(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】車両用風力発電装置、及び貨物車両
(51)【国際特許分類】
F03D 9/32 20160101AFI20240318BHJP
B62D 35/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
F03D9/32
B62D35/00 G
(21)【出願番号】P 2023107279
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309025199
【氏名又は名称】株式会社エコ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政春
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/269938(WO,A1)
【文献】特開平04-078777(JP,A)
【文献】特開2008-190518(JP,A)
【文献】特開2014-058942(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007032843(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/32
B62D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンと、
幅方向に沿った回転軸を中心として前記風力タービンを回転可能に収容する収容室と、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも上方に位置し、前記収容室内の空気を上方へ向けて排出する排気口と、を有し、貨物車両の乗員室上に設置される筐体と、
前記筐体に設けられ、前記排気口の上方に配置されるとともに、前記筐体の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲する整流翼と、
を備え
、
前記筐体の両側の側壁部は、前記筐体の上面よりも上方へ突出する突出部をそれぞれ有し、
前記整流翼は、両側の前記突出部に架け渡される、
車両用風力発電装置。
【請求項2】
前記排気口は、前記筐体の上面に形成され、
前記整流翼の前端部は、前記排気口の前縁部よりも前方かつ前記筐体の前記上面の上方に位置する、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項3】
前記筐体の上面は、前記排気口の前縁部から前方へ向かって下方へ湾曲する、
請求項2に記載の車両用風力発電装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記筐体の上面における前端側から後端側に亘る、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項5】
前記筐体に設けられ、前記筐体の幅方向に沿った回動軸を中心として前記整流翼を回動可能に支持するとともに、前記整流翼を所定の回動角度で保持する角度調整機構を備える、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項6】
前記整流翼の後端部は、前記整流翼の前端部よりも上方に位置する、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項7】
前記筐体は、前記収容室を前記筐体の幅方向に複数の分割収容室に仕切る仕切壁部を有し、
前記分割収容室には、前記風力タービンがそれぞれ収容され、
前記仕切壁部の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとされ、
前記仕切壁部の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとされる、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項8】
前記仕切壁部の内部に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機を備える、
請求項7に記載の車両用風力発電装置。
【請求項9】
前記筐体の両側の側壁部には、前記収容室よりも前方に位置するとともに、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の内側へ傾斜する給気ガイド部が設けられる、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項10】
前記収容室の両側の側壁部は、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の外側へ傾斜する、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項11】
下端部が前記筐体の幅方向に延びる回動軸を中心として前記筐体に回動可能に支持され、前記給気口を開閉する開閉板を備え、
前記筐体は、前記給気口と前記収容室とを接続する給気流路を有し、
前記開閉板は、前記収容室側に回動されて前記給気口を開いた状態で、前記給気流路の床面に対して傾斜する、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項12】
空調用の室外機を備える、
請求項1に記載の車両用風力発電装置。
【請求項13】
乗員室と、
前記乗員室の後方に配置され、上面が前記乗員室の上面よりも高い荷室と、
前記乗員室上に設置される請求項1~請求項12の何れか1項に記載の車両用風力発電装置と、
を備える貨物車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用風力発電装置、及び貨物車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用風力発電装置を備えた貨物車両(トラック)がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された車両用風力発電装置は、貨物車両の乗員室上に設置されている。この車両用風力発電装置は、走行風を受けて回転する回転翼を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された車両用風力発電装置において、発電効率を高めるためには、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事実を考慮し、貨物車両の乗員室上に設置される車両用風力発電装置において、発電効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る車両用風力発電装置は、風力タービンと、幅方向に沿った回転軸を中心として前記風力タービンを回転可能に収容する収容室と、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも上方に位置し、前記収容室内の空気を上方へ向けて排出する排気口と、を有し、貨物車両の乗員室上に設置される筐体と、前記筐体に設けられ、前記排気口の上方に配置されるとともに、前記筐体の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲する整流翼と、を備える。
【0007】
上記態様によれば、筐体は、給気口を前方に向けた状態で、貨物車両の乗員室上に設置される。この状態で、貨物車両が走行すると、排気口の上方を流れる走行風によって収容室に負圧が生じ、収容室内の空気が排気口から上方へ向けて排出されるとともに、給気口から収容室に走行風(空気)が取り込まれる。この際、風力タービンが走行風を受けて、筐体の幅方向に沿った回転軸を中心として回転する。この風力タービンの回転を利用して発電することができる。
【0008】
また、筐体には、整流翼が設けられる。整流翼は、排気口の上方に配置される。そして、貨物車両が走行すると、筐体の上面に沿って流れた走行風が、整流翼の上下を通過する。
【0009】
ここで、整流翼は、筐体の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲する。これにより、整流翼の下を通過する走行風は、コアンダ効果により、湾曲した整流翼の下面に沿って流れ、整流翼の後端部から斜め上方へ向かう。これにより、整流翼の下面側、すなわち排気口付近が負圧となり、収容室内の走行風が排気口から斜め上方へ引っ張られる。
【0010】
そのため、収容室を通過して排気口から排出される走行風の排気効率が高められる。この結果、給気口から収容室に供給される走行風の供給効率も高められる。したがって、風力タービンの回転効率が高められるため、発電効率を高めることができる。
【0011】
また、整流翼によって排気口を上方から覆うことにより、例えば、雨や雪が排気口を介して収容室に入ることが抑制される。さらに、貨物車両の走行時に、仮に風力タービンが筐体から外れても、風力タービンが整流翼に干渉するため、風力タービンが落下することが抑制される。
【0012】
第2態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記排気口は、前記筐体の上面に形成され、前記整流翼の前端部は、前記排気口の前縁部よりも前方かつ前記筐体の前記上面の上方に位置する。
【0013】
上記態様によれば、排気口は、筐体の上面に形成される。また、整流翼の前端部は、排気口の前縁部よりも前方かつ筐体の上面の上方に位置する。これにより、排気口から排出された走行風が、整流翼の前端部を超えて整流翼の上面側へ回り込むことが抑制される。したがって、排気口から排出される走行風の排気効率がさらに高められる。
【0014】
第3態様に係る車両用風力発電装置は、第2態様に係る車両用風力発電装置において、前記筐体の上面は、前記排気口の前縁部から前方へ向かって下方へ湾曲する。
【0015】
上記態様によれば、筐体の上面は、排気口の前縁部から前方へ向かって下方へ湾曲する。これにより、貨物車両が走行すると、筐体の上面に沿って走行風が斜め上方へ流れる。したがって、筐体の空気抵抗が低減される。
【0016】
また、筐体の上面に沿って斜め上方へ流れた走行風は、整流翼の上下を通過する。つまり、筐体の上面に沿って流れた走行風が整流翼に集められる。これにより、整流翼の上下を通過する走行風の風量が増加するため、前述したように、収容室内の走行風が排気口から斜め上方へ引っ張られ易くなる。したがって、排気口からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口からの給気効率がさらに高められる。
【0017】
第4態様に係る車両用風力発電装置は、第3態様に係る車両用風力発電装置において、前記筐体の両側の側壁部は、前記筐体の上面よりも上方へ突出する突出部をそれぞれ有する。
【0018】
上記態様によれば、筐体の両側の側壁部は、筐体の上面よりも上方へ突出する突出部をそれぞれ有する。
【0019】
ここで、貨物車両が走行すると、筐体の上面に沿って斜め上方へ流れる走行風は、筐体の側面に沿って後方へ流れる走行風よりも速くなり、筐体の上面側の気圧が筐体の側面側の気圧よりも低くなる。この結果、筐体の側面側から上面側に回り込む渦が発生し、筐体の空気抵抗が増加する可能性がある。
【0020】
これに対して本態様では、前述したように、筐体の側壁部は、筐体の上面よりも上方へ突出する突出部を有する。この突出部によって、筐体の側面側から上面側に空気が回り込むことが抑制される。この結果、筐体の側面側から上面側に回り込む渦の発生が抑制される。したがって、筐体の空気抵抗が低減される。
【0021】
第5態様に係る車両用風力発電装置は、第4態様に係る車両用風力発電装置において、前記突出部は、前記筐体の上面における前端側から後端側に亘る。
【0022】
上記態様によれば、突出部は、筐体の上面における前端側から後端側に亘る。これにより、貨物車両の走行時に、筐体の上面の前端側から後端側に亘って、筐体の側面側から上面側に回り込む渦の発生が抑制される。したがって、筐体の空気抵抗がさらに低減される。
【0023】
第6態様に係る車両用風力発電装置は、第4態様に係る車両用風力発電装置において、前記整流翼は、両側の前記突出部に架け渡される。
【0024】
上記態様によれば、整流翼は、両側の突出部に架け渡される。この整流翼によって、突出部の剛性が高められるため、貨物車両の走行に伴う突出部の振動等が抑制される。
【0025】
第7態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記筐体に設けられ、前記筐体の幅方向に沿った回動軸を中心として前記整流翼を回動可能に支持するとともに、前記整流翼を所定の回動角度で保持する角度調整機構を備える。
【0026】
上記態様によれば、筐体には、角度調整機構が設けられる。角度調整機構は、筐体の幅方向に沿った回動軸を中心として整流翼を回動可能に支持するとともに、整流翼を所定の回動角度で保持する。この角度調整機構によって、例えば、整流翼の後端部が、貨物車両の荷台の上面と同じ高さになるように、整流翼の回動角度を調整することにより、荷台の空気抵抗を低減することができる。
【0027】
第8態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記整流翼の後端部は、前記整流翼の前端部よりも上方に位置する。
【0028】
上記態様によれば、整流翼の後端部は、整流翼の前端部よりも上方に位置する。これにより、貨物車両の走行時に、整流翼の下を通過する走行風が、整流翼の後端部から斜め上方へ向けて流れ易くなる。したがって、排気口からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口からの給気効率がさらに高められる。
【0029】
第9態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記筐体は、前記収容室を前記筐体の幅方向に複数の分割収容室に仕切る仕切壁部を有し、前記分割収容室には、前記風力タービンがそれぞれ収容され、前記仕切壁部の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとされ、前記仕切壁部の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとされる。
【0030】
上記態様によれば、筐体は、仕切壁部を有する。仕切壁部は、収容室を筐体の幅方向に複数の分割収容室に仕切る。これらの分割収容室には、風力タービンがそれぞれ収容される。
【0031】
ここで、仕切壁部の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとされる。これにより、貨物車両の走行時に、給気口から収容室に供給された走行風が、仕切壁部の前端側によって、当該仕切壁部の両側の分割収容室に収容された風力タービンへそれぞれ案内される。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0032】
また、仕切壁部の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとされる。これにより、貨物車両の走行時に、仕切壁部の両側の分割収容室から排気口に向けて走行風が流れ易くなる。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0033】
第10態様に係る車両用風力発電装置は、第9態様に係る車両用風力発電装置において、前記仕切壁部の内部に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機を備える。
【0034】
上記態様によれば、仕切壁部の内部には、風力タービンの回転に伴って発電する発電機が設けられる。このように仕切壁部の内部に発電機を収容することにより、筐体の小型化を図ることができる。
【0035】
第11態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記筐体の両側の側壁部には、前記収容室よりも前方に位置するとともに、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の内側へ傾斜する給気ガイド部が設けられる。
【0036】
上記態様によれば、筐体の両側の側壁部には、給気ガイド部が設けられる。給気ガイド部は、収容室よりも前方に位置するとともに、平断面視にて、後方へ向かって筐体の幅方向の内側へ傾斜する。
【0037】
これにより、貨物車両の走行時に、給気口から筐体の両側の側壁部に沿って収容室に供給された走行風が、給気ガイド部によって筐体の幅方向の内側、すなわち収容室に収容された風力タービンへ案内される。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0038】
第12態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、前記収容室の両側の側壁部は、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の外側へ傾斜する。
【0039】
上記態様によれば、収容室の両側の側壁部は、平断面視にて、後方へ向かって筐体の幅方向の外側へ傾斜する。これにより、貨物車両の走行時に、収容室から排気口に向けて走行風が流れ易くなる。したがって、風力タービンの回転効率がさらに高められる。
【0040】
第13態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、下端部が前記筐体の幅方向に延びる回動軸を中心として前記筐体に回動可能に支持され、前記給気口を開閉する開閉板を備え、前記筐体は、前記給気口と前記収容室とを接続する給気流路を有し、前記開閉板は、前記収容室側に回動されて前記給気口を開いた状態で、前記給気流路の床面に対して傾斜する。
【0041】
上記態様によれば、給気口を開閉する開閉板を備える。開閉板は、下端部が筐体の幅方向に延びる回動軸を中心として筐体に回動可能に支持される。また、筐体は、給気口と収容室とを接続する給気流路を有する。そして、開閉板は、収容室側に回動されて給気口を開いた状態で、給気流路の床面に対して傾斜する。
【0042】
ここで、貨物車両の走行時に、給気流路の床面に沿って走行風が流れると、床面との摩擦等によって空気抵抗が大きくなる。
【0043】
これに対して本態様では、前述したように、開閉板は、収容室側に回動されて給気口を開いた状態で、給気流路の床面に対して傾斜する。これにより、貨物車両の走行時に、給気流路に供給された走行風が、開閉板に沿って斜め上方へ流れ、給気流路の床面から離れる。したがって、走行風と床面との間に発生する摩擦等の空気抵抗が低減される。
【0044】
第14態様に係る車両用風力発電装置は、第1態様に係る車両用風力発電装置において、空調用の室外機を備える。
【0045】
上記態様によれば、空調用の室外機を備える。これにより、例えば、車両用風力発電装置によって発電した電力により、室外機を作動させることができる。
【0046】
第15態様に係る貨物車両は、乗員室と、前記乗員室の後方に配置され、上面が前記乗員室の上面よりも高い荷室と、前記乗員室上に設置される第1態様~第14態様の何れか1つに係る車両用風力発電装置と、を備える。
【0047】
上記態様によれば、乗員室上に車両用風力発電装置を設置することにより、荷台の空気抵抗を低減しつつ、貨物車両の走行風を利用して発電することができる。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本開示によれば、貨物車両の乗員室上に設置される車両用風力発電装置において、発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】一実施形態に係る車両用風力発電装置が設置された貨物車両を示す側面図である。
【
図2】
図1に示される車両用風力発電装置を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示される車両用風力発電装置を前方から見た正面図である。
【
図6】一実施形態に係る車両用風力発電装置の変形例を示す
図5に対応する断面図である。
【
図7】一実施形態に係る車両用風力発電装置の変形例を示す
図1に対応する拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0051】
(貨物車両)
図1には、本実施形態に係る車両用風力発電装置20が装着された貨物車両10が示されている。貨物車両(貨物自動車)10は、一例として、バン型のトラックとされている。この貨物車両10は、車体12及び荷室16を備えている。
【0052】
車体12の前端側は、乗員室14とされている。乗員室14は、内部に運転席を有している。この乗員室14の後方に、荷室16が配置されている。
【0053】
荷室(荷台)16は、車体12の後部上に設置されている。また、荷室16は、例えば、箱状に形成されており、内部に荷物が収容可能とされている。この荷室16の上面16Uは、乗員室14の上面14Uよりも高い位置に配置されている。つまり、乗員室14の上面14Uと荷室16の上面16Uとの間には、段差が形成されている。この段差を埋めるように、乗員室14の上面14Uに車両用風力発電装置20が設置されている。
【0054】
なお、荷室16は、冷蔵車両又は冷凍車両の箱型コンテナ等も含む概念である。また、貨物車両10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、又はガソリン自動車でもよい。
【0055】
(車両用風力発電装置)
図1に示されるように、車両用風力発電装置20は、貨物車両10の乗員室14の上面14U上に設置され、貨物車両10の走行に伴う走行風Wを利用して発電する風力発電装置である。
図2に示されるように、車両用風力発電装置20は、筐体30と、発電機60(
図5参照)と、一対の風力タービン70(
図5参照)と、整流翼80と、開閉板90とを備えている。
【0056】
なお、各図に示される矢印Xは、貨物車両10及び車両用風力発電装置20(筐体30)の前方(車両前方)を示している。また、矢印Yは、貨物車両10及び車両用風力発電装置20(筐体30)の幅方向(車両幅方向)の外側を示している。さらに、矢印Zは、貨物車両10及び車両用風力発電装置20(筐体30)の上方(車両上方)を示している。
【0057】
(筐体)
図2及び
図3に示されるように、筐体30は、全体として箱状に形成されている。また、筐体30は、例えば、金属製とされている。この筐体30は、下壁部32、上壁部34、一対の側壁部36、及び後壁部38を有している。下壁部32は、乗員室14の上面14Uに載置されている。この下壁部32の上方(矢印Z方向)には、上壁部34が配置されている。
【0058】
図2に示されるように、上壁部34の上面34Uは、筐体30の幅方向(矢印Y方向)から見て、前方(矢印X方向)に向かって下方へ湾曲する湾曲面とされている。この上壁部34は、導風板(風防、エアデフレクター)としても機能する。
【0059】
一対の側壁部36は、下壁部32の幅方向(矢印Y方向)の両端部から上方へ延出するとともに、筐体30の幅方向に互いに対向している。また、一対の側壁部36の上端部は、上壁部34の上面34Uと同様に、筐体30の幅方向から見て、前方に向かって下方へ湾曲している。
【0060】
一対の側壁部36の上端側は、上壁部34の上面34Uよりも上方へ突出する突出部36Aとされている。また、一対の突出部36Aは、筐体30の上面34Uの前端側から後端側に亘っている。この一対の突出部36Aによって、貨物車両10の走行時に、筐体30の側壁部36の側面(外面)36Sに沿って流れる走行風Wが、矢印Vで示されるように、筐体30の上面34U側へ回り込む渦が発生することが抑制される。
【0061】
一対の側壁部36の後端部は、後壁部38によって接続されている。後壁部38は、下壁部32の後端部から上方へ延出している。
【0062】
(収容室)
図4に示されるように、筐体30は、収容室40と、給気流路42と、給気口44と、排気流路46と、排気口48とを有している。収容室40は、筐体30の前後方向の中間部に配置されている。また、収容室40は、一対の側壁部36に亘っている。この収容室40は、後述する仕切壁部50(
図5参照)によって複数の分割収容室40Eに分割されている。各分割収容室40Eには、風力タービン70が収容されている。
【0063】
収容室40は、筐体30の幅方向から見て、円形状に形成されている。具体的には、収容室40の天井面40Aは、円弧状に湾曲される湾曲面とされている。また、収容室40の床面40Bは、後方へ向かって上方へ湾曲する湾曲面とされている。この収容室40の床面40Bは、後述する給気流路42及び排気流路46の床面42B,46Bと連続している。
【0064】
収容室40には、貨物車両10の走行時に、給気口44から給気流路42を介して走行風Wが供給される。また、収容室40に供給された走行風Wは、排気流路46を介して排気口48から排気される。
【0065】
(給気口)
給気口44は、湾曲する上壁部34(上面34U)の前端側(下端側)に、前方を向くように形成されている。また、給気口44は、筐体30の前端側の下部に配置されており、収容室40の前方に位置している。さらに、給気口44は、筐体30の一対の側壁部36に亘っている。この給気口44は、給気流路42を介して収容室40の前側の下部と接続されている。
【0066】
(給気流路)
給気流路42は、収容室40の前方に配置されている。給気流路42の後端部は、収容室40の前側の下部に接続されている。この給気流路42は、収容室40の下部から前方へ延出し、収容室40と給気口44とを接続している。この給気流路42の天井面42A及び床面42Bは、前後方向に沿っている。また、給気流路42は、筐体30の一対の側壁部36に亘っている。
【0067】
(排気口)
排気口48は、湾曲する上壁部34(上面34U)の後端側(上端側)に、上方を向くように形成されている。また、排気口48は、筐体30の後壁部38に達している。つまり、後壁部38の上端部によって、排気口48の後縁部48Rが構成されている。
【0068】
なお、本実施形態では、排気口48の後縁部48Rが、排気口48の前縁部48Fと略同じ高さに位置されている。しかし、排気口48の後縁部48Rの位置は、排気口48の前縁部48Fよりも低くてもよいし、高くてもよい。
【0069】
排気口48は、筐体30の後部における上端側に配置されており、収容室40よりも後方、かつ、給気口44よりも上方に位置している。また、排気口48は、筐体30の一対の側壁部36に亘っている。この排気口48は、排気流路46を介して収容室40の後側の下部と接続されている。
【0070】
(排気流路)
排気流路46は、収容室40の後方に配置されている。また、排気流路46の前端部は、収容室40の後側の下部に接続されている。この排気流路46は、収容室40から後方へ向かって上方に湾曲し、収容室40と排気口48とを接続している。また、排気流路46の天井面46A及び床面46Bは、後方へ向かって上方へ湾曲する湾曲面とされている。この排気流路46は、筐体30の一対の側壁部36に亘っている。
【0071】
(仕切壁部)
図5に示されるように、収容室40には、仕切壁部50が設けられている。仕切壁部50は、前後方向に沿って配置されている。この仕切壁部50によって、収容室40が筐体30の幅方向に複数(本実施形態では2つ)の分割収容室40Eに分割されている。
【0072】
複数の分割収容室40Eには、後述する風力タービン70がそれぞれ収容されている。仕切壁部50の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとなる前側テーパ状部50Fとされる。これにより、貨物車両10の走行時に、給気流路42から仕切壁部50に供給された走行風Wが、矢印a1で示されるように、前側テーパ状部50Fによって、当該仕切壁部50の両側の分割収容室40Eに収容された風力タービン70へそれぞれ案内される。
【0073】
また、筐体30の一対の側壁部36には、給気ガイド部52がそれぞれ設けられている。各給気ガイド部52は、収容室40の前方の給気流路42に配置されている。また、各給気ガイド部52は、板状に形成されており、平断面視にて、後方へ向かって筐体30の幅方向の内側(中央側)へ傾斜している。
【0074】
これにより、貨物車両10の走行時に、給気流路42の側壁部36に沿って収容室40へ流れる走行風Wが、矢印a2で示されるように、給気ガイド部52によって分割収容室40Eに収容された風力タービン70へ案内される。なお、給気ガイド部52は、省略されてもよい。
【0075】
仕切壁部50の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとなる後側テーパ状部50Rとされている。また、筐体30の両側の側壁部36は、平断面視にて、筐体30の前後方向に対し、後方へ向かって筐体30の幅方向の外側(矢印Y側)に所定角度θで傾斜している。これにより、給気流路42、収容室40、及び排気流路46の断面積が、後方へ向かうに従って増加している。したがって、貨物車両10の走行時に、走行風Wが、給気流路42、収容室40、及び排気流路46を通過し易くなる(抜け易くなる)。
【0076】
仕切壁部50の内部には、発電機60が収容されている。また、発電機60には、一対の風力タービン70の回転軸72がそれぞれ接続されている。この発電機60は、一対の風力タービン70の回転に伴って発電する。つまり、発電機60は、一対の風力タービン70の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。また、発電機60には、当該発電機60によって発電された電力を蓄電する図示しないバッテリ等が接続されている。
【0077】
なお、筐体30には、複数の仕切壁部50が設けられてもよい。また、仕切壁部50は、省略されてもよい。また、発電機60は、仕切壁部50の内部に限らず、例えば、筐体30の他の部位に収容されてもよいし、貨物車両10の車体12に設置されてもよい。
【0078】
(風力タービン)
風力タービン70は、筐体30の幅方向に沿った回転軸72を中心として回転する風車とされる。この風力タービン70は、回転軸72と、一対のサイドベース74と、複数の回転翼76とを有している。一対のサイドベース74は、筐体30の幅方向に互いに対向している。
【0079】
図4に示されるように、各サイドベース74は、中央部74Aと、複数(本実施形態では、4つ)の支持アーム部74Bとを有している。中央部74Aは、筐体30の幅方向から見て、円形状に形成されている。複数の支持アーム部74Bは、筐体30の幅方向から見て、回転軸72を中心として中央部74Aの外周部から外側へ放射状に延出している。この一対のサイドベース74の支持アーム部74Bに、回転翼76がそれぞれ架け渡されている。
【0080】
複数の回転翼76は、給気口44から給気流路42を介して供給される走行風Wを受けることにより、回転軸72を中心として回転する。この際、各回転翼76は、矢印Pで示されるように、回転軸72の前方に位置する回転翼76が、回転軸72の下方を通過して回転軸72の後方へ向かうように回転する。
【0081】
各回転翼76は、金属や樹脂等によって中空状に形成されている。また、各回転翼76の断面形状は、回転方向の前方から供給される風に対して、回転軸72の径方向外側へ向かう揚力を発生させる翼形状とされている。
【0082】
具体的には、各回転翼76の外面76S1は、回転方向の前方へ凸状に湾曲する湾曲面とされている。一方、各回転翼76の内面76S2は、回転方向の前方へ凸状に湾曲する湾曲面とされている。この回転翼76の内面76S2の曲率は、回転翼76の外面76S1の曲率よりも小さくされている。これにより、各回転翼76には、回転方向の前方から供給される風に対して、回転軸72の径方向外側へ向かう揚力が発生される。
【0083】
各回転翼76の外面76S1には、給気流路42から供給される走行風Wを受ける複数の凹部78が形成されている。これらの凹部78によって、回転翼76が矢印P方向に回転し易くなる。
【0084】
なお、凹部78の数及び配置は、適宜変更可能である。また、凹部78は、省略されてもよい。また、回転翼76の数、配置、及び形状等は、適宜変更可能である。
【0085】
(整流翼)
筐体30には、整流翼80が設けられている。整流翼80は、貨物車両10の走行時に、筐体30の上面34Uに沿って上方(上方かつ後方)へ流れ、排気口48の上方を通過する走行風Wを整流することにより、排気口48から排気効率を高める翼である。
【0086】
整流翼80は、排気口48の上方に配置されており、排気口48の前側を上方から覆っている。この整流翼80は、筐体30の両側の側壁部36における突出部36Aに架け渡されている。また、側壁部36の突出部36Aの上端側は、整流翼80の上面80Uよりも上方へ突出している。なお、整流翼80が排気口48を上方から覆う範囲は、適宜変更可能である。
【0087】
整流翼80の前端部80Fは、筐体30の上面34Uよりも上方に位置している。これにより、貨物車両10の走行時に、筐体30の上面34Uに沿って斜め上方(上方かつ後方)へ流れた走行風Wが、整流翼80の上下を通過する。
【0088】
整流翼80の前端部80Fは、排気口48の前縁部48Fよりも前方に位置している。これにより、排気口48から排出された走行風Wが、整流翼80の前端部80Fから整流翼80の上面80U側へ回り込むことが抑制される。
【0089】
整流翼80は、筐体30の幅方向から見て、下方へ凸状に湾曲している。具体的には、整流翼80の上面80U及び下面80Lは、下方へ凸状に湾曲する湾曲面とされている。これにより、貨物車両10の走行時に、整流翼80の下を通過する走行風Wが、コアンダ効果によって整流翼80の下面80Lに沿って流れ、整流翼80の後端部80Rから斜め上方へ向かう。さらに、整流翼80の後端部80Rは、整流翼80の前端部80Fよりも上方に位置している。これにより、整流翼80の下を通過する走行風Wが、整流翼80の後端部80Rから斜め上方へ向かい易くなる。
【0090】
なお、整流翼80の後端部80Rの位置は、整流翼80の前端部80Fよりも上方に限らず、例えば、整流翼80の前端部80Fと同じ高さでもよい。
【0091】
(開閉板)
筐体30には、開閉板90が設けられている。開閉板90は、給気口44を開閉可能な板状に形成されており、筐体30の給気流路42内に配置されている。この開閉板90の下端部は、回動軸92を介して、筐体30に回動可能に支持されている。回動軸92は、筐体30に幅方向に沿って配置されており、筐体30の両側の側壁部36に支持されている。
【0092】
開閉板90は、二点鎖線で示されるように、給気口44を閉じる閉状態と、実線で示されるように、閉状態から回動軸92を中心として収容室40側へ回動し、給気口44を開く開状態とに変移可能とされている。この開閉板90は、開状態において、給気流路42の床面40Bに対して傾斜される。
【0093】
より具体的には、開閉板90の開状態を筐体30の幅方向から見て、開閉板90は、給気流路42の床面40Bに対して後方へ向かって上方へ傾斜される。これにより、給気口44から給気流路42に供給された走行風Wは、矢印a3で示されるように、開状態における開閉板90の上面90Uに沿って斜め上方(上方かつ後方)へ流れる。なお、開閉板90は、省略されてもよい。
【0094】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0095】
(整流翼)
先ず、車両用風力発電装置20の動作について説明しつつ、整流翼の作用について説明する。
【0096】
図4には、貨物車両10の乗員室14の上面14U(
図1参照)上に設置された車両用風力発電装置20が開示されている。車両用風力発電装置20は、給気口44を前方へ向けた状態で設置されている。また、車両用風力発電装置20の開閉板90は、開状態とされている。
【0097】
この状態で貨物車両10が走行(前進)すると、排気口48の上方を流れる走行風Wによって排気流路46に負圧が生じ、収容室40内の空気が排気流路46を介して排気口48から斜め上方(上方かつ後方)へ向けて排出される。この結果、給気口44から給気流路42を介して収容室40に走行風Wが取り込まれる。この際、風力タービン70の複数の回転翼76が走行風Wを受けて、回転軸72を中心として矢印P方向に回転する。これらの回転翼76の回転に伴って、発電機60が発電する。発電機60によって発電された電力は、例えば、図示しないバッテリに供給される。
【0098】
また、貨物車両10が走行すると、走行風Wが筐体30の上面34Uに沿って斜め上方へ流れ、整流翼80の上下を通過する。ここで、整流翼80は、筐体30の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲している。
【0099】
これにより、整流翼80の下を通過する走行風Wは、コアンダ効果により、湾曲した整流翼80の下面80Lに沿って流れ、整流翼80の後端部80Rから斜め上方へ向かう。これにより、整流翼80の下面側、すなわち排気口48付近が負圧となり、収容室40及び排気流路46内の走行風Wが後方へ引っ張られる。
【0100】
そのため、排気口48から排出される走行風Wの排気効率が高められる。この結果、給気口44から収容室40に供給される走行風Wの供給効率も高められる。したがって、風力タービン70の回転効率が高められるため、発電効率を高めることができる。
【0101】
また、整流翼80の後端部80Rは、整流翼80の前端部80Fよりも上方に位置している。これにより、貨物車両10の走行時に、整流翼80の下を通過する走行風Wが、整流翼80の後端部80Rから斜め上方へ流れ易くなる。したがって、排気口48からの排気効率がさらに高められる。
【0102】
さらに、整流翼80の前端部80Fは、排気口48の前縁部48Fよりも前方、かつ、筐体30の上面34Uの上方に位置している。これにより、排気口48から排出された走行風Wが、整流翼80の前端部80Fを超えて整流翼80の上面80U側へ回り込むことが抑制される。したがって、排気口48から排出される走行風Wの排気効率がさらに高められる。
【0103】
また、整流翼80は、排気口48を上方から覆っている。これにより、例えば、雨や雪が排気口48を介して収容室40に入ることが抑制される。さらに、貨物車両10の走行時に、仮に風力タービン70が筐体30から外れても、風力タービン70が整流翼80に干渉するため、風力タービン70が落下することが抑制される。
【0104】
また、筐体30の上面34Uは、前方へ向かって下方へ湾曲する湾曲面とされている。これにより、貨物車両10が走行すると、筐体30の上面34Uに沿って走行風が斜め上方へ流れる。したがって、筐体30の空気抵抗が低減される。
【0105】
また、筐体30の上面34Uに沿って斜め上方へ流れた走行風Wは、整流翼80の上下を通過する。つまり、筐体30の上面34Uに沿って流れた走行風Wが、整流翼80に集められる。これにより、整流翼80の上下を通過する走行風Wの風量が増加するため、前述したように、収容室40内の走行風Wが排気口48から斜め上方へ引っ張られ易くなる。したがって、排気口48からの排気効率がさらに高められるとともに、給気口44からの給気効率がさらに高められる。
【0106】
また、
図2に示されるように、筐体30の両側の側壁部36は、筐体30の上面34Uよりも上方へ突出する突出部36Aをそれぞれ有している。
【0107】
ここで、貨物車両10が走行すると、筐体30の上面34Uに沿って斜め上方へ流れる走行風Wの流速は、筐体30の側面36Sに沿って後方へ流れる走行風Wの流速よりも速くなり、筐体30の上面34U側の気圧が筐体30の側面側の気圧よりも低くなる。この結果、筐体30の側面36S側から上面32U側に回り込む渦が発生し、空気抵抗が増加する可能性がある。
【0108】
これに対して本実施形態では、前述したように、筐体30の側壁部36は、筐体30の上面34Uよりも上方へ突出する突出部36Aを有している。この突出部36Aによって、矢印Vで示されるように、筐体30の側面36S側から上面32U側に空気が回り込むことが抑制される。この結果、筐体30の側面36S側から上面32U側に回り込む渦の発生が抑制されるため、筐体30の空気抵抗が低減される。
【0109】
さらに、突出部36Aは、筐体30の上面34Uにおける前端側から後端側に亘っている。これにより、貨物車両10の走行時に、筐体30の上面34Uの前端側から後端側に亘って、筐体30の側面36S側から上面32U側に回り込む渦の発生が抑制される。したがって、筐体30の空気抵抗がさらに低減される。
【0110】
また、整流翼80は、両側の突出部36Aに架け渡されている。この整流翼80によって、突出部36Aの剛性が高められるため、貨物車両10の走行に伴う突出部36Aの振動等が抑制される。また、突出部36Aによって、整流翼80の端部に翼端渦が発生することが抑制される。
【0111】
(収容室)
次に、収容室40の作用について説明する。
【0112】
図5に示されるように、筐体30の収容室40には、仕切壁部50が設けられている。仕切壁部50は、収容室40を筐体30の幅方向に複数の分割収容室40Eに仕切っている。これらの分割収容室40Eには、風力タービン70がそれぞれ収容されている。
【0113】
仕切壁部50の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとなる前側テーパ状部50Fとされている。これにより、貨物車両10の走行時に、収容室40に供給された走行風Wが、矢印a1で示されるように、仕切壁部50の前側テーパ状部50Fによって、仕切壁部50の両側の分割収容室40Eに収容された風力タービン70へそれぞれ案内される。したがって、風力タービン70の回転効率が高められる。
【0114】
また、筐体30の両側の側壁部36には、給気ガイド部52が設けられている。給気ガイド部は、収容室40よりも前方に位置するとともに、平断面視にて、後方へ向かって筐体30の幅方向の内側へ傾斜する。
【0115】
これにより、貨物車両10の走行時に、給気口から筐体30の両側の側壁部に沿って収容室40に供給される走行風Wが、矢印a2で示されるように、給気ガイド部によって筐体30の幅方向の内側、すなわち収容室40に収容された風力タービン70へ案内される。したがって、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0116】
次に、仕切壁部50の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとなる後側テーパ状部50Rとされている。これにより、貨物車両10の走行時に、仕切壁部50の両側の分割収容室40Eから排気口48に向けて走行風Wが流れ易くなる。したがって、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0117】
また、収容室40の両側の側壁部36は、平断面視にて、前後方向に対して、後方へ向かって筐体30の幅方向の外側へ所定角度θで傾斜している。これにより、貨物車両10の走行時に、収容室40から排気口48に向けて走行風Wが流れ易くなる。したがって、風力タービン70の回転効率がさらに高められる。
【0118】
さらに、仕切壁部50の内部には、風力タービン70の回転に伴って発電する発電機60が設けられている。このように仕切壁部50の内部に発電機60を収容することにより、筐体30の小型化を図ることができる。
【0119】
(開閉板)
次に、開閉板90の作用について説明する。
【0120】
図4に示されるように、筐体30には、給気口44を開閉する開閉板90が設けられている。開閉板90は、下端部が筐体30の幅方向に延びる回動軸92を中心として筐体30に回動可能に支持されている。この開閉板90は、収容室40側に回動されて給気口44を開いた開状態で、給気流路42の床面42Bに対して傾斜している。
【0121】
ここで、貨物車両10の走行時に、給気流路42の床面40Bに沿って走行風Wが流れると、床面40Bとの摩擦等によって空気抵抗が大きくなる。
【0122】
これに対して本実施形態では、前述したように、開閉板90は、開状態において、給気流路42の床面40Bに対して傾斜している。これにより、貨物車両10の走行時に、給気流路42に供給された走行風Wが、矢印a3で示されるように、開閉板90に沿って斜め上方へ流れ、給気流路42の床面から上方へ離れる。したがって、走行風Wと床面40Bとの間に発生する摩擦等の空気抵抗が低減される。
【0123】
また、開閉板90によって給気口44を閉じた閉状態では、給気口44から収容室40に雪や異物等が入ることが抑制される。したがって、風力タービン70の破損等が抑制される。
【0124】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0125】
図6に示される変形例では、筐体30に、整流翼80の回動角度を調整する角度調整機構100が設けられている。角度調整機構100は、回動軸102と、図示しない固定具とを有している。
【0126】
回動軸102は、整流翼80の前端部80Fに一体に設けられている。この回動軸102は、筐体30の幅方向に沿って配置されており、筐体30の両側の突出部36Aに回動可能に支持されている。これにより、整流翼80が、回動軸102を中心として回動可能とされている。
【0127】
また、回動軸102の両端部は、筐体30の両側の突出部36Aに形成された図示しない貫通孔を貫通している。この回動軸102の両端部には、図示しない雄ネジ部がそれぞれ設けられている。各雄ネジ部には、一対のナットが取り付けられる。この一対のナットによって突出部36Aを両側から挟み込むことにより、突出部36Aに対する回動軸102の回動が制限され、整流翼80が所定の回動角度で保持される。
【0128】
ここで、例えば、貨物車両10の種類等によっては、荷室16の上面16Uの高さが異なる場合がある。このような場合に、本変形例では、例えば、整流翼80の後端部80Rが、貨物車両10の荷室16の上面16Uと同じ高さになるように、角度調整機構100によって整流翼80の回動角度を調整する。これにより、荷室16の前面16Fの空気抵抗を低減することができる。したがって、車両用風力発電装置20の汎用性が向上する。
【0129】
次に、
図7及び
図8に示される変形例では、車両用風力発電装置20は、空調用の室外機110を備えている。
図7に示されるように、室外機110は、一例として、乗員室14に配置された室内機112と接続されており、当該室内機112と共に冷凍サイクル(冷房サイクル)を構成している。
【0130】
室外機110及び室内機112には、コントロールユニット114(
図8参照)が接続されている。コントロールユニット114は、室外機110及び室内機112の動作を制御する。これらの室外機110、室内機112、及びコントロールユニット114には、例えば、貨物車両10の車体12に設けられたバッテリ116が接続されている。
【0131】
室外機110は、乗員室14の上面14U上、かつ、筐体30の後側に配置されている。具体的には、筐体30は、設備室120を有している。設備室120は、収容室40の後方、かつ、排気流路46の下方に配置されている。また、設備室120は、筐体30の下壁部32、一対の側壁部36、後壁部38によって区画されている。
【0132】
設備室120における一対の側壁部36は、設備室120内に空気(外気)を取り込む給気口124が形成されている。また、設備室120における後壁部38には、開口122が形成されている。この開口122に、室外機110が配置されている。
【0133】
室外機110は、乗員室14の後壁部の外面に取り付けられたステー18に取り付けられている。これにより、室外機110の荷重が乗員室14の上面14Uに作用せず、又は乗員室14の上面14Uに作用する室外機110の荷重が低減されている。
【0134】
室外機110は、吹出口110Aを後方へ向けて配置されており、荷室16の前面16Fと対向している。また、室外機110の吹出口110Aは、設備室120の外側に配置されている。一方、室外機110の吹込口110Bは、設備室120の内側に配置されている。
【0135】
このように排気流路46の下方のスペースを利用した設備室120に室外機110を設置することにより、車両用風力発電装置20の小型化を図ることができる。
【0136】
また、乗員室14の後壁部の外面に取り付けられたステー18によって室外機110を支持することにより、乗員室14の上面14U上に積載荷重を低減することができる。
【0137】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0138】
なお、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0139】
(付記1)
風力タービンと、
幅方向に沿った回転軸を中心として前記風力タービンを回転可能に収容する収容室と、前記収容室よりも前方に位置し、前記収容室に空気を取り込む給気口と、前記収容室よりも後方かつ前記給気口よりも上方に位置し、前記収容室内の空気を上方へ向けて排出する排気口と、を有し、貨物車両の乗員室上に設置される筐体と、
前記筐体に設けられ、前記排気口の上方に配置されるとともに、前記筐体の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲する整流翼と、
を備える車両用風力発電装置。
(付記2)
前記排気口は、前記筐体の上面に形成され、
前記整流翼の前端部は、前記排気口の前縁部よりも前方かつ前記筐体の前記上面の上方に位置する、
付記1に記載の車両用風力発電装置。
(付記3)
前記筐体の上面は、前記排気口の前縁部から前方へ向かって下方へ湾曲する、
付記1又は付記2に記載の車両用風力発電装置。
(付記4)
前記筐体の両側の側壁部は、前記筐体の上面よりも上方へ突出する突出部をそれぞれ有する、
付記1~付記3の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記5)
前記突出部は、前記筐体の上面における前端側から後端側に亘る、
付記4に記載の車両用風力発電装置。
(付記6)
前記整流翼は、両側の前記突出部に架け渡される、
付記4又は付記5に記載の車両用風力発電装置。
(付記7)
前記筐体に設けられ、前記筐体の幅方向に沿った回動軸を中心として前記整流翼を回動可能に支持するとともに、前記整流翼を所定の回動角度で保持する角度調整機構を備える、
付記1~付記6の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記8)
前記整流翼の後端部は、前記整流翼の前端部よりも上方に位置する、
付記1~付記7の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記9)
前記筐体は、前記収容室を前記筐体の幅方向に複数の分割収容室に仕切る仕切壁部を有し、
前記分割収容室には、前記風力タービンがそれぞれ収容され、
前記仕切壁部の前端側は、平断面視にて、前方に向かうに従って先細りとされ、
前記仕切壁部の後端側は、平断面視にて、後方に向かうに従って先細りとされる、
付記1~付記8の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記10)
前記仕切壁部の内部に設けられ、前記風力タービンの回転に伴って発電する発電機を備える、
付記9に記載の車両用風力発電装置。
(付記11)
前記筐体の両側の側壁部には、前記収容室よりも前方に位置するとともに、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の内側へ傾斜する給気ガイド部が設けられる、
付記1~付記10の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記12)
前記収容室の両側の側壁部は、平断面視にて、後方へ向かって前記筐体の幅方向の外側へ傾斜する、
付記1~付記11の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記13)
下端部が前記筐体の幅方向に延びる回動軸を中心として前記筐体に回動可能に支持され、前記給気口を開閉する開閉板を備え、
前記筐体は、前記給気口と前記収容室とを接続する給気流路を有し、
前記開閉板は、前記収容室側に回動されて前記給気口を開いた状態で、前記給気流路の床面に対して傾斜する、
付記1~付記12の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記14)
空調用の室外機を備える、
付記1~付記13の何れか1つに記載の車両用風力発電装置。
(付記15)
乗員室と、
前記乗員室の後方に配置され、上面が前記乗員室の上面よりも高い荷室と、
前記乗員室上に設置される付記1~付記14の何れか1つに記載の車両用風力発電装置と、
を備える貨物車両。
【符号の説明】
【0140】
10 貨物車両
14 乗員室
14U 上面
16 荷室
20 車両用風力発電装置
30 筐体
34U 上面(筐体の上面)
36 側壁部
36A 突出部
40 収容室
40E 分割収容室
42 給気流路
42B 床面
44 給気口
46 排気流路
48 排気口
48F 前縁部
50 仕切壁部
50F 前側テーパ状部(仕切壁部の前端側)
50R 後側テーパ状部(仕切壁部の後端側)
52 給気ガイド部
60 発電機
70 風力タービン
72 回転軸
80 整流翼
80F 前端部
80R 後端部
90 開閉板
92 回動軸
100 角度調整機構
102 回動軸
110 室外機
【要約】
【課題】貨物車両の乗員室上に設置される車両用風力発電装置において、発電効率を高めることを目的とする。
【解決手段】車両用風力発電装置20は、風力タービン70と、幅方向に沿った回転軸72を中心として風力タービン70を回転可能に収容する収容室40と、収容室40よりも前方に位置し、収容室40に空気を取り込む給気口44と、収容室40よりも後方かつ給気口44よりも上方に位置し、収容室40内の空気を上方へ向けて排出する排気口48と、を有し、貨物車両10の乗員室14上に設置される筐体30と、筐体30に設けられ、排気口48の上方に配置されるとともに、筐体30の幅方向から見て下方へ凸状に湾曲する整流翼80と、を備える。
【選択図】
図4