(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】マグネシウム含有オキシトシン製剤および使用の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/095 20190101AFI20240318BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20240318BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240318BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240318BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240318BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240318BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20240318BHJP
A61M 15/08 20060101ALI20240318BHJP
C07K 7/16 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
A61K38/095 ZNA
A61K33/06
A61K9/08
A61P25/04
A61P25/06
A61P43/00 121
A61M11/00 A
A61M15/08
C07K7/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179295
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2017535877の分割
【原出願日】2016-01-07
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2015-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510227160
【氏名又は名称】トライジェミナ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シー. ヨーマンズ
(72)【発明者】
【氏名】ディーン カーソン
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン シルコート
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-506071(JP,A)
【文献】特表2002-518456(JP,A)
【文献】Wang, Y. L. et al.,The interaction between the oxytocin and pain modulation in headache patients,Neuropeptides,2013年,Vol.47, No.2,p.93-97,doi:10.1016/j.npep.2012.12.003
【文献】Mauskop, A. et al.,Intravenous magnesium sulfate rapidly alleviates headaches of various types,Headache,1996年,Vol.36, No.3,p.154-160,doi:10.1046/j.1526-4610.1996.3603154.x
【文献】金 浩澤, 島津 邦男,片頭痛の病態生理とその進展,綜合臨床,2000年06月,第49巻,第6号,p.1767-1770
【文献】Avanti, C. et al.,A new strategy to stabilize oxytocin in aqueous solutions: II. Suppression of cysteine-mediated intermolecular reactions by a combination of divalent metal ions and citrate,Molecular Pharmaceutics,2012年,Vol.9, No.3,p.554-562,doi:10.1021/mp200622z
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 33/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61M 11/00-11/08
A61M 15/00-15/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシトシンペプチドと、マグネシウムイオ
ンとを含む、疼痛を処置するための
水性薬学的組成物であって、前記オキシトシンペプチ
ドは、約0.5μg~約2000μgの
量であり、
前記マグネシウムイオンは、約0.1%~約2.8%(w/v)の濃度
であり、前記水性組成物は、鼻腔内投与を介して送達され、相乗的な痛覚消失をもたらすことができる、
水性薬学的組成物。
【請求項2】
前記マグネシウム
イオンが塩化マグネシウムを含む
塩から生成される、請求項1に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項3】
前記マグネシウム
イオンがクエン酸マグネシウムを含む
塩から生成される、請求項1に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項4】
前記オキシトシンペプチ
ドが、
約8μg~約1000μgの量であり、前記マグネシウムイオンが、約0.11%~約1.65%(w/v)の
濃度であることを特徴とする、請求項1に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項5】
前記オキシトシンペプチ
ドが、約15~約120μg
の量であることを特徴とする、請求項
4に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項6】
前記疼痛が慢性疼痛である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項7】
前記疼痛が急性疼痛である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項8】
前記疼痛が偶発性疼痛である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項9】
前記疼痛が頭痛または顔面痛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項10】
前記疼痛が三叉神経関連の疼痛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項11】
前記疼痛が片頭痛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項12】
前記疼痛が、頸部痛、肩部痛または上肢痛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項13】
前記疼痛が頸神経関連の疼痛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項14】
前記オキシトシンペプチドがヒトオキシトシン(配列番号1)である、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項15】
薬学的に許容され得るキャリアをさらに含む、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項16】
1つまたはそれを超える賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、粘膜接着剤、抗菌剤、緩衝剤および/または他の添加物をさらに含む、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項17】
前記組成物が約4.5のpHを有する、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1~1
7のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物
と、前記水性薬学的組成物を含有することができるデバイスとを含む、疼痛を処置するためのシステムであって、前記デバイスが、必要とする被験体に、鼻腔内投与により前記
水性薬学的組成物を送達できる、
システム。
【請求項19】
前記デバイスが鼻腔用ポンプ装置である、請求項1
8に記載の
システム。
【請求項20】
前記鼻腔用ポンプ装置が、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える、請求項
19に記載の
システム。
【請求項21】
前記ポンプアクチュエータが、約50μLという
前記水性薬学的組成物の特定体積を送達するように計量する、請求項2
0に記載の
システム。
【請求項22】
前記ポンプアクチュエータが、約100μLという
前記水性薬学的組成物の特定体積を送達するように計量する、請求項2
0に記載の
システム。
【請求項23】
前記鼻腔用ポンプ装置が、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える、請求項
19に記載の
システム。
【請求項24】
前記鼻腔用ポンプ装置が、以下:
(i)逆流を防止するためのフィルター、
(ii)無金属流路、および
(iii)ガンマ線に対して安定なプラスチック材料
のうちの1つ以上を備える、請求項
19~2
3のいずれか一項に記載の
システム。
【請求項25】
請求項
1~
18のいずれか一項に記載の
水性薬学的組成物と、包装材とを含む、疼痛を処置するためのキット。
【請求項26】
疼痛を処置するための方法において、前記
水性薬学的組成物を投与するための指示書をさらに含む、請求項2
5に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2015年1月7日に出願された米国仮特許出願番号第62/100,862号に基づく優先権を主張しており、この仮特許出願の開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物に関する。オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与を含む、疼痛(例えば、片頭痛)を処置するための方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
オキシトシンは、哺乳動物の視床下部の室傍核および視索上核で主に産生される天然に存在する9アミノ酸の神経ペプチドである。オキシトシンは、分散した神経路を介して中枢神経系に放出され、下垂体後葉を介して末梢循環に放出される。合成オキシトシン(Pitocin(登録商標))の筋肉内注射または点滴静注は、子宮収縮を生じさせるかまたは改善して経腟分娩を促すために、および分娩後出血を管理するために、現在、米国において承認されている。鼻腔内オキシトシン(Syntocinon(登録商標))は、射乳を刺激して母乳栄養を促すために1960年から1997年まで米国において承認されていた。Syntocinon(登録商標)という鼻腔用スプレーは、製造者の要請で米国市場から撤退したが、鼻腔内オキシトシンは、今でもスイス、ポルトガルまたはブラジルなどの米国国外の国で販売されている。最近、鼻腔内投与による頭痛などの疼痛の処置におけるオキシトシンペプチドの使用が実証された。WO2007/025249A2およびWO2007/025286A2を参照のこと(これらの開示は、参照により本明細書中に援用される)。
【0004】
疼痛は、脳のある特定の構造の活性化によって部分的に媒介される知覚である。疼痛は通常、皮膚または他の末梢組織を神経支配する侵害受容器と呼ばれる特殊なニューロンが、機械的、熱的、化学的または他の侵害性の刺激によって活性化されると惹起される。疼痛は、疼痛の処理に関与する末梢神経または中枢神経の構造が、例えば、外傷、虚血または炎症の結果として機能亢進になるときにも生じる。疼痛の他の原因としては、疾患特異的プロセス、代謝障害、筋痙攣、および神経障害性の事象または症候群の発生が挙げられる。非オピオイド類(例えば、アセトアミノフェンおよび非ステロイド性抗炎症薬またはNSAID)、オピオイド類および補助鎮痛薬(例えば、ガバペンチン)をはじめとした広範囲の薬物療法が利用可能であるにもかかわらず、疼痛は、米国だけで数百万人を苦しませ続けており、患者、ヘルスケアおよびビジネスに対して深刻な負担になったままである。
オキシトシンは、三叉神経痛および片頭痛などの、三叉神経に関連する疼痛、特に慢性疼痛を低減させると示されている。ヒトでの臨床試験から、片頭痛の処置における鼻腔内オキシトシンの有効性が実証された。しかしながら、これらの治験は、経鼻オキシトシンによって引き起こされる痛覚消失までの潜時がおよそ2時間であり、投与の約4時間後まで最大鎮痛効果が顕われなかったことを示した。したがって、より速く鎮痛効果を発揮することができるオキシトシンペプチド製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/025249号
【文献】国際公開第2007/025286号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な要旨)
頭蓋顔面粘膜投与(例えば、鼻腔内投与)を介して疼痛を処置するための方法ならびにオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物が提供される。本明細書中に記載される方法およびマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤は、オキシトシン単独と比べてより速い、より強いおよびより長く持続する鎮痛効果を提供する。
【0007】
1つの態様において、本発明は、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法を提供し、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、共に同時投与されてもよいし、連続的に同時投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、同じ単位用量(unit dose)で、または別個の単位用量もしくは製剤単位で、マグネシウム塩と共に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、連続的に投与される。例えば、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩の投与後にある時間が経過してから投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0008】
オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、それを必要とする被験体に、同じ経路を介して投与されてもよいし、異なる経路を介して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)を介して投与される。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩の両方が、同じ製剤として鼻腔内に投与される。
【0009】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μg、好ましくは、約8μg~約1000μg、より好ましくは、約15μg~約120μgである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウム、好ましくは、約50μg~約34mgのマグネシウム、より好ましくは、約1mg~約3mgのマグネシウムを提供する。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、約50μg~約68mgのマグネシウムまたは約50μg~約34mgのマグネシウムまたは約1mg~約3mgのマグネシウムを提供する量で投与されるクエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、約50μg~約68mgのマグネシウムまたは約50μg~約34mgのマグネシウムまたは約1mg~約3mgのマグネシウムを提供する量で投与されるクエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムである。いくつかの実施形態において、有効用量のマグネシウム塩は、約0.48mg~約600mgのクエン酸マグネシウム、好ましくは、約0.48mg~約300mgのクエン酸マグネシウム、より好ましくは、約10mg~約30mgのクエン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、約1%~約25%(好ましくは、約10%~約14%、例えば、約12%)(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約0.5μg~約2000μgまたは約15μg~約120μg(例えば、約66μg)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、約0.11%~約2.8%(好ましくは、約1.1%~約1.6%、例えば、約1.36%)(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約0.5μg~約2000μgまたは約15μg~約120μg(例えば、約60μgまたは約66μg)のオキシトシンペプチドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記方法によって処置可能な疼痛には、オキシトシンペプチドによって処置可能な任意の疼痛(例えば、口腔顔面痛および頭蓋顔面痛(例えば、頭痛)、頸部痛(例えば、後頭神経痛)、肩部痛または上肢痛)が含まれる。いくつかの実施形態において、疼痛は、慢性疼痛、急性疼痛または偶発性疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、頭痛または顔面痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、三叉神経関連の疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、片頭痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、頸神経関連の疼痛である。
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、片頭痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する(例えば、鼻腔内に)工程を含む、片頭痛を処置するための方法を提供し、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。
【0012】
1つの態様において、本発明は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤および疼痛の処置におけるその使用を提供する。したがって、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物が提供され、ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムである。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチドを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、組成物は、約1mg/mL~約30mg/mL(または約5mg/mL~約30mg/mL、約10mg/mL~約30mg/mL、好ましくは、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約13mg/mLまたは約12mg/mL)のマグネシウムを提供する量でマグネシウム塩を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、組成物は、1つまたはそれを超える賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、粘膜接着剤、抗菌剤、緩衝剤および/または他の添加物をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約2~約7(好ましくは、約4.5)のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容され得るキャリアをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩ならびに薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物が提供され、ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態において、組成物は、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)に適合している。いくつかの実施形態において、組成物は、鼻腔内投与に適合しており、さらにその組成物は、鼻腔内投与用のデバイス(例えば、鼻腔用ポンプ装置(nasal pump apparatus)、例えば、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える鼻腔用ポンプ装置)を含み得る。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置は、以下のうちの1つ以上を備える:(i)逆流を防止するためのフィルター、(ii)無金属流路および(iii)ガンマ線に対して安定なプラスチック材料。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置は、定量(例えば、1スプレーあたり約50~約150μLまたは1スプレーあたり約50μL)を提供する。
【0015】
有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を、疼痛の処置を必要とする被験体の鼻腔内に投与する工程を含む、それを必要とする被験体において疼痛を処置するための方法も提供される。
【0016】
疼痛の処置を必要とする被験体の疼痛を処置するための方法において使用するための、本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤がさらに提供される。疼痛を処置するための薬の製造における、本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の使用も提供される。
【0017】
鼻腔用ポンプ装置などの鼻腔内投与用のデバイスに含められた本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤および好適な包装材を含むキットも提供される。そのキットは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を必要とする被験体にマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与するための指示書をさらに含み得る。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法であって、ここで、該オキシトシンペプチドと該マグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす、方法。
(項目2)
前記オキシトシンペプチドが、前記マグネシウム塩と同時に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記オキシトシンペプチドが、前記マグネシウム塩の投与の前または後に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記オキシトシンペプチドが、頭蓋顔面粘膜投与を介して投与される、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記オキシトシンペプチドが、鼻腔内投与を介して投与される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩が、鼻腔内投与を介して投与される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記マグネシウム塩が、塩化マグネシウムを含む、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記マグネシウム塩が、クエン酸マグネシウムを含む、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記オキシトシンペプチドの有効用量が、約0.5μg~約2000μgである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記マグネシウム塩の有効用量が、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩の有効用量が、約1.1%~約1.6%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg~約120μgの該オキシトシンペプチドを含む、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩の有効用量が、約1.36%のマグネシウムを含む水溶液において投与される約66μgの該オキシトシンペプチドを含む、項目8に記載の方法。
(項目13)
前記疼痛が、慢性疼痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記疼痛が、急性疼痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記疼痛が、偶発性疼痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記疼痛が、頭痛または顔面痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記疼痛が、三叉神経関連の疼痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記疼痛が、片頭痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記疼痛が、頸部痛、肩部痛または上肢痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記疼痛が、頸神経関連の疼痛である、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記オキシトシンペプチドが、ヒトオキシトシン(配列番号1)である、項目1~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物であって、該オキシトシンペプチドおよび該マグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する、組成物。
(項目23)
前記オキシトシンペプチドが、ヒトオキシトシン(配列番号1)である、項目22に記載の組成物。
(項目24)
前記マグネシウム塩が、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムを含む、項目22または23に記載の組成物。
(項目25)
前記マグネシウム塩が、塩化マグネシウムおよびクエン酸マグネシウムを含む、項目24に記載の組成物。
(項目26)
前記組成物が、約0.01mg/mL~約16mg/mLの前記オキシトシンペプチドを含む液体製剤である、項目22~25のいずれか1項に記載の組成物。
(項目27)
前記液体製剤が、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLの前記オキシトシンペプチドを含む、項目26に記載の組成物。
(項目28)
前記組成物が、約3mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムを提供する量で前記マグネシウム塩を含む液体製剤である、項目22~27のいずれか1項に記載の組成物。
(項目29)
前記液体製剤が、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムを含む、項目28に記載の組成物。
(項目30)
1つまたはそれを超える賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、粘膜接着剤、抗菌剤、緩衝剤および/または他の添加物をさらに含む、項目22~29のいずれか1項に記載の組成物。
(項目31)
前記組成物が、約4.5のpHを有する、項目22~29のいずれか1項に記載の組成物。
(項目32)
前記組成物が、経鼻投与に適している、項目22~31のいずれか1項に記載の組成物。
(項目33)
さらに鼻腔内投与用のデバイスを含む、項目32に記載の組成物。
(項目34)
鼻腔内投与用の前記デバイスが、鼻腔用ポンプ装置である、項目33に記載の組成物。
(項目35)
前記鼻腔用ポンプ装置が、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える、項目34に記載の組成物。
(項目36)
前記ポンプアクチュエータが、約50μLという特定体積を送達するように計量する、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記鼻腔用ポンプ装置が、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える、項目34に記載の組成物。
(項目38)
前記鼻腔用ポンプ装置が、以下:
(i)逆流を防止するためのフィルター、
(ii)無金属流路、および
(iii)ガンマ線に対して安定なプラスチック材料
のうちの1つ以上を備える、項目34~37のいずれか1項に記載の組成物。
(項目39)
疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量の項目22~32のいずれか1項に記載の組成物および薬学的に許容され得るキャリアを投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法。
(項目40)
項目22~38のいずれか1項に記載の組成物および包装材を含む、キット。
(項目41)
項目39に記載の方法に従って前記組成物を投与するための指示書をさらに含む、項目40に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】顔面の温痛覚のラットモデルにおける塩化マグネシウムまたは乳酸マグネシウムの効果。ラットを生理食塩水、15%塩化マグネシウムまたは1%乳酸マグネシウムで処置し、処置の直前ならびに処置の1、2および3時間後に引っ込め反応潜時を計測した。
【0019】
【
図2】顔面の温痛覚のラットモデルにおけるクエン酸マグネシウムの経鼻適用の鎮痛効果の用量依存性。ラットを3、6、10または12%クエン酸マグネシウムで処置し、処置の直前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め反応潜時を計測した。
【0020】
【
図3】顔面の温痛覚のラットモデルにおけるオキシトシンの経鼻適用の鎮痛効果の用量依存性。ラットを1、4または8μgのオキシトシンで処置し、処置の直前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め反応潜時を計測した。
【0021】
【
図4A】1μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。1μgのオキシトシン単独、6%クエン酸マグネシウム単独、1μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値および1μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後の反応潜時の差を測定した。
【0022】
【
図4B】
図4B、4Cおよび4D。1μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の45分後の反応潜時の差を測定した。
【
図4C】
図4B、4Cおよび4D。1μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の45分後の反応潜時の差を測定した。
【
図4D】
図4B、4Cおよび4D。1μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の45分後の反応潜時の差を測定した。
【0023】
【
図5】4μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。4μgのオキシトシン単独、6%クエン酸マグネシウム単独、4μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値および4μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の120分後の反応潜時の差を測定した。
【0024】
【
図6A】8μgのオキシトシンを含む12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。8μgのオキシトシン単独、12%クエン酸マグネシウム単独、8μgのオキシトシンを含む12%クエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値および8μgのオキシトシンを含む12%クエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後の反応潜時の差を測定した。
【0025】
【
図6B】
図6B、6Cおよび6D。8μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の15分後の反応潜時の差を測定した。
【
図6C】
図6B、6Cおよび6D。8μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の15分後の反応潜時の差を測定した。
【
図6D】
図6B、6Cおよび6D。8μgのオキシトシンを含む3、6または12%クエン酸マグネシウム溶液の経鼻適用の鎮痛効果。オキシトシン単独、クエン酸マグネシウム単独、オキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の相加効果の計算値およびオキシトシンを含むクエン酸マグネシウム溶液の実際の適用について、処置の15分後の反応潜時の差を測定した。
【0026】
【
図7】オキシトシン(8μg)を含む20%硫酸マグネシウム七水和物溶液の鼻腔内投与の120分後の経鼻適用の鎮痛効果。
【0027】
【
図8】ラット足炎症モデルにおける0(ビヒクル)、193、385および768μgの用量の経鼻オキシトシンの鼻腔内投与の30分後、60分後、90分後、120分後、180分後および24時間後に観察された鎮痛効果。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、とりわけ、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物ならびにそのマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の頭蓋顔面投与(例えば、鼻腔内投与)によって疼痛を処置するための方法を提供する。
【0029】
(定義)
本明細書中で使用されるとき、別段特定されない限り、用語「処置」または「疼痛を処置する」とは、目的の作用物質を被験体に投与することを指し、ここで、その作用物質は、疼痛を軽減するか、またはその被験体が処置される原因である有痛性の病態を予防する。
【0030】
最も厳密な意味における痛覚消失は、疼痛が無いことであるが、本明細書中で使用されるとき、「痛覚消失」または「鎮痛効果」とは、痛覚過敏および/または異痛症の低減を含む、被験体が知覚する疼痛の低減のことを指す。「痛覚消失」または「鎮痛効果」は、疼痛の頻度の低下も含む。
【0031】
「痛覚消失剤」、「鎮痛剤」または「鎮痛薬」とは、疼痛エピソードを軽減するかもしくは予防するかまたは疼痛エピソードの頻度を低下させる任意の生体分子、薬物または活性な作用物質のことを指す。
【0032】
「協力作用」、「相乗作用」または「相乗効果」とは、一方が他方の作用を補完するかまたは増強することにより、所与の用量の2つまたはそれを超える化合物を個別に投与した場合のそれらの化合物の効果を合算することによって予測または予想され得る効果よりも高い効果をもたらすような様式での2つまたはそれを超える化合物の連合作用のことを指す。2つまたはそれを超える鎮痛剤を併用して使用することによって、個々の薬剤の効果を合計することによって予想または予測され得る、等しい量におけるそれらのいずれかの個々の痛覚消失または鎮痛効果よりも大きな、有痛性の刺激(異痛症および/または痛覚過敏)に対する疼痛の強度または感度が全体的に減少するとき、「相乗的な痛覚消失」または「相乗的な鎮痛効果」が達成されると言われる。2つまたはそれを超える鎮痛剤を併用して使用することによって、個々の鎮痛剤を等しい量で単独で使用して投与した後に生じ得るものよりも速い痛覚消失もしくは鎮痛効果の発生および/またはより長く持続する痛覚消失もしくは鎮痛効果がもたらされるときも、同様に「相乗的な痛覚消失」または「相乗的な鎮痛効果」が達成されたとみなされる。
【0033】
「急性疼痛」とは、(慢性疼痛とは対照的に)限られた時間にわたって持続する、特定の原因(損傷、感染、炎症など)によって急激に発症した疼痛のことを指す。「慢性疼痛」とは、疼痛の持続した状態のことを指す。慢性疼痛は、長期間治らないまたは難治性の病状または疾患に関連することが多い。慢性疼痛とは、高頻度で生じる疼痛状態のことも指し得る。例えば、人が1ヶ月あたり15日間またはそれを超えて頭痛を経験する場合、その人は、「慢性片頭痛」を有すると見なされる。「偶発性疼痛」とは、繰り返しであるが時折生じる疼痛のことを指す。例えば、偶発性片頭痛を経験する人では、片頭痛発作間に数週間および数ヶ月間が経過し得る。
【0034】
「頭蓋顔面粘膜投与」とは、鼻、鼻腔路、鼻腔の粘膜表面;歯肉(歯ぐき)を含む口腔の粘膜表面、口腔底、口唇、舌、舌下口腔表面(舌小帯および口腔底を含む)、ならびに眼の粘膜表面または眼の周辺の粘膜表面(結膜、涙腺、鼻涙管を含む)ならびに上眼瞼または下眼瞼および眼の粘膜への送達のことを指す。
【0035】
「鼻腔内投与」または「鼻腔内に投与される」とは、スプレー、液滴、粉末、ゲル、フィルム、吸入剤または他の手段による鼻、鼻腔路または鼻腔への送達のことを指す。
【0036】
「鼻腔の下の領域」とは、一般に、中鼻甲介および下鼻甲介が突出していて、三叉神経によって著しく神経支配される鼻腔の領域である鼻腔部分のことを指す。「鼻腔の上の領域」は、嗅覚の神経支配が位置している、上部3分の1および篩板領域によって定義される。
【0037】
「被験体」または「患者」は、本明細書中で使用されるとき、哺乳動物のことを指し、ヒトが含まれるがこれに限定されない。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ)、競技用動物、ペット(例えば、モルモット、ネコ、イヌ、ウサギおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、「オキシトシンペプチド」とは、天然のオキシトシンに関連する生物学的活性を有する物質のことを指す。オキシトシンペプチドは、天然に存在する内因性のペプチド、そのフラグメント、アナログまたは誘導体であり得る。オキシトシンペプチドは、非内因性のペプチド、そのフラグメント、アナログまたは誘導体でもあり得る。1つの態様において、オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシンである。他の態様において、オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシンのアナログまたは誘導体であり得る。
【0039】
本明細書中で使用されるとき、「アナログ」または「誘導体」とは、天然に存在するオキシトシンに類似の任意のペプチドのことを指し、そのペプチド中の1つまたはそれを超えるアミノ酸が、置換、欠失または挿入されている。この用語は、1つまたはそれを超えるアミノ酸(例えば、1つ、2つまたは3つのアミノ酸)が例えば化学修飾によって改変された任意のペプチドのことも指す。一般に、この用語は、オキシトシン活性を示すが、所望であれば異なる効力または薬理学的プロファイルを有し得るすべてのペプチドを包含する。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、別段示されない限り、複数の指示対象を含むことに注意するべきである。さらに、本明細書中で使用されるとき、用語「含む(comprising)」およびその同族言語は、それらの包括的な意味で使用され;つまり、用語「含む(including)」およびその対応する同族言語と等価である。
【0041】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間に介在する各値およびその規定範囲内の他の任意の規定値または介在値が、本開示の範囲内に包含されると意図されている。例えば、1μg~8μgという範囲が規定される場合、2μg、3μg、4μg、5μg、6μgおよび7μg、ならびに1μgまたはそれを超える値の範囲かつ8μgまたはそれ未満の値の範囲も明示的に開示されると意図されている。10~14%という範囲が規定される場合、10%、11%、12%、13%および14%も明示的に開示されると意図されている。さらに、ある規定範囲内の任意の規定値または介在値と他の任意の規定値または介在値との間の、その規定範囲内のより狭い各範囲が、本開示の範囲内に包含される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、独立して、その範囲に含められてもよいし、その範囲から除外されてもよく、一方もしくは両方の限界がそのより狭い範囲に含められた各範囲またはいずれの限界もそのより狭い範囲に含められない各範囲も、その規定範囲の明確に除外される任意の限界に制約される本開示に包含される。規定範囲が、一方または両方の限界を含む場合、それらの含められる限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も本開示に含められる。
【0042】
(オキシトシンペプチド)
オキシトシンは、単離および配列決定された最初のペプチドホルモンの1つであった。天然のオキシトシンは、1位と6位の間にジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基を有する9アミノ酸の環状ペプチドホルモンである。ヒトオキシトシンのアミノ酸配列は、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)である。
【0043】
オキシトシンを生成するためのプロセスが報告されている。例えば、米国特許第2,938,891号および米国特許第3,076,797号を参照のこと。さらに、オキシトシンは、商業的に入手可能である。種々のペプチドアナログおよびペプチド誘導体が入手可能であり、その他のものは、本発明における使用のために企図され得、公知の方法に従って生成され得、生物学的活性について試験され得る。オキシトシンアナログとしては、4-トレオニン-1-ヒドロキシ-デアミノオキシトシン、4-セリン-8-イソロイシン-オキシトシン、9-デアミノオキシトシン、7-D-プロリン-オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4-ジイソロイシン)-オキシトシン、デアミノオキシトシンアナログ、1-デアミノ-1-モノカルバ-E12-Tyr(OMe)]-OT(dCOMOT)、4-トレオニン-7-グリシン-オキシトシン(TG-OT)、オキシプレシン(oxypressin)、デアミノ-6-カルバ-オキシトキシン(dC60)、L-371,257、ならびにL-374,943などのオルト-トリグルオロ-エトキシフェニルアセチルコアを含む関連するシリーズの化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。他の例示的なオキシトシンアナログとしては、4-トレオニン-1-ヒドロキシ-デアミノオキシトシン、9-デアミノオキシトシン、グリシンアミド残基の代わりにグリシン残基を含むオキシトシンのアナログ、7-D-プロリン-オキシトシン(2,4-ジイソロイシン)-オキシトシン、ナトリウム利尿活性および利尿活性を有するオキシトシンのアナログ、デアミノオキシトシンアナログ;長時間作用型オキシトシンアナログ、1-デアミノ-1-モノカルバ-E12-[Tyr(OMe)]-OT(dCOMOT)、カルベトシン、(1-ブタン酸-2-(O-メチル-L-チロシン)-1-カルバオキシトシン、デアミノ-1モノカルバ-(2-O-メチルチロシン)-オキシトシン[d(COMOT)])、[Thr4-Gly7]-オキシトシン(TG-OT)、オキシプレシン、Ile-コノプレッシン、デアミノ-6-カルバ-オキシトキシン(dC60)、d[Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、d[Thr(4),Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Lys(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Thr(4),Lys(8)(5/6Cフルオレセイン)]VT、d[Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、d[Thr(4),Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VT、[HO(1)][Thr(4),Om(8)(5/6C-フルオレセイン)]VTおよび1-デアミノ-オキシトシン(残基1と6の間のジスルフィド架橋がチオエーテルに置き換えられている)およびデサミノ-オキシトシンアナログ(ジスルフィド結合がジセレニド結合、ジテルリド結合、テルロセレノ(telluroseleno)結合、テルロスルフィド(tellurosulfide)結合またはセレノスルフィド結合に置き換えられている)(例えば、参照により本明細書中に援用されるPCT特許出願WO2011/120,071に記載されているオキシトシンのペプチドアナログ)が挙げられる。本発明において使用するためのペプチドは、天然に存在するペプチド配列内または天然のペプチド配列内のアミノ酸の部分的な置換、付加または欠失によって入手可能なペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、カルボキシル末端のアミド化(-NH2)、そのペプチドにおけるDアミノ酸の使用、小さな非ペプチジル部分の組み込み、ならびにアミノ酸自体の修飾(例えば、側鎖R基のアルキル化またはエステル化)によって化学的に改変され得る。そのようなアナログ、誘導体およびフラグメントは、天然のオキシトシンペプチドの所望の生物学的活性を実質的に保持するはずである。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、4-セリン-8-イソロイシン-オキシトシンまたは9-デアミノオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、カルベトシンである。本開示は、他の公知のオキシトシンアナログ、例えば、PCT特許出願WO2012/042371およびWisniewskiら、J Med Chem.2014,57:5306-5317(これらの全内容が参照により本明細書中に援用される)に記載されているペプチド性オキシトシンレセプターアゴニストも包含する。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、Wisniewskiら、J Med Chem.2014,57:5306-5317の中の表1~3に記載されている化合物番号1~65から選択される化合物である。いくつかの実施形態において、オキシトシンアナログは、化合物番号31([2-ThiMeGly7]dOT)、化合物番号47(カルバ-6-[Phe2,BuGly7]dOT)、化合物番号55(カルバ-6-[3-MeBzlGly7]dOT)および化合物番号57(メロトシン(merotocin)とも称されるカルバ-1-[4-FBzlGly7]dOT)からなる群より選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、オキシトシンまたはオキシトシンアナログは、異なる原子質量を有する同位体によって置き換えられた1つまたはそれを超える原子を有することによって同位体的に標識される。開示される化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素の同位体(例えば、2Hおよび3H)、炭素の同位体(例えば、13Cおよび14C)、窒素の同位体(例えば、15N)、酸素の同位体(例えば、18Oおよび17O)、リンの同位体(例えば、31Pおよび32P)、フッ素の同位体(例えば、18F)、塩素の同位体(例えば、36Cl)および硫黄の同位体(例えば、35S)が挙げられる。同位体的に標識された化合物は、従来の手法に従って、ある被験体または他の被験体に投与された後、検出されて、有用な診断的および/または治療的な管理データをもたらし得る。さらに、同位体的に標識された化合物は、それを必要とするある被験体または他の被験体に投与されて、治療的に有益な吸収、分布、代謝および/または排泄プロファイルをもたらし得る。オキシトシンペプチド、例えば、ヒトオキシトシンまたはそのアナログもしくは誘導体のすべての同位体バリエーションが、放射性であるか否かを問わず、企図される。
【0045】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
【0046】
「国際単位」(IU、UIまたはIE)は、ビタミン、ホルモンおよびワクチンを定量するために使用される活性の国際的に受け入れられている単位である。国際単位は、複数の原料物質由来の調製物を標準化するために、規定の生物学的アッセイを用いて測定される活性の単位を与える物質の量を定義する。同様に、USP単位は、薬物製品の同一性、強度、品質、純度および稠度を保証するために、米国食品医薬品局と協力して米国薬局方が確立した規定の投与量単位である。一般に、USP単位は、協調を試みたことから国際単位と等しい。慣例により、オキシトシンの場合、1単位の活性は、通常、およそ2マイクログラムの合成オキシトシンペプチドに等しいと定義されているか;または1mgが、500単位に等しい(Stedman’s Medical Dictionary)。ゆえに、本明細書中で使用されるとき、1「IU」または1「国際単位」のオキシトシンペプチドは、およそ2マイクログラムの合成ペプチドと同じ生物学的活性を有するかまたは同じレベルの生物学的作用(例えば、ラット子宮片の収縮反応)をもたらすオキシトシンペプチドの量である。活性がより弱いアナログであれば、同じレベルの生物学的作用を達成するためにより多くの物質を必要とするだろう。薬物の効力の測定は、当業者に周知であり、参照として合成オキシトシンを使用するインビトロアッセイまたはインビボアッセイのいずれかを含み得る。Atke and Vilhardt Acta Endocrinol 1987:115(1):155-60;Engstromら、Eur J Pharmacol 1998:355(2-3):203-10。
【0047】
(マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤)
1つの態様において、本発明は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤および疼痛の処置におけるその使用を提供する。
【0048】
マグネシウムは、生活および健康の多くの局面(例えば、エネルギーの産生、酸素の取り込み、中枢神経系の機能、電解質のバランス、グルコースの代謝および筋肉の活動)に関わる。マグネシウムは、筋痛および神経痛などの疼痛の低減においても臨床上有効であると見出されている。マグネシウム塩は、静脈内に投与されたとき、ならびにラットおよびヒトの脊髄に直接適用されたとき、鎮痛性であると見出されている。これらの効果の基礎をなす機構は不明であるが、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)神経伝達物質レセプターの非競合的遮断もしくはアロステリックモジュレーターとしてのオキシトシンレセプター作用の親和性の増大のいずれか、またはその両方が関わっている可能性が高い。
【0049】
オキシトシンは、ヒトおよびラットの頭痛および頭蓋顔面痛を処置すると知られており、ラットの上肢では、鼻腔内に投与されたとき、オキシトシンレセプターが過剰発現されている慢性疼痛の処置において特に有効である。しかしながら、ヒト患者の頭痛、例えば、片頭痛の処置におけるオキシトシンの鎮痛効果は、投与の直後に生じないことが観察されている。むしろ、有意な痛覚消失の発生までに最初の期間として最大2時間が必要であり、最大の鎮痛効果に達するまでには4時間が必要であるが、この最初の期間中、患者は疼痛に苦しみ続ける。本発明者は、オキシトシンとマグネシウム塩との同時投与が、疼痛強度の予想外の相乗的低下、ならびに鎮痛効果のより速い発生およびより長い持続時間をもたらし得ることを驚くべきことに見出した
【0050】
したがって、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物が提供され、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する。その組成物は、疼痛の処置を必要とする被験体において疼痛を処置するために使用されたとき、以下の結果のうちの1つまたはそれを超える結果をもたらすことができる:(i)個別に投与される当量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の痛覚消失または鎮痛効果の合計を超える全体的な痛覚消失または鎮痛効果(有痛性の刺激(異痛症および/または痛覚過敏)に対する疼痛の強度および/または感度の低下);(ii)個別に投与される当量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩による疼痛頻度の低下の合計を超える、被験体が経験する疼痛の頻度の低下;(iii)単独で投与される当量の任意の鎮痛剤よりも速い痛覚消失または鎮痛効果の発生;および/または(iv)単独で投与される当量の任意の鎮痛剤よりも長く持続する痛覚消失または鎮痛効果。いくつかの実施形態において、その組成物は、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含み、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、結果(i)~(iv)の1つまたはそれを超える結果をもたらす量で存在する。
【0051】
マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のオキシトシンペプチドとマグネシウムとの相対的比率は、最適かつ相乗的な痛覚消失を達成する際に重要である。オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の最適な量は、具体的な疼痛のタイプ、所望の相乗効果のタイプ、および投与経路などの他の因子に依存し得る。例えば、マグネシウムの量は、痛覚消失をより速く発生させるために重要であり得;オキシトシンの量は、痛覚消失をより長く持続させるために重要であり得、オキシトシンとマグネシウムとの相対比は、疼痛の強度を最大限低下させるために重要であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mLのオキシトシンペプチドを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約12mg/mL、約0.05mg/mL~約16mg/mL、約0.1mg/mL~約12mg/mL、約0.1mg/mL~約8mg/mL、約0.1mg/mL~約4mg/mL、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.1mg/mL~約1.6mg/mL、約0.1mg/mL~約1.2mg/mL、約0.1mg/mL~約1mg/mL、約0.1mg/mL~約0.8mg/mL、約0.1mg/mL~約0.4mg/mL、約0.1mg/mL~約0.3mg/mL、約0.2mg/mL~約16mg/mL、約0.2mg/mL~約12mg/mL、約0.2mg/mL~約10mg/mL、約0.2mg/mL~約8mg/mL、約0.2mg/mL~約6mg/mL、約0.2mg/mL~約4mg/mL、約0.2mg/mL~約2mg/mL、約0.2mg/mL~約1.6mg/mL、約0.2mg/mL~約1.2mg/mL、約0.2mg/mL~約1mg/mL、約0.2mg/mL~約0.8mg/mL、約0.2mg/mL~約0.6mg/mL、約0.2mg/mL~約0.4mg/mL、約0.2mg/mL~約0.3mg/mL、約0.3mg/mL~約16mg/mL、約0.3mg/mL~約12mg/mL、約0.3mg/mL~約10mg/mL、約0.3mg/mL~約8mg/mL、約0.3mg/mL~約4mg/mL、約0.3mg/mL~約3mg/mL、約0.3mg/mL~約1mg/mL、約0.3mg/mL~約0.5mg/mL、約0.5mg/mL~約16mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約0.5mg/mL~約1mg/mL、約1mg/mL~約16mg/mL、約1mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLのオキシトシンペプチドを含む。好ましい実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.1mg/mL~約2mg/mL、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.2mg/mL~約1.2mg/mLのオキシトシンペプチドを含む。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
【0053】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約5IU/mL~約8000IU/mLのオキシトシンペプチドを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約500IU/mL~約6000IU/mL、約25IU/mL~約8000IU/mL、約50IU/mL~約6000IU/mL、約50IU/mL~約4000IU/mL、約50IU/mL~約2000IU/mL、約50IU/mL~約1000IU/mL、約50IU/mL~約800IU/mL、約50IU/mL~約600IU/mL、約50IU/mL~約500IU/mL、約50IU/mL~約400IU/mL、約50IU/mL~約200IU/mL、約50IU/mL~約150IU/mL、約100IU/mL~約8000IU/mL、約100IU/mL~約6000IU/mL、約100IU/mL~約5000IU/mL、約100IU/mL~約4000IU/mL、約100IU/mL~約3000IU/mL、約100IU/mL~約2000IU/mL、約100IU/mL~約1000IU/mL、約100IU/mL~約800IU/mL、約100IU/mL~約600IU/mL、約100IU/mL~約500IU/mL、約100IU/mL~約400IU/mL、約100IU/mL~約300IU/mL、約100IU/mL~約200IU/mL、約100IU/mL~約150IU/mL、約150IU/mL~約8000IU/mL、約150IU/mL~約6000IU/mL、約150IU/mL~約5000IU/mL、約150IU/mL~約4000IU/mL、約150IU/mL~約2000IU/mL、約150IU/mL~約1500IU/mL、約150IU/mL~約500IU/mL、約150IU/mL~約250IU/mL、約250IU/mL~約8000IU/mL、約250IU/mL~約5000IU/mL、約250IU/mL~約2500IU/mL、約250IU/mL~約500IU/mL、約500IU/mL~約8000IU/mL、約500IU/mL~約5000IU/mL、または約500IU/mL~約2500IU/mLのオキシトシンペプチドを含む。好ましい実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約50IU/mL~約1000IU/mL、約75IU/mL~約750IU/mL、または約100IU/mL~約600IU/mLのオキシトシンペプチドを含む。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。
【0054】
疼痛を処置する際に使用されると相乗的な痛覚消失をもたらすならば、任意のマグネシウム塩(例えば、水溶性マグネシウム塩)を、本発明のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中にマグネシウムを提供するために使用してよい。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤において使用されるマグネシウム塩は、いくつかの因子(例えば、製剤が投与されたときに送達され得る遊離マグネシウムイオンの量、液体製剤用の媒質におけるマグネシウム塩の溶解度、対イオンの酸性度/塩基性度、および/または塩の解離定数)に基づいて選択され得る。例えば、液体製剤では、マグネシウム塩は、オキシトシンペプチドとともに相乗的な痛覚消失をもたらすために必要とされるマグネシウムイオン濃度を送達するために液体媒質に十分に可溶性である必要がある。マグネシウム塩を選択する際、他の因子(例えば、製剤中の他の物質との適合性、および対イオンが製剤において他の機能を発揮する能力)も考慮され得る。例えば、クエン酸マグネシウムは、望ましい量のマグネシウムまたは望ましいマグネシウムイオン濃度を提供するのに十分、水溶液に可溶性であり;クエン酸塩は、薬学的に許容され得;クエン酸塩は、緩衝剤の一部であり得;クエン酸マグネシウムは、製剤にとって好ましい風味を付加し得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウムイオンは、1種またはそれを超えるマグネシウム塩を使用することによって提供され得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウム塩は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を調製する際に最初に使用されたマグネシウム塩であってもよいし、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の調製中にインサイチュで形成されてもよい。例えば、塩化マグネシウムが、製剤の調製において最初に使用され得;その製剤にクエン酸を添加する際に、クエン酸マグネシウムがインサイチュで形成され得る。そのような場合、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤中のマグネシウムイオンは、塩化マグネシウムとクエン酸マグネシウムとの両方によって提供される。
【0055】
本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤において使用されるマグネシウム塩は、商業的供給源から入手され得るか、または当該分野で公知の方法に従って調製され得る。例えば、クエン酸マグネシウムは、Staszczuk Pら、Physicochem Probl Mineral Proc 37:149-158(2003)、米国特許第1,936,364号および米国特許第2,260,004号に記載されている手順に従って調製され得る。
【0056】
したがって、いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クエン酸マグネシウムを含む。そのマグネシウム塩の濃度は、その塩の重量基準の濃度もしくはパーセンテージ、またはその塩によって提供されるMgもしくはMg2+の当量濃度もしくは当量の濃度によって計測され得る。液体製剤の場合、重量パーセント(w/v)は、100mLの溶液中のマグネシウム塩のグラム量を意味する。例えば、10%(w/v)クエン酸マグネシウム溶液は、100mLの溶液中に10gのクエン酸マグネシウムを含む。クエン酸マグネシウムの代わりに他のマグネシウム塩が使用される場合、本明細書中に記載される方法および製剤において使用するために企図されるマグネシウム濃度は、クエン酸マグネシウムを本明細書中に列挙される量で使用することによって生じる濃度に等しい。
【0057】
上記製剤中に存在するマグネシウムの量は、重量パーセント(w/v)(100mLの溶液あたりのマグネシウムまたはMg2+のグラム)、mg/mL(1ミリリットルの溶液あたりのマグネシウムまたはMg2+のミリグラム)またはモル濃度(1リットルの溶液あたりのマグネシウムもしくはMg2+のモルと定義される「M」;または1リットルの溶液あたりのマグネシウムもしくはMg2+のミリモルと定義される「mM」)でも表現され得る。クエン酸マグネシウム(無水二塩基性クエン酸マグネシウム(anhydrous magnesium citrate dibasic)、分子量:214.4)の溶液によって提供されるマグネシウムまたはMg2+(原子量:24.3)の当量は、以下のように算出され得る:
[%Mg2+(w/v)]=(24.3/214.4)*[%クエン酸Mg(w/v)]=0.113*[%クエン酸Mg(w/v)]
mM Mg2+=411.5*[%Mg2+(w/v)]=46.6*[%クエン酸Mg(w/v)]
mg/mL Mg2+=10*[%Mg2+(w/v)]=0.0243*[mM Mg2+]=1.13*[%クエン酸Mg(w/v)]
【0058】
表Aは、重量パーセント(w/v)を単位とするクエン酸マグネシウムの例示的な濃度と、重量パーセント(w/v)、mg/mLおよびmMを単位とするマグネシウムまたはMg
2+の量との対応を提供している。
【表A】
【0059】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムを提供する量でクエン酸マグネシウムを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する量でクエン酸マグネシウムを含む。マグネシウムイオンの量は、任意の形態で、例えば、液体製剤中の溶媒和物もしくは配位錯体におけるマグネシウムイオンとして、または固体製剤中の結晶格子におけるマグネシウムイオンとして、マグネシウムイオンを含み得る。いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約400mM~約600mMのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量で、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび酢酸マグネシウムからなる群より選択される1種またはそれを超えるマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約400mM~約600mMのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量で塩化マグネシウムおよび/またはクエン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量でクエン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約10mg/mL~約250mg/mLのクエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム,MW214.4)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%~約25%(w/v)のクエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム,MW214.4)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%~約15%、約1%~約15%、約1%~約12%、約1%~約10%、約1%~約8%、約1%~約5%、約2%~約15%、約3%~約15%、約4%~約15%、約4%~約14%、約4%~約12%、約4%~約10%、約4%~約8%、約5%~約15%、約5%~約12%、約5%~約10%、約8%~約15%、約8%~約12%、約8%~約10%、約10%~約15%、約10%~約14%、約10%~約12%、約11%~約15%、または約11%~約13%(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%または約15%(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチドおよび約1%~約25%(好ましくは、約10%~約14%または約12%)(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約225IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび約1%~約25%(好ましくは、約10%~約14%または約12%)(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む液体製剤である。
【0060】
いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量で塩化マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約10mg/mL~約250mg/mLの塩化マグネシウム(例えば、塩化マグネシウム六水和物,MW203.3)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%~約25%(w/v)の塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O,MW203.3)を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%~約15%、約1%~約15%、約1%~約12%、約1%~約10%、約1%~約8%、約1%~約5%、約2%~約15%、約3%~約15%、約4%~約15%、約4%~約14%、約4%~約12%、約4%~約10%、約4%~約8%、約5%~約15%、約5%~約12%、約5%~約10%、約8%~約15%、約8%~約12%、約8%~約10%、約10%~約15%、約10%~約14%、約10%~約12%、約11%~約15%、または約11%~約13%(w/v)の塩化マグネシウム六水和物を含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、または約15%(w/v)の塩化マグネシウム六水和物を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチドおよび約1%~約25%(好ましくは、約8%~約12%または約10%)(w/v)の塩化マグネシウム六水和物を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約0.5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約225IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび約1%~約25%(好ましくは、約8%~約12%または約10%)(w/v)の塩化マグネシウム六水和物を含む液体製剤である。
【0061】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム(magnesium maltate)、マグネシウムタウレート、グルコン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウムおよびピロリン酸マグネシウムからなる群より選択される1種またはそれを超えるマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムを提供する量でマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、その組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する量でマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する量で1種またはそれを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、その組成物は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する量で1種またはそれを超えるマグネシウム塩を含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mL(または約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約30mg/mL、約8mg/mL~約30mg/mL、約10mg/mL~約30mg/mL、好ましくは、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約13mg/mLまたは約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mL~約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1mg/mL~約30mg/mL(好ましくは、約11mg/mL~約15mg/mLまたは約13mg/mLまたは約12mg/mL)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約750IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび1種またはそれを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約50mM~約1200mM(または約100mM~約1200mM、約150mM~約1200mM、約200mM~約1200mM、約300mM~約1200mM、約400mM~約1200mM、好ましくは、約400mM~約600mMまたは約500mM)のマグネシウムまたはMg2+を提供する量で約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約750IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンペプチドおよび1種またはそれを超えるマグネシウム塩(例えば、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウム)を含む液体製剤である。
【0062】
本明細書中で詳述されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物中のオキシトシンペプチドおよびマグネシウムまたはマグネシウムイオンの相対量は、重量比によって定義されてもよいし、モル比によって定義されてもよい。製剤または組成物中のオキシトシンペプチドの量とマグネシウムの量またはマグネシウム塩によって提供されるマグネシウムイオンの量との重量比は、「OT/Mg(w)比」と称される。例えば、約1:40のOT/Mg(w)比を有するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物において、その製剤または組成物中に存在する各1mgのオキシトシンペプチドに対して、その製剤または組成物中に存在するマグネシウム塩は、約40mgのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する。製剤または組成物中のオキシトシンペプチドの量とマグネシウムの量またはマグネシウム塩によって提供されるマグネシウムイオンの量とのモル比は、「OT/Mg(m)比」と称される。例えば、約1:1600のOT/Mg(m)比を有するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物において、その製剤または組成物中に存在する各1μmolのオキシトシンペプチドに対して、その製剤または組成物中に存在するマグネシウム塩は、約1600μmolのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物が提供され、ここで、その製剤または組成物は、約1:1~約1:1000のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:2~約1:200のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの好ましい実施形態において、その製剤または組成物は、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45、または約1:50のOT/Mg(w)比を有する。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:2~約1:1000、約1:2~約1:800、約1:2~約1:500、約1:2~約1:250、約1:2~約1:150、約1:2~約1:100、約1:2~約1:80、約1:2~約1:60、約1:2~約1:50、約1:2~約1:40、約1:2~約1:30、約1:2~約1:20、約1:2~約1:10、約1:2~約1:5、約1:5~約1:1000、約1:5~約1:800、約1:5~約1:500、約1:5~約1:200、約1:5~約1:100、約1:5~約1:80、約1:5~約1:60、約1:5~約1:50、約1:5~約1:40、約1:5~約1:30、約1:5~約1:20、約1:5~約1:10、約1:10~約1:1000、約1:10~約1:800、約1:10~約1:500、約1:10~約1:200、約1:10~約1:100、約1:10~約1:80、約1:10~約1:60、約1:10~約1:50、約1:10~約1:40、約1:10~約1:30、約1:10~約1:20、約1:20~約1:1000、約1:20~約1:800、約1:20~約1:500、約1:20~約1:200、約1:20~約1:100、約1:20~約1:80、約1:20~約1:70、約1:20~約1:60、約1:20~約1:50、約1:20~約1:40、約1:20~約1:30、約1:30~約1:1000、約1:30~約1:800、約1:30~約1:500、約1:30~約1:200、約1:30~約1:100、約1:30~約1:80、約1:30~約1:70、約1:30~約1:60、約1:30~約1:50、約1:30~約1:40、約1:35~約1:45、約1:40~約1:1000、約1:40~約1:800、約1:40~約1:500、約1:40~約1:200、約1:40~約1:100、約1:40~約1:80、約1:40~約1:70、約1:40~約1:60、約1:40~約1:50、約1:50~約1:1000、約1:50~約1:800、約1:50~約1:500、約1:50~約1:200、約1:50~約1:100、約1:50~約1:90、約1:50~約1:80、約1:50~約1:70、約1:50~約1:60、約1:60~約1:1000、約1:60~約1:800、約1:60~約1:500、約1:60~約1:200、約1:60~約1:100、約1:60~約1:90、約1:60~約1:80、約1:60~約1:70、約1:80~約1:1000、約1:80~約1:800、約1:80~約1:500、約1:80~約1:200、約1:80~約1:100、約1:100~約1:1000、約1:100~約1:800、約1:100~約1:500、約1:100~約1:200、約1:200~約1:1000、約1:200~約1:800、約1:200~約1:500、または約1:500~約1:1000のOT/Mg(w)比を有する。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンであり、かつ/またはそのマグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムである。
【0064】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物が提供され、ここで、その製剤または組成物は、約1:40~約1:40,000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:80~約1:8000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの好ましい実施形態において、その製剤または組成物は、約1:1200、約1:1400、約1:1600、約1:1800、または約1:2000のOT/Mg(m)比を有する。いくつかの実施形態において、その製剤または組成物は、約1:80~約1:40000、約1:80~約1:30000、約1:80~約1:20000、約1:80~約1:10000、約1:80~約1:7500、約1:80~約1:5000、約1:80~約1:3000、約1:80~約1:2000、約1:80~約1:1600、約1:80~約1:1200、約1:80~約1:800、約1:80~約1:400、約1:80~約1:200、約1:200~約1:40000、約1:200~約1:30000、約1:200~約1:20000、約1:200~約1:10000、約1:200~約1:5000、約1:200~約1:3000、約1:200~約1:2400、約1:200~約1:2000、約1:200~約1:1600、約1:200~約1:1200、約1:200~約1:800、約1:200~約1:400、約1:400~約1:40000、約1:400~約1:30000、約1:400~約1:20000、約1:400~約1:8000、約1:400~約1:4000、約1:400~約1:3000、約1:400~約1:2400、約1:400~約1:2000、約1:400~約1:1600、約1:400~約1:1200、約1:400~約1:800、約1:800~約1:40000、約1:800~約1:30000、約1:800~約1:20000、約1:800~約1:10000、約1:800~約1:5000、約1:800~約1:3000、約1:800~約1:2400、約1:800~約1:2000、約1:800~約1:1600、約1:800~約1:1200、約1:1200~約1:40000、約1:1200~約1:30000、約1:1200~約1:20000、約1:1200~約1:10000、約1:1200~約1:5000、約1:1200~約1:4000、約1:1200~約1:3000、約1:1200~約1:2400、約1:1200~約1:2000、約1:1200~約1:1600、約1:1400~約1:1800、約1:1600~約1:40000、約1:1600~約1:30000、約1:1600~約1:20000、約1:1600~約1:10000、約1:1600~約1:5000、約1:1600~約1:3000、約1:1600~約1:2400、約1:1600~約1:2000、約1:2000~約1:40000、約1:2000~約1:30000、約1:2000~約1:20000、約1:2000~約1:10000、約1:2000~約1:5000、約1:2000~約1:4000、約1:2000~約1:3000、約1:2000~約1:2400、約1:2400~約1:40000、約1:2400~約1:30000、約1:2400~約1:20000、約1:2400~約1:10000、約1:2400~約1:5000、約1:2400~約1:4000、約1:2400~約1:3000、約1:3000~約1:40000、約1:3000~約1:30000、約1:3000~約1:20000、約1:3000~約1:10000、約1:3000~約1:4000、約1:4000~約1:40000、約1:4000~約1:30000、約1:4000~約1:20000、約1:4000~約1:10000、約1:8000~約1:40000、約1:8000~約1:30000、約1:8000~約1:20000、または約1:10000~約1:40000のOT/Mg(m)比を有する。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンであり、かつ/またはマグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムである。
【0065】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、1つまたはそれを超える薬学的に許容され得るキャリア(ゆえに薬学的組成物を構成する)および必要に応じて他の成分(例えば、賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、ならびに/あるいは安定性、送達、吸収、半減期、有効性、薬物動態および/もしくは薬力学を高め得るか、有害な副作用を減少させ得るか、または薬学的使用に対して他の利点を提供し得る他の添加物)をさらに含む。例示的な賦形剤としては、可溶化剤、界面活性物質およびキレート剤が挙げられる。例えば、製剤は、メチル-β-シクロデキストリン(Me-β-CD)、エデト酸二ナトリウム、アルギニン、ソルビトール、NaCl、メチルパラベンナトリウム(MP)、プロピルパラベンナトリウム(PP)、クロロブタノール(CB)、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、エチルアルコール、ジデカノイルL-α-ホスファチジルコリン(DDPC)、ポリソルベート、ラクトース、シトレート、タルトレート、アセテートおよび/またはホスフェートを含み得る。
【0066】
液体キャリアとしては、特に(等張性のとき)溶液に対して水、食塩水、デキストロース水溶液およびグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。そのキャリアは、石油、動物、植物または合成起源の油(例えば、落花生油、オリーブ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)をはじめとした様々な油からも選択され得る。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、穀粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、滅菌化などの従来の薬学的プロセスに供され得、従来の薬学的添加物(例えば、保存剤、安定化剤、還元剤、抗酸化剤、キレート剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、ゲル化剤(jelling agents)、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤など)を含み得る。液体キャリアは、体液に対して低張性であってもよいし、等張性であってもよく、3.5~8.5の範囲内のpHを有し得る。ペプチドおよび/またはタンパク質に基づく組成物、特に薬学的組成物の調製における添加物の使用は、当該分野で周知である。いくつかの実施形態において、組成物は、約2~約7のpHを有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約4~約7のpHを有する。好ましい実施形態において、製剤/組成物のpHは、約4.5である。
【0067】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、(A)~(K)から選択される1つまたはそれを超える粘膜送達増強剤をさらに含み得る:(A)可溶化剤;(B)電荷改変剤;(C)pH調整剤;(D)分解酵素阻害剤;(E)粘液溶解剤または粘液除去剤(mucus clearing agents);(F)線毛制止剤(ciliostatic agents);(G)膜透過増強剤;(H)上皮の接合部の生理機能の調節剤(例えば、一酸化窒素(NO)刺激物質、キトサンおよびキトサン誘導体);(I)血管拡張剤;(J)選択的輸送増強剤;および(K)オキシトシンペプチドと効果的に組み合わされるか、会合されるか、含有されるか、被包されるか、または結合して、粘膜送達の増強のための活性な作用物質を安定化させる、安定化送達ビヒクル、キャリア、担体または複合体形成種。グループ(G)における膜透過増強剤は、(i)界面活性物質、(ii)胆汁酸塩、(iii)リン脂質もしくは脂肪酸添加物、混合ミセル、リポソームまたはキャリア、(iv)アルコール、(v)エナミン、(iv)NOドナー化合物、(vii)長鎖両親媒性分子、(viii)小分子疎水性透過増強剤;(ix)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体;(x)アセト酢酸のグリセロールエステル、(xi)シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン誘導体、(xii)中鎖脂肪酸、(xiii)キレート剤、(xiv)アミノ酸またはその塩、(xv)N-アセチルアミノ酸またはその塩、(xvi)選択された膜成分に対して分解性の酵素、(xvii)脂肪酸合成の阻害剤、(xviii)コレステロール合成の阻害剤;または(xiv)(i)~(xviii)の膜透過増強剤の任意の組み合わせであり得る。本発明の様々な実施形態において、オキシトシンペプチドは、(A)~(K)に列挙された粘膜送達増強剤の1、2、3、4つまたはそれを超えるものと組み合わされ得る。これらの粘膜送達増強剤は、単独でまたは共に、オキシトシンペプチドと混和され得るか、またはそうでなければ薬学的に許容され得る製剤化ビヒクルまたは送達ビヒクルにおいてそれらと組み合わされ得る。本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、それを哺乳動物被験体の粘膜表面(例えば、鼻腔の粘膜表面)に送達した後に、オキシトシンペプチドのバイオアベイラビリティを上昇させ得る。
【0068】
本明細書中で論じられるキャリアおよび添加物のリストは、決して完全ではなく、当業者は、医薬品において許可されている化学物質、ならびに局所製剤および非経口製剤において米国食品医薬品局が現在許可している化学物質、ならびに将来許可されるようになる化学物質のGRAS(一般的に安全と認められるもの(generally regarded as safe))リストからキャリアおよび賦形剤を選択することができる(Wangら(1980)J.Parent.Drug Assn.,34:452-462;Wangら(1988)J.Parent.Sci.and Tech.,42:S4-S26も参照のこと)。
【0069】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物(ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する)は、クロロブタノール、ベンザルコニウム、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、酢酸、クエン酸、グリセロール、塩化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、ソルビトールおよび水からなる群より選択される1つまたはそれを超える溶媒または賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クロロブタノール、酢酸および水をさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、キトサン含有賦形剤(例えば、ChiSys(登録商標)、http://www.archimedespharma.com/productArchiDevChiSys.html)をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、約1%のキトサン含有賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、その優れた吸収増強能力のために、キトサングルタミン酸塩が経鼻送達に好ましいことがある。いくつかの実施形態において、キトサンコポリマーナノ粒子(例えば、キトサングルタミン酸塩および負に帯電したポリマー(例えば、トリポリリン酸五ナトリウム)を含むナノ粒子)が使用され得る。チオール化されたキトサン(例えば、2-イミノチオランで共有結合的に改変されたキトサン)は、インスリンおよび還元型グルタチオンを含む微小粒子において使用されており、本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物における賦形剤としても有用であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、そのオキシトシンペプチド製剤が鼻腔においてゲルを形成するがゆえにオキシトシンペプチドの経鼻吸収を増強するように、1つまたはそれを超えるゲル化剤をさらに含む。本明細書中に記載される製剤および方法において有用なゲル化系には、任意の公知のゲル化系、例えば、化学的に反応性のペクチンベースのゲル化系(例えば、PecSys(商標),Archimedes Pharma)および熱反応性ポリマーゲル化系(例えば、Pluronic(登録商標)F127,BASF)が含まれ得る。PecSys(商標)は、各液滴が鼻粘膜においてカルシウムイオンと接触するとゲル化する微細なミストとして送達される低粘度のペクチンベース水溶液である。他の低メトキシペクチンも、例えば、約1%濃度において、使用され得る。Pluronic(登録商標)F127は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーを含む。ゲル化温度は、構成要素の比および最終的な製剤中に使用されるコポリマーの量に応じて変動する。ヒトの鼻腔におけるゲル化は、例えば、ビタミンB12ゲルサプリメント(EnerB,Nature’s Bounty,NY)ならびに18%wt/vol Pluronic(登録商標)F127および0.3%wt/vol Carbopol(アニオン性生体接着性ポリマーC934P)を含むゲル化スマトリプタンにおいて使用される、およそ18~20%wt/volのPluronic(登録商標)F127について実証されている。モノマーの比および濃度は、鼻腔内の34℃という標準的な温度付近である25~37℃でのゲル化を保証するように、意図されるオキシトシン製剤に対して調整され得る。ゲル化温度が、25℃未満である場合、その製剤は、室温においてゲル化し得る;ゲル化温度が、37℃より高い場合、その製剤は、鼻粘膜と接触しても完全にゲル化しないだろう。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、Carbopolなどの粘膜付着性物質をさらに含み得る。粘膜接着剤の添加、例えば、最大0.5%のCarbopolの添加によって、ゲル化温度がさらに低下し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート-80)および1つまたはそれを超える緩衝剤、安定剤または等張化剤(tonicifier)などの界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、噴射剤をさらに含む。鼻腔用スプレー溶液のpHは、必要に応じて約pH3.0~8.5であるが、所望であれば、pHは、帯電した高分子種(例えば、治療的なタンパク質またはペプチド)を実質的に電離していない状態で送達するのを最適化するように調整される。使用される薬学的溶媒もまた、わずかに酸性の水性緩衝液(pH3~6)であり得る。これらの組成物において使用するのに適した緩衝剤は、上に記載されたとおりであるか、またはそうでなければ当該分野で公知のとおりである。化学安定性を高めるためまたは維持するために、保存剤、界面活性物質、分散剤またはガスをはじめとした他の構成要素を加えてもよい。好適な保存剤としては、フェノール、メチルパラベン、パラベン、m-クレゾール、チオメルサール、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面活性物質としては、オレイン酸、トリオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート、レシチン、ホスホチジルコリンならびに様々な長鎖ジグリセリドおよびリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。好適な分散剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが挙げられるが、これに限定されない。好適なガスとしては、窒素、ヘリウム、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、二酸化炭素、空気などが挙げられるが、これらに限定されない。好適な安定剤および等張化剤(tonicifying agent)としては、糖および他のポリオール、アミノ酸ならびに有機塩および無機塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、クエン酸塩、コハク酸塩またはピロリン酸塩をさらに含む。
【0073】
オキシトシンペプチドの粘膜送達をさらに増強するために、酵素阻害剤、特にプロテアーゼ阻害剤が、さらに上記製剤に含められ得る。プロテアーゼ阻害剤としては、アンチパイン、アルファメニン(arphamenine)AおよびB、ベンズアミジンHCl、AEBSF、CA-074、カルパイン阻害剤IおよびII、カルペプチン(calpeptin)、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、ボロロイシン(boroleucine)、カプトプリル、クロロアセチル-HOLeu-Ala-Gly-NH2、DAPT、ジプロチン(diprotin)AおよびB、エベラクトン(ebelactone)AおよびB、ホロキシミチン(foroxymithine)、ロイペプチン、ホスホラミドン、アプロチニン、ピューロマイシン、BBI、ダイズトリプシン阻害剤、フッ化フェニルメチルスルホニル、E-64、キモスタチン、1,10-フェナントロリン、EDTAならびにEGTAが挙げられ得るが、これらに限定されない。バシトラシンなどの他の酵素阻害剤も上記製剤に含められてもよい。
【0074】
オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の粘膜表面内への送達もしくは粘膜表面を越える送達および/または吸収を増強するために、吸収増強剤が上記製剤に含められ得る。これらの増強剤は、組成物の放出または溶解度(例えば、製剤送達ビヒクルからの)、拡散速度、透過の能力およびタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、有効な半減期、ピークまたは持続する濃度レベル、クリアランスならびに他の所望の粘膜送達特性(例えば、送達部位において計測されるとき)を高め得る。ゆえに、粘膜送達の増強は、種々の機構のいずれかによって、例えば、オキシトシンペプチドの拡散、輸送、持続性または安定性を高めること、膜流動性を高めること、カルシウムおよび細胞内または傍細胞の透過を制御する他のイオンの利用可能性または作用を調節すること、粘膜の構成要素(例えば、脂質)を可溶化すること、粘膜組織における非タンパク質およびタンパク質のスルフヒドリルレベルを変更すること、粘膜表面を越える水分流動を増加させること、上皮の接合部の生理機能を調節すること、粘膜上皮を覆っている粘液の粘度を低下させること、粘液線毛のクリアランス速度を低下させること、および他の機構によって生じ得る。
【0075】
粘膜吸収を増強する化合物としては、界面活性物質、胆汁酸塩、ジヒドロフシデート、生体接着剤/粘膜付着性物質、リン脂質添加物、混合ミセル、リポソームまたはキャリア、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NOドナー化合物、長鎖両親媒性分子、小分子疎水性透過増強剤;ナトリウム誘導体またはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンまたはベータ-シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸またはその塩、N-アセチルアミノ酸またはその塩、粘液溶解剤、選択された膜成分に特異的に標的化された酵素、脂肪酸合成の阻害剤およびコレステロール合成の阻害剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書中に記載されるおよび/または企図されるすべてのペプチドが、当該分野で広く公知である自動または手動の固相合成技術を用いる化学合成によって調製され得る。それらのペプチドは、当該分野で公知の分子組換え法を用いても調製され得る。
【0077】
(送達系)
マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)に適合し得る。いくつかの実施形態において、組成物はさらに粘膜送達用のデバイスを構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、頬側および/または舌下の粘膜送達に適合しており、その組成物はさらに、頬側および/または舌下の粘膜投与用のデバイス(例えば、単位用量容器、ポンプスプレー、滴注器、スクイーズボトル、保存剤非含有エアレススプレー、ネブライザー、用量吸入器(dose inhalers)および加圧式用量吸入器)を構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、眼球送達に適合しており、その組成物はさらに、結膜投与用のデバイス(例えば、滴注器またはスクイーズボトル)を構成し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、鼻腔内投与に適合しており、その組成物はさらに、鼻腔内投与用のデバイス(例えば、滴注器、ポンプスプレー、スクイーズボトル、保存剤非含有エアレススプレーまたは鼻腔用ポンプ装置、例えば、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える鼻腔用ポンプ装置)を構成し得る。
【0078】
鼻腔内薬物送達は、長年、研究開発のトピックであるが、物質を効果的に送達するキャリアシステムが考案されたのは、たった10年以内のことである(Sayani and Chien,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1996,13:85-184)。鼻腔内送達は、比較的高いバイオアベイラビリティ、迅速な吸収動態および肝臓での初回通過効果の回避をはじめとしたいくつかの有益な特徴を有する。いくつかの態様では、鼻腔内投与によって、オキシトシンペプチドを鼻腔に送達するのが可能になり得、他の態様では、鼻腔内投与によって、鼻および/または脳の脳神経への標的化送達が可能になり得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、オキシトシンペプチドの鼻腔内投与は、嗅覚の神経系もしくは三叉神経系のいずれかまたは両方を標的化し得る。オキシトシンペプチドは、任意の適用可能な形態で鼻腔内に送達され得、その形態としては、液体製剤、固体製剤(例えば、乾燥粉末製剤)、ゲル製剤またはエマルジョン製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
オキシトシンとマグネシウム塩との組み合わせが鼻腔内に投与される実施形態において、組成物は、分散剤および/または生理的に許容され得る希釈剤と組み合わされた液体エアロゾル製剤として調製され得る。あるいは、乾燥粉末エアロゾル製剤が企図され、その製剤は、微粉化された固体の形態の主題化合物、およびその乾燥粉末粒子の迅速な分散を可能にする分散剤を含み得る。液体エアロゾル製剤でも乾燥粉末エアロゾル製剤でも、その製剤は、エアロゾル化された用量が確実に鼻腔路の粘膜または肺に到達するために、小さな液体粒子または固体粒子にエアロゾル化される。用語「エアロゾル粒子」は、標的化された粘膜または肺胞膜への鼻(約10ミクロンからの範囲内)または肺(約2~5ミクロンの範囲内)の分布にとって十分に小さな粒子直径の好適な液体粒子または固体粒子を説明するために本明細書中で使用される。他の考慮すべき事柄としては、送達デバイスの構造、製剤中のさらなる構成要素、および粒子の特性が挙げられる。薬物の経鼻投与または肺投与のこれらの態様は、当該分野で周知であり、製剤化の操作、エアロゾル化の手段および送達デバイスの構造は、当該分野の通常の技術レベルの範囲内である。
【0080】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物が提供され、ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在し、その製剤または組成物はさらに、鼻腔内送達用のデバイスを含む。そのデバイスは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の鼻腔内投与に適した任意のデバイスであってよい。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔内の特定の領域へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔の下部3分の2へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔の上部3分の1へのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の送達に適している。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、鼻腔路全体へのオキシトシンペプチドの送達に適している。
【0081】
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、鼻腔用ポンプ装置である。いくつかの実施形態において、その鼻腔用ポンプ装置は、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。いくつかの実施形態において、そのポンプアクチュエータは、特定の液滴サイズ分布で特定体積(例えば、約50~約150μL、好ましくは、約50μLまたは約100μL)を送達するように計量供給する。いくつかの実施形態において、その鼻腔用ポンプ装置は、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトル、例えば、Aptar Pharmaが販売するEquadelポンプを備える。いくつかの実施形態において、経鼻投与用のデバイスは、閾値に達したら、ポンプにかかる圧力に関係なく機能する。大型哺乳動物における投与の場合、その鼻腔用ポンプ装置は、より大きな体積(例えば、約100μL~約600μLまたはそれを超える体積)を送達するように計量供給するポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備え得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、複数用量の薬物製剤を送達するようにデザインされている。例えば、鼻腔用ポンプ装置は、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備え得、ここで、その貯蔵ボトルは、複数用量の液体製剤を保持し、ポンプアクチュエータは、貯蔵ボトルに保持された液体製剤の一部である特定体積を送達するように計量供給する。いくつかの実施形態において、ポンプアクチュエータは、1スプレーあたり約50μLの液体製剤を送達するように計量供給する。鼻腔用ポンプ装置は、貯蔵ボトル内への夾雑物(例えば、細菌)の進入を減少させるために、逆流を防止するためのフィルターを備え得る。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置は、液体製剤を送達するための無金属流路(例えば、プラスチック流路)を備える。いくつかの実施形態において、ポンプ装置は、ガンマ線(鼻腔用装置を滅菌するために使用される)に対して安定なプラスチック材料を使用している。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスには、ポンプアクチュエータに微生物フィルターおよび自動ブロッキング機構を備える複数用量投与ポンプ、例えば、米国特許第5,988,449号に記載されているスプレーデバイスが備え付けられている。
【0083】
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、呼気によって作動する(breath-actuated)鼻腔用送達デバイス(例えば、米国特許第7,784,460号および同第7,854,227号に記載されているデバイス)である。そのようなデバイスは、鼻腔内の標的部位深部への送達を改善し得る。いくつかの実施形態において、標準的な計量用量スプレーデバイスは、患者がマウスピース内に息を吹き込んでデバイスを作動させるハウジングに組み込まれている。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、従来の機械的スプレーポンプ(例えば、Aptar Pharmaが販売するEquadelポンプ)、チャージ可能なバネ(chargeable spring)および呼気作動機構を組み込んだ、円錐形の密封ノーズピースおよびマウスピースを備える。そのシステムは、単回用量または複数回用量の送達に使用され得る。そのような液体送達デバイスの一例は、OptiNoseが販売するOptiMist(商標)デバイスである。使用する際には、このデバイスのノーズピースを鼻孔に挿入し、マウスピースに向かって息を吐く。これによって、軟口蓋が閉じ、鼻孔に圧力がかかり、鼻中隔の後ろに空気の流れをもたらす通路が開き、空気が他方の鼻孔から出ることができる(二方向の流れ)。そのデバイスは、呼気によって作動するので、小さな粒子は、肺に入ることができない。流速および粒径を改変することによって、特定の鼻領域の標的化が可能になる。
【0084】
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物の単回投与にふさわしい単位用量の計量供給スプレーデバイスである。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、オキシトシンペプチドの反復投与にふさわしい複数用量の計量供給スプレーポンプ装置である。
【0085】
滴径、プルーム体積(plume volume)および流速は、特定の鼻領域を標的化するために改変され得る。液体スプレーは、嗅上皮および/または気道上皮を標的化するために5~50ミクロンの液滴サイズを提供し得る。より大きな液滴は、主に鼻咽頭に落ちて嚥下され、より小さな液滴は、肺組織を標的化する。滴径を特定するために空気力学的質量中央径(Mass Median Equivalent Aerodynamic Diameter)(MMAD)が使用される。荷電ペプチドをほぼ電離していない状態で送達するために、鼻腔用スプレーのpHが最適化される。鼻は、通常、約3~8のpHを有する溶液を許容する。鼻粘膜は、通常、飽和が起きるまでおよび液体が鼻の外にしたたり始めるまで、およそ100μLの体積を吸収し得る。ゆえに、プルーム体積は、最大100μL(および100μLを含む)であり得る。大型哺乳動物において使用する場合、プルーム体積は、最大150μL(および150μLを含む)またはそれを超える(例えば、600μLまたはそれを超える)体積であり得る。乳児および小児での使用の場合、または小動物(例えば、げっ歯類、ネコ)における獣医学的使用の場合、より小さなプルーム体積(5~50μL)が使用され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、患者の服薬遵守を容易にするために人間工学的に設計される(例えば、側面の駆動トリガー機構を有するポンプ装置)。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、ポンプ装置内に空気を進入させないがゆえに空気で運ばれる微生物による汚染を防ぐ閉鎖系として作動する計量供給スプレーポンプを備える。いくつかの実施形態において、鼻腔内送達用のデバイスは、フィルターとともに作動する計量供給スプレーポンプを備える。通過する空気は、ポンプ内にアセンブルされたフィルターを通って吸い込まれ、それによって、空気で運ばれる微生物がポンプ装置の外に維持される。いくつかの実施形態において、鼻腔用ポンプ装置を備える鼻腔内送達デバイスは、データの伝送および処置のモニタリングを容易にし得るマイクロ電子デバイスをさらに備え得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含み、ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、本明細書中に記載される鼻腔内送達用のデバイスのうちのいずれか1つに含められ、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の濃度は、デバイスと濃度の各組み合わせおよびすべての組み合わせが個別に記載されているかのように、本明細書中に記載される濃度範囲のいずれかの範囲内である。
【0088】
(方法)
1つの態様において、本発明は、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法を提供し、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の痛覚消失または鎮痛効果の合計を超える全体的な痛覚消失または鎮痛効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩による有痛性の刺激(異痛症および/または痛覚過敏)に対する疼痛の強度または感度の低下の合計を超える、被験体が経験する有痛性の刺激(異痛症および/または痛覚過敏)に対する疼痛の強度または感度の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩による疼痛頻度の低下の合計を超える、被験体が経験する疼痛の頻度の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量の任意の鎮痛剤よりも速い痛覚消失または鎮痛効果の発生をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量の任意の鎮痛剤よりも長く持続する痛覚消失または鎮痛効果をもたらす。
【0089】
オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、共に投与されてもよいし、連続的に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、同じ単位用量でマグネシウム塩と同時に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩と同時であるが別個の単位用量または製剤単位で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、連続的に投与される。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩が第1の投与で被験体に投与され、次いで、オキシトシンペプチドが、第2の投与で被験体に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩の投与の約10分後~約2時間後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩の投与の約10分後~約2時間後、約10分後~約1時間後、約10分後~約30分後、約20分後~約2時間後、約20分後~約1時間後、約30分後~約2時間後または約30分後~約1時間後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩の投与の約10分後、約15分後、約20分後、約30分後、約45分後、約60分後、約90分後または約120分後に投与される。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、マグネシウム塩の投与の約10分後、約15分後、約20分後、約30分後に投与される。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドがまず被験体に投与され、次いで、マグネシウム塩が被験体に投与される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0090】
オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、それを必要とする被験体に同じ経路を介して投与されてもよいし、異なる経路を介して投与されてもよい。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜投与(例えば、経鼻、頬側、舌下または眼球投与)を介して投与される。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩の両方が、同じ製剤として鼻腔内に投与される。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜を介して投与され、マグネシウム塩は、全身的に、例えば、静脈内、筋肉内、経口的、皮下または髄腔内に投与される。
【0091】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、鼻腔内投与を介して投与される。オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウム塩は、鼻腔内送達用の好適なデバイス(例えば、本明細書中に記載される経鼻送達デバイス)を用いて鼻腔内の粘膜組織に投与され得る。鼻腔内の好適な領域としては、鼻腔の下部3分の2もしくは上部3分の1または鼻腔全体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウム塩は、鼻腔の上部3分の1に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウム塩は、鼻腔の下部3分の2に投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよび/またはマグネシウム塩は、鼻腔の下部3分の2と上部3分の1の両方に達するように明確に投与される。いくつかの実施形態において、疼痛の処置を必要とする被験体の鼻腔内に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法が提供され、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。
【0092】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約1000μg、約1μg~約1000μgまたは約1μg~約2000μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4μg~約1000μg、約8μg~約1000μg、約8μg~約800μg、約8μg~約500μg、約8μg~約400μg、約8μg~約300μg、約8μg~約200μg、約8μg~約100μg、約8μg~約80μg、約8μg~約50μg、約10μg~約1000μg、約10μg~約500μg、約10μg~約200μg、約10μg~約100μg、約16μg~約1000μg、約16μg~約800μg、約16μg~約500μg、約16μg~約400μg、約16μg~約200μg、約16μg~約160μg、約16μg~約120μg、約16μg~約80μg、約20μg~約1000μg、約20μg~約800μg、約20μg~約500μg、約20μg~約200μg、約20μg~約100μg、約30μg~約1000μg、約30μg~約500μg、約30μg~約300μg、約30μg~約120μg、約30μg~約90μg、約50μg~約1000μg、約50μg~約500μg、約50μg~約250μg、約50μg~約100μg、または約50μg~約80μgである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約8μg、約16μg、約32μg、約48μg、約64μg、約80μg、約96μg、約128μg、約256μg、約10μg、約20μg、約30μg、約40μg、約50μg、約60μg、約70μg、約80μg、約90μg、約100μg、約120μg、約150μg、約200μg、約400μg、約600μg、約800μgまたは約100μgである。好ましい実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約8μg~約120μg、約15μg~約120μg、約30μg~約120μg、または約66μgである。
【0093】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.25IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.25IU~約500IU、約0.5IU~約500IUまたは約0.5IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約2IU~約500IU、約4IU~約500IU、約4IU~約400IU、約4IU~約250IU、約4IU~約200IU、約4IU~約150IU、約4IU~約100IU、約4IU~約50IU、約4IU~約40IU、約4IU~約25IU、約5IU~約500IU、約5IU~約250IU、約5IU~約100IU、約5IU~約50IU、約8IU~約500IU、約8IU~約400IU、約8IU~約250IU、約8IU~約200IU、約8IU~約100IU、約8IU~約80IU、約8IU~約60IU、約8IU~約40IU、約10IU~約500IU、約10IU~約400IU、約10IU~約250IU、約10IU~約100IU、約10IU~約50IU、約15IU~約500IU、約15IU~約250IU、約15IU~約150IU、約15IU~約60IU、約15IU~約45IU、約25IU~約500IU、約25IU~約250IU、約25IU~約125IU、約25IU~約50IU、または約25IU~約40IUである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4IU、約8IU、約16IU、約24IU、約32IU、約40IU、約48IU、約64IU、約128IU、約5IU、約10IU、約15IU、約20IU、約25IU、約30IU、約35IU、約40IU、約45IU、約50IU、約60IU、約75IU、約100IU、約200IU、約300IU、約400IUまたは約50IUである。好ましい実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約4IU~約60IU、約7.5IU~約60IU、約15IU~約60IU、または約30IUである。
【0094】
併用におけるオキシトシンの用量または量は、1つの実施形態において、疼痛障害の症状の臨床的に計測可能な改善を提供するのに有効である。下記の実施例において説明されるように、オキシトシンとマグネシウム塩との併用は、疼痛障害を改善する相乗効果を提供する。いくつかの実施形態において、オキシトシンは、単剤として投与されるオキシトシンの用量に対して治療有効用量以下の用量で投与される。単剤としてのオキシトシンの用量は、投与経路に部分的に依存する。したがって、本明細書中に記載される併用療法におけるオキシトシンの用量も、投与経路に部分的に依存する。
【0095】
マグネシウム塩の最適な用量は、特定の疼痛タイプ、所望の相乗効果のタイプ、および投与経路などの他の因子に依存し得る。最適用量は、投与されるマグネシウム塩の総量、投与されるマグネシウム塩におけるマグネシウムの量、投与されるマグネシウム塩によって提供されるマグネシウムイオン(Mg2+)の量、または投与される製剤中のマグネシウムイオンの濃度として計測され得る。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約34mgまたは約1mg~約3mgのマグネシウムを提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約34mgまたは約1mg~約3mgのマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約1.3mgまたは約2.6mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約1.2mgまたは約2.4mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約17mg、約50μg~約8mg、約50μg~約4mg、約50μg~約2mg、約50μg~約1mg、約50μg~約500μg、約100μg~約68mg、約100μg~約34mg、約100μg~約17mg、約100μg~約8mg、約100μg~約4mg、約100μg~約2mg、約100μg~約1mg、約100μg~約500μg、約200μg~約68mg、約200μg~約34mg、約200μg~約17mg、約200μg~約8mg、約200μg~約4mg、約200μg~約2mg、約200μg~約1mg、約200μg~約500μg、約500μg~約68mg、約500μg~約34mg、約500μg~約17mg、約500μg~約8mg、約500μg~約5mg、約500μg~約4mg、約500μg~約3mg、約500μg~約2mg、約500μg~約1mg、約1mg~約68mg、約1mg~約34mg、約1mg~約17mg、約1mg~約8mg、約1mg~約6mg、約1mg~約5mg、約1mg~約4mg、約1mg~約3mg、約1mg~約2mg、約1.5mg~約8mg、約1.5mg~約6mg、約1.5mg~約5mg、約1.5mg~約4mg、約1.5mg~約3mg、約1.5mg~約2mg、約1.3mg~約2.6mg、または約1.2mg~約2.4mgのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、約50μg~約68mg、約50μg~約34mgまたは約1mg~約3mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する量で投与されるクエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムである。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、約50μg~約68mg、約50μg~約34mgまたは約1mg~約3mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する量で投与されるクエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩は、塩化マグネシウムを含み、有効用量のマグネシウム塩は、約0.48mg~約600mgの塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O,MW203.3)である。いくつかの実施形態において、塩化マグネシウム六水和物の有効用量は、約0.48mg~約300mg、約0.5mg~約150mg、約0.5mg~約75mg、約5mg~約150mg、約5mg~約75mg、約5mg~約50mg、約10mg~約600mg、約10mg~約300mg、約10mg~約150mg、約10mg~約75mg、約10mg~約50mg、約10mg~約30mg、または約12mg~約24mgである。いくつかの好ましい実施形態において、塩化マグネシウム六水和物の有効用量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mgまたは約30mgである。いくつかの実施形態において、クエン酸マグネシウムの有効用量は、約0.48mg~約12mg、約0.5mg~約10mg、約0.5mg~約8mg、約0.5mg~約5mg、約0.5mg~約2.5mg、約0.5mg~約1mg、約1mg~約10mg、約1mg~約8mg、約1mg~約5mg、約1mg~約2mg、約2mg~約10mg、約2mg~約8mg、約2mg~約6mg、約2mg~約4mg、約3mg~約10mg、約4mg~約10mg、約4mg~約8mg、約4mg~約6mg、約5mg~約10mg、約5mg~約8mg、約5mg~約7mg、約5mg~約6mg、約6mg~約10mg、約6mg~約8mg、または約6mg~約7mgである。
【0097】
いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムであり、有効用量のマグネシウム塩は、約0.48mg~約600mgのクエン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態において、クエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム、分子量:214.4)の有効用量は、約0.48mg~約300mg、約0.5mg~約150mg、約0.5mg~約75mg、約5mg~約150mg、約5mg~約75mg、約5mg~約50mg、約10mg~約600mg、約10mg~約300mg、約10mg~約150mg、約10mg~約75mg、約10mg~約50mg、約10mg~約30mg、または約12mg~約24mgである。いくつかの好ましい実施形態において、クエン酸マグネシウム(例えば、無水二塩基性クエン酸マグネシウム、分子量:214.4)の有効用量は、約6mg、約12mg、約18mg、約24mgまたは約30mgである。いくつかの実施形態において、クエン酸マグネシウムの有効用量は、約0.48mg~約12mg、約0.5mg~約10mg、約0.5mg~約8mg、約0.5mg~約5mg、約0.5mg~約2.5mg、約0.5mg~約1mg、約1mg~約10mg、約1mg~約8mg、約1mg~約5mg、約1mg~約2mg、約2mg~約10mg、約2mg~約8mg、約2mg~約6mg、約2mg~約4mg、約3mg~約10mg、約4mg~約10mg、約4mg~約8mg、約4mg~約6mg、約5mg~約10mg、約5mg~約8mg、約5mg~約7mg、約5mg~約6mg、約6mg~約10mg、約6mg~約8mg、または約6mg~約7mgである。クエン酸マグネシウムの代わりに他のマグネシウム塩が用いられる場合、そのマグネシウム塩の有効用量は、クエン酸マグネシウム塩の量に等価なマグネシウムイオンの量を提供する。
【0098】
本明細書中に記載されるマグネシウム塩の各投与量およびすべての投与量が、各組み合わせおよびすべての組み合わせが個別に述べられているかのように、本明細書中に記載されるオキシトシンペプチドの各投与量およびすべての投与量と組み合わされ得ると意図され、理解される。例えば、いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgであり、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約15μg~約120μg(例えば、約60μgまたは約66μg)であり、提供される投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約10mg~約30mg(例えば、約12mgまたは約24mg)のクエン酸マグネシウムである。
【0099】
いくつかの実施形態において、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程(例えば、鼻腔内投与によって)を含む、疼痛を処置するための方法が提供され、ここで、投与されるオキシトシンペプチドの用量と投与されるマグネシウムまたはマグネシウムイオンの用量との重量比は、約1:1~約1:1000、好ましくは、約1:2~約1:200、より好ましくは、約1:20、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45、約1:50、約1:60であるか、またはマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物に対して本明細書中に記載されるOT/Mg(w)比のいずれかである。いくつかの実施形態において、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程(例えば、鼻腔内投与によって)を含む、疼痛を処置するための方法が提供され、ここで、投与されるオキシトシンペプチドの用量と投与されるマグネシウムまたはマグネシウムイオンの用量とのモル比は、約1:40~約1:40000、好ましくは、約1:80~約1:8000、より好ましくは、約1:500、約1:800、約1:1000、約1:1200、約1:1400、約1:1600、約1:1800、約1:2000、約1:2400、約1:3000であるか、またはマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物に対して本明細書中に記載されるOT/Mg(m)比のいずれかである。これらの実施形態のいくつかにおいて、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。この実施形態のいくつかにおいて、マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムである。これらの実施形態のいくつかにおいて、疼痛は、片頭痛である。
【0100】
1つの実施形態において、疼痛の処置を必要とする被験体の鼻腔内に、約0.5μg~約2000μg(例えば、約8μg~約300μg、約15μg~約120μgまたは約66μg)の用量のオキシトシンペプチドおよび約50μg~約68mg、約50μg~約34mg、約1mg~約3mg、約1.3mgまたは約2.6mgのマグネシウムを提供する用量のマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法が提供される。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mLおよび約16mg/mL)のオキシトシンおよび約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mL~約16mg/mLまたは約0.15mg/mL~約1.5mg/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%または約10%~約14%)のクエン酸マグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約5IU/mL~約8000IU/mL(例えば、約50IU/mL~約8000IU/mLまたは約75IU/mL~約750IU/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約10%~約14%または約12%)のクエン酸マグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(例えば、約0.1mg/mLおよび約16mg/mLまたは約0.15mg/mLおよび約1.5mg/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約8%~約12%または約10%)の塩化マグネシウム六水和物を含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約5IU/mL~約8000IU/mL(例えば、約50IU/mL~約8000IU/mLまたは約75IU/mL~約750IU/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約1%~約15%、約8%~約12%または約10%)の塩化マグネシウム六水和物を含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約0.1%~約2.8%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約0.5μg(または0.25IU)~約2000μg(または1000IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約0.11%~約1.65%(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約8μg(または4IU)~約1000μg(または500IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約1.1%~約1.6%(例えば、約1.2%または約1.35%)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg(または7.5IU)~約120μg(または約60IU)(例えば、約60μgまたは30IU)のオキシトシンペプチドを含む。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約1.2%または約1.35%のマグネシウムを含む水溶液において投与される約60μg(または30IU)のオキシトシンペプチドを含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約1(重量)%~約25(重量)%のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約0.5μg~約2000μgのオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約1(重量)%~約15(重量)%のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約8μg~約1000μgのオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約10%~約14%(例えば、約12%)のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg~約120μg(例えば、約66μg)のオキシトシンペプチドを含む。1つの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効用量は、約12%のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約66μgのオキシトシンペプチドを含む。
【0103】
オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との相乗的な併用は、オキシトシンによって処置可能な任意の疼痛(例えば、口腔顔面痛および頭蓋顔面痛(例えば、頭痛)、頸部痛(例えば、後頭神経痛)または上肢痛)の処置のために使用され得る。したがって、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法が提供され、ここで、その疼痛は、口腔顔面痛および頭蓋顔面痛、頸部痛または上肢痛であり、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。1つの実施形態において、その方法は、疼痛の処置を必要とする被験体の鼻腔内に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、疼痛は、体性痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、表面体性痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、深部体性痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、筋骨格痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、内臓痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、神経因性疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、頭痛または頭蓋顔面痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、頭部領域および/または口腔顔面領域以外の身体の部分における疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、本明細書中に記載される慢性疼痛などの慢性疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、本明細書中に記載される急性疼痛などの急性疼痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、本明細書中に記載される疼痛の1つまたはそれを超える疼痛の組み合わせである。いくつかの実施形態において、疼痛は、運動に関連する鋭い痛みおよびうずくような痛みである。いくつかの実施形態において、疼痛は、手術に関連する神経損傷などの神経損傷が原因の神経因性疼痛である。
【0105】
いくつかの実施形態において、疼痛は、頭痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、顔面痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、頸部痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、後頭神経痛である。いくつかの実施形態において、疼痛は、上肢痛である。頸部痛および上肢痛としては、神経圧迫障害(脊柱管狭窄症)、円板および椎骨の疾患、糖尿病性ニューロパシー、手根管症候群、関節炎疾患、外傷後、椎間障害ならびに帯状疱疹後神経痛などの例が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、疼痛は、うつ、不安またはストレスなどの精神障害によって悪化する。いくつかの実施形態において、疼痛は、食品(例えば、カフェイン、チョコレート、アルコール)または薬物乱用(例えば、オピエート類)によって誘導されるかまたは悪化する。
【0106】
本発明のいくつかの態様は、三叉神経関連の疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、三叉神経関連の疼痛を処置するための方法を含み、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。いくつかの実施形態において、三叉神経関連の疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程(例えば、鼻腔内投与によって)を含む、三叉神経関連の疼痛を処置するための方法が提供される。その三叉神経関連の疼痛は、慢性疼痛、急性疼痛および手技に関連する疼痛ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。いくつかの例において、慢性疼痛は、三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性知覚麻痺、帯状疱疹後神経痛、頭頸部癌、片頭痛および側頭下顎関節痛(TMJ)からなる群より選択される。いくつかの例において、手技に関連する疼痛は、歯科的、医学的、外科的または美容的手技から生じる疼痛である。なおも他の例において、急性疼痛は、裂傷、やけど、骨折、損傷、頭痛、膿んだ歯、歯科疾患、細菌感染症または副鼻腔感染症から生じる疼痛である。三叉神経系に関連する慢性疼痛、急性疼痛または手技痛は、多くの症候群および疾患において生じ、それらとしては、三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性知覚麻痺、帯状疱疹後神経痛、頭頸部癌、片頭痛、他のタイプの頭痛、TMJ、顔面および/または頭部に対する損傷、歯の損傷または感染、一般的な歯科手技、ならびに美容形成手術などの顔面手術が挙げられるがこれらに限定されない。
【0107】
顔面および頭部の領域の慢性疼痛は、神経因性疼痛、頭痛、TMJ、癌および/または癌の処置による疼痛を含むがこれらに限定されない種々の病状から生じ得る。これらの疼痛症候群は、現行の薬剤または侵襲性の介入では効果的に処置されないことが多く、顔面および頭部の領域を限局性に疼痛緩和するための新しい方法が必要とされている。したがって、本発明のいくつかの態様は、有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与することによって、三叉神経関連の慢性疼痛について被験体を処置するための方法を含み、ここで、その投与は、三叉神経系を標的としており、特に他の身体部分における鎮痛効果と比べて、主に顔面、頭部または頸部の領域に対して痛覚消失をもたらす。そのマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、三叉神経痛、非定型顔面神経痛および帯状疱疹後神経痛を含むがこれらに限定されない神経因性疼痛を有する患者に投与され得る。そのマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、頭痛、例えば、片頭痛または群発性頭痛を有する被験体に投与され得る。そのマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、頭部もしくは顔面の癌から生じるかまたは頭部もしくは顔面の癌の以前の処置から生じる慢性疼痛を有する被験体に投与され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明は、有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物の投与を含む、医学的、歯科的または美容的手技から生じる三叉神経関連の疼痛について被験体を処置するための方法を提供し、ここで、その投与は、三叉神経系を標的としており、主に顔面または頭部の領域の痛覚消失をもたらす。それらの方法は、医学的、歯科的および美容的手技を含む群から選択される手技を受けている被験体に投与されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を含み得る。それらの方法は、微小皮膚切除術(microdermabrasion)、Botox注射、光線力学的療法または他の皮膚腫瘍焼灼術、脱毛術(電気分解、レーザー、ワックス除毛などを含む)、一般的な顔面レーザー処置(色素除去、血管病変を含む)、皮膚および皮下注射可能な注入剤(コラーゲン、ヒアルロン酸、メタクリル酸メチル、ヒドロキシアパタイトなどを含む)、化学物質またはレーザー適用によるフェイシャルピーリング、フォトフェイシャル、コラーゲン収縮手技(高周波、HIFU、高輝度光、レーザーなどを含む)、歯科的手技、刺青、刺青除去、ピアシング、ならびにステロイド注射による瘢痕およびケロイドの処置を含む群から選択される医学的、歯科的または美容的手技を含み得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、ある手技を受けている患者に投与され得、その手技の時間にわたって鎮痛効果が持続する。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、ある手技を受けている患者に投与され得、その手技および痛覚消失のために必要とされる時間は、90分超である。本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物の投与は、ある手技を受けている患者において即座の痛覚消失をもたらし得、かつ/またはその痛覚消失は、その手技の時間全体にわたって持続する。
【0109】
本発明のいくつかの態様は、有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程を含む、医学的、歯科的または美容的手技から生じる三叉神経関連の疼痛について被験体を処置するための方法を含み、ここで、その投与は、三叉神経系を標的としており、顔面、頭部または頸部の限局性の痛覚消失をもたらす。それらの方法は、限局性の痛覚消失がその手技の時間にわたって持続し、術後期へと継続する、有効な投与量を含み得る。それらの方法は、歯周外科手術、歯の再建手術、口蓋手術、抜歯、歯根管手術、皺皮切除術、眼瞼形成術、睫毛挙上、鼻形成術、頬インプラント、おとがいインプラント、脂肪注入、病変除去、切除生検、モース術、皮弁再建術、外科的歯科矯正術、眼科手術、眼形成手術、植毛手術、広範囲のレーザーリサーフェイシング、裂傷修復術、鼻骨骨折修復術、顔面骨骨折修復術、やけどのデブリドマンおよび創傷洗浄を含む群から選択される医学的、歯科的または美容的手技を含み得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、血管収縮薬の注射の前に、医学的手技を受けている患者の顔面または頭部の領域に投与され得る。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、医学的手技を受けている患者に投与され得、その痛覚消失は、その手技の時間を超えて持続し、術後期へと継続する。マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物は、医学的手技を受けている患者に投与され得、その痛覚消失は、医学的手技の終了後、数時間から数日間持続する。
【0110】
特定の実施形態において、本発明は、片頭痛の処置を必要とするヒト被験体または動物被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を(例えば、鼻腔内に)投与する工程を含む、片頭痛を処置するための方法を提供し、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の有効性の合計を超える全体的な有効性をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩の痛覚消失または鎮痛効果の合計を超える全体的な痛覚消失または鎮痛効果をもたらす用量で投与される。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩による疼痛強度または疼痛感度(異痛症および/または痛覚過敏)の低下の合計を超える、被験体が経験する片頭痛の強度および/または疼痛感度(異痛症および/または痛覚過敏)の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩による片頭痛発作の頻度の低下の合計を超える、被験体が経験する片頭痛発作の頻度の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量の任意の鎮痛剤よりも速い痛覚消失または鎮痛効果(例えば、片頭痛の低減または軽減)の発生をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、個別に投与される等価な用量の任意の鎮痛剤よりも長く持続する痛覚消失または鎮痛効果(例えば、片頭痛の低減または軽減)をもたらす。
【0111】
1つの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を、片頭痛の処置を必要とする被験体(例えば、ヒト患者または動物患者)の鼻腔内に投与する工程を含む、片頭痛を処置するための方法が提供され、ここで、そのオキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドは、Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly(配列番号1)からなるヒトオキシトシンである。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg(または0.25IU)~約2000μg(または1000IU)、好ましくは、約8μg(または4IU)~約1000μg(または500IU)、より好ましくは、約15μg(または7.5IU)~約120μg(または60IU)である。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する。いくつかの実施形態において、マグネシウム塩は、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する量で投与される塩化マグネシウムおよび/またはクエン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態において、有効用量のマグネシウム塩は、約0.48mg~約600mgのクエン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態において、有効用量のマグネシウム塩は、約0.42mg~約540mgの塩化マグネシウム六水和物である。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、約1.1%~約1.54%(例えば、約1.2%または約1.35%)(w/v)のマグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg(または7.5IU)~約120μg(または60IU)(例えば、約60μgまたは30IU)のオキシトシンペプチドを含む。いくつかの実施形態において、有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、約10%~約14%(例えば、約12%)(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む水溶液において投与される約15μg~約120μg(例えば、約66μg)のオキシトシンペプチドを含む。1つの実施形態において、片頭痛を処置するための方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.5μg~約2000μg(例えば、約15μg~約120μgまたは約66μg)の用量のオキシトシンペプチド、および約50μg~約68mg(例えば、約50μg~約34mgのマグネシウムまたは約1mg~約3mg)のマグネシウムを提供する用量のマグネシウム塩を投与する工程を含む。1つの実施形態において、片頭痛を処置するための方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.25IU~約1000IU(例えば、約7.5IU~約60IUまたは約30IU)の用量のオキシトシンペプチドおよび約50μg~約68mg(例えば、約50μg~約34mgのマグネシウムまたは約1mg~約3mg)のマグネシウムを提供する用量のマグネシウム塩を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物(例えば、約0.01mg/mL~約16mg/mLのオキシトシンおよび約1mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたはマグネシウムイオンを含むマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物)を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約0.01mg/mL~約16mg/mL(好ましくは、約0.1mg/mL~約2mg/mL、より好ましくは、約0.15mg/mLおよび約1.5mg/mLまたは約0.33mg/mL)のオキシトシンおよび約1(重量)%~約25(重量)%(例えば、約10%~約14%)のクエン酸マグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。1つの実施形態において、その方法は、それを必要とする被験体の鼻腔内に、約5IU/mL~約8000IU/mL(好ましくは、約50IU/mL~約1000IU/mL、より好ましくは、約75IU/mL~約750IU/mLまたは約150IU/mL)のオキシトシンおよび約0.1(重量)%~約2.8(重量)%(例えば、約1.1%~約1.54%)のマグネシウムを含む有効用量のマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与する工程を含む。
【0112】
本発明のいくつかの態様は、頸神経関連の疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、頸神経関連の疼痛を処置するための方法を含む。いくつかの実施形態において、オキシトシンペプチドとマグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす。いくつかの実施形態において、上記方法は、上位頸神経関連の疼痛を処置するための方法である。身体の片側には8つの頸神経(C1~C8)がある。上位頸神経(C1~C4)は、神経支配を提供し、疼痛情報を頭部、頸部および肩上部の背部から伝える。下位頸神経(C5~C8)は、疼痛情報を肩下部、腕、および指を含む手から伝える。「頸神経関連の疼痛」は、本明細書中で使用されるとき、別段特定されない限り、頸神経によって神経支配される組織において生じるおよび/または頸神経への傷害もしくは外傷に関連する疼痛のことを指す。いくつかの実施形態において、頸神経関連の疼痛は、C1、C2、C3および/またはC4神経などの上位頸神経に関連する。「上位頸神経関連の疼痛」は、本明細書中で使用されるとき、1つもしくはそれを超える上位頸神経によって神経支配される組織において生じるおよび/または1つもしくはそれを超える上位頸神経への傷害もしくは外傷に関連する疼痛のことを指す。
【0113】
いくつかの実施形態において、頸神経関連の疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量の本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤または組成物を投与する工程(例えば、鼻腔内投与によって)を含む、頸神経関連の疼痛を処置するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、その方法は、頸部、肩部および/または上肢における慢性疼痛または持続的な疼痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、頸神経関連の疼痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、上位頸神経関連の疼痛(例えば、頸部痛)の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、下位頸神経関連の疼痛(例えば、肩部、前腕または手における疼痛)の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、後頭部痛または頸部痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、後頭神経痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、肩部痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、前腕または上腕における疼痛の処置を含む。いくつかの実施形態において、投与されるオキシトシンペプチドの有効用量は、約50~約8000IU、約50~約2000IU、約50IU~150IU、または約150~2000IUである。いくつかの実施形態において、その有効用量は、約50IU~約150IU、約50IU~約100IU、約60IU~約90IU、約100IU~約150IU、約120IU~約150IU、または約75IU~約150IUである。いくつかの実施形態において、その有効用量は、約150IU~約2000IU、約150IU~約1000IU、約150IU~約500IU、約200IU~約2000IU、約200IU~約1000IU、約200IU~約500IU、約250IU~約2000IU、約250IU~約1000IU、約250IU~約500IU、約500IU~約2000IU、または約500IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、その有効用量は、約100IU~約1000IUである。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約34mgまたは約1mg~約3mgのマグネシウムまたはマグネシウムイオン(Mg2+)を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約1mg、約0.5mg~約5mg、約3mg~約15mgまたは約5mg~約30mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する。いくつかの実施形態において、投与されるマグネシウム塩の有効用量は、約1.2mgまたは約2.4mgのマグネシウムまたはMg2+を提供する。一般に、三叉神経関連の疼痛の処置よりも高用量のオキシトシンペプチド製剤が、頸神経関連の疼痛の処置に必要とされ;上位頸神経関連の疼痛の処置よりも高用量のオキシトシンペプチド製剤が、下位頸神経関連の疼痛の処置に必要とされる。
【0114】
(キット)
本明細書中に記載される方法のいずれかを行うためのキットが本明細書中に提供される。疼痛の処置および/または予防において使用するためのキットが提供される。いくつかの実施形態において、そのキットは、好適な包装材に入った、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩(ここで、そのオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する)および頭蓋顔面粘膜投与(例えば、鼻腔内投与)用のデバイスを含む。キットは、プロテアーゼ阻害剤および/または少なくとも1つの吸収促進剤をさらに含み得る。他のキットは、本明細書中に記載される方法のいずれか1つを行うためにユーザーおよび/または医療提供者に情報を提供する指示書をさらに含み得る。
【0115】
頭蓋顔面粘膜投与用のデバイス(例えば、鼻腔用ポンプ装置などの鼻腔内投与用のデバイス)に含められた本明細書中に記載されるマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤および好適な包装材を含むキットも提供される。そのキットは、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を必要とする被験体にマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を投与するための指示書をさらに含み得る。
【0116】
本発明を行うためのキットの使用に関する指示書には、通常、どのようにそのキットの内容物を使用して本発明の方法を行うかが記載されている。本発明のキットに供給される指示書は、代表的には、ラベル上の書面の指示書または添付文書(例えば、キットに含められる紙のシート)であるが、機械可読の指示書(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスクに入った指示書)も許容され得る。
【実施例】
【0117】
本発明は、例証目的で提供され、限定するように意図されていない、以下の実施例を参照することによりさらに理解され得る。
【0118】
実施例1:顔面の温痛覚のラットモデルにおける塩化マグネシウムまたは乳酸マグネシウムの効果
予め剪毛したラットの頬に投光ランプからの熱を集中させ、6.5~8.5秒の潜時の引っ込め反応が得られるように強度を変動させた。そのような潜時を達成するために適用される強度を各動物について記録した。安定した/許容され得るベースライン値が得られたら、各ラットに対する平均潜時を算出した。全ラットについてベースラインの頬引っ込め潜時を測定した後、Freyが開発した方法(Thorneら、Neuroscience.,127:481-496(2004))に従って、通常の生理食塩水、15%塩化マグネシウム水溶液または1%乳酸マグネシウム水溶液のいずれかの単回経鼻投与を各ラットに行った。簡潔には、ラット(ウレタン麻酔下)を、背側の頸部の下に挿入されたロールパッド(2×2ガーゼ)を用いて背臥位にし、頭部を支持面に向かって伸ばした。薬物溶液を鼻腔内に維持するためおよび鼻咽頭から垂れ落ちるのを最小限にするために、投与手順全体にわたって、頸部の上面を水平に維持した。それぞれの薬物溶液の6μLの液滴を小型ピペットの先端から落とし、ラットの左側の外鼻孔に逆の外鼻孔を塞ぎながら与えた。各外鼻孔に交互に1滴を2分ごとに投与した(したがって要するに同じ外鼻孔への用量の間に4分の間隔)。各鼻孔には4滴を投与し、合計で48μL(各6μLの8滴)という合計体積になる。送達する物質に関して実験者の盲検を維持するために、薬物溶液をコード化した。次いで、放射熱刺激に対する左頬引っ込め潜時を次の3時間にわたって計測した。経鼻投与前ならびに処置の1、2および3時間後に引っ込め潜時を計測した。
【0119】
熱刺激(侵害性熱)に対する引っ込め潜時を熱感度の指標として記録した。潜時の延長は、痛覚消失/抗侵害受容を示しているとみなされた。生理食塩水の鼻への適用は、ラットの反応潜時をおよそ1.2秒一過性に延長させたことから、軽い鎮痛効果、つまり、2時間後の試験時点まで効果が持続したことが示唆されるが、実際には2時間後の潜時はベースラインの反応性より低かった(
図1)。1%乳酸マグネシウムの適用も、軽い鎮痛効果をもたらし、反応潜時をおよそ1.5秒延長させた。しかしながら、乳酸マグネシウムの適用後の潜時は、生理食塩水の適用とは異なり、2時間後と3時間後の両方の試験時点において実質的に延長させたままであった。15%塩化マグネシウム水溶液の適用は、生理食塩水で鼻を処置されたラットと比べて、試験の1時間後に強い鎮痛効果をもたらし、痛覚消失は投与の2および3時間後にも持続した。
【0120】
本発明者らの知る限り、この驚くべき結果は、マグネシウム塩の鼻への適用が鎮痛性であるという初めての知見である。
【0121】
実施例2:顔面の温痛覚のラットモデルにおけるクエン酸マグネシウムの経鼻適用の鎮痛効果の用量依存性
4つの濃度のうちの1つの二塩基性クエン酸マグネシウム(1:1Mg/クエン酸)をラットに適用し、顔面の侵害性熱刺激への反応に対するこれらの適用の効果を上に記載したように評価した。上に記載した方法に従って、各ラットに対して、3、6、10または12%クエン酸マグネシウム水溶液の単回経鼻投与を行った(6匹のラット/群)。次いで、放射熱刺激に対する左頬引っ込め潜時をその後の300分間にわたって計測した。経鼻投与前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め潜時を計測した。
【0122】
60℃に加熱されたクエン酸溶液(22gのクエン酸一水和物を含む80mlのdH2O)にUSP無水炭酸マグネシウム(MgCO3,Acros Organics,9.5g)を加え、混合物が完全に澄むまで撹拌することによって、クエン酸マグネシウムを調製した。次いで、その混合物を濾過した。無水エタノールを使用してクエン酸マグネシウム生成物を沈殿させ、洗浄し、それを60℃のホットプレート上で乾燥させた。
【0123】
クエン酸マグネシウムの水溶液の経鼻適用は、頬の侵害性の加温に反応した引っ込めまでの潜時の延長によって示されるように、ラットにおいて明らかな用量依存的鎮痛効果をもたらした(
図2)。したがって、3種のマグネシウム塩のうちの3つに対するポジティブな知見から、これらの実験によって、水溶液中にマグネシウムイオンを提供する塩の経鼻適用が鎮痛性であるという原則についての証拠が提供された。
【0124】
実施例3:顔面の温痛覚のラットモデルにおけるオキシトシンの経鼻適用の鎮痛効果の用量依存性
緩衝食塩水中の3つの用量のうちの1つのオキシトシンをラットに適用し、顔面の侵害性熱刺激への反応に対するこれらの適用の効果を上に記載したように評価した。上に記載した方法に従って、各ラットに対して、1、4または8μgのオキシトシンを含む水溶液の単回経鼻投与を行った(6匹のラット/群)。次いで、放射熱刺激に対する左頬引っ込め潜時をその後の300分間にわたって計測した。経鼻投与前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め潜時を計測した。
【0125】
オキシトシンの水溶液の経鼻適用は、頬の侵害性の加温に対する引っ込めまでの潜時の延長によって示されるように、ラットにおいて明らかな用量依存的鎮痛効果をもたらした(
図3)。経鼻的に適用された4μgと8μgの両方のオキシトシンが、頬の侵害性の加温に対する引っ込めまでの潜時の大幅な延長をもたらした。しかしながら、経鼻的に適用された1μgのオキシトシンは、鎮痛的には治療以下であり、引っ込め潜時の延長を示さなかった(実際には、わずかに短縮した)。この経鼻オキシトシンペプチドの用量依存的鎮痛効果は、本発明者らが以前にオキシトシンについて報告した鎮痛効果と一致する。
【0126】
実施例4:マグネシウム塩とオキシトシンとの様々な比を有する薬物併用溶液の鎮痛効果
実施例4A-クエン酸マグネシウム/オキシトシン併用
3つの濃度のうちの1つのクエン酸マグネシウムと3つの用量のうちの1つのオキシトシンとの組み合わせを含む水溶液をラットに経鼻的に適用し、引っ込め反応潜時の変化を上記のように計測した。上に記載した方法に従って、各ラットに対して、3、6または12%クエン酸マグネシウムを含む水溶液中の1、4または8μgのオキシトシンの単回経鼻投与を行った。次いで、放射熱刺激に対する左頬引っ込め潜時をその後の300分間にわたって計測した。経鼻投与前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め潜時を計測した。
【0127】
各引っ込め反応潜時を投与前の(ベースライン)値と比較することによって、投与後の各時点に対する差異スコアを生成した。併用効果を評価する標準的な手段として、経鼻クエン酸マグネシウム単独の効果(上記の実験2から)および経鼻オキシトシン単独の効果(上記の実験3から)に対する差異スコアも算出した。次いで、オキシトシン用量+クエン酸マグネシウム濃度の組み合わせの相加効果の予測値を算出し、これらの併用の実際の投与によって測定された差異スコアの計測値と比較した。計測された併用効果が、相加効果の予測値を超えた場合、これは、定義上、薬理学的相乗作用の例証となる。この相乗作用は、予想される痛覚消失の発生よりも早いかまたは予想される効果の持続時間よりも長い、相加を超える予想外の潜時の延長によって証明され得る。
【0128】
様々な用量のオキシトシンと様々な濃度のクエン酸マグネシウムとの組み合わせの経鼻適用は、多くの場合、オキシトシン単独またはクエン酸マグネシウム単独の効果に基づいて予想されるものをはるかに超える驚くべきレベルの痛覚消失を示した。単独では効果的でなかったかまたは治療量以下であったオキシトシンの用量(1μg)の場合、3、6または12%クエン酸マグネシウムの添加によって、実質的な痛覚消失がもたらされた。投与後のすべての時点について、1μgのオキシトシンを含む6%クエン酸マグネシウムを投与した後に観察されたベースラインを超える反応潜時の延長は、1μgのオキシトシン単独の効果と6%クエン酸マグネシウム単独の効果とを合算することによって予測または予想され得る効果を超えた(
図4Aおよび4C)。同様の相加を超える効果が、1μgのオキシトシンを含む3または12%クエン酸マグネシウムを投与した45分後に見られた(
図4Bおよび4D)。
【0129】
少なくともいくつかの時点において、クエン酸マグネシウム製剤として適用されたとき、中程度に鎮痛性の用量のオキシトシン(4μg)についても相加を超える効果が見られた。例えば、
図5は、投与の120分後に観察された鎮痛効果が、その2つの構成要素の効果を合算することによって予想または予測される効果を実質的に超えたことを実証している。このモデルにおいて強い鎮痛性のオキシトシンの用量(8μg)の場合、クエン酸マグネシウム溶液における経鼻適用は、その用量の有効性を実質的に増大させた。ほとんどの時点において、8μgのオキシトシンを含む12%クエン酸マグネシウム溶液の投与後に観察された痛覚消失は、それらの2つの構成要素の個別の効果を合算することによって予測される痛覚消失を超えた(
図6Aおよび6D)。別の重要な知見は、併用が、効果のより大きな振幅(すなわち、ベースラインからの潜時の差異)だけでなく、より早い効果の発生およびより長い痛覚消失の持続時間も示すことである。8μgのオキシトシンを含む3または6%クエン酸マグネシウムの経鼻適用後のいくつかの時点において、同様の相加を超える効果が観察された。例えば、
図6Bおよび6Cは、投与の15分後に観察された鎮痛効果が、それらの2つの構成要素の効果を合算することによって予想または予測される鎮痛効果を実質的に超えたことを実証している。
【0130】
実施例4B-硫酸マグネシウム/オキシトシン併用
硫酸マグネシウムとオキシトシンとの組み合わせを含む水溶液をラットに経鼻的に適用し、引っ込め反応潜時の変化を上記のように計測した。上に記載した方法に従って、各ラットに対して、20%硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4・7H2O,MW246.5)を含む水溶液中の8μgのオキシトシンの単回経鼻投与を行った。次いで、放射熱刺激に対する左頬引っ込め潜時をその後の300分間にわたって計測した。経鼻投与前ならびに処置の15、30、45、60、120、180、240および300分後に引っ込め潜時を計測した。
【0131】
8μgのオキシトシンを含む20%硫酸マグネシウム七水和物を投与した後に観察されたベースラインを超える反応潜時の延長は、8μgのオキシトシン単独の効果と20%硫酸マグネシウム七水和物単独の効果とを合算することによって予測または予想され得る効果を超えた。
図7は、投与の120分後に観察された鎮痛効果が、その2つの構成要素の効果を合算することによって予想または予測される効果を実質的に超えたことを実証している。
【0132】
これらの実験の結果から、以下のことが明らかに示唆される:1)様々な濃度のマグネシウム塩の経鼻適用が、驚いたことに痛覚消失をもたらす;2)予想されるとおり、オキシトシンペプチドの経鼻適用は、強力かつ用量依存的に鎮痛性である、および3)治療量以下の用量、中程度に鎮痛性の用量および強力に鎮痛性の用量のオキシトシンにマグネシウム塩を様々な濃度で添加することが、驚いたことに、かつ予測不可能に、相加を超える(相乗的な)痛覚消失をもたらす。
【0133】
実施例5:マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の例示的な調製
実施例5A
高張性であり、pH4.5を目標とする薬物製品製剤は、オキシトシンUSP(150IU/mL);塩化マグネシウムUSP(六水和物または無水塩として);クエン酸USP(無水物または一水和物の形態として);水酸化ナトリウムNF;および滅菌注射用水USPからなる。量的組成を表1に提供する。すべての成分が、対応するモノグラフの公定書(USP/NF)の要件を満たす。
【表1】
【0134】
薬物製品は、成分を滅菌注射用水に溶解し、滅菌濾過し、保存剤フリーのポンプにおいてスナップ付きバイアルに充填することによって製造され、2002年7月のFDAの鼻腔用スプレー指針に概ね従って試験される。
【0135】
一例において、表1に提供された組成に従う10Lバッチのマグネシウム含有オキシトシン製剤を以下のとおり調製した:製剤容器を、要求されるバッチ体積の約60%まで水で満たした。外界温度で撹拌しながら、以下の順序で必要量の塩化ナトリウム、クエン酸および塩化マグネシウム六水和物を加えた。それらの材料は、容易に溶解した。加熱の必要は無く、静かに撹拌するだけでよかった。1N NaOHを加えることによって、溶液のpHを4.5に調整した(過剰滴定の場合、10%HClを用いてpH4.5に逆滴定することができる)。必要量のオキシトシンを加え、溶解するまで撹拌した。そのバッチが最終的な重量/体積になるように水を加えた。溶液が均一になるまで撹拌した。
【0136】
実施例5B
等張性であり、pH4.5を目標とする、薬物製品製剤は、オキシトシンUSP(150IU/mL);クエン酸マグネシウム、塩化ナトリウムUSP;酢酸ナトリウム三水和物USP;氷酢酸USP;および滅菌注射用水USPからなる。量的組成を表2に提供する。pH4.5またはpH4.5付近における最適な製剤安定性に基づいて4.5という目標pHが選択される(Haweら、Pharmaceut.Res.26:1679-1688(2009))。すべての成分が、対応するモノグラフの公定書(USP/NF)の要件を満たす。
【0137】
オキシトシン原液を調製するために、凍結乾燥されたオキシトシン(2mg)を、5mLガラス容器内の1mLの水(USP)、0.9%生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水に加える。すべてのオキシトシンが溶解するまでその溶液を撹拌し、pHを3.5~8.5に調整して、1mLの2mg/mL(約1000IU/mL)液体オキシトシン製剤を生成する。
【0138】
臨床用の材料として使用する場合、オキシトシンおよび賦形剤は、現行の医薬品適正製造基準(Good Manufacturing Practice)に従って製造し、最後に滅菌(0.2ミクロンメンブランフィルターによる無菌濾過)した後、ガラス貯蔵ボトルに充填し、ポンプアクチュエータで密封する。オキシトシンの量を増加または減少させることによって、この実施例から様々な製剤濃度を生成することができる。この1mLのバッチ体積からおよそ10用量のオキシトシンが得られる。
【表2】
【0139】
実施例6:マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を用いた慢性片頭痛および高頻度偶発性片頭痛の処置
実施例6A
高頻度の片頭痛を有する一部の患者を、米国の南カリフォルニアの大病院のクリニックにおいて頭痛の専門家が調べた。その専門家は、それらの患者にA、BおよびCと記された3種の鼻腔用スプレーを与えて、家に持ち帰らせた。それらの患者は、その後片頭痛を3回経験したとき毎回それらのバイアルのうちの1つを使用し、そのスプレーの結果として経験した疼痛緩和の程度を評価した。それらの3つのバイアルは、12%溶液中の48ミリグラムのクエン酸マグネシウム佐剤(バイアルA)、66マイクログラムのオキシトシン(バイアルB)または12%溶液中の48mgのクエン酸マグネシウム佐剤+66マイクログラムのオキシトシン(バイアルC)を送達するのに十分な液体を含んでいた。患者は、バイアルAからは疼痛緩和に関して恩恵を報告せず、バイアルBからはいくらかの恩恵を報告し、バイアルCからはかなり強い疼痛緩和を報告した。これらの結果から、頭蓋顔面痛の緩和におけるオキシトシンとマグネシウム含有佐剤との相乗効果が実証する。
【0140】
実施例6B
前兆有りまたは無しの片頭痛に苦しむ90人のヒト患者を無作為化二重盲検並行研究に登録する。各被験体は、90日間参加する。ステージ1は、患者が頭痛の発生および標準的な薬剤の摂取を記録する28日間のベースライン(スクリーニング)を含む。ステージ2は、患者が頭痛を起こしたとき経鼻オキシトシン/クエン酸マグネシウム製剤を摂取する56日間である。60人の患者を有効群(オキシトシン/マグネシウム製剤)に割り当て、30人をプラセボ群に割り当てる。
【0141】
この研究に対する適格性は、電話でのインタビューおよび1回目の来診時に研究センターにて判定される。潜在的な参加者の研究センターへの1回目の来診時に、病歴が把握され、健康診断が行われる。特に、前兆有りまたは無しの慢性片頭痛または高頻度偶発性片頭痛の診断は、当業者によって確かめられる。参加者が選択規準を満たし、かつ除外規準が適用されない場合、書面のインフォームドコンセントを得る。人口統計的および医学的データが記録される。
【0142】
疼痛評価ツールは、VRS-4である。このツールは、自己申告性であり、被験体に自身の疼痛レベルを4カテゴリースケール(重度、中程度、軽度、無し)にランク付けすることを求める。被験体は、セキュリティ保護された可搬型ePROデバイスを使用して、自身の疼痛スコアを入力する。被験体は、スクリーニングのための来診時に、その可搬型デバイスを用いたVRS-4の実行について訓練を受ける。
【0143】
28日間のステージ1のスクリーニング期間中(被験体がインフォームドコンセントに署名した後)、被験体は、頭痛(片頭痛または緊張型頭痛)の疼痛スコアを1日1回入力する。被験体が、所与の日において頭痛を起こさなかった場合は、疼痛スコアを入力しない。スクリーニング期間中に記録された片頭痛および/または緊張型頭痛の回数を用いて、この研究に対する適格性を判定する。15またはそれを超える頭痛日数/28日間の期間を記録する患者は、慢性片頭痛患者として含められ;8~14の頭痛日数/28日間の期間を記録する被験体は、高頻度突発性片頭痛患者として登録される。
【0144】
ステージ1およびステージ2において:頭痛が起きた日には、被験体は、マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を経鼻的に投与する。被験体は、頭痛の発生時、次いで、最初の試験薬投与の30分後ならびに1、2、3、4、5および6時間後に疼痛スコアを記録する。頭痛が起きなかった日には、被験体は、試験薬を摂取せず、いかなる疼痛スコアも記録しない。
【0145】
経鼻プラセボ処置と比べたときの、疼痛の強度、痛覚消失発生までの潜時、痛覚消失の持続時間および頭痛頻度の低下に対する投与後の効果を比較することによって、オキシトシン/クエン酸マグネシウム製剤の鎮痛性の有効性を評価する。
【0146】
実施例7:高用量オキシトシン製剤を用いた頸部痛および肩部痛の処置
慢性緊張型頭痛を有する患者は、頭部、頸部および肩部に激しい疼痛を有すると記録した。その患者は、30単位の用量のために7.5IU/スプレーのオキシトシンを4スプレー摂取し、その時点において頭痛は無くなったが、頸部痛および肩部痛は残っていた。その患者は、薬の摂取を続け、最終的には、さらに8~10スプレー、すなわち合計60~75IUを摂取し、その時点において、頸部痛および肩部痛は、弱まり、止んだ。したがって、頸部痛および肩部痛に作用するためには、同じ患者において頭痛を阻害するために必要な用量よりも高用量が必要であった。
【0147】
実施例8:ラットの足炎症モデルにおける頸神経関連の疼痛に対する経鼻オキシトシンの鎮痛効果
頸神経関連の炎症性疼痛に対する経鼻的に投与されたオキシトシンの鎮痛効果が、ラット足炎症モデルにおいて評価された(Martinら、Pain 1999,82:199-205)。3つの用量(48マイクロリットル中の193、385または768マイクログラム)のうちの1つのオキシトシンを経鼻的に投与し、次の3時間にわたって一定間隔で、炎症領域(前足)の機械的刺激の後に、グラムを単位とする引っ込め力閾値を測定し、ビヒクル(リン酸緩衝食塩水)で処置されたラットのそれと比較した。フロイント完全アジュバントをラットの左前足に注射して、その足に強い炎症ならびに引っ込め反応(機械的異痛症)を誘発するのに必要な力の実質的な減少をもたらした。結果を
図8に示す。最低用量のオキシトシンは、疼痛閾値の上昇に効果的でなかったのに対して、より高い2つの用量は、炎症に起因する機械的異痛症の統計学的に有意な部分的回復をもたらした。これらの結果は、頸神経に関連する疼痛に対して鎮痛性である経鼻オキシトシンと一致する。
【0148】
頸神経関連の炎症性疼痛に対するマグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤の鎮痛効果をラット足炎症モデルにおいて試験する。上記と同じ手順に従って、一連の投与量を投与する。グラムを単位とする引っ込め力閾値を、製剤の鼻腔内投与後の24時間の期間にわたって一定間隔で測定する。
【0149】
実施例9:マグネシウム含有オキシトシンペプチド製剤を用いた頸部痛の処置
最近、交通事故に遭った20歳の女性患者は、重度の頸部痛に苦しんでいた。その患者を実施例5Aのマグネシウム含有オキシトシン製剤で処置した。その頸部痛を11点の疼痛ランク付け数値スケールで計測した。その患者に、自身の疼痛に、内在的な知覚に対する数値を割り当てるように依頼した。「1」が、閾値レベルの疼痛、すなわちかろうじて有痛性であり、「10」が、患者が想像し得る最もひどい疼痛である(このスケールにおけるゼロは、疼痛が無いことを意味する)。60IUのオキシトシン(400μLの製剤に含まれる)を、1スプレーあたり100μLの4スプレーで患者の鼻に適用したとき、その患者の頸部痛は、11点の疼痛ランク付け数値スケールにおいて、「9」というランク付けから「4」というランク付けに低下した。その患者の疼痛緩和は、処置の10分以内に生じた。
【0150】
マグネシウム含有オキシトシン製剤による鎮痛効果は、鎮痛効果が通常もっと遅く生じるマグネシウム塩を含まないオキシトシン製剤と比較して、予想よりも早く生じた。例えば、市販のオキシトシン製剤(Syntocinon(登録商標))を用いた研究では、慢性片頭痛における実質的な痛覚消失は、投与の2~4時間後まで発生しなかった(Yeomansら、Cephalalgia 2013,33(8 Supplement)1-291,p59)。
【0151】
例示的な実施形態
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される。それらの実施形態の各々の特徴は、必要に応じて、および差し支えなければ、他の実施形態のいずれかと組み合わせ可能である。
【0152】
実施形態1。1つの実施形態において、本発明は、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量のオキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法であって、ここで、該オキシトシンペプチドと該マグネシウム塩との同時投与は、相乗的な痛覚消失をもたらす、方法を提供する。
【0153】
実施形態2。実施形態1のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、前記マグネシウム塩と同時に投与される。
【0154】
実施形態3。実施形態1のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、前記マグネシウム塩の投与の前または後に投与される。
【0155】
実施形態4。実施形態1~3のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、頭蓋顔面粘膜投与を介して投与される。
【0156】
実施形態5。実施形態4のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与される。
【0157】
実施形態6。実施形態5のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩は、鼻腔内投与を介して投与される。
【0158】
実施形態7。実施形態1~6のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記マグネシウム塩は、塩化マグネシウムを含む。
【0159】
実施形態8。実施形態1~7のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムを含む。
【0160】
実施形態9。実施形態8のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドの有効用量は、約0.5μg~約2000μgである。
【0161】
実施形態10。実施形態8のさらなる実施形態において、前記マグネシウム塩の有効用量は、約50μg~約68mgのマグネシウムを提供する。
【0162】
実施形態11。実施形態8のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩の有効用量は、約1.1%~約1.6%(w/v)のマグネシウムを含む(または約10%~約14%(w/v)のクエン酸マグネシウムを含む)水溶液において投与される約15μg~約120μgの該オキシトシンペプチドを含む。
【0163】
実施形態12。実施形態8のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドおよび前記マグネシウム塩の有効用量は、約1.36%のマグネシウム(または約12%のクエン酸マグネシウム)を含む水溶液において投与される約66μg(または約60μg)の該オキシトシンペプチドを含む。
【0164】
実施形態13。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、慢性疼痛である。
【0165】
実施形態14。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、急性疼痛である。
【0166】
実施形態15。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、偶発性疼痛である。
【0167】
実施形態16。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、頭痛または顔面痛である。
【0168】
実施形態17。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、三叉神経関連の疼痛である。
【0169】
実施形態18。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、片頭痛である。
【0170】
実施形態19。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、頸部痛(または後頭神経痛)、肩部痛または上肢痛である。
【0171】
実施形態20。実施形態1~12のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記疼痛は、頸神経関連の疼痛(または上位頸神経関連の疼痛)である。
【0172】
実施形態21。実施形態1~20のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシン(配列番号1)である。
【0173】
実施形態22。1つの実施形態において、本発明は、オキシトシンペプチドおよびマグネシウム塩を含む組成物であって、該オキシトシンペプチドおよび該マグネシウム塩は、疼痛の処置において使用されたとき相乗的な痛覚消失をもたらす量で存在する、組成物を提供する。
【0174】
実施形態23。実施形態22のさらなる実施形態において、前記オキシトシンペプチドは、ヒトオキシトシン(配列番号1)である。
【0175】
実施形態24。実施形態22または23のさらなる実施形態において、前記マグネシウム塩は、クエン酸マグネシウムおよび/または塩化マグネシウムを含む。
【0176】
実施形態25。実施形態24のさらなる実施形態において、前記マグネシウム塩は、塩化マグネシウムおよびクエン酸マグネシウムを含む。
【0177】
実施形態26。実施形態22~25のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記組成物は、約0.01mg/mL~約16mg/mL(または約5IU/mL~約8000IU/mL)の前記オキシトシンペプチドを含む液体製剤である。
【0178】
実施形態27。実施形態26のさらなる実施形態において、前記液体製剤は、約0.15mg/mL~約1.5mg/mL(または約75IU/mL~約750IU/mL)の前記オキシトシンペプチドを含む。
【0179】
実施形態28。実施形態22~27のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記組成物は、約3mg/mL~約30mg/mLのマグネシウムまたは約125mM~約1200mMのマグネシウムを提供する量で前記マグネシウム塩を含む液体製剤である
【0180】
実施形態29。実施形態28のさらなる実施形態において、前記液体製剤は、約11mg/mL~約15mg/mLのマグネシウムまたは約250mM~約600mMのマグネシウムを含む。
【0181】
実施形態30。実施形態22~29のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記組成物は、1つまたはそれを超える賦形剤、ビヒクル、乳化剤、安定剤、保存剤、粘膜接着剤、抗菌剤、緩衝剤および/または他の添加物をさらに含む。
【0182】
実施形態31。実施形態22~29のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記組成物は、約4.5のpHを有する。
【0183】
実施形態32。実施形態22~31のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記組成物は、経鼻投与に適している。
【0184】
実施形態33。実施形態32のさらなる実施形態において、前記組成物は、さらに鼻腔内投与用のデバイスを含む。
【0185】
実施形態34。実施形態33のさらなる実施形態において、鼻腔内投与用の前記デバイスは、鼻腔用ポンプ装置である。
【0186】
実施形態35。実施形態34のさらなる実施形態において、前記鼻腔用ポンプ装置が、ポンプアクチュエータに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。
【0187】
実施形態36。実施形態35のさらなる実施形態において、前記ポンプアクチュエータは、約50μLという特定体積を送達するように計量する。
【0188】
実施形態37。実施形態34のさらなる実施形態において、前記鼻腔用ポンプ装置は、エアロゾライザに取り付けられた貯蔵ボトルを備える。
【0189】
実施形態38。実施形態34~37のいずれか1つのさらなる実施形態において、前記鼻腔用ポンプ装置は、以下:
(i)逆流を防止するためのフィルター、
(ii)無金属流路、および
(iii)ガンマ線に対して安定なプラスチック材料
のうちの1つ以上を備える。
【0190】
実施形態39。1つの実施形態において、本発明は、疼痛の処置を必要とする被験体に有効用量の実施形態22~32のいずれか1つに記載の組成物および薬学的に許容され得るキャリアを投与する工程を含む、疼痛を処置するための方法を提供する。
【0191】
実施形態40。1つの実施形態において、本発明は、実施形態22~38のいずれか1つに記載の組成物および包装材を含む、キットを提供する。
【0192】
実施形態41。実施形態40のさらなる実施形態において、前記キットは、実施形態39の方法に従って前記組成物を投与するための指示書をさらに含む。
【0193】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために例証目的および例示目的でいくらか詳細に説明されたが、当業者には、ある特定の変更および改変が本発明から逸脱せずに実施され得ることが明らかであろう。ゆえに、それらの説明および例示は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0194】
本明細書中に引用された特許、特許出願、書類および論文のすべてが、そのまま参照により援用される。
【配列表】