特許 7455410 電動弁および電動弁の組立方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-03-15

(45)【発行日】2024-03-26

(54)【発明の名称】電動弁および電動弁の組立方法

(51)【国際特許分類】

   F16K 31/04 20060101AFI20240318BHJP

【ＦＩ】

F16K31/04 K

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2022045421

(22)【出願日】2022-03-22

(65)【公開番号】P2023139735

(43)【公開日】2023-10-04

【審査請求日】2023-01-23

(73)【特許権者】

【識別番号】391002166

【氏名又は名称】株式会社不二工機

(74)【代理人】

【識別番号】110002608

【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】矢沢 将志

(72)【発明者】

【氏名】大江 佑馬

【審査官】岩田 健一

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１９－０６０４９８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－０８７８５６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｋ ３１／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁であって、
前記弁体が、柱形状の軸部と、前記軸部に固定された制御部と、前記軸部に固定された移動規制部と、を有し、前記弁体が前記軸部の軸方向に移動され、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、
前記制御面が前記弁口の一端に前記軸方向に接すると、前記弁口が閉じ、
前記移動規制部が前記弁本体に前記軸方向に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると同時に前記移動規制部が前記弁本体に接することを特徴とする電動弁。

【請求項2】

前記弁本体が、前記弁口を囲む内向きのテーパー面である弁座を有し、
前記移動規制部が、外向きのテーパー面である移動規制面を有し、
前記移動規制面が前記弁座の外周縁に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると同時に前記移動規制面が前記弁座の外周縁に接し、
前記制御面が前記弁口の一端から離れると同時に前記移動規制面が前記弁座から離れる、請求項１に記載の電動弁。

【請求項3】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁であって、
前記弁体が、制御部と、支持部と、を有し、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記支持部が、前記制御部を前記弁体の移動方向に移動可能に支持し、
前記制御部が、ばねによって前記弁口に向かって押されており、
前記弁口を閉じるとき、前記制御面が前記弁口の一端に接した後に前記支持部が前記弁本体に接し、
前記弁口を開くとき、前記制御面が前記弁口の一端から離れる前に前記支持部が前記弁本体から離れることを特徴とする電動弁。

【請求項4】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、
前記弁体が、軸部と、制御部と、移動規制部と、を有し、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記軸部に連設され、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、
前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記制御面が前記弁口の一端に接した状態において前記移動規制部を前記弁本体に接触させ、前記移動規制部を前記軸部または前記制御部に接合することを特徴とする電動弁の組立方法。

【請求項5】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、
前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、
前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記移動規制部が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、
前記制御面が前記弁口の一端に接した状態において前記移動規制部を前記弁口に近づけて前記取付孔に前記制御部を挿入するとともに前記移動規制部を前記弁本体に接触させ、前記移動規制部を前記制御部に接合することを特徴とする電動弁の組立方法。

【請求項6】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、
前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、
前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記弁本体が、本体部材と、前記弁口を有する弁座部材と、を有し、
前記本体部材が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、
前記移動規制部が前記弁本体に接した状態において前記取付孔に前記弁座部材を挿入して前記制御面を前記弁口の一端に接触させ、前記弁座部材を前記本体部材に接合することを特徴とする電動弁の組立方法。

【請求項7】

弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、
前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、
前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記移動規制部に連設され、
前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、
前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、
前記弁本体が、本体部材と、移動規制部材と、を有し、
前記本体部材が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、
前記制御部が前記弁口の一端に接した状態において前記取付孔に前記移動規制部材を挿入して前記移動規制部材を前記移動規制部に接触させ、前記移動規制部材を前記本体部材に接合することを特徴とする電動弁の組立方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、電動弁および電動弁の組立方法に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンなどが有する冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。ローターの回転に応じて弁体が移動し、弁本体の弁口を流れる流体の流量が変化する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１８－１７９１３３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

図１８に、従来の電動弁が有する弁体の一例を示す。図１８に示す弁体９３０は、制御部９３５と、着座部９３７と、を有している。制御部９３５は、外向きのテーパー面である制御面９３６を有している。着座部９３７は、外向きのテーパー面である着座面９３８を有している。着座面９３８の下端に、制御面９３６の上端が連設されている。制御面９３６のテーパー角度は、着座面９３８のテーパー角度より小さい。着座面９３８が弁口９１５の上端９１６ａに接すると、弁口９１５が閉じる。着座面９３８が上端９１６ａから離れると、弁口９１５が開き、弁体９３０と上端９１６ａとの間に絞り流路が形成される。

【0005】

絞り流路の面積は、弁口９１５を流れる流体の流量と密接な関係性を有する。図１９に、ステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口９１５を流れる流体の流量との関係を示す。

【0006】

着座面９３８が上端９１６ａから離れた直後は、着座面９３８と上端９１６ａとの間に絞り流路が形成される。着座面９３８が上端９１６ａからさらに離れると、制御面９３６と上端９１６ａとの間に絞り流路が形成される。そのため、図２０に示すように、着座面９３８が上端９１６ａから離れて弁口９１５が開いた直後は１パルスあたりの流量の変化が大きく、流量を細かく制御することができなかった。

【0007】

着座面９３８に代えて、制御面９３６が上端９１６ａに接するようにすることで、弁口９１５が開いた直後の流量が小さいときに１パルスあたりの流量の変化が小さくなり、流量を細かく制御することが可能になる。しかしながら、制御面９３６のテーパー角度が着座面９３８のテーパー角度より小さいため、上端９１６ａの摩耗の進みが早い。そのため、電動弁の寿命が短くなってしまう。

【0008】

そこで、本発明は、弁口を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができる長寿命の電動弁および電動弁の組立方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁であって、前記弁体が、柱形状の軸部と、前記軸部に固定された制御部と、前記軸部に固定された移動規制部と、を有し、前記弁体が前記軸部の軸方向に移動され、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記制御面が前記弁口の一端に前記軸方向に接すると、前記弁口が閉じ、前記移動規制部が前記弁本体に前記軸方向に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記制御面が前記弁口の一端に接すると同時に前記移動規制部が前記弁本体に接することを特徴とする。

【0010】

本発明によれば、弁口が閉じると同時に制御部の弁口への移動が規制される。これにより、弁口が閉じた後に制御面が弁口の一端に押し付けられることを防ぐことができる。そのため、制御面のテーパー角度が小さい場合でも、弁口の一端の摩耗を抑えることができる。したがって、弁口を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができるとともに、電動弁の寿命を延ばすことができる。

【0011】

本発明において、前記弁本体が、前記弁口を囲む内向きのテーパー面である弁座を有し、前記移動規制部が、外向きのテーパー面である移動規制面を有し、前記移動規制面が前記弁座の外周縁に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記制御面が前記弁口の一端に接すると同時に前記移動規制面が前記弁座の外周縁に接し、前記制御面が前記弁口の一端から離れると同時に前記移動規制面が前記弁座から離れる、ことが好ましい。このようにすることで、制御面が弁口を閉じるとともに移動規制面が弁座の外周縁を閉じて、弁漏れをより効果的に抑制することができる。

【0012】

上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁であって、前記弁体が、制御部と、支持部と、を有し、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記支持部が、前記制御部を前記弁体の移動方向に移動可能に支持し、前記制御部が、ばねによって前記弁口に向かって押されており、前記弁口を閉じるとき、前記制御面が前記弁口の一端に接した後に前記支持部が前記弁本体に接し、前記弁口を開くとき、前記制御面が前記弁口の一端から離れる前に前記支持部が前記弁本体から離れることを特徴とする。

【0013】

本発明によれば、弁口を閉じるとき、弁体（制御部および支持部）が弁口に近づき、制御面が弁口の一端に接して制御部の弁口への移動が規制され、その後、制御部を弁口に向かって押すばねが縮んで支持部が弁本体に接する。弁口を開くとき、支持部が弁本体から離れてばねが伸び、その後、制御面が弁口の一端から離れる。これにより、弁口が閉じた後に制御面が弁口の一端に強く押し付けられることを防ぐことができる。そのため、制御面のテーパー角度が小さい場合でも、弁口の一端の摩耗を抑えることができる。したがって、弁口を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができるとともに、電動弁の寿命を延ばすことができる。

【0014】

上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の組立方法は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、前記弁体が、軸部と、制御部と、移動規制部と、を有し、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記軸部に連設され、前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記制御面が前記弁口の一端に接した状態において前記移動規制部を前記弁本体に接触させ、前記移動規制部を前記軸部または前記制御部に接合することを特徴とする。

【0015】

本発明によれば、制御面が弁口の一端に接した状態において、移動規制部における弁体の移動方向の位置を調整して、移動規制部を弁本体に接触させる。その後、移動規制部を軸部または制御部に接合する。このようにしたことから、弁体および弁本体の作製に高精度の切削加工が不要になる。そのため、制御面が弁口の一端に接すると同時に移動規制部が弁本体に接する電動弁を低コストで製造することができる。

【0016】

上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の組立方法は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記移動規制部が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、前記制御面が前記弁口の一端に接した状態において前記移動規制部を前記弁口に近づけて前記取付孔に前記制御部を挿入するとともに前記移動規制部を前記弁本体に接触させ、前記移動規制部を前記制御部に接合することを特徴とする。

【0017】

本発明によれば、制御面が弁口の一端に接した状態において、移動規制部を弁口に近づけて取付孔に制御部を挿入し、移動規制部における弁体の移動方向の位置を調整して、移動規制部を弁本体に接触させる。その後、移動規制部を制御部に接合する。このようにしたことから、弁体および弁本体の作製に高精度の切削加工が不要になる。そのため、制御面が弁口の一端に接すると同時に移動規制部が弁本体に接する電動弁を低コストで製造することができる。

【0018】

上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の組立方法は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記弁本体が、本体部材と、前記弁口を有する弁座部材と、を有し、前記本体部材が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、前記移動規制部が前記弁本体に接した状態において前記取付孔に前記弁座部材を挿入して前記制御面を前記弁口の一端に接触させ、前記弁座部材を前記本体部材に接合することを特徴とする。

【0019】

本発明によれば、移動規制部が弁本体に接した状態において、取付孔に弁座部材を挿入し、弁座部材における弁体の移動方向の位置を調整して、制御面を弁口の一端に接触させる。その後、弁座部材を本体部材に接合する。このようにしたことから、弁体および弁本体の作製に高精度の切削加工が不要になり、制御面が弁口の一端に接すると同時に移動規制部が弁本体に接する電動弁を低コストで製造することができる。

【0020】

上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の組立方法は、弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉する弁体と、を有する電動弁の組立方法であって、前記弁体が、制御部と、移動規制部と、を有し、前記制御部が、外向きのテーパー面である制御面を有し、前記移動規制部に連設され、前記制御面が前記弁口の一端に接すると、前記弁口が閉じ、前記移動規制部が前記弁本体に接すると、前記制御部の前記弁口への移動が規制され、前記弁本体が、本体部材と、移動規制部材と、を有し、前記本体部材が、前記弁体の移動方向に延在する取付孔を有し、前記制御部が前記弁口の一端に接した状態において前記取付孔に前記移動規制部材を挿入して前記移動規制部材を前記移動規制部に接触させ、前記移動規制部材を前記本体部材に接合することを特徴とする。

【0021】

本発明によれば、制御部が弁口の一端に接した状態において、取付孔に移動規制部材を挿入し、移動規制部材における弁体の移動方向の位置を調整して、移動規制部材を移動規制部に接触させる。その後、移動規制部材を本体部材に接合する。このようにしたことから、弁体および弁本体の作製に高精度の切削加工が不要になり、制御面が弁口の一端に接すると同時に移動規制部が弁本体に接する電動弁を低コストで製造することができる。

【発明の効果】

【0022】

本発明によれば、弁口を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができるとともに、電動弁の寿命を延ばすことができる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】本発明の第１実施例に係る電動弁の断面図である。

【図2】図１の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図3】図２の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図4】本発明の第２実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図5】図４の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図6】本発明の第３実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図7】図６の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図8】本発明の第４実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図9】図８の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図10】本発明の第５実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図11】図１０の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図12】本発明の第６実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図13】図１２の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図14】本発明の第７実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図15】図１４の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図16】本発明の第８実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。

【図17】図１６の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図18】従来の電動弁が有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。

【図19】従来の電動弁のステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口を流れる流体の流量との関係を示すグラフである。

【図20】図１９のグラフの一部を拡大したグラフである。

【発明を実施するための形態】

【0024】

以下、本発明の第１実施例～第８実施例に係る電動弁について、図１～図１７を参照して説明する。各実施例に係る電動弁は、例えば、エアコンの冷凍サイクルにおいて冷媒流量を制御する流量制御弁として使用される。

【0025】

（第１実施例）
図１は、本発明の第１実施例に係る電動弁の断面図である。図２は、図１の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図３は、図２の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図２、図３において、弁体（移動規制部を除く）は正面から見た状態で示されている。

【0026】

本実施例に係る電動弁１は、弁本体アセンブリ５と、ステーターユニット７と、を有している。

【0027】

弁本体アセンブリ５は、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０と、駆動機構４０と、を有している。

【0028】

弁本体１０は、本体部材１１と、接続部材１３と、を有している。

【0029】

本体部材１１は、円柱形状を有している。本体部材１１は、弁室１４と、弁口１５と、弁座１８と、を有している。弁口１５は、オリフィス部１６と、導流部１７と、を有している。オリフィス部１６は、弁室１４において弁座１８に囲まれている。弁座１８は、径方向内向きの環状のテーパー面である。オリフィス部１６の上端１６ａ（弁口１５の一端）は、弁座１８の内周縁に連設されている。上端１６ａは、実質的に弁座１８の内周縁でもある。オリフィス部１６は、軸線Ｌ方向全体にわたって一定の内径を有している。導流部１７の上端は、オリフィス部１６の下端に連設されている。導流部１７は、上端から下端に向かうにしたがって内径が大きくなるテーパー形状を有している。

【0030】

本体部材１１には、第１導管２５および第２導管２６が接合される。第１導管２５は、軸線Ｌと直交する方向（左右方向）に沿って配置され、弁室１４に接続される。第２導管２６は、軸線Ｌ方向（上下方向）に沿って配置され、弁口１５を介して弁室１４に接続される。本体部材１１の上端面には、円形の嵌合穴１１ａが形成されている。嵌合穴１１ａの底面には、弁室１４に通じる軸孔１１ｂが形成されている。軸孔１１ｂには、弁体３０が軸線Ｌ方向に移動可能に配置される。

【0031】

接続部材１３は、円環板形状を有している。接続部材１３の内周縁は、本体部材１１の上部に接合される。本体部材１１および接続部材１３は、アルミニウム合金、ステンレスまたは真ちゅうなどの金属製である。

【0032】

キャン２０は、ステンレスなどの金属製である。キャン２０は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。キャン２０の下端は、接続部材１３の外周縁に接合される。

【0033】

弁体３０は、第１軸部３１と、第２軸部３２と、第３軸部３３と、制御部３５と、移動規制部３７と、を有している。

【0034】

第１軸部３１、第２軸部３２および第３軸部３３は、円柱形状を有している。第２軸部３２の外径は、第１軸部３１の外径より小さい。第３軸部３３の外径は、第１軸部３１の外径より小さい。第２軸部３２は、第１軸部３１の上端に同軸に連設されている。第１軸部３１と第２軸部３２との連設部分に、上方を向く環状平面である段部３４が形成されている。第３軸部３３は、第１軸部３１の下端に同軸に連設されている。制御部３５は、第３軸部３３の下端に同軸に連設されている。第１軸部３１、第２軸部３２、第３軸部３３および制御部３５は、一体的に形成されている。

【0035】

制御部３５は、上部３５ａが円柱形状を有しており、下部３５ｂがテーパー形状を有している。制御部３５の下部３５ｂは、径方向外向きの環状のテーパー面である制御面３６を有している。制御面３６は、上端３６ａから下端３６ｂに向かうにしたがって外径が徐々に小さくなる。制御面３６の上端３６ａの外径は、オリフィス部１６の内径より大きい。制御面３６の下端３６ｂの外径は、オリフィス部１６の内径より小さい。

【0036】

移動規制部３７は、円筒形状を有している。移動規制部３７の外径は、第１軸部３１の外径と同じである。移動規制部３７の内側に、第３軸部３３および制御部３５の上部３５ａが配置される。移動規制部３７の下部は、径方向外向きの環状のテーパー面である移動規制面３８を有している。移動規制面３８は、上端から下端に向かうにしたがって外径が徐々に小さくなる。移動規制部３７は、第３軸部３３または制御部３５に溶接される。移動規制部３７は、第３軸部３３または制御部３５にろう材や接着剤によって接合されてもよい。または、移動規制部３７に第３軸部３３または制御部３５が圧入されて、移動規制部３７と第３軸部３３または制御部３５とが互いに固定されていてもよい。また、移動規制部３７は、第３軸部３３にねじ構造によって取り付けられてもよい。

【0037】

制御面３６のテーパー角度は、弁座１８のテーパー角度より小さい。移動規制面３８のテーパー角度は、弁座１８のテーパー角度より大きい。

【0038】

弁体３０の組み立てでは、第３軸部３３および制御部３５を移動規制部３７に挿入する。そして、制御面３６が弁口１５の上端１６ａ（弁座１８の内周縁）に接した状態において、移動規制部３７における軸線Ｌ方向の位置を調整して、移動規制面３８を弁座１８の外周縁１８ａに接触させる。その後、移動規制部３７を第３軸部３３または制御部３５に接合する。これにより、制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が外周縁１８ａに接する。

【0039】

なお、「制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が外周縁１８ａに接する」とは、電動弁１が、制御面３６と移動規制面３８とがともに弁座１８（上端１６ａ、外周縁１８ａ）に当接するタイミングを有することを意味する。同じ（実質的に同じを含む）ことが、後述する実施例２、３、４、６にも当てはまる。

【0040】

駆動機構４０は、弁体３０を軸線Ｌ方向に移動させる。軸線Ｌ方向は、弁体３０の移動方向である。弁体３０の移動によって弁口１５が開閉する。駆動機構４０は、ローター４１と、弁軸ホルダー４２と、ガイドブッシュ４３と、ストッパ部材４４と、固定具４５と、を有している。

【0041】

ローター４１は、円筒形状を有している。ローター４１の外径は、キャン２０の内径より若干小さい。ローター４１は、キャン２０の内側に配置される。ローター４１は、弁本体１０に対して回転可能である。ローター４１の外周面には、複数のＮ極および複数のＳ極が形成されている。

【0042】

弁軸ホルダー４２は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。弁軸ホルダー４２はローター４１の嵌合孔４１ａに嵌合される。弁軸ホルダー４２は、ローター４１と共に回転する。弁軸ホルダー４２は、可動ストッパ４２ｓを有している。可動ストッパ４２ｓは、弁軸ホルダー４２の外周面の下部から径方向外方に突出している。弁軸ホルダー４２の上壁部４２ａには、軸孔４２ｂが形成されている。軸孔４２ｂには、弁体３０の第２軸部３２が軸線Ｌ方向に移動可能に配置される。弁軸ホルダー４２の上壁部４２ａの下面にはワッシャー４６が配置される。ワッシャー４６と弁体３０の段部３４との間には閉弁ばね４７が配置される。閉弁ばね４７は、コイルばねであり、弁体３０を弁座１８に向けて押す。弁軸ホルダー４２の内周面には、雌ねじ４２ｃが形成されている。可動ストッパ４２ｓは、ローター４１に対して固定される。

【0043】

ガイドブッシュ４３は、基部４３ａと、支持部４３ｂと、を有している。基部４３ａと支持部４３ｂとは、円筒形状を有している。基部４３ａは本体部材１１の嵌合穴１１ａに圧入される。支持部４３ｂの外径は、基部４３ａの外径より小さい。支持部４３ｂの内径は、基部４３ａの内径と同一である。支持部４３ｂは、基部４３ａの上端に同軸に連設されている。支持部４３ｂの外周面には、雄ねじ４３ｃが形成されている。雄ねじ４３ｃは、弁軸ホルダー４２の雌ねじ４２ｃと螺合される。ガイドブッシュ４３の内側には、弁体３０の第１軸部３１が配置される。ガイドブッシュ４３は、弁体３０を軸線Ｌ方向に移動可能に支持する。

【0044】

ストッパ部材４４は、ストッパ本体４４ａを有している。ストッパ本体４４ａは、円筒形状を有している。ストッパ本体４４ａは、ガイドブッシュ４３の支持部４３ｂの下端部に取り付けられている。ストッパ本体４４ａには、固定ストッパ４４ｓが設けられている。固定ストッパ４４ｓは、ストッパ本体４４ａの外周面から径方向外方に突出している。固定ストッパ４４ｓは、弁本体１０に対して固定される。

【0045】

固定具４５は、固定部４５ａと、フランジ部４５ｂと、を有している。固定部４５ａは、段付きの円筒形状を有している。固定部４５ａの内側には、弁体３０の第２軸部３２が配置される。固定部４５ａは、第２軸部３２に接合される。フランジ部４５ｂは、固定部４５ａの下端に連設されている。固定具４５の外側には、復帰ばね４８が配置される。復帰ばね４８は、コイルばねである。

【0046】

ステーターユニット７は、ステーター６０と、ステーター６０を収容するハウジング７０と、を有している。ステーター６０は、円筒形状を有している。ステーター６０の内側には、キャン２０が配置される。ステーター６０は、キャン２０の内側に配置されたローター４１とともにステッピングモーター６６を構成する。

【0047】

電動弁１において、弁本体１０（本体部材１１、接続部材１３）、弁口１５、弁座１８、キャン２０、弁体３０、ローター４１、弁軸ホルダー４２、ガイドブッシュ４３、ステーター６０は、それぞれの中心軸が軸線Ｌに一致する。

【0048】

次に、電動弁１の動作について説明する。

【0049】

ステッピングモーター６６のステーター６０にパルスに応じた駆動電流が供給され、ローター４１が一方向に回転すると、弁軸ホルダー４２の雌ねじ４２ｃとガイドブッシュ４３の雄ねじ４３ｃとのねじ送り作用によってローター４１が下方に移動する。ローター４１が、閉弁ばね４７を介して弁体３０を下方に押す。弁体３０が下方に移動して、制御部３５の制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接し、同時に、移動規制部３７の移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接する。これにより、弁口１５が閉じ、弁体３０の下方への移動（弁口１５への移動）が規制される。この状態からローター４１が一方向にさらに回転すると、閉弁ばね４７が圧縮されてローター４１が下方にさらに移動する。弁体３０は下方に移動しない。そして、弁軸ホルダー４２の可動ストッパ４２ｓがストッパ部材４４の固定ストッパ４４ｓに接すると、ローター４１の一方向への回転が規制される。可動ストッパ４２ｓと固定ストッパ４４ｓとは、ローター４１の一方向への回転を規制するストッパ機構４９を構成する。

【0050】

ステッピングモーター６６のステーター６０にパルスに応じた駆動電流が供給され、ローター４１が他方向に回転すると、弁軸ホルダー４２の雌ねじ４２ｃとガイドブッシュ４３の雄ねじ４３ｃとのねじ送り作用によってローター４１が上方に移動する。ローター４１と共に弁軸ホルダー４２が上方に移動して、弁軸ホルダー４２が固定具４５を上方に押す。固定具４５とともに弁体３０が上方に移動して、制御部３５の制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れ、同時に、移動規制部３７の移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａから離れる。

【0051】

電動弁１において、流量制御中に弁体３０が下方（閉弁方向）に移動すると、制御面３６と移動規制面３８とが同時に弁座１８（上端１６ａ、外周縁１８ａ）に接する。流量制御中に弁体３０が上方（開弁方向）に移動すると、制御面３６と移動規制面３８とが同時に弁座１８から離れる。本実施例において、「同時」とは、厳密に同時に動作する場合と、動作のずれが所定の許容範囲内である場合と、を含む。所定の許容範囲とは、ステッピングモーター６６のローター４１が所定数のパルスに応じて回転する範囲である。すなわち、制御面３６（または移動規制面３８）が弁座１８に接したときからローター４１が所定数のパルスに応じて回転する間に、移動規制面３８（または制御面３６）が弁座１８に接する場合も、「同時」に含む。制御面３６（または移動規制面３８）が弁座１８から離れたときからローター４１が所定数のパルスに応じて回転する間に、移動規制面３８（または制御面３６）が弁座１８から離れる場合も、「同時」に含む。「所定数」は１が望ましい。「所定数」は、弁体３０の形状のバリエーションや弁体３０の通常使用時における熱膨張を考慮すると１～３（弁体３０の移動量で最大０．０２ｍｍ程度）でもよい。同じ（実質的に同じを含む）ことが、後述する実施例２～７にも当てはまる。

【0052】

以上説明したように、本実施例に係る電動弁１は、弁口１５を有する弁本体１０と、弁口１５を開閉する弁体３０と、を有する。弁体３０が、制御部３５と、移動規制部３７と、を有する。制御部３５が、外向きのテーパー面である制御面３６を有する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。移動規制部３７が弁本体１０に接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。そして、制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制部３７が弁本体１０に接する。

【0053】

電動弁１において、弁口１５が閉じると同時に制御部３５の弁口１５への移動が規制される。これにより、弁口１５が閉じた後に制御面３６が弁口１５の上端１６ａに押し付けられることを防ぐことができる。そのため、制御面３６のテーパー角度が小さい場合でも、弁口１５の上端１６ａの摩耗を抑えることができる。したがって、弁口１５を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができるとともに、電動弁１の寿命を延ばすことができる。

【0054】

また、弁本体１０が、弁口１５を囲む内向きのテーパー面である弁座１８を有する。移動規制部３７が、外向きのテーパー面である移動規制面３８を有する。移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接する。そして、制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８が弁座１８から離れる。このようにすることで、制御面３６が弁口１５を閉じるとともに移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａを閉じて、弁漏れをより効果的に抑制することができる。

【0055】

また、電動弁１の組立方法では、制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接した状態において、移動規制部３７における軸線Ｌ方向の位置を調整して、移動規制部３７の移動規制面３８を弁座１８の外周縁１８ａに接触させる。その後、移動規制部３７を第３軸部３３または制御部３５に接合する。このようにしたことから、弁体３０および弁本体１０の作製に高精度の切削加工が不要になる。そのため、制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制部３７が弁本体１０に接する電動弁１を低コストで製造することができる。

【0056】

（第２実施例）
図４は、本発明の第２実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図５は、図４の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図４、図５において、弁体（移動規制部を除く）は正面から見た状態で示されている。各実施例の説明において、上述した電動弁１と同一（実質的に同一を含む）の構成には同一の符号を付して詳細説明を省略する。

【0057】

第２実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ａと、ステーターユニット７と、を有している。

【0058】

弁本体アセンブリ５Ａは、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０Ａと、駆動機構４０と、を有している。

【0059】

弁体３０Ａは、第１軸部３１と、第２軸部３２と、制御部３５と、移動規制部３７Ａと、を有している。

【0060】

制御部３５は、第１軸部３１の下端に同軸に連設されている。第１軸部３１、第２軸部３２および制御部３５は、一体的に形成されている。

【0061】

移動規制部３７Ａは、円環形状を有している。移動規制部３７Ａの内側に、制御部３５の上部３５ａが配置される。移動規制部３７Ａは、移動規制面３８を有している。移動規制部３７Ａは、制御部３５に溶接される。移動規制部３７Ａは、制御部３５にろう材や接着剤によって接合されてもよい。または、移動規制部３７Ａに制御部３５が圧入されて、移動規制部３７Ａと制御部３５とが互いに固定されていてもよい。

【0062】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。移動規制部３７Ａの移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が弁本体１０（外周縁１８ａ）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８が弁本体１０から離れる。

【0063】

弁体３０Ａの組み立てでは、制御部３５を移動規制部３７Ａに挿入する。そして、制御面３６が弁口１５の上端１６ａ（弁座１８の内周縁）に接した状態において、移動規制部３７Ａにおける軸線Ｌ方向の位置を調整して、移動規制面３８を弁座１８の外周縁１８ａに接触させる。その後、移動規制部３７Ａを制御部３５に接合する。これにより、制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が外周縁１８ａに接する。

【0064】

第２実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0065】

（第３実施例）
図６は、本発明の第３実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図７は、図６の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図６、図７において、弁体の制御部は正面から見た状態で示されている。

【0066】

第３実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｂと、ステーターユニット７と、を有している。

【0067】

弁本体アセンブリ５Ｂは、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０Ｂと、駆動機構４０と、を有している。

【0068】

弁体３０Ｂは、第１軸部３１Ｂと、第２軸部３２と、制御部３５と、を有している。

【0069】

第１軸部３１Ｂおよび第２軸部３２は、円柱形状を有している。第２軸部３２の外径は、第１軸部３１Ｂの外径より小さい。第２軸部３２は、第１軸部３１Ｂの上端に同軸に連設されている。第１軸部３１Ｂと第２軸部３２との連設部分に、上方を向く環状平面である段部３４が形成されている。第１軸部３１Ｂおよび第２軸部３２は、一体的に形成されている。

【0070】

第１軸部３１Ｂの下部は、移動規制面３８を有している。第１軸部３１Ｂの下部は、取付孔３９Ｂを有している。取付孔３９Ｂは、軸線Ｌ方向に延在し、下方に向けて開口している。取付孔３９Ｂの内径は、制御部３５の上部３５ａの外径と同一である。取付孔３９Ｂには、制御部３５の上部３５ａが配置される。制御部３５は、第１軸部３１Ｂに溶接される。制御部３５は、第１軸部３１Ｂにろう材や接着剤によって接合されていてもよい。または、第１軸部３１Ｂの取付孔３９Ｂに制御部３５が圧入されて、第１軸部３１Ｂと制御部３５とが互いに固定されていてもよい。第１軸部３１Ｂの下部は、移動規制部である。

【0071】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。第１軸部３１Ｂの移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が弁本体１０（外周縁１８ａ）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８が弁本体１０から離れる。

【0072】

弁体３０Ｂを組み立てでは、制御面３６が弁口１５の上端１６ａ（弁座１８の内周縁）に接した状態において、第１軸部３１Ｂを弁口１５に近づけて取付孔３９Ｂに制御部３５を挿入し、第１軸部３１Ｂにおける軸線Ｌ方向を調整して、移動規制面３８を弁座１８の外周縁１８ａに接触させる。その後、第１軸部３１Ｂを制御部３５に接合する。これにより、制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が外周縁１８ａに接する。

【0073】

第３実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0074】

（第４実施例）
図８は、本発明の第４実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図９は、図８の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図８、図９において、弁体（移動規制部を除く）は正面から見た状態で示されている。

【0075】

第４実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｃと、ステーターユニット７と、を有している。

【0076】

弁本体アセンブリ５Ｃは、弁本体１０Ｃと、キャン２０と、弁体３０と、駆動機構４０と、を有している。

【0077】

弁本体１０Ｃは、本体部材１１Ｃと、弁座部材１２Ｃと、接続部材１３と、を有している。

【0078】

本体部材１１Ｃは、円柱形状を有している。本体部材１１Ｃは、弁室１４と、取付孔１９Ｃと、を有している。取付孔１９Ｃは、軸線Ｌ方向に延在し、下方に向けて開口している。弁室１４と取付孔１９Ｃとは、孔１８Ｃを介して接続されている。

【0079】

弁座部材１２Ｃは、円板形状を有している。弁座部材１２Ｃは、弁口１５を有している。弁座部材１２Ｃの外径は、取付孔１９Ｃの内径と同一である。弁座部材１２Ｃは、取付孔１９Ｃに配置される。弁座部材１２Ｃは、本体部材１１Ｃに溶接される。弁座部材１２Ｃは、本体部材１１Ｃにろう材や接着剤によって接合されてもよい。または、本体部材１１Ｃの取付孔１９Ｃに弁座部材１２Ｃが圧入されて、本体部材１１Ｃと弁座部材１２Ｃとが互いに固定されていてもよい。弁口１５の上端１６ａは、孔１８Ｃと軸線Ｌ方向に向かい合っている。孔１８Ｃの内径は、弁口１５の上端１６ａの内径より大きい。弁口１５の上端１６ａは弁座である。

【0080】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。移動規制部３７の移動規制面３８が孔１８Ｃの上端１８ｃに接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が弁本体１０Ｃ（上端１８ｃ）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８が弁本体１０Ｃから離れる。

【0081】

弁本体アセンブリ５Ｃの組み立てでは、移動規制部３７を第３軸部３３または制御部３５に接合する。そして、移動規制面３８が孔１８Ｃの上端１８ｃに接した状態において、取付孔１９Ｃに弁座部材１２Ｃを挿入し、弁座部材１２Ｃにおける軸線Ｌ方向の位置を調整して、制御面３６を弁口１５の上端１６ａに接触させる。その後、弁座部材１２Ｃを本体部材１１Ｃに接合する。これにより、制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が上端１８ｃに接する。

【0082】

第４実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0083】

（第５実施例）
図１０は、本発明の第５実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図１１は、図１０の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図１０、図１１において、弁体（移動規制部を除く）は正面から見た状態で示されている。

【0084】

第５実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｄと、ステーターユニット７と、を有している。

【0085】

弁本体アセンブリ５Ｄは、弁本体１０Ｄと、キャン２０と、弁体３０Ｄと、駆動機構４０と、を有している。

【0086】

弁本体１０Ｄは、本体部材１１Ｄと、移動規制部材１２Ｄと、接続部材１３と、を有している。

【0087】

本体部材１１Ｄは、円柱形状を有している。本体部材１１Ｄは、弁室１４と、弁口１５と、弁座１８と、を有している。本体部材１１Ｄの上端面には、円形の嵌合穴１１ａが形成されている。嵌合穴１１ａの底面には、弁室１４に通じる取付孔１９Ｄが形成されている。取付孔１９Ｄは、軸線Ｌ方向に延在している。

【0088】

移動規制部材１２Ｄは、周壁部１２ａと、底壁部１２ｂと、を有している。周壁部１２ａは、円筒形状を有している。周壁部１２ａの外径は、取付孔１９Ｄの内径と同一である。底壁部１２ｂは、円板形状を有している。底壁部１２ｂは、周壁部１２ａの下端に連設されている。底壁部１２ｂの中央には、軸孔１２ｃが形成されている。移動規制部材１２Ｄは、取付孔１９Ｄに配置される。移動規制部材１２Ｄは、本体部材１１Ｄに溶接される。移動規制部材１２Ｄは、本体部材１１Ｄにろう材や接着剤によって接合されてもよい。または、本体部材１１Ｄの取付孔１９Ｄに移動規制部材１２Ｄが圧入されて、本体部材１１Ｄと移動規制部材１２Ｄとが互いに固定されていてもよい。

【0089】

弁体３０Ｄは、第１軸部３１Ｄと、第２軸部３２と、制御部３５と、を有している。

【0090】

第１軸部３１Ｄおよび第２軸部３２は、円柱形状を有している。弁体３０Ｄの第１軸部３１Ｄの外径は、周壁部１２ａの内径と同一である。第２軸部３２の外径は、第１軸部３１Ｄの外径より小さい。第２軸部３２は、第１軸部３１Ｄの上端に同軸に連設されている。第１軸部３１Ｄと第２軸部３２との連設部分に、上方を向く環状平面である段部３４が形成されている。制御部３５は、第１軸部３１Ｄの下端に同軸に連設されている。第１軸部３１Ｄ、第２軸部３２および制御部３５は、一体的に形成されている。

【0091】

第１軸部３１Ｄの下部は、下方を向く環状平面である移動規制面３８Ｄを有している。第１軸部３１Ｄの下部は、移動規制部材１２Ｄの内側に軸線Ｌ方向に移動可能に配置される。移動規制面３８Ｄは、第１軸部３１Ｄが下方に向けて移動すると移動規制部材１２Ｄの底壁部１２ｂに接して、第１軸部３１Ｄの下方への移動が規制される。第１軸部３１Ｄの下部は、移動規制部である。制御部３５の上部３５ａは、移動規制部材１２Ｄの軸孔１２ｃに軸線Ｌ方向に移動可能に配置される。

【0092】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。第１軸部３１Ｄの移動規制面３８Ｄが移動規制部材１２Ｄの底壁部１２ｂに接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８Ｄが弁本体１０Ｄ（底壁部１２ｂ）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８Ｄが弁本体１０Ｄから離れる。

【0093】

なお、「制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８Ｄが弁本体１０Ｄ（底壁部１２ｂ）に接する。」とは、電動弁１Ｄが制御面３６と移動規制面３８とがともに弁本体１０Ｄ（上端１６ａ、底壁部１２ｂ）に当接するタイミングを有することを意味する。同じ（実質的に同じを含む）ことが、後述する実施例７にも当てはまる。

【0094】

弁本体アセンブリ５Ｄの組み立てでは、制御部３５を移動規制部材１２Ｄの軸孔１２ｃに挿入する。そして、制御部３５が弁口１５の上端１６ａに接した状態において、取付孔１９Ｄに移動規制部材１２Ｄを挿入し、移動規制部材１２Ｄにおける軸線Ｌ方向の位置を調整して、移動規制面３８Ｄを移動規制部材１２Ｄの底壁部１２ｂに接触させる。その後、移動規制部材１２Ｄを本体部材１１Ｄに接合する。これにより、制御面３６が上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８Ｄが底壁部１２ｂに接する。

【0095】

第５実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0096】

（第６実施例）
図１２は、本発明の第６実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図１３は、図１２の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図１２、図１３において、弁体は正面から見た状態で示されている。

【0097】

第６実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｅと、ステーターユニット７と、を有している。

【0098】

弁本体アセンブリ５Ｅは、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０Ｅと、駆動機構４０と、を有している。

【0099】

弁体３０Ｅは、第１軸部３１と、第２軸部３２と、制御部３５Ｅと、移動規制部３７Ｅと、を有している。

【0100】

制御部３５Ｅは、上端から下端に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなるテーパー形状を有している。制御部３５Ｅは、制御面３６を有している。

【0101】

移動規制部３７Ｅは、第１軸部３１の下端に同軸に連設されている。移動規制部３７Ｅは、上端から下端に向かうにしたがって徐々に外径が小さくなるテーパー形状を有している。移動規制部３７Ｅは、移動規制面３８を有している。制御部３５Ｅは、移動規制部３７Ｅの下端に同軸に連設されている。制御部３５Ｅの制御面３６の上端３６ａは、移動規制面３８の下端に連設されている。第１軸部３１、第２軸部３２、制御部３５Ｅおよび移動規制部３７Ｅは、一体的に形成されている。

【0102】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。移動規制部３７Ｅの移動規制面３８が弁座１８の外周縁１８ａに接すると、制御部３５Ｅの弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８が弁本体１０（外周縁１８ａ）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８が弁本体１０から離れる。

【0103】

第６実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0104】

（第７実施例）
図１４は、本発明の第７実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図１５は、図１４の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図１４、図１５において、弁体は正面から見た状態で示されている。

【0105】

第７実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｆと、ステーターユニット７と、を有している。

【0106】

弁本体アセンブリ５Ｆは、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０Ｆと、駆動機構４０と、を有している。

【0107】

弁体３０Ｆは、第１軸部３１Ｆと、第２軸部３２と、制御部３５と、を有している。

【0108】

第１軸部３１Ｆおよび第２軸部３２は、円柱形状を有している。第２軸部３２の外径は、第１軸部３１Ｆの外径より小さい。第２軸部３２は、第１軸部３１Ｆの上端に同軸に連設されている。第１軸部３１Ｆと第２軸部３２との連設部分に、上方を向く環状平面である段部３４が形成されている。制御部３５は、第１軸部３１Ｆの下端に同軸に連設されている。第１軸部３１Ｆ、第２軸部３２および制御部３５は、一体的に形成されている。

【0109】

第１軸部３１Ｆの下部は、下方を向く環状平面である移動規制面３８Ｆを有している。移動規制面３８Ｆは、第１軸部３１Ｆが下方に向けて移動すると本体部材１１の嵌合穴１１ａの底面に接して、第１軸部３１Ｆの下方への移動が規制される。第１軸部３１Ｆの下部は、移動規制部である。制御部３５の上部３５ａは、本体部材１１の軸孔１１ｂに軸線Ｌ方向に移動可能に配置される。

【0110】

制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じる。第１軸部３１Ｆの移動規制面３８Ｆが弁本体１０の本体部材１１の嵌合穴１１ａの底面に接すると、制御部３５の弁口１５への移動が規制される。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると同時に移動規制面３８Ｆが弁本体１０（本体部材１１）に接する。制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れると同時に移動規制面３８Ｆが弁本体１０から離れる。

【0111】

第７実施例に係る電動弁は、上述した電動弁１と同様の作用効果を奏する。

【0112】

（第８実施例）
図１６は、本発明の第８実施例に係る電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図１７は、図１６の弁本体アセンブリが有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図１６、図１７において、弁体（支持部を除く）は正面から見た状態で示されている。

【0113】

第８実施例に係る電動弁は、弁本体アセンブリ５Ｇと、ステーターユニット７と、を有している。

【0114】

弁本体アセンブリ５Ｇは、弁本体１０と、キャン２０と、弁体３０Ｇと、駆動機構４０と、を有している。

【0115】

弁体３０Ｇは、第１軸部３１と、第２軸部３２と、第３軸部３３と、制御部３５Ｇと、支持部３７Ｇと、を有している。

【0116】

第１軸部３１、第２軸部３２および第３軸部３３は、一体的に形成されている。

【0117】

制御部３５Ｇは、第１軸部３１、第２軸部３２および第３軸部３３が一体化された部品とは別個の部品である。制御部３５Ｇは、上部３５ａが円柱形状を有しており、下部３５ｂがテーパー形状を有している。上部３５ａにおける軸線Ｌ方向の中央には、径方向外方に突出する突出部３５ｃが形成されている。制御部３５Ｇの下部３５ｂは、制御面３６を有している。制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接すると、弁口１５が閉じるとともに、制御部３５Ｇの弁口１５への移動が規制される。

【0118】

支持部３７Ｇは、円筒形状を有している。支持部３７Ｇの上部の内側には、第３軸部３３が同軸に配置される。支持部３７Ｇは、第３軸部３３に溶接される。支持部３７Ｇは、第３軸部３３にろう材や接着剤によって接合されてもよい。または、支持部３７Ｇに第３軸部３３が圧入されて、支持部３７Ｇと第３軸部３３とが互いに固定されていてもよい。支持部３７Ｇの内側には、制御部３５Ｇの上部３５ａが配置されている。支持部３７Ｇは、制御部３５Ｇを軸線Ｌ方向に移動可能に支持している。支持部３７Ｇの下端部の内径は、制御部３５Ｇの突出部３５ｃの外径より小さい。支持部３７Ｇの内側において、第３軸部３３の下端面と制御部３５Ｇの突出部３５ｃとの間にばね３９Ｇが配置される。ばね３９Ｇは、コイルばねである。ばね３９Ｇのばね定数は、閉弁ばね４７のばね定数より小さい。ばね３９Ｇは、制御部３５Ｇを弁口１５に向かって押している。支持部３７Ｇの下端から、制御部３５Ｇの下部３５ｂ（制御面３６）が突出している。支持部３７Ｇの下端面は、環状平面である移動規制面３８Ｇである。移動規制面３８Ｇは、支持部３７Ｇが下方に向けて移動すると本体部材１１に接して、支持部３７Ｇの下方への移動が規制される。

【0119】

第８実施例に係る電動弁は、弁口１５を閉じるとき、弁体３０Ｇ（制御部３５Ｇおよび支持部３７Ｇ）が弁口１５に近づき、制御面３６が弁口１５の上端１６ａに接して制御部３５Ｇの弁口１５への移動が規制される。その後、ばね３９Ｇが縮んで支持部３７Ｇが弁口１５に近づき、支持部３７Ｇの移動規制面３８Ｇが弁本体１０（本体部材１１）に接する。このとき、制御面３６と移動規制面３８Ｇとが共に弁本体１０（上端１６ａ、本体部材１１）に接する。弁口１５を開くとき、支持部３７Ｇが弁本体１０から離れてばね３９Ｇが伸びる。その後、制御部３５Ｇの突出部３５ｃが支持部３７Ｇに引っ掛かり、制御部３５Ｇが支持部３７Ｇとともに弁口１５から離れて、制御面３６が弁口１５の上端１６ａから離れる。これにより、弁口１５が閉じた後に制御面３６が弁口１５の上端１６ａに強く押し付けられることを防ぐことができる。そのため、制御面３６のテーパー角度が小さい場合でも、弁口１５の上端１６ａの摩耗を抑えることができる。したがって、弁口１５を流れる流体の流量が小さいときに流量を細かく制御することができるとともに、電動弁の寿命を延ばすことができる。

【0120】

本明細書において、「円筒」や「円柱」等の部材の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。

【0121】

上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0122】

（第１実施例）
１…電動弁、５…弁本体アセンブリ、７…ステーターユニット、１０…弁本体、１１…本体部材、１１ａ…嵌合穴、１１ｂ…軸孔、１３…接続部材、１４…弁室、１５…弁口、１６…オリフィス部、１６ａ…上端、１７…導流部、１８…弁座、１８ａ…外周縁、２０…キャン、２５…第１導管、２６…第２導管、３０…弁体、３１…第１軸部、３２…第２軸部、３３…第３軸部、３４…段部、３５…制御部、３５ａ…上部、３５ｂ…下部、３６…制御面、３６ａ…上端、３６ｂ…下端、３７…移動規制部、３８…移動規制面、４０…駆動機構、４１…ローター、４１ａ…嵌合孔、４２…弁軸ホルダー、４２ａ…上壁部、４２ｂ…軸孔、４２ｃ…雌ねじ、４２ｓ…可動ストッパ、４３…ガイドブッシュ、４３ａ…基部、４３ｂ…支持部、４３ｃ…雄ねじ、４４…ストッパ部材、４４ａ…ストッパ本体、４４ｓ…固定ストッパ、４５…固定具、４５ａ…固定部、４５ｂ…フランジ部、４６…ワッシャー、４７…閉弁ばね、４８…復帰ばね、４９…ストッパ機構、６０…ステーター、６６…ステッピングモーター、７０…ハウジング、Ｌ…軸線
（第２実施例）
５Ａ…弁本体アセンブリ、３０Ａ…弁体、３７Ａ…移動規制部
（第３実施例）
５Ｂ…弁本体アセンブリ、３０Ｂ…弁体、３１Ｂ…第１軸部、３９Ｂ…取付孔
（第４実施例）
５Ｃ…弁本体アセンブリ、１０Ｃ…弁本体、１１Ｃ…本体部材、１２Ｃ…弁座部材、１８Ｃ…孔、１８ｃ…上端、１９Ｃ…取付孔
（第５実施例）
５Ｄ…弁本体アセンブリ、１０Ｄ…弁本体、１１Ｄ…本体部材、１２Ｄ…移動規制部材、１２ａ…周壁部、１２ｂ…底壁部、１２ｃ…軸孔、１９Ｄ…取付孔、３０Ｄ…弁体、３１Ｄ…第１軸部、３８Ｄ…移動規制面
（第６実施例）
５Ｅ…弁本体アセンブリ、３０Ｅ…弁体、３７Ｅ…移動規制部
（第７実施例）
５Ｆ…弁本体アセンブリ、３０Ｆ…弁体、３１Ｆ…第１軸部、３８Ｆ…移動規制面
（第８実施例）
５Ｇ…弁本体アセンブリ、３０Ｇ…弁体、３５Ｇ…制御部、３５ｃ…突出部、３７Ｇ…支持部、３８Ｇ…移動規制面、３９Ｇ…ばね

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】