(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】放射性薬剤情報処理方法、放射性薬剤情報処理装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240318BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20240318BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020069162
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519328970
【氏名又は名称】AMS企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 弘明
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-022115(JP,A)
【文献】特開2017-182599(JP,A)
【文献】特開2017-021397(JP,A)
【文献】特表2019-534082(JP,A)
【文献】特開2019-175029(JP,A)
【文献】特開2016-095593(JP,A)
【文献】特開2003-196404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G16H 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作手順に基づき放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装
置の稼働
データ及び前記稼働データに対応する操作手順を示す操作手順データを含む動作情報
と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤の品質試験結果及び品質試験に対応する操作手順を示す操作手順データを含む品質試験情報と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤に対する出荷判定結果を含む出荷情報と、放射性薬剤の製造に使用する試薬、原料又は材料の在庫情報と、前記放射性薬剤製造装置の製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱している場合の逸脱情報と、前記放射性薬剤製造装置の識別情報
とを取得し、
取得した前記
稼働データ及び前記稼働データに対応する操作手順データを含む動作情報
と、前記品質試験結果及び前記品質試験に対応する操作手順データを含む品質試験情報と、前記出荷情報と、前記在庫情報と、前記逸脱情報とを、前記識別情報
に関連付けて記憶装置に記憶
し、
記憶した前記動作情報及び前記識別情報に基づき、前記識別情報にて識別される前記放射性薬剤製造装置における前記放射性薬剤の製造回数に応じた使用料を演算する
放射性薬剤情報処理方法。
【請求項2】
前記放射性薬剤を用いた検査の予定日時に基づいて前記放射性薬剤の製造開始日時を導出し、
導出した前記製造開始日時に応じて前記放射性薬剤製造装置に前記放射性薬剤の製造を開始させ、
前記放射性薬剤の製造工程における前記動作情報及び前記識別情報を取得する
請求項1に記載の放射性薬剤情報処理方法。
【請求項3】
前記動作情報に基づき、前記放射性薬剤の標準操作手順から前記放射性薬剤の製造工程における操作手順が逸脱したか否かを判定し、
逸脱したと判定した場合、
前記逸脱情報を取得する
請求項1又は請求項2に記載の放射性薬剤情報処理方法。
【請求項4】
前記放射性薬剤の標準操作手順から前記放射性薬剤の製造工程における操作手順が逸脱した場合、前記放射性薬剤の製造に対する製造支援情報を出力する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射性薬剤情報処理方法。
【請求項5】
前記識別情報に対応する前記放射性薬剤製造装置の設置環境に応じた前記放射性薬剤の標準操作手順に関する情報を出力する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射性薬剤情報処理方法。
【請求項6】
第1の放射性薬剤を用いた第1検査の検査結果に基づき、第2の放射性薬剤を用いた第2検査の予定日時を算出し、
算出した第2検査の予定日時に基づいて第2の放射性薬剤の製造開始日時を導出する
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の放射性薬剤情報処理方法。
【請求項7】
所定の操作手順に基づき放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装
置の稼働
データ及び前記稼働データに対応する操作手順を示す操作手順データを含む動作情報
と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤の品質試験結果及び品質試験に対応する操作手順を示す操作手順データを含む品質試験情報と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤に対する出荷判定結果を含む出荷情報と、放射性薬剤の製造に使用する試薬、原料又は材料の在庫情報と、前記放射性薬剤製造装置の製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱している場合の逸脱情報と、前記放射性薬剤製造装置の識別情報
とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記
稼働データ及び前記稼働データに対応する操作手順データを含む動作情報
と、前記品質試験結果及び前記品質試験に対応する操作手順データを含む品質試験情報と、前記出荷情報と、前記在庫情報と、前記逸脱情報とを、前記識別情報
に関連付けて記憶する記憶部と
、
記憶した前記動作情報及び前記識別情報に基づき、前記識別情報にて識別される前記放射性薬剤製造装置における前記放射性薬剤の製造回数に応じた使用料を算出する算出部と
を備える放射性薬剤情報処理装置。
【請求項8】
所定の操作手順に基づき放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装
置の稼働
データ及び前記稼働データに対応する操作手順を示す操作手順データを含む動作情報
と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤の品質試験結果及び品質試験に対応する操作手順を示す操作手順データを含む品質試験情報と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤に対する出荷判定結果を含む出荷情報と、放射性薬剤の製造に使用する試薬、原料又は材料の在庫情報と、前記放射性薬剤製造装置の製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱している場合の逸脱情報と、前記放射性薬剤製造装置の識別情報
とを取得し、
取得した前記
稼働データ及び前記稼働データに対応する操作手順データを含む動作情報
と、前記品質試験結果及び前記品質試験に対応する操作手順データを含む品質試験情報と、前記出荷情報と、前記在庫情報と、前記逸脱情報とを、前記識別情報
に関連付けて記憶装置に記憶
し、
記憶した前記動作情報及び前記識別情報に基づき、前記識別情報にて識別される前記放射性薬剤製造装置における前記放射性薬剤の製造回数に応じた使用料を算出する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
所定の操作手順に基づき放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装
置の稼働
データ及び前記稼働データに対応する操作手順を示す操作手順データを含む動作情報
と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤の品質試験結果及び品質試験に対応する操作手順を示す操作手順データを含む品質試験情報と、前記放射性薬剤製造装置により製造された前記放射性薬剤に対する出荷判定結果を含む出荷情報と、放射性薬剤の製造に使用する試薬、原料又は材料の在庫情報と、前記放射性薬剤製造装置の製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱している場合の逸脱情報と、前記放射性薬剤製造装置の識別情報
とを取得し、
取得した前記
稼働データ及び前記稼働データに対応する操作手順データを含む動作情報
と、前記品質試験結果及び前記品質試験に対応する操作手順データを含む品質試験情報と、前記出荷情報と、前記在庫情報と、前記逸脱情報とを、前記識別情報
に関連付けて出力
し、
出力した前記動作情報及び前記識別情報に応じた、前記放射性薬剤製造装置における前記放射性薬剤の製造回数に応じた使用料を取得する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記放射性薬剤を用いた検査の予定日時に基づいて前記放射性薬剤の製造開始日時を導出し、
導出した前記製造開始日時に応じて前記放射性薬剤製造装置に前記放射性薬剤の製造を開始させる
処理をコンピュータに実行させるための請求項
9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記動作情報に基づき、前記放射性薬剤の標準操作手順から前記放射性薬剤の製造工程における操作手順が逸脱したか否かを判定し、
逸脱したと判定した場合、
前記逸脱情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるための請求項
9又は請求項
10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記放射性薬剤の標準操作手順から前記放射性薬剤の製造工程における操作手順が逸脱した場合、前記放射性薬剤の製造に対する製造支援情報を取得する
処理をコンピュータに実行させるための請求項
9から請求項
11のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、放射性薬剤情報処理方法、放射性薬剤情報処理装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマ線を放出する放射性同位元素で標識された化合物を含む放射性診断薬を体内に投与し、この標識化合物が体内の特定箇所に集まった様子を専用の装置で撮像することによって、疾病等を診断する核医学診断法が開発されている。また、アルファ線やベータ線を放出する放射性同位元素で標識された化合物を含む核医学治療用の放射性治療薬も開発されている。
【0003】
放射性診断薬や放射性治療薬(以下、放射性薬剤と総称)の中には、半減期が非常に短く、製造後極めて早期に放射能が消失し、その放射性薬剤としての有効期限を終えてしまうものがある。放射性薬剤の製造は、人手がかかり原料溶液も高価であるため、無駄を生じた場合には大きなコスト損失を生じることになる。したがって、放射性薬剤の製造においては、放射性薬剤の製造に関する情報を管理し、効率のよい生産管理が行われることが重要である。特許文献1には、PET(Positron Emission Tomography)で用いる放射線薬剤に無駄を発生しないように在庫管理を支援するための在庫管理支援システム及び在庫管理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、放射性薬剤の製造に関する情報の管理は十分ではないという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、放射性薬剤製造装置の識別情報に関連付けて放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する情報を収集管理することができる放射性薬剤情報処理方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る放射性薬剤情報処理方法は、放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装置に接続される情報端末装置から、前記放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する動作情報及び前記放射性薬剤製造装置の識別情報を取得し、取得した前記動作情報及び前記識別情報を記憶装置に記憶する。
【0008】
本開示の一態様に係る放射性薬剤情報処理装置は、放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装置に接続される情報端末装置から、前記放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する動作情報及び前記放射性薬剤製造装置の識別情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記動作情報及び前記識別情報を記憶する記憶部とを備える。
【0009】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装置に接続される情報端末装置から、前記放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する動作情報及び前記放射性薬剤製造装置の識別情報を取得し、取得した前記動作情報及び前記識別情報を記憶装置に記憶する処理をコンピュータに実行させる。
【0010】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、放射性薬剤を製造する放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する動作情報及び前記放射性薬剤製造装置の識別情報を取得し、取得した前記動作情報及び識別情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、放射性薬剤製造装置の識別情報に関連付けて放射性薬剤製造装置の稼働状況に関する情報を収集管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における情報処理システムの構成を示す概念図である。
【
図4】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図5】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図6】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図7】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図8】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図9】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図10】稼働情報DBに記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【
図11】情報端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】サーバと情報端末装置との間で実行される動作情報取得の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】サーバと情報端末装置との間で実行される品質試験情報取得の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施形態における第1例の学習モデルの構成を説明する説明図である。
【
図15】第2実施形態における第2例の学習モデルの構成を説明する説明図である。
【
図16】第2実施形態におけるサーバと情報端末装置との間で実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】製造支援情報を含むアドバイス画面を示す模式図である。
【
図18】第3実施形態におけるサーバと情報端末装置との間で実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
【0015】
図1は、第1実施形態における情報処理システム100の構成を示す概念図である。情報処理システム100は、情報処理装置1、複数の病院等に夫々設置される放射性薬剤製造装置2及び放射性薬剤製造装置2に接続された情報端末装置3を含む。情報処理装置1と情報端末装置3とは、インターネット等のネットワークNを介して相互に情報を送受信することが可能である。
【0016】
情報処理装置1は例えば、放射性薬剤製造装置2による放射性薬剤の製造管理を支援する管理サービスの提供者によって管理される。情報処理装置1は、管理サービスを享受する病院、検査施設等に設置される放射性薬剤製造装置2の稼働状況に関する情報を情報端末装置3を介して取得し、取得した稼働状況に基づき、放射性薬剤の製造管理支援及び放射性薬剤製造装置2の管理等に関する情報を提供する管理サービスを実現する。
【0017】
情報処理装置1は、サーバコンピュータを用いる。情報処理装置1は、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1はネットワークNを介して情報端末装置3との間で情報の送受信が可能である。
【0018】
放射性薬剤製造装置2は、放射性薬剤を製造するための装置である。ここで、放射性薬剤とは、PET(Positron Emission Tomography)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)などの核医学検査に用いられる放射性診断薬と、アルファ線やベータ線を放出する放射性同位元素で標識された化合物を含む核医学治療用の放射性治療薬とを含む。放射性薬剤製造装置2夫々は、これらPET、SPECT等の撮影装置と、サイクロトロン、ジェネレータ等の放射性同位元素製造装置とを備える病院、検査施設等の敷地内に備えられる薬剤製造施設に設置される。当該放射性薬剤製造装置2で製造された放射性薬剤を用いて、病院、検査施設等では核医学検査や核医学治療が実施される。なお、以下では病院等の敷地内に放射性薬剤製造装置2が設けられる例を説明するが、本実施形態は限定されるものではない。放射性薬剤製造装置2は、例えば医薬品の製造許可を有する製造工場等に設置され、当該放射性薬剤製造装置2で製造された放射性薬剤が製造工場の敷地外に設置された病院等の使用施設に搬送され、使用されるものであってよい。
【0019】
放射性薬剤製造装置2により製造される放射性薬剤の例としては、11C-メチオニン、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)、18F-アミノ酸誘導体、18F-FDOPA、68Ga-PSMA(Prostate Specific Membrane Antigen)、177Lu-PSMA、225Ac-PSMAなどが挙げられる。放射性薬剤を用いた核医学検査は、癌をはじめとする種々の疾患の診断に有効な検査方法である。例えばPET検査は、特定の放射性同位元素で標識した放射性診断薬を投与し、該放射性診断薬の投与により直接的または間接的に放出されたγ線を検出する方法である。本実施形態では、放射性薬剤として18F-FDGを製造する例を説明する。
【0020】
放射性薬剤は、製造後に所定の品質試験が行なわれ、規格適合基準を満たすもののみが被験者への投与に供される。放射性薬剤を用いた検査実施までに経る製造準備、製造、品質試験、出荷判定といった各工程は、医薬品医療機器等法や医療法の定めるところに従って、製造記録書、品質試験記録書、出荷判定記録書、出荷記録書等の工程記録書に適切に記録し、それらを保存する必要がある。一方で、放射性薬剤に用いられる放射性同位元素は極めて短半減期であるため、その有効期限が短いという性質を有している。例えば、18Fの半減期は110分であり、製造後極めて早期に放射能が消失する。従って、放射性薬剤の製造においては、製造からPET検査までのスケジュールに基づき効率的に情報を管理することが重要である。情報処理システム100では、サーバ1と情報端末装置3との間で情報の送受信を行い、サーバ1により放射性薬剤製造装置2の稼働状況に関する各種の情報を収集管理することにより、病院内における効率的な放射性薬剤の製造管理を支援する。
【0021】
放射性薬剤製造装置2は、例えば合成装置21、分注装置22、分析装置23などを備える。合成装置21、分注装置22及び分析装置23は夫々情報端末装置3と有線又は無線により接続されており、情報端末装置3との間で通信を行う。
【0022】
合成装置21は、加速器又はジェネレータにより得られた放射性同位元素を含む溶液から当該放射性同位元素を精製し、精製した放射性同位元素を所定の原料試薬と化学反応させて最終的な放射性薬剤を製造するまでの工程を行う装置である。合成装置21は、耐腐食性の高い金属製の筐体であり略直方体形状を有する。合成装置21の一面は、ガラス等の透明素材で覆うこともあり、内部の状況が装置の外側から視認できるよう構成されている。合成装置21は、内部に、例えば各種センサ、ポンプ、駆動部、三方弁、機構等と、各種容器、部品、配管等とを含み、これらの動作を制御するCPU等を有する制御部を備える。原料溶液が各種容器及び他の部品等と接続された配管により構成される流路内を通流し、最終的に高濃度の放射性薬剤を含む原液が生成される。合成装置21は、情報端末装置3からの制御指示に基づき各操作処理を実行する。
【0023】
分注装置22は、合成装置21により生成された放射性薬剤の原液に適宜、安定剤などの添加剤を加え、希釈、分注して製剤化する工程を行う装置である。分注された放射性薬剤は、それぞれ個別容器(バイアル)で保存される。各個別容器は、例えばガラス、樹脂等の材料製であり、生成した放射性薬剤の品質を使用時まで維持することができる。分注装置22は、情報端末装置3からの制御指示に基づき各操作処理を実行する。
【0024】
分析装置23は、生成した放射性薬剤の一部を用いて品質試験を行う装置である。品質試験では、例えば放射性薬剤の純度、pH等の所定の項目について品質が検定される。分析装置23は、情報端末装置3からの制御指示に基づき各操作処理を実行する。
【0025】
情報端末装置3は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末等の通信機能を備える情報処理端末であり、サーバ1及び放射性薬剤製造装置2との間で情報の送受信を行う。情報端末装置3は、記憶部31に記憶する標準操作手順書311(
図11参照)に基づき放射性薬剤製造装置2の合成装置21、分注装置22及び分析装置23夫々へ操作信号を出力して、各装置の動作を制御する制御装置としての機能を有する。なお、情報端末装置3は、放射性薬剤製造装置2の一部として放射性薬剤製造装置2に含まれるものであってもよい。
【0026】
図2は、標準操作手順書311の一例を示す概念図である。標準操作手順書311とは、特定の業務を均質に遂行するために、その業務の操作手順について詳細に記述した指示書である。標準操作手順書は、例えばサーバ1から情報端末装置3へ送信され、情報端末装置3の記憶部31に記憶されている。本実施形態では、標準操作手順書311には、例えば合成装置21の製造に関する標準操作手順(標準製造手順)を記述した標準製造手順書、分注装置22の分注に関する標準操作手順(標準分注手順)を記述した標準分注手順書、分析装置23の品質試験に関する標準操作手順(標準品質試験手順)を記述した標準品質試験手順書等が含まれる。
図2では、標準製造手順書の例を示している。
【0027】
図2に示す如く、標準製造手順書には、例えば操作手順番号に関連付けて当該操作手順番号の操作内容、注意事項等が夫々記録されている。操作内容には、各部品の動作内容(例えば電源オン/オフ、バルブの位置方向等)、各操作手順における設定閾値(例えば設定温度、各種センサの検出値に対する上限値及び下限値等)などの情報が含まれてよい。放射性薬剤製造装置2は、操作手順に基づき、放射性薬剤の製造工程における各操作内容を順次自動で実行して放射性薬剤の製造を行う。本実施形態における製造工程とは、狭義の製造のみならず、製造、分注、品質試験等、放射性薬剤の製造から出荷までに要する各工程を含むものである。
【0028】
図3は、サーバ1の構成を示すブロック図である。サーバ1は、制御部10、記憶部11及び通信部12を備える。サーバ1は説明を容易にするために1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで機能又は処理を分散させてもよいし、1台の大型コンピュータに仮想的に生成される複数のサーバコンピュータ(インスタンス)の内の1つであってもよい。
【0029】
制御部10は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いたプロセッサであり、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0030】
通信部12は、ネットワークNを介した通信を実現する通信インタフェースである。制御部10は通信部12により、ネットワークNを介した情報端末装置3との間の情報の送受信が可能である。
【0031】
記憶部(記憶装置)11は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを含む。記憶部11には、プログラム1Pを含む制御部10が参照するプログラム及びデータが記憶されている。制御部10は、プログラム1Pを読み出して実行することによって、汎用的なサーバコンピュータを本開示特有の放射性薬剤情報処理装置として機能させる。記憶部11に記憶されるプログラム1Pは、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様であってもよい。記憶部11は、図示しない読出装置によって記録媒体1Aから読み出されたプログラム1Pを記憶する。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラム1Pをダウンロードし、記憶部11に記憶させたものであってもよい。なお記憶部11は、複数の記憶装置により構成されていてもよく、サーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0032】
記憶部11には、稼働情報DB(Data Base :データベース)111が記憶されている。稼働情報DB111は、放射性薬剤製造装置2の稼働状況に関する稼働情報が保存されるデータベースである。稼働情報DB111は、サーバ1に実装されているRDBMS(Relational DataBase Management System)等のデータベース管理ソフトウェアにより構成される。さらに記憶部11には、学習モデル1Mが記憶されていてよい。学習モデル1Mについては、他の実施形態で詳述する。
【0033】
稼働情報DB111には、装置情報、動作情報、品質試験情報、製造情報、出荷情報、在庫管理情報、逸脱情報等を含む稼働情報が格納されている。サーバ1の制御部10は、情報端末装置3を介してこれらの稼働情報を取得し稼働情報DB111に格納する。稼働情報DB111の内容は、随時更新される。記憶部11は、複数の放射性薬剤製造装置2の夫々について稼働情報DB111を記憶している。
図4から
図10は、稼働情報DB111に記憶される情報の内容例を示す概念図である。
【0034】
図4は、装置情報の内容例を示す概念図である。装置情報には、放射性薬剤製造装置2、放射性薬剤製造装置2に含まれる合成装置21、分注装置22及び分析装置23を識別する識別情報(例えば装置ID)が格納されている。さらに装置情報には、放射性薬剤製造装置2に関する情報を提供する場合の情報の出力先が格納されている。出力先は、例えば放射性薬剤製造装置2に接続される情報端末装置3のメールアドレスである。
【0035】
図5は、動作情報の内容例を示す概念図である。動作情報には、放射性薬剤製造装置2の合成装置21、分注装置22及び分析装置23の動作ログが夫々格納されている。
図5は合成装置21の動作情報の一例である。動作情報は、放射性薬剤を識別する識別情報(例えば薬剤名、薬剤ID等)、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報(例えば装置ID)、製造年月日及びロット番号ごとに管理される。
図5に示す如く、動作情報は、標準製造手順書に基づき実行された合成装置21の動作を示す情報が、動作情報の検出日時の情報と共に時系列的に格納されている。動作情報には、例えばバルブ、センサ、ヒータ等の各部の稼働データ、合成装置21の温度、加熱時間、回収液量等のデータが含まれ、動作の根拠となる操作手順番号が関連付けて格納されている。記録された動作情報と、操作手順番号に対応する標準操作手順の操作内容とを比較することにより、製造工程における操作手順が標準操作手順書に従い適性に実行されているか否かが判定できる。なお動作情報DBの保存形式は任意である。サーバ1は、情報端末装置3を介して放射性薬剤製造装置2から例えばCSV形式のテキストファイルを取得し、所定のレイアウト変換ルールに従うことによって帳票形式のデータに変換して保存してよい。
【0036】
図6は、品質試験情報の内容例を示す概念図である。品質試験情報には、分析装置23による放射性薬剤の品質試験の結果が格納されている。品質試験情報は、放射性薬剤を識別する識別情報(例えば薬剤名、薬剤ID等)、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報(例えば装置ID)、製造年月日及びロット番号ごとに管理される。品質試験は、例えば放射性薬剤の外観、性状、示性値、pH、確認、定量(有効成分の放射能量)、純度(異核種、不純物、残留溶媒、重金属等)、エンドトキシン、無菌等の所定の項目に対して行われる。品質試験情報には、例えば試験検体数、試験検体受領時刻、品質試験項目、操作手順番号、試験日時、試験担当者、試験結果、規格適合基準、規格適合判定、総合判定日時、総合判定結果、総合判定者等が関連付けられて格納されている。品質試験情報の形式は限定されるものではなく、例えば所定の形式にて生成される品質試験記録書が保存されてもよい。情報端末装置3は、自装置に接続される分析装置23を介して受信し、又は自装置に接続できない孤立した分析装置から得られる品質試験結果の入力を担当者から受け付けることにより、これら品質試験情報を取得し、取得した品質試験情報をサーバ1へ送信する。
【0037】
図7は、製造情報の内容例を示す概念図である。製造情報には、放射性薬剤の製造に関する情報が格納されている。製造情報は、放射性薬剤を識別する識別情報(例えば薬剤名、薬剤ID等)、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報(例えば装置ID)、製造年月日及びロット番号ごとに管理される。製造情報には、例えば使用する試薬、原料及び材料の名称、使用する試薬、原料及び材料のロット番号、使用する試薬、原料及び材料の有効期限、操作手順番号、操作内容、操作日時、操作記録、薬剤製造量(液量)、薬剤製造量(放射能量)、薬剤製造量測定日時、検定時放射能量、検定日時、操作担当者、操作確認者等が関連付けられて格納されている。操作日時及び操作記録は、例えば動作情報に基づき自動で入力される項目である。製造情報の形式は限定されるものではなく、例えば、所定の形式にて生成される製造記録書が保存されてもよい。
【0038】
図8は、出荷情報の内容例を示す概念図である。出荷情報には、放射性薬剤の出荷及び使用等に関する情報が格納されている。出荷情報には、例えば出荷された放射性薬剤を識別する識別情報(例えば薬剤名、薬剤ID等)、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報(例えば装置ID)、製造年月日、有効期限、ロット番号、出荷判定、出荷判定者、出荷日時、出荷数量、検定時放射能量、検定日時、放射性薬剤の投与対象である被検者を識別する識別情報(例えば被検者ID)等が関連付けられて格納されている。
【0039】
図9は、在庫管理情報の内容例を示す概念図である。在庫管理情報には、放射性薬剤の製造に使用する試薬、原料及び材料の在庫情報が格納されている。在庫管理情報には、例えば試薬、原料及び材料を識別する識別情報(例えば名称)、品質規格、ロット番号、有効期限、入荷日時、入荷数量、出荷日時、出荷数量、在庫数量等が放射性薬剤製造装置2の識別情報に関連付けられて格納されている。
【0040】
図10は、逸脱情報の内容例を示す概念図である。逸脱情報には、放射性薬剤製造装置2の標準操作手順書において製造工程管理のために定められた工程管理値から、実際の製造工程が逸脱した場合に取得される逸脱情報のログが格納されている。逸脱情報は、放射性薬剤を識別する識別情報(例えば薬剤名、薬剤ID等)、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報(例えば装置ID)、製造年月日及びロット番号ごとに管理される。逸脱情報には、逸脱情報の検出日時、逸脱した操作手順番号、逸脱内容、逸脱情報に対する製造支援情報等が含まれている。製造支援情報とは、逸脱情報に応じて提供される放射性薬剤の製造支援に関する情報であり、製造工程の逸脱による製造品の品質に関する予測情報、予測情報から判定される製造工程への指示を示唆する情報等が含まれる。製造支援情報には、例えば逸脱の程度を示す逸脱レベル、予測されるロットアウトの確率、製造継続又は中止等が含まれてよい。逸脱情報及び製造支援情報については、他の実施形態で詳述する。なお
図4から
図10は一例であって、稼働情報DB111の記憶内容は限定されるものではない。
【0041】
図11は、情報端末装置3の構成を示すブロック図である。情報端末装置3は、上述のようにパーソナルコンピュータを用いる。情報端末装置3は、制御部30、記憶部31、通信部32、及び入出力部33を備える。
【0042】
制御部30は、CPU又はGPU等のプロセッサと、メモリ等を含む。制御部30は、記憶部31に記憶されているプログラム3Pに基づき、各構成部を制御して処理を実行する。
【0043】
記憶部31は、例えばハードディスク又はSSD等の不揮発性メモリを含む。記憶部31には、プログラム3Pを含む制御部30が参照するプログラム及びデータが記憶されている。記憶部31に記憶されるプログラム3Pは、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様であってもよい。記憶部31は、図示しない読出装置によって記録媒体3Aから読み出されたプログラム3Pを記憶する。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラム3Pをダウンロードし、記憶部31に記憶させたものであってもよい。なお記憶部31は、複数の記憶装置により構成されていてもよく、情報端末装置3に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0044】
通信部32は、ネットワークNを介した通信を実現する通信インタフェースである。制御部30は通信部32により、ネットワークNを介したサーバ1との間の情報の送受信が可能である。
【0045】
入出力部33は、情報端末装置3に接続される外部装置を接続する入出力インタフェースである。入出力部33は、放射性薬剤製造装置2の合成装置21、分注装置22及び分析装置23と接続される。さらに入出力部33は、例えば液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置34、例えばキーボード、マウス、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス等の入力装置35、プリンター等の印刷装置36などと接続される。入出力部33と各装置との間の接続は有線であってもよく、無線であってもよい。
【0046】
上述した構成を有する情報処理システム100において各装置が行う処理について説明する。
図12は、サーバ1と情報端末装置3との間で実行される動作情報取得の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、サーバ1の記憶部11に記憶してあるプログラム1P(
図3参照)に従って制御部10によって実行されると共に、情報端末装置3の記憶部31に記憶してあるプログラム3P(
図11参照)に従って制御部30によって実行される。情報端末装置3は、例えば、自装置に接続されている入力装置35からの入力内容に基づき、当該フローチャートの処理を開始する。
【0047】
病院の薬剤製造部門の担当者は、検査実施科から放射性薬剤の製造依頼を受け付け、受け付けた情報を入力装置35を介して情報端末装置3へ入力する。情報端末装置3の制御部30は、放射性薬剤を用いた検査の検査予定日時、製造する放射性薬剤などの情報を取得する(ステップS11)。放射性薬剤の情報には、例えば放射性薬剤の名称、出荷数量、検定時放射能量、検定日時などが含まれている。
【0048】
制御部30は、検査予定日時等に基づき、放射性薬剤の製造に要する時間から放射性薬剤の製造開始日時を算出する(ステップS12)。さらに制御部30は、製造終了予定日時を算出して、品質試験予定を導出する。制御部30は、算出した製造開始日時に基づき、放射性薬剤製造装置2に製造を開始させる(ステップS13)。具体例には、制御部30は、標準操作手順書を参照して、操作手順を実行するよう放射性薬剤製造装置2の各装置を動作させる。
【0049】
放射性薬剤製造装置2の各装置では、複数の操作処理に応じた動作が順次実行される。初めに、合成装置21において、標準製造手順書に基づく製造手順が行われる。合成装置21は、サイクロトロン、ジェネレータ等を用いて得られた放射性同位元素を含む溶液から当該放射性同位元素を精製し、精製した放射性同位元素を所定の原料試薬と化学反応させて放射性薬剤の原液を製造する。
【0050】
放射性薬剤の原液は、分注装置22に送られる。分注装置22では、標準分注手順書に基づく分注手順が行われる。分注装置22は、放射性薬剤の原液に希釈溶媒(例えば生理食塩水)を添加して所定の濃度に希釈し、安定剤などの添加剤を加えた後、個々のバイアルに分注する操作手順が行われる。この場合において、制御部30は、放射性薬剤の検定時刻において所定の放射性濃度を満たす放射性薬剤が得られるよう、添加物の添加量等を算出し、算出した添加量等を含んで分注装置22に制御信号を出力する。
【0051】
制御部30は、放射性薬剤の原液の放射能量測定時刻t1、放射能濃度X1(単位:MBq/mL)、液量V1(単位:mL)、当該放射性薬剤の放射能濃度が規定される検定時刻t2、検定時刻における規定放射能濃度Y(単位:MBq/mL)、放射性同位元素の半減期Tに基づき、下記の(1)式で表される希釈溶媒の添加量Va(単位:mL)を算出する。
Va=V1(X1・exp[-0.693/T・t3]-Y)/Y・・・(1)
ここで、t3は、前述した放射能量測定時刻t1から検定時刻t2までの時間の差分(単位:分)である。「・」は積を表す。制御部30は、算出した添加量Vaの希釈溶媒を添加するよう、分注装置22へ制御信号を出力する。
【0052】
上述の各操作手順において、制御部30は、放射性薬剤製造装置2から動作情報を取得し(ステップS14)、取得した動作情報を一時的に記憶部31に記憶する。制御部30は、記憶した動作情報と、予め記憶している放射性薬剤の識別情報(例えば装置ID)とを関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS15)。
【0053】
なお、合成装置21及び分注装置22夫々から取得される動作情報には、放射性薬剤の製造中における動作ログに加え、例えば製造後に行われる装置内部の洗浄処理に関する動作ログなども含まれる。
【0054】
サーバ1の制御部10は、動作情報及び装置IDを受信する(ステップS16)。制御部10は、受信した動作情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶する(ステップS17)。稼働情報DB111には、製造工程における動作情報のログが蓄積される。
【0055】
情報端末装置3の制御部30は、製造工程が終了したか否かを判定する(ステップS18)。操作処理手順が全て実行されていないことにより、製造が終了していないと判定した場合(ステップS18:NO)、制御部30は、処理をステップS14に戻し、動作情報の取得を継続する。操作処理手順が全て実行されたことにより製造が終了したと判定した場合(ステップS18:YES)、制御部30は、製造情報を生成する。製造情報は、例えば製造記録書に適した形式で生成されてよい。制御部30は、生成した製造情報と装置IDと関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS19)。
【0056】
サーバ1の制御部10は、製造情報及び装置IDを受信する(ステップS20)。制御部10は、受信した製造情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶し(ステップS21)、一連の処理を終了する。
【0057】
製造工程が完了した放射性薬剤は、次に品質試験が行われる。
図13は、サーバ1と情報端末装置3との間で実行される品質試験情報取得の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、サーバ1の記憶部11に記憶してあるプログラム1Pに従って制御部10によって実行されると共に、情報端末装置3の記憶部31に記憶してあるプログラム3Pに従って制御部30によって実行される。
【0058】
情報端末装置3の制御部30は、分析装置23に品質試験を開始させる(ステップS31)。具体例には、制御部30は、標準品質試験手順書を参照して、操作手順を実行するよう分析装置23を動作させる。
【0059】
分析装置23では、分注装置22により複数のバイアルに分けられた放射性薬剤の一部に対して、標準品質試験手順書に基づく品質試験手順が行われる。なお、情報端末装置3に接続できない孤立した分析装置を用いて実施する品質試験の処理、自動操作の対象でない品質試験手順の処理等は、試験担当者によりマニュアルで実施されてもよい。品質試験では、例えば放射性薬剤の外観、性状、示性値、pH、確認、定量(有効成分の放射能量)、純度(異核種、不純物、残留溶媒、重金属等)、エンドトキシン、無菌等の所定の項目について試験が行われ、製造された放射性薬剤が規格適合基準を満たすか否かの判定が行われる。
【0060】
上述の各操作手順において、制御部30は、分析装置23から動作情報を取得し(ステップS32)、取得した動作情報を一時的に記憶部31に記憶する。制御部30は、記憶した動作情報と、予め記憶している装置IDとを関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS33)。
【0061】
サーバ1の制御部10は、動作情報及び装置IDを受信する(ステップS34)。制御部10は、受信した動作情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶する(ステップS35)。稼働情報DB111には、品質試験工程における動作情報のログが蓄積される。
【0062】
情報端末装置3の制御部30は、品質試験が終了したか否かを判定する(ステップS36)。操作処理手順が全て実行されていないことにより、品質試験が終了していないと判定した場合(ステップS36:NO)、制御部30は、処理をステップS32に戻し、動作情報の取得を継続する。操作処理手順が全て実行されたことにより品質試験が終了したと判定した場合(ステップS36:YES)、制御部30は、分析装置23から取得したデータ、又は入力装置35により試験担当者から入力を受け付けたデータに基づき、品質試験情報を生成する(ステップS37)。品質試験情報は、例えば品質試験記録書に適した形式で生成されてよい。制御部30は、生成した品質試験情報と装置IDと関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS38)。
【0063】
サーバ1の制御部10は、品質試験情報及び装置IDを受信する(ステップS39)。制御部10は、受信した品質試験情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶する(ステップS40)。
【0064】
上述の品質試験工程により規格適合基準を満たすと判定された放射性薬剤は、病院内の担当科へ出荷され、検査者へ提供される。出荷担当者は、放射性薬剤の薬剤ID、薬剤名称、ロット番号、有効期限、出荷日時、出荷数量、検定時放射能量、検定時刻、出荷判定者、当該放射線薬剤を用いる被検者名等を含む出荷情報を入力装置35により情報端末装置3へ入力する。情報端末装置3の制御部30は、出荷情報を取得する(ステップS41)。この場合において、制御部30は、稼働情報DB111に記憶された製造情報に基づき所定の項目が入力されたデータをサーバ1から取得し、その他の項目についてのみ出荷担当者からの入力を受け付けるものであってよい。また、放射性薬剤は、出荷判定者の承認が情報端末装置3に入力されることにより、人の手を介することなく出荷装置等により自動的に搬送されるものであってもよい。この場合においては、制御部30は出荷装置と通信することにより放射性薬剤の授受にかかる情報を取得する。制御部30は、取得した出荷情報と装置IDと関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS42)。
【0065】
サーバ1の制御部10は、出荷情報及び装置IDを受信する(ステップS43)。制御部10は、受信した出荷情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶し(ステップS44)、一連の処理を終了する。
【0066】
上述のステップS12において、情報端末装置3の制御部30は所定の情報に基づき検査予定を算出してもよい。例えば、被検者が複数回の検査を受ける場合には、1回目の検査スケジュールに基づき、次の検査予定が算出されてよい。被検者が第1の放射性診断薬を用いたPET検査等による第1検査を行った後、第2の放射性診断薬を用いた第2検査又は放射性治療薬による核医学治療等が行われる場合には、制御部30は、第1検査の検査結果に基づき第2検査又は核医学治療等の予定日時を算出する。制御部30は、算出した第2検査又は核医学治療等の予定日時に応じて第2の放射性薬剤の製造開始日時を算出することで、複数回に亘る放射性薬剤の製造を円滑に進めることができる。
【0067】
上述の
図12及び
図13のフローチャートにて説明した一連の処理において、サーバ1の制御部10と情報端末装置3の制御部30とに分担して処理を実行する例を説明したが、これらの分担は一例であり限定されるものではない。サーバ1の制御部10と情報端末装置3の制御部30とは協働して一連の処理を実行するものであってよい。
【0068】
上述のように、情報端末装置3の制御に基づき放射性薬剤製造装置2は、操作手順を実行する。各操作手順における動作情報は情報端末装置3を介してサーバ1へ送信される。サーバ1は、放射性薬剤製造装置2の稼働情報を取得し、放射性薬剤製造装置2を識別する識別情報と対応付けて稼働情報DB111に記憶する。これらサーバ1が保存する稼働情報は、情報端末装置3からの要求に応じて、サーバ1から情報端末装置3へ常時提供される。
【0069】
本実施形態によれば、サーバ1の管理者は、情報端末装置3を介して放射性薬剤製造装置2毎にリアルタイムで収集される稼働情報に基づき、放射性薬剤製造装置2の稼働状況を認識することができる。管理者は、稼働情報に基づき、例えば放射性薬剤製造装置2の動作停止、動作異常等を認識した場合、病院等の製造担当者へ通知することにより効率的な放射性薬剤の製造を支援することができる。さらにサーバ1は、放射性薬剤製造装置2により製造された放射性薬剤に関する各種データ、記録文書等を放射性薬剤製造装置2の識別情報に関連付けて保存する。これにより、情報端末装置3による処理負担を低減することができる。このように、サーバ1を用いて放射性薬剤製造装置2の稼働状況に関する情報を分担して管理することができ、従来病院等で行われていた処理が軽減可能となる。従って、放射性薬剤製造装置2の利用者側における製造作業の効率化を図るとともに、人的負担を軽減し人件費を削減することができる。
【0070】
また、放射性薬剤製造装置2は、情報端末装置3の制御に基づき様々な操作手順を自動で実行し、製造工程における動作情報をリアルタイムで取得する。これにより、放射線薬剤の品質管理体制が向上するため、例えば従来無菌製造され製造する都度交換していた放射性薬剤製造装置2の部品類は、装置に設置したまま取り外すことなく洗浄処理等を施した後再利用することが可能となる。従って、生産コストを削減することができる。
【0071】
(第2実施形態)
第2実施形態では、動作情報に基づき操作手順の逸脱管理を行う構成について説明する。以下では、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については第1実施形態の情報処理システム100と同様であるので、共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
第2実施形態では、情報端末装置3により製造工程における操作手順が、標準操作手順から逸脱しているか否かの判定が行われる。逸脱とは、例えば標準操作手順が定めた工程管理値の上限及び下限の幅からの逸脱であり、製造バリデーションの結果などから、逸脱の程度に応じて放射性薬剤の品質に影響を及ぼすおそれがあるものである。逸脱が発生した場合には、逸脱情報がサーバ1へ送信され、サーバ1から逸脱情報に応じた製造支援情報が提供される。製造支援情報とは、逸脱が発生した製造工程がもたらす品質リスクを示すことで製造を支援する情報であり、例えば、逸脱の度合いを示す逸脱レベルや、ロットアウトの確率を示す数値等により提供される。
【0073】
第2実施形態のサーバ1は、
図3に示す如く、記憶部11に学習モデル1Mを記憶している。学習モデル1Mは、機械学習により生成された学習モデルであり、稼働情報の入力に応じて製造支援に関する製造支援情報を示すデータを出力する。学習モデル1Mは、その定義情報によって定義される。学習モデル1Mの定義情報は、例えば、学習モデル1Mの構造情報や層の情報、各層が備えるチャネルの情報、学習済みのパラメータを含む。記憶部11には、学習モデル1Mに関する定義情報が記憶されている。
【0074】
図14は、第2実施形態における第1例の学習モデル1Mの構成を説明する説明図である。学習モデル1Mは予め、サーバ1又は外部装置において、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって、生成され、学習される。学習アルゴリズムは、時系列データを取得した場合にはリカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)でもよい。
【0075】
図14に示す例では、学習モデル1Mは、稼働情報を入力する入力層と、製造支援に関する製造支援情報を出力する出力層と、特徴量を抽出する中間層(隠れ層)とを備える。中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のノードを有し、各種パラメータを用いて抽出された特徴量を出力層に受け渡す。入力層に、検出値が入力された場合、学習済みパラメータによって中間層で演算が行なわれ、出力層から、製造支援に関する製造支援情報が出力される。
【0076】
学習モデル1Mの入力層へ入力される入力情報は、稼働情報である。本実施形態では、稼働情報として逸脱が発生した時点における動作情報及び逸脱情報が入力される。なお、入力情報は限定されるものではなく、例えば装置情報等、その他の稼働情報が含まれてもよい。さらに入力情報は、例えば放射性薬剤製造装置2の設置環境、使用年数等の装置特性が入力要素に含まれてもよい。
【0077】
学習モデル1Mの出力層から出力される出力情報は、製造支援情報である。製造支援情報とは、逸脱が発生した製造工程が製品の品質に及ぼす内容を示すことで製造を支援する情報である。
図14の例では、製造支援情報の一例として、逸脱レベルを示す出力情報を出力する。逸脱レベルとは、標準操作手順に対する製造工程における操作手順の逸脱の度合いを示す情報である。逸脱レベルは、例えば1から4の4段階に分別され、数値が高い程、逸脱度合いが大きく品質に及ぼすリスクが高いことを示す。
【0078】
出力層は、1つ又は複数のノードを備える。出力層は、中間層の全結合層から入力される特徴変数を基に、ソフトマックス関数を用いて確率に変換し、逸脱レベルを示す確率を各ノードから出力する。
図14の例では、出力層を第1ノードから第4ノードの4個のノードにより構成し、第1ノードから逸脱レベルが4である確率、第2ノードから逸脱レベルが3である確率、第3ノードから逸脱レベルが2である確率、第4ノードから逸脱レベルが1である確率といったように、各ノードから逸脱レベルを示す確率を出力すればよい。出力層を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。制御部10は、学習モデル1Mから得られる演算結果を参照し、例えば確率が最も高いノードを選択することにより、逸脱レベルを推定できる。
【0079】
制御部10は、過去に放射性薬剤製造装置を用いて製造された放射性薬剤に関する動作情報を収集して得られるこれらの入力情報に、既知の逸脱レベルが付与された情報群を訓練データとして予め収集して学習モデル1Mを学習する。逸脱レベルは、例えば熟練の装置管理者が判断を行った逸脱レベルを正解ラベルとしてよい。制御部10は、稼働情報に応じた逸脱レベルを出力するよう、例えば誤差逆伝播法を用いて、学習モデル1Mを構成する各種パラメータ及び重み等を学習する。
【0080】
学習モデル1Mは、
図14に示したように稼働情報に応じて逸脱レベルを出力してもよいが、製造支援情報としてその他ロットアウトに関する情報を出力するものであってもよい。
図15は、第2実施形態における第2例の学習モデル1Mの構成を説明する説明図である。
【0081】
図15に示す例にて学習モデル1Mは、稼働情報として動作情報を含む入力情報を入力する入力層と、ロットアウトに関する情報を示す出力情報を出力する出力層とを備える。学習モデル1Mは、入力情報が入力された場合に、ロットアウトに関する情報を出力するように訓練データによって学習済みのパラメータを有する中間層(隠れ層)を備える。入力層に、動作情報が入力された場合、学習済みパラメータによって中間層で演算が行なわれ、出力層から、ロットアウトに関する情報が出力される。なお、入力情報は、動作情報に限定されるものではなく、例えば、装置情報、逸脱情報等の動作情報以外の稼働情報が含まれてもよい。さらに入力情報は、例えば放射性薬剤製造装置2の設置環境、使用年数等の装置特性が入力要素に含まれてもよく、標準操作手順書データが入力要素に含まれてもよい。
【0082】
図15の例では、出力層は2つのノードを備え、第1ノードからロットアウトが発生する(放射性薬剤がロットアウトとなる)確率、第2ノードからロットアウトが発生しない(放射性薬剤がロットアウトとならない)確率を出力する。
【0083】
図15における学習モデル1Mは、動作情報が入力された場合に、ロットアウトに関する情報を出力するよう学習される。学習モデル1Mは、過去に放射性薬剤製造装置2を用いて製造された放射性薬剤に関する動作情報を収集して得られるこれらの入力情報に、既知のロットアウト情報が付与された情報群を訓練データとして予め収集して学習モデル1Mを学習する。ロットアウト情報は、過去の製造データに対応付けられるロットアウトの有無を取得し正解ラベルとしてよい。
【0084】
標準操作手順書は、操作手順における複数項目の基準を設定するものである。逸脱情報は、これらの項目毎に標準操作手順からの逸脱が判定されたものである。しなしながら、製造工程においては、個々の操作項目で見られた逸脱が完成品に及ぼす影響は項目毎に異なる。また、複数の逸脱による相互作用もあり得る。このようにルールベースでは判定が困難であるところ、学習モデル1Mを用いることにより、多様な入力要素を含んだ入力情報に対する製造支援情報の推定が可能となる。
【0085】
なお学習モデル1Mは、
図14及び
図15に示した例に限定されるものではない。学習モデル1Mは、ニューラルネットワークを用いないサポートベクタマシン、回帰木等、他のアルゴリズムによって学習されたモデルであってもよい。
【0086】
上述のように構成される学習モデル1Mは、管理サービスを行う運用フェーズの前段階である学習フェーズにおいて生成され、生成された学習モデル1Mがサーバ1の記憶部11に記憶されている。
【0087】
図16は、第2実施形態におけるサーバ1と情報端末装置3との間で実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。情報端末装置3の制御部30は、例えば新たな動作情報を取得した場合、動作情報をサーバ1へ送信する処理等と並行して以下の処理を実行するものであってよい。
【0088】
情報端末装置3の制御部30は、取得した動作情報と、記憶部31に記憶している標準操作手順書とに基づき、製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱しているか否かを判定する(ステップS51)。動作情報が、標準操作手順の操作内容と一致する場合、制御部30は標準操作手順から逸脱していないと判定する。一方、例えば動作情報の装置内温度が標準操作手順の工程管理値内に含まれない場合、制御部30は、標準操作手順から逸脱していると判定する。または、動作情報のバルブ位置が標準操作手順のバルブ位置と一致しない場合、制御部30は、標準操作手順から逸脱していると判定する。
【0089】
製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱していないと判定した場合(ステップS51:NO)、制御部30は処理を終了する。
【0090】
製造工程における操作手順が標準操作手順から逸脱していると判定した場合(ステップS51:YES)、制御部30は逸脱時刻、逸脱内容等を含む逸脱情報を取得する(ステップS52)。制御部30は、取得した逸脱情報と装置IDとを関連付けてサーバ1へ送信する(ステップS53)。
【0091】
サーバ1の制御部10は、逸脱情報及び装置IDを受信し(ステップS54)。受信した逸脱情報及び装置IDを関連付けて稼働情報DB111に記憶する(ステップS55)。
【0092】
制御部10は、取得した逸脱情報に応じて、製造支援情報を導出する(ステップS56)。具体的には、制御部10は、動作情報等の稼働情報を含む入力情報を学習モデル1Mに入力して、学習モデル1Mから出力される製造支援情報を取得する。制御部10は、製造支援情報として、例えば検出された逸脱のレベル、ロットアウトの確率等を導出する。制御部10は、導出した製造支援情報を稼働情報DB111に記憶する。
【0093】
なお、制御部10は、逸脱レベルに対応する製造アドバイスを導出してもよい。例えば逸脱レベル1又は2の場合には「製造継続の勧告」、逸脱レベル3の場合には「製造中止の勧告」、逸脱レベル4の場合には「製造中止の指示」を製造支援情報として導出する。
【0094】
制御部10は、導出した製造支援情報に基づき、製造支援情報を含むアドバイス画面情報を生成する。制御部10は、生成した製造支援情報を含むアドバイス画面情報を情報端末装置3へ出力する(ステップS57)。この場合において、制御部10は、稼働情報DB111を参照して、逸脱情報に関連付けられる放射性薬剤製造装置2の装置IDに対応する出力先を特定する。制御部10は、特定した出力先である情報端末装置3にアドバイス画面情報を出力する。
【0095】
情報端末装置3の制御部30は、通信部32により製造支援情報を含むアドバイス画面情報を受信する(ステップS58)。制御部30は、取得したアドバイス画面情報を表示装置34に表示し(ステップS59)、一連の処理を終了する。なお制御部30は、ステップS59の処理の後にステップS51を行うループ処理を行ってもよい。
【0096】
図17は、製造支援情報を含むアドバイス画面340を示す模式図である。
図17の画面は、例えば情報端末装置3の表示装置34に表示される。制御部30は、サーバ1から取得したアドバイス画面情報に基づき製造支援情報を含むアドバイス画面340を表示する。アドバイス画面340には、逸脱情報及び製造支援情報が含まれ、更に製造中止を受け付ける中止ボタン341及び製造継続を受け付ける継続ボタン342が含まれる。
【0097】
サーバ1の制御部10は、逸脱情報に対する製造支援情報を導出した場合、稼働情報DB111を参照して逸脱情報と製造支援情報とを対応付けて取得し、逸脱情報及び製造支援情報を含むアドバイス画面情報を生成する。アドバイス画面340では、逸脱情報は、標準操作手順からの逸脱が検出された操作手順に関する情報が「逸脱情報」としてテキスト等により表示される。製造支援情報は、学習モデル1Mによる推定結果を含む。
図17の例では、製造支援情報として、「検出された逸脱のレベル」には逸脱レベルの推定結果を「レベル1」~「レベル4」が表示され、「製造勧告」には、製造アドバイスである「製造継続の勧告」「製造中止の勧告」「製造中止の指示」が表示される。制御部10は、当該逸脱情報及び製造支援情報に関連付けられている装置情報を特定し、特定した装置情報の出力先に、生成したアドバイス画面情報を出力する。
【0098】
製造担当者は、情報端末装置3の表示装置34を介して製造支援情報を認識する。製造担当者は、製造支援情報に基づき製造の中止又は継続を決定し、入力装置35を用いて「中止ボタン341」又は「継続ボタン342」のいずれかを選択するボタン操作を行う。制御部30はボタン操作を受け付け、受け付けた操作内容に応じた処理を放射性薬剤製造装置2に対して実行する。なお制御部30は、例えばロットアウト確率の推定結果が所定の閾値以下である場合には、製造担当者からの選択を受け付けることなく、自動的に製造を継続する処理を実行するものであってもよい。
【0099】
上述の処理によれば、サーバ1から稼働情報に応じた製造支援情報が情報端末装置3へ出力される。製造担当者は、情報端末装置3を介して取得した学習モデル1Mの推定結果を参考にして、製造の中止又は継続を決定することができる。サーバ1は、学習モデル1Mを用いることにより、放射性薬剤製造装置2の稼働状態に応じた製造支援情報を精度よく出力する。例えば製造担当者が経験の浅い場合であっても、製造支援情報を基に逸脱対応を迅速に決定することができるため、効率的な生産が可能となる。さらに、動作情報に基づき逸脱状態の管理が行われることにより、最終的なロットアウト比率を低減し、生産コストの削減を図ることができる。
【0100】
なおサーバ1は、アドバイス画面情報において、逸脱情報の検出履歴に応じた更なる情報を情報端末装置3へ提供してもよい。例えば、サーバ1は逸脱ログに基づき、同一部品に係る操作手順における逸脱が所定回数以上発生した場合には、当該部品の定期点検若しくは補修が必要なことを通知するメンテナンス情報、又は当該部品が故障している可能性が高いことを通知するメンテナンス情報を生成し、情報端末装置3へ送信する。
【0101】
さらにサーバ1は、放射性薬剤製造装置2毎に生成される装置特性を含んだ標準操作手順を提供してもよい。例えば、サーバ1は、稼働情報DB111を参照して、放射性薬剤製造装置2の設置環境、使用実績等を解析することにより、放射性薬剤製造装置2の稼働状況、設置環境に応じた操作順序、操作内容、設定内容等を含んだ個々の放射性薬剤製造装置2に対する標準操作手順を生成し、情報端末装置3へ送信する。上記によれば、サーバ1は稼働情報に基づきより有益な情報を提供することができるため、稼働情報の利用価値を向上させることができる。
【0102】
(第3実施形態)
第3実施形態では、稼働情報に基づき放射性薬剤製造装置2の管理に関する情報を提供する構成について説明する。以下では、第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については第1実施形態の情報処理システム100と同様であるので、共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0103】
管理サービスの提供者は、稼働情報DB111の稼働情報に基づき放射性薬剤製造装置2の使用状況を管理し、管理に関する情報として放射性薬剤製造装置2の使用料を出力する。
図18は、第3実施形態におけるサーバ1と情報端末装置3との間で実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。サーバ1の制御部10は、例えば月一回等、所定のタイミングにおいて以下の処理を開始する。
【0104】
サーバ1の制御部10は、稼働情報DB111を参照して、所定期間における放射性薬剤製造装置2毎の稼働情報を読み出す(ステップS61)。制御部10は、読み出した稼働情報に基づき使用料を演算する(ステップS62)。使用料は、予め設定される所定の計算式を用いて演算される。例えば使用料は、所定期間における製造回数に応じて加算されるとよい。制御部10は、演算対象の期間における稼働情報の動作情報と、放射性薬剤製造装置2の識別情報とを関連付けて取得し、取得したデータに基づき使用料を演算する。この場合において、ロットアウトのときは加算対象となる製造回数から除外されることが好ましい。実際に製造が行われた場合のみ使用料を発生させることで、より製造実績に即した使用料の請求が可能となる。あるいは、制御部10は、例えば動作情報、出荷情報、在庫情報等を参照することにより、製造した放射性薬剤の種類、原材料の使用量・部品の使用量等に応じて課金してもよい。制御部10は、算出した使用料を情報端末装置3へ送信する(ステップS63)。
【0105】
情報端末装置3の制御部30は、使用料を受信する(ステップS64)。制御部30は、使用料を表示させる画面情報を表示装置34に表示し、一連の処理を終了する。管理サービスを享受する病院の担当者は、表示内容を確認し使用料の支払い処理を行う。
【0106】
上述の処理によれば、サーバ1は、稼働情報DB111の稼働情報に基づき放射性薬剤製造装置2の使用状況に応じた使用料を算出することができる。これにより、例えば管理サービスの提供者は、放射性薬剤製造装置2をレンタル等の形態にてサービス利用者へ提供することができるため、放射性薬剤製造装置2の利用価値を高めることができる。
【0107】
サーバ1は、使用料の他にも、放射性薬剤製造装置2の管理に関する各種の情報を情報端末装置3へ提供する。例えばサーバ1の制御部10は、定期的なタイミングで放射性薬剤製造装置2のプログラム、標準操作手順書等の更新情報を取得し、取得した更新情報を情報端末装置3の制御部30へ送信する。情報端末装置3の制御部30は、サーバ1から更新情報を受信する。
【0108】
また、サーバ1は、放射性薬剤の製造における製造記録書、品質試験記録書、出荷判定記録書、出荷記録書等の工程記録書を生成する。例えばサーバ1の制御部10は、所定のタイミング又は情報端末装置3の制御部30からの要求に応じたタイミングにおいて、稼働情報DB111を参照し、収集した稼働情報を取得する。制御部10は、取得した稼働情報に基づき、所定の形式に応じた工程記録書を生成する。制御部10は、生成した工程記録書を情報端末装置3の制御部30へ送信する。情報端末装置3の制御部30は、サーバ1から工程記録書を受信する。
【0109】
さらにまた、サーバ1は、稼働情報に基づき品質照査に関する情報を生成する。例えばサーバ1の制御部10は、所定のタイミング(例えば年一回)において、稼働情報DB111を参照し、所定期間における複数回の製造に係る動作情報及び品質試験情報を取得する。稼働情報DB111から読み出す動作情報は、同一の放射性薬剤製造装置2の動作情報のみでなく、稼働情報DB111に記憶される他の放射性薬剤製造装置2の動作情報が含まれてよい。制御部10は、取得した動作情報及び品質試験情報を解析し、動作情報と品質試験情報との関係に基づき、品質照査に関する情報を導出する。制御部10は、導出した品質照査に関する情報を、照査報告書等に応じた所定形式にて情報端末装置3の制御部30へ送信する。情報端末装置3の制御部30は、サーバ1から照査報告書等の品質照査に関する情報を受信する。
【0110】
上述の処理によれば、サーバ1により生成された工程記録書や照査報告書等が、情報端末装置3へ出力される。サーバ1が放射性薬剤製造装置2の稼働情報を収集管理することで、放射性薬剤の製造を行う個々の製造拠点に関するデータ管理処理、記録書の作成処理等を、サーバ1により効率的に実行することができる。従って、病院、検査施設等における負担を軽減すると共に、医薬品医療機器等法や医療法などの法規制への適合性も向上でき、稼働情報の活用度を高めることができる。さらに、サーバ1は、複数の放射性薬剤製造装置2から収集した大量の情報に基づき品質照査に関する解析処理を実行することにより、解析結果の信頼度を向上させることができ、稼働情報の利用価値が高まる。
【0111】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 情報処理装置(サーバ)
2 放射性薬剤製造装置
3 情報端末装置
10,30 制御部
11,31 記憶部
111 稼働情報DB
1P,3P プログラム
1M 学習モデル
100 情報処理システム