IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 江蘇科技大学の特許一覧

特許7455428インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法
<>
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図1
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図2
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図3
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図4
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図5
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図6
  • 特許-インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20240318BHJP
【FI】
H04L27/26 312
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022538479
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021127830
(87)【国際公開番号】W WO2022262172
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】202110663298.4
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王彪
(72)【発明者】
【氏名】張明亮
(72)【発明者】
【氏名】朱雨男
(72)【発明者】
【氏名】李涵瓊
(72)【発明者】
【氏名】呉承希
(72)【発明者】
【氏名】張友文
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111355677(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108933749(CN,A)
【文献】Jian ZHANG et al.,“Combination-selection algorithm for FBMC-IM System”,2017 9th International Conference on Wireless Communications and Signal Processing (WCSP),2017年10月,DOI: 10.1109/WCSP.2017.8171193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
従来の水中音響FBMC通信システムに一次元のインデックス情報を追加して、インデックス変調に基づく水中音響FBMC通信システムを取得する、ステップ1と、
様々なアクティブなサブキャリアの数のマッピング方式に対応する異なるインデックス変調下での水中音響FBMC-IM通信システムのビット誤り率を計算しシミュレートして、干渉のない水中音響FBMC-IM通信システムとしてアクティブなサブキャリアの適切な数を決定する、ステップ2と、
水中音響通信環境における不連続な周波数帯域干渉の存在を考慮して、前記ステップ2の干渉のない水中音響FBMC-IM通信システム通信環境に、不連続な周波数帯域干渉を加える、ステップ3と、
水中音響通信環境における不連続な周波数帯域干渉の周波数範囲に応じて、干渉のない水中音響FBMC-IM通信システムの通信周波数帯域を分割することで、不連続な周波数帯域干渉信号とエイリアシングする部分のサブキャリアがサイレントになり、干渉されていないサブキャリアがアクティブな状態を維持して通信信号を伝送し、不連続な通信周波数帯域分割を実現し、水中音響FBMC-IM干渉防止通信システムを取得して、マルチキャリア水中音響の干渉防止通信を実現する、ステップ4と、
を含むことを特徴とするインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項2】
ステップ1の水中音響FBMC通信システムでは、システム送信側が送信側によって送信される情報に対してビットストリーム処理を実行し、コンステレーション変調ビットとインデックス変調ビットに分割する必要があり、送信側によって送信される情報をAビット、一つのFBMCブロック内のすべてのサブキャリアの数をM、送信側によって送信される情報がストリーム処理後にGグループに分割され、各グループに含まれるビット数をPビットとし、同様に、すべてのサブキャリアMがg個のサブキャリアブロックに分割され、各サブキャリアブロックのキャリア数がQであり、各グループのPビット情報が、長さQのサブキャリアブロックに対応付けてマッピングされ、各グループにおけるPビット情報は、PビットとPビットの二つの部分に分割され、Pビットがアクティブ化されたサブキャリアの位置を制御するためのインデックス変調ビットであり、Pビットがアクティブ化されたk個のサブキャリアにマッピングされるコンステレーション変調ビットであることを特徴とする、請求項1に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項3】
水中音響FBMC-IM通信システムのすべてのサブキャリアが、128個のサブキャリアグループに分割され、各グループの4つのサブキャリアから、それぞれ4、3、2、1つのサブキャリアを選択してアクティブ化することで、アクティブ化されたサブキャリアがアクティブ状態になり、アクティブ化されていないサブキャリアがサイレント状態になり、アクティブなサブキャリアの異なる位置に応じて、インデックス信号を利用して対応付けマッピングを行い、インデックス変調を完了することを特徴とする、請求項2に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項4】
ステップ2では、様々なアクティブなサブキャリアの数のマッピング方式に対応する異なるインデックス変調下での水中音響FBMC-IM通信システムのビット誤り率を計算しシミュレートする時、シミュレーションパラメータを次のように設定し、
ベースバンド帯域幅を6400Hz、サブキャリアの数を512、ベースバンドサンプリング周波数を12800Hz、FBMCシンボルの数を20、通信周波数帯域範囲を12.8kHz~19.2kHz、信号対雑音比値の範囲を0dB~30dBに設定することを特徴とする、請求項1に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項5】
ステップ3では、水中音響通信環境に不連続な周波数帯域干渉を加えることとしては、具体的に、通信干渉周波数帯域範囲を予め設定し、通信周波数帯域範囲内でランダム変数Xがランダムに生成され、かつXが数学的な期待値μ、分散
の正規分布乱数に従い、
で表され、filter関数を用いてバンドパスフィルタを設計し、パラメータを計算して設定し、正規分布乱数
をバンドパスフィルタに通過させて、予め設定された通信干渉周波数帯域範囲内にある乱数がフィルタを通過するようにし、バンドパスフィルタを通過した乱数をフィルタバンクによって変調された送信信号と畳み込み、連続な周波数帯域干渉を取得し、不連続な周波数帯域干渉には、少なくとも2つ以上の干渉周波数帯域がある場合不連続であるため、通信周波数帯域範囲内の別の周波数帯域範囲に、別の連続な周波数帯域干渉を設定し、次に、これらの周波数帯域干渉を重ね合わせて、人為的に設定された不連続な周波数帯域干渉を得ることを特徴とする、請求項1に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項6】
ステップ3では、水中音響通信環境において2つの狭帯域干渉セグメントからなる不連続な周波数帯域干渉が存在するように設定され、干渉周波数範囲が、14.3kHz~14.8kHz及び16.8kHz~17.8kHzに設定されることを特徴とする、請求項1に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【請求項7】
ステップ4では、通信の具体的な手順としては、まず、通信信号がインデックス変調によってヌルキャリアに追加された後、インデックス変調された通信信号が取得され、次に、環境知覚によって測定された不連続な周波数帯域干渉に従って、インデックス変調された通信信号を等間隔に周波数帯域分割することで、エイリアシングする干渉信号の周波数帯域部分のすべてのサブキャリアがサイレントになり、通信信号が送信されず、エイリアシングのない部分のサブキャリアがアクティブ状態になり、さらにフィルタマルチキャリア変調を行った後、水中音響通信環境を経由して受信側に到達し、フィルタマルチキャリア復調後、環境知覚に応じて周波数帯域分割を行い、インデックス変調によって復調される通信信号を取得し、次に、FBMC-IM通信信号のインデックス復調と復号化を行って元の通信信号を復元することを特徴とする、請求項1に記載のインデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中音響通信技術の分野、具体的に、インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、国内外では、水中音響高速通信に関する研究は主にマルチキャリア変調技術を主とし、その中でも直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multi-plexing、OFDM)技術は典型的であり、その利点は、データ伝送速度が高く、かつスペクトル利用率が高いことであるが、システムのパフォーマンスを向上させるために、OFDMはキャリア間干渉とシンボル間干渉を克服するためにサイクリックプレフィックスを追加する必要がある。OFDMの帯域外放射と帯域外減衰の欠点を解決するために、フィルタバンクマルチキャリア(Filter Bank Multi-Carrier、FBMC)水中音響通信技術が提案され、その最大の利点・特徴は、システムがサイクリックプレフィックスなしでキャリア間干渉及びシンボル間干渉に対して強い耐性を持っていることである。FBMCシステムのパフォーマンスは、OFDMと比べて向上しているが、FBMCシステムにサブキャリアとシンボルとの間の干渉が残っている。有用なシンボルが周囲のシンボルの重ね合わせによって干渉されるという問題を解決するために、空間ドメインで情報を送信するというアイデア(アクティブ化されたアンテナの一部のみが情報の送信に使用され、アクティブ化されていないアンテナはインデックス情報の送信を支援するために使用され)によって、一次元のインデックス情報を導入し、ヌルキャリアに追加し、情報を運ぶために一部のサブキャリアをアクティブ状態にし、一次元インデックス変調に基づく水中音響マルチキャリア通信が提案される。なお、狭帯域干渉(Narrow Band Interference、NBI)は、水中音響通信環境における一般的なタイプの干渉であり、エネルギーが高く、システムの帯域幅の一部を占有し、サブキャリア間の直交性を破壊し、マルチキャリアシステムの通信性能を低下させるなどの問題を引き起こし、現在、水中音響通信分野におけるこれらの干渉回避手法に関する研究は比較的少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、現在の水中音響通信環境における不連続な周波数帯域干渉の存在による通信システムの受信側での高いビット誤り率などの問題を解決するために、水中音響マルチキャリア干渉防止通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下のステップを含む、インデックス変調に基づくマルチキャリア水中音響干渉防止通信方法である。
【0005】
ステップ1:従来の水中音響FBMC通信システムに一次元のインデックス情報を追加して、インデックス変調に基づくFBMC水中音響通信システムを取得する。
【0006】
ステップ2:アクティブなサブキャリアの数が異なる場合における水中音響FBMC-IM通信システムのビット誤り率を計算しシミュレートして、干渉のない水中音響FBMC-IM通信システムとしてアクティブなサブキャリアの適切な数を決定する。
【0007】
ステップ3:水中音響通信環境における不連続な周波数帯域干渉の存在を考慮して、前記ステップ2の干渉のない水中音響FBMC-IMシステム通信環境に、不連続な周波数帯域干渉を加える。
【0008】
ステップ4:水中音響通信環境における不連続な干渉の周波数範囲に応じて、干渉のないFBMC-IMシステムの通信周波数帯域を分割することで、不連続な周波数帯域干渉信号とエイリアシングする部分のサブキャリアはサイレントになり、干渉されていないサブキャリアはアクティブな状態を維持して通信信号を伝送し、不連続な通信周波数帯域分割を実現し、水中音響FBMC-IM干渉防止通信システムを取得して、マルチキャリア水中音響の干渉防止通信を実現する。
【0009】
さらに、ステップ1のFBMC水中音響通信システムでは、システム送信側が送信情報に対してビットストリーム処理を実行し、コンステレーション変調ビットとインデックス変調ビットに分割する必要がある。送信側に入力されるデータ情報ビットをAビット、一つのFBMCブロック内のすべてのサブキャリアの数をM、送信側の情報がストリーム処理後にGグループに分割され、各グループに含まれるビット数をPビットとする。同様に、すべてのサブキャリアMはg個のサブキャリアブロックに分割され、M個のサブキャリアはG個のサブキャリアブロックに分割され、各サブキャリアブロックのキャリア数はQであり、各グループのPビット情報は、長さQのサブキャリアブロックに対応付けてマッピングされる。各グループにおけるPビット情報は、PビットとPビットの二つの部分に分割され、Pビットはアクティブ化されたサブキャリアの位置を制御するためのインデックス変調ビットであり、Pビットはアクティブ化されたk個のサブキャリアにマッピングされるコンステレーション変調ビットである。
【0010】
さらに、FBMC-IMシステムのすべてのサブキャリアは、128個のサブキャリアグループに分割され、各グループの4つのサブキャリアから、それぞれ4、3、2、1つのサブキャリアを選択してアクティブ化することで、アクティブ化されたサブキャリアはアクティブ状態になり、アクティブ化されていないサブキャリアはサイレント状態になり、アクティブなサブキャリアの異なる位置に応じて、インデックス信号を利用して対応付けマッピングを行い、インデックス変調を完了する。
【0011】
さらに、ステップ2では、アクティブなサブキャリアの数が異なる場合における水中音響FBMC-IM通信システムのビット誤り率を計算しシミュレートする時、シミュレーションパラメータを次のように設定する。
【0012】
ベースバンド帯域幅を6400Hz、サブキャリアの数を512、ベースバンドサンプリング周波数を12800Hz、FBMCシンボルの数を20、通信周波数帯域範囲を12.8kHz~19.2kHz、信号対雑音比値の範囲を0dB~30dBに設定する。
【0013】
さらに、ステップ3では、水中音響通信環境に不連続な周波数帯域干渉を加えることとしては、具体的に、通信干渉周波数帯域範囲を予め設定し、通信周波数帯域範囲内でランダム変数Xがランダムに生成され、かつXは数学的な期待値μ、分散
の正規分布乱数に従い、
で表される。filter関数を用いてバンドパスフィルタを設計し、パラメータを計算して設定し、正規分布乱数
をバンドパスフィルタに通過させて、予め設定された通信干渉周波数帯域範囲内にある乱数がフィルタを通過するようにする。バンドパスフィルタを通過した乱数をフィルタバンクによって変調された送信信号と畳み込み、連続な周波数帯域干渉を取得する。不連続な周波数帯域干渉には、少なくとも2つ以上の干渉周波数帯域がある場合不連続であるため、通信周波数帯域範囲内の別の周波数帯域範囲に、別の連続な周波数帯域干渉を設定し、以下類推し、次に、これらの周波数帯域干渉を重ね合わせて、人為的に設定された不連続な周波数帯域干渉を得る。
【0014】
さらに、ステップ3では、水中音響通信環境において2つの狭帯域干渉セグメントからなる不連続な周波数帯域干渉が存在するように設定され、前記干渉周波数範囲は、14.3kHz~14.8kHz及び16.8kHz~17.8kHzに設定される。
【0015】
さらに、ステップ4では、通信の具体的な手順としては、まず、通信信号はインデックス変調によってヌルキャリアに追加された後、インデックス変調された通信信号が取得され、次に、環境知覚によって測定された不連続な周波数帯域干渉に従って、インデックス変調された通信信号を等間隔に周波数帯域分割することで、エイリアシングする干渉信号の周波数帯域部分のすべてのサブキャリアがサイレントになり、通信信号は送信されず、エイリアシングのない部分のサブキャリアはアクティブ状態になり、さらにフィルタマルチキャリア変調を行った後、水中音響チャネルを経由して受信側に到達し、フィルタマルチキャリア復調後、環境知覚に応じて周波数帯域分割を行い、インデックス変調によって復調される通信信号を取得し、次に、FBMC-IM通信信号のインデックス復調と復号化を行って元の通信信号を復元する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の有益な効果を有する。本発明は、インデックス変調に基づくFBMC水中音響干渉防止通信技術の研究により、水中音響通信環境における不連続な周波数帯域干渉の存在によるシステムの受信側での高いビット誤り率の問題を解決し、不連続な干渉の周波数範囲に応じて、FBMC-IMシステムの通信周波数帯域を分割することで、不連続な周波数帯域干渉信号とエイリアシングする部分のサブキャリアはサイレントになり、干渉されていないサブキャリアはアクティブな状態を維持して通信信号を伝送し、不連続な通信周波数帯域分割を実現し、干渉の影響を回避する。既存の水中音響干渉防止通信技術と比べて、本発明は一定の優位性を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる水中音響マルチキャリア干渉防止通信方法のフローチャートである。
図2】本発明にかかるインデックス変調に基づく水中音響FBMC通信システムの送信側のブロック図である。
図3】本発明の実施形態におけるインデックス変調のサブキャリアマッピングテーブルである。
図4】本発明の実施形態における水中音響FBMC-IMのビット誤り率のシミュレーション比較図である。
図5】本発明の実施形態における不連続な周波数帯域干渉下のシステム通信周波数帯域の概略図である。
図6】本発明の実施形態における水中音響FBMC-IMに対する干渉防止処理の手順図である。
図7】本発明の実施形態における水中音響FBMC-IM干渉防止通信システムのビット誤り率の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の技術的手段について、明細書の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0019】
図2に示すように、本発明におけるインデックス変調は、空間ドメインで情報を送信するというアイデアから発展したものであり、アクティブ化されたアンテナの一部のみが情報の送信に使用され、アクティブ化されていないアンテナはインデックス情報の送信を支援するために使用される。このアイデアによれば、一次元のサブキャリア状態情報インデックス変調を水中音響FBMC通信システムモデルに導入することで、インデックス変調に基づく水中音響FBMC通信システムを得ることができる。具体的な手順を図1に示す。
【0020】
ステップ1:水中音響FBMC-IM通信システムモデルでは、送信側はまず、送信される情報に対してビットストリーム処理を実行し、コンステレーション変調ビットとインデックス変調ビットに分割する。送信側に入力されるデータ情報ビットをAビット、一つのFBMCブロック内のすべてのサブキャリアの数をM、送信側の情報がストリーム処理後にGグループに分割され、各グループに含まれるビット数をPビットとする。同様に、すべてのサブキャリアMはg個のサブキャリアブロックに分割され、M個のサブキャリアはG個のサブキャリアブロックに分割され、各サブキャリアブロックのキャリア数はQであり、これによって、各グループのPビット情報は、長さQのサブキャリアブロックに対応付けてマッピングされることができる。各グループにおけるPビット情報は、さらに、PビットとPビットの二つの部分に分割されることができ、Pビットはアクティブ化されたサブキャリアの位置を制御するためのインデックス変調ビットであり、Pビットはアクティブ化されたk個のサブキャリアにマッピングされるコンステレーション変調ビットである。
【0021】
サブキャリアブロックの長さQ=4、サブキャリアブロック内のアクティブなサブキャリアの数K=2の場合、送信ごとに2つのサブキャリアのみがアクティブ状態になり、残りのサブキャリアはサイレント状態になる。アクティブなサブキャリア及び対応して運ばれるアクティブなサブキャリアの位置ルックアップテーブルは、図3のインデックス変調のサブキャリアマッピングテーブルによって示すことができ、テーブルのEは、サブキャリアブロック中のアクティブ化された実際のキャリアを表し、0は、サブキャリアブロック中のサイレントなヌルキャリアを表す。
【0022】
受信側でFBMC-IM受信データシンボルを取得した後、これらのFBMC-IMデータシンボルをグループ化する。インデックス情報に応じて、テーブルルックアップ法や組合せ数法などの対応するマッピング方式を選択し、すなわち、アクティブなサブキャリア及び対応して運ばれるアクティブなサブキャリアの位置インデックス情報に従って、それらを検出して、インデックス位置の復号化及びコンステレーションシンボルの復号化を実現することができる。
【0023】
ステップ2:アクティブなサブキャリアの数が異なる場合における水中音響FBMC-IM通信システムのビット誤り率を計算しシミュレートし、シミュレーションパラメータを次のように設定する。
【0024】
ベースバンド帯域幅を6400Hz、サブキャリアの数を512、ベースバンドサンプリング周波数を12800Hz、FBMCシンボルの数を20、通信周波数帯域範囲を12.8kHz~19.2kHz、信号対雑音比値の範囲を0dB~30dBに設定する。
【0025】
図4に示すように、本発明の水中音響FBMC-IMのビット誤り率のシミュレーション比較図である。FBMC-IMシステムのすべてのサブキャリアは、128個のサブキャリアグループ(ブロック)に分割される。各グループの4つのサブキャリアから、それぞれ4、3、2、1つのサブキャリアを選択してアクティブ化することで、アクティブ化されたサブキャリアはアクティブ状態になり、アクティブ化されていないサブキャリアはサイレント状態になり、アクティブなサブキャリアの異なる位置に応じて、インデックス信号を利用して対応付けマッピングを行い、インデックス変調を完了する。シミュレーション結果図から明らかなように、インデックス変調が導入されたFBMC-IMシステムでは、システムに多くのヌルサブキャリアが追加されているため、良好なビット誤り率性能が得られる。それと同時に、各サブキャリアグループ(ブロック)は、信号対雑音比が増加するにつれて、アクティブなサブキャリアの数が減少し、アクティブされていないサブキャリアの数が増加し、ビット誤り率が低いほど、パフォーマンスは向上する。
【0026】
ステップ3:水中音響通信環境に不連続な周波数帯域干渉を加え、その設定は次のとおりでる。
【0027】
通信干渉周波数帯域範囲を予め設定し、通信周波数帯域範囲内でランダム変数Xがランダムに生成され、かつXは数学的な期待値μ、分散
の正規分布乱数に従い、
で表される。次に、filter関数を用いてバンドパスフィルタを設計し、パラメータを計算して設定し、フィルタ次数を決定し、実際の水中音響環境での不連続な周波数帯域干渉の周波数帯域範囲に応じて、バンドパスフィルタの周波数範囲
を設定し、ここで、Wは不連続な干渉周波数帯域の周波数範囲であり、nは不連続な干渉周波数帯域の数である(例えば、図5に示す場合、フィルタ次数を1000に設定し、2つのバンドパスフィルタパラメータを、
及び
に設定する)。次に、上記の正規分布乱数を前記バンドパスフィルタに通過させて、予め設定された通信干渉周波数帯域範囲内にある乱数がフィルタを通過するようにする。さらに、バンドパスフィルタを通過した乱数をフィルタバンクによって変調された送信信号と畳み込むことで、連続な周波数帯域干渉が簡単に得られる。不連続な周波数帯域の干渉は、少なくとも2つ以上の干渉周波数帯域がある場合のみ不連続であると言える。同様に、通信周波数帯域範囲内の別の周波数帯域範囲に、別の連続な周波数帯域干渉を設定する。以下類推し、次に、これらの周波数帯域干渉を重ね合わせて、人為的に設定された不連続な周波数帯域干渉を得ることができる。
【0028】
図5に示すように、本発明の不連続な周波数帯域干渉下のシステム通信周波数帯域の概略図である。ここでは、干渉のない水中音響FBMC-IMシステム通信環境に、2つの狭帯域干渉セグメントからなり、干渉周波数範囲が、14.3kHz~14.8kHz及び16.8kHz~17.8kHzに設定される、不連続な周波数帯域干渉を加える。
【0029】
ステップ4:ステップ3での水中音響通信環境における不連続な干渉の周波数範囲に応じて、システムの通信周波数帯域を分割する。
【0030】
図6に示すように、本発明の水中音響FBMC-IMに対する干渉防止処理の概略図である。まず、通信信号はインデックス変調によってヌルキャリアに追加された後、インデックス変調された通信信号が取得され、次に、環境知覚によって測定された不連続な周波数帯域干渉に従って、インデックス変調された通信信号を等間隔に周波数帯域分割することで、エイリアシングする干渉信号の周波数帯域部分のすべてのサブキャリアがサイレントになり、通信信号は送信されず、エイリアシングのない部分のサブキャリアはアクティブ状態になり、
を取得し、
について、さらにフィルタマルチキャリア変調を行った後、水中音響チャネルを経由して受信側に到達し、フィルタマルチキャリア復調後、
を取得し、環境知覚に応じて周波数帯域分割を行い、インデックス変調によって復調される通信信号
を取得し、次に、FBMC-IM通信信号のインデックス復調と復号化を行って元の通信信号を復元して、
を取得する。
【0031】
最後に、本発明の実施形態における水中音響FBMC-IM干渉防止通信システムをシミュレートして、ビット誤り率を計算・分析する。
【0032】
図7に示すように、本発明の水中音響FBMC-IM干渉防止通信システムのビット誤り率の比較図である。水中音響FBMC-IM通信システムの通信周波数帯域範囲が12.8kHz~19.2kHz、不連続な干渉周波数の干渉周波数範囲が14.3kHz~14.8kHz及び16.8kHz~17.8kHzにおいて、不連続な周波数帯域干渉下の水中音響FBMC-IM通信システムに対して干渉防止処理を行い、不連続な通信周波数帯域分割を実現し、シミュレーション結果図から分かるように、信号対雑音比の増加に伴い、水中音響FBMC-IM干渉防止システムは、不連続な周波数帯域干渉条件下において、不連続な干渉を受ける周波数帯域でのサブキャリアをサイレント処理した後、ビット誤り率は未処理のFBMC-IMシステムよりも大幅に低く、かつ処理後の干渉防止システムと干渉がない場合のシステムとのビット誤り率の差は小さい。これは、干渉処理方式が通信信号と干渉信号間のエイリアシング問題を効果的に解決し、受信側のビット誤り率を明らかに低減し、システムの干渉防止能力を大幅に向上させることを示している。
【0033】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の保護範囲は、上記の実施形態に限定されず、本発明に開示される内容に基づいて当業者によって行われる同等の修正または変更は、いずれも特許請求の範囲に記載される保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7