例えば、ふっ素樹脂粘着テープ20をMD方向への任意の箇所で切断する場合、当該箇所より巻き出しの上流側を指で押さえ、ふっ素樹脂粘着テープ20の下流側の部位を指でつまんで巻き出し方向と交差する方向へ引っ張ることによって、当該箇所にある切込40の位置でふっ素樹脂粘着テープ20を手でちぎったり、手で切ったりすることができる。即ち、一定の深さを超える切込40により、ふっ素樹脂粘着テープに良い手切れ性が付与されている。切込40の深さをテープ幅に対し36.6%以下に留めることで、巻き出し方向11への強度(即ち、MD強度)が十分になり、例えば、巻き出しの際に意図しない箇所でふっ素樹脂粘着テープ20がちぎれたり裂けたりすることを抑制できる。当該切り込み深さは、全ての切込40の間で揃っていてもよいが、それに限られない。各々の切込40の深さは、互いに一致していなくてもよい。切込40の深さがテープ幅に対し33.3%以下であることがより好ましい。
【0030】
第1端面31側の側辺部に設けられている複数の切込40及び第2端面32側の側辺部に設けられている複数の切込40の各々の向きは、何れもふっ素樹脂粘着テープ20の幅方向9に揃っているが、これら複数の切込40の向きは、互いに揃ってなくてもよい。複数の切込40の各々は、幅方向9と平行であってもよく、或いは平行でなくてもよい。第1端面31側の側辺部に設けられている複数の切込40の各々の向きは、何れも第1端面31と交差する。各切込40の向きは、第1端面31と直交してもよく、直交しなくてもよい。第2端面32側の側辺部に設けられている複数の切込40の各々の向きは、何れも第2端面32と交差する。各切込40の向きは、第2端面32と直交していてもよく、直交していなくてもよい。
【0031】
複数の切込40は、第1端面31と第2端面32との少なくとも一方に設けられている。例えば、ふっ素樹脂粘着テープ20の巻回体は、第1端面31にのみ、複数の切込40が設けられているテープロールであってもよい。或いは、巻回体は、第2端面32にのみ、複数の切込40が設けられているテープロールであってもよい。第1端面31と第2端面32との両方のそれぞれに、切込40が複数設けられていることが好ましい。第1端面31と第2端面32との両方が複数の切込40を有する場合、ふっ素樹脂粘着テープ20の長さ方向(即ち、MD)への複数の切込40の配置は、第1端面31側の側辺部と第2端面32側の側辺部との間で揃っていてもよい。或いは、第1端面31側の側辺部に設けられている複数の切込40のふっ素樹脂粘着テープ20の長さ方向における配置は、第2端面32側の側辺部に設けられている複数の切込40のふっ素樹脂粘着テープ20の長さ方向における配置と一致していなくてもよい。
【0032】
ふっ素樹脂粘着テープ20の幅方向9への幅、つまり第1端面および第2端面と交差する方向への幅Wは、例えば、10mm以上50mm以下であり得る。幅Wが10mm以上25mm以下であることが好ましい。この範囲内の幅Wを有するふっ素樹脂粘着テープ20の巻回体は、取り扱い性が良好である。ふっ素樹脂粘着テープ20の幅Wの具体例として、10mm、13mm、19mm、25mm、30mm、38mm、50mmを挙げることができる。
【0033】
図4は、図3のIV-IV’線に沿った断面を表す概略断面図である。ふっ素樹脂粘着テープ20の厚さTは0.08mm以上0.26mm以下であることが望ましい。この厚さTは、原反21の厚さTと粘着層22の厚さTとの合計厚さに対応する。厚さTがこの範囲内にあると、原反21としてふっ素樹脂フィルムを用いることの利点を活かしつつ、テープ巻き出しの容易性や接着する対称基体へのテープの貼り付けや巻き付け等といったテープとしての取り扱いが良好になる。ふっ素樹脂粘着テープ20の呼び厚の例として、0.08mm、0.13mm、0.18mm、及び0.23mmを挙げることができる。呼び厚0.08mmのふっ素樹脂粘着テープ20では、例えば、原反21が平均40μmの厚さTを有するとともに、粘着層22が平均50μmの厚さTを有し得る。
【0034】
図5は、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の一例の端面を表す概略図である。図示する端面は、第1端面31および第2端面32の何れの一方でもあり得る。例示するふっ素樹脂粘着テープ20の巻回体の端面に配置されている複数の切込40は、図の縦方向に対応する第1方向41に沿っている切込40と、図の横方向に対応する第2方向42に沿っている切込40とに大まかに分けることができる。第1方向41に沿っている切込40と、第2方向42に沿っている切込40とは、交差している。
【0035】
図示する例では、巻回構造の端面に設けられている複数の切込40の配置は碁盤目状になっているが、複数の切込40の配置は図示する例に限られない。第1方向41に沿っている切込40と第2方向42に沿っている切込40との交差の角度は、直角または略直角であることが望ましい。第1方向41と第2方向42との位置関係は、直角または略直角であり得る。或いは、第1方向41と第2方向42とは、鋭角または広角に交差する位置関係にあり得る。例えば、複数の切込40は、図示するような正方形のマスが配列した模様の代わりに菱型模様を形成する配置で端面に設けられていてもよい。第1方向41に沿っている切込40同士の配列は、平行又は略平行であることが望ましい。第2方向42に沿っている切込40同士の配列は、平行又は略平行であることが望ましい。図示する例では、第1方向41の切込40と第2方向の切込40とが交差する配置を示しているが、何れの切込も他の切込と交差しない配置を採用することも可能である。例えば、第2方向42に沿う切込40を省略して第1方向41に沿う切込40のみ設けた配置や、端面の円盤形状の中心から外周へ向かって放射状に切込が沿う配置も可能である。
【0036】
巻回体の端面における複数の切込40は、例えば、2mm以上3mm以下の平均ピッチで配置され得る。ここでいうピッチとは、第1方向41に沿っている切込40についてのピッチP及び第2方向42に沿っている切込40についてのピッチPの何れをもいう。即ち、第1方向41に沿う切込40のピッチPの平均が2mm以上3mm以下であり得るし、第2方向42に沿う切込40のピッチPの平均が2mm以上3mm以下であり得る。第1方向41への切込40のピッチPの平均と第2方向42への切込40のピッチPの平均とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1方向41への切込40のうち隣接するある一対の切込40の間のピッチPと、別の隣接する一対の切込40の間のピッチPとは同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、第2方向42への切込40のうち隣接するある一対の切込40の間のピッチPと、別の隣接する一対の切込40の間のピッチPとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
第1端面31と第2端面32との間で、複数の切込40の配置が一致していもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
原反21は、例えば、単層の帯形状のふっ素樹脂フィルムから形成され得る。ふっ素樹脂を用いた原反を含むことにより、耐熱性が要求される用途にふっ素樹脂粘着テープ20を好適に使用できる。また、ふっ素樹脂粘着テープ20の非粘着面にあたる原反21の第1主面23が非粘着性および摺動性を示せることも、ふっ素樹脂を用いることの利点である。ふっ素樹脂フィルムとしては、多孔質ではない焼成ふっ素樹脂フィルムを用いることが望ましい。焼成されているふっ素樹脂製品と比較して未焼成のふっ素樹脂製品は伸びやすい。そのため、手切れ性の観点からは、焼成ふっ素樹脂を用いた原反が望ましい。ふっ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)が好ましい。
【0039】
原反21は、例えば、エッチング処理が施されたふっ素樹脂フィルムであってもよい。適用するエッチング処理によって、原反21への粘着剤の付き具合が異なり得る。例えば、ナトリウムエッチング処理によりふっ素樹脂フィルムの表面にあるふっ素の一部を飛ばして炭素を露出させると、フィルム表面に対する粘着剤の結着性が良くなる。原反21に対する粘着剤の結着性が良くないと原反21が良い手切れ性を示しても粘着層22だけが伸びてしまうという現象が起こり得る。これに対し、ナトリウム処理によってフィルム表面に炭素を露出させたふっ素樹脂フィルムを原反21として用いると、そのような現象を抑えることができる。そのため、このようなエッチング処理が施されたふっ素樹脂フィルムを原反21に用いることが好ましい。
【0040】
原反21には、ガラスクロス等の芯体を含ませないことが望ましい。ガラスクロスの応力に起因して、鋭利な刃物を用いずに、例えば、手などでテープを引き裂くことが難しくなる。たとえ手でちぎることができたとしても、クロス飛散が生じたりするなど、きれいには破けないおそれがある。
【0041】
粘着層22は、原反21の片面、具体的には第2主面24に設けられている。粘着層22は、一方では、第2主面24に結着して、ふっ素樹脂粘着テープ20が巻き出される際に第2主面から剥離しないことが望ましい。その他方、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体の巻回構造において原反21と粘着層22とが交互に積層されているため、粘着層22と第2主面との界面の反対側の面にて粘着層22は第1主面と接触するものの、ふっ素樹脂粘着テープ20の巻き出し時に第1主面上に粘着剤等の構成成分を残さずに粘着層22がきれいに剥離することが望ましい。例えば、粘着層22の組成を適切に調整することで、第1主面からの剥離性の良し悪しを制御できる。粘着層22は、第2主面の全域を覆っていることが望ましい。つまり、粘着層22は、原反21と同様の帯形状を有することができる。
【0042】
粘着層22が含む粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤を挙げることができる。中でも、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐水性、耐薬品性、及び電気的絶縁性に優れるシリコーン粘着剤を含むことが好ましい。シリコーン粘着剤は、再剥離性にも優れているため、シリコーン粘着剤を含んだ粘着剤を粘着層22に用いることで、テープの巻き出しを良好にできる。また、シリコーン粘着剤はふっ素樹脂に対して粘着性を示すため、ふっ素樹脂粘着テープ用の粘着剤として好適に用いることができる。
【0043】
以上のとおり説明した構成を有するふっ素樹脂粘着テープ巻回体が備えるふっ素樹脂粘着テープは、ふっ素樹脂粘着テープとしての利点と良好な手切れ性とを兼ね備える。当該ふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、原反への手切れ性付与が困難なふっ素樹脂粘着テープに対し、後述する簡便な方法で手切れ性を付与して得られたものである。
【0044】
<製造方法>
実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、例えば、下記のとおり製造できる。即ち、次のようにして、ふっ素樹脂粘着テープに手切れ性を付与することができる。
【0045】
先に説明したとおり、ふっ素樹脂粘着テープについて、手切れ性芯体の採用が望ましくない場合があるし、樹脂フィルム自体への手切れ性付与は困難である。また、シリコーン系粘着剤を用いた粘着テープでは当該粘着剤の特性による利点が多いところ、そのような粘着テープについては高価な剥離フィルムに起因して後加工にコストがかかる。従って、ふっ素樹脂粘着テープについては、手切れ性のあるログロールを得るのが困難である。
【0046】
これに対し、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、ログロールを所望の幅に裁断した後に手切れ性を付与する方法によって得ることができる。具体的には、裁断後の粘着テープのロール体にてテープ側辺の縁面が露出する端面(即ち、第1端面31、第2端面32)から、例えば、刃傷を入れることで切込40を設けることにより、手切れ性を示す当該粘着テープ巻回体を得ることができる。この方法では、原反に特に工夫を加えることも不要であり、煩雑な後加工プロセスを経る必要もない。
【0047】
図面を参照しながら、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体を製造する方法の例を詳細に説明する。
【0048】
原反とするふっ素樹脂フィルムは、例えば、圧縮成形法により得ることができる。具体例として、PTFEのモールディングパウダーを圧縮して得られた予備成形品を焼成し、焼成後の成形品を、例えば、旋盤加工(lathing)によりシート状に切削加工することで、PTFEのフィルムやシートを得ることができる。切削加工で得られたフィルムに対し、加熱ロールを用いた延伸処理や、加熱雰囲気における延伸処理を実施してもよい。ここで、モールディングパウダーとは、懸濁重合で得られた原料粉末を意味する。モールディングパウダーは、いったん数十μm~数百μmの大きさに粉砕され、続いて成形用途に応じ、粒状化{造粒(pelletizing)}、微粉化(fine-cutting)、前加熱(pre-sintering)などの処理が施されたものである。また、granular resinとも言われる。モールディングパウダーには、添加物を加えてもよい。予備成形品の焼成温度は、例えば、PTFEの未焼成ポリマーの融点340℃以上であり得る。焼成温度は、360℃以上380℃以下にすることが好ましい。
【0049】
ふっ素樹脂フィルムに粘着剤を含んだ組成物を塗布して粘着層を形成することで、原反となるフィルムと粘着層とが積層されているふっ素樹脂粘着シートが得られる。このふっ素樹脂粘着シートをロールに巻き取ることで、テープ巻回体の前駆体であるログロールを得ることができる。ログロールの一例を、図6に示す。
【0050】
図6は、テープ巻回体の前駆体であるログロールを概略的に表す斜視図である。ログロール1は、ふっ素樹脂粘着シート2と巻芯3とを含む。巻芯3は、例えば、円筒形状を有し得る。ふっ素樹脂粘着シート2は、巻芯3の円筒外周に巻き付けられており、渦巻き状の巻回構造を成している。ふっ素樹脂粘着シート2は、原反となるふっ素樹脂フィルムに粘着剤を塗布した後、巻芯3に巻き取ったものである。
【0051】
ログロール1の状態から、巻き出した際のテープ幅が所望の幅となるようにふっ素樹脂粘着シート2を裁断することで、ふっ素樹脂粘着テープのロール体が得られる。ふっ素樹脂粘着シート2は、例えば、ログロール1に対し押切加工を実施したり、スリット加工を実施したりすることで、裁断できる。それぞれの例を図7及び図8に示す。
【0052】
図7は、ログロールの押切加工を概略的に表す斜視図である。図8は、ログロールを用いたスリット加工を概略的に表す斜視図である。何れの図においても、理解を促すために簡略化しており、加工装置を省略して、ふっ素樹脂粘着シート(並びにふっ素樹脂粘着テープ)及び巻芯のみ表している。押切加工により、巻芯3を含め、ふっ素樹脂粘着シート2を含んだログロール1を裁断することで、ふっ素樹脂粘着テープ2’と巻芯3’とを含むロール体1’を得ることができる。スリット加工では、ログロール1から巻き出したふっ素樹脂粘着シート2に所望のテープ幅となるよう切り込みを入れながら別の巻芯3’に裁断後のふっ素樹脂粘着テープ2’を巻き取ることで、ふっ素樹脂粘着テープ2’と巻芯3’とを含むロール体1’を得ることができる。こうして図9に示すような、実施形態に係るふっ素樹脂粘着テープ巻回体の前駆体としてのロール体1’が得られる。
【0053】
裁断後のロール体1’の裁断面またはその裏の端面(ログロールのTD方向の端面)に切れ目を加えることで、複数の切込40を設ける。例えば、ロール体1’においてふっ素樹脂粘着テープ2’の側辺(縁面)が露出する両端面(第1端面および第2端面)にて碁盤目状に刃傷を入れることで、図10に示す配置で切込40が設けられているふっ素樹脂粘着テープロール10を得ることができる。ロール体1’の端面の一方にのみ切込40を設ける処理を行ってもよい。また、ロール体1’の端面に設ける切込40の配置は、図示するものに限られない。異なる配置となるように処理を行ってもよい。
【0054】
上記方法により、原反への手切れ性付与が困難なふっ素樹脂粘着テープに対し、簡便に手切れ性を付与することができる。
【0055】
[実施例]
<製造>
(実施例1)
先に説明した製造方法により、PTFEのモールディングパウダーを用いて成形したPTFEフィルムを原反に用い、粘着層にシリコーン粘着剤を用いた呼び厚0.23mmのふっ素樹脂粘着テープを備えたふっ素樹脂粘着テープ巻回体を製造した。得られたふっ素樹脂粘着テープでは、原反の厚さが190μmであり、粘着層の厚さが40μmだった。また、ふっ素樹脂粘着テープの引裂き強度は150以下だった。テープの短辺幅、つまり巻回体が有する巻回構造の端面と交差する方向(TD)への幅は、19mmに調整した。巻回構造の両側の端面のそれぞれにおいて、複数の切込を設けた。各端面にて、平均で2mmのピッチで略平行に配列された複数の切込と、それらの切込に対し略直角の方向に沿って平均2mmのピッチで略平行に配列された複数の切込とを設けた。各々の切込の、テープの幅方向(TD)へのそれぞれの端面からの深さは、6mmに調整した。
【0056】
製造したふっ素樹脂粘着テープ巻回体の設計を表1にまとめる。具体的には、ふっ素樹脂粘着テープの呼び厚、原反の厚さ、接着層の厚さ、ふっ素樹脂粘着テープの幅(短辺幅)、ふっ素樹脂粘着テープの引裂き強度、及び巻回構造の端面に設けた切込の深さを表1に示す。また、後述する手切れ性の評価の結果も併せて表1に示す。
【0057】
(実施例2)
表1に示すとおり設計を変更したことを除き、実施例1と同様の手順でふっ素樹脂粘着テープ巻回体を製造した。
【0058】
(比較例1-4)
表1に示すとおり設計を変更したことを除き、実施例1と同様の手順でふっ素樹脂粘着テープ巻回体を製造した。
【0059】
(比較例5-6)
原反の成形に、PTFEのモールディングパウダーの代わりにPTFEファインパウダーを用いるとともに、表1に示すとおり設計を変更したことを除き、実施例1と同様の手順でふっ素樹脂粘着テープ巻回体を製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
<評価>
上記実施例および比較例で製造したふっ素樹脂粘着テープ巻回体を用いて、JIS L 1096(トラペゾイド法)に準ずる方法により、ふっ素樹脂粘着テープの手切れ性を評価した。但し、上記トラペゾイド法に定められている切り目を試験片に設ける代わりに、各粘着テープ巻回体の端面に設けた表1に示したとおりの切込を切り目として扱った。
【0062】
実施例1-2で製造したふっ素樹脂粘着テープ巻回体では、巻き出しの際に意図しない箇所でテープが切れるという不具合が生じなかった。また、これらのふっ素樹脂粘着テープ巻回体では、ふっ素樹脂粘着テープにタテ方向(MD)への縦裂けを生じさせずにテープを切ることができた。即ち、これらの実施例で得られたふっ素樹脂粘着テープ巻回体については、ふっ素樹脂粘着テープの巻き出し性が良く、且つ良い手切れ性を示す良品が得られた。
【0063】
比較例1-2及び6で製造したふっ素樹脂粘着テープ巻回体では、ふっ素樹脂粘着テープが伸びて変形しまい、うまく切ることができなかった。比較例1については、テープ側辺部に設けた切込の深さが浅すぎたため、手切れ性を付与できなかったものと考えられる。比較例6については、十分に深い切込が設けられていたものの、高い引裂き強度に起因してテープが伸びてしまったものと推測される。
【0064】
比較例3-5で製造したふっ素樹脂粘着テープ巻回体では、ふっ素樹脂粘着テープを巻き出す際に、テープが切れてしまった。比較例3-5では、ふっ素樹脂粘着テープ巻回体の不良品が得られた。
【0065】
以上説明した実施形態によれば、ふっ素樹脂を含み、第1主面と第1主面の裏側の第2主面とを有している帯形状を有する原反と、粘着剤を含み、第2主面に設けられた粘着層と、を具備し150以下の引裂き強度を有するふっ素樹脂粘着テープを含むふっ素樹脂粘着テープ巻回体が提供される。このふっ素樹脂粘着テープ巻回体は、ふっ素樹脂粘着テープが巻回された巻回構造を有し、該巻回構造において第1主面が外周側を向くように原反と粘着層とが交互に放射方向へ積層されており、巻回構造は原反と粘着層との積層構造の側面が露出する第1端面と第2端面とを有する。第1端面と第2端面との少なくとも一方には複数の切込が設けられており、第1端面および第2端面と交差する方向へのこれら切込の深さは、第1端面および第2端面と交差する方向へのふっ素樹脂粘着テープの幅に対し0.1%を上回り36.6%以下である。上記ふっ素樹脂粘着テープ巻回体が備えるふっ素樹脂粘着テープは、良好な手切れ性を示す。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0067】
1…ログロール、1’…ロール体、2…ふっ素樹脂粘着シート、2’…ふっ素樹脂粘着テープ、3,3’…巻芯、9…幅方向、10…ふっ素樹脂粘着テープロール、11…巻き出し方向、20…ふっ素樹脂粘着テープ、21…原反、22…粘着層、23…第1主面、24…第2主面、30…巻芯、31…第1端面、32…第2端面、40,40,40…切込、41…第1方向、42…第2方向、100…テープロール、101…巻き出し方向、111…MD方向、200…ふっ素樹脂粘着テープ、300…巻芯、W…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11