(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】NH2-MIL-53に基づくアフラトキシンB1の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/52 20060101AFI20240318BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G01N33/52 C
B01D15/00 K
(21)【出願番号】P 2023122784
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202310717590.9
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518193700
【氏名又は名称】青▲島▼▲農▼▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楊慶利
(72)【発明者】
【氏名】孫瑞清
(72)【発明者】
【氏名】馬永超
(72)【発明者】
【氏名】▲シィン▼福国
(72)【発明者】
【氏名】張初署
(72)【発明者】
【氏名】王明清
(72)【発明者】
【氏名】侯秀丹
(72)【発明者】
【氏名】張鳳艶
(72)【発明者】
【氏名】葛家成
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113698621(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108385274(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114354591(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115267194(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113671168(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NH
2-MIL-53(Al)
を担持した静電紡糸ナノ繊維膜を用いて、アフラトキシンを検出する方法であって、
NH
2
-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜に検出待ちのサンプル溶液を滴下し、室温でインキュベートした後、ナノ繊維の蛍光写真を撮影し、色認識ソフトにより写真のGとBのデータを迅速に取得し、G/Bの値を計算し、それをG/Bとアフラトキシン濃度の関係曲線に代入し、この物質中のアフラトキシン濃度を計算して得るステップを含み、
前記NH
2
-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜の調製方法は、
NH
2
-MIL-53(Al)粉末およびポリアクリロニトリル(PAN)を取ってDMFに溶解し、90℃で2時間激しく撹拌して、NH
2
-MIL-53(Al)/PAN溶液を得るステップと、NH
2
-MIL-53(Al)/PAN溶液を使い捨て針管に装填し、静電紡糸装置に入れて紡糸するステップとを含み、
前記NH
2-MIL-53(Al)
粉末の調製方法は、
(1)AlCl
3・6H
2Oを超純水に溶解し、撹拌しながらNH
2-BDCを加え、撹拌して「溶液1」を得るステップ、
(2)尿素を超純水に溶解させ、「溶液2」を得るステップ、
(3)「溶液2」を、継続して撹拌しながら「溶液1」にゆっくり加え、均一に撹拌し、150℃で5時間維持した後、室温まで自然冷却し、黄色固体を得るステップ、
(4)黄色固体を脱イオン水で3回洗浄して遠心分離し、黄色固体をDMFに分散させ、懸濁液を室温の暗所で24時間撹拌し、その後、遠心分離してDMFを除去し、上記固体をメタノールに分散させ、室温の暗所で24時間撹拌し、その後、遠心分離してメタノールを除去するステップ、および
(5)ステップ(4)で洗浄した後の生成物を50℃で24時間真空乾燥することによって、NH
2-MIL-53(Al)粉末を得るステップを含むことを特徴とするNH
2-MIL-53(Al)
を担持した静電紡糸ナノ繊維膜を用いて、アフラトキシンを検出する方法。
【請求項2】
前記検出待ちのサンプル溶液は、粉砕したサンプルを取ってアセトニトリルと混合した後、上澄み液をほぼ乾燥するまで回転蒸発させ、PBS溶液に分散して遠心分離し、0.22μmの濾過膜で濾過することによって、検出待ちのサンプル溶液を調製して得ることを特徴とする請求項1に記載のNH
2-MIL-53(Al)を
担持した静電紡糸ナノ繊維膜を用いて、アフラトキシン
を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アフラトキシンを検出する技術分野に属し、特に、NH2-MIL-53(Al)に基づくアフラトキシンB1の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフラトキシンB1(AFB1)は最も有害で一般的なマイコトキシンであり、経済的で、鋭敏で、簡便で迅速なAFB1検出方法を確立する必要がある。
【0003】
現在、AFB1を検出する方法には、主に酵素結合免疫吸着測定法、高速液体クロマトグラフィー、メンブレンフロー免疫分析法、免疫分析クロマトグラフィーおよび電気化学的方法がある。クロマトグラフィーはAFB1の検出感度が高いが、コストが高く、サンプルの調製過程が複雑で、使用者に対する技術的要求も高い。免疫測定クロマトグラフィーには生体分子が組み込まれているため、この方法の堅牢性が低い。これらの方法には、装置が高価で、操作が複雑で時間がかかるなどの共通の欠点もある。これらの欠点は、発展途上国におけるこれらの方法の普及を制限する可能性がある。発光性有機金属骨格(LMOF)は新型化学センサーとして、その感度が高く、基質選択性が良好で、再現性が良好で、装置が簡便などの利点により注目を集めている。現在までに、MOFに基づくセンサーをAFB1の検出に用いた報告がいくつかある。しかし、これらのセンサーのセンシング機構は、一般的に「オフ」センシングと呼ばれる発光消光(すなわち蛍光消光)であり、それは、優れた感度、選択性および実用性などの発光「オン」原理に基づいて動作するセンサーの利点に欠けている。したがって、AFB1検出のための堅牢で効率的なMOFに基づく蛍光「オン」センサーを開発することはより意義があり、需要が高い。
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0004】
本発明は、従来技術に存在する問題に鑑み、NH2-MIL-53(Al)に基づくアフラトキシンB1の検出方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術解決策を採用する。
【0006】
NH2-MIL-53の調製方法は、
(1)AlCl3・6H2Oを超純水に溶解し、撹拌しながらNH2-BDCを加え、撹拌して「溶液1」を得るステップ、
(2)尿素を超純水に溶解させ、「溶液2」を得るステップ、
(3)「溶液2」を、継続して撹拌しながら「溶液1」にゆっくり加え、均一に撹拌し、150℃で5時間維持した後、室温まで自然冷却し、黄色固体を得るステップ、
(4)黄色固体を脱イオン水で3回洗浄して遠心分離し、黄色固体をDMFに分散させ、懸濁液を室温の暗所で24時間撹拌し、その後、遠心分離してDMFを除去し、上記固体をメタノールに分散させ、室温の暗所で24時間撹拌し、その後、遠心分離してメタノールを除去するステップ、および
(5)ステップ(4)で洗浄した後の生成物を50℃で24時間真空乾燥することによって、NH2-MIL-53(Al)粉末を得るステップを含む。
【0007】
上記のNH2-MIL-53(Al)は、アフラトキシンの検出に応用される。
【0008】
アフラトキシンの検出方法は、上記のNH2-MIL-53(Al)を分散液に調製し、分散液に検出待ちのサンプル溶液を加え、室温でインキュベートした後、330nmの励起下で、混合溶液の430nmにおける蛍光強度を記録し、蛍光強度とアフラトキシン濃度の標準曲線を照合することによって、検出待ちのサンプルにおけるアフラトキシンの含量を計算して得るステップを含む。
【0009】
上記のNH2-MIL-53(Al)は、アフラトキシンの検出用試薬調製に応用される。
【0010】
NH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜は、静電紡糸方法によって、上記のNH2-MIL-53(Al)をナノ繊維膜に調製する。
【0011】
具体的な一実施形態において、前記NH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜の調製方法は、
上記のNH2-MIL-53(Al)粉末およびポリアクリロニトリル(PAN)を取ってDMFに溶解し、90℃で2時間激しく撹拌して、NH2-MIL-53(Al)/PAN溶液を得るステップと、NH2-MIL-53(Al)/PAN溶液を使い捨て針管に装填し、静電紡糸装置に入れて紡糸するステップとを含む。
【0012】
上記のNH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜は、アフラトキシンの検出に応用され、穀物または落花生におけるアフラトキシンの検出にも用いられる。
【0013】
上記のNH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜を用いて、アフラトキシンを検出する方法は、NH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜に検出待ちのサンプル溶液を滴下し、室温でインキュベートした後、ナノ繊維の蛍光写真を撮影し、色認識ソフトにより写真のGとBのデータを迅速に取得し、G/Bの値を計算し、それをG/Bとアフラトキシン濃度の関係曲線に代入し、この物質中のアフラトキシン濃度を計算して得るステップを含む。
【0014】
具体的な一実施形態において、前記検出待ちのサンプル溶液は、粉砕したサンプルを取ってアセトニトリルと混合した後、上澄み液をほぼ乾燥するまで回転蒸発させ、PBS溶液に分散して遠心分離し、0.22μmの濾過膜で濾過することによって、検出待ちのサンプル溶液を調製して得る。
【効果】
【0015】
本発明の技術的解決策の利点
本願は、AFB1検出するための低濃度のアルミニウム有機金属骨格に基づく蛍光検出プラットフォームを提供する。具体的には、NH2-MIL-53(Al)を蛍光プラットフォームとして用いる。NH2-MIL-53(Al)は水溶液の中で呼吸作用と安定性を有する。アミノ基は、水素結合、酸塩基効果および配位結合などの様々な分子間の相互作用を介して、AFB1と相互作用することができる。NH2-MIL-53(Al)のAFB1に対する感度と選択性は、食品中のAFB1を迅速に検出する新しい方法を提供する。また、静電紡糸ナノ繊維薄膜に蛍光プローブを担持させることにより、携帯可能なフレキシブル・センサーを調製する。フレキシブル・センサーをスマートフォンに成功的に組み合わせることにより、検出コストと時間を大幅に削減し、現場でのAFB1の定性認識と定量検出に有望なの方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】NH
2-MIL-53(A1)に基づくアフラトキシンB
1の検出原理を示す図である。
【
図2】NH
2-MIL-53(A1)溶液の安定性を示す図である。
【
図3】NH
2-MIL-53(A1)の発光スペクトルを示す図である。
【
図4】NH
2-MIL-53(A1)の励起、発光および紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【
図5】NH
2-MIL-53(A1)のXRDパターンを示す図である。
【
図6】NH
2-MIL-53(A1)とNH
2-BDCのフーリエ変換赤外スペクトルを示す図である。
【
図7】NH
2-MIL-53(A1)の熱重量分析(TGA)を示す図である。
【
図8】NH
2-MIL-53(A1)とNH
2-MIL-53(A1)+AFB
1の紫外吸収スペクトルを示す図である。
【
図9】AFB
1を蛍光検出した感度図と色変化図を示す図である。
【
図11】G/BとAFB
1濃度の関係の線形曲線を示す図である。
【
図12】AFB
1検出用静電紡糸ナノ繊維を示す図である。
【
図13】NH
2-MIL-53(A1)の特異性を示す図である。
【
図14】NH
2-MIL-53(A1)の干渉防止特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用される用語は、特に説明がない限り、一般に当業者により通常に理解される意味を有する。
【0018】
以下、具体的な実施形態に組合わせて、データを参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲を任意の態様で限定するものではない。
【0019】
本発明によるアフラトキシンB
1の検出原理を
図1に示す。AlCl
3・6H
2OとNH
2-BDCを用いて尿素溶液でNH
2-MIL-53(Al)を調製し、調製されたNH
2-MIL-53(Al)は、330nmの励起波長で、430nmにおける最も強い蛍光を発光する。調製されたNH
2-MIL-53(Al)は、PBS溶液に直接分散して分散液を調製し、分散液に検出待ちのサンプルを加える。検出待ちのサンプルにAFB
1が含まれている場合、430nmにおける蛍光強度を検出し、蛍光強度とAFB
1濃度の標準曲線を照合することによって、検出待ちのサンプルにおけるAFB
1濃度を得る。
【0020】
または、調製されたNH2-MIL-53(Al)を静電紡糸方法により、NH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜に調製し、ナノ繊維膜に検出待ちのサンプル溶液を滴下し、ナノ繊維の蛍光写真をスマートフォンで撮影する。色認識APPによって、異なる色の写真をRGBの3つの数値に変換し、G数値とB数値の比率を取って図を作成することができる。これらの写真のGとBデータは、色認識APPによって迅速に取得し、G/Bの値を計算し、これをG/BとAFB1濃度の関係の線形曲線に代入することによって、この物質中のAFB1濃度を計算して得る。
【0021】
実施例1
NH2-MIL-53(Al)は、以下のステップによって調製される。
1.448gのAlCl3・6H2Oを30mLの超純水に溶解させ、磁気で撹拌しながら1.088gのNH2-BDCを加え、30分間撹拌して「溶液1」を得る。別の容器に0.576gの尿素を10mLの超超純水に溶解させ、「溶液2」を得る。「溶液2」を室温で30分間継続して撹拌しながら「溶液1」にゆっくり加える。混合物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライナーの反応釜に移し、150℃で5時間維持する。その後、それを室温まで自然冷却する。黄色固体を脱イオン水で3回洗浄し、遠心分離(12000rpm、10分間)により分離する。黄色固体を40mLのDMFに分散させ、懸濁液を室温の暗所で24時間撹拌する。その後、遠心分離によりDMFを除去する。上記の固体を40mLのメタノールに分散し、室温の暗所で24時間撹拌する。その後、遠心分離によりメタノールを除去する。最後に、生成物を50℃で24時間真空乾燥させ、NH2-MIL-53(Al)粉末を得る。
【0022】
NH
2-MIL-53(A1)の発光スペクトルの測定:NH
2-MIL-53(A1)の発光スペクトルを300~360nmの励起下で、0.55μg/mLのNH
2-MIL-53(A1)溶液の蛍光スペクトルをそれぞれ記録した。結果は
図2に示すとおりで、励起波長が330nmである場合、430nmにおける最も高いピークが見られ、したがって、NH
2-MIL-53(A1)の最適な励起波長は330nmである。
【0023】
異なるpH値、温度、紫外照射および保存時間がNH2-MIL-53(A1)溶液の安定性に与える影響を検出し、具体的な測定方法は以下の通りである。
【0024】
pH:NH2-MIL-53(A1)溶液を0.55μg/mLになるまで、異なるpH溶液で希釈し、酵素マーカーを用いて330nmの励起下で蛍光強度をテストし、ピーク430nmにおける蛍光強度を記録した。
【0025】
温度:0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)溶液を異なる温度に置いて、酵素マーカーを用いて330nmの励起下で蛍光強度をテストし、ピーク430nmにおける蛍光強度を記録した。
【0026】
紫外照射:0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)溶液に紫外ランプを照射し、酵素マーカーを用いて330nmの励起下で蛍光強度をテストし、ピーク430nmにおける蛍光強度を記録した。
【0027】
長期保存:0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)溶液を室温に置き、1、3、5、7、15、30日後の蛍光の安定性をテストし、酵素マーカーを用いて330nmの励起下で蛍光強度をテストした。
【0028】
NH
2-MIL-53(A1)溶液の安定性は
図3に示すとおりである。NH
2-MIL-53(A1)溶液の蛍光強度を、異なるPH、温度、紫外照射および長期保存する条件下で調べた結果、NH
2-MIL-53(A1)溶液の蛍光強度は比較的安定していることが分かった。これは、NH
2-MIL-53(A1)溶液が優れた光学特性を有しており、後続のAFB
1の検出によりよく使用できることを示す。
【0029】
NH2-MIL-53(A1)の励起、発光および紫外吸収スペクトルは、以下のステップによって測定される。
【0030】
励起スペクトル:0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)溶液を96ウェルの黒色酵素マーカー板に加え、430nmにおける発光で励起スペクトルを記録した。
【0031】
発光スペクトル:0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)溶液を96ウェルの黒色酵素マーカー板に加え、330nmの励起下で、発光スペクトルを記録した。
【0032】
紫外吸収スペクトル:2mLのNH2-MIL-53(A1)溶液を取って石英キュベットに加え、紫外分光光度計に入れ、200~600nmの波長範囲で、紫外吸収スペクトルを記録した。
【0033】
結果は
図4に示すように、NH
2-MIL-53(A1)の光学特性を評価した。紫外吸収スペクトルは、220nmと330nmのところで2つの特徴的な吸収ピークを表した。220nmにおける吸収ピークは、C=C基のπ-π*跳躍またはC=O基のn-π*跳躍によるものである。330nmにおける特徴的な吸収ピークは、C=O/C-N基のn-π*跳躍によるもので、これは蛍光スペクトルの最適な励起波長と一致する。
【0034】
NH
2-MIL-53(A1)のXRDパターンの測定方法:X線回折装置を用いて、NH
2-MIL-53(A1)粉末のXRDパターンを測定する。NH
2-MIL-53(A1)粉末を研磨し、適量の粉末を取って溝付きのガラス板に入れ、装置に置いてテストした。結果は
図5に示すように、調製されたNH
2-MIL-53(A1)ナノシートの前駆体の結晶化が良好であった。典型的なピークが8.8°、10.4°、15.0°、17.5°、20.0°および26.4°にあり、材料が成功的に調製されたことも証明した。
【0035】
フーリエ変換赤外スペクトルでNH
2-MIL-53(A1)とNH
2-BDCを検出する方法:フーリエ変換赤外スペクトル装置を使用して、NH
2-MIL-53(A1)粉末とNH
2-BDC粉末の赤外線スペクトルを測定する。適量の上記2種物質の粉末を装置に置いて、空気の背景干渉を除去した後、赤外スペクトルを記録した。結果は
図6に示すように、3504cm
-1と3390cm
-1における、バンドはN-H結合の非対称伸縮振動に対応し、これは、NH
2-MIL-53(Al)ナノシートに水酸基が多く含まれており、これが水溶性に有意に有利であることを表している。また、1000~1100cm
-1における新しいスペクトル・バンドはAl-O結合の伸縮振動から由来し、これは、NH
2-BDCにおけるO原子がAl
3+と配位して有機金属骨格を形成していることをさらに表している。
【0036】
NH
2-MIL-53(A1)の熱重量分析(TGA)を検出する方法:示差走査熱量計を用いてNH
2-MIL-53(A1)の熱重量分析(TGA)をテストした。最大に0.5gのNH
2-MIL-53(A1)の粉末を取って小さなルツボに入れ、装置に置いて、温度範囲を30~800℃に設定し、その熱安定性をテストした。結果は
図7に示すように、NH
2-MIL-53(A1)の熱安定性を調べると、TGAデータから280℃まで熱に安定していることが明らかになった。
【0037】
実施例2
NH2-MIL-53(Al)を担持した静電紡糸ナノ繊維膜は、以下のステップによっての調製される。
【0038】
実施例1の方法で調製されたNH2-MIL-53(Al)粉末を10mgおよびポリアクリロニトリル(PAN)(Mw=150000)を1g取って9mLのDMFに溶解させ、90℃で2時間激しく撹拌してNH2-MIL-53(Al)/PAN溶液を得る。
【0039】
上記のNH2-MIL-53(Al)/PAN溶液を10mLの使い捨て針管に装填し、静電紡糸装置に入れ紡糸する。NH2-MIL-53(Al)ナノ繊維膜は、YFSP-T静電紡糸装置を用いて調製し、シリンジポンプを使用して、高圧電圧が30Kvで、受信器の回転速度が0.1rpm/分である条件で、溶液を0.002mms-1の速度で針に入れる。
【0040】
実施例3
アフラトキシンB1の検出におけるNH2-MIL-53(Al)の応用
実施例1で調製された5mgのNH2-MIL-53(A1)を、室温で10mLのPBS(0.01M、pH=7.4)に分散させ、5分間超音波処理した。希釈した後、0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)分散液を調製し、検出待ちのサンプルをNH2-MIL-53(A1)分散液に加え、室温で5分間インキュベートした後、330nmの励起下で、430nmにおける混合溶液の蛍光強度を記録した。蛍光強度とAFB1濃度の標準曲線を照合することによって、検出待ちのサンプルにおけるアフラトキシンB1の含量を計算して得る。
【0041】
NH
2-MIL-53(A1)とNH
2-MIL-53(A1)+AFB
1の紫外吸収スペクトルを検出する方法:2mLのNH
2-MIL-53(A1)溶液とNH
2-MIL-53(A1)+AFB
1の混合液をそれぞれ取って、石英キュベットに加え、紫外分光光度計に入れ、200~600nmの波長範囲で、紫外吸収スペクトルを記録した。結果は
図8に示すように、AFB
lの添加に従って、330nmにおけるNH
2-MIL-53(Al)の吸収ピークは340nmに赤方偏移し、これは、NH
2-MIL-53(Al)とAFB
lの間に強い相互作用が存在することをさらに確認した。
【0042】
AFB
1の感度図と色変化を蛍光検出するステップは以下の通りである。異なる濃度のAFB
1溶液を0.55μg/mLのNH
2-MIL-53(Al)溶液に加え、均一に混合した後、室温で5分間インキュベートした。各溶液を96ウェルの黒色酵素マーカー板に加え、330nmの励起下でその蛍光を記録した。結果は
図9に示すように、AFB
1濃度が増加するに伴い、NH
2-MIL-53(Al)の青色蛍光が励起され、青色光が強くなっていること、すなわち430nmにおけるピークが増加し続けていることがわかる。
図10に示すように、AFB
1濃度の線形関係は、AFB
1の追加量が0である場合、430nmにおけるピークをベース、すなわちF
0とし、さらに他の濃度のピークをFとして取る。F/F
0を計算すると、この比はAFB
1と線形関係があり、線形関係のR
2=0.99は、線形関係が良好であり、データに意味があることを証明し、線形範囲は0~40μMで、検出限界は3.1ppbである。
【0043】
実施例4
アフラトキシンB
1の検出におけるNH
2-MIL-53(Al)ナノ繊維膜の応用
NH
2-MIL-53(Al)ナノ繊維を直径が1cmの円盤状に切断した。異なる濃度のAFB
1溶液を15μL滴下した。5分後に、365nmの紫外ランプを照射下で、ナノ繊維の蛍光写真をスマートフォンで撮影した。これらの写真のGとBデータを色認識APPで迅速に取得し、G/Bの値を計算し、それをG/BとAFB
1濃度の関係の線形曲線(
図11のように、線形範囲は0~30μMで、検出限界は29.2ppb)に代入し、この物質におけるAFB
1濃度を計算して得る。
【0044】
NH
2-MIL-53(Al)ナノ繊維によるAFB
1の検出結果は、
図12に示すように、365nmの紫外ランプの照射下で、色の変化を観察した。AFB
1の濃度が高くなるに伴い、青色の蛍光が強くなることが肉眼ではっきりと観察できた。
【0045】
実施例5
NH2-MIL-53(Al)の特異性
実施例1で調製された5mgのNH2-MIL-53(A1)を10mLのPBS(0.01M、pH=7.4)に分散させ、5分間超音波処理した。希釈した後、0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)分散液を調製し、蛍光実験に用いた。その後、900μLの分散液に100μMのAFB1溶液を50μL加えることによって、AFB1の最終濃度を5μMにするか、900μLの分散液に妨害物質を加えることによって、オクラトキシン(OTA)、ゼアラレノン(ZEN)の濃度が5μMになり、他の妨害物質の濃度が200μMになる。前記妨害物質は、オクラトキシン(OTA)、ゼアラレノン(ZEN)Na+、K+、Ca2+、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Hg2+、Co2+、Fe3+、Al3+、Ba2+、アスコルビン酸(AA)、没食子酸(GA)、アスパラギン酸(Asp)、トリプトファン(Try)、L-リジン(Lys)、L-システイン(Cys)、L-グルタミン酸(Glu)、グルコース(GL)、ショ糖(SR)、乳糖(LC)、フルクトース(FR)およびML(マルトース)である。室温で5分間インキュベートした後、330nmの励起下で、混合溶液の発光ピーク430nmにおける蛍光強度を記録し、F/F0を計算して、図を作成した。F0はAFB1を添加していない場合、430nmにおける蛍光強度を意味し、FはAFB1または他の物質を加えた後、430nmにおける蛍光強度を意味する。統計的正確性を確保するため、すべてのテストは3回繰り返した。
【0046】
結果は
図13に示すように、NH
2-MIL-53(Al)は、アフラトキシンB
1、オクラトキシン(OTA)、ゼアラレノン(ZEN)に高い反応を有し、その中でもAFB
1に対して最も敏感に反応している。
【0047】
NH2-MIL-53(Al)の干渉防止特性
実施例1で調製された5mgのNH2-MIL-53(A1)を室温で10mLのPBS(0.01M、pH=7.4)に分散させ、5分間超音波処理した。希釈した後、0.55μg/mLのNH2-MIL-53(A1)分散液を調製し、蛍光実験に用いた。その後、AFB1の最終濃度が5μMになるように、100μMのAFB1溶液を分散液に加えた。その後、AFB1を含む溶液に妨害物質であるオクラトキシン(OTA)、ゼアラレノン(ZEN)、Na+、K+、Ca2+、Zn2+、Mg2+、Mn2+、Hg2+、Co2+、Fe3+、Al3+、Ba2+、アスコルビン酸(AA)、没食子酸(GA)、アスパラギン酸(Asp)、トリプトファン(Try)、L-リジン(Lys)、L-システイン(Cys)、L-グルタミン酸(Glu)、グルコース(GL)、ショ糖(SR)、乳糖(LC)、フルクトース(FR)、ML(マルトース)を加え、AFB1と妨害物が同時に存在する場合、NH2-MIL-53(Al)の干渉防止特性を調べた。ここで、AFB1の濃度は5μMであり、OTAおよびZENの濃度も5μMで、他の妨害物質の濃度は250μMである。室温で5分間インキュベートした後、330nmの励起下で、混合溶液の発光ピーク430nmにおける蛍光強度を記録し、F/F0の値を計算し、図を作成した。F0は、AFB1を添加していない場合、430nmにおける蛍光強度を意味し、Fは、AFB1または他の物質を加えた後、430nmにおける蛍光強度を意味する。統計的正確性を確保するため、すべての試験を3回繰り返した。
【0048】
結果は
図14に示すように、AFB
1と干渉物が同時に存在する場合、NH
2-MIL-53(Al)の干渉防止特性が良好であることが分かる。
【0049】
実施例6
実際のサンプル中のAFB1検出におけるNH2-MIL-53(Al)の応用例および安定性
検出待ちのサンプルの前処理:粉砕した米サンプル(200g)を取って400mLのアセトニトリルと20分間混合し、その後、上澄み液をほぼ乾燥するまで回転蒸発させ、その後、100mLのPBS溶液に分散した。この混合物を遠心分離(10、000rpm、10分間)し、0.22μmの濾過膜で濾過し、検出待ちのサンプル溶液を得た。
【0050】
検出待ちのサンプル溶液をNH2-MIL-53(A1)の分散液に加え、室温で5分間インキュベートした後、330nmの励起下で、混合溶液の430nmにおける蛍光スペクトルを記録し、蛍光強度とAFB1濃度の標準曲線を照合することによって、検出待ちのサンプルにおけるアフラトキシンB1の含量を計算して得る。
【0051】
または、検出待ちのサンプル溶液を、直径が1cmの円盤状に切断したNH2-MIL-53(Al)ナノ繊維膜に滴下し、5分後にナノ繊維の蛍光写真をスマートフォンで撮影した。これらの写真のGとBのデータを色認識APPで迅速に取得し、G/Bの値を計算し、それをG/BとAFB1濃度の関係の線形曲線に代入し、この物質中のAFB1濃度を計算して得る。
【0052】
検出方法の安定性
上記の方法で米サンプルを処理し、ブランク米サンプル溶液の最終濃度が0.1、0.5、1、2.5、5μmolL-1になるようにAFB1を加え、上記の混合溶液をNH2-MIL-53(A1)分散液に加え、室温で5分間インキュベートした後、330nmの励起下で、混合溶液の430nmにおける蛍光スペクトルを記録し、蛍光強度とAFB1濃度の標準曲線を照合することによって、検出待ちのサンプルにおけるアフラトキシンB1の含量を計算して得、AFB1の回収率を計算し、結果は表1に示すとおりである。
【0053】
【0054】
表1から分かるように、本発明の方法は安定性がよく、実際試料中のAFB1の検出に使用できる。
【0055】
上記の説明は、本発明のより好ましい実施例に過ぎず、本発明を他の形態を限定するものではなく、本分野に精通している当業者であれば、上記の開示された技術内容を用いて、均等な変化の等価な実施形態に変更または変形することができる。ただし、本発明の技術的解決策の内容を逸脱することなく、本発明の技術的実体に基づいて、上記の実施形態を単純に修正、等価変更および変形した場合、依然として本発明の技術的解決策の保護範囲内に属する。
【要約】 (修正有)
【課題】アフラトキシンを検出する技術分野に属し、NH2-MIL-53(Al)に基づくアフラトキシンB1の検出方法を開示する。
【解決手段】NH2-MIL-53(Al)は、AlCl3・6H2Oを超純水に溶解させ、撹拌しながらNH2-BDCを加え、その後、撹拌しながら尿素水溶液を加え、150℃で5時間維持した後、室温まで自然冷却することによって、黄色固体を得る。本発明により調製されたNH2-MIL-53(Al)は、AFB1に対して良好な感度と選択性を有し、静電紡糸ナノ繊維薄膜に蛍光プローブを担持させることにより、携帯可能なフレキシブル・センサーを調製する。フレキシブル・センサーをスマートフォンに成功的に組み合わせることにより、検出コストと時間を大幅に削減し、現場でのAFB1の定性認識と定量検出に有望な方法を提供する。
【選択図】なし