(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】ケイ素・酸化ケイ素-炭素複合材料、その調製方法、およびそれを含むリチウム二次電池用負極活物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240318BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240318BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240318BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240318BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240318BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/36 E
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2022510937
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2020011062
(87)【国際公開番号】W WO2021034109
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101356
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517108310
【氏名又は名称】デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】イ,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】オ,ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョンチャン
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156922(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151813(WO,A1)
【文献】特開2002-042806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア-シェル構造を有するリチウム二次電池用負極活物質に用いるケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料であって、該コアがケイ素微粒子、SiO
x(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、該シェルが炭素膜で形成され、
前記ケイ酸マグネシウムがMgSiO
3
結晶およびMg
2
SiO
4
結晶を含み、X線回折分析において、2θ=22.3°~23.3°の範囲に現れるMg
2
SiO
4
結晶に対応するX線回折ピークの強度(IF)の2θ=30.5°~31.5°の範囲に現れるMgSiO
3
結晶に対応するX線回折ピークの強度(IE)に対する比(IF/IE)が0より大きく1以下であり、前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率が0.5S/cm~10S/cmである、複合材料。
【請求項2】
前記炭素膜が、グラフェン、還元酸化グラフェン、および酸化グラフェンから成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項3】
マグネシウムの含有量が、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて3重量%~20重量%である、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項4】
前記炭素膜が、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバーから成る群から選択される少なくとも1つをさらに含み、
前記炭素膜中の炭素含有量が、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて2重量%~20重量%であり、
前記炭素膜が5nm~200nmの厚さを有する、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項5】
前記ケイ素微粒子が1nm~20nmの結晶子サイズを有する、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項6】
前記コア中のケイ素の含有量が、前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて30重量%~80重量%であり、
前記コアが2.0μm~10μmの平均粒径(D
50)を有する、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項7】
1.8g/cm
3~3.2g/cm
3の比重および3m
2/g~20m
2
/gの比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)を有する、請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料。
【請求項8】
請求項1に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項9】
炭素ベースの負極材料をさらに含み、前記炭素ベースの負極材料の含有量が、前記負極活物質の総重量に基づいて30重量%~95重量%であり、
前記炭素ベースの負極材料が、天然黒鉛、合成黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、メソ炭素、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、熱分解カーボン、コークス、ガラス・カーボンファイバー、焼結有機高分子化合物、およびカーボンブラックから成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項
8に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項10】
ケイ素と二酸化ケイ素を混合してケイ素-酸化ケイ素混合物を得る第1工程、
前記ケイ素-酸化ケイ素混合物および金属マグネシウムを蒸発させて堆積させ、ケイ素-酸化ケイ素複合材料を得る第2工程、
前記ケイ素-酸化ケイ素複合材料を冷却する第3工程、
前記冷却されたケイ素-酸化ケイ素複合材料を粉砕してコアを得る第4工程、および
前記粉砕されたケイ素-酸化ケイ素複合材料の表面を炭素で被覆して前記コア上にシェルを形成する第5工程を含む、請求項1に記載のコア-シェル構造を有するリチウム二次電池用負極活物質に用いるケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項11】
前記第1工程における前記混合が、前記ケイ素元素1モル当たりの酸素元素のモル比が0.9~1.1になるようにケイ素粉末と二酸化ケイ素粉末を混合するものであり、
前記第3工程における前記冷却が、不活性ガスを注入しながら室温で行われるものであり、
前記第4工程における前記粉砕が、前記コアが2.0μm~10μmの平均粒径(D
50)を有するように行われるものである、
請求項
10に記載のコア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項12】
前記第5工程における前記炭素の被覆が、以下の式2~4
[式2]
C
NH
(2N+2-A)[OH]
A
(式2中、Nは1~20の整数で、Aは0または1である)、
[式3]
C
NH
(2N)
(式3中、Nは2~6の整数である)、及び
[式4]
C
xH
yO
z
(式4中、xは1~20の整数であり、yは0~20の整数であり、zは0~2の整数である)
で表される化合物から選択される少なくとも1つを注入し、600℃~1200℃の気体状態で反応を行うことによって、前記コアの表面に施される、請求項
10に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項13】
前記第5工程における前記炭素の被覆が、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンから成る群から選択される少なくとも1つを含む炭素源ガス、および二酸化炭素ガス、アルゴン、水蒸気、ヘリウム、窒素、および水素から成る群から選択される少なくとも1つを含む不活性ガスを注入することによって行われる、請求項
10に記載のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料、その調製方法、およびそれを含むリチウム二次電池用負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信産業の発展と共に、電子機器が小型化、軽量化、薄型化、携帯性が向上するにつれて、これらの電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度に対する需要が高まっている。リチウム二次電池は、この需要を最も満たすことができる電池であり、これを利用した小型電池の研究や、その上自動車や電力貯蔵システムなどの大型電子機器への応用も活発に行われている。
【0003】
炭素材料は、このようなリチウム二次電池の負極活物質として広く使用されている。電池の容量をさらに向上させるために、ケイ素ベースの負極活物質が研究されている。ケイ素の理論容量(4,199mAh/g)は黒鉛の理論容量(372mAh/g)よりも10倍以上大きいため、電池容量の大幅な向上が見込まれる。
【0004】
しかしながら、負極活物質としてケイ素を主原料に使用した場合、充放電時に負極活物質が膨張または収縮し、負極活物質の表面や内部にクラックが形成される場合がある。その結果、負極活物質の反応面積が増加し、電解質の分解反応が起こり、分解反応中の電解質の分解生成物により膜が形成され、それを二次電池に使用するとサイクル特性が低下する問題を引き起こす場合がある。従って、この問題を解決するための試みが継続されてきた。
【0005】
具体的には、特許文献1は、負極活物質を、累積90%径(D90)が50μm以下でありかつ粒径が2μm以上の微粉末A、および粒径が2μm未満の微粉末Bを1重量%~30重量%含み、該微粉末Aが酸化ケイ素で、該微粉末Bが導電性炭素である粉末として開示している。
【0006】
特許文献2は、中空炭素ファイバを含むシェルと、該中空炭素ファイバの中空内に配置されたコアと、を含み、前記コアが、第1金属ナノ構造および導電材を含む複合負極活物質を開示している。
【0007】
特許文献3は、多孔性シリコン複合体二次粒子を含む多孔質コアと、前記多孔性コアの表面に配置された第2グラフェンを含むシェルと、を含む多孔性シリコン複合体であり、前記多孔性シリコン複合体二次粒子は2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、前記シリコン複合体一次粒子は、シリコン、前記シリコン上に配置されたシリコン酸化物(SiXx)(0<x<2)、および前記シリコン酸化物上に配置された第1グラフェンを含む多孔性シリコン複合体クラスタを開示している。
【0008】
さらに、特許文献4は、ケイ素化合物の少なくとも一部に炭素被被膜が形成され、該炭素被膜の比表面積が5m2/g~1,000m2/gであり、圧縮抵抗率が1.0×10-3Ω・cm~1.0Ω・cmである負極活物質を開示している。
【0009】
しかしながら、これらの先行技術文献は、ケイ素および炭素を含む負極活物質に関するものであるが、ケイ素を含む負極活物質は、充放電を繰り返すと劣化が大きく、リチウムの吸蔵および放出による体積変化が大きい。その結果、電極自体の導電率が低く、サイクル特性の向上に限界があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5555978号公報
【文献】特開2014-67713号公報
【文献】特開2018-48070号公報
【文献】特開2016-164870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明により解決すべき技術的課題は、リチウム二次電池の負極活物質にケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を提供することであり、この材料は導電率が高く不可逆容量が小さいので、二次電池の容量だけでなく、サイクル特性や初期効率も高めることかできる。
【0012】
本発明によって解決すべき別の技術的課題は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法を提供することである。
【0013】
本発明によって解決すべきさらに別の技術的課題は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含むリチウム二次電池用負極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、コア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料であって、該コアがケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、該シェルが炭素膜で形成され、前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率が0.5S/cm~10S/cmである、複合材料を提供する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、ケイ素と二酸化ケイ素を混合してケイ素-酸化ケイ素混合物を得る第1工程、前記ケイ素-酸化ケイ素混合物および金属マグネシウムを蒸発させて堆積させ、ケイ素-酸化ケイ素複合材料を得る第2工程、前記ケイ素-酸化ケイ素複合材料を冷却する第3工程、前記冷却されたケイ素-酸化ケイ素複合材料を粉砕してコアを得る第4工程、および前記粉砕されたケイ素-酸化ケイ素複合材料の表面を炭素で被覆して前記コア上にシェルを形成する第5工程を含む、コア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、そのケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率が0.5S/cm~10S/cmである、方法を提供する。
【0016】
さらに別の実施形態は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む、リチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料はコア-シェル構造を有し、該コアがケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、該シェルが炭素膜で形成され、導電率が特定の範囲内にある。従って、それを二次電池の負極活物質として使用すると、二次電池の容量だけでなく、サイクル特性や初期効率も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、以下に開示されるものに限定されない。むしろ、本発明の要旨が変更されない限り、様々な形態で変更できる。
【0019】
本明細書では、ある部分が要素を「含む」と言及される場合、特に明記しない限り、その部分は他の要素も含み得ることを理解すべきである。
【0020】
さらに、本明細書で使用される成分の量、反応条件などに関連するすべての数および式は、特に明記しない限り、「約」という用語によって修飾されるものとして理解すべきである。
【0021】
[ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料]
本発明の一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、コア-シェル構造を有し、該コアがケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、該シェルが炭素膜で形成されており、該ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率が0.5S/cm~10S/cmである。
【0022】
以下に、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の構成について詳細に説明する。
【0023】
<コア>
本発明の一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアは、ケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含む。
【0024】
ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムがケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコア内に均一に分散し、しっかりと結合してコアを形成するため、充放電時の体積変化によるコアの微粒化を最小限に抑制できる。
【0025】
コア中のケイ素の含有量は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて、30重量%~80重量%、具体的には40重量%~70重量%、より具体的には40重量%~60重量%であってよい。ケイ素の含有量が30重量%未満の場合、リチウムの吸蔵および放出のための活物質の量が少ないため、リチウム二次電池の充放電容量が低下する可能性がある。一方、80重量%を超えると、リチウム二次電池の充放電容量が増加する可能性がある一方で、充放電時の電極の膨張および収縮が過度に増加する可能性があり、負極活物質粉末がさらに微粒化され、サイクル特性が低下する可能性がある。
【0026】
[ケイ素微粒子]
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアはケイ素微粒子を含むため、二次電池に適用すると大容量を実現できる。
【0027】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアに含まれるケイ素微粒子は、結晶質または非晶質であり得、具体的には、非晶質またはそれと同様の相であり得る。ケイ素微粒子が非晶質またはそれと同様の相である場合、リチウム二次電池の充放電時の膨張または収縮が小さく、容量特性のような電池性能をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、ケイ素微粒子は、酸化ケイ素化合物またはケイ酸マグネシウムに均一に分散するように、または取り囲むように存在し得る。このような場合、ケイ素の膨張または収縮が抑制され、それによって二次電池の性能を高めることができる。
【0029】
加えて、ケイ素微粒子を用いて比表面積の大きいリチウム合金を形成し、バルクの破壊を抑制するため好ましい。ケイ素微粒子は、充電時にリチウムと反応してLi4.2Siを形成し、放電時にケイ素に戻る。
【0030】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料をカソードターゲットとして銅を使用してX線回折(Cu-Kα)分析にかけ、2θ = 47.5℃付近のSi(220)の回折ピークの半値全幅(FWHM)に基づいてシェラー方程式により計算した場合、ケイ素微粒子は、1nm~20nm、具体的には3nm~10nm、より具体的には3nm~8nmの結晶子サイズを有し得る。ケイ素微粒子の結晶子サイズが20nmを超えると、充放電時の体積膨張または収縮により、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料にクラックが発生し、サイクル特性が低下する可能性がある。また、ケイ素微粒子の結晶子サイズが1nm未満の場合、初期効率、放電容量、容量保持率が急速に低下し得る。ケイ素微粒子の結晶子サイズが上記の範囲内であれば、放電しない領域はほとんどなく、放電容量に対する充電容量の比であるクーロン効率、すなわち充放電効率の低下を抑制できる。
【0031】
ケイ素微粒子をさらに非晶質または約3nm~6nmの結晶子サイズに微粒化すると、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の密度が増加し、それによって当該密度が理論密度に近づくことができ、細孔を著しく減少させることができる。その結果、マトリックスの密度が向上し、強度が強化されクラックを防止するので、二次電池の初期効率またはサイクル寿命特性をさらに高めることができる。
【0032】
[SiOxで表される酸化ケイ素化合物(0<x≦2)]
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアは、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物を含むため、二次電池に適用した場合、容量を増加させ、体積膨張を低減することができる。
【0033】
酸化ケイ素化合物は、式SiOx(0<x≦2)で表されるケイ素をベースとする酸化物であり得る。酸化ケイ素化合物は、具体的にはSiOx(0.5≦x≦1.5)、より具体的にはSiOx(0.8<x≦1.1)であり得る。式SiOxでは、xが小さすぎると、SiOx粉末の調製が困難になる場合がある。xが大きすぎると、熱処理時に発生する不活性二酸化ケイ素の割合が大きくなり、リチウム二次電池に使用すると充放電容量が低下する場合がある。また、SiOxの組成のxが1に近づくにつれて、高いサイクル特性を得ることができる。
【0034】
酸化ケイ素化合物は、非晶質であってもよく、透過型電子顕微鏡で観察したときに、ケイ素微粒子(結晶性)が非晶質の酸化ケイ素化合物中に分布している構造を有していてもよい。
【0035】
酸化ケイ素化合物は、二酸化ケイ素と金属ケイ素の混合物を加熱することによって生成される酸化ケイ素ガスを冷却および沈殿させることを含む方法によって得ることができる。
【0036】
酸化ケイ素化合物は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて5モル%~45モル%の量で使用できる。
【0037】
酸化ケイ素化合物の含有量が5モル%未満の場合、二次電池の体積膨張および寿命特性が低下する場合がある。45モル%を超えると、二次電池の初期の不可逆反応が増加する場合がある。
【0038】
[ケイ酸マグネシウム]
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアはケイ酸マグネシウムを含むため、二次電池に適用すると、充電放電容量特性とサイクル特性を向上させることができる。
【0039】
二次電池の充放電時にケイ酸マグネシウムはリチウムイオンとほとんど反応しないため、リチウムイオンが電極に吸蔵された時の電極の膨張および収縮を低減し、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。さらに、ケイ素微粒子を取り囲む連続相であるマトリックスの強度は、ケイ酸マグネシウムによって強化できる。
【0040】
ケイ酸マグネシウムは、以下の式1で表すことができる:
【0041】
[式1]
MgxSiOy
式1中、0.5≦x≦2、および2.5≦y≦4である。
【0042】
ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3結晶およびMg2SiO4結晶から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0043】
さらに、一実施形態によれば、ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3結晶を含み得、Mg2SiO4結晶をさらに含み得る。
【0044】
さらに、一実施形態によれば、ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3結晶を含み、更にMg2SiO4結晶を含む。このような場合、X線回折分析において、2θ=22.3°~23.3°の範囲に現れるMg2SiO4結晶に対応するX線回折ピークの強度(IF)の2θ=30.5°~31.5°の範囲に現れるMgSiO3結晶に対応するX線回折ピークの強度(IE)に対する比IF/IEは0より大きく3以下になり得る。
【0045】
さらに、ケイ酸マグネシウムは、充放電容量および初期効率を高めるために、実質的に大量のMgSiO3結晶を含み得る。
【0046】
本明細書において、「実質的に大量の」成分を含むという句は、その成分を主成分として含む、または主にその成分を含むことを意味し得る。
【0047】
具体的には、ケイ酸マグネシウムが実質的に大量のMgSiO3を含むということは、Mg2SiO4結晶よりも大量のMgSiO3結晶が含まれることを意味する。例えば、X線回折分析において、2θ=22.3°~23.3°の範囲に現れるMg2SiO4結晶に対応するX線回折ピークの強度(IF)の2θ=30.5°~31.5°の範囲に現れるMgSiO3結晶に対応するX線回折ピークの強度(IE)に対する比IF/IEは1以下である。
【0048】
ケイ酸マグネシウムでは、SiOxに対するマグネシウムの含有量が、充放電時の初期放電特性またはサイクル特性に影響を及ぼし得る。SiOx内のケイ素はリチウム原子と合金化して、初期放電特性を高めることができる。具体的には、ケイ酸マグネシウムにおいてMgSiO3結晶をかなり大量に使用すると、充放電時のサイクルの向上効果を高めることができる。
【0049】
ケイ酸マグネシウムがMgSiO3結晶とMg2SiO4結晶の両方を含む場合、初期効率を高めることができる。Mg2SiO4結晶をMgSiO3結晶よりも多く使用すると、ケイ素とリチウム原子の合金化度が低くなり、それによって初期放電特性が低下する場合がある。
【0050】
ケイ酸マグネシウムがMgSiO3結晶とMg2SiO4結晶の両方を共に含む場合、MgSiO3結晶とMg2SiO4結晶がコア中に均一に分散していることが好ましい。それらの結晶子サイズは、30nm以下、具体的には、20nm以下であり得る。
【0051】
ケイ酸マグネシウム中のケイ素は、充電時にリチウムと反応してLi4.2Siを形成し、放電時にケイ素に戻る。二次電池の容量は、その繰り返される充放電時の容量変化に起因して低下し得る。しかしながら、特に、MgSiO3結晶の体積変化率はMg2SiO4結晶の体積変化率よりも小さいため、二次電池のサイクル特性をさらに高めることができる。さらに、MgSiO3結晶およびMg2SiO4結晶は、負極活物質の希釈剤または不活性物質として作用できる。
【0052】
一実施形態によれば、マグネシウムがSiOxにドープされる場合、例えば、酸化ケイ素(SiO)とマグネシウムが1:1の比で反応する場合、ケイ酸マグネシウムの調製において、元素が均一に分布しているならばケイ素とMgOのみが熱力学的に存在する。しかしながら、元素が均一に分布していない場合は、ケイ素やMgOだけでなく、未反応の酸化ケイ素や金属マグネシウムなどの他の物質が存在し得る。
【0053】
従って、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアは、MgO、未反応の酸化ケイ素、および金属マグネシウムをさらに含み得る。
【0054】
一実施形態によれば、マグネシウムがSiOxにドープされる場合、例えば、SiOとマグネシウムが反応する場合、マグネシウムのドーピング量が増加するにつれて、反応は以下の反応スキーム1~3の順序で進行し得る。
【0055】
【0056】
上記の反応において、MgSiO3(s)およびMg2SiO4(s)の生成メカニズムは、以下の反応スキーム4~6のように表すことができる。
【0057】
【0058】
具体的には、SiOに対するMgの含有量が1/3モル%の場合、反応スキーム4に示すように反応が起こり、その含有量が1/3モル%に達するまでSi相、MgSiO3、および未反応のSiOが形成される。その含有量が1/3モル%の場合、SiとMgSiO3が形成され得る。
【0059】
SiOに対するMgの含有量が1/3~1/2モル%の場合、反応スキーム4の反応が完了した後に反応スキーム5の反応が起こり得る。さらに、MgSiO3の一部がMg2SiO4に変換されるため、1/2モル%に達するまでSi、MgSiO3、Mg2SiO4が生成され得る。さらに、SiOに対するMgの含有量が1/2モル%の場合、SiとMg2SiO4が生成され得る。同様に、SiOに対するMgの含有量が1/2~1モル%の場合、反応スキーム5の反応が完了した後に反応スキーム6の反応が始まり、Mg2SiO4の一部がMgOに変換されるので、その含有量が1モル%に達するまでSi、Mg2SiO4、MgOが生成される。その含有量が1モル%の場合、SiとMgOが生成され得る。
【0060】
一方、ケイ酸マグネシウム中で、Mg2SiO4よりもMgSiO3が多く形成されると、ケイ素に対するマグネシウムの比が小さくなり、Mgの蒸発による温度上昇を低減できる。その結果、ケイ素微粒子の成長が抑制でき、結晶子サイズが20nm以下になり得、二次電池のサイクル特性や初期効率を高めることができる。
【0061】
一方、SiOは次の反応スキーム7に示すようにSiとSiO2の混合物(1/2Si + 1/2SiO2)であるため、実際の反応では不均化反応によってSiO2が生成され得る。
【0062】
【0063】
反応スキーム7では、不均化反応によって生成されたSiO2がLiと反応して不可逆反応を引き起こし、ケイ酸リチウムを形成し、それによって初期効率を低下させる可能性がある。
【0064】
例えば、1モルのSiOに対して0.4モルのMgを添加する場合、Mgの含有量は18重量%である。元素濃度分布が均一であるため、Mgの含有量に応じた反応が起こり得る。
上記のように、MgSiO3およびMg2SiO4は、Siの形成と同時にMg含有化合物として形成され得る。
【0065】
上記のように、マグネシウムのドーピング量は、MgSiO3結晶およびMg2SiO4結晶の形成に重要であるが、マグネシウムの元素濃度分布の均一度も重要であり得る。マグネシウムの元素濃度分布が均一でない場合、二酸化ケイ素(SiO2)が形成される可能性があり、これは好ましくない。さらに、二酸化ケイ素、金属マグネシウム、またはMgSi合金がケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアに形成されると、二次電池の初期効率または容量保持率が低下する場合がある。従って、マグネシウムの元素濃度分布を均一にすることにより、二次電池の性能を高めることができる。
【0066】
具体的には、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料において、ケイ酸マグネシウム中のMg原子の酸化ケイ素化合物中のSi原子に対する比、すなわち、Mg原子:Si原子は、1:1~1:50の原子比であり得る。具体的には、Mg原子:Si原子は、1:2~1:20の原子比を有し得る。Siに対するMgの原子比が上記の範囲よりも小さい場合(Mgの添加量が多い場合)、過剰な量のMg2SO4が形成され得、その結果、初期の充放電効率を高めることができる一方で、充放電サイクル特性が低化する場合がある。また、Mg原子のSi原子に対する原子比が上記の範囲を超えると、初期効率の向上効果が小さい可能性がある。
【0067】
一実施形態によるケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、X線回折分析において30.5°≦2θ≦31.5°の回折角の範囲に現れるMgSiO3結晶のピークを有し得る。さらに、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、X線回折分析において22.3°≦2θ≦23.3°の回折角の範囲に現れるMg2SiO4結晶のピークを有し得る。
【0068】
例えば、MgSiO3結晶については、2θ=30.5°における回折強度と2θ=31.5°における回折強度の間に線を引き、直線がベース強度である場合、2θ=31.1±0.2°における最大強度P1の最大強度角度におけるベース強度B1に対する比がP1/B1>1.1であるならば、MgSiO3結晶が存在すると判断できる。
【0069】
例えば、Mg2SiO4結晶については、2θ=22.3°における回折強度と2θ=23.3°における回折強度の間に線を引き、直線がベース強度である場合、2θ=22.9±0.3°における最大強度P2の最大強度角度におけるベース強度B2に対する比がP2/B2>1.1であるならば、Mg2SiO4結晶が存在すると判断できる。
【0070】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料がケイ酸マグネシウムを含む場合、ポリイミドをバインダーとして負極活物質組成物を調製すると、リチウムがドープされている場合と比較して負極活物質とバインダーの化学反応を抑制できる。従って、こうした負極活物質を使用することで、負極活物質組成物の安全性を高めることができ、このことは、負極の安全性だけでなく、二次電池のサイクル特性も向上させることができる。
【0071】
一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアはケイ酸マグネシウムを含むため、充放電時にリチウムイオンが急激に増加しても、リチウムイオンとほとんど反応せず、電極の膨張および収縮度の低減効果をもたらす。その結果、二次電池のサイクル特性を高めることができる。また、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアはケイ酸マグネシウムを含むため、不可逆容量が小さく、放電容量(y)の充電容量(x)に対する比(y/x×100)を高くできる。
【0072】
マグネシウムの含有量は、一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて、3重量%~20重量%、具体的には、3重量%~15重量%、4重量%~15重量%、または5重量%~15重量%、より具体的には、5重量%~12重量%であってよい。マグネシウムの含有量が3重量%以上の場合、二次電池の初期効率を高めることができる。マグネシウムの含有量が20重量%以下の場合、二次電池のサイクル特性や取り扱い安定性が優れ得る。
【0073】
一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料において、コアは、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、それらは相界面が原子レベルで結合状態になるように、すなわち各相が原子レベルで結合状態になるように、互いに分散している。そのため、リチウムイオンが吸蔵および放出される際の体積変化が小さく、充放電が繰り返されても負極活物質にクラックが発生しない。従って、サイクル数に対する容量の急激な低下がないので、二次電池のサイクル特性は優れ得る。
【0074】
また、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの各相が原子レベルで結合状態にあるため、二次電池の放電時にリチウムイオンの脱離が促進され、充電量と放電量のバランスを良くし、充放電効率を高める。ここで、充放電効率(%)とは、充電容量(x)に対する放電容量(y)の比(y/x×100)を指し、充電時に負極活物質に吸蔵されたリチウムイオンの中で放電時に放出できるリチウムイオンの割合を示す。
【0075】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアは、2.0μm~10μm、具体的には、2.0μm~9.0μm、より具体的には、4.0μm~8.0μmの平均粒径(D50)を有し得る。コアの平均粒径(D50)が2.0μm未満の場合、バルク密度が小さすぎて、単位体積あたりの充放電容量が低下する可能性がある。一方、平均粒径(D50)が10μmを超えると、電極層の作製が困難で、集電体から剥がれる可能性がある。平均粒径(D50)は、重量平均値D50として測定された値であり、すなわち、レーザービーム回折法による粒度分布測定において累積重量が50%の場合の粒径またはメジアン径である。
【0076】
コアの平均粒子径(D50)は、コア粒子の粉砕によって達成できる。また、平均粒度(D50)まで粉砕した後、粒度分布を調整するために分級を行ってもよく、乾式分級、湿式分級、または濾過を使用できる。乾式分級では、分散、分離(微粒子と欠陥粒子の分離)、回収(固体と気体の分離)、排出の工程が、空気流を使用して順次または同時に行われ、粒子間の干渉、粒子形状、気流擾乱、速度分布、静電気の影響等によって分級効率を低下させないように前処理(水分、分散性、湿度等の調整)が行われることによって、使用する空気流の湿度または酸素濃度を調整する。また、粉砕および分級を一度に行うことにより、所望の粒度分布を得ることができる。
【0077】
粉砕および分級処理により平均粒径2.0μm~10μmのコア粒子が得られれば、分級前に比べて初期効率またはサイクル特性は約10%~20%高めることができる。粉砕および分級時のコア粒子は、約10μm以下のDmaxを有し得る。このような場合、コア粒子の比表面積が減少する可能性があり、その結果、固体電解質界面(SEI)層に追加されるリチウムが減少する可能性がある。
【0078】
また、一実施形態によれば、コア内部に閉じた細孔またはボイドが導入され、シリコン、酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを同時に使用して、原子オーダーで均一に分散させたコア構造を形成することができる。また、コア中のケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの各粒子サイズを微粒化できる。ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの各粒子サイズが大きすぎると、コア内部に存在しにくくなり、コアとしての機能を十分に果たせなくなる。
【0079】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料がコアを含むため、体積膨張を抑制でき、電解質との副反応を防止または低減する効果を生じさせる。その結果、二次電池の放電容量、寿命特性、および熱安定性を高めることができる。
【0080】
<シェル>
本発明の一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のシェルは、炭素膜から形成できる。
【0081】
一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、コアの表面に炭素膜で形成されたシェルを含むので、大容量を有する二次電池を達成できる。特に、ケイ素を使用しているために発生し得る体積膨張や安定性低化の問題を解決し、導電率を高めることができる。
【0082】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料では、導電率をさらに高めるために、コアの表面全体に均一に炭素膜を形成することが好ましい。均一なケイ素被覆が形成されていれば、ケイ素粒子の急激な体積膨張によって生じる応力発生に起因するクラックの発生を抑制できる。クラックは不規則に発生するため、電気的に遮断されている領域があり、このことがバッテリーの不良につながり得る。従って、均一な炭素被覆が形成されれば、負極活物質の初期効率および寿命特性を向上させることができる。
【0083】
具体的には、表面の一部または全体に、具体的には、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコア中に含まれるケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムのそれぞれの表面全体に導電性炭素膜が形成されたシェルが使用されているので、導電率を高めることができる。
【0084】
例えば、コアは、数ナノメートルから数十ナノメートルのサイズの非晶質ケイ素が酸化ケイ素化合物またはケイ酸マグネシウムに微細に分散した構造を有し得る。一般に、酸化ケイ素化合物は、ケイ素または炭素の5~6倍の電池容量を有し、体積膨張が小さいという利点があるが、不可逆反応により不可逆容量が大きく、寿命が短く、初期効率が70%以下と非常に低いという問題がある。ここで、不可逆反応とは、放電時のリチウムイオンとの反応により、Li-Si-OまたはSi+Li2Oが形成されることを指す。寿命が短く、初期効率が低いという問題は、充放電時の構造安定性が低いため、リチウム原子の拡散速度の低下、つまり導電率の低下に起因する可能性がある。
【0085】
従って、本発明の一実施形態のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、低下した導電率の問題を解決するために、ケイ素/酸化ケイ素複合材料のコアの表面を炭素で被覆することによって形成された炭素膜で形成されたシェルを含むコア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料である。
【0086】
また、コアの表面にシェルが形成されるため、コアに含まれるケイ素と電解質との副反応を防止できる。さらに、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコア表面にシェルが形成される場合、コアに含まれるケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの汚染を防止または軽減できる。
【0087】
加えて、導電率をさらに高めるために、シェルの炭素膜を均一かつ薄く形成してもよい。このような場合、二次電池の初期効率と寿命特性をさらに向上させることができる。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、ひとたびケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムの各表面に均一な炭素膜が形成されたコアが作製されると、薄くて均一な炭素膜がコアの表面にシェルとして形成されるので、いわゆる二重構造の炭素膜を形成できる。二重構造の炭素膜が形成される場合、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムのそれぞれが外部に露出するのを防ぐ効果がある。いわゆる二重構造炭素膜は、例えば、炭素堆積を数回繰り返し行うことによって形成できる。その後、炭素膜が形成されたコアの表面に、シェル機能を有する二重炭素膜が形成されるので、各粒子が外部に露出するのを防止できる。このような場合、充放電時のケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、またはケイ酸マグネシウムの体積変化にもかかわらず、電気的接続を維持できる。さらに、炭素膜の表面にクラックが発生しても、炭素膜が完全に分離されていなければ、炭素膜との電気的接続を維持できる。
【0089】
コア表面を炭素で被覆する方法は、ケイ素-ケイ素酸化物複合材料のコアを有機ガスおよび/または蒸気中で化学蒸着(CVD)する方法、または有機ガスおよび/または蒸気を熱処理中に反応器に導入する方法であってよい。
【0090】
さらに、炭素膜の厚さまたは炭素の量が導電率に影響を与えるだけでなく、膜の均一性も重要であり得る。例えば、十分な量の炭素が得られたとしても、膜が均一でなく、それによって酸化ケイ素の表面が部分的に露出している、またはその一部が絶縁性である場合、二次電池の充放電容量またはサイクル特性が悪影響を受け得る。
【0091】
一実施形態によれば、炭素の含有量は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の総重量に基づいて、2重量%~20重量%、具体的には2重量%~19重量%、より具体的には3重量%~19重量%であってよい。
【0092】
炭素含有量が2重量%未満の場合、導電率向上の効果が十分に期待できず、リチウム二次電池の電極寿命が低下する恐れがある。また、20重量%を超えると、二次電池の放電容量が低下し、バルク密度が低下し、単位体積あたりの充放電容量が低下する場合がある。
【0093】
炭素膜は、5nm~200nm、具体的には10nm~180nm、より具体的には10nm~150nmの平均厚さを有し得る。炭素膜の厚さが5nm以上の場合、導電率の向上を達成できる。
200nm以下の場合、二次電池の容量低下を抑制できる。
【0094】
好ましくは、炭素膜がコアの表面全体にわたって均一に被覆されていることで、炭素膜の厚さ範囲の最適化を可能にし得る。また、炭素膜の厚さを最適化することで、リチウムの挿入や脱離によりケイ素を含むコアの体積が変化しても、コアの微粒化を効果的に防止または軽減する効果を生じさせる。
【0095】
炭素膜の平均厚さは、例えば、以下の手順によって測定できる。
【0096】
まず、負極活物質を透過型電子顕微鏡(TEM)により任意の倍率で観察する。
倍率は、例えば、肉眼で確認できる程度であることが好ましい。続いて、炭素膜の厚さを任意の15の点で測定する。このような場合、特定の領域に集中することなく、無作為にできるだけ広く測定位置を選択することが好ましい。最後に、該15の点における炭素膜の厚さの平均値を計算する。
【0097】
炭素膜は、グラフェン、還元酸化グラフェン、および酸化グラフェンから成る群から選択される少なくとも1つを含み得る。さらに、炭素膜は、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバーから成る群から選択される少なくとも1つをさらに含み得る。
【0098】
炭素膜は、シェルの外観を維持しながら、粒子間の電気接触を高めることができる。また、充放電時に電極が膨張した後でも優れた導電率を確保できるため、二次電池の性能をさらに高めることができる。
【0099】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、1.8g/cm3~3.2g/cm3の比重を有し得る。ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の比重が1.8g/cm3未満の場合、二次電池のレート特性が低下し得る。3.2g/cm3を超えると電解質との接触面積が大きくなり、電解質の分解反応が促進される、または電池の副反応が起こる問題を引き起こし得る。ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の比重は、当該技術で一般的に使用されている粒子密度測定装置を使用して測定できる。
例えば、マイクロメリティクスのAccupycIIを使用して測定できる。
【0100】
一方、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、0.5g/cc~2.0g/cc、具体的には、0.8g/cc~1.8g/ccの圧縮密度を有し得る。ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の圧縮密度は、当該技術で一般的に使用されているマイクロメリティクスのGeopyc1365を使用して測定できる。
【0101】
さらに、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、3m2/g~20m2/gの比表面積を有し得る。ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の比表面積が3m2/g未満の場合、二次電池のレート特性が低下する場合がある。20m2/gを超えると、電解質との接触面積が大きくなり、電解質の分解反応が促進される、または電池の副反応が起こる問題を引き起こし得る。ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の比表面積は、具体的には4m2/g~15m2/g、より具体的には4m2/g~10m2/gであり得る。比表面積は、窒素吸着によるBET法によって測定できる。例えば、当該技術で一般的に使用されている比表面積測定装置(マウンテックのMacsorb HM(モデル1210)、マイクロトラック・ベルのBelsorp-miniIIなど)を使用できる。
【0102】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、0.5S/cm~10S/cm、具体的には、0.8S/cm~8S/cm、より具体的には、0.8S/cm~6S/cmの導電率を有し得る。負極活物質の導電率は、電気化学反応中の電子移動を促進するための重要な因子である。しかしながら、大容量の負極活物質をケイ素粒子または酸化ケイ素化合物を使用して調製する場合、適切なレベルの導電率を達成することは容易ではない。従って、本発明の一実施形態によれば、ケイ素微粒子、酸化ケイ素、およびケイ酸マグネシウムを含むコアの表面に炭素膜で形成されたシェルを含むコア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料が提供され、それによって導電率が0.5S/cm~10S/cmの負極活物質を実現すると同時に、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの厚さ膨張を制御することによって、二次電池の容量特性だけでなく、寿命特性および初期効率を高めることができる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法が提供される。
【0104】
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法は、
ケイ素と二酸化ケイ素を混合してケイ素-酸化ケイ素混合物を得る第1工程、
前記ケイ素-酸化ケイ素混合物および金属マグネシウムを蒸発させて堆積させ、ケイ素-酸化ケイ素複合材料を得る第2工程、
前記ケイ素-酸化ケイ素複合材料を冷却する第3工程、
前記冷却されたケイ素-酸化ケイ素複合材料を粉砕してコアを得る第4工程、および
前記粉砕されたケイ素-酸化ケイ素複合材料の表面を炭素で被覆して前記コア上にシェルを形成する第5工程を含み、
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率が0.5S/cm~10S/cmである、方法である。
【0105】
具体的には、前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法において、前記第1工程は、ケイ素と二酸化ケイ素を混合してケイ素-酸化ケイ素混合物を得ることを含み得る。
【0106】
前記混合は、ケイ素元素1モル当たりの酸素元素のモル比が0.9~1.1となるように、ケイ素粉末と二酸化ケイ素粉末を混合することであってよい。具体的には、ケイ素粉末と二酸化ケイ素粉末を、ケイ素元素1モル当たりの酸素元素のモル比が1.01~1.08となるように混合できる。
【0107】
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法において、前記第2工程は、ケイ素-酸化ケイ素および金属マグネシウムを蒸発させて堆積させケイ素-酸化ケイ素複合材料を得ることを含み得る。
【0108】
前記第2工程では、ケイ素-酸化ケイ素混合物および金属マグネシウムを真空反応器のるつぼに入れて蒸発させることができる。
【0109】
前記第2工程における前記加熱は、500℃~1,600℃、具体的には600℃~1,500℃で行うことができる。
【0110】
一方、前記第2工程における前記堆積は、300℃~800℃、具体的には400℃~700℃で行うことができる。
【0111】
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法において、前記第3工程は、ケイ素-酸化ケイ素複合材料を冷却することを含み得る。
【0112】
前記冷却は、水冷により室温まで急冷することにより行うことができる。また、不活性ガスを注入しながら室温で行うこともできる。不活性ガスは、二酸化炭素ガス、アルゴン(Ar)、水蒸気(H2O)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、および水素(H2)から選択される少なくとも1つであってよい。
【0113】
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法において、前記第4工程は、前記冷却されたケイ素-酸化ケイ素複合材料を粉砕してコアを得ることを含み得る。
【0114】
前記粉砕は、コアが2.0μm~10μm、具体的には2.0μm~9.0μm、より具体的には4.0μm~8.0μmの平均粒径(D50)を有するように行うことができる。前記粉砕は、一般的に使用される粉砕機またはふるいを使用して行うことができる。
【0115】
前記ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製方法において、前記第5工程は、前記粉砕されたケイ素-酸化ケイ素複合材料の表面を炭素で被覆して、前記コア上にシェルを形成することを含み得る。
【0116】
この工程では、ケイ素-酸化ケイ素複合材料の表面に炭素層が形成され、該炭素層がコア材料に導電性を与えることができる。炭素層は、600℃~1200℃での炭素前駆体の気相反応または熱分解によって形成できる。
【0117】
炭素層は、グラフェン、還元酸化グラフェン、および酸化グラフェンから成る群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0118】
炭素前駆体は、以下の式2および3によって表される化合物の少なくとも1つを含む反応ガスから形成できる。
【0119】
[式2]
CNH(2N+2-A)[OH]A
(式2中、Nは1~20の整数で、Aは0または1である)、
【0120】
[式3]
CNH(2N)
(式3中、Nは2~6の整数である)。
【0121】
式2および3によって表される化合物は、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、またはプロパノールであってよい。
【0122】
反応ガスは、以下の式4で表される化合物をさらに含み得る。
【0123】
[式4]
CxHyOz
(式4中、xは1~20の整数であり、yは0~20の整数であり、zは0~2の整数である)。
【0124】
式4によって表される化合物は、二酸化炭素、アセチレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピッチなどであってよい。反応ガスは、さらに水蒸気を含み得る。
【0125】
反応ガスが水蒸気または二酸化炭素ガスを含む場合、高導電率を有するケイ素-炭素複合材料を調製できる。水蒸気または二酸化炭素ガスの存在下の反応ガスの反応により結晶化度の高い炭素層が形成されるため、少量の炭素が被覆されていても高い導電率を達成できる。
【0126】
このような場合、水蒸気または二酸化炭素ガスの含有量は、例えば、反応ガスの総体積に基づいて、0.01体積%~30体積%であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0127】
反応ガスは炭素源ガスを含む。炭素源ガスは、例えば、メタン(CH4)と不活性ガスを含む混合ガスと、メタンと酸素を含む混合ガスの少なくとも1つであり得る。
【0128】
一例として、炭素源ガスは、メタン(CH4)および二酸化炭素(CO2)を含む混合ガス、またはメタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、および水蒸気(H2O)を含む混合ガスであり得る。
【0129】
不活性ガスは、アルゴン、水素、窒素、またはヘリウムであり得る。
【0130】
気相反応は、600℃~1200℃の温度での熱処理によって行うことができる。具体的には、700℃~1,100℃で行うことができる。より具体的には、700℃~1,000℃で行うことができる。
【0131】
一実施形態によれば、前記炭素の被覆は、上記の式2~4で表される化合物から選択される少なくとも1つを注入し、600℃~1200℃で気体状態での反応を行うことによって、コアの表面に施すことができる。
【0132】
具体的には、前記炭素の被覆は、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンから成る群から選択される少なくとも1つを含む炭素源ガス、および二酸化炭素ガス、アルゴン、水蒸気、ヘリウム、窒素、および水素から成る群から選択される少なくとも1つを含む不活性ガスを600℃~1200℃で注入することによって行うことができる。
【0133】
熱処理中の圧力は、導入される反応ガスの量および排出される反応ガスの量を調整することによって制御できる。例えば、圧力は1気圧以上であってもよい。例えば、2気圧以上、3気圧以上、4気圧以上、5気圧以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0134】
また、熱処理時間は制限されないが、熱処理温度、熱処理時の圧力、ガス混合物の組成、および所望の炭素被覆量に応じて適切に調整できる。例えば、熱処理時間は、10分~100時間、具体的には30分~90時間、より具体的には50分~40時間であってもよい。
【0135】
より具体的には、炭素被覆のための熱処理は、600℃~1000℃で、30分~5時間、具体的には1時間~5時間行うことができる。別の実施形態によれば、炭素被覆のための熱処理は、1,000℃~1200℃を超えて、30分~4時間未満、具体的には30分~3時間行うことができる。
【0136】
一実施形態によれば、熱処理時間が上記の範囲内で増えるにつれて、形成される炭素膜の厚さは増加し得る。厚さを適切なレベルに調整すると、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の電気的特性を高めることができる。しかしながら、高温での熱処理時間が長すぎると、電気的特性を高めることができる一方で、初期効率や静電容量が低下する場合がある。
【0137】
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料上の炭素膜の形成では、炭素源ガスの気相反応が関与するため、比較的低温でもコアの表面に均一な炭素膜が形成されたシェルを得ることができる。このように形成されたケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料では、炭素膜の脱離反応は容易には起こらない。加えて、気相反応により結晶化度の高い炭素膜が形成される場合がある。従って、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を負極活物質として使用する場合、構造を変えることなく負極活物質の導電率を向上させることができる。
【0138】
炭素膜は、グラフェン、還元酸化グラフェン、および酸化グラフェンから成る群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0139】
グラフェン、還元酸化グラフェン、および酸化グラフェンの構造は、層、ナノシートタイプ、または数個の薄片を混合した構造であり得る。
【0140】
この層は、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウム、およびそれらの還元生成物から選択される少なくとも1つの表面にグラフェンが連続して均一に形成されるフィルムの形態を指し得る。
【0141】
ナノシートは、ケイ素微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウム、およびそれらの還元生成物から選択される少なくとも1つの表面にグラフェンが不均一に形成される場合を指し得る。
【0142】
また、薄片は、ナノシートまたは膜の一部が損傷または変形している場合を指し得る。
【0143】
一実施形態によれば、コア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料において、導電率に優れ、体積膨張に柔軟性のあるグラフェン含有材料がコアの表面に直接成長してシェルを形成するので、体積膨張を抑制することができ、ケイ素微粒子または酸化ケイ素化合物が圧縮され収縮する現象を減少させることができる。さらに、コアに含まれるケイ素と電解質との直接反応をグラフェンで制御できるため、電極のSEI層の形成を低減できる。このようにケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料のコアがシェルによって固定化されているため、バインダーが負極活物質組成物の調製に使用されなくても、シリコン微粒子、酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムの体積膨張による構造崩壊を最小限に抑えることができ、抵抗の増加を最小限に抑えることにより、それを優れた導電率および容量特性を有する電極およびリチウム二次電池の製造に有利に使用できる。
【0144】
<負極活物質>
一実施形態の負極活物質は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含み得る。具体的には、負極活物質は、コア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含み得、該コアが、ケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、およびケイ酸マグネシウムを含み、該シェルが炭素膜で形成されており、導電率が0.5S/cm~10S/cmである。
【0145】
加えて、負極活物質は、炭素系負極材料をさらに含み得る。
【0146】
具体的には、負極活物質は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と炭素系負極材料の混合物として使用できる。このような場合、負極活物質の電気抵抗を低減する上に、充電に伴う膨張応力を緩和できる。炭素系負極材料は、例えば、天然黒鉛、合成黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、メソ炭素、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、熱分解カーボン、コークス、ガラス・カーボンファイバー、焼結有機高分子化合物、およびカーボンブラックから成る群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0147】
炭素系負極材料の含有量は、負極活物質の総重量に基づいて、30重量%~95重量%、具体的には30重量%~90重量%、より具体的には50重量%~80重量%であり得る。
【0148】
一実施形態によれば、本発明は、前記負極活物質を含む負極およびそれを含む二次電池を提供できる。
【0149】
二次電池は、正極、負極、正極と負極の間に挿入されたセパレータ、およびリチウム塩が溶解した非水性液体電解質を含み得る。負極活物質は、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む負極活物質を含み得る。
【0150】
負極は、負極混合物のみで構成されていてもよく、負極集電体とその上に支持された負極混合物層とで構成されていてもよい。同様に、正極は、正極混合物のみで構成されていてもよく、正極集電体とその上に支持された正極混合物層とで構成されていてもよい。加えて、負極混合物および正極混合物は、導電性材料および結合剤をさらに含み得る。
【0151】
負極集電体を構成する材料および正極集電体を構成する材料として、当該分野で知られている材料を使用できる。当該分野で知られている材料を結合剤として使用し、導電性材料を負極および正極に添加できる。
【0152】
負極が集電体とその上に支持された活物質層から構成される場合、負極は、集電体の表面をコア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む負極活物質組成物で被覆し、それを乾燥させることによって作製できる。
【0153】
さらに、二次電池は非水性液体電解質を含み、非水性液体電解質は非水性溶媒および非水性溶媒に溶解したリチウム塩を含み得る。非水性溶媒として、当該分野で一般的に使用されている溶媒を使用できる。具体的には、非プロトン性有機溶媒を使用できる。非プロトン性有機溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、フラノンなどの環状カルボン酸エステル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、およびエトキシメトキシエタンなどの鎖状エーテル、およびテトラヒドロフランおよび2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテルが挙げられる。それらは単独で、または2つ以上を組み合わせて使用できる。
【0154】
<発明の形態>
本発明の一実施形態によれば、負極活物質としてコア-シェル構造を有するケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む二次電池において、その容量を向上させることができ、そのサイクル特性および初期効率を向上させることができる。
【実施例】
【0155】
<実施例1>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の調製
工程1:平均粒径20μmのケイ素粉末8kgと平均粒径20nmの二酸化ケイ素粉末16kgを50kgの水に加え、12時間均一に混合した後、200℃で24時間乾燥させて、ケイ素-酸化ケイ素混合物を得た。
【0156】
工程2:ケイ素/酸化ケイ素混合物と1kgの金属マグネシウムを真空反応器に入れ、温度を1,400℃に上げ、それらを蒸発させて5時間堆積させてケイ素-酸化ケイ素複合材料を得た。
【0157】
工程3:るつぼ内の基材上に堆積したケイ素-酸化ケイ素複合材料を、水冷によって室温まで急速に冷却した。
【0158】
工程4:冷却したケイ素-酸化ケイ素複合材料を粉砕し、粒径制御のための機械的方法によって分級して、平均粒径6μmのケイ素-酸化ケイ素複合材料A(コア)を得た。
【0159】
工程5:50gのケイ素-酸化ケイ素複合材料をチューブ型電気炉に入れ、950℃で3時間、メタンガスおよび二酸化炭素ガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら反応させ、表面が炭素で被覆されたケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製した。
【0160】
二次電池の製造
負極および負極活物質としてケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を含む電池(コイン電池)を調製した。
【0161】
負極活物質、導電性材料としてのSuper-P、およびポリアクリル酸を、重量比80:10:10で水と混合して、固形分45%の負極活物質組成物を調製した。
【0162】
負極活物質組成物を厚さ18μmの銅箔に塗布し、乾燥させて厚さ70μmの電極を作製した。電極で被覆された銅箔を直径14mmの円形に打ち抜き、コイン電池用の負極プレートを作製した。
【0163】
その一方で、正極プレートとして厚さ0.3mmの金属リチウム箔を使用した。
【0164】
セパレータとして厚さ25μmの多孔質ポリエチレンシートを使用した。電解質として、LiPF6を1Mの濃度でエチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合溶媒に溶解した液体電解質を使用した。上記の構成要素を使用して、厚さ3.2mm、直径20mmのコイン電池(バッテリー)(CR2032タイプ)を製造した。
【0165】
<実施例2>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5において950℃で2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法で、ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0166】
<実施例3>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程5において850℃で3.5時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0167】
<実施例4>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程5において、アルゴンガス、メタンガス、および二酸化炭素ガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら1050℃で1時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0168】
<実施例5>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程5において、アルゴンガス、およびメタンガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら920℃で2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0169】
<実施例6>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5においてアルゴンガスとメタンガスを使用して2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0170】
<実施例7>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程4において粉砕および分級条件を変更することにより平均粒径2.5μmのケイ素-酸化ケイ素複合材料を得たこと、および工程5においてメタンガス、二酸化炭素ガス、H2Oをそれぞれ1リットル/分で流しながら950℃で4時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0171】
<実施例8>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5においてアルゴンガスとメタンガスを用いて950℃で4時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0172】
<実施例9>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程5においてアルゴンガスおよびメタンガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら1,050℃で2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0173】
<実施例10>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において3kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5においてケイ素-酸化ケイ素複合材料の反応をアルゴンガスとメタンガスを用いて1,000℃で2時間行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0174】
<実施例11>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5においてアルゴンガス、メタンガス、および二酸化炭素ガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら1,050℃で4時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0175】
<実施例12>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5において、アルゴンガス、メタンガス、および二酸化炭素ガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら1,300℃で2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0176】
<実施例13>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および工程5において、アルゴンガス、およびアセチレンガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら550℃で5時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0177】
<比較例1>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において金属マグネシウムを使用しなかったこと、および工程5において酸化ケイ素の反応をメタンガスと二酸化炭素ガスをそれぞれ1リットル/分で流しながら950℃で2時間反応を行ったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0178】
<比較例2>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
比較例1の工程5を行わなかったことを除いては比較例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0179】
<比較例3>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程5を行わなかったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0180】
<比較例4>
ケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と二次電池の調製
実施例1の工程2において2kgの金属マグネシウムを使用したこと、および実施例1の工程5を行わなかったことを除いては実施例1と同じ方法でケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料を調製し、それを使用する二次電池を製造した。
【0181】
実施例1~13および比較例1~4の実験条件、各成分の含有量、厚さおよび粒径などを以下の表1および2にまとめる。
【0182】
【0183】
【0184】
<試験例>
試験例1:比表面積の測定
実施例および比較例で調製した複合材料を350℃で2時間脱気した。その比表面積をマウンテックのMacsorb HM(モデル1210)で、窒素とヘリウムの混合ガス流(N2:30体積%、He:70体積%)を用いるBET1点法によって測定した。
【0185】
試験例2:X線回折の測定
実施例および比較例で調製した複合材料をそれぞれX線回折分析装置(Malvern Panalytical, X'Pert3)で分析した。
【0186】
印加電圧は40kVで、印加電流は40mAであった。2θの範囲は10°~90°で、0.05°間隔で走査することによって測定した。
【0187】
試験例3:導電率の測定
実施例および比較例で調製した複合材料の上部および下部にハードマスクを用いて、100Wおよびアルゴン(Ar)の雰囲気中で金(Au)を100nmの厚さに堆積させてセルを得た。25℃でのイオン導電率は、2つのブロッキング電極に交流電流を流すことによって得られた応答からインピーダンスアナライザー(Zahner、IM6)を使用して測定した。
【0188】
試験例4:比重と圧縮密度の測定
調製した複合材料0.4gを10mLの容器に入れ、マイクロメトリクスのAccupycIIを使用して比重を測定した。
【0189】
調製した複合材料5gを秤量し、容器(ミリリットル試験管)に入れ、マイクロメトリクスのGeopyc1365を使用して108Nの圧縮下での圧縮密度を測定した。
【0190】
試験例5:二次電池の容量、初期効率、容量保持率の測定
実施例および比較例で作製したコインセル(二次電池)はそれぞれ電圧が0.005Vに達するまで0.1Cの定電流で充電し、電圧が2.0Vに達するまで0.1Cの定電流で放電して充電容量(mAh/g)、放電容量(mAh/g)、および初期効率(%)を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0191】
[方程式1]
初期効率(%)=放電容量/充電容量×100
【0192】
また、実施例および比較例で作製したコイン電池は、上記と同じ方法で1回充放電し、第2サイクルから、電圧が0.005Vに達するまで0.5Cの定電流で充電し、電圧が2.0Vに達するまで0.5Cの定電流で放電してサイクル特性(50サイクルの容量保持率、%)を測定した。結果を以下の表3および4に示す。
【0193】
[方程式2]
50サイクルの容量保持率(%)=50回目の放電容量/2回目の放電容量×100
【0194】
【0195】
【0196】
上記の表3および4から分かるように、実施例1~13のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、ケイ素微粒子、SiOx(0<x≦2)で表される酸化ケイ素化合物、ケイ酸マグネシウムを含むコア、および炭素膜としてコア上に形成されたシェルから成るコア-シェル構造を有するケイ素-酸化ケイ素-炭素複合材料であった。特に、すべてのケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料の導電率は0.5S/cm~10S/cmであった。このような場合、放電容量、初期効率、および容量保持率はすべて優れていた。
【0197】
具体的には、実施例1~13のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料は、放電容量が1,240mAh/g~1,467mAh/g、初期効率が78%以上で、容量保持率が70%以上であった。特に、実施例1、3~5、7、および9は、1,400mAh/g以上の非常に高い放電容量を有し、実施例2、6、8、および10は、82%以上の初期効率を有し、実施例1、3、5、および8は容量保持率が90%以上であった。
【0198】
対照的に、比較例1では、マグネシウムがコアに含まれていなかった。比較例2~4の複合材料は、コア-シェル構造ではなかった。従って炭素膜を含まなかったので、それらの導電率を測定しなかった。比較例1~4は、実施例1~13と比較して、放電容量、初期効率、および容量保持率が大幅に低下していた。
【0199】
具体的には、コアにマグネシウムを含まない比較例1の複合材料は、初期効率が74.2%と低かった。炭素膜を含まないコア-シェル構造ではなかった比較例2~4の複合材料はすべて800mAh/g以下の放電容量を有していた。比較例4の複合材料は580mAh/gの放電容量を有していたが、これは実施例と比較して200%以上減少した。さらに、容量保持率も約49%~53%であり、これは90%以上の容量保持率を有する実施例1、3、5、および8のケイ素/酸化ケイ素-炭素複合材料と比較して、ほぼ半分に減少した。
【0200】
一方、二次電池の容量特性は、炭素が被覆されている場合、温度と時間の影響を受けることがわかる。例えば、実施例1~10のように600℃~1000℃で30分~5時間炭素被覆を行った場合、または1000℃~1200℃以上で30分~4時間未満で行った場合、放電容量、初期効率、容量保持率はすべて優れていた。対照的に、実施例11~13のように高温で熱処理時間が長すぎたり短すぎたりする場合、または低温で熱処理を行った場合、電気的性質は向上したものの、初期効率または容量保持が低下した。