IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北川工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱伝導部材及びその製造方法 図1
  • 特許-熱伝導部材及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】熱伝導部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240318BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021046041
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144854
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康雄
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-165482(JP,A)
【文献】特開平10-004160(JP,A)
【文献】特開2009-253170(JP,A)
【文献】特開平04-328215(JP,A)
【文献】特開2012-214303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱伝導部及び第2熱伝導部を備え、
前記第1熱伝導部は、径方向に圧縮されて扁平な形状とされた金属の管状体によって構成され、
前記第2熱伝導部は、加熱して膨張させた膨張黒鉛が、前記管状体の中空部分に充填されている状態で、前記管状体が圧縮される際に前記管状体とともに圧縮されて面状に形成された黒鉛の面状圧縮物によって構成されている、
熱伝導部材。
【請求項2】
請求項1に記載の熱伝導部材であって、
前記第1熱伝導部は、少なくとも1箇所の湾曲部を備え、
前記湾曲部は、前記管状体の圧縮方向と平行な軸線が曲率中心となるように湾曲している、
熱伝導部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱伝導部材であって、
前記金属が、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金のうちのいずれかである、
熱伝導部材。
【請求項4】
熱伝導部材の製造方法であって、
金属の管状体及び膨張黒鉛を用いて、加熱して膨張させた膨張黒鉛が、前記管状体の中空部分に充填されている状態にある中間製品を作製することと、
前記中間製品を圧縮することにより、径方向に圧縮されて扁平な形状とされた前記管状体によって構成される第1熱伝導部と、前記管状体が圧縮される際に前記管状体とともに圧縮されて面状にされた黒鉛の面状圧縮物によって構成される第2熱伝導部とを作製することと、
を含む熱伝導部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の熱伝導部材の製造方法であって、
前記第1熱伝導部は、少なくとも1箇所の湾曲部を備え、
前記湾曲部は、前記管状体の圧縮方向と平行な軸線が曲率中心となるように湾曲しており、
前記中間製品を作製する際には、前記膨張黒鉛を加熱して膨張させてから、前記管状体の中空部分に充填し、その後に、前記膨張黒鉛が充填された前記管状体に対して曲げ加工を施して、前記湾曲部となる箇所を有する前記中間製品を作製する、
熱伝導部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維充填バルク及びその製造方法が提案されている(特許文献1参照。)。この炭素繊維充填バルクは、金属の筒状部材に、炭素繊維を軸方向に揃えて充填し、この炭素繊維が充填された筒状部材を、塑性加工によって引き伸ばして縮径させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5732298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術においては、炭素繊維を軸方向に揃えて筒状部材に充填しなければならない。そのため、炭素繊維を軸方向に揃える作業や、炭素繊維が軸方向に揃えられている状態を維持したまま、その炭素繊維を筒状部材に充填する作業には、相応の手間がかかり、生産性が低い、という問題がある。
【0005】
本開示の一局面においては、上記従来品よりも容易に製造できて生産性が高い熱伝導部材及びその製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面における熱伝導部材は、第1熱伝導部及び第2熱伝導部を備える。第1熱伝導部は、径方向に圧縮されて扁平な形状とされた金属の管状体によって構成される。第2熱伝導部は、加熱して膨張させた膨張黒鉛が、管状体の中空部分に充填されている状態で、管状体が圧縮される際に管状体とともに圧縮されて面状に形成された黒鉛の面状圧縮物によって構成されている。
【0007】
このように構成された熱伝導部材によれば、第2熱伝導部が上述のような黒鉛の面状圧縮物によって構成される。この面状圧縮物は、加熱して膨張させた膨張黒鉛を、管状体とともに圧縮して面状に構成されている。加熱して膨張させた膨張黒鉛は、膨張に伴って層間の空隙が拡大している。そのため、そのような膨張黒鉛が管状体とともに圧縮されると、膨張黒鉛は極めて薄い面状の黒鉛片となる。
【0008】
黒鉛片の多くは、管状体の圧縮方向と黒鉛片の厚さ方向とが一致する向きに配向する。その結果、面状圧縮物は、面に沿った方向への熱伝導性能が極めて高い熱伝導体となる。したがって、このような面状圧縮物で構成される第2熱伝導部が、金属の管状体によって構成される第1熱伝導部の内部に充填されていれば、金属のみで構成される熱伝導部材よりも優れた熱伝導性能を有する熱伝導部材となる。
【0009】
また、上記熱伝導部材の場合、第1熱伝導部は、扁平な形状とされている。そのため、単位軸方向長当たりの材料の量が同等な熱伝導部材同士で比較する場合、例えば、丸棒状(すなわち、円柱状。)の熱伝導部材に比べ、薄型かつ幅広な熱伝導部材にすることができる。したがって、上記熱伝導部材であれば、薄型の機器に取り付けるのに好適な形状となり、また、幅広な形状とすることにより、発熱源の熱を軸方向へ伝達するとともに、幅方向へも熱を拡散できるようにすることができる。
【0010】
さらに、上記熱伝導部材の場合、第2熱伝導部を作製する際には、膨張黒鉛を管状体に充填すればよい。そのため、炭素繊維を軸方向に揃えて筒状部材に充填する技術とは異なり、充填物の軸方向を揃えなくてもよい。よって、そのような手間が不要な分だけ、熱伝導部材を容易に製造することができ、熱伝導部材の生産性を向上させることができる。
【0011】
次に、本開示の一局面における熱伝導部材の製造方法は、金属の管状体及び膨張黒鉛を用いて、加熱して膨張させた膨張黒鉛が、管状体の中空部分に充填されている状態にある中間製品を作製することと、中間製品を圧縮することにより、径方向に圧縮されて扁平な形状とされた管状体によって構成される第1熱伝導部と、管状体が圧縮される際に管状体とともに圧縮されて面状にされた黒鉛の面状圧縮物によって構成される第2熱伝導部とを作製することと、を含む。
【0012】
このように構成された熱伝導部材の製造方法によれば、上述のような熱伝導部材を製造することができる。
なお、本開示の熱伝導部材は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0013】
まず、第1熱伝導部は、少なくとも1箇所の湾曲部を備えてもよい。湾曲部は、管状体の圧縮方向と平行な軸線が曲率中心となるように湾曲していてもよい。
このように構成された熱伝導部材によれば、上述のような湾曲部を有するので、湾曲部を備えていない直線状の熱伝導部材に比べ、熱伝導経路を設計する際の自由度を上げることができる。より具体的には、例えば、発熱源と放熱箇所とを結ぶ位置に熱伝導部材を配置するに当たって、発熱源と放熱箇所とを結ぶ直線上に加熱を避けたい部品が存在していたとしても、湾曲部を備えていれば、加熱を避けた部品を迂回する形状にすることができる。
【0014】
また、金属が、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金のうちのいずれかであってもよい。
このように構成された熱伝導部材によれば、高い熱伝導性能が発現する第1熱伝導部を構成することができる。
【0015】
また、本開示の熱伝導部材の製造方法は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
第1熱伝導部は、少なくとも1箇所の湾曲部を備えていてもよい。湾曲部は、管状体の圧縮方向と平行な軸線が曲率中心となるように湾曲していてもよい。中間製品を作製する際には、膨張黒鉛を加熱して膨張させてから、管状体の中空部分に充填し、その後に、膨張黒鉛が充填された管状体に対して曲げ加工を施して、湾曲部となる箇所を有する中間製品を作製してもよい。
【0016】
このように構成された熱伝導部材の製造方法によれば、上述のような湾曲部が設けられた熱伝導部材を製造することができる。また、中間製品を作製する際には、膨張黒鉛を加熱して膨張させてから、管状体の中空部分に充填している。そのため、膨張黒鉛を管状体の中空部分に充填してから、膨張黒鉛を管状体とともに加熱して膨張させる場合とは異なり、管状体が加熱されるのを抑制することができる。したがって、例えば、管状体が加熱されなければ、管状体の表面に酸化皮膜が形成されるのを抑制でき、酸化皮膜が原因となって第1熱伝導部の熱伝導性能が低下するのを抑制することができる。
【0017】
さらに、膨張前の膨張黒鉛の体積が中空部分の容積より小であっても、膨張後の膨張黒鉛の体積は中空部分の容積より大にすることができる。したがって、膨張黒鉛を加熱して膨張させてから、管状体の中空部分に充填すれば、中空部分に余剰空間が残らないように、膨張黒鉛を中空部分に詰め込むことができる。したがって、中空部分において膨張黒鉛が偏在するのを抑制でき、第2熱伝導部における黒鉛の密度を均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1Aは熱伝導部材の平面図である。図1Bは熱伝導部材のIB-IB線断面図である。
図2図2AはI字型熱伝導部材の平面図である。図2BはL字型熱伝導部材の平面図である。図2Cはh字型熱伝導部材の平面図である。図2DはO字型熱伝導部材の平面図である。図2EはS字型熱伝導部材の平面図である。図2FはU字型熱伝導部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、上述の熱伝導部材及びその製造方法について、例示的な実施形態を挙げて説明する。
[熱伝導部材の構成及び製造方法]
図1A及び図1Bに示す熱伝導部材1は、第1熱伝導部11と、第2熱伝導部12とを備える。第1熱伝導部11は、扁平な形状とされた銅合金の管状体によって構成されている。第2熱伝導部12は、面状に形成された黒鉛の面状圧縮物によって構成されている。
【0020】
図1A及び図1Bに例示する熱伝導部材1の場合、第1熱伝導部11は、外径10mm、内径9mm、軸方向長50mmの銅合金製パイプを、プレス加工機によって加圧力30kNで径方向に圧縮することによって作製されている。第2熱伝導部12は、第1熱伝導部11となる管状体が上述のように圧縮される際に、加熱して膨張させた膨張黒鉛を管状体の中空部分に充填し、その状態で管状体を圧縮することにより、膨張黒鉛を管状体とともに圧縮することによって作製されている。
【0021】
熱伝導部材1の軸方向長は、銅合金製パイプと同じく50mm、熱伝導部材1の厚さ(すなわち、第1熱伝導部11の短径方向の外径寸法。)は約1.2mm~1.3mm、熱伝導部材1の幅(すなわち、第1熱伝導部11の長径方向の外径寸法。)は約15mmである。また、第2熱伝導部12の厚さ(すなわち、第1熱伝導部11の短径方向の内径寸法に一致。)は約0.2mm~0.3mmである。
【0022】
次に、熱伝導部材1の製造方法について、更に詳しく説明する。
まず、第2熱伝導部12の構成材料である膨張黒鉛(商品名:GRAFGUARD、材料グレード:210-140、巴工業株式会社製。)を、加熱条件:400℃、30分で加熱して、膨張させた。一方、第1熱伝導部11の構成材料である銅合金の管状体については一端を潰して、他端の開口から管状体の中空部分に膨張させた膨張黒鉛を充填した。
【0023】
本実施形態の場合、膨張させた膨張黒鉛は、質量が0.37g、体積が約6000mmである。また、管状体の中空部分は、容積が約2000mmである。そのため、膨張黒鉛を管状体の中空部分に充填する際には、膨張黒鉛を棒材等で軽く圧縮しながら充填する。膨張黒鉛が管状体に充填されたら、上述した他端の開口については、ガス抜き用の穴を残して管状体の端部を潰して、管状体内に膨張黒鉛を封じ込める。膨張黒鉛が充填された管状体を、プレス加工機によって加圧力30kNで径方向に圧縮し、所期の第1熱伝導部11及び第2熱伝導部12を備えた熱伝導部材1を作製した。
【0024】
次に、上記熱伝導部材1(実施例)の熱伝導率を測定した。具体的には、熱伝導部材1の端部にヒーター(6.0V、0.15A)を取り付け、そのヒーターからの距離が異なる2点において、熱伝導部材1の温度を測定し、熱解析ソフトを利用して、2点間の温度差から熱伝導部材1の熱伝導率を算出した。その結果、熱伝導部材1の熱伝導率は、520W/mKであった。
【0025】
性能比較のため、上述の熱伝導部材1において使用した、膨張させた膨張黒鉛の代わりに、別の炭素系材料が使用された熱伝導部材(比較例1~3)を作製した。具体的には、比較例1の熱伝導部材では、別の炭素系材料として、未膨張の膨張黒鉛を使用した。比較例1において、未膨張の膨張黒鉛の質量は、実施例と同じく0.37gとした。但し、未膨張の膨張黒鉛の場合、体積は約600mmで、膨張させた膨張黒鉛の体積の約1/10であった。上述の通り、管状体の中空部分は、容積が約2000mmである。そのため、未膨張の膨張黒鉛を管状体の中空部分に充填する際には、漏斗を使って膨張黒鉛を充填した。また、管状体の中空部分内には、膨張黒鉛が充填されていない余剰空間が生じるため、管状体をプレス加工機で圧縮する際には、事前に管状体を水平にして軽く振り、未膨張の黒鉛が中空部分全体に均等に行き渡るようにした。上記以外の製造手順及び製造条件は、実施例と同様とした。
【0026】
比較例2の熱伝導部材では、別の炭素系材料として、グラファイトシートの粉砕物を使用した。比較例2において、グラファイトシートの粉砕物の質量は、実施例と同じく0.37gとした。但し、グラファイトシートの粉砕物の場合、体積は約175mmであった。管状体の中空部分は、容積が約2000mmであるため、グラファイトシートの粉砕物を管状体の中空部分に充填する際には、比較例1と同様に、漏斗を使ってグラファイトシートの粉砕物を充填した。また、管状体の中空部分内には、グラファイトシートの粉砕物が充填されていない余剰空間が生じる。そのため、比較例1と同様に、管状体をプレス加工機で圧縮する際には、事前に管状体を水平にして軽く振り、グラファイトシートの粉砕物が中空部分全体に均等に行き渡るようにした。上記以外の製造手順及び製造条件は、実施例と同様とした。
【0027】
比較例3の熱伝導部材では、別の炭素系材料として、炭素繊維(気相成長炭素繊維、VGCF-H、昭和電工株式会社製。VGCFは登録商標。)を使用した。比較例3において、炭素繊維の質量は、実施例と同じく0.37gとした。但し、炭素繊維の場合、体積は約5800mmであった。管状体の中空部分は、容積が約2000mmであるため、炭素繊維を管状体の中空部分に充填する際には、実施例と同様に、炭素繊維を棒材等で軽く圧縮しながら充填した。上記以外の製造手順及び製造条件は、実施例と同様とした。
【0028】
さらに、比較例4として、炭素系材料が使用されていない熱伝導部材を作製した。すなわち、比較例4の熱伝導部材は、実施例の熱伝導部材1における第1熱伝導部11に相当する構成を備え、第2熱伝導部12に相当する構成は備えていない構造とした。
【0029】
これら比較例1~4の熱伝導率を、上述の実施例と同様の手法で算出したところ、比較例1は428W/mK、比較例2は452W/mK、比較例3は470W/mK、比較例4は402W/mKとなった。
【0030】
以上の結果からは、実施例の熱伝導部材1は、最も熱伝導率が高くなることが示された。特に、実施例と比較例1との対比から、膨張黒鉛を使用する場合であっても、未膨張の膨張黒鉛を使用する場合と、膨張させた膨張黒鉛を使用する場合とでは、性能差が生じることが明らかになった。また、実施例と比較例2の対比から、グラファイトシートの粉砕物も扁平な形状の粉体ではあるが、膨張させた膨張黒鉛を使用する場合ほど熱伝導率が向上しないことが明らかになった。さらに、実施例と比較例3の対比から、炭素繊維を使用しても、膨張させた膨張黒鉛を使用する場合ほど熱伝導率が向上しないことが明らかになった。なお、実施例4は、最も熱伝導率が低い結果となった。したがって、炭素系材料を管状体に充填して圧縮加工を施せば、炭素系材料が充填されていない場合よりも、熱伝導部材の熱伝導率が向上することが明らかとなった。
【0031】
次に、熱伝導部材の形状例について、図2A図2B図2C図2D図2E及び図2Fに基づいて説明する。上述の熱伝導部材1は、平面視した場合に、図2Aに示すような形状となるI字型の熱伝導部材であったが、本開示の熱伝導部材は、I字型の熱伝導部材に限定されない。具体例を挙げれば、例えば、図2Bに示すような、L字型の熱伝導部材2であってもよい。あるいは、図2Cに示すような、h字型の熱伝導部材3であってもよい。あるいは、図2Dに示すようなO字型(あるいは、C字型)の熱伝導部材4であってもよい。あるいは、図2Eに示すような、S字型の熱伝導部材5であってもよい。あるいは、図2Fに示すような、U字型の熱伝導部材6であってもよい。
【0032】
これらの熱伝導部材2~6は、いずれも少なくとも1箇所の湾曲部15を備えている。湾曲部15は、第1熱伝導部11を構成する管状体の圧縮方向と平行な軸線が曲率中心となるように湾曲している。換言すれば、湾曲部15は、第1熱伝導部11を構成する管状体の圧縮方向に対して垂直な平面に沿って湾曲している。本実施形態の場合、熱伝導部材2~6が備える湾曲部15は、膨張黒鉛を加熱して膨張させてから、管状体の中空部分に充填し、その後に、膨張黒鉛が充填された管状体に対して曲げ加工を施し、その曲げ加工が施された中間製品をプレス加工機で圧縮することによって形成されている。
【0033】
上述の通り、膨張させた膨張黒鉛は、未膨張の膨張黒鉛の約10倍の体積に膨らんでおり、管状体の中空部分に軽く圧縮して充填された場合でも、まだ圧縮する余地がある。そのため、膨張黒鉛が充填された管状体に対して曲げ加工が施される際にも、膨張黒鉛の充填物は、柔軟に変形して管状体の加工後の形状に追従する。したがって、そのような曲げ加工が施されて、内部に膨張黒鉛が充填された管状体に対してプレス加工を施せば、湾曲部15を備える熱伝導部材2~6を作製することができる。
【0034】
[効果]
以上説明した通り、上記熱伝導部材1~6によれば、第2熱伝導部12が上述のような黒鉛の面状圧縮物によって構成されている。そのため、面状圧縮物中に含まれる黒鉛片の多くは、管状体の圧縮方向と黒鉛片の厚さ方向とが一致する向きに配向し、面に沿った方向への熱伝導性能が極めて高い熱伝導体となっている。したがって、このような面状圧縮物で構成される第2熱伝導部12が、金属の管状体によって構成される第1熱伝導部11の内部に充填されていれば、金属のみで構成される熱伝導部材(例えば比較例4。)よりも優れた熱伝導性能を有する熱伝導部材となる。
【0035】
また、上記熱伝導部材1~6の場合、第1熱伝導部11は、扁平な形状とされている。そのため、単位軸方向長当たりの材料の量が同等な熱伝導部材同士で比較する場合、例えば、上記特許文献1に記載されているような丸棒状(すなわち、円柱状。)の熱伝導部材に比べ、薄型かつ幅広な熱伝導部材にすることができる。したがって、上記熱伝導部材1~6であれば、薄型の機器に取り付けるのに好適な形状となり、また、幅広な形状とすることにより、発熱源の熱を軸方向へ伝達するとともに、幅方向へも熱を拡散できるようにすることができる。
【0036】
さらに、上記熱伝導部材1~6の場合、第2熱伝導部12を作製する際には、膨張させた膨張黒鉛を管状体に充填すればよい。そのため、上記特許文献1に記載されているような炭素繊維を軸方向に揃えて筒状部材に充填する技術とは異なり、充填物の軸方向を揃えなくてもよい。よって、そのような手間が不要な分だけ、熱伝導部材1~6を容易に製造することができ、熱伝導部材1~6の生産性を向上させることができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、熱伝導部材及びその製造方法について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0038】
例えば、上記実施形態では、湾曲部15を有する熱伝導部材2~6として、5種の形状を例示したが、これら5種の形状とは異なる形状の熱伝導部材であってもよい。
また、上記実施形態では、第1熱伝導部11を構成する金属として、銅合金を例示したが、他の金属で第1熱伝導部11を構成してもよい。他の金属の例としては、例えば、銅、アルミニウム及びアルミニウム合金など、十分に高い熱伝導率を備えた金属が好適である。
【0039】
なお、上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される複数の機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した1つの構成要素によって実現される1つの機能を、複数の構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される複数の機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現してもよい。上記実施形態で例示した構成の一部を省略してもよい。上記実施形態のうち、1つの実施形態で例示した構成の少なくとも一部を、当該1つの実施形態以外の上記実施形態で例示した構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,2,3,4,5,6…熱伝導部材、11…第1熱伝導部、12…第2熱伝導部、15…湾曲部。
図1
図2