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特許7455406アンテナ装置及び該アンテナ装置付きの家具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び該アンテナ装置付きの家具
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
H01Q7/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021553177
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041259
(87)【国際公開番号】W WO2021079398
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515303067
【氏名又は名称】株式会社システムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】梶野 義幸
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/067462(WO,A1)
【文献】特開2010-241576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0278947(US,A1)
【文献】国際公開第2003/094288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、
前記アンテナ構造体は、
第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、
前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、
前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、
を備え、
前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高めることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、
前記アンテナ構造体は、
第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、
前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、
前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、
前記誘電体平面基板上で前記アクティブ電極群、パッシブ電極群に隣接する領域に形成した非給電部と、
を備え、
前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高め、しかも、前記非給電部を反射板として機能させ、前記誘電体平面基板上に単一の電磁界領域を形成することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、
前記アンテナ構造体は、
第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、
前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、
前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、
前記誘電体平面基板上で前記アクティブ電極群、パッシブ電極群を二分する領域に形成した非給電部と、
を備え、
前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高め、しかも、前記非給電部を反射板として機能させ、前記誘電体平面基板上に前記非給電部を境とする二か所の電磁界領域を形成することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、
前記アンテナ構造体は、
第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、
前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、
前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、
前記誘電体平面基板上で前記アクティブ電極群、パッシブ電極群を大小に分割する領域に形成した非給電部と、
を備え、
前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高め、しかも、前記非給電部を反射板として機能させ、前記誘電体平面基板上に前記非給電部を境とする相対的に電磁界密度が大小に異なる二か所の電磁界領域を形成することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
前記アクティブ電極、パッシブ電極の幅は、互いにほぼ等しく設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記ループ型平面電極を形成するための導電性材料層を利用して、アンテナ感度を調整するためのカップラ回路及びコンデンサ接続部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置は、家具に装着され、無線ICタグが装着されるとともに当該家具上に配置され又は家具内に収納されている物品を、管理或いは識別するために利用されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ装置付きの家具であって、前記家具上に配置され又は当該家具内に収納されたリーダライタを接続した前記アンテナ装置を備え、無線ICタグが装着されている前記家具上又は前記家具内の物品が、管理或いは識別されることを特徴とするアンテナ装置付きの家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電源部の周波数帯に影響されることが少なく指向性をあまり持たない高性能で、無線ICタグと通信を行うリーダライタに用いて好適なアンテナ特性を発揮するアンテナ装置、及び該アンテナ装置付きの家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、書籍、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスク)等の各種物品の管理に無線ICタグシステムが用いられている。
従来における無線ICタグシステムは、リーダライタと、リーダライタに接続したアンテナ装置とを有し、リーダライタから出力される電力はアンテナ装置を介して無線ICタグに向けて電波として放射されている。
そして、無線ICタグは、アンテナ装置から放射される電力又は電磁界を受信して駆動電力を得て、リーダライタに対してアンテナ装置を介してデータを送信するように構成されている。
このような従来の無線ICタグシステムでは、無線ICタグを動作させるためには、アンテナ装置から所定の電力密度以上の電力又は所定の磁力密度以上の電磁界が放射される交信領域内に無線ICタグが位置しなければならず、多様な交信エリアが形成されるアンテナ装置の開発が要請されている。
【0003】
特許文献1には、先に本願の出願人が特許取得したアンテナ装置であって、誘電体基板と、誘電体基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体とを有し、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、前記アンテナ構造体は、第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極を含むフローティング電極群と、フローティング電極群をはさんで対向するように形成され、電気的に相互接続されているとともにそれぞれ給電点を有する第1及び第2のアンテナパターンとを備え、前記第1及び第2のアンテナパターンのうち少なくとも一方のアンテナパターンは、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って所定の間隔で周期的に形成され、第1の方向に互いに平行に延在するとともに電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極、又は前記第1の方向に沿って所定の間隔で周期的に形成され、第1の方向と直交する第2の方向に延在するとともに電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極と、フローティング電極と平行に延在する細条状の複数の放射電極と、前記複数の放射電極を給電点に接続するループ電極とを含み、前記フローティング電極と放射電極は、前記第1の方向又は第2の方向に沿って交互に繰り返し形成されているアンテナ装置が開示されている。
【0004】
上記アンテナ装置の場合、平行に延在する電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極と、フローティング電極群をはさんで対向するように形成され、電気的に相互接続されているとともにそれぞれ給電点を有する電極を周波数比率から一定の制御パターンを生み出し、アンテナ装置の読み込み精度を高めている。
【0005】
この場合、前記アンテナ装置のアンテナパターンは、電気的特性を持つ電極と直交する同―方向に沿って所定の間隔で周期的に形成され、互いに平行に延在する電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極、又は、各方向に沿って所定の間隔で周期的に形成され、電気的にフローティング状態に維持される複数の細条状のフローティング電極と、フローティング電極と平行に延在する細条状の複数の放射電極とで構成しているが、使用される周波数によりアンテナ特性が異なるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4340717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来における実情に鑑み開発されたものであり、上記特許文献1の技術を踏まえ、使用される周波数帯に影響されることが少なく指向性をあまり持たない高性能で、無線ICタグと通信を行うリーダライタに用いて好適なアンテナ特性を発揮するアンテナ装置、及び該アンテナ装置付きの家具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、前記アンテナ構造体は、第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、を備え、前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高めることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、使用される周波数帯に影響されることが少なく指向性をあまり持たない高性能で、無線ICタグと通信を行うリーダライタに用いて好適なアンテナ特性を発揮するアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を奏し、かつ、単一で広面積化が可能な電磁界領域を有するアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を奏し、かつ、二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を奏し、かつ、電磁界密度が大小に異なる二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記アクティブ電極、パッシブ電極の幅は、互いにほぼ等しく設定されているので、誘電体平面基板上の電磁界密度の均一性を図ることができるアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項記載の発明において、前記ループ型平面電極を形成するための導電性材料層を利用して、アンテナ感度を調整するためのカップラ回路及びコンデンサ接続部が形成されているので、請求項1乃至5のいずれか1項記載のアンテナ装置のアンテナ感度調整が容易なアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0015】
請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置を家具に装着することにより、当該家具上に配置され又は家具内に収納されている無線ICタグが装着された物品の管理或いは識別を的確に行うことができるアンテナ装置を実現し提供することができる。
【0016】
請求項8記載の発明によれば、家具上に配置され又は当該家具内に収納されたリーダライタを接続した前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ装置を備え、無線ICタグが装着されている前記家具上又は前記家具内の物品が、管理或いは識別されるように構成しているので、当該物品の管理又は識別を的確に行うことができるアンテナ装置付きの家具を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の実施例1に係るアンテナ装置の概略平面図である。
図2図2は本実施例1に係るアンテナ装置の誘電体平面基板上の電磁界分布を模式的に示す説明図である。
図3図3は本発明の実施例2に係るアンテナ装置の概略平面図である。
図4図4は本実施例2に係るアンテナ装置の誘電体平面基板上の電磁界分布を模式的に示す説明図である。
図5図5は本発明の実施例3に係るアンテナ装置の概略平面図である。
図6図6は本実施例3に係るアンテナ装置の誘電体平面基板上の電磁界分布を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、駆動電源部の周波数帯に影響されることが少なく指向性をあまり持たない高性能で、無線ICタグと通信を行うリーダライタに用いて好適なアンテナ特性を発揮するアンテナ装置を実現し提供するという目的を、誘電体平面基板上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体を含み、無線ICタグとの間で通信するためのアンテナ装置であって、前記アンテナ構造体は、第1の方向に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数の細条状のアクティブ電極を含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群と、前記アクティブ電極群をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数の細条状のパッシブ電極を含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群と、前記複数のアクティブ電極を給電点に接続するループ型平面電極と、前記誘電体平面基板上で前記アクティブ電極群、パッシブ電極群に隣接する領域に形成した非給電部と、を備え、前記アクティブ電極、前記パッシブ電極間に電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ型平面電極と前記パッシブ電極間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板上の電磁界密度を高め、しかも、前記非給電部を反射板として機能させ、前記誘電体平面基板上に単一の電磁界領域を形成する構成により実現した。
【実施例
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るアンテナ装置及び該アンテナ装置付きの家具について詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例1に係るアンテナ装置1について、図1図2を参照して、以下説明する。
【0021】
最初に、本実施例1に係るアンテナ装置1を備える無線ICタグシステムについて概説する。
【0022】
アンテナ装置1を備える無線ICタグシステムは、情報入出力装置(コンピュータ)と、リーダライタと、アンテナ装置1と、各種物品に装着された無線ICタグとを備え、無線ICタグが装着された物品を識別又は管理するために利用される。
駆動電源部として機能するリーダライタは、アンテナ装置1を介して無線ICタグへの電力又は磁界の供給及び信号の送信を無線により行うとともに、アンテナ装置1を介して無線ICタグから送信された信号の受信を無線により行う。
【0023】
本実施例1に係るアンテナ装置1は、誘電体平面基板3上に形成した導電性材料層により構成されるアンテナ構造体2を含み、図示するものではないが、無線ICタグとの間で無線通信するためのアンテナ装置1である。
【0024】
前記アンテナ構造体2は、第1の方向(x方向)に互いに平行に延在し、電気的にアクティブ状態に維持される複数(本実施例1では8条)の細条状のアクティブ電極5a~5hを含む電気的に相互接続されているアクティブ電極群4と、前記アクティブ電極群4をはさんで同方向に延在し、かつ、対向するように形成された複数(本実施例1では9条)の細条状のパッシブ電極6a~6iを含む電気的に相互接続されていないパッシブ電極群7と、前記各アクティブ電極5a~5hを前記誘電体平面基板3上に形成した導電性材料層の一部に設ける図示しない駆動電源部から駆動電力が供給される給電点P1、P2に接続するループ電極(ループ型平面電極)8と、を備えている。
【0025】
前記ループ電極8は、主として誘電体平面基板3の周辺部に沿って、かつ、前記パッシブ電極6a~6iの略全体を囲むように誘電体平面基板3上において導電性材料層により形成している。
【0026】
更に、前記アンテナ構造体2は、前記ループ電極8の一部を形成するための導電性材料層を利用して、アンテナ感度を調整するためのカップラ回路9を接続し、また、図示しないアンテナ感度を調整するためのコンデンサを接続するためのコンデンサ接続部10を設けている。
【0027】
本実施例1に係るアンテナ装置1の前記アンテナ構造体2は、前記誘電体平面基板3上において前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7に隣接する領域で、かつ、図1における右辺側のループ電極8の一部の領域との間に、導電性材料層が存在しない矩形状の非給電部11aを形成している。
【0028】
この他、本実施例1に係るアンテナ装置1の前記アンテナ構造体2は、前記誘電体平面基板3上における図1において左上隅部、右上隅部の各領域に各々導電性材料層が存在しない非給電部11b、11cを形成し、更に、前記カップラ回路9及びコンデンサ接続部10の近傍領域にも細幅の非給電部11dを形成している。
【0029】
前記誘電体平面基板3としては、PVC、PET、PC、ABS、アクリル樹脂等の各種樹脂材料の基板、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板等を用いることができる。
【0030】
本実施例1において、前記誘電体平面基板3の表面上には、銅層とはんだ層とを含む導電性材料層が形成されて、エッチング処理又は罫書き処理により、前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7及びループ電極8を形成し、かつ、パッシブ電極群7をアクティブ電極群4、ループ電極8から隔離する細隙部12を設けるものである。
【0031】
次に、前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7及びループ電極8の電磁気学理論に基づいた形成手法について概説する。
【0032】
前記誘電体平面基板3の寸法、前記非給電部11dの寸法を考慮しつつ、前記アクティブ電極群4のアクティブ電極5a~5h、パッシブ電極群7のパッシブ電極6a~6iの表面積を計算で算出する。
【0033】
そして、アクティブ電極5a~5hやパッシブ電極6a~6iの縦横の長さを計算で求めて、駆動電源部の電圧又は電流の波長の長さを1/64に分割した長さを基準として長さ、面積比を算出して、アクティブ電極5a~5hやパッシブ電極6a~6iの割合を算出し、算出した数値から、各電極の長さを決定する。
【0034】
また、どのような方法で無線ICタグを読ませるかを考慮し、前記誘電体平面基板3上における磁界密度の計算値も考慮し、各電極の幅を決定する。
【0035】
これにより、前記誘電体平面基板3の表面上に、長さ、幅、更には、配置個数が設定されたアクティブ電極5a、5b、5c・・・やパッシブ電極6a、6b、6c・・・を形成する。
【0036】
すなわち、本実施例1に係るアンテナ装置1においては、給電点P1、P2の位置により電界強度の電気的特性を、アクティブ電極5a~5hやパッシブ電極6a~6iの電極幅により接触面積と位置を設定する。
【0037】
この際、上述した位置の設定には周波数や波長の長さは関係しない。電気的特性は接続部分が一番強くなるという特性を利用する。
【0038】
更に、詳述すると、前記非給電部11aによる反射波によって生じる前記誘電体平面基板3の表面上の電磁界のわずかな位相のずれを計算により求めて、隣接する各電極の距離・該当する各電極同士の面積・給電点P1、P2の位置・各電極の数等を設定する。
【0039】
本実施例1に係るアンテナ装置1によれば、前記アクティブ電極5a~5h、前記パッシブ電極6a~6i間に、電磁誘導による電磁界を生成するとともに、前記ループ電極8と前記パッシブ電極6a~6i間に電磁的な相互干渉による前記電磁界と位相が異なる電磁界を生成して、同一電磁界内に位相の異なる磁場を構成しつつ前記誘電体平面基板3上の電磁界密度を高め、電磁界放出距離を大とするとともに、前記非給電部11aを反射板として機能させ、図2に模式的に示すように、前記誘電体平面基板3上(x-z面)に、単一で、前記パッシブ電極群7の存在する領域に略相当する領域にわたる電磁界領域を形成することができる。
【0040】
図2に示す観測結果に基づけば、比較的広面積で単一の交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置1を実現することができる。
【0041】
これにより、検出対象である無線ICタグ同士の距離を縮め、10枚程度重ねた無線ICタグの読取を可能とし、電磁界密度を高めることにより同一磁界に存在する多数の無線ICタグに対する電圧降下等による読取不良を克服して、複数の無線ICタグを一枚構成で読取ることを可能とし、また、駆動電源部の周波数帯に影響されることが少なく指向性をあまり持たない高性能で、しかも、アンテナ面に対する無線ICタグの位置に関して縦横斜めと無制約で読み取り可能な単一で、かつ、広面積化が可能な電磁界領域を有するアンテナ装置1を提供することができる。
【0042】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2に係るアンテナ装置1Aについて図3図4を参照して説明する。
【0043】
なお、本実施例2に係るアンテナ装置1Aにおいて、既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0044】
本実施例2に係るアンテナ装置1Aは、基本的構成は既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と同様であるが、前記非給電部11aに替えて、導電性材料層が存在しない非給電部21を前記誘電体平面基板3上で前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7を二分する領域に形成し、前記非給電部を反射板として機能させるとともに、前記誘電体平面基板3上に前記非給電部21を境とする図4に模式的に示すような二か所の電磁界領域を形成する構成としたことが特徴である。
【0045】
図4に示す観測結果に基づけば、二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置1Aを実現することができる。
【0046】
本実施例2に係るアンテナ装置1Aによれば、既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と略同様な効果を奏し、かつ、二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置1Aを提供することができる。
【0047】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3に係るアンテナ装置1Bについて図5図6を参照して説明する。
【0048】
なお、本実施例3に係るアンテナ装置1Bにおいて、既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0049】
本実施例3に係るアンテナ装置1Bは、基本的構成は既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と同様であるが、前記非給電部11aに替えて、導電性材料層が存在しない非給電部31を前記誘電体平面基板3上で前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7を大小に分割する領域に形成したこと、前記アクティブ電極群4、パッシブ電極群7の各長さを実施例1、2の場合よりも短くすることでループ電極8のx方向の両隅における面積を実施例1、2の場合よりも広くし、さらに、アクティブ電極群4を4条のアクティブ電極5a~5d、パッシブ電極群7を5条のパッシブ電極6a~6eとしたことが特徴である。
【0050】
図6は本実施例3に係るアンテナ装置1Bにおける前記誘電体平面基板3上の二か所の電磁界領域を模式的に示すものである。
【0051】
図6に示す観測結果に基づけば、非給電部31を境として相対的に電磁界密度が大小に異なる二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置1Bを実現することができる。
【0052】
この場合、本実施例3に係るアンテナ装置1Bにおいては、上述した構成から電磁界密度が大小に異なる前記二か所の電磁界領域の電磁界レベルは、前記実施例2の場合よりも小さくなる。
【0053】
本実施例3に係るアンテナ装置1Bによれば、既述した実施例1に係るアンテナ装置1の場合と略同様な効果を奏し、かつ、電磁界密度が大小に異なる二か所の電磁界領域からなる交信エリアを必要とする用途に有益なアンテナ装置1Bを提供することができる。
【0054】
上述したアンテナ装置1、1A、1Bの用途としては、例えば、図示するものではないが、家具や書棚、物品収納棚等に装着し、無線ICタグが装着されるとともに当該家具上等に配置され又は家具等の内に収納されている物品を、管理或いは識別するために利用することができる。
【0055】
また、特に図示するものではないが、家具上に配置され又は当該家具内に収納されたリーダライタを接続した前記アンテナ装置1、1A、1Bのいずれかを備え、無線ICタグが装着されている前記家具上又は前記家具内の物品が、管理或いは識別されるように構成したアンテナ装置付きの家具を構成することができる。
【0056】
上述した、アンテナ装置付きの家具に替えて、書棚、物品収納棚等を採用し、アンテナ装置付きの書棚、アンテナ装置付きの物品収納棚等とすることも勿論可能である。
【0057】
本発明は、上述した実施例1乃至3に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。
【0058】
例えば、前記アクティブ電極群4、前記パッシブ電極群7の各電極の幅、本数は、前記誘電体平面基板3のサイズ、形成すべき交信エリアの大きさや管理される物品の特性、物品に装着される無線ICタグの特性及びサイズ、並びにアンテナ装置1、1A、1Bのインピダンス値等の要求される特性に応じて種々に変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のアンテナ装置は、上述したような家具等に適用し、無線ICタグが装着されている前記家具上等又は前記家具等の内の物品の管理に適用する場合の他、各種工場における部品等の製造現場のコンベアラインに配置し、部品等の製造管理を行ったり、また、商品販売店舗の商品陳列棚等に配置し、販売商品の販売管理を行うような用途等に極めて広範に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 アンテナ装置
1A (第2実施例の)アンテナ装置
1B (第3実施例の)アンテナ装置
2 アンテナ構造体
3 誘電体平面基板
4 アクティブ電極群
5a~5h アクティブ電極
6a~6i パッシブ電極
7 パッシブ電極群
8 ループ電極(ループ型平面電極)
9 カップラ回路
10 コンデンサ接続部
11a~11d 非給電部
12 細隙部
21、31 非給電部
P1、P2 給電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6