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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】プロピレン共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20240318BHJP
   C08F 4/653 20060101ALI20240318BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240318BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08F255/02
C08F4/653
C08F4/654
C08F290/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022519089
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2019125861
(87)【国際公開番号】W WO2021056858
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】201910913025.3
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】牛 慧
(72)【発明者】
【氏名】華 哲
(72)【発明者】
【氏名】何 宗科
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲シュ▼慧
(72)【発明者】
【氏名】包 卓
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101910258(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108017728(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00407096(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第109293929(CN,A)
【文献】Aihui WANG et al.,“Thermoreversible cross-linking of ethylene/propylene copolymer rubbers”,Polymer Chemistry,2017年06月06日,Vol. 8, No. 31,p.4494-4502,DOI: 10.1039/c7py00896a
【文献】Zongke HE et al.,“Poly(ethylene-co-propylene)/poly(ethylene glycol) elastomeric hydrogels with thermoreversibly cross-linked networks”,Polymer Chemistry,2019年08月16日,Vol. 10, No. 35,p.4789-4800,DOI: 10.1039/c9py00824a
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/02
C08F 4/653
C08F 4/654
C08F 290/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタ触媒、助触媒、プロピレン及びフラン置換オレフィンモノマーを混合して重合反応を行うステップ1と、
前記ステップ1の反応が完了した後、残りの前記プロピレンを除去し、ステップ1の反応系に、エチレン、前記プロピレン及び前記フラン置換オレフィンモノマーからなる混合物を導入して重合反応を行うステップ2と、
前記ステップ2の反応が完了した後、重合生成物とカップリング剤を混合して予備混合原料を得、前記予備混合原料を押出機に入れて、溶融押出ししてプロピレン共重合体を得るステップ3と、を含み、
前記カップリング剤が、両末端にマレイミド置換基を有する、下記式で表される脂肪族又は芳香族炭化水素であり、
【化1】
式中、Rが、炭素数1~20のアルキレン基から選択される、ことを特徴とするプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、前記チーグラー・ナッタ触媒の添加量が、前記プロピレンの添加量に対して0.0005~0.1質量%であり、前記フラン置換オレフィンモノマーの添加量が、前記プロピレンの添加量に対して0.1~5質量%であり、前記重合反応の反応温度が-20~120℃であり、反応時間が0.1~10時間であり、反応圧力が0.01~6MPaであり、
前記ステップ2において、前記重合反応における前記エチレンの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して1~100質量%であり、前記ステップ2における前記プロピレンの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して1~100質量%であり、前記フラン置換オレフィンの添加量が、前記ステップ2における前記エチレンと前記プロピレンの総添加量に対して1~40質量%であり、前記ステップ2において、前記重合反応の温度が-20~120℃であり、重合反応時間が0.1~10時間であり、重合反応圧力が0.01~6MPaであり、
前記ステップ3において、前記カップリング剤の添加量が、前記ステップ2で得られた前記重合生成物の質量に対して0.1~40質量%であり、溶融押出の温度が160~250℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ1において、前記重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して0.01~0.5質量%であり、
前記ステップ2において、前記重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量が、前記エチレン、前記プロピレン及び前記フラン置換オレフィンモノマーの総添加量に対して0.001~5質量%である、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記チーグラー・ナッタ触媒は、
Tiの塩化物であり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒におけるTi元素の含有量が0.5~10質量%であり、前記Tiの塩化物がTiCl、TiCl、TiOClから選択される少なくとも1種である成分Iと、
塩化マグネシウムであり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属元素Mgの含有量が5~25質量%である成分IIと、
内部電子供与体であり、前記チーグラー・ナッタ触媒における前記内部電子供与体の含有量が1~30質量%であり、その中、前記内部電子供与体がコハク酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン又は9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンである成分IIIと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1の助触媒が、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミノキサンのいずれか1種であり、
その中、前記アルキルアルミニウムが、トリアルキルアルミニウム、又はトリアルキルアルミニウムとハロゲン化アルキルアルミニウム又はポリハロゲン化アルキルアルミニウムからなる混合物であり、その中、前記トリアルキルアルミニウムが、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムのうちの少なくとも1種であり、前記ハロゲン化アルキルアルミニウムがAlEtClを含み、前記ポリハロゲン化アルキルアルミニウムがAlEtClを含み、
前記アルキルアルミノキサンが、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンのうちの少なくとも1種であり、
前記助触媒の添加量は、助触媒におけるAlとチーグラー・ナッタ触媒におけるTiとのモル比がAl/Ti=10~20000である、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記チーグラー・ナッタ触媒は、
コハク酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン又は9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンである内部電子供与体を含み、
前記ステップ1において、前記重合反応を行う前に、反応系に外部電子供与体を加え、
前記外部電子供与体が、前記内部電子供与体と同一の、又は式RSi(OR)で表される化合物であり、式中、RとRが、いずれも炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基又は炭素原子数6~18のアリール基であり、Rが、炭素原子数1~5のアルキル基であり、
前記外部電子供与体が、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランのうちの少なくとも1種であり、
前記外部電子供与体のモル使用量は、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属Ti元素のモル使用量の0.01~100倍である、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記フラン置換オレフィンモノマーは、下記式で表され、
【化2】
式中、R、R、Rが、同一でも又は異なっていてもよく、かつ、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基から選択され、mが、1~12の整数である、ことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン共重合体、その製造方法及びその使用に関し、特に、熱可逆的な架橋構造を有するプロピレン共重合体の製造方法及びその耐衝撃性樹脂としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂の主要な種類の一つであるポリプロピレン多相共重合体では、ポリプロピレンマトリックス中に弾性体特性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体を分散させることにより、ホモポリプロピレン樹脂の靭性(特に低温靭性)の不足が克服される。これにより、ポリプロピレン樹脂の使用範囲が大幅に広くなっている。ポリプロピレンの多相共重合体の製造において、現在、代表的な傾向になっているのは反応器内でプロピレン重合とエチレン/α-オレフィン共重合を連続的に多段で行う方法である。まず、第1段反応器内でアイソタクチックポリプロピレン樹脂のマトリックスを合成し、そして、得られたポリプロピレンを第2段反応器に移し、エチレンとプロピレン(又はエチレンと他のα-オレフィン)の共重合反応を引き続き行って、ゴム特性を有する共重合体を合成し、該共重合体のポリプロピレン樹脂マトリックスでのその場分散を可能とし、ポリプロピレン樹脂に靭性を与える。このプロピレン共重合体におけるゴム相が破断箇所の衝撃エネルギーを吸収または部分的に吸収することで、材料全体の衝撃強度を高めることは、強靭化のメカニズムであり、その強靭化効果に影響を与える主な要因は次の三つの方面が挙げられる。(1)ゴム含有量:特許文献1には、このようなゴム相が一定の含有量に達してこそ、明らかな強靭化効果を奏することが開示されている。(2)ゴム相の分散サイズと均質性:ゴム相は一般に分散相としてポリプロピレン樹脂のマトリックス中に分布している。分散相の寸法が1μm程度であれば、ポリプロピレンの強靭化に良好な役割を果たすことができ(非特許文献1)、分散相の寸法が大きすぎても小さすぎても材料特性の向上に不利である。しかしながら、ポリオレフィン自体が無極性であるため、2相間の作用力が弱く、2相間は化学結合により結合されていなく、熱処理の時間や回数が増えると相分離が徐々に進行し、分散相(弾性体共重合体)が大規模な凝集を起こしやすい。中国科学院化学研究所の董金勇らは、重合中にゴム相を架橋結合させることで(非特許文献2)、ゴム相の寸法が安定した耐衝撃性ポリプロピレン共重合体を得て、加工中における相分離の進行やゴム相の凝集の問題を解決している。(3)ゴム相と樹脂マトリックス相の相互作用力の大きさ(即ち、相溶性):相分離を抑制し、材料特性を向上させるためには、2相の間の相互作用を高めることが重要である。重合工程でブロック構造を有するエチレン/プロピレン共重合体を導入することにより、2相の相溶性を向上させているが、2相の間の化学結合の作用がないため、改善効果はわずかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第3,627,852号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】Journal of Applied Polymer Science,1996,60,1391-1403
【文献】Polymer,2016,85,10-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フラン/マレイミドの間のディールス・アルダー(D-A)反応([4+2]環化反応)は、原料が入手しやすく、また、逆D-A反応(rD-A)の発生が容易であるという特徴がある。室温または加熱条件下(60℃程度)でフラン/マレイミドの間にD-A反応が発生し、120℃程度でrD-A反応が発生することは、高性能材料の製造に有効な方法である。この反応を利用して樹脂相とゴム相の化学結合を実現すれば、2相の相溶性が悪いという問題を根本的に解決し、特性に優れた耐衝撃性重合体材料を得ることができ、同時に、該化学結合は120℃で破壊させることができるため、材料の溶融加工時の要求を満たすことができ、加工成形した後、冷却時に再び化学結合による結合を実現でき、機能性の新材料を得ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プロピレンの含有率が49~95質量%であり、エチレンの含有率が3~49質量%であり、フラン置換オレフィンモノマーの含有率が1~30質量%であり、カップリング剤の含有率が0.1~30質量%である新規なプロピレン共重合体を提供する。
【0007】
その中、前記フラン置換オレフィンモノマーは、下記式で表され、
【化1】
式中、R、R、Rは、同一でも又は異なっていてもよく、かつ、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基から選択され、mは、1~12の整数である。
【0008】
前記カップリング剤は、両末端にマレイミド置換基を有する、下記式で表される脂肪族又は芳香族炭化水素であり、
【化2】
式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基から選択される。
【0009】
本発明の他の目的は、上記プロピレン共重合体の製造方法を提供することであり、具体には以下のステップを含む。
1)ポリプロピレン樹脂の製造:チーグラー・ナッタ触媒、助触媒、プロピレン及びフラン置換オレフィンモノマーを混合して重合反応を行う。
2)エチレン・プロピレン共重合体弾性体の製造:前記ステップ1)の反応が完了した後、残りのプロピレンを除去し、ステップ1)の反応系にエチレン、プロピレン及びフラン置換オレフィンモノマーからなる混合物を導入して重合反応を行う。
3)重合体のカップリング反応:前記ステップ2)の反応が完了した後、重合生成物とカップリング剤を混合して予備混合原料を得、それを押出機に入れて、溶融押出しして前記プロピレン共重合体を得る。
【0010】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記チーグラー・ナッタ触媒の使用量は、前記プロピレンの質量に対して0.0005~0.1質量%、好ましくは、0.001~0.01質量%であり、前記フラン置換オレフィンモノマーの使用量は、前記プロピレンの質量に対して0.1~5質量%、好ましくは0.5~2質量%である。
【0011】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記反応温度は-20~120℃、好ましくは、50~90℃であり、反応時間は0.1~10時間、好ましくは、0.5~3時間であり、反応圧力は0.01~6MPa、好ましくは、0.1~4MPaである。
【0012】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量は、前記プロピレンの質量に対して0.01~0.5質量%、好ましくは0.01~0.2質量%である。
【0013】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記チーグラー・ナッタ触媒は、
Tiの塩化物であり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒におけるTi元素の含有量が0.5~10質量%であり、その中、前記Tiの塩化物がTiCl、TiCl、TiOClから選択される少なくとも1種である成分Iと、
塩化マグネシウムであり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属元素Mgの含有量が5~25質量%である成分IIと、
内部電子供与体であり、前記チーグラー・ナッタ触媒における前記内部電子供与体の含有量が1~30質量%であり、その中、前記内部電子供与体がコハク酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、コハク酸エステル、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン又は9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンである成分IIIと、を含む。
【0014】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記重合反応を行う前に、反応系に助触媒を加え、前記助触媒は、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミノキサンのうちの1種である。
【0015】
さらに、前記アルキルアルミニウムは、トリアルキルアルミニウム、又はトリアルキルアルミニウムとハロゲン化アルキルアルミニウム又はポリハロゲン化アルキルアルミニウムからなる混合物であり、その中、前記トリアルキルアルミニウムは、好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウムのうちの少なくとも1種であり、前記ハロゲン化アルキルアルミニウムは、好ましくは、AlEtClであり、前記ポリハロゲン化アルキルアルミニウムは、好ましくは、AlEtClであり、前記アルキルアルミノキサンは、好ましくは、メチルアルミノキサンとイソブチルアルミノキサンのうちの少なくとも1種である。
【0016】
前記助触媒の添加量は、Alと前記チーグラー・ナッタ触媒におけるTiのモル比で計算され、それぞれはAl:Ti=10~20000であり、好ましくは100~10000である。
【0017】
さらに、上記の発明において、ステップ1)において、前記重合反応を行う前に、反応系に外部電子供与体を加え、前記外部電子供与体は、前記内部電子供与体と同一でも又は異なっていてもよく、前記外部電子供与体が前記内部電子供与体と異なる場合、前記外部電子供与体は、式RSi(OR)で表される化合物であり、式中、RとRは、いずれも炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基又は炭素原子数6~18のアリール基であり、Rは、炭素原子数1~5のアルキル基である。
【0018】
さらに、上記の発明において、前記外部電子供与体は、好ましくは、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジシクロペンチルオキシジエチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランのうちの少なくとも1種である。
【0019】
さらに、上記の発明において、前記外部電子供与体のモル使用量は、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属Ti元素のモル使用量の0.01~100倍、好ましくは、1~50倍である。
【0020】
さらに、上記の発明において、ステップ2)における、前記エチレンの添加量は、ステップ1)の前記プロピレン添加量に対して1~100質量%、好ましくは、10~40質量%であり、ステップ2)の前記プロピレンの添加量は、ステップ1)の前記プロピレンの添加量に対して1~100質量%、好ましくは、10~40質量%であり、ステップ2)の前記フラン置換オレフィンの添加量は、ステップ2)の前記エチレンとプロピレンの総添加量に対して1~40質量%、好ましくは5~20質量%である。
【0021】
さらに、上記の発明において、ステップ2)における、前記反応温度は-20~120℃、好ましくは45~95℃であり、反応時間は0.1~10時間、好ましくは0.5~4時間であり、反応圧力は0.01~6MPa、好ましくは0.1~4MPaである。
【0022】
さらに、上記の発明において、前記ステップ2)において、重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量は、前記エチレンとα-オレフィンモノマーの総添加量に対して0.001~5質量%、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.02~0.15質量%である。
【0023】
さらに、上記の発明において、ステップ3)における、前記カップリング剤の添加量は、ステップ2)の生成物の質量に対して0.1~40質量%、好ましくは1~10質量%である。
【0024】
さらに、上記の発明において、ステップ3)における、前記重合生成物とカップリング剤との混合物を溶融押出しする温度は160~250℃、好ましくは180~230℃である。
【0025】
本発明のプロピレン共重合体は、可逆的な架橋ネットワーク構造を有する材料であって、カップリング剤の作用として、ステップ1)で製造したポリプロピレン樹脂とステップ2)で製造したエチレンプロピレン共重合体弾性体の化学結合による結合を実現して、架橋ネットワーク構造を形成し、2相間の作用力を根本的に強化することができ、D-A反応の熱可逆性を利用して、共重合体を120℃以上に加熱すると、材料の脱架橋が可能となり、材料に熱可塑性を持たせること、共重合体を60℃以下に冷やすと再び架橋してネットワーク構造を形成し、材料の機械的性質を高めることができる。
【0026】
本発明は、プロピレン共重合体の、耐衝撃性重合体樹脂材としての使用をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】比較例3と実施例7の生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを比較して示す図。
図2】比較例3と実施例7の生成物の赤外スペクトルを比較して示す図。
図3】比較例4と実施例3の生成物の断面がヘキサンによるエッチングの前後の走査型電子顕微鏡写真を比較して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例に限制されない。本発明の比較例及び実施例に使用されるフラン置換基含有のオレフィンモノマーA、フラン置換基含有のオレフィンモノマーB、カップリング剤C及びカップリング剤Dは、以下の手段または方法で得られる。
【0029】
フラン置換基含有のオレフィンモノマー:
フラン置換基含有のオレフィンモノマーは、商品として購入することができ、直接合成することもできる。本発明では、フラン置換基含有のオレフィンモノマーを合成するための通常方法を提供するが、その方法は、フラン置換基含有のオレフィンモノマーを限定するものではない。
【0030】
(1)フラン置換基含有のオレフィンモノマーA:
90mmolのN-ブチルリチウム溶液を-78℃の条件下で、147mmolのフランが溶解されている50mLの無水テトラヒドロフランに加え、室温まで昇温して4時間反応させた後、-78℃まで冷却し、126mmolの5-ブロモ-1-ペンテンを20mLの無水テトラヒドロフランに溶解して、反応系に徐々に滴下して加え、室温で一晩撹拌する。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、無水MgSOで乾燥した後、減圧蒸留して溶剤と未反応の5-ブロモ-1-ペンテンを除去し、以下の構造式である生成物のフランペンテンAを得る。
【化3】
【0031】
(2)フラン置換基含有のオレフィンモノマーB:
44mmolのN-ブチルリチウム溶液を-78℃の条件下で、73.5mmolのフランが溶解されている20mLの無水テトラヒドロフランに加え、室温まで昇温して4時間反応させた後、-78℃まで冷却し、68mmolの8-ブロモ-1-オクテンを10mLの無水テトラヒドロフランに溶解して、反応系に徐々に滴下して加え、室温で一晩撹拌した。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、無水MgSOで乾燥した後、減圧蒸留して溶剤および未反応の8-ブロモ-1-オクテンを除去し、以下の構造式である生成物のフランオクテンBを得る。
【化4】
【0032】
カップリング剤:
カップリング剤は、商品として購入することができ、直接合成することもできる。本発明では、両末端にマレイミドを含有するカップリング剤を合成するための通常方法を提供するが、その方法は、カップリング剤の構造を限定するものではない。
【0033】
(1)カップリング剤C:
市販商品:安耐吉化学会社から購入でき、CAS番号が13676-54-5である。
【化5】
【0034】
(2)カップリング剤D:
合成方法:フランにより保護されている10gの無水マレイン酸と7mLのトリエチルアミンを60mLのメタノールに溶かして得られた溶液に、氷水浴において、2.92gのヘキサメチレンジアミンを40mLのメタノールに溶かして得られた溶液を滴下して加える。窒素ガスの雰囲気下、70~80℃で48時間加熱還流する。生成物をろ過し乾燥させ、少量の30~50mLのトルエンを加え、120℃で48時間加熱還流する。減圧蒸留して溶剤を除去し、下図に示すような構造式である生成物Dを得る。
【化6】
【0035】
(比較例1)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレンを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して120分間反応させ、1524gのポリプロピレン生成物を得た。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0036】
(比較例2)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレンを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、850gのポリプロピレンを得る。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1040gの生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が11.5質量%、プロピレンの含有率が88.5質量%である。
生成物の構造と性能を表1に示し、生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを図1に示す。
【0037】
(比較例3)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレンを入れ、0.25MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、990gのポリプロピレンを得る。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.15MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1370gの重合生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が18.0質量%、プロピレンの含有率が82.0質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0038】
(比較例4)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、20gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に950gの生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が11.8質量%、プロピレンの含有率が86.1質量%、モノマーAの含有率が2.1質量%である。
生成物の構造と性能を表1に示し、生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを図2に示す。
【0039】
(実施例1)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、20gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に950gの重合生成物を得た。
950gの重合生成物と50gのカップリング剤Cを混合した後、35型双軸スクリュー押出機(倍隆科亜南京機械有限会社)に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が11.2質量%、プロピレンの含有率が81.8質量%、モノマーAの含有率が2.0質量%、カップリング剤Cの含有率が5.0質量%である。
生成物の構造と性能を表1に示し、生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを図3に示す。
【0040】
(実施例2)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.080gのジフェニルジメトキシシラン、0.45gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、40gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に985gの重合生成物を得た。
985gの重合生成物と90gのカップリング剤Cを混合した後、35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が14.8質量%、プロピレンの含有率が73.2質量%、モノマーA含有率が3.6質量%、カップリング剤Cの含有率が8.4質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0041】
(実施例3)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、20gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に950gの重合生成物を得た。
950gの重合生成物と75gのカップリング剤Dを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が10.4質量%、プロピレンの含有率が80.3質量%、モノマーAの含有率が2.0質量%、カップリング剤Dの含有率が7.3質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0042】
(実施例4)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して90分間反応させ、1120gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、20gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して30分間反応させ、最終的に1250gの重合生成物を得た。
1250gの重合生成物と40gのカップリング剤Cを混合して35型双軸スクリュー押出機に加えて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が6.7質量%、プロピレンの含有率が88.8質量%、モノマーAの含有率が1.4質量%、カップリング剤Cの含有率が3.1質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0043】
(実施例5)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.080gのジフェニルジメトキシシラン、0.45gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、80gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーBを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して60分間反応させ、最終的に1210gの重合生成物を得た。
1210gの重合生成物と120gのカップリング剤Dを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が21.0質量%、プロピレンの含有率が65.6質量%、モノマーAの含有率が0.5質量%、モノマーBの含有率が3.9質量%、カップリング剤Dの含有率が9.0質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0044】
(実施例6)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、15gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーBを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.080gのジフェニルジメトキシシラン、0.45gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、900gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、100gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーBを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して60分間反応させ、最終的に1250gの重合生成物を得た。
1250gの重合生成物と100gのカップリング剤Cを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が17.6質量%、プロピレンの含有率が69.5質量%、モノマーBの含有率が5.5質量%、カップリング剤Cの含有率が7.4質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0045】
(実施例7)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAをいれ、0.2MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.070gのジフェニルジメトキシシラン、0.45gのトリイソブチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、880gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、40gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.075MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1220gの重合生成物を得た。
1220gの重合生成物と50gのカップリング剤Cを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が16.1質量%、プロピレンの含有率が77.4質量%、モノマーAの含有率が2.6質量%、カップリング剤Cの含有率が3.9質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0046】
(実施例8)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.25MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.070gのジフェニルジメトキシシラン、0.45gのトリイソブチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、980gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、40gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、300gのエチレンと300gのプロピレンとの混合気を導入し、0.15MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1350gの重合生成物を得た。
1350gの重合生成物と60gのカップリング剤Cを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が15.7質量%、プロピレンの含有率が78.1質量%、モノマーAの含有率が1.9質量%、カップリング剤Cの含有率が4.3質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0047】
(実施例9)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、90gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.25MPaの水素ガス、30℃の条件下で0.070gのジフェニルジメトキシシラン、0.80gのトリイソブチルアルミニウム、80mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、980gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、200gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、400gのエチレンと400gのプロピレンとの混合気を導入し、0.15MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1220gの重合生成物を得た。
1220gの重合生成物と250gのカップリング剤Cを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が10.6質量%、プロピレンの含有率が56.6質量%、モノマーAの含有率が15.8質量%、カップリング剤Cの含有率が17.0質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0048】
(実施例10)
10Lの重合反応器に2kgの液体プロピレン、10gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを入れ、0.1MPaの水素ガス、30℃の条件下で、0.076gのジフェニルジメトキシシラン、0.36gのトリエチルアルミニウム、60mgのチーグラー・ナッタ触媒を順次に加え、75℃まで昇温して60分間反応させ、780gのポリプロピレンを得た。
反応器内の残りのプロピレンを除去した後、20gのフラン置換基含有のオレフィンモノマーAを加え、400gのエチレンと200gのプロピレンとの混合気を導入し、0.1MPaの水素ガス下で、80℃まで昇温して40分間反応させ、最終的に1070gの重合生成物を得た。
1070gの重合生成物と75gのカップリング剤Dを混合して35型双軸スクリュー押出機に入れて溶融し、押出機の溶融部の温度が160℃、溶融物搬送部の温度が200℃、吐出口の温度が180℃であり、押出された生成物を循環水浴で冷却してから粒子状に切断して、目的生成物を得た。
得られた生成物において、エチレンの含有率が19.8質量%、プロピレンの含有率が71.9質量%、モノマーAの含有率が1.7質量%、カップリング剤Dの含有率が6.6質量%である。生成物の構造と性能を表1に示す。
【0049】
【表1】
注a:未破断とは、衝撃試験条件下で試験片が完全に破断しないことである。
【0050】
表1は、プロピレン共重合体の性能データを示す。その中、キシレン可溶物とは、共重合体におけるエチレン・プロピレン共重合体弾性体の実際の含有量を表し、ヘキサン可溶物とは、ポリプロピレン樹脂と化学結合されていないエチレン・プロピレン共重合体弾性体の含有量を表す。
【0051】
まず、比較例と比べると、本発明において、共重合体にフランオレフィンとカップリング剤を加えたため、製造したポリプロピレン樹脂と製造したエチレン・プロピレン共重合体弾性体とが化学結合により結合されて、架橋ネットワーク構造が形成される。このようなことは、生成物において化学結合により結合されていないエチレン・プロピレン共重合体の含有量(沸騰ヘキサン可溶物)が、エチレン・プロピレン共重合体の総含有量(キシレン可溶物)より著しく少ないことから確認できる。比較例2、3、4では、製造したポリプロピレン樹脂と製造したエチレン・プロピレン共重合体弾性体とが化学結合により結合されていないため、沸騰ヘキサン可溶物の含有量がエチレン・プロピレン共重合体の総含有量(キシレン可溶物)に近づいている。比較例4と実施例3の断面エッチング写真(図3に示すように)に基づいて同じ結論が得られ、すなわち、比較例4のエチレン・プロピレン共重合体弾性体はヘキサンにより溶解されて多数の穴が形成されるが、実施例3のエチレン・プロピレン共重合体弾性体はほとんど溶解されていない。上記の結果から分かるように、本発明において、製造したプロピレン共重合体は、架橋ネットワーク構造を有する新型のプロピレン共重合体であって、2相が化学結合されているため(図2の赤外スペクトルから架橋結合の形成が観察できる)、2相間の作用力を根本的に強化し、最終的に材料の性能を明らかに向上させる。
【0052】
また、本発明の共重合体は熱可逆的な架橋構造を有し、すなわち溶融加工状態で、架橋ネットワークが脱架橋(フランとマレイミドグループの間の熱可逆的なディールス・アルダー反応を利用する)でき、材料に熱可塑性を持たせることができ、繰り返し加工が可能になる。すべての実施例のサンプルは、溶融指数測定を行うことができるため、該材料が熱可塑性を有することを示し、同時に比較例3と実施例8の結果から分かるように、2種の共重合体の溶融指数が近づいている(即ち加工性能が近い)が、実施例8の性能が比較例3より明らかに優れる。これにより、本発明により製造されたプロピレン共重合体は、加工成形した後で、通常の使用条件まで冷却すると、再び架橋ネットワーク構造が形成され、材料の性能を大幅に向上させる。
【0053】
上述より、本発明に記載のプロピレン共重合体は、可逆的な架橋ネットワーク構造を有する新型の材料であり、加工時に脱架橋できるので加工しやすく、成形後には架橋を形成するので高性能であるという特徴がある。
【0054】
(付記)
(付記1)
プロピレン共重合体における、プロピレンの含有率が49~95質量%であり、エチレンの含有率が3~49質量%であり、フラン置換オレフィンモノマーの含有率が1~30質量%であり、カップリング剤の含有率が0.1~30質量%である、ことを特徴とするプロピレン共重合体。
【0055】
(付記2)
前記フラン置換オレフィンモノマーは、下記式で表され、
【化7】
式中、R、R、Rが、同一でも又は異なっていてもよく、かつ、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基から選択され、mが、1~12の整数である、ことを特徴とする付記1に記載のプロピレン共重合体。
【0056】
(付記3)
前記カップリング剤が、両末端にマレイミド置換基を有する、下記式で表される脂肪族又は芳香族炭化水素であり、
【化8】
式中、Rが、炭素数1~20のアルキル基から選択される、ことを特徴とする付記1に記載のプロピレン共重合体。
【0057】
(付記4)
チーグラー・ナッタ触媒、助触媒、プロピレン及びフラン置換オレフィンモノマーを混合して重合反応を行うステップ1と、
前記ステップ1の反応が完了した後、残りの前記プロピレンを除去し、ステップ1の反応系に、前記エチレン、前記プロピレン及び前記フラン置換オレフィンモノマーからなる混合物を導入して重合反応を行うステップ2と、
前記ステップ2の反応が完了した後、重合生成物とカップリング剤を混合して予備混合原料を得、前記予備混合原料を押出機に入れて、溶融押出しして前記プロピレン共重合体を得るステップ3と、を含む、ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載のプロピレン共重合体の製造方法。
【0058】
(付記5)
前記ステップ1において、前記チーグラー・ナッタ触媒の添加量が、前記プロピレンの添加量に対して0.0005~0.1質量%であり、前記フラン置換オレフィンモノマーの添加量が、前記プロピレンの添加量に対して0.1~5質量%であり、前記重合反応の反応温度が-20~120℃であり、反応時間が0.1~10時間であり、反応圧力が0.01~6MPaであり、
前記ステップ2において、前記重合反応における前記エチレンの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して1~100質量%であり、前記ステップ2における前記プロピレンの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して1~100質量%であり、前記フラン置換オレフィンの添加量が、前記ステップ2における前記エチレンと前記プロピレンの総添加量に対して1~40質量%であり、前記ステップ2において、前記重合反応の温度が-20~120℃であり、重合反応時間が0.1~10時間であり、重合反応圧力が0.01~6MPaであり、
前記ステップ3において、前記カップリング剤の添加量が、前記ステップ2で得られた生成物の質量に対して0.1~40質量%であり、溶融押出の温度が160~250℃である、ことを特徴とする付記4に記載の方法。
【0059】
(付記6)
前記ステップ1において、前記重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量が、前記ステップ1の前記プロピレンの添加量に対して0.01~0.5質量%であり、
前記ステップ2において、前記重合反応を行う前に、反応系に水素ガスを加え、前記水素ガスの添加量が、前記エチレンとα-オレフィンモノマーの総添加量に対して0.001~5質量%である、ことを特徴とする付記4に記載の方法。
【0060】
(付記7)
前記チーグラー・ナッタ触媒は、
Tiの塩化物であり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒におけるTi元素の含有量が0.5~10質量%であり、前記Tiの塩化物がTiCl、TiCl、TiOClから選択される少なくとも1種である成分Iと、
塩化マグネシウムであり、その中、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属元素Mgの含有量が5~25質量%である成分IIと、
内部電子供与体であり、前記チーグラー・ナッタ触媒における前記内部電子供与体の含有量が1~30質量%であり、その中、前記内部電子供与体がコハク酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、コハク酸エステル、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン又は9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンである成分IIIと、を含む、ことを特徴とする付記4に記載の方法。
【0061】
(付記8)
前記ステップ1の助触媒が、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミノキサンのいずれか1種であり、
その中、前記アルキルアルミニウムが、トリアルキルアルミニウム、又はトリアルキルアルミニウムとハロゲン化アルキルアルミニウム又はポリハロゲン化アルキルアルミニウムからなる混合物であり、その中、前記トリアルキルアルミニウムが、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムのうちの少なくとも1種であり、前記ハロゲン化アルキルアルミニウムがAlEtClを含み、前記ポリハロゲン化アルキルアルミニウムがAlEtClを含み、
前記アルキルアルミノキサンが、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンのうちの少なくとも1種であり、
前記助触媒の添加量は、助触媒におけるAlとチーグラー・ナッタ触媒におけるTiとのモル比がAl:Ti=10~20000である、ことを特徴とする付記4に記載の方法。
【0062】
(付記9)
前記ステップ1において、前記重合反応を行う前に、反応系に外部電子供与体を加え、
前記外部電子供与体が、付記8に記載の内部電子供与体と同一の、又は式RSi(OR)で表される化合物であり、式中、RとRが、いずれも炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数3~18のシクロアルキル基又は炭素原子数6~18のアリール基であり、Rが、炭素原子数1~5のアルキル基であり、
前記外部電子供与体が、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジシクロペンチルオキシジエチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランのうちの少なくとも1種であり、
前記外部電子供与体のモル使用量は、前記チーグラー・ナッタ触媒における金属Ti元素のモル使用量の0.01~100倍である、ことを特徴とする付記4に記載の方法。
【0063】
(付記10)
付記1~3のいずれか一つに記載のプロピレン共重合体の、耐衝撃性重合体樹脂材としての使用。
図1
図2
図3