(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】洗浄用部品、および洗浄用部品を含む洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/093 20060101AFI20240318BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
B08B9/093
B08B3/02 G
B08B3/02 F
(21)【出願番号】P 2023182850
(22)【出願日】2023-10-24
【審査請求日】2023-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390015679
【氏名又は名称】ジャパンマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真由美
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0341431(US,A1)
【文献】特開2006-061901(JP,A)
【文献】特開2020-157214(JP,A)
【文献】米国特許第06405738(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第108380410(CN,A)
【文献】特開2006-314947(JP,A)
【文献】特開2021-151650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/093
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留可能
且つ極軸方向に潰れた形状の殻部
と、前記極軸上に設けられ前記液体を前記殻部の内部に導入する開口部と、を備え、
前記極軸周りに回動可能な洗浄用部品であって、
前記殻部は、内部から外部へ貫通する3以上の噴射孔を有し、
前記極軸周りに経度方向が定められ、
前記極軸から所定の距離だけ離間し且つ前記殻部の内部に擬似中心部が定められ、
前記擬似中心部から仰角をつけて緯度方向が定められ、
前記噴射孔は、前記緯度方向と前記経度方向によって定められた前記殻部表面上の穿孔位置から、前記擬似中心部の方向に穿孔され、
隣接する少なくとも3つの前記噴射孔の
前記穿孔位置が、前記緯度方向と前記経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ変化する、洗浄用部品。
【請求項2】
前記所定の角度は、前記緯度方向と前記経度方向の各々で一定値に定められる、
請求項1に記載の洗浄用部品。
【請求項3】
前記噴射孔の穿孔位置が変化する方向は、前記殻部の前記緯度方向と前記経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ同一方向である、
請求項1に記載の洗浄用部品。
【請求項4】
前記擬似中心部は、前記殻部の赤道面上に設けられている、
請求項1に記載の洗浄用部品。
【請求項5】
前記所定の角度は、前記経度方向では一定に定められ、前記緯度方向では低緯度から高緯度に向けて角度を拡げて定められる、
請求項1に記載の洗浄用部品。
【請求項6】
請求項1に記載の洗浄用部品を含む洗浄装置であって、
前記液体を前記洗浄用部品へ送り込む
送液部品を更に備え、
前記洗浄用部品は、前記
送液部品に対し前記極軸周りに回動可能に接続される、洗浄装置。
【請求項7】
前記殻部は、前記内部から外部を貫通する副噴射孔をさらに有し、
前記副噴射孔は、前記液体の噴射方向を示す軸線が、前記極軸に対しねじれの位置に設けられる、
請求項6に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留槽等のタンクの内面を洗浄するための洗浄装置、及び洗浄装置を構成する洗浄用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品を取り扱う現場では、貯蔵や調合、反応など様々な用途でタンクが使用されている。このタンクの洗浄を自動化するため、シャワーボール、スプレーボールと呼ばれる洗浄装置が開発されてきた。
【0003】
このような洗浄装置は、タンクの内部に常設されることを考慮し、タンクの大きさに対し小型の構成である。そのため、タンクの内壁までの距離を考慮し、洗浄装置から一定以上の圧力で洗浄液を噴射し、壁面に当てて流すことでタンクを洗浄する。これにおいては、洗浄のムラをなくすため、角度が異なる複数の噴射孔を設け、さらにそれが回動可能な構成である洗浄装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗浄装置は、送液管の先端に球殻状のスプレーボールを備えており、スプレーボールに設けられた噴射孔が、噴射角度をずらして2列に穿孔されている。さらに、噴射孔の角度は、球殻とは別の位置の仮想点を基準に設定されている。しかしながら、仮想点を設定すると、実際の穿孔作業が難しくなるほか、1列の中での噴射孔同士の間隔には制限があり、縦に並べようとすると噴射孔間の角度の差を極端に小さくすることはできない。このように、設計・製造・使用の各観点から制約が大きいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、製造時には噴射孔を穿孔しやすく、使用時には洗浄する面に満遍なく洗浄液を当てることができる、洗浄装置に用いられる洗浄用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本願発明は、内部に液体を貯留可能な殻部を備え、極軸周りに回動可能な洗浄用部品であって、該殻部は、内部から外部へ貫通する3以上の噴射孔を有し、該極軸によって緯度と経度が定められ、隣接する少なくとも3つの該噴射孔の穿孔位置が、該殻部の該緯度方向と該経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ変化する。
このような構成によって、製造時には噴射孔を穿孔しやすく、使用時には洗浄する面に満遍なく洗浄液を当てることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、該所定の角度は、該緯度方向と該経度方向の各々で一定値に定められる。
このような構成によって、噴射孔の穿孔位置を容易に決定することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、該噴射孔の穿孔位置が変化する方向は、該殻部の該緯度方向と該経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ同一方向である。
このような構成によって、製造時には噴射孔の穿孔を容易に進めることができ、また部品の意匠性も向上できる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、該緯度方向は、該極軸から所定の距離だけ離間した擬似中心部を基準に定められる。
このような構成によって、洗浄用部品が球形でない場合でも、適切に噴射孔の穿孔位置を設定することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、該所定の角度は、該経度方向では一定に定められ、該緯度方向では低緯度から高緯度に向けて角度を拡げて定められる。
このような構成によって、洗浄装置から洗浄面までの距離が一定でない場合でも、満遍なく洗浄液を当てて洗浄でき、併せて部品の意匠性を高めることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、該洗浄用部品を含む洗浄装置であって、該液体を該洗浄用部品へ送り込む送液部を更に備え、該洗浄用部品は、該送液部に対し該極軸周りに回動可能に接続される。
このような構成によって、洗浄用部品が回動しながら対象物に洗浄液を当て、効率的に洗浄することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、該殻部は、該内部から外部を貫通する副噴射孔をさらに有し、該副噴射孔は、該液体の噴射方向を示す軸線が、該極軸に対しねじれの位置に設けられる。
このような構成によって、動力装置を用いずとも洗浄用部品を回動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記課題を解決する本発明は、製造時には噴射孔を穿孔しやすく、使用時には洗浄する面に満遍なく洗浄液を当てることができる洗浄装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る、洗浄用部品の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、洗浄用部品の正面図、背面図、および穿孔配列の拡大図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、洗浄用部品の4方向からの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、洗浄装置の正面図、および断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、洗浄装置の使用状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る洗浄用部品1、及び洗浄装置Xについて説明する。説明は、実施形態の構成、変更例、実施の方法の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0017】
≪第一の実施形態≫
本実施形態に係る洗浄装置Xは、
図4(a)に示すように、洗浄用部品1と、送液部品2と、保持部品3と、を備え、
図5に示すように、洗浄液を供給する配管T1を有するタンクTの内部で洗浄液(水、共洗いの薬品等)を噴射して、タンクTの内壁面を洗浄する。
【0018】
本実施形態の説明に用いる各図面において、まず
図1には、洗浄液を噴射する噴射孔及び/又はその軸線を示す洗浄用部品1の平面図を示す。
図2には、洗浄用部品1を赤道面上の2方向から見た図を
図2(a)、
図2(c)に示し、
図2(b)は
図2(a)で正面に見える噴射孔群の拡大図、
図2(d)は
図2(c)で正面に見える噴射孔群の拡大図を示す。
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)、はそれぞれ、
図1に示す平面A、B、C、Dにおける断面図と、各断面上或いはその付近に設けられる噴射孔の軸線とを示す。
図4(a)は、洗浄装置Xの全体を示す図、
図4(b)は洗浄装置Xの断面図である。
図5は、洗浄装置Xの使用状態を示す模式図で、洗浄液の噴射方向を併せて示している。
【0019】
洗浄用部品1は、
図1に示すように、内部に液体を貯留可能な殻部11と、送液部品2を液密に挿入或いは挿通する挿入部12と、を有する部材であり、送液部品2から殻部11の内部に送り込まれ充填された洗浄液を、外部に向けて噴射する。また、洗浄用部品1は、送液部品2に対し回動可能に接続される。このときの回動軸は、
図1のように平面視した洗浄用部品1の中心を通る軸であり、これを極軸Pとする。
【0020】
殻部11は、洗浄用部品1の概形を決定する殻状の部材であり、内部に送り込まれた洗浄液を充填する。殻部11の形状は、球形、楕円球形が想定されるが、
図2、
図3に示すように、上下が極軸Pに対し垂直な平面となるように潰れた、円筒形に近い形状でも良い。但し、殻部11がいずれの形状であっても、殻の厚みはすべての場所で一定である構成が好ましい。
【0021】
殻部11を潰れた形状とすることで、
図4に示すような、極軸Pに対する洗浄装置X全体の高さを抑えることができ、それにより洗浄装置Xの非使用時において、すなわちタンクTの内部に薬品などを貯留する際に洗浄装置Xと薬品とが触れる可能性を減らすことができる。また、洗浄用部品1と他の部品との隙間をできるだけ小さくすることで、薬品が洗浄装置Xの隙間に入り込みにくくなる。
【0022】
殻部11は、洗浄液を外部に噴射する噴射孔を有する。この噴射孔は、殻部11の内部から外部に貫通する小孔またはスリットであり、穿孔される位置や方向によって分類される。本実施形態においては、殻部11は、複数の噴射孔群が略等間隔に設けられており、5つの小孔が列をなして穿孔された第一噴射孔群111、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114と、独立して穿孔される小孔の第一補助噴射孔115と、スリットの第二補助噴射孔116と、洗浄用部品1を回動させる回動用噴射孔117と、を有する。
【0023】
第一噴射孔群111、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114は、各々で5つの小孔が列をなして穿孔されている噴射孔の組であり、それぞれの穿孔配列が異なることで、より多くの角度で洗浄液を噴射することができる。各噴射孔群の穿孔配列は、
図1に示す経度方向、及び
図3に示す緯度方向によって決定される。また、各噴射孔において、洗浄液の噴射方向を示す軸線は、
図1、
図2、
図3の各図では第一噴射軸Q1、第二噴射軸Q2、第三噴射軸Q3、第四噴射軸Q4で表している。
【0024】
各噴射孔の穿孔位置を決定する経度方向は、
図1に示すように、殻部11の外面上において、上極UPから赤道部Eを経由して下極LPを結ぶ線の方向であり、一般的な経度(地球上の一地点を示す際に用いる経度)の概念と同様である。
同様に緯度方向は、殻部11が球形であれば、その球形の中心点を基準に、赤道部Eに相当する方向から極方向へ開く角度であり、一般的な緯度(地球上の一地点を示す際に用いる緯度)の概念と同様である。但し、
図3に示すように、殻部11が球形から潰れた形状である場合は、この限りではない。
【0025】
殻部11が潰れた形状である場合、緯度方向の中心には、極軸P上かつ赤道面上の点を中心とし、所定の半径をもち、さらに赤道面上にある1の円周上に設けられる任意の点を擬似中心部Gとして用いる。
ここで、本実施形態に係る赤道部Eは、極軸Pにより定められる、洗浄用部品1の上極UP、及び下極LPの中間の高さ、若しくは上極UPから下極LPに向かうときに殻部11が最も膨らんでいる部分を指す。さらに、赤道部Eで定められる平面上にあり、かつ極軸Pを通る任意の直線を赤道面軸Fとする。
【0026】
擬似中心部Gを決定する円周(半径)は、洗浄用部品1を平面視したときに挿入部12と重なるように定められるか、或いは殻部11の曲面を決定する中心点で定められてもよい。以上により定められた擬似中心部Gが、各噴射孔の穿孔位置を決定する緯度方向の基準点となり、この「擬似的な」緯度方向で各噴射孔の穿孔配列が決定される。
【0027】
このような構成によって、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)に示すように、洗浄用部品1が潰れた形状であっても、殻部11に対し各噴射孔を穿孔する長さを略一定にすることができ、穿孔に用いる工具や強度の観点からの制約を受けにくい。
【0028】
第一噴射孔群111の穿孔配列は、上記をもとに、
図3(d)に示す緯度方向、
図1に示す経度方向で決定される。まず、穿孔される5つの噴射孔のうち、真ん中の噴射孔の緯度方向を第一仰角R1の角度に定め、経度方向は任意の赤道面軸F、例えば
図1に示す平面Dに含まれる一方向と定める。これを基準に、緯度方向は2度ずつ、経度方向は6度ずつ、穿孔位置をずらして、5つの噴射孔が略一直線に並ぶように定められる。このような配列で穿孔された第一噴射孔群111は、
図2(a)、
図2(b)に示す外観となる。
図2(c)、
図2(d)に示される第三噴射孔群113も同様である。
【0029】
このような穿孔配列によって、各噴射孔の断面や殻部11の大きさにもよるが、噴射孔同士を干渉させずに小さい角度変化で噴射孔を穿孔し、洗浄液を噴射することができる。
例えば、
図2(b)、
図2(d)に示すように、噴射孔間の緯度の変化が小さい場合、噴射孔が同一経線上に設けられると、緯度方向で噴射孔同士が干渉する。また、噴射孔同士が近すぎると、噴射孔間の壁が薄くなり、強度が損なわれる。このため、複数の噴射孔を略一直線に並ぶように設けることによって、噴射孔同士の干渉を避け、角度変化を抑えて噴射孔を設けることができる。
【0030】
参考例として、
図2(a)、
図2(b)に示す第一噴射孔群111は、隣り合う噴射孔間の緯度方向の変化がそれぞれ2度、経度方向の変化がそれぞれ6度であり、各噴射孔の断面は直径2mmの円形、また赤道部Eの半径は35mmである。このとき、
図2(b)に示すように、緯度方向において隣り合う噴射孔間の断面が半分以上重複している。これを避けるため、経度方向の変化を加えている。
【0031】
上記と同様に、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114は、それぞれ第二仰角R2、第三仰角R3、第四仰角R4で緯度方向が定められ、経度方向も、それぞれ第一噴射孔群111の経度方向から右回りに90度、180度、270度と定められる。
【0032】
参考例として、第一仰角R1は、
図3(d)では11度、第二仰角R2は、
図3(c)では21度、第三仰角R3は、
図3(d)では33度、第四仰角R4は、
図3(c)では53度と定めた形態を示す。また、各噴射孔群の緯度方向のずれは、第一噴射孔群111及び第二噴射孔群112で2度、第三噴射孔群113で3度、第四噴射孔群114で5度と定められ、経度方向の変化は、各噴射孔群とも6度ずつである。
このような構成によって、重複なく20方向の仰角で洗浄液を噴射し、タンクTの内壁面に洗浄液が直接当たる箇所を容易に増やすことができる。
【0033】
噴射孔群の穿孔配列を決定する緯度方向と経度方向の変化は、殻部11の形状により適切な値を設定することが好ましい。例えば、殻部11が球形に近い場合、噴射孔群の緯度方向の角度の変化はすべて一定値で定められ、経度方向の変化は、穿孔位置が低緯度から高緯度(赤道側から極側)になるにつれ角度を拡げて定められる。このような構成によって、殻部外側から見た噴射孔を、略一定の間隔、及び方向に見せることができ、洗浄用部品1の意匠性が向上する。
【0034】
上記のほか、
図1、
図2、
図3の各図に示すように、噴射孔群の穿孔配列は、経度方向の変化は全て一定に定められ、緯度方向の変化は高緯度になるほど角度を拡げて定められる構成が好ましい。一般的に、洗浄装置XはタンクTの内部の上方に取付けられることが想定される(
図5参照)。このとき、タンクTの天井部分は洗浄装置Xに近く、立設する壁面は洗浄装置Xから遠いという使用状態になるため、このような穿孔配列によって、洗浄する面までの距離に応じて適切に噴射孔の角度を設定し、満遍なく洗浄液を当てて洗浄することができる。
【0035】
第一補助噴射孔115は、第一噴射孔群111、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114の各仰角よりもさらに大きい補助仰角R5で緯度方向が決定され、内部から外部へ貫通する小孔である。参考値として、
図3(b)には、補助仰角R5が72度の例を示す。特に補助仰角R5は、
図4のように洗浄装置Xを組立てた状態で、保持部品3に洗浄液が当たらない最大の角度であることが好ましい。このような構成によって、洗浄液や洗い流された薬品の飛沫が保持部品3と洗浄用部品1の隙間に入ることを防ぐ。
第一補助噴射孔115は、洗浄液を噴射する反動に対称性を持たせるため、極軸Pに対し点対称に2つ、若しくは回転対称に3つ以上設けられる構成が好ましい。
【0036】
第二補助噴射孔116は、緯度方向を補助俯角R6に定め、経線方向に長手方向を有する長孔若しくはスリットである。補助俯角R6は、第二補助噴射孔116の緯度方向の中心部分の角度を示す目安である。このような構成によって、第一噴射孔群111、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114、第一補助噴射孔115から洗浄液が噴射される反動を軽減し、洗浄用部品1が下極LPの方向に押し下げられるのを防ぐ。
第二補助噴射孔116は、洗浄液を噴射する反動に対称性を持たせるため、極軸Pに対し点対称に2つ、若しくは回転対称に3つ以上設けられる構成が好ましい。
【0037】
回動用噴射孔117は、赤道面上に穿孔された噴射孔(洗浄用の噴射孔に対し、副噴射孔という位置づけ)であり、殻部11の外面側の開口部を通る赤道面軸F(
図1では平面Aに含まれる軸)から偏角S1だけ斜めに設けられる。換言すれば、回動用噴射孔117における洗浄液の噴射方向を示す軸線が、極軸Pに対しねじれの位置に設けられる。このような構成によって、洗浄液を噴射する反動を利用して、洗浄用部品1を極軸P周りに回動させることができる。
図1には、参考値として、偏角S1が25度の構成を示している。
回動用噴射孔117は、洗浄液を噴射する反動に対称性を持たせるため、極軸Pに対し点対称に2つ、若しくは回転対称に3つ以上設けられる構成が好ましい。
【0038】
挿入部12は、洗浄用部品1に送液部品2を挿通又は挿入して接続するための開口部であり、
図1に示すように、極軸Pと同心軸の円形断面を有する。これにより、送液部品2に対し洗浄用部品1を極軸P周りに回動可能に接続する。
【0039】
送液部品2は、
図4に示すように、挿入部12に挿入して洗浄用部品1と接続し、洗浄液を洗浄用部品1に送り込む部材であり、内部に導入口21と、流路22と、を有する。また、送液部品2の外形は、洗浄用部品1と組み合わせた際に極軸Pと同心軸となる円柱であり、洗浄用部品1の下極LP側を支持するフランジを有する。
【0040】
導入口21は、送液部品2と配管T1とを接続する筒状の部材であり、配管T1を通してタンクTの内部に送り込まれた洗浄液を、洗浄装置Xに導入する。また、配管T1との接続のため、壁面に螺旋状の凹凸(ねじ山)が設けられる構成が好ましい。このとき、ねじが閉まる回動方向は、洗浄液の噴射により洗浄用部品1が回動する回動方向と同じである構成が好ましい。このような構成によって、洗浄用部品1との摩擦により、送液部品2に極軸P周りに回動する力が加わっても、洗浄装置Xが配管T1から外れることを防ぐ。
このほか、導入口21の内壁は、洗浄液が流れる方向に向かって窄まるテーパを設けてもよい。
【0041】
流路22は、導入口21から流れてきた洗浄液を極軸Pの方向に流し、その後赤道面軸Fに対応する複数方向に洗浄液を分散させ、殻部11の内部に洗浄液を導流する部分である。また、殻部11の内部に向かって洗浄液が出ていく開口部には、外向きに広がるテーパを設けてもよい。このような構成によって、洗浄液の流れによる圧力が赤道部E付近に集中するのを防ぐ。
【0042】
保持部品3は、
図4に示すように、洗浄用部品1と送液部品2とを接続した際に、上極UP側から洗浄用部品1が外れないように留める円環状の部材であり、環の内部を送液部品2が貫通する態様で送液部品2と接続する。但し、洗浄用部品1が回動できるように、保持部品3と洗浄用部品1は接触しない構成であり、例えば送液部品2に設けられた段差で保持部品3が止まる構成が好ましい。
【0043】
洗浄用部品1、送液部品2、保持部品3の材料は、PTFE等の樹脂であることが好ましい。このような構成によって、洗浄液として多様な薬品を使用することができ、共洗いすることができる。
また、各部品の材料は、カーボン入りPTFE等の、充填剤を含むPTFEでもよい。これにより、洗浄液を噴射する際に発生する静電気が蓄積されず、その静電気に起因するタンクT内での引火を防ぐことができる。
【0044】
洗浄装置Xは、以下の構成を設けてもよい。但し、以下に示す構成はあくまで一例であり、その有無は特に従属の指定がない限り、独立して決定される。
【0045】
≪変更例≫
噴射孔群の穿孔配列を決定する緯度方向と経度方向の変化は、緯度方向と経度方向の各々で一定の角度に定められてもよい。このような構成によって、製造時に噴射孔の穿孔位置を容易に決定することができる。
【0046】
第一補助噴射孔115は、
図1に示すように、殻部11の外面側の開口部を通る赤道面軸F(
図1では平面Bに含まれる軸)から副偏角S2だけ斜めに設けられる。このような構成によって、回動用噴射孔117と合わせて、洗浄液を噴射する反動を利用して洗浄用部品1を回動させることができる。なお、
図1には、参考値として、副偏角S2が25度の構成を示している。
【0047】
第一噴射孔群111、第二噴射孔群112、第三噴射孔群113、第四噴射孔群114における一群あたりの噴射孔の数は、3以上であれば任意に設定してよい。また、群の数も任意に設定してよく、緯度方向と経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ噴射孔がずれる穿孔配列であれば、群に分かれず一続きに噴射孔が並んでいてもよい。但し、右回りで噴射孔が赤道側から極側へ上がっていく等、緯度方向と経度方向の変化はすべて同一方向であることが好ましい。
【0048】
送液部品2は、導入口21の配管T1側の端面にシールを設けてもよい。これにより、導入口21で配管T1と接続した接続部を密閉し、送り込まれた洗浄液が漏れるのを防ぐ。
【0049】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0050】
≪実施の方法≫
図5に示すように、使用者は、まずタンクTの内部に洗浄液を導入する配管T1の先端に洗浄装置Xを取付ける。この取付けに際しては、送液部品2の導入口21に、配管T1の先端を挿入する。導入口21および配管T1の先端にねじ山が設けられている場合は、ねじ締めにより固定する。
【0051】
洗浄時において、使用者は、純水や共洗い用の薬品など、所定の洗浄液を洗浄装置Xに送り込む。このとき、噴射された洗浄液がタンクTの内壁面に適切に当たるように、洗浄液の流量を調整する。
【符号の説明】
【0052】
X 洗浄装置
1 洗浄用部品
11 殻部
111 第一噴射孔群
112 第二噴射孔群
113 第三噴射孔群
114 第四噴射孔群
115 第一補助噴射孔
116 第二補助噴射孔
117 回動用噴射孔
12 挿入部
2 送液部品
21 導入口
22 流路
3 保持部品
T タンク
T1 配管
P 極軸
UP 上極
LP 下極
E 赤道部
F 赤道面軸
G 擬似中心部
Q1 第一噴射軸
Q2 第二噴射軸
Q3 第三噴射軸
Q4 第四噴射軸
Q5 第一補助噴射軸
Q6 第二補助噴射軸
Q7 回動用噴射軸
R1 第一仰角
R2 第二仰角
R3 第三仰角
R4 第四仰角
R5 補助仰角
R6 補助俯角
S1 偏角
S2 副偏角
【要約】
【課題】製造時には噴射孔を穿孔しやすく、使用時には洗浄する面に満遍なく洗浄液を当てることができる、洗浄装置に用いられる洗浄用部品を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、内部に液体を貯留可能な殻部11を備え、極軸P周りに回動可能な洗浄用部品1であって、殻部11は、内部から外部を貫通する3以上の噴射孔を有し、極軸Pによって緯度と経度が定められ、隣接する少なくとも3つの該噴射孔の穿孔位置が、殻部11の該緯度方向と該経度方向のそれぞれで所定の角度ずつ変化する。
【選択図】
図2