(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】空気循環システム
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20240318BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20240318BHJP
F25D 21/14 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F25D11/00 101D
F25D17/08 307
F25D21/14 J
(21)【出願番号】P 2021124098
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000154912
【氏名又は名称】株式会社北村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茅野 信一郎
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-142601(JP,A)
【文献】特開2003-161568(JP,A)
【文献】実公昭41-012305(JP,Y1)
【文献】特開2004-026174(JP,A)
【文献】特開平08-320178(JP,A)
【文献】特開平10-122726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 17/08
F25D 23/06
B60P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置を備えていない第1の荷室と、冷却装置を備えた第2の荷室と、を有する運送用車両の空気循環システムであって、
互いに空気が移動しないように前記第1の荷室と前記第2の荷室とを仕切り、断熱材を内包する壁部と、
前記壁部内に形成された流路と、
前記壁部の前記第1の荷室側に開口形成された吸込口と、
前記流路と連通するファン収容部と、
前記ファン収容部内に配設された送風装置と、を有し、
前記吸込口は、複数の貫通孔が形成された通気板により覆われ、
前記通気板の前記第1の荷室側には、エアリブが設けられ、
前記ファン収容部には、前記第1の荷室側に開口形成された吹出口が形成されていることを特徴とする空気循環システム。
【請求項2】
前記流路は、前記第1の荷室側の第1の壁板部と、前記第2の荷室側の第2の壁板部により形成され、
前記第1の壁板部は、前記第1の荷室と前記流路との間に配設される断熱部を有し、
前記第2の壁板部は、前記第2の荷室と前記流路との間に配設される本体板部を有し、
前記本体板部が金属板により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気循環システム。
【請求項3】
前記第1の壁板部は、前記断熱部を覆う被覆部を有し、
前記第2の壁板部は、前記断熱材に当接する側板部と、前記第1の壁板部に当接する側板片部と、を有し、
前記流路は、前記被覆部と、前記本体板部と、前記側板部と、前記側板片部により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の空気循環システム。
【請求項4】
前記第1の壁板部と前記第2の壁板部が前記壁部に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の空気循環システム。
【請求項5】
前記流路の下方に、水受けが配設されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の空気循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置を備えない荷室と冷却装置を備える荷室を有する運送用車両の空気循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保存温度帯の異なる多種類の食品等を複数の荷室に分け、同時に積載して輸送する車両であって、最も設定温度の低い荷室の空気を他の荷室に導入するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輸送用車両の荷室構造は、荷室(12)の天井部に複数の貨物室(22)~(26)の間に跨る一列のダクト(14)を配設し、ダクト(14)は最も設定温度の低い第1の貨物室内(22)に開口する吸込口を備えている。そして、この吸込口の吸込ファン(30)から第1の貨物室(22)内の空気を吸い込むとともに、温度帯の異なる他の貨物室(24)、(26)にはダクト(14)と連通する冷気の送風口(34A)~(34C)が、他の貨物室(24)、(26)の天井部分にそれぞれ設けられ、ダクト(14)を介して第1の貨物室(22)内の空気を他の貨物室(24)、(26)へ導入するように構成されている。
【0004】
また、第1の貨物室(22)と第2の貨物室(24)の間の可動間仕切(20B)と、第2の貨物室(24)と第3の貨物室(26)の間の可動間仕切(18B)には、連通孔(40)が設けれており、この連通孔(40)を介して第2の貨物室(24)内の空気と第3の貨物室(26)内の空気が第1の貨物室(22)内に吸引されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の輸送用車両の荷室構造は、第1の貨物室(22)と第2の貨物室(24)及び第3の貨物室(26)との間で空気の循環を行うものであり、吸込ファン(30)を駆動させることで第1の貨物室(22)内の温度が急激に上昇し、第1の貨物室(22)内の積載物の設定温度よりも第1の貨物室(22)内の温度が高くなってしまう虞があった。
【0007】
また、第1の貨物室(22)と第2の貨物室(24)と第3の貨物室(26)の間で空気の循環を行うことで、輸送用車両10の後扉の開閉により第3の貨物室(26)内に侵入した砂や塵等が第1の貨物室(22)と第2の貨物室(24)に循環してしまうという問題もあった。
【0008】
そこで本発明は、冷却装置を備えない荷室の空気を、他の荷室に流入させることなく、冷却装置を備える荷室との間の壁部内を流動するように循環させて冷却する空気循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空気循環システムは、冷却装置を備えていない第1の荷室と、冷却装置を備えた第2の荷室と、を有する運送用車両の空気循環システムであって、互いに空気が移動しないように前記第1の荷室と前記第2の荷室とを仕切り、断熱材を内包する壁部と、前記壁部内に形成された流路と、前記壁部の前記第1の荷室側に開口形成された吸込口と、前記流路と連通するファン収容部と、前記ファン収容部内に配設された送風装置と、を有し、前記吸込口は、複数の貫通孔が形成された通気板により覆われ、前記通気板の前記第1の荷室側には、エアリブが設けられ、前記ファン収容部には、前記第1の荷室側に開口形成された吹出口が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の空気循環システムは、前記流路は、前記第1の荷室側の第1の壁板部と、前記第2の荷室側の第2の壁板部により形成され、前記第1の壁板部は、前記第1の荷室と前記流路との間に配設される断熱部を有し、前記第2の壁板部は、前記第2の荷室と前記流路との間に配設される本体板部を有し、前記本体板部が金属板により形成されている場合がある。
【0011】
また、本発明の空気循環システムは、前記第1の壁板部は、前記断熱部を覆う被覆部を有し、前記第2の壁板部は、前記断熱材に当接する側板部と、前記第1の壁板部に当接する側板片部と、を有し、前記流路は、前記被覆部と、前記本体板部と、前記側板部と、前記側板片部により形成されている場合がある。
【0012】
また、本発明の空気循環システムは、前記第1の壁板部と前記第2の壁板部が前記壁部に着脱可能に取り付けられている場合がある。
【0013】
また、本発明の空気循環システムは、前記流路の下方に、水受けが配設されている場合がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却装置を備えない荷室の空気を他の荷室に流入させることなく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の荷室を透視して示した運送用車両の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態の荷室を断面で示した運送用車両の右側面図である。
【
図3】本発明の実施形態の第1の壁板部と第2の壁板部を取り付ける前のドライ室の前壁部の横断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の第1の壁板部と第2の壁板部を取り付けた状態のドライ室の前壁部の横断面図である。
【
図5】(A)本発明の実施形態の第1の壁板部の背面側斜視図である。(B)本発明の実施形態の第1の壁板部の下端部分の縦断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の水受けの配設位置を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の開閉扉を取り外した状態のドライ室の背面図である。
【
図8】
他の実施形態の荷室を断面で示した運送用車両の右側面図である。
【
図9】
他の実施形態の開閉扉を取り外した状態の運送用車両の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付の
図1~図
7を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。以下、運送用車両1の上側、下側、進行方向側、後退方向側、進行方向左側、進行方向右側をそれぞれ空気循環システムの上、下、前、後、左、右として説明する。
【0017】
図1に示す運送用車両1は、第1の荷室であるドライ室2と、第2の荷室である冷蔵室3と、第3の荷室である冷凍室4を備えている。ドライ室2は、荷室の後側約2/3の容積を有している。冷蔵室3は運送用車両1の進行方向右側に配設され、冷凍室4は運送用車両1の進行方向左側に配設され、冷蔵室3と冷凍室4の容積は略同一である。ドライ室2の後側にはドライ室2に積載物(図示せず)を出し入れするための開閉扉5が設けられている。なお、ドライ室2と冷蔵室3と冷凍室4は、所望の大きさや配置とすることができる。
【0018】
ドライ室2は、天壁部11と、底壁部12と、前壁部13と、開閉扉5と、左壁部14と、右壁部15により形成されている。前壁部13は、断熱材6を内包した断熱壁である。なお、本実施形態のドライ室2は、冷却装置を備えておらず常温の荷室であるため、前壁部13以外の天壁部11、底壁部12、開閉扉5、左壁部14、右壁部15は、断熱材6を内包していないが、断熱材6を内包した断熱壁としてもよい。
【0019】
冷蔵室3は、天壁部21と、底壁部22と、前壁部23と、ドライ室2の前壁部13と、左壁部24と、右壁部25により形成されている。天壁部21、底壁部22、前壁部23、左壁部24、右壁部25は、断熱材6を内包した断熱壁である。右壁部25には、冷蔵室3に積載物(図示せず)を出し入れするための開閉扉26が設けられている。また、右壁部25の内面上部には、冷蔵室3内を冷却する冷却装置である冷蔵装置27が取り付けられている。
【0020】
冷凍室4は、天壁部31と、底壁部32と、前壁部33と、ドライ室2の前壁部13と、左壁部34と、右壁部35により形成されている。天壁部31、底壁部32、前壁部33、左壁部34、右壁部35は、断熱材6を内包した断熱壁である。左壁部34には、冷凍室4に積載物(図示せず)を出し入れするための開閉扉36が設けられている。また、左壁部34の内面上部には、冷凍室4内を冷却する冷却装置である冷凍装置37が取り付けられている。
【0021】
前壁部13で仕切られているため、ドライ室2と冷蔵室3の間では相互に空気が移動しないようになっている。また、ドライ室2と冷凍室4の間では相互に空気が移動しないようになっている。さらに、左壁部24と右壁部35で仕切られているため、冷蔵室3と冷凍室4の間でも相互に空気が移動しないようになっている。
【0022】
ドライ室2の前壁部13は、ドライ室2と冷蔵室3を仕切ると共に、ドライ室2と冷凍室4を仕切っている。
図3に示すように、前壁部13のドライ室2と冷蔵室3を仕切る部分には、断熱材6が内包されていない空洞部41が形成されている。空洞部41は、ドライ室2側(後側)の断熱材配設部42と、冷蔵室3側(前側)のダクト配設部43を有する。
図3に示す横断面視において、断熱材配設部42の横幅W1は、ダクト配設部43の横幅W2よりも長く形成され、断熱材配設部42の前後幅L1は、ダクト配設部43の前後幅L2よりも短く形成されている。
【0023】
断熱材配設部42には、壁板44に取り付けられた断熱部である断熱材45が配設される。壁板44は、前壁部13に着脱可能に取り付けられる。すなわち、
図4に示すように、空洞部41のドライ室2側(後側)の開口は壁板44により閉塞される。断熱材45の冷蔵室3側(前側)の表面は、薄板状の合成樹脂材で形成された被覆部46により被覆されている。なお、本実施形態の被覆部46は合成樹脂材で形成されているが、金属材等の他の材料により形成してもよい。被覆部46も断熱材45と共に断熱材配設部42に配設される。
図5(A)に示すように、被覆部46の外周部(下側部分を除く。)には軟質発泡合成樹脂製のパッキン材47が取り付けてあり、このパッキン材47が前壁部13と被覆部46との間に配置される。パッキン材47は、結露水の漏れを防ぐものであるが、被覆部46の下側部分には設けられていない。そのため、被覆部46の表面に付着した結露水が流れ落ちた場合に、後述する水受け65に流入させることができる。本実施形態においては、壁板44、断熱材45、被覆部46、パッキン材47が第1の壁板部を構成する。
【0024】
ダクト配設部43には、第2の壁板部であるダクト本体48が配設される。ダクト本体48は、本体板部49と、左側板部50Aと、右側板部50Bと、左側板片部51Aと、右側板片部51Bと、を有する。ダクト本体48には、ダクト本体48を前壁部13に取り付ける左側取付板部52Aと右側取付板部52Bが設けられている。本体板部49は、アルミニウム材等の金属で形成され、前壁部13の一部を構成すると共に冷蔵室3の内面の一部を構成する。左側板部50Aと右側板部50Bの外面部には、軟質発泡合成樹脂製の断熱材67A、67Bが取り付けられており、この断熱材67Aが前壁部13の断熱材6の露出面53Aに当接し、断熱材67Bが前壁部13の断熱材6の露出面53Bに当接する。また、左側板片部51Aと右側板片部51Bは、被覆部46に当接する。また、上下方向に長く形成された左側取付板部52Aと右側取付板部52Bが、前壁部13に着脱可能に取り付けられることで、ダクト本体48が前壁部13に着脱可能に取り付けられる。すなわち、
図4に示すように、空洞部41の冷蔵室3側(前側)の開口はダクト本体48により閉塞される。
【0025】
被覆部46と、ダクト本体48の本体板部49、左側板部50A、右側板部50B、左側板片部51A、右側板片部51Bにより、略角筒状のダクト54が形成され、このダクト54内部が、空気が流動する流路となる。本実施形態のダクト54には形成されていないが、ダクト54の内側の本体板部49に熱伝導率が高い部材で形成された放熱板(図示せず)を配設してもよく、また、空気の流動距離を長くするため、空気が蛇行して流動するようにダクト54の内側に複数の仕切板(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
図2及び
図5(A)に示すように、壁板44の下側部分には、矩形状の吸込口55が開口形成されている。この吸込口55は、複数の貫通孔である通気孔56が形成された通気板57により覆われている。そして、断熱材45と被覆部46には、吸込口55に対向する部分に吸込口55と同形状の吸込開口部58が開口形成されている。通気板57は、壁板44に着脱可能に取り付けられている。また、被覆部46の表面には水切り材70が取り付けられている。水切り材70は、被覆部46に取り付ける縦板部70Aと、縦板部70Aに対して垂直方向に延設された横板部70Bと、を有する。水切り材70の長手方向(横方向)の長さは、吸込開口部58の横方向の長さよりも僅かに長く形成されている。
図5(B)に示すように、横板部70Bの下面78は吸込開口部58の上側の開口縁面79と略面一となっている。この水切り材70は、被覆部46に付着した結露水が流れ落ちた場合に水切り材70で受け、結露水が吸込開口部58に流れ込み、ひいてはドライ室2に流れ込むのを防止するものである。
【0027】
図2に示すように、ダクト54の上端部には、送風装置であるクロスフローファン59が配設されるファン収容部60が設けられている。ファン収容部60には、ドライ室2側に矩形状に開口した吹出口61が形成されている。ダクト54とファン収容部60は、内部で連通しており、ダクト54内を流動した空気がファン収容部60内に流入し、クロスフローファン59を介して吹出口61からドライ室2に吹き出される。ファン収容部60の背面部62は、冷蔵室3の天壁部21に当接している。本実施形態の空気循環システムは、クロスフローファン59の動力により空気の循環を行うものであるため、通気孔56の開口面積が吹出口61の開口面積よりも大きくなることが好ましい。
【0028】
ファン収容部60の外面63には軟質発泡合成樹脂製の断熱材64が取り付けてあり、外面63に結露が生じ難くしている。
【0029】
クロスフローファン59の駆動の開始や停止等を操作する操作体(図示せず)は、ドライ室2内に設けてもよく、運送用車両1の乗員室7(
図1及び
図2参照)に設けてもよい。また、クロスフローファン59の駆動の開始と停止を冷蔵装置27の駆動の開始と停止に連動させてもよい。
【0030】
図2及び6に示すように、ダクト54の下方には、上部が開口した有底箱状の水受け65が配設されている。水受け65は、ダクト54内部に生じた結露水がダクト54内面を伝って流れ落ちた際、結露水を受けるものである。水受け65は、運送用車両1の左右方向に長く延設されており、ダクト54の横幅W1よりも長く形成されている。水受け65の前板部66は、ダクト54の本体板部49と略同一平面上に位置している。本体板部49の下端には、後方向に略水平に延設された規制板部68が形成されている。本体板部49の内面を流れ落ちた結露水は、規制板部68に沿って水受け65に流入する。なお、本実施形態の規制板部68は略水平に延設されているが、結露水が流動し易くするため、下方に傾斜するように延設してもよい。また、水受け65の後板部69は、ダクト54の被覆部46よりも後側に位置している。また、被覆部46の下端部71は、後板部69の上端部72よりも低い位置となっている。そのため、被覆部46の内面を伝って流れ落ちた結露水は、直接水受け65内に流入する。
【0031】
水受け65は、運送用車両1の左右方向において僅かに傾斜して設けられている。すなわち、水受け65の左端側が低くなり、右端側が高くなっている。そのため、水受け65内の結露水は、水受け65の左端側に流動する。水受け65の左端側の底部には、排水口73が開口形成されており、排水口73の下方には一時的に結露水を貯留する貯水部74が設けられている。排水口73から流れ落ちた結露水は、貯水部74に貯留される。貯水部74には、排出機構(図示せず)が設けられており、貯水部74内に貯留された結露水を外部に排出することができるようになっている。
【0032】
図7に示すように、壁板44と通気板57には、エアリブ75A、75Bが上下方向に延設されており、ドライ室2に積載した荷物により通気孔56が閉塞されることを防止している。なお、本実施形態のエアリブ75A、75Bは、壁板44と通気板57に設けているが、通気孔56が形成された通気板57にのみ設けてもよい。また、壁板44に設けたエアリブ75A、75Bを複数に分割し、上下方向に断続的に設けてもよい。
【0033】
ここで、本実施形態の空気循環システムの動作について説明する。まず、クロスフローファン59の駆動が開始されると、ドライ室2内の空気が通気孔56からダクト54内に吸い込まれる。ダクト54内(流路)を流動(上昇)する空気は、ダクト54の本体板部49に接する。本体板部49は、冷蔵室3内の空気に触れているため冷却されており、この本体板部49にダクト54内の空気が接触することで、ダクト54内の空気が冷却される。冷却された空気は、ファン収容部60内に流入し、クロスフローファン59に吸い込まれ、吹出口61からドライ室2に吹き出される。このように、ドライ室2内の空気をダクト54内(流路)を流動するように循環させ、冷蔵室3や冷凍室4との間で空気のやり取りをすることなく、ドライ室2内の空気を冷却することができる。また、ドライ室2内で作業をする作業者(図示せず)が吹出口61から吹き出される空気を身体に受けることで、体感温度を下げることができる。夏季のように、ドライ室2内の温度が冷蔵室3内の温度(約3~5度)よりも高い場合には、本実施形態の空気循環システムにより、ドライ室2内の空気を冷却することができる。一方で、寒冷地の冬季のように、ドライ室2内の温度が氷点下となるような環境では、ドライ室2内の温度が冷蔵室3内の温度よりも低いため、本実施形態の空気循環システムにより、ドライ室2内の空気温度を上昇させ、ドライ室2内を暖めることができる。ドライ室2に野菜や生花等の冷凍すべきでないものを積載している場合には、ドライ室2内を暖めることが有益である。
【0034】
以上のように本実施形態の空気循環システムは、冷却装置を備えていないドライ室2と、冷蔵装置27を備えた冷蔵室3と、を有する運送用車両1の空気循環システムであって、互いに空気が移動しないようにドライ室2と冷蔵室3とを仕切り、断熱材6を内包する前壁部13と、前壁部13内に形成された流路と、前壁部13のドライ室2側に開口形成された吸込口55と、流路と連通するファン収容部60と、ファン収容部60内に配設されたクロスフローファン59と、を有し、ファン収容部60には、ドライ室2側に開口形成された吹出口61が形成されていることにより、クロスフローファン59を駆動させ、ドライ室2内の空気を吸込口55から流路内に吸い込み、空気が流路内を流動する過程で、冷蔵室3の空気により冷やされた本体板部49に接触することで冷却される。冷却された空気は、クロスフローファン59を介して吹出口61からドライ室2に吹き出すことができる。これにより、ドライ室2内の温度を下げることができる。また、ドライ室2内で作業をする作業者が吹出口61から吹き出される空気を身体に受けることで、体感温度を下げることができる。
【0035】
また、本実施形態の空気循環システムは、流路は、ドライ室2側の第1の壁板部と、冷蔵室3側の第2の壁板部により形成され、第1の壁板部は、ドライ室2と流路との間に配設される断熱材45を有し、第2の壁板部は、冷蔵室3と流路との間に配設される本体板部49を有し、本体板部49が金属板により形成されていることにより、流路内を流動する空気がドライ室2内の空気の温度の影響を受け難く、冷蔵室3の空気の温度の影響を受け易くすることができる。具体的には、流路内を流動する空気がドライ室2内の温かい空気の影響を受け難くして温度が上昇することを抑制し、冷蔵室3の冷たい空気の影響を受け易くして温度を低下させることができる。
【0036】
また、本実施形態の空気循環システムは、第1の壁板部は、断熱材45を覆う被覆部46を有し、第2の壁板部は、断熱材6に当接する左側板部50A及び右側板部50Bと、第1の壁板部に当接する左側板片部51A及び右側板片部51Bと、を有し、流路は、被覆部46と、本体板部49と、左側板部50A及び右側板部50Bと、左側板片部51A及び右側板片部51Bにより形成されていることにより、前壁部13の断熱材配設部42に断熱材45及び被覆部46が配設され、ダクト配設部43にダクト本体48が配設されるように第1の壁板部と第2の壁板部を取り付けることで流路を形成することができる。
【0037】
また、本実施形態の空気循環システムは、第1の壁板部と第2の壁板部が前壁部13に着脱可能に取り付けられていることにより、第1の壁板部と第2の壁板部を前壁部13から取り外すことで、ダクト54や断熱材45やパッキン材47等のメンテナンスを行うことができる。
【0038】
また、本実施形態の空気循環システムは、流路の下方に、水受け65が配設されていることにより、流路内で結露が生じた場合であっても、結露水を水受け65に集め、外部に排出することができる。
【0039】
また、本実施形態の空気循環システムは、本体板部49の下端に規制板部68が形成され、被覆部46の下端部71が水受け65の上端部72よりも下方に位置していることにより、本体板部49の内面を流れ落ちた結露水の流動方向を規制板部68により規制し、確実に水受け65に流入させることができる。また、被覆部46の内面を流れ落ちた結露水を被覆部46の下端部71から直接水受け65に流入させることができる。
【0040】
図8及び
図9は
、他の実施形態を示したものであり、上記実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施形態は、冷蔵室3の上方に、ファン収容部60を配設する十分なスペースがある運送用車両1に空気循環システムを適用したものである。
【0041】
本実施形態は、
図8に示すように、ファン収容部60を冷蔵室3の天壁部21の上面部28に取り付けている。そのため、ファン収容部60を安定して取り付けることができる。また、ファン収容部60が壁板44よりもドライ室2側に突出しないため、積載する荷物や作業者に接触し難くすることができる。
【0042】
図9に示すように、本実施形態では、吸込口55を通気板57で覆うのではなく、吸込口55に格子部材76を取り付けており、エアリブ75A、75Bを設けていない。さらに、ファン収容部60の吹出口61に格子部材77を取り付けている。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、空気循環システムをドライ室2と冷凍室4との間の前壁部13に設けてもよい。また、空気循環システムをドライ室2と冷蔵室3との間と、ドライ室2と冷凍室4との間の、両方の前壁部13に設けて、何れか一方の空気循環システムのみを使用することや、両方の空気循環システムを同時に使用することを選択可能としてもよい。さらに、上記実施形態では、下側から空気を吸い込み、上側から吹き出す構成としているが、クロスフローファン59及びファン収容部60を下側に配設し、上側から空気を吸い込み、下側から吹き出す構成としてもよい。また、冷蔵装置27と冷凍装置37は、冷蔵室3や冷凍室4の温度を下げる機能の他に、冷蔵室3や冷凍室4の温度を上げる加温機能や、湿度を調節する湿度調節機能を備える、いわゆる、空気調和機であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 運送用車両
2 ドライ室(第1の荷室)
3 冷蔵室(第2の荷室)
6 断熱材
13 前壁部(壁部)
45 断熱材(断熱部、第1の壁板部)
46 被覆部(第1の壁板部)
49 本体板部(第2の壁板部)
50A 左側板部(側板部、第2の壁板部)
50B 右側板部(側板部、第2の壁板部)
51A 左側板片部(側板片部、第2の壁板部)
51B 右側板片部(側板片部、第2の壁板部)
55 吸込口
59 クロスフローファン(送風装置)
60 ファン収容部
61 吹出口
65 水受け