(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】植物栽培装置及び植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240318BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240318BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240318BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
A01G7/00 603
A01G7/00 601
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020071383
(22)【出願日】2020-04-11
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516099255
【氏名又は名称】株式会社プランテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【氏名又は名称】竹本 如洋
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞次郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 卓二
(72)【発明者】
【氏名】坂口 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕資
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-062390(JP,A)
【文献】特開2019-092421(JP,A)
【文献】特開2015-136356(JP,A)
【文献】特開2015-087100(JP,A)
【文献】特開2016-198054(JP,A)
【文献】特開2021-126079(JP,A)
【文献】特開2008-061575(JP,A)
【文献】特開2018-011542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
A01G 7/00
A01G 9/00- 9/08
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培装置を備える植物栽培施設であって、
前記植物栽培装置は、
栽培する植物の生育状態を監視する複数のセンサと、
前記植物栽培装置内の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置内の環境を管理する装置内環境管理手段を有し、
前記植物栽培施設は、
前記植物栽培装置外の状態を監視する複数のセンサと、
前記植物栽培装置外の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置外の環境を管理する装置外環境管理手段を有
し、
前記装置内環境管理手段は、前記植物を栽培する場合に用いる光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態に関する環境値情報を定める第1の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置内の前記環境を管理し、
前記第1の基本レシピは、前記環境値情報に基づいて管理される前記植物栽培装置内の前記環境からの許容可能な変動範囲である制約条件を定め、
前記装置外環境管理手段は、前記植物栽培装置外の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態に関する第2の環境値情報を定める第2の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置外の前記環境を管理し、
前記第2の基本レシピは、前記第2の環境値情報に基づいて管理される前記植物栽培装置外の前記環境からの許容可能な変動範囲である第2の制約条件を定め、
前記装置外環境管理手段は、前記第2の基本レシピに基づく前記植物栽培装置外の前記環境の設定と、前記第1の基本レシピと前記第2の基本レシピとに基づく前記植物栽培装置外の前記環境の設定とを、切り替えて管理する、
ことを特徴とする植物栽培施設。
【請求項2】
他の管理サーバは、栽培する植物毎に定められた複数の前記
第1の基本レシピを記憶しており、前記装置内環境管理手段は、栽培する前記植物に対応する前記他の管理サーバから受信した前記
第1の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置内の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項
1に記載の植物栽培施設。
【請求項3】
前記装置外環境管理手段は、前記他の管理サーバから受信した前記第2の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項
2に記載の植物栽培施設。
【請求項4】
前記
第1の基本レシピにより管理される前記植物栽培装置内の前記環境は、栽培する前記植物に対応するものであり、
前記第2の基本レシピにより管理される前記植物栽培装置外の前記環境は、作業を行う人間に対応するものである
ことを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の植物栽培施設。
【請求項5】
前記
第1の基本レシピにより管理される前記植物栽培装置内の前記環境は、作業を行う前記人間に許容される範囲外のものである
ことを特徴とする請求項
4に記載の植物栽培施設。
【請求項6】
前記装置外環境管理手段は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置されない場合には、前記第2の基本レシピに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の植物栽培施設。
【請求項7】
前記装置外環境管理手段は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置される場合には、前記
第1の基本レシピと前記第2の基本レシピとに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項
1~
6のいずれか1項に記載の植物栽培施設。
【請求項8】
前記装置外環境管理手段は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置される場合には、前記
第1の基本レシピの前記制約条件と前記第2の基本レシピの前記第2の制約条件とに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とす
る請求項
1~
7のいずれか1項に記載の植物栽培施設。
【請求項9】
植物栽培装置を備える植物栽培施設における植物生産方法であって、
前記植物栽培装置は、栽培する植物の生育状態を監視する複数のセンサを備え、
前記植物栽培装置内の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置内の環境を管理し、
前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外の状態を監視する複数のセンサを備え、
前記植物栽培装置外の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置外の環境を管理
し
前記植物栽培装置は、前記植物を栽培する場合に用いる光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態に関する環境値情報を定める第1の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置内の前記環境を管理し、
前記第1の基本レシピは、前記環境値情報に基づいて管理される前記植物栽培装置内の前記環境からの許容可能な変動範囲である制約条件を定め、
前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態に関する第2の環境値情報を定める第2の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置外の前記環境を管理し、
前記第2の基本レシピは、前記第2の環境値情報に基づいて管理される前記植物栽培装置外の前記環境からの許容可能な変動範囲である第2の制約条件を定め、
前記植物栽培施設は、前記第2の基本レシピに基づく前記植物栽培装置外の前記環境の設定と、前記第1の基本レシピと前記第2の基本レシピとに基づく前記植物栽培装置外の前記環境の設定とを、切り替えて管理する、
ことを特徴とす
る植物生産方法。
【請求項10】
他の管理サーバは、栽培する植物毎に定められた複数の前記
第1の基本レシピを記憶しており、前記植物栽培装置は、栽培する前記植物に対応する前記他の管理サーバから受信した前記
第1の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置内の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項
9に記載の植物生産方法。
【請求項11】
前記植物栽培施設は、前記他の管理サーバから受信した前記第2の基本レシピに基づいて、前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項
10に記載の植物生産方法。
【請求項12】
前記第1の基本レシピにより管理される前記植物栽培装置内の前記環境は、栽培する前記植物に対応するものであり、
前記第2の基本レシピにより管理される前記植物栽培装置外の前記環境は、作業を行う人間に対応するものである
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の植物生産方法。
【請求項13】
前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置されない場合には、前記第2の基本レシピに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の植物生産方法。
【請求項14】
前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置される場合には、前記第1の基本レシピと前記第2の基本レシピとに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の植物生産方法。
【請求項15】
前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外に栽培する前記植物が配置される場合には、前記第1の基本レシピの前記制約条件と前記第2の基本レシピの前記第2の制約条件とに基づいて前記植物栽培装置外の前記環境を管理する
ことを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の植物生産方法。
【請求項16】
請求項
9~
15のいずれか1項に記載の
植物生産方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008-61575号公報(特許文献1)がある。この公報には、「植物毎の生育環境に応じた栽培状態をユーザに対して報知して適切な栽培管理を促すこと。植物の周辺環境の状態を示す各種検出値を検出する温度検出部16、湿度検出部17、照度検出部18と、温度検出部16、湿度検出部17、照度検出部18により検出された各種検出値を記憶する第1記憶部11と、温度検出部16、湿度検出部17、照度検出部18により検出された各種検出値と予め定められた判別基準情報とに基づいて、植物の栽培状態の異常の有無や問題傾向を判別するCPU10と、CPU10による植物の栽培状態の判別結果に応じて、植物の栽培状態を報知する表示灯14、鳴動部15と、外部装置2aから供給される誘導電磁界又は電波により生じる電力供給に応じて第1記憶部11に記憶されている各種検出値を当該外部装置2aに送信する第1通信部12と、を備える植物管理装置1a」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、植物栽培装置において、栽培状態をユーザに通知する仕組みが記載されている。しかしながら、この特許文献に記載の植物栽培装置では、植物栽培装置の内部と外部の2重の環境管理が行われていなかった。
そこで、本発明は、植物栽培装置の内部と外部の2重の環境管理を行う仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、植物栽培装置を備える植物栽培施設であって、前記植物栽培装置は、栽培する植物の生育状態を監視する複数のセンサと、前記植物栽培装置内の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置内の環境を管理する装置内環境管理手段を有し、前記植物栽培施設は、前記植物栽培装置外の状態を監視する複数のセンサと、前記植物栽培装置外の光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態である装置外の環境を管理する装置外環境管理手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、植物栽培装置において装置内の環境管理と植物を栽培する作業工程についての工程管理とを共に行う仕組みを提供することができる。
または、植物栽培装置において環境管理又は工程管理を管理サーバから受信するレシピにもとづいて実施する仕組みを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】栽培装置1Aの構成を示す機能ブロック図の例である。
【
図4】栽培室10Aを長手方向から見た断面模式図の例である。
【
図5A】栽培装置1Aに配置される栽培プレート及び栽培トレイの例である。
【
図5B】栽培装置1Aが備える人工光源の説明図の例である。
【
図6】栽培装置1Aが備える空気循環装置の説明図の例である。
【
図7】栽培装置1Aが備える養液循環装置の説明図の例である。
【
図8】植物栽培システム800の全体構成図の例である。
【
図9】管理端末810のハードウェア構成の例である。
【
図10】管理サーバ820のハードウェア構成の例である。
【
図11】作業端末830のハードウェア構成の例である。
【
図14】レシピ登録処理フロー1400の例である。
【
図17】生育状態監視処理フロー1700の例である。
【
図18】監視している生育状態の表示画面の例である。
【
図19】栽培装置1Aの内部及び外部の両方の環境管理を行う栽培施設の図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
本発明の栽培装置は、人工光型の植物工場で用いられるものであり、従来では栽培環境の管理が困難であった生産規模の大きい植物工場に好適に用いられる。
【実施例1】
【0009】
第1実施形態の栽培装置1Aについて、
図1~
図7を参照して説明する。
図1は本発明の栽培装置1Aの構成を示す機能ブロック図の例である。
栽培装置1Aは、栽培室10Aと、複数の栽培チャンバ20Aと、空気循環装置30と、養液循環装置40と、操作部50と、制御部60と、表示部70と、を備える。
栽培室10Aは、
図2に示すように、内部を密閉可能な直方体形状の外壁を備えており、栽培装置1Aが配置される植物工場の作業室の環境(温度や湿度)から独立した栽培環境を維持可能である。外壁の素材としては、栽培室10Aの外側である作業室の環境の影響を受けにくいように、断熱材を用いるのが好ましい。
図3には、栽培室10Aの外壁を取り除いた状態の栽培装置1Aを示す。
【0010】
図4は、本発明の栽培室10Aを長手方向から見た断面模式図の例を示す。
複数の栽培チャンバ20Aは、
図4に示すように、栽培室10Aが上下方向に所定の間隔で棚板111により区画されて形成され、それぞれが略直方体形状を有する。複数の栽培チャンバ20Aは、従来公知の多段式の栽培棚に外装を設けることにより構成することができる。本実施形態では、5段の栽培棚100に外装(栽培室10Aの外壁)を設けて構成した。
【0011】
各栽培チャンバ20Aには、
図5Aに示すような養液トレイ210及び栽培プレート220が、
図5Bに示すように、これらの短手方向が栽培チャンバ20Aの長手方向に沿うように、複数枚配置される。養液トレイ210は、矩形状の栽培プレート220と略同じ大きさで、栽培プレート220をはめ込むように配置可能な矩形状トレイで構成されている。本実施形態では、およそ30cm×120cmの養液トレイ210に栽培プレート220がはめ込まれた状態(
図5B参照)で、各栽培チャンバ20Aに16枚配置される。
【0012】
尚、栽培チャンバ20Aの形状は、生産規模の大きい植物工場に好適に用いられるため、長手方向の長さが短手方向の長さに対して2倍以上である長尺な形状であることが好ましい。本実施形態では、短手方向の長さ:長手方向の長さ=1:5である。ただし、栽培チャンバ20Aの大きさ(栽培チャンバ20Aに配置される栽培プレート220の枚数)は、上述の実施形態の大きさに限られない。
【0013】
また、本実施形態で養液トレイ210及び栽培プレート220は矩形であるが、これに限らず正方形であってもよい。正方形の場合、正方形の栽培プレート220の一辺が栽培チャンバ20Aの長手方向に沿うよう配置される。
このように、養液トレイ210が配置された状態においては、複数の栽培チャンバ20Aは、それぞれが密閉又は半密閉の状態となる。
【0014】
また、養液トレイ210には、供給された養液を排出するための排出口211(
図4参照)が長手方向の一端側(養液の流れの下流側)に形成される。また、養液トレイ210は、養液の流れの下流側が下方になるように、栽培チャンバ20Aの短手方向について所定の角度(例えば、1度程度)で傾斜した傾斜面を備えており、これにより、供給された養液が養液トレイ210に滞留することなく、供給流量に応じた所定の流速で一方向の流れを作り出すことができる。また、後述する養液回収管470が、排出口211の下方に配置される(
図4参照)。
【0015】
尚、養液トレイ210は、栽培プレート220の1枚分に対応するサイズでなくてもよく、複数枚の栽培プレート220を1つの養液トレイ210に配置することができるよう構成してもよい。
また、各栽培チャンバ20Aの上方には、
図5Bに示すように、人工光源230が配置され、人工光源230の調光を行う調光器231が接続される。本実施形態では、人工光源230は、養液トレイ210及び栽培プレート220の長手方向(栽培チャンバ20Aの短手方向)に沿うように、2本配置される。人工光源230としては、消費電力が少なく薄型に構成できるLEDが好適に用いられる。また、人工光源として蛍光灯を用いてもよい。
【0016】
空気循環装置30は、
図2及び
図3に示すように、栽培室10Aの長手方向の一端側に、栽培棚100に隣接して配置され、所定の条件に調整された空気を所定の流速で各栽培チャンバ20Aに供給し、各栽培チャンバ20Aの内部を通過した空気を回収して、所定の条件となるように調整し、これを繰り返して循環供給を行う。
【0017】
図6を参照して、空気循環装置30の構成について説明する。空気循環装置30は、少なくとも温度、湿度、二酸化炭素濃度及び空気の流速(流量)を調整する機能を有していればよい。本実施形態では、空気循環装置30は、空気滅菌装置310と、加温、冷却及び除湿機能を有する直膨式(冷媒で直接空気を冷やす方式)の空調装置320と、加湿機能を有する加湿装置330と、二酸化炭素濃度を調整する二酸化炭素供給装置340と、吸引ポンプ350と、圧縮ポンプ360と、を備える。
尚、温度を調整する機能を有する装置として、間膨方式(冷媒で水を介して空気を冷やす方式)のチラー装置を用いてもよい。
【0018】
各栽培チャンバ20Aと空気循環装置30とは、空気回収管370A及び空気供給管380を介して接続される。空気回収管370A及び空気供給管380は、栽培チャンバ20Aの長手方向に延びている。空気回収管370Aには所定の間隔で設けられる複数の空気回収口371が形成されている。また、空気供給管380には所定の間隔で設けられる複数の空気供給口381が形成され、これら空気供給口381には不図示の定流量弁が設けられている。
また、不図示の温度センサ、湿度センサ及び二酸化炭素濃度センサが各栽培チャンバ20Aの所定箇所に取り付けられ、循環中の空気の温度、湿度や二酸化炭素濃度がモニタされる。
【0019】
吸引ポンプ350により空気回収管370Aを介して各栽培チャンバ20Aから回収された空気は、空気滅菌装置310を経て滅菌され、空調装置320に送られる。空調装置320では、温度センサ及び湿度センサの測定結果に応じて温度調整や除湿がなされたのち、加湿装置330で加湿が行われる。その後、二酸化炭素供給装置340により、二酸化炭素濃度センサの測定結果に応じて二酸化炭素ボンベ等の二酸化炭素供給源341から二酸化炭素が供給される。そして、圧縮ポンプ360により空気供給管380を介して各栽培チャンバ20Aに所定の条件及び所定の流速に調整された空気が供給される。
なお、空気の流速の設定値は、固定でもよく、また変更可能でもよい。
【0020】
この際、
図4に示すように栽培チャンバ20Aにおける空気の流れ方向は、栽培チャンバ20Aの短手方向に沿っている。これにより、空気の流れ方向を栽培チャンバ20Aの長手方向に沿うように供給した場合に比べて、空気の供給から回収までの時間を短くすることができる。よって、空気の流れの上流側と下流側とで生じる温度や湿度、二酸化炭素濃度等の栽培環境の変化を小さくすることができる。
ただし、これに限定されず、栽培チャンバ20Aにおける空気の流れ方向は、栽培チャンバ20Aの上方から下方に沿っていてもよい。
【0021】
なお、実施形態においては、1つの栽培装置1Aが1つの栽培室10Aを備え、1つの栽培室10Aが複数の栽培チャンバ20Aと1つの空気循環装置30を備え、複数の栽培チャンバ20Aに1つの空気循環装置30から空気が送られる。
ただし、これに限定されず、1つの栽培装置1Aが1つの栽培室10Aを備え、1つの栽培室10Aが複数の栽培チャンバ20Aと、それぞれの栽培チャンバ20Aに対応する複数の空気循環装置30を備え、複数の栽培チャンバ20Aのそれぞれに、対応する空気循環装置30から空気が送られる構成であってもよい。この場合、栽培チャンバ20Aごとに循環中の空気の温度、湿度、二酸化炭素濃度及び流速(流量)等を変えることができる。
【0022】
また、1つの栽培装置1Aが複数の栽培室10Aを備え、複数の栽培室10Aがそれぞれ、複数の栽培チャンバ20Aと1つの空気循環装置30を備えてもよい。
さらに、1つの栽培装置1Aが複数の栽培室10Aを備え、複数の栽培室10Aがそれぞれ、複数の栽培チャンバ20Aと、それぞれの栽培チャンバ20Aに対応する複数の空気循環装置30を備えてもよい。
養液循環装置40は、
図2及び
図3に示すように、栽培室10Aの下方に配置され、所定の条件に調整された養液を所定の流速で各栽培チャンバ20Aの養液トレイ210に供給し、各養液トレイを通過した養液を回収して、所定の条件となるように調整し、これを繰り返して養液の循環供給を行う。
【0023】
図7を参照して、養液循環装置40の構成について説明する。養液循環装置40は、少なくとも養液の温度、養分(窒素、リン酸、カリウム等の各種単肥イオン)を調整する機能を有していればよい。本実施形態では、養液循環装置40は、養液滅菌装置410と、市水供給源と接続される養液タンク420と、加温及び冷却機能を有するチラー装置(不図示)と、養分供給装置440と、酸素を供給して溶存酸素濃度を調整する酸素供給装置450と、養液圧力ポンプ460と、を備える。
【0024】
各栽培チャンバ20Aと養液循環装置40とは、養液回収管470及び養液供給管480を介して接続される。養液回収管470は、栽培チャンバ20Aの長手方向に延びており、養液トレイ210の排出口から排出される養液を回収できるように構成される。また、養液供給管480も同様に栽培チャンバ20Aの長手方向に延びており、養液供給管480には、所定の間隔で複数の養液供給口481が形成されている。養液供給口481は、養液供給管480において下方を向くように開口していてもよいが、本実施形態のように、養液の流れ方向に沿う方向を向くように開口する方が好ましい(
図4及び
図7参照)。これにより、下方に開口する場合に比べ、同じ供給量ならば養液の流速を速めることができる。
【0025】
なお、実施形態においては、1つの栽培装置1Aが1つの栽培室10Aを備え、1つの栽培室10Aが複数の栽培チャンバ20Aと1つの養液循環装置40を備え、複数の栽培チャンバ20Aに1つの養液循環装置40から養液が送られる。
なお、養液の流速の設定値は、固定でもよく、また変更可能でもよい。
ただし、これに限定されず、1つの栽培装置1Aが1つの栽培室10Aを備え、1つの栽培室10Aが複数の栽培チャンバ20Aと、それぞれの栽培チャンバ20Aに対応する複数の養液循環装置40を備え、複数の栽培チャンバ20Aのそれぞれに、対応する養液循環装置40から養液が送られる構成であってもよい。この場合、栽培チャンバ20Aごとに養液の温度、養分、流速等を変えることができる。
【0026】
また、1つの栽培装置1Aが複数の栽培室10Aを備え、複数の栽培室10Aがそれぞれ、複数の栽培チャンバ20Aと1つの養液循環装置40を備えてもよい。
さらに、1つの栽培装置1Aが複数の栽培室10Aを備え、複数の栽培室10Aがそれぞれ、複数の栽培チャンバ20Aと、それぞれの栽培チャンバ20Aに対応する複数の養液循環装置40を備えてもよい。
また、水温センサ(不図示)が養液タンク420に、各種養分の濃度を測定する単肥センサSFSが養液タンク420の養液回収管470との接続口近傍に取り付けられ、循環中の養液の水温、各種単肥イオン濃度をモニタする。チラー装置は水温センサの測定結果に応じて、養液の温度を調整する。
【0027】
養分供給装置440は、単肥イオン濃度制御部441、単肥センサSFS及び単肥イオン供給プランジャ442を含んで構成される。そして、この養分供給装置440では、単肥イオン濃度制御部441が、各種単肥センサSFSの測定結果に応じて、単肥イオン供給プランジャ442を駆動して、養液の単肥イオン濃度を調整する。尚、養液の単肥イオン濃度は、pHセンサ及びECセンサを用いて測定してもよい。
【0028】
養液タンク420に貯留された養液は、チラー装置により所定の水温に調整され、養分供給装置440により所定の単肥イオン濃度に調整され、酸素供給装置450により所定の溶存酸素量となるように調整される。その後、養液圧力ポンプ460により養液供給管480を介して各栽培チャンバ20Aに配置された養液トレイ210に養液が供給される。
図4に示すように、養液は養液トレイ210を栽培チャンバ20Aの短手方向に沿って所定の流速で流れて行き、養液トレイ210の排出口211から排出されて、養液回収管470に流れて行く。各栽培チャンバ20Aに接続される養液回収管470により回収された養液は、養液滅菌装置410で滅菌されたのち、養液タンク420に流入する。
【0029】
この際、栽培チャンバ20Aにおける養液の流れ方向は、栽培チャンバ20Aの短手方向に沿っている。これにより、養液の流れ方向が栽培チャンバ20Aの長手方向に沿う場合に比べて、養液の供給から回収までの時間を短くすることができる。
尚、養液タンク420は、栽培チャンバ20A毎に設けてもよいし、栽培室10Aにつき1つだけ設けてもよい。
【0030】
操作部50は、栽培室10A内が所定の栽培環境となるように設定するためのボタンやキーボード等で構成され、
図1及び
図2に示すように、栽培室10Aの長手方向の一端側(空気循環装置30が配置されている側)の外側に配置される。
制御部60は、栽培室10Aの内部に配置され、空気循環装置30、養液循環装置40及び操作部50からの信号を受けて、空気循環装置30、養液循環装置40及び後述の表示部70を制御するものであり、例えば中央演算処理装置やRAM、ROM等からなるコンピュータ装置で構成される。
【0031】
表示部70は、栽培室10A内の各栽培チャンバ20Aにおいて各種センサによりモニタされた測定結果や、操作部50により設定された所定の栽培環境等を表示するためのもので、液晶パネル等により構成される。表示部70は、
図2及び
図3に示すように、栽培室10Aの長手方向の一端側(空気循環装置30が配置されている側)の外側に配置される。
尚、操作部50、制御部60及び表示部70は、栽培室10Aと一体で構成することなく、栽培室10Aと別体で構成してもよい。その場合、操作部、制御部及び表示部を備える制御盤を植物工場の所定箇所に配置し、この制御盤により複数の栽培室10Aそれぞれにおける複数の栽培チャンバ20Aの栽培環境を集中して管理してもよい。
【実施例2】
【0032】
実施例2は、栽培装置1Aを管理サーバ820から受信した基本レシピ1200又は作業レシピ1300に基づいて制御する構成について説明する。
図8は、植物栽培システム800の全体構成図の例である。
植物栽培システム800は、管理端末810と作業端末830とを備え、それぞれがネットワークを介して管理サーバ820に接続されている。栽培装置1Aは直接ネットワークを介して管理サーバ820に接続されてもよいし、管理端末810を介してネットワーク経由で管理サーバ820に接続されてもよい。
なお、ネットワークは有線、無線を問わず、それぞれの端末はネットワークを介して情報を送受信することができる。
【0033】
管理端末810は、栽培装置1Aを管理及び制御する端末である。栽培装置1Aに組み込まれた装置でもよいし、栽培装置1Aとは独立したコンピュータ等の装置が、ネットワークを経由して栽培装置1Aの空気循環装置30や、養液循環装置40、人工光源等を制御する構成であってもよい。
管理サーバ820は、管理端末810又は栽培装置1Aに読み込まれる基本レシピ1200や作業レシピ1300を記憶し、管理する装置である。
作業端末830は、植物栽培の各作業工程に応じて、作業者が確認や入力を行う端末である。
【0034】
植物栽培システム800のそれぞれの端末や管理サーバ820は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末(モバイル端末)でもよいし、メガネ型や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよい。また、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。また、機能としてはVR(仮想現実:Virtual Reality)端末、AR端末、MR(複合現実:Mixed Reality)端末でもよい。あるいは、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。またこれら以外の情報処理端末であってもよい。
【0035】
植物栽培システム800のそれぞれの端末や管理サーバ820は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力、カメラ部の撮像による動き検知による入力などの入力装置と、モニタやディスプレイ等の出力装置とを備える。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0036】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)が記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサが実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、これらの各モジュールは集積化する等によりハードウェアで実装してもよい。また、各モジュールはそれぞれ独立したプログラムやアプリケーションでもよいが、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。
【0037】
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載をしているが、実際には各種プログラムやアプリケーションなど(モジュール)を処理するプロセッサが処理を実行する。
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。
【0038】
図9は、管理端末810のハードウェア構成の例である。
管理端末810は、例えばスマートフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC等の端末で構成される。
主記憶装置901には、レシピ登録管理モジュール911、環境管理モジュール912、工程管理モジュール913、生育状態監視モジュール914、暗号処理モジュール915等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ903が実行することで管理サーバ101の各機能要素が実現される。
【0039】
レシピ登録管理モジュール911は、基本レシピ1200や作業レシピ1300を管理サーバ820から受信し、基本レシピDB921や作業レシピDB922に記憶する。
環境管理モジュール912は、植物を栽培する場合に用いられる光、空気、水、空間の少なくとも1つの状態に関する環境値データ(環境値情報)を規定する基本レシピに基づいて、栽培装置1A内部の環境を管理する。
【0040】
具体的には、環境管理モジュール912は、基本レシピDB921に記憶された基本レシピ1200を読み込み、読み込まれた情報に基づいて、栽培装置1A内部の空気循環装置30、養液循環装置40、人工光源、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、栽培装置内の栽培密度、光波長、光量子束密度、温度、湿度、二酸化炭素濃度、電気伝導率、pH値、各種イオン濃度、水温、水流速、横向きの気流速、上からの気流速、溶存酸素濃度等を制御する。
また、環境管理モジュール912は、栽培装置1A内部に設置された各種センサから栽培密度、光波長、光量子束密度、温度、湿度、二酸化炭素濃度、電気伝導率、pH値、各種イオン濃度、水温、水流速、横向きの気流速、上からの気流速、溶存酸素濃度等に関する情報を取得及び算出し、管理する。
【0041】
工程管理モジュール913は、植物栽培の開始時点からの経過時間に応じて実施すべき作業工程を規定する作業レシピに基づいて、植物を栽培する作業工程を管理する。ここで開始時点とは、例えば、植物を栽培する開始時点又は播種の時点のいずれかが規定されている。
具体的には、工程管理モジュール913は、作業レシピDB922に記憶された作業レシピ1300を読み込み、読み込まれた情報に基づいて、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、植物栽培の作業工程を実行する。
又は、工程管理モジュール913は、作業レシピ1300に基づいて、作業工程として必要な各作業ステップを、モニタ等の出力装置905や、外部の作業端末830等に表示し、作業員の作業を管理する。
【0042】
生育状態監視モジュール914は、各種センサから取得した情報に基づいて、栽培する植物の生育状態を監視し、表示する。例えば、栽培する植物に関連する、光合成速度、蒸散速度、吸水速度、葉面積、葉高、葉枚数、株重量、生育異常、菌数等を監視する。
生育状態監視モジュール914は、基本レシピに規定された環境値データにより植物を栽培した場合に想定される想定生育状態と、複数のセンサにより取得される植物の実際の生育状態と、を対比可能な状態で表示する。また、生育状態監視モジュール914は、実際の生育状態が、想定生育状態から所定の範囲以上外れた場合にアラートを表示したり、適用する基本レシピを変更したりすることができる。
【0043】
暗号処理モジュール915は、管理サーバ820、作業端末830、栽培装置1A、栽培装置1A内の各種装置との間の通信内容を暗号化・復号化することで、植物栽培システム800のセキュリティを高める。
なお、栽培装置1Aは、装置内部に操作部50、制御部60、表示部70を組み込んだ装置とすることもできるが、これらを管理端末810で代用することも可能である。この場合には、入力装置904が操作部50に、プロセッサ903が制御部60に、出力装置905が表示部70に対応する。
【0044】
補助記憶装置902は、基本レシピDB921及び作業レシピDB922を備える。
基本レシピDB921は基本レシピ1200を記憶する。作業レシピDB922は作業レシピ1300を記憶する。
なお、これらの複数のデータベースは、1つのデータベース上に実装してもよいし、より分割された複数のデータベースに実装してもよい。
【0045】
図10は、管理サーバ820のハードウェア構成の例である。
管理サーバ820は、例えばクラウド上に配置されたサーバで構成される。
主記憶装置1001には、サーバレシピ管理モジュール1011等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ1003が実行することで管理サーバ820の各機能要素が実現される。
【0046】
サーバレシピ管理モジュール1011は、補助記憶装置1002のサーバ基本レシピDB1021やサーバ作業レシピDB1022に記憶される基本レシピ1200や作業レシピ1300を管理する。
また、管理端末810や栽培装置1Aからの要求に応じて、基本レシピ1200や作業レシピ1300を管理端末810や栽培装置1Aに送信する。
【0047】
図11は、作業端末830のハードウェア構成の例である。
作業端末830は、例えばスマートフォン、タブレット、グラス型等のウェアラブル端末、ノートPC、デスクトップPC、等の端末で構成される。
主記憶装置1101には、作業ステップ管理モジュール1111等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ1103が実行することで作業端末830の各機能要素が実現される。
【0048】
作業ステップ管理モジュール1111は、管理端末810の工程管理モジュール913と連携し、植物栽培の作業工程における各作業ステップの情報を表示し、逐次作業員からの入力を受け付け、作業ステップの進捗を管理、確認する。
作業レシピ1300に基づく各作業工程の各作業ステップに関する情報、例えば作業実施者や作業内容や作業対象等に関する情報は、補助記憶装置1102の作業ステップ管理情報1121に記憶される。
【0049】
作業端末830は、例えば入力装置1104として、バーコードリーダやRFIDリーダを有し、各作業ステップを実施するタイミングで作業員がバーコードや、RFIDタグを読み込むことで、作業ステップの進捗を管理する。
また、作業員の名札等に付されたバーコードをバーコードリーダで読み込むことで、作業を実施する作業員の情報も管理することができる。
また、内蔵または外付けのカメラ部1106からの映像を解析することで、作業員の作業を追跡したり、作業員の移動を追跡したり、栽培装置1A内部の栽培プレートや栽培トレイの移動を追跡したりすることもできる。
なお、作業端末830の機能を環境管理モジュール912が兼ねる構成であってもよい。
【0050】
図12は、基本レシピ1200の例である。
栽培する複数の品種1210及び、その仕様1220に応じて複数の基本レシピ1200が規定されており、様々な品種及び仕様に対する栽培装置1Aの栽培環境を制御し管理することができる。
基本レシピ1200は、植物を栽培する場合に栽培装置1A内部で適用する光、空気、水、空間の状態に関する環境値データ1230を有する。環境値データ1230としては例えば、栽培装置内の栽培密度、光波長、光量子束密度(PPFD)、温度、湿度、二酸化炭素濃度(CO
2)、電気伝導率(EC)、pH値(pH)、各種イオン濃度、水温、水流速、横向きの気流速気(流速横)、上からの気流速(気流速上)、溶存酸素濃度、等の情報が規定されており、栽培開始からの経過時間に応じて適用するこれらの値が定められている。
【0051】
基本レシピ1200は、基本レシピに規定された環境値データにより植物を栽培した場合に想定される想定生育状態を示す指標値アラートデータ1240を有する。指標値アラートデータ1240として、例えば、栽培する植物に関連する、光合成速度、蒸散速度、吸水速度、葉面積、葉高、葉枚数、株重量、生育異常、菌数等の情報が規定されている。
本実施例記載の栽培装置1Aでは、管理サーバ820で管理された基本レシピ1200及び作業レシピ1300に基づいて、栽培する植物の栽培環境を適切に管理することができる。また、栽培装置1Aが外部から密閉又はほぼ密閉可能な栽培装置である場合には、基本レシピ1200により外気の状況とは大きく異なる特殊な栽培環境を再現することが可能となる。
【0052】
例えば、光量子束密度を通常より高くしたり、栽培温度を通常より高い温度としたり、二酸化炭素濃度を人間の作業環境より高くしたりすることで、従来の植物工場における植物栽培よりもより生産性の高い栽培が可能となる。
これらの栽培に適したパラメータ値を、管理サーバ820上で基本レシピ1200という形で記憶、管理し、管理サーバ820から配布する構成とすることで、複数の異なる拠点に分散された複数の栽培装置1Aにおいても同一の栽培環境を再現することが可能となる。
【0053】
図13は、作業レシピ1300の例である。
作業レシピ1300には、複数の作業工程毎に作業環境1310及び作業制約条件1320が規定されている。作業レシピ1300は、栽培の開始時点からの経過時間や植物栽培装置の状況、又は植物栽培システム800の状況、基本レシピ1200の環境値データ1230の変化(すなわち環境の変化)等に応じて、実施すべき栽培の作業工程を規定する。
作業レシピ1300による工程管理は、播種等の特定の時点からの絶対時間で管理する。又は、基本レシピ1200の環境値データ1230が変化し、栽培環境が変化する場合に、これに作業レシピ1300を対応づけておき、作業レシピ1300を参照することで、生育環境が変更される際に工程管理を行う仕組みとしてもよい。
作業工程としては、例えば播種、150から32株への移植、32から12株への移植、収穫、トリミング、包装、保管、輸送などがあり、原材料である種が成長し、収穫され、製品として梱包されて出荷されるまでの一連の活動の進行過程を工程と呼ぶ。
【0054】
作業環境1310は、各作業工程毎に、前記作業工程を実施する場合に満たすべき作業環境の制約条件を規定する。例えば、作業工程「播種」については、制約条件として、作業時間は300秒間が規定され、また、温度について、基本レシピ1200の経過時間0時間(播種のタイミング)に規定された基準の温度25度からの許容可能な温度の変動範囲が±5度と規定されている。
同様に、播種の作業工程での許容可能な変動範囲が、湿度について、基本レシピ1200の基準値からの変動範囲±10%、二酸化炭素濃度について400から1000ppmの範囲が規定されている。
【0055】
作業制約条件1320には、作業を行うにあたって作業環境以外に制御が必要な項目も規定されている。例えば自動化されていない作業の場合についての作業員への作業上の注意点等が規定されている。
たとえば、棚割ロジックとして、作業工程毎の栽培数、栽培する際にどの装置のどの段、位置を使用するかが規定されている。
また、基本レシピ1200により栽培装置1A内の栽培環境を再現するにあたり、装置によって制御方法が異なる場合がある。装置毎の制御ロジックは、これらの装置毎特有の制御内容を規定する。例えば、環境温度を20度にするためには、装置Xではエアコンの設定温度を20度に設定する。一方装置YではA+1度に設定する。装置Zではエアコンがないため冷水と温水で20度に制御する等の制御内容が規定されている。
【0056】
作業制約条件1320には、各作業工程で実施する作業ステップ(一工程)が規定されており、工程管理モジュール913が、作業レシピDB922に記憶された作業レシピ1300を読み込み、読み込まれた情報に基づいて、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、植物栽培の作業工程を実行する。
又は、工程管理モジュール913は、作業レシピ1300に基づいて、作業工程として必要な各作業ステップを、モニタ等の出力装置905や、外部の作業端末830等に表示し、作業員の作業を管理する。
例えば、播種のためにトレイなどの道具を準備する、作業者が種をまく、種をまいたトレイを自動機に設置する、自動機がトレイを所定の位置まで移動させる、環境管理された装置の中でしばらく成長させる、などが作業ステップの一工程に該当する。
【0057】
作業員の作業を監視する場合には、各作業ステップを実施するタイミングで作業員が作業端末830又は管理端末810に接続されたバーコードや、RFIDタグを読み込むことで、作業ステップの進捗を管理する。
また、作業員の名札等に付されたバーコードをバーコードリーダで読み込むことで、作業を実施する作業員の情報も管理することができる。
このように、作業制約条件1320には、各作業工程で実施する作業ステップ(一工程)毎に、作業員の情報、作業内容の情報、作業対象の情報の少なくとも1つが適宜取得され管理されることで、作業工程全体を管理及び制御する。
【0058】
例えば150→32移植(1次移植)の工程について説明する。
1次移植では、サブ工程として、密閉又は半密閉された栽培装置1Aから栽培トレイを取り出す棚出し工程と、移植する移植工程と、再び栽培装置1Aに入れる棚入れ工程が存在する。
【0059】
棚出し工程では、取得したいデータとして例えば以下が作業制約条件1320に規定されている。
1.作業開始時間
2.作業した人のID
3.装置ID
4.作業の内容を表示(育苗工程出し作業)
5.装置に付されているバーコードを読む
6.栽培装置1Aの棚外に出る栽培トレイのトレイIDを確認
7.棚が開いた時間を計測
8.栽培トレイの扉開閉による温度差を計測
9.栽培トレイが棚から出た時間を計測
10.棚が閉まった時間を計測
11.栽培トレイ取り出しのための栽培装置1Aの扉開閉での温度差を計測
【0060】
また、データの取得手順として例えば以下が作業制約条件1320に規定されている。
1.作業員のIDをバーコードリーダで読むことで作業開始情報を取得
2.栽培装置1Aに張り付けてあるバーコードを読むことで、スタートIDを取得
3.作業工程及び工程程中の作業ステップの内容を、栽培装置1Aに付されているバーコードを読むことで表示(育苗工程出し作業)
4.手元スイッチで扉を開いた時間を取得することで、棚の扉が開いた時間を計測
5.棚の入り口のRFIDリーダ信号から取得することで、栽培トレイが棚から出た時間を計測
6.手元スイッチで扉を閉じた時間を取得することで、棚の扉が閉じた時間を計測
7.栽培装置1Aに張り付けてあるバーコードを読むことで、栽培装置1Aの終了IDを取得
【0061】
同様に作業レシピ1300には、移植する移植工程と、再び栽培装置1Aに入れる棚入れ工程が規定されている。
本実施例記載の栽培装置1Aでは、管理サーバ820で管理されたこれらの作業レシピ1300に記載された作業工程毎の作業ステップの一覧と、その確認事項、取得したいデータ情報等に基づいて、植物栽培の作業工程を適切に管理することが可能となる。
なお、栽培装置1Aが外部から密閉又はほぼ密閉可能な栽培装置である場合には、播種、移植、収穫などの作業工程を実行する場合には、基本レシピ1200により密閉又は半密閉可能な栽培装置1Aから栽培トレイを栽培装置1A外部取りだす必要がある。
この場合、基本レシピ1200は植物栽培装置内の環境値データを規定しており、作業レシピ1300は、栽培する前記植物が前記植物栽培装置の外部に出された場合に満たすべき環境値データを、作業環境1310及び作業制約条件1320に規定している。
【0062】
図14は、レシピ登録処理フロー1400の例である。
管理端末810のレシピ登録管理モジュール911は、栽培管理者または作業者から栽培装置1Aで栽培する植物の選択を受け付ける(ステップ1410)。
レシピ登録管理モジュール911は、栽培する植物の仕様の選択を受け付ける(ステップ1420)
レシピ登録管理モジュール911は、選択した植物及び仕様に対応する基本レシピ1200及び作業レシピ1300を管理サーバ820からダウンロードする(ステップ1430)。
レシピ登録管理モジュール911は、ダウンロードした基本レシピ1200及び作業レシピ1300を管理端末810の基本レシピDB921及び作業レシピDB922に登録する。
【0063】
管理サーバ820には、複数の植物の複数の仕様に応じた基本レシピ1200が登録されており、栽培する植物及び仕様に対応する基本レシピ1200を受信し、登録することにより、栽培装置1Aを制御して最適な栽培環境を再現することができる。
また、管理サーバ820には、複数の植物の複数の仕様に応じた作業レシピ1300が登録されており、栽培する植物及び仕様に対応する作業レシピ1300を受信し、登録することにより、栽培の作業工程を制御、管理することができる。
【0064】
図15は、環境管理処理フロー1500の例である。
管理端末810の環境管理モジュール912は、基本レシピDB921に記憶された基本レシピ1200を読み込む(ステップ1510)。
環境管理モジュール912は、読み込んだ基本レシピ1200に従い、栽培装置1A内の環境を制御する。
例えば、環境管理モジュール912は、基本レシピ1200に規定された環境値データ1230に基づいて、栽培装置1A内部の空気循環装置30、養液循環装置40、人工光源、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、栽培装置内の栽培密度、光波長、光量子束密度、温度、湿度、二酸化炭素濃度、電気伝導率、pH値、各種イオン濃度、水温、水流速、横向きの気流速、上からの気流速、溶存酸素濃度等を制御する。
【0065】
本実施例の栽培装置1Aは、密閉又は半密閉型の栽培装置であり、装置外部の外気の影響をほとんど受けることなく基本レシピ1200に基づいて光、空気、水、空間に関する栽培環境の正確な制御及び管理を行うことができる。
なお、栽培装置1Aは密閉又は半密閉型の栽培装置ではなく、栽培工場内部の人が作業を行う環境にある外気と同じ環境で栽培する開放型の栽培装置にも適用することができる。管理サーバ820からダウンロードした基本レシピ1200に基づいて、開放型の棚等の上で栽培される植物に対する光、空気、水、空間に関する栽培環境を制御・管理する。密閉又は半密閉型の栽培装置と比べると完全ではないものの、開放型であっても十分に栽培環境の制御及び管理を行うことが可能である。
【0066】
図16は、工程管理処理フロー1600の例である。
工程管理処理フロー1600は、基本レシピ1200の環境値データ1230の値が変化することに応じて開始される。又は、播種等の特定時点からの絶対時間により管理され、所定の時間になった場合に開始されることしてもよい。
管理サーバ820の工程管理モジュール913は、作業レシピDB922に記憶された作業レシピ1300を読み込む(ステップ1610)。
【0067】
工程管理モジュール913は、作業レシピ1300に規定された作業工程についての作業の開始を確認する(ステップ1620)。例えば、作業レシピ1300に規定された作業工程の各作業ステップをモニタや、作業端末830の画面に表示し、作業員が作業内容を確認するとともに、作業の開始ボタンをタップする。
又は、作業端末830に接続されたバーコードリーダやカメラやRFIDリーダにより、作業開始を示す情報やバーコードやRFIDタグ等を読み込むことで、作業開始を確認してもよい。
また、移植などの工程では、栽培トレイを取り出すために栽培装置1Aの扉が空けられたことを感知して、作業の開始としてもよい。
【0068】
工程管理モジュール913は、作業レシピ1300に規定された作業工程の各作業ステップを確認する情報及び関連情報を取得する(ステップ1630)。
ここで取得した各作業ステップに応じて作業員もしくは栽培装置1Aのロボットマニュピレータやコンベア等が作業工程の各作業ステップを実施する。
作業員が人力で作業ステップを実施する場合には、各作業ステップについてチェック項目を設け、そのチェック項目ごとにバーコードリーダやRFIDリーダや作業員からの入力による確認データの取得を行うことで、作業ステップの進捗を管理することができる。
【0069】
工程管理モジュール913は、栽培装置1A内や、栽培装置1Aの外部の作業場所に設置された温度センサ、湿度センサ、二酸化炭素濃度センサ等の複数のセンサから環境等に関する各種データを取得する(ステップ1640)。
センサから取得された環境等のデータが、作業レシピ1300に規定された制約条件である作業環境1310及び作業制約条件1320の範囲内かどうかを判定する(ステップ1650)。
【0070】
制約条件の範囲内である場合には(ステップ1650がYes)、そのまま各作業ステップを実施し、作業の終了まで作業を繰り返す(ステップ1680がNo)。
制約条件の範囲外である場合には(ステップ1650がNo)、アラートを表示する(ステップ1670)。
作業環境1310には、作業工程を実施する場合に満たすべき作業環境の制約条件が規定されているが、例えば、作業工程「播種」については、制約条件として、作業時間は300秒間が規定され、また、温度について、基本レシピ1200の経過時間0時間(播種のタイミング)に規定された基準の温度25度からの許容可能な温度の変動範囲が±5度と規定されている。
【0071】
密閉又は半密閉された栽培装置1Aの内部の温度が基本レシピ1200に基づいて摂氏25度に管理されており、栽培装置1Aの外部で播種を行うが、この播種を行う作業場所での温度は25度±5度の範囲から外れた場合には、アラートが通知される。
また、制約条件として設定された300秒の作業時間を超えた場合にもアラートが通知される。
このように、本実施例の栽培装置1Aは、植物を栽培する栽培装置1A内を外部から密閉可能な栽培装置であり、基本レシピ1200ではこの栽培装置1A内の環境値データを規定しており、作業レシピ1300は、栽培する植物が栽培装置1Aの外部に出された場合に満たすべき環境値データを規定している。
【0072】
図17は、生育状態監視処理フロー1700の例である。
管理サーバ820の生育状態監視モジュール914は、基本レシピDB921に記憶された基本レシピ1200を読み込む(ステップ1710)。
生育状態監視モジュール914は、栽培装置1A内外に設置された複数のセンサから各種データを取得する(ステップ1720)。
生育状態監視モジュール914は、各種センサから取得した情報に基づいて、栽培する植物の生育状態を監視し、表示する(ステップ1730)。例えば、栽培する植物に関連する、光合成速度、蒸散速度、吸水速度、葉面積、葉高、葉枚数、株重量、生育異常、菌数等を監視する。
【0073】
生育状態監視モジュール914は、基本レシピ1200に規定された環境値データ1230により植物を栽培した場合に想定される想定生育状態と、複数のセンサにより取得された植物の実際の生育状態と、を対比可能な状態で表示する。想定育成状態は指標値アラートデータ1240に規定されている。例えば、指標値アラートデータ1240として、栽培する植物に関連する、光合成速度、蒸散速度、吸水速度、葉面積、葉高、葉枚数、株重量、生育異常、菌数等の情報が規定されている。
【0074】
生育状態監視モジュール914は、実際の生育状態が、想定生育状態から所定の範囲内かどうかを確認する(ステップ1740)。実際の生育状態が想定生育状態から所定の範囲以上外れた場合(例えば5%以上ずれている場合)にはアラートを表示する(ステップ1750)。
また、生育状態監視モジュール914は、実際の生育状態が想定生育状態から所定の範囲以上外れた場合に、環境管理モジュール912と連携して栽培装置1Aに適用する基本レシピ1200を変更してもよい。
生育状態監視モジュール914は、監視の終了指示があるまで生育状態監視処理を繰り返す(ステップ1760)。
【0075】
図18は、監視している生育状態の表示画面の例である。
生育状態監視モジュール914は、複数のセンサにより取得された植物の実際の生育状態を管理端末810の出力装置905であるモニタや、作業端末830の画面に表示する。
表示する項目としては、基本レシピ1200の指標値アラートデータ1240に記載された光合成速度、蒸散速度、吸水速度、葉面積、葉高、葉枚数、株重量、生育異常、菌数等の情報をトラックして表示することが可能である。
図18の例では、栽培する植物の株重量を測定することで、その重量の増加率を表示した例である。
【0076】
破線で示す部分が、環境値データ1230により栽培した場合に想定される想定生育状態1810であり、実線で示す部分が実際の生育状態1820である。
生育状態監視モジュール914は、このように想定生育状態と実際の生育状態とを対比可能な状態で表示することが可能である。
1830と1840は、移植を行った部分である。移植を行う際に密閉又は半密閉の栽培装置1Aから取り出すことで、短時間ではあるが栽培環境が変化し、植物の成長速度に著しい遅れが生じていることが分かる。
【0077】
生育状態監視モジュール914は、1830や1840のような想定生育状態1810と実際の生育状態1820との間に、所定の値(例えば5%以上)の乖離が生じた場合に、アラートを表示する。
または、例えば遅れた成長を促進する環境値データ1230に変更するなど、適用する作業レシピ1300を変更することもできる。
【0078】
本実施例の栽培装置1Aは、密閉又は半密閉型であり、内部を通常の外気とは異なる例えば光量子束密度を通常より高くしたり、栽培温度を通常より高い温度としたり、二酸化炭素濃度を人間の作業環境より高くしたりすることで、従来の植物工場における植物栽培よりもより生産性の高い栽培が可能となる環境に設定している。作業工程において、このような特殊な栽培環境から取り出し、通常の外気環境下で移植等の作業工程を行うことで、植物の栽培に著しい遅れが生じてしまう。
そこで本実施例では、作業レシピ1300により、栽培装置1A外部で行われる作業工程についても作業環境1310や作業制約条件1320等の制約条件を設定して、その作業環境を栽培装置1A内部から大きく乖離しない一定の範囲の環境品質で維持する。これにより植物の栽培工程全体の環境管理と工程管理を併せて実施して、植物栽培の速度や品質をより高いものにしている。
【実施例3】
【0079】
実施例3は、栽培装置1Aを密閉又は半密閉された栽培施設1内に配置し、栽培装置1Aの外部の環境も併せて管理する構成について説明する。
図19は、栽培装置1Aの内部及び外部の両方の環境管理を行う栽培施設の図の例である。
栽培施設1は、その施設外から内部を密閉又は半密閉可能な構造物である。栽培施設1は内部に実施例1又は実施例2で説明した栽培装置1Aを備えており、栽培装置1Aの外部の光、空気、水、空間を管理することができる。
栽培施設1は植物栽培システム800の一部を構成し、ネットワークを介して、管理端末810、管理サーバ820、作業端末830、栽培装置1Aと接続される。
【0080】
栽培施設1は、光、空気、水、空間の各種状況を監視する複数のセンサ1901を備え、光、空気、水、空間の各種状態である栽培装置1A外部の環境を管理するための、空気循環装置1903や人工光源1902等を備える。
空気循環装置1903は、栽培装置1A内に設置された空気循環装置30と同様の機能、すなわち、少なくとも温度、湿度、二酸化炭素濃度及び空気の流速(流量)を調整する機能を有している。
人工光源1902は、栽培装置1A内に設置された人工光源230と同様の機能を備えており、任意の明るさや波長の光による調光が可能である。
【0081】
栽培施設1は、実施例2において説明した基本レシピ1200に従い、栽培施設1内(かつ栽培装置1A外)の光、空気、水、空間の環境を調整・管理することが可能である。基本レシピ1200は管理サーバ820から管理端末810に受信され、基本レシピDB921に記憶される。
管理端末810の環境管理モジュール912は、基本レシピDB921に記憶された基本レシピ1200を読み込み、読み込まれた情報に基づいて、栽培施設1内部の空気循環装置、人工光源、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、栽培施設1内の光波長、光量子束密度、温度、湿度、二酸化炭素濃度、各種イオン濃度、横向きの気流速、上からの気流速等を制御する。
なお、管理端末810の代わりに、管理サーバ820が、栽培施設1を操作する構成であってもよい。
【0082】
このように管理サーバ820から受信する基本レシピ1200に基づいて、栽培装置1A内部及び栽培施設1(栽培装置1A外部)の光、空気、水、空間の各種環境を管理することが可能である。
栽培装置1Aに適用される基本レシピ1200は、環境値データ1230に基づいて管理される前記栽培装置内の環境からの許容可能な変動範囲である制約条件を定めている。また、栽培施設1に適用される基本レシピ1200は、環境値データ1230に基づいて管理される栽培施設1内(すなわち前記栽培装置外)の環境からの許容可能な変動範囲である制約条件を定めている。
栽培装置1A内部及び外部は、栽培する植物の生育や移動、栽培する植物への作業等により、その環境が変化することになるが、これらの制約条件を満たすように環境が管理される。
【0083】
環境管理モジュール912は、各種センサからの情報により、栽培装置1A内部又は外部のこれら制約条件として定められた環境値の許容可能な変動範囲を超えた環境になったことを検知した場合には、管理端末810や管理サーバ820にアラートを出力する。また、環境管理モジュール912は、空気循環装置、養液循環装置40、人工光源、ロボットマニュピレータ、コンベア等を制御し、制約条件に収まるように、栽培装置1A内部又は外部の環境を調整する。
【0084】
ここで、栽培装置1A内部と外部に設定される環境値データ1230について説明する。
密閉又は半密閉型の栽培装置1A内部は、基本的には作業を行う人間(作業員)が入ることは無いため、基本レシピにより管理される植物栽培装置内の環境は、栽培する植物に対応するものに設定される。
一方、栽培装置1A外部であって栽培施設1内部は、作業員が滞在して栽培植物に対する作業を行う可能性があるため、基本レシピにより管理される植物栽培装置外の環境は、作業を行う人間に対応するものに設定される。
栽培装置1A内部の環境は、作業を行う人間に許容される範囲外のものにすることも可能であり、例えば、栽培装置1A外部は、空気環境の環境衛生管理基準で定められた二酸化炭素濃度である1000ppm以下の環境とし、栽培装置1A内部は、この基準値を超える二酸化炭素濃度に設定し、従来の植物工場における植物栽培よりもより生産性の高い栽培が可能となる環境に設定する。
【0085】
実施例2における作業工程を実施する場合に、栽培植物を栽培装置1A外部に取り出す場合がある。このような場合に、栽培植物は、一時的ではあるが栽培装置1A内部の環境と大きく異なる環境に置かれることになる。
図18で説明したように、例え短時間ではあっても栽培環境が変化することで、植物の成長速度に著しい遅れが生じてしまう。
【0086】
そこで、本実施例では、栽培装置1A外部の環境も併せて管理することで、できる限り植物の栽培環境の変動を抑制し、成長速度を維持する。
例えば、栽培装置1A外部の環境について、作業員がいない状態であれば、栽培植物に対する環境の適正値のみでその環境を決定する。具体的には、栽培装置1A内部と同等もしくはこれに近い環境を設定する。
一方、栽培装置1A外部に栽培植物がない状態であれば、作業員に対する環境の適正値のみでその環境を決定する。例えば二酸化炭素の含有率1000ppm以下、温度17度以上28度以下、相対湿度40%以上70%以下等、作業員に適した環境に設定する。
【0087】
また、作業員と栽培植物とが混在する状態であれば、栽培植物に対する環境の適正値と、作業員に対する環境の適正値との間の値を設定する。すなわち、栽培施設1内部(栽培装置1A外部)の環境を、栽培装置1A内部の環境を定める基本レシピと、栽培装置1A外部の環境を定める栽培施設1に対する基本レシピと、の両方から算出された環境値データに基づいて栽培装置1A外の環境を設定する。
例えば、栽培装置1Aの基本レシピの制約条件と、栽培施設1の基本レシピの制約条件と、に基づいて栽培装置1A外の環境を設定する。具体的には、栽培装置1Aの基本レシピで定められた栽培植物に対する環境許容範囲から設定環境値までのずれ、及び、栽培施設1の基本レシピで定められた作業員に対する環境許容範囲から設定環境値までのずれ、の和が最小となるような環境設定値を算出する。
ここで、栽培植物に対する環境の適正値は複数の項目や値が混在する場合がある。
またさらに、栽培植物や人間に重要度係数をつけて、環境設定値を算出することにより、前述のずれに重要度を加味した和を最小とする方式も考えられる。
【0088】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0089】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0090】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0091】
1…植物栽培システム800、810…管理端末、820…管理サーバ、830…作業端末、911…レシピ登録管理モジュール、912…環境管理モジュール、913…工程管理モジュール、914…生育状態監視モジュール、915…暗号処理モジュール、921…基本レシピDB、922…作業レシピDB