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  • 特許-NF-κB/JAKデュアル阻害剤 図1
  • 特許-NF-κB/JAKデュアル阻害剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】NF-κB/JAKデュアル阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/38 20060101AFI20240318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240318BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240318BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240318BHJP
   A21D 13/80 20170101ALN20240318BHJP
   A23L 21/10 20160101ALN20240318BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20240318BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20240318BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
A61K36/38
A61P43/00 111
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/06
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P1/16
A61P35/00
A61P3/10
A61P17/00
A61P37/08
A61P7/00
A61P17/06
A61P17/14
A23L33/105
A21D13/80
A23L21/10
A61K127:00
A61K133:00
A61K135:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023000929
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-01-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2022年3月26日にWEB(https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm142/top?lang=ja)上で開催された「日本薬学会第142年会(名古屋)」で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2022年3月4日に公益社団法人日本薬学会がWEB(https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm142/top?lang=ja)上で公開した「日本薬学会第142年会(名古屋)」のWeb要旨集に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036365
【氏名又は名称】株式会社アイビー化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】竹入 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】常陰 幸乃
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓子
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉秀
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2009年,Vol.57 No.4,p.1291-1298
【文献】Journal of Natural Products,2011年,Vol.74 No.5,p.1117-1125
【文献】Fitoterapia,2022年01月,Volume 156,Article.105097(p.1-7)
【文献】BioMed Research International,2015年,Vol.2015,Article.910453 (p.1-10)
【文献】Biological and Pharmaceutical Bulletin,2012年,Vol.35 No.11,p.1914-1925
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/38
A61P 43/00
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 37/06
A61P 9/10
A61P 1/16
A61P 35/00
A61P 3/10
A61P 17/00
A61P 37/08
A61P 7/00
A61P 17/06
A61P 17/14
A23L 33/105
A21D 13/80
A23L 21/10
A61K 127/00
A61K 133/00
A61K 135/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含んでもよい有機溶媒を抽出溶媒とするオトギリソウの花と葉と茎からの抽出物を有効成分とするNF-κB/JAK1デュアル阻害剤(ただし有機溶媒はエタノールまたは1,3-ブチレングリコールである)
【請求項2】
水を含んでもよい有機溶媒を抽出溶媒とするオトギリソウの花と葉と茎からの抽出物を有効成分とするJAK1阻害剤(ただし有機溶媒はエタノールまたは1,3-ブチレングリコールである)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つNF-κB/JAKデュアル阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内において疾患の発症や憎悪に関与する転写因子や酵素の研究が盛んに行われていることは周知の通りであるが、そのような転写因子や酵素としてNF-κBとJAKがある。
【0003】
NF-κB(核内因子κB:nuclear factor-kappa B)は、免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の1つであり、TNF-α(腫瘍壊死因子α)やIL-1(インターロイキン1)などの炎症性サイトカインの転写や、炎症や発がんなどに関与するCox-2(シクロオキシゲナーゼ2)や糖尿病の発症や進展などに関与するiNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)などの炎症誘発酵素の転写を活性化することが知られている。炎症性サイトカインや炎症誘発酵素は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の他、動脈硬化、心筋梗塞、肝炎、がん、糖尿病といった疾患を引き起こす慢性炎症を誘導するため、NF-κBの転写活性は、こうした疾患の原因となる。
【0004】
JAK(ヤヌスキナーゼ:Janus kinase)は、チロシンキナーゼの1つであり、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を担っていることが知られている。JAKが関与するシグナル伝達は、炎症性サイトカインであるIL-6の受容体コンポーネントであるgp130の細胞内領域に結合しているJAKが、IL-6が受容体に結合することで活性化され、gp130のリン酸化を介してSTAT(シグナル伝達兼転写活性化因子)のリン酸化を誘導し、リン酸化されたSTATが核内に移行することで行われる(JAK/STAT経路)。JAKの酵素活性は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の他、アトピー性皮膚炎、骨髄線維症、悪性リンパ腫、膵癌、乾癬、円形脱毛症といった疾患の原因となる。
【0005】
従って、NF-κBの転写活性に対する阻害作用(NF-κB阻害作用)を持つ成分とJAKの酵素活性に対する阻害作用(JAK阻害作用)を持つ成分のそれぞれは、それぞれNF-κBの転写活性が原因となる疾患とJAKの酵素活性が原因となる疾患の予防や治療に有用であることから、それぞれの成分の探索が精力的に行われており、例えば特許文献1では、リンドウの根や根茎に含まれるゲンチオラクトンがNF-κB阻害作用を持つことが報告されている。また、本発明者らの研究グループは、特許文献2において、ワレモコウやゲンノショウコの抽出物がJAK阻害作用を持つことを報告している。
【0006】
しかしながら、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つ成分があれば、1つの成分が単独で双方の作用を発揮することで、NF-κB阻害作用を持つ成分とJAK阻害作用を持つ成分の2つの成分によって得られる効果と同等ないしそれ以上の効果を1つの成分によって得られることや、より広範囲にわたる効果が1つの成分によって得られることなどを期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-140324号公報
【文献】特許第7023026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つNF-κB/JAKデュアル阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、オトギリソウ(Hypericum erectum)の抽出物が、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つことを見出した。
【0010】
上記の知見に基づいてなされた本発明は、請求項1記載の通り、水を含んでもよい有機溶媒を抽出溶媒とするオトギリソウの花と葉と茎からの抽出物を有効成分とするNF-κB/JAK1デュアル阻害剤(ただし有機溶媒はエタノールまたは1,3-ブチレングリコールである)である。
また、本発明は、請求項2記載の通り、水を含んでもよい有機溶媒を抽出溶媒とするオトギリソウの花と葉と茎からの抽出物を有効成分とするJAK1阻害剤(ただし有機溶媒はエタノールまたは1,3-ブチレングリコールである)である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つNF-κB/JAKデュアル阻害剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の試験例1における、オトギリソウ抽出液のNF-κB阻害作用を示すグラフである。
図2】同、試験例2における、オトギリソウ抽出液のJAK阻害作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のNF-κB/JAKデュアル阻害剤は、オトギリソウの抽出物を有効成分とする。
【0014】
本発明において用いるオトギリソウは、オトギリソウ科(Guttiferae)に属する多年草の植物であり、地上部(花や葉や茎)を日干し乾燥したものは、小連翹(ショウレンギョウ)の名称で薬草として古くから用いられている。しかしながら、オトギリソウの抽出物が、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つことの報告はこれまでにない。なお、本発明において用いるオトギリソウは、天然に自生しているものであってもよいし、生産者によって栽培されているものであってもよい。
【0015】
本発明において、オトギリソウの抽出物は、例えば地上部(細断したり乾燥したり粉砕したりしてもよい)に、抽出溶媒としての水や各種の有機溶媒、例えばメタノールやエタノールやイソプロピルアルコールなどのモノアルコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、ヘキサン、酢酸エチル、アセトニトリルなどを加え(有機溶媒は水を含んでもよい)、室温で1時間~1週間静置することで成分抽出したり、還流することで成分抽出したりしてからろ過することで、ろ液として得ることができる。抽出溶媒は、単一の溶媒を用いてもよいし複数の溶媒を混合して用いてもよい。得られたろ液は、そのまま液状抽出物として用いてもよいし、減圧濃縮や凍結乾燥を行って固形物や粉末にして用いてもよい。なお、ろ液をさらに硫安分画、ゲルろ過、イオンクロマトグラフィーなどによって精製し、得られた画分を液状抽出物として用いてもよい。また、例えば最初にヘキサンを用いて抽出操作を行った後、順次、酢酸エチル、アセトン、水といったように、用いる溶媒の極性を徐々に高くして抽出操作を行い、いずれかの溶媒を用いることで得られたろ液を液状抽出物として用いてもよい。
【0016】
本発明のNF-κB/JAKデュアル阻害剤は、各種の製剤形態に製剤化することでそれ自体を医薬品や健康食品などとして服用や摂取することができることに加え、各種の飲食品に配合して摂取することができる。また、本発明のNF-κB/JAKデュアル阻害剤は、軟膏、クリーム、ローションといった外用剤の形態で皮膚に塗布することもできる。その服用量や摂取量や塗布量は、適用対象者の年齢や性別や体重、症状の程度などに基づいて適宜決定することができ、適切量を服用や摂取や塗布することにより、そのNF-κB阻害作用とJAK阻害作用に基づいて、NF-κBとJAKの双方が発症や憎悪に関与する疾患(例えば関節リウマチなどの自己免疫疾患)に対する予防効果や治療効果や、NF-κBとJAKのいずれか一方が発症や憎悪に関与する疾患に対する予防効果や治療効果を期待することができる。
【実施例
【0017】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0018】
試験例1:オトギリソウの抽出物のNF-κB阻害作用
1.NF-κBの転写活性に対する阻害作用(その1)
Thi Van Anh Tran et.al.,J Ethnopharmacol.,2015,159,36-42に記載の方法を参考に、外用剤の形態で皮膚に塗布するNF-κB阻害剤を念頭に置いて、その候補となる植物の抽出物のスクリーニングを行った。具体的には、まず、ヒト表皮角化細胞株HaCaTに対し、pNL3.2.NF-κB-RE[NlucP/NF-κB-RE/Hygro]Vector(Promega,USA)を、Cell Line Nucleofector Kit V(Lonza,Switzerland)を用いて、エレクトロポレーション法により導入し、24時間後、終濃度600μg/mLのHygromycinを添加することで薬剤耐性細胞セレクションを行い、Hygromycin耐性能を有するNF-κB-Luciferaseレポーター安定発現HaCaT細胞株を樹立した。次に、96穴プレートに、1ウェルあたり約10000個のNF-κB-Luciferaseレポーター安定発現HaCaT細胞株を100μLの培地で播種し、37℃で16~24時間培養した後、様々な植物抽出液をそれぞれ1μL(終濃度1%)添加し、さらに24時間培養した。24時間後、終濃度20ng/mLのIL-1α(Wako,Japan)を表皮に多く存在する刺激物質として添加し、37℃で4時間培養した。4時間後、Nano-Glo Luciferase Assay System(Promega,USA)を用い、プロトコルに従ってLuciferase活性を測定することで、IL-1αによって刺激されるNF-κBの転写活性に対する阻害作用を評価した。その結果、優れたNF-κB阻害作用を有する植物抽出液として、オトギリソウ抽出液を選抜することができた。なお、検体として用いたオトギリソウ抽出液は市販品であり、その組成(重量%)は、花と葉と茎のエキス:0.850、1,3-ブチレングリコール:49.575、水:49.575であった。
【0019】
2.NF-κBの転写活性に対する阻害作用(その2)
(実験方法)
NF-κBの転写活性に関与する経路は複数存在するので、上記のオトギリソウ抽出液について、各種の刺激物質によって刺激されるNF-κBの転写活性に対する阻害作用を評価した。具体的には、まず、マウスマクロファージ様細胞株RAW264に対し、pNL3.2.NF-κB-RE[NlucP/NF-κB-RE/Hygro]Vector(Promega,USA)を、Cell Line Nucleofector Kit V(Lonza,Switzerland)を用いて、エレクトロポレーション法により導入し、24時間後、終濃度600μg/mLのHygromycinを添加することで薬剤耐性細胞セレクションを行い、Hygromycin耐性能を有するNF-κB-Luciferaseレポーター安定発現RAW264細胞株を樹立した。次に、96穴プレートに、1ウェルあたり約10000個のNF-κB-Luciferaseレポーター安定発現RAW264細胞株を100μLの培地で播種し、37℃で16~24時間培養した後、オトギリソウ抽出液の30%希釈液(培地を用いて希釈)またはオトギリソウ抽出液を1μL(終濃度0.3%、1%)添加し、さらに24時間培養した。24時間後、刺激物質を添加し、37℃で4時間培養した。4時間後、Nano-Glo Luciferase Assay System(Promega,USA)を用い、プロトコルに従ってLuciferase活性を測定することで、刺激物質によって刺激されるNF-κBの転写活性に対する阻害作用を評価した。刺激物質は以下の3種類を用いた。
・ 終濃度100ng/mLのLPS(Sigma,USA)
・ 終濃度20ng/mLのIL-1β(Wako,Japan)
・ 終濃度5nMのRANKL(Oriental Yeast,Japan)
【0020】
(実験結果)
コントロールとした0.5%の1,3-ブチレングリコール(0.5%BG)のLuciferase活性を1とした相対値として図1に示す。図1には、ネガティブコントロールとした0.5%の1,3-ブチレングリコールの結果をあわせて示す。図1から明らかなように、オトギリソウ抽出液は、LPS,IL-1β,RANKLのいずれの刺激物質によって刺激した場合であっても、濃度依存的にNF-κBの転写活性に対する阻害作用を発揮した。
【0021】
試験例2:オトギリソウの抽出物のJAK阻害作用
1.IL-6によって誘導されるSTAT3のリン酸化に対する抑制作用
Michael Forster et al.,Cell Chemical Biology,2016,23,1335-1340に記載の方法を参考に、IL-6によって誘導されるSTAT3のリン酸化に対する抑制作用を指標にして、JAK阻害剤の候補となる植物の抽出物のスクリーニングを行った。具体的には、外用剤の形態で皮膚に塗布するJAK阻害剤を念頭に置いて、96穴プレートに、1ウェルあたり約2500個のヒト表皮角化細胞株HaCaTを100μLの培地で播種し、37℃で16~24時間培養した後、FBS不含の培地100μLに変え、6時間培養することで、Starvationを行った。Starvationの後、様々な植物抽出液をそれぞれ1μL(終濃度1%)添加し、1時間前処理した後、終濃度20ng/mLのIL-6(Wako,Japan)を添加し、37℃で15分間培養した。培養終了後、DPBSで2回細胞を洗浄し、x4 Sample buffer(200mM Tris-HCl[pH 6.8],8% SDS,400mM DTT,0.2% BPB,40% glycerol)を50μL添加し、細胞を溶解した。細胞溶解液を96穴PCRプレートに移し、95℃にて20分間加熱することで、ゲノムDNAの分解と細胞内のタンパク質抽出を行った。その後、10%TGXゲル(Bio-Rad,USA)を用い、1ウェルあたり5μLの細胞抽出液を電気泳動した。ゲルをPVDFメンブレン(Merck,Germany)に転写し、抗phospho-STAT3抗体(Santa cruz,USA)と抗STAT3抗体(Santa cruz,USA)を用いてリン酸化されたSTAT3とリン酸化されていないSTAT3のバンドの検出を行い、ポジティブコントロールとした100μMのトファシチニブの結果(リン酸化されたSTAT3のバンドの非存在とリン酸化されていないSTAT3のバンドの存在)と同程度の結果を示す植物抽出液を絞り込んだ。その結果、オトギリソウ抽出液(試験例1において検体として用いたオトギリソウ抽出液と同じ)を、トファシチニブの結果と同程度の結果を示すIL-6によって誘導されるSTAT3のリン酸化に対する抑制作用を有する植物抽出液として選抜することができた。
【0022】
2.JAK1の酵素活性に対する阻害作用
(実験方法)
上記のオトギリソウ抽出液のJAK1の酵素活性に対する阻害作用を、ADP-Glo Kinase Assay(Promega,USA)によって評価した。具体的には、50ng/μLのJAK1 kinase(Promega,USA)2.5μL、滅菌精製水にて各濃度(0.3%、1%)に希釈したオトギリソウ抽出液0.125μL、x1 kinase buffer 4.875μLからなる酵素反応溶液を調製し、25℃にて30分間インキュベートした。インキュベート完了後、1μg/μLの基質溶液2.5μLと250μMのATP2.5μLを添加し、25℃にて60分間インキュベートした。その後、ADP-Glo Reagent12.5μLを添加し、25℃にて40分間インキュベートした。続いて、Kinase Detection Buffer25μLを添加し、25℃にて30分間インキュベートした。インキュベート完了後、蛍光プレートリーダーにて蛍光強度を測定することで、JAK1 kinaseの活性の検出を行った。
【0023】
(実験結果)
コントロールとした0.5%の1,3-ブチレングリコール(0.5%BG)の蛍光強度を100とした相対値として図2に示す。図2には、ネガティブコントロールとした0.5%の1,3-ブチレングリコールの結果をあわせて示す。図2から明らかなように、オトギリソウ抽出液は、濃度依存的にJAK1の酵素活性に対する阻害作用を発揮した。
【0024】
製剤例1:錠剤
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つ錠剤を自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液の粉末 1
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 19
【0025】
製剤例2:ビスケット
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つビスケットを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液 1
薄力粉 32
全卵 16
バター 16
砂糖 24
水 10
ベーキングパウダー 1
【0026】
製剤例3:ゼリー
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つゼリーを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液 0.01
ゲル化剤 1.3
砂糖 20
pH調整剤 2.5
水 76.19
【0027】
製剤例4:軟膏
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つ軟膏を自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液の粉末 5
白色ワセリン 95
【0028】
製剤例5:クリーム
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つクリームを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液の粉末 5
白色ワセリン 30
セタノール 15
ラウリル硫酸ナトリウム 1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
水 48.8
【0029】
製剤例6:ローション
以下の成分組成からなるNF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つローションを自体公知の方法で製造した(単位:重量%)。
試験例で用いたオトギリソウ抽出液 10
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
エタノール 5
パラベン 0.2
水 84.3
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つNF-κB/JAKデュアル阻害剤を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。
【要約】
【課題】 NF-κB阻害作用とJAK阻害作用を併せ持つNF-κB/JAKデュアル阻害剤を提供すること。
【解決手段】 オトギリソウの抽出物を有効成分とする。
【選択図】 図1
図1
図2