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  • 特許-係止用具及び衣服の長さ調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】係止用具及び衣服の長さ調整方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 13/00 20060101AFI20240318BHJP
   A41F 1/00 20060101ALI20240318BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20240318BHJP
   A41D 1/06 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A44B13/00
A41F1/00 Z
A44B99/00 601E
A44B99/00 611Z
A41D1/06 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125410
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021674
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000218993
【氏名又は名称】島田商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌建
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112809(JP,A)
【文献】実開平05-056909(JP,U)
【文献】特開2018-035457(JP,A)
【文献】特開2012-010901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0127398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B13/00-13/02
A41F1/00-1/08
A44B99/00
A41D1/06-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐状体または袋状体を係止することが可能な形状を有するフック本体部を各々備え、かつ第1方向に所定間隔を隔てて一列に配置された複数のフック部と、
前記第1方向と直交する第2方向における前記フック部の幅よりも小さい幅を有し、かつ前記第2方向における前記フック部の両端よりも内側の領域で、隣接する前記フック部同士を連結する連結部と、を含み、
前記複数のフック部と前記連結部とが樹脂材料により一体に形成されている、ことを特徴とする係止用具。
【請求項2】
請求項1に記載の係止用具において、
前記フック部は、前記フック本体部から前記第2方向両側に延びる板状の延設部をさらに備え、
前記連結部は、前記第2方向における前記フック本体部の両端よりも内側の領域で、隣接する前記フック部同士を連結している、ことを特徴とする係止用具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の係止用具において、
前記フック本体部は、前記第1方向に向かって開く断面U字型の形状を有し、
前記複数のフック部の各フック本体部は、前記第1方向の同じ側に向かって開くように形成されている、ことを特徴とする係止用具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の係止用具において、
前記連結部のうち前記第1方向における両端部は、その他の部分よりも断面積が小さく形成されている、ことを特徴とする係止用具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の係止用具において、
前記フック部および前記連結部は、同一のシリコーン樹脂材料により一体に形成されている、ことを特徴とする係止用具。
【請求項6】
衣服の筒状部分の長さを調整する方法であって、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の係止用具を準備する工程と、
前記筒状部分の開口縁部に、前記フック本体部に係止されることが可能な形状を有する被係止部材を固定する工程と、
前記被係止部材に対して、前記複数のフック部が前記筒状部分の長手方向に並ぶように、前記係止用具のうち前記複数のフック部のみを前記筒状部分に固定する工程と、
前記筒状部分に固定された前記係止用具から前記連結部を除去する工程と、
前記筒状部分の開口縁部を折り返して、前記被係合部材を、前記複数のフック部のうちの何れかのフック部の前記フック本体部に係止する工程と、を含むことを特徴とする衣服の長さ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の裾上げや袖上げに適した係止用具、及びこの係止用具を用いた衣服の長さ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ズボンの股下寸法を調整するために、例えば、特許文献1、2に開示されるような長さ調整具が提案されている。これらの調整具は、何れも、縫い代部に沿って当該ズボンの裏側に縫い付けられるテープ部材(係止用具)と、ズボンの末端の裾部裏側に縫い付けられる被係止部材とを備える。テープ部材には、その長手方向に沿って一定間隔で複数の係止部が設けられている。つまり、ズボンの裾を内側に折り返し、テープ部材の所望の係止部に被係止部材を係止することで、ズボンを裾上することができる。
【0003】
なお、特許文献1の長さ調整具において、前記被係止部材はボタンであり、前記係止部はボタン孔である。一方、特許文献2の長さ調整具では、前記被係止部材及び前記係止部は、何れも、複数の円柱状突起の集合体からなる面ファスナである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3206275号公報
【文献】特開2018-35457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の長さ調整具によれば、テープ部材の複数の係止部うち、所望の係止部を選択して被係止部材を係止することで、ズボンの裾上げ長さを複数段階に調整できる。しかし、何れの長さ調整具もズボンの所定の範囲に亘ってテープ部材を縫い付ける必要がある。そのため、ズボン生地の柔軟性がテープ部材によって損なわれ、はき心地(着心地)が悪くなるおそれがある。また、裾上げ寸法によっては、テープ部材が二つ折りに折り返されるため、その弾発力で裾上げ部分が膨らみ、見栄えを損なうことも考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、衣服の着心地や見栄えを損なうことを抑制しながら、ズボンの裾上げ等、衣服の長さを複数段階に調整できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一局面に係る係止用具は、紐状体または袋状体を係止することが可能な形状を有するフック本体部を各々備え、かつ第1方向に所定間隔を隔てて一列に配置された複数のフック部と、前記第1方向と直交する第2方向における前記フック部の幅よりも小さい幅を有し、かつ前記第2方向における前記フック部の両端よりも内側の領域で、隣接する前記フック部同士を連結する連結部と、を含み、前記複数のフック部と前記連結部とが樹脂材料により一体に形成されているものである。
【0008】
そして、本発明の一局面に係る衣服の長さ調整方法は、衣服の筒状部分の長さを調整する方法であって、上記係止用具を準備する工程と、前記筒状部分の開口縁部に、前記フック本体部に係止されることが可能な形状を有する被係合部材を固定する工程と、前記複数のフック部が前記筒状部分の長手方向に並ぶように、前記係止用具のうち前記複数のフック部のみを前記筒状部分に固定する工程と、前記筒状部分に固定された前記係止用具から前記連結部を除去する工程と、前記筒状部分の開口縁部を折り返し、前記複数のフック部のうちの何れかのフック部の前記フック本体部に前記被係合部材を係止する工程と、を含むものである。
【0009】
上記の長さ調整方法の通り、上記係止用具を用いて下衣の裾や上衣の袖などの筒状部分の長さを調整する場合には、当該係止用具から全ての連結部を除去する。つまり、衣服の筒状部分には、係止用具のうちフック部のみが所定間隔を隔てて点在するように固定される。そのため、上記係止用具を用いる場合には、従来のテープ部材(係止用具)を用いる場合、すなわち衣服の筒状部分の比較的広い範囲に亘って縫い付けることが必要なテープ部材を用いる場合に比べて衣服の柔軟性が損なわれ難い。また、隣接するフック部の間で前記筒状部分を折り返すことができるので、従来のように、テープ部材(係止用具)の弾発力によって当該折り返し部分が膨らむこともない。そのため、衣服の見栄えも損い難い。
【0010】
従って、上記係止用具および当該係止用具を用いた衣服の長さ調整方法によれば、衣服の着心地や見栄えが損なわれることを抑制しながら、ズボンの裾上げ等、衣服の筒状部分の長さを複数段階に調整することが可能となる。
【0011】
しかも、上記係止用具において、連結部の幅はフック部の幅よりも小さく、隣接するフック部は、当該フック部の両端よりも内側の領域で連結部によって互いに連結されている。従って、例えば連結部の両外側の位置において第1方向にミシン送りを行いフック部のみを衣服に縫着するようにすれば、その後、連結部のみを難なく係止用具から切り離すことが可能となる。従って、従来のテープ部材(係止用具)を用いる場合とさほど遜色のない作業で、上記のような作用効果を享受することが可能となる。
【0012】
この場合、前記フック部は、前記フック本体部から前記第2方向両側に延びる板状の延設部をさらに備え、前記連結部は、前記第2方向における前記フック本体部の両端よりも内側の領域で、隣接する前記フック部同士を連結しているのが好適である。
【0013】
この構成によれば、上記のようにフック部を衣服に縫着する場合には、延設部を縫い代として用いることができる。従って、フック部を、より簡単かつ適切に衣服に縫着(固定)することが可能となる。
【0014】
上記の係止用具において、より具体的には、前記フック本体部は、前記第1方向に向かって開く断面U字型の形状を有し、前記複数のフック部の各フック本体部は、前記第1方向の同じ側に向かって開くように形成されている。
【0015】
この構成によれば、比較的簡単なフック本体部の形状で、紐状体または袋状体からなる上記被係止部材を難なく係止することが可能となる。
【0016】
上記の係止用具において、前記連結部のうち前記第1方向における両端部は、その他の部分よりも断面積が小さく形成されているのが好適である。
【0017】
この構成によれば、連結部を難なくその両端(根元部分)でフック部から切り離して除去することが可能となる。
【0018】
上記の係止用具において、前記フック部および前記連結部は、同一のシリコーン樹脂材料により一体に形成されているのが好適である。
【0019】
この構成によれば、係止用具の生産性が良いことに加え、係止用具全体がある程度柔軟性を有するので、着用者に対してフック部材による違和感を与え難くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る上記係止用具及びこの係止用具を用いた衣服の長さ調整方法によれば、衣服の着心地や見栄えが損なわれることを抑制しながら、ズボンの裾上げ等、衣服の筒状部分の長さを複数段階に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る係止用具の平面図である。
図2】(a)は、前記係止用具の全体の側面図であり、(b)は、前記係止用具におけるフック部の側面図である。
図3】(a)は、裾上げ前のズボンの正面図であり、(b)は、裾上げ後のズボンの正面図である。
図4】前記係止用具を用いたズボンの裾上げ方法を説明するズボンの股下部の断面図であり、(a)はストラップを取り付けた状態、(b)は前記係止用具を取り付けた状態、(c)は前記係止用具から連結部を除去した状態を示す。
図5】裾上げされたズボン(図3(b)に示すズボン)の要部断面図である。
図6】前記係止用具のフック部を切り離してマスク止めとして使用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
[係止用具1の構成]
図1は、本発明に係る係止用具1の平面図であり、図2(a)は、係止用具1の全体の側面図であり、図2(b)は、係止用具1におけるフック部2の側面図である。
【0024】
係止用具1は、衣服の裾上げや袖上げ等、主に衣服の筒状部分の長さ調整に使用される。図1及び図2(a)に示すように、係止用具1は、一定の間隔Sを隔てて直線状に一列に配列される複数のフック部2と、隣接するフック部2同士を連結する連結部4とを含む。フック部2と連結部4とは同一の樹脂材料により一体に形成されている。当例では、係止用具1は、4つのフック部2と、これらを連結する3つの連結部4とを含み、全体が可撓性(柔軟性)を有したシリコーン樹脂で一体に形成されている。なお、以下の説明では、図1中に示すように、フック部2の配列方向を縦方向(本発明の「第1方向」に相当する)と称し、これと直交する方向を横方向(本発明の「第2方向」に相当する)と称す。また、図2(b)に示すように、縦方向及び横方向の双方に直交する方向を厚み方向と称す。
【0025】
フック部2は、フック本体部10と、フック本体部10の周囲に連設される板状の延設部12とを含む。何れのフック部2も同一の構成である。フック部2は、平面視矩形であり、その輪郭は延設部12によって形づくられている。
【0026】
フック本体部10は、平面視でフック部2の中央部に設けられている。フック本体部10は、図1に示すように平面視矩形で、かつ、図2(a)に示すように、縦方向の一端部(図2では右端部)が開放された側面視U字型の形状を有している。これにより、フック本体部10は、開放部分(挿入口22という)を通じて、後記ストラップ6をくわえ込んだ状態で係止することが可能となっている。
【0027】
より詳しくは、図2(b)に示すように、フック本体部10は、縦方向に互いに平行に延びて前記一端部とは反対側の端部(図2(b)の左端部)が互いに繋がった第1、第2の対向片20、21を備えている。第1対向片20のうち、第2対向片21に対向する面には、幅方向に延びる突条からなる歯部20aが設けられ、第2対向片21のうち、第1対向片20に対向する面には、横方向に延びる突条からなる歯部21aが設けられている。第1対向片20の歯部20aは、当該第1対向片20の先端部(図2(b)では右端部)を少なくとも含む、縦方向の複数の位置に設けられている。一方、第2対向片21の歯部21aは、第1対向片20の先頭の歯部20aとこれに隣接する歯部20aとの間に位置するように設けられている。つまり、ストラップ6は、第1対向片20の歯部20aで第2対向片21に対して押さえ込まれながら先頭の2つの歯部20a、21aで抜け止めされる。これにより、フック本体部10によるストラップ6の係止状態が安定的に保たれる。
【0028】
前記延設部12は、フック本体部10のうち、第2対向片21の周囲に連設される。延設部12は、フック部2を衣服に縫着するための縫い代である。延設部12は、フック本体部10を中心として、当該フック本体部10を取り囲むように形成されている。延設部12の輪郭は、上記の通り平面視矩形、詳しくは正方形である。延設部12を含むフック部2の裏面(図2では下面)はフラットに形成されている。当例では、延設部12の厚みTbは1.0mm程度であり、フック部2の全体の厚みTaは、大凡3.0~6.0mmである。なお、図1及び図2(a)、(b)に示すように、フック本体部10及び延設部12は、それらに設けられるほぼ全ての角部が丸まった形状(R面)となっている。
【0029】
前記連結部4は、係止用具1の横方向の中央部、つまり、横方向におけるフック部2の中央部で、隣接するフック部2同士を連結している。詳しくは、隣接するフック部2の延設部12同士を連結している。連結部4は、一定の横幅Wbを有して縦方向に延在し、かつ厚み方向に扁平な(厚みTcが横幅Wbよりも小さい)断面矩形の軸状を成している。各フック部2を連結する連結部4は何れも同一形状である。連結部4の横幅Wbはフック部2の横幅Waよりも十分に小さく、当例では、例えばWb=0.1×Wa程度に設定されている。また、連結部4の厚みTcは、延設部12の厚みTbよりも小さく、当例では0.3mm程度に設定されている。
【0030】
図1に示すように、連結部4のうち、縦方向の両端部(根元部分)には切欠部4aが設けられている。切欠部4aは、連結部4の横方向両端に各々設けられており、各切欠部4aは、連結部4の横方向外側から内側に向かって先細りの形状である。詳しくは、切欠部4aは、フック部2(延設部12)の端辺を隣辺とする平面視直角三角形状の切欠きである。これにより、連結部4の両端部は、その他の部分よりも断面積が小さく形成されている。
【0031】
[係止用具1を用いたズボンの裾上げ方法]
図3(a)は、裾上げ前のズボン30の正面図である。同図に示すように、ズボン30は、股上部32と股下部34とを備え、股下部34は、着用者の脚が各々挿通される2本のズボン筒部36(本発明の「筒状部分」に相当する)を含む。
【0032】
上記係止用具1を用いてズボン30(ズボン筒部36)の裾上げを行う手順は以下の〈1〉~〈4〉の通りである。
【0033】
〈1〉図3(a)に示すように、ズボン筒部36の先端(下端)の内側面にストラップ6を固定する。ストラップ6とは、係止用具1のフック部2(フック本体部10)に係止することが可能な紐状体からなる被係止部材である。
【0034】
図4(a)~(c)は、係止用具1を用いたズボン30の裾上げ方法を説明するズボン30の股下部34の断面図である。ストラップ6は、図3(a)及び図4(a)に示すように、ズボン筒部36の内股側及び脚脇側の2箇所にそれぞれ固定する。
【0035】
詳しくは、ズボン筒部36の先端に設けられた裾折り返し部38の内側面のうち、ズボン筒部36の内股線41aに対応する位置と、脚脇線41bに対応する位置とにそれぞれストラップ6を固定する。内股線41aとは、ズボン30を構成する前身頃と後身頃との縫合線のうち、内股側の縫合線であり、脚脇線41bとは、前身頃と後身頃の縫合線のうち、脚脇側の縫合線である。なお、図4(a)中の符号40は、前身頃と後身頃との縫い代部を示している。
【0036】
ストラップ6は、フック部2に対して係脱可能に係止できれば、その具体的な形状や材質は問わない。例えば、繊維を束ねた一般的な紐以外に、布、樹脂、ゴム、皮などからなる細長い部材をストラップ6として用いることができる。
【0037】
ストラップ6は、図4(a)に示すように、裾折り返し部38に沿って周方向に延在しかつその中央部が内股線41aに対応するように配置する。そして、その両端部を各々裾折り返し部38に縫着することにより、ズボン筒部36にストラップ6を固定する。図示を省略するが、脚脇側のストラップ6も、中央部が脚脇線41bに対応するように配置する以外は、内股側のストラップ6と同様である。
【0038】
〈2〉図3(a)及び図4(b)に示すように、ズボン筒部36の内側面に係止用具1を固定する。係止用具1は、ストラップ6と同様に、ズボン筒部36の内股側及び脚脇側の2箇所にそれぞれ固定する。
【0039】
具体的には、ズボン筒部36の内側面のうち、内股側のストラップ6の上側の位置と、脚脇側のストラップ6の上側の位置とに、各フック部2がズボン筒部36の長手方向に並ぶように各々係止用具1を固定する。より詳しくは、フック部2(フック本体部10)の挿入口22が上を向き、かつ連結部4が内股線41a(又は脚脇線41b)に重なるように係止用具1を配置し、当該係止用具1の裏面、つまりフラットな面をズボン筒部36の内側面に重ね合わせる。そしてこの状態で、例えば、連結部4の両側の位置において各々係止用具1の縦方向にミシン送りを行い、各フック部2のフック本体部10の両側の延設部12を縫い代部40に縫着する(図4(b)、(c)中の符号Lで示す破線は係止用具1の縫い目を示す)。これにより係止用具1をズボン筒部36に固定する。正確には、係止用具1のうち、各フック部2のみをズボン筒部36に固定する。
【0040】
なお、フック部2の横幅Waは、ズボン30の縫い代部40の横幅Wcと同等又はそれよりも若干狭く設定されている。従って、上記の通り、連結部4が内股線41a(又は脚脇線41b)に重なるように係止用具1を配置した状態でミシン送りを行うことで、フック部2を縫い代部40に縫着することができる。
【0041】
〈3〉図4(c)に示すように、各係止用具1から全ての連結部4を除去する。この際、ハサミを使って連結部4を切り離してもよいが、上記の通り、連結部4の両端部には各々切欠部4aが設けられており、これにより当該両端部は、その他の部分よりも断面積が小さく形成されている。そのため、例えば、連結部4を摘んで捻ることで、難なく連結部4を係止用具1から引き千切る(切り離す)ことができる。
【0042】
〈4〉各ズボン筒部36の下端(本発明の筒状部分の「開口縁部」に相当する)を内側に折り返し、図5に示すように、各ストラップ6を、4つのフック部2のうち、裾上げ寸法に対応する所望のフック部2に係止する。具体的には、フック本体部10の第1対向片20と第2対向片21との間にストラップ6を挿入し、当該フック本体部10にストラップ6をくわえ込ませる。これにより、ズボン30の各ズボン筒部36の裾上げが完了する(図3(b)参照)。
【0043】
[作用効果]
上記係止用具1を用いてズボン30の裾上げを行う場合には、図4(c)及び図5に示すように、係止用具1は、全ての連結部4が除去された状態で使用される。つまり、ズボン30のズボン筒部36には、係止用具1のうち、フック部2のみが一定の間隔Sを隔てて点在する。そのため、従来のテープ部材(係止用具)を用いる場合、すなわち、比較的広い範囲に亘って連続的に縫着する必要がある従来のテープ部材を用いる場合に比べると、ズボン30(ズボン筒部36)の柔軟性が損なわれ難い。
【0044】
また、図5に示すように、ズボン筒部36の先端の部分を、隣接するフック部2の間で折り返すことができるので、従来のように、テープ部材(係止用具)の弾発力によって当該折り返し部分が膨らむこともない。そのため、裾上げ後のズボン30(ズボン筒部36)の見栄えも損い難い。
【0045】
従って、上記係止用具1および当該係止用具1を用いた上述のようなズボン30の裾上げ方法によれば、ズボン30の着心地や見栄えが損なわれることを抑制しながら、ズボン30(ズボン筒部36)の長さを複数段階に調整することが可能となる。
【0046】
また、上記係止用具1の連結部4の横幅Wbは、図1に示すようにフック部2の横幅Waよりも十分に小さく、しかも、隣接するフック部2同士は、当該フック部2の両端(横方向の両端)よりも内側の領域で連結部4によって互いに連結されている。そのため、上述した通り、連結部4の両外側の位置において各々係止用具1の長手方向に連続的にミシン送りを行えば、各フック部2の延設部12のみをズボン筒部36に容易に縫着できるとともに、その後、連結部4のみを難なく係止用具1から除去することができる。その際も、上記の通り、連結部4の両端に切欠部4aが設けられているので、連結部4を手で摘まんで難なく引き千切る(切り離す)ことができる。従って、上記係止用具1によれば、従来のようなテープ部材(係止用具)を用いる場合とさほど遜色のない作業で、係止用具1をズボン30に固定することができる。
【0047】
また、上記係止用具1によれば、フック部2に係止する相手、つまり被係止部材は、ストラップ6(紐状体)であれば良く、その具体的な形状や材質についての制約が殆どない。そのため、使い勝手が良いという利点もある。
【0048】
また、上記係止用具1は、その全体がシリコーン樹脂により形成されており、しかも、フック本体部10及び延設部12は、それらに設けられるほぼ全ての角部が丸まった形状(R面)となっている。そのため、着用時にフック部2が肌に触れた場合でも肌触りが損なわれ難く、着用者に違和感を与え難いという利点もある。
【0049】
また、上記係止用具1によれば、連結部4を切り離して各フック部2を分離させることにより、ズボン30の裾上げ(衣服の長さ調整)以外の用途に使用することができるという利点もある。例えば、図6に示すように、分離させたフック部2を衛生帽子50の左右側面に縫着し、これらのフック部2(フック本体部10)を利用してマスク52のゴムひも52aを係止することにより、マスク52を衛生帽子50に保持させることができる。つまり、フック部2をマスク止めとして用いることができる。この場合、フック部2は、その延設部12を衛生帽子50に縫着するようにすればよい。また、図示を省略するが、衛生帽子の左右側面にフック部2を縫着し、当該フック部2に眼鏡のテンプル部やモダン部を係止することにより、眼鏡を衛生帽子に支持させることもできる。さらに、フック部2を上着などの胸元に縫着し、名刺やIDカード等が収容されたホルダ(ケース)を係止することも可能である。
【0050】
[変形例]
以上説明した係止用具1及びズボン30の裾上げ方法は、本発明に係る係止用具及び当該係止用具を用いた衣服の長さ調整方法の好ましい実施形態の例示であって、係止用具の具体的な構成や具体的な衣服の長さ調整方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成や方法を採用することもできる。
【0051】
(1)実施形態の係止用具1は、一定の間隔Sを隔てて直線状に一列に配列される4つのフック部2を備えており、全体がシリコーン樹脂で形成されている。しかし、フック部2の数は4つには限定されず、2つ以上であればよい。また、フック部2同士の間隔は一定の間隔Sに限定されない。例えば、係止用具1の縦方向の一方側から他方側に向かうに伴い隣接するフック部2の間隔が徐々に広くなる、又は徐々に狭くなるようにしてもよい。また、係止用具1は、シリコーン樹脂以外の樹脂材料により形成されていてもよい。
【0052】
(2)実施形態の係止用具1では、フック部2は平面視矩形(正方形)であるが、矩形には限定されない。但し、フック部2が平面視矩形(正方形)であると、縫い代を確保し易いためにミシンによる縫製(縫着)がし易く、特に、上記のようにズボン30に縫着する場合には、縫い代部40に沿ってフック部2を縫着し易いという利点がある。そして、このように縫い代部40に沿ってフック部2を縫着する場合には、ズボン筒部36の表(外側)に縫い目が現れないという利点がある。
【0053】
(3)実施形態の係止用具1では、連結部4の両端部(根元部分)に各々、横方向外側から内側に向かって先細りの一対の切欠部4aが設けられる。しかし、切欠部4aは、横方向外側から内側に向かって先細りの形状に限定されるものではなく、厚み方向外側から内側に向かって先細りとなる形状であってもよい。要するに、連結部4の両端部の断面積が、その他の部分の断面積よりも小さく形成されていれば、フック部2から連結部4を比較的容易に切り離して除去することが可能となる。従って、切欠部4aに代えて、連結部4の両端部に横方向及び/又は厚み方向に延在する溝部が形成され、若しくは厚み方向に貫通する一乃至複数の貫通孔が形成されることにより、連結部4の両端部の断面積が、その他の部分の断面積よりも小さく形成されていてもよい。
【0054】
(4)実施形態のズボン30の裾上げ方法では、フック部2(フック本体部10)に係止する被係止部材として、ストラップ6(紐状体)を適用している。しかし、被係止部材は、ストラップ6に限定されない。図示を省略するが、例えば、被係止部材は袋状体であってもよい。例えば、矩形の布を裾折り返し部38に縫着することにより、上向きに開口する袋状体を形成し、当該袋状体を裾折り返し部38と共に内側に折り返して、当該袋状体をフック部2(フック本体部10)に係止するようにしてもよい。つまり、袋状体の開口縁部を、フック本体部10の第1対向片20と第2対向片21との間に挿入するようにしてもよい。
【0055】
(5)実施形態のズボン30の裾上げ方法では、係止用具1(フック部2)をズボン筒部36に縫着しているが、縫着以外の方法によって、係止用具1をズボン筒部36に固定してもよい。例えば、ホットメルト接着剤を含む、各種接着剤を用いて係止用具1(フック部2)を固定するようにしてもよい。
【0056】
(6)実施形態では、本発明の衣服の長さ調整方法の一例として、ズボン30の裾上げ方法について説明した。しかし、本発明の衣服の長さ調整方法は、ズボン30の裾上げ以外に、スカートの裾上げや上衣の袖上げにも適用可能である。なお、実施形態のズボン30の裾上げ方法では、ズボン30の内股側と脚脇側にそれぞれ、係止用具1及びストラップ6を固定している。しかし、係止用具1及びストラップ6を固定する位置は、ズボン30の具体的な構成に応じた最適な位置を選定すればよい。この点は、スカートの裾上げや上衣の袖上げの場合も同様である。この場合、ストラップ6の縫着(固定)位置も、係止用具1の位置に応じて適宜選定すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 係止用具
2 フック部
4 連結部
6 ストラップ(被係止部材)
10 フック本体部
12 延設部
20 第1対向片
21 第2対向片
22 挿入口
30 ズボン
36 ズボン筒部(衣服の筒状部分)
38 裾折り返し部
40 縫い代部
41a 内股線
41b 脚脇線
図1
図2
図3
図4
図5
図6