(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】板状アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20240318BHJP
H01Q 1/32 20060101ALN20240318BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/32 Z
(21)【出願番号】P 2020042244
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】安住 健二
(72)【発明者】
【氏名】小島 正雄
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 晶博
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-297340(JP,A)
【文献】特開2007-318282(JP,A)
【文献】特表2006-500821(JP,A)
【文献】特開平09-167908(JP,A)
【文献】特開2003-087048(JP,A)
【文献】特開平06-152211(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01063721(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の上面板と、該上面板の4縁から立設する4つの立設壁からなる第1側面板からなる下面が開口された箱状の上ケースと、矩形状の下面板と、該下面板の4縁から立設する4つの立設壁からなる第2側面板からなる上面が開口された箱状の下ケースとを備え、前記上ケースの開口と前記下ケースの開口とを閉塞するよう前記上ケースを前記下ケースに嵌挿することにより構成された収納ケースと、
矩形状のアース素子と、該アース素子上に第1所定間隔で配置された前記アース素子より小さい矩形状の励振素子と、該励振素子に給電する給電ケーブルとからなり、前記収納ケース内に収納されるアンテナモジュールと、
前記下面板上に固着される前記アース素子より小さい矩形状の無給電素子とを備え、
前記無給電素子は、前記収納ケース内に収納されたアンテナモジュールにおける前記アース素子から第2所定間隔で下方に配置されることを特徴とする板状アンテナ。
【請求項2】
前記アース素子と前記励振素子との間に前記第1所定間隔の高さとされた絶縁性のスペーサが設けられ、該スペーサの上面から上方へ突出する第1ボスを前記励振素子に設けられた位置決め孔に嵌挿することにより、前記励振素子が位置決めされて前記スペーサに固着されることを特徴とする請求項1に記載の板状アンテナ。
【請求項3】
前記スペーサの下面から下方へ突出する突部を、前記アース素子に設けられた挿通孔へ嵌挿することにより、前記アース素子が位置決めされて前記スペーサに固着され、もって、前記励振素子と前記アース素子とが位置決めされることを特徴とする請求項2に記載の板状アンテナ。
【請求項4】
前記下面板から立設された挿入壁を前記アース素子の側縁に設けられた位置決め溝に嵌挿することにより、前記アンテナモジュールが前記下ケースに位置決めされて固着されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の板状アンテナ。
【請求項5】
前記下面板から上方へ突出する第2ボスを前記無給電素子に設けられた嵌合孔に嵌挿することにより、前記無給電素子が位置決めされて前記下ケースに固着され、もって、前記無給電素子が前記アース素子に位置決めされることを特徴とする請求項4に記載の板状アンテナ。
【請求項6】
前記第1側面板の内側面から下方へ突出する第2係合手段が形成されていると共に、前記第2側面板の内側面に凹状の係合部が形成され、前記上ケースを前記下ケースに嵌挿した際に、前記第2係合手段が前記係合部に係合されて、前記上ケースが前記下ケースに固着されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の板状アンテナ。
【請求項7】
正方形状とされた前記励振素子の1辺の幅が約19mm、長方形状とされた前記無給電素子の長辺の長さが約20mm、正方形状とされた前記アース素子の1辺の幅が約26mm、前記第1所定間隔が約2mm、前記第2所定間隔が約3mmとされた場合に、設計周波数の波長をλとしたときに、所定の半値角が得られる前記無給電素子の
短辺の長さを、約0.21λまで短くできることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の板状アンテナ。
【請求項8】
正方形状とされた前記励振素子の1辺の幅が約19mm、長方形状とされた前記無給電素子の長辺の長さが約20mmで短辺の長さが約17mm、前記第1所定間隔が約2mm、前記第2所定間隔が約3mmとされた場合に、設計周波数の波長をλとしたときに、所定の半値角が得られる
正方形状とされた前記アース素子の1辺の長さを、約0.48λまで短くできることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の板状アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化した板状アンテナにおいて所望の半値角を得ることができる板状アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
DSRC(Dedicated Short Range Communication)といわれる狭域通信システムが知られている。DSRCは、電波の到達距離が数メートルないし数十メートルの無線通信システムのことで、ETC(Electronic Toll Collection Systems:自動料金収受システム)やITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)に用いられている。ETCは、自動車が高速道路などの料金所を通過する際、ゲートに設置されたアンテナと車両に搭載した車載機との間で通信を行い、自動的に料金の支払いを行うシステムである。ETCを採用すると、料金所において停止する必要がなくなることから、自動車がゲートを通過する所要時間が大幅に短縮される。このため、料金所付近の交通渋滞を緩和することができると共に、排出ガスを低減することができる。
【0003】
また、ITSは、カー・ナビゲーション・システム(以下、「カーナビ」という)など自動車をインテリジェント化するシステムと、広域交通管制システムなど道路をインテリジェント化するシステムを融合させた交通システムである。例えば、カーナビにはVICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)との連携が可能とされたシステムがある。このような場合にITSを用いて、警察が収集した一般路の情報と首都高速道路公団・日本道路公団などが収集した高速道路の情報とをVICS(登録商標)センターが編集して発信する。そして、この情報をカーナビが受信すると渋滞を迂回するルート等を検索してモニターに表示することができるようになる。
【0004】
DSRCやETCのアンテナとしては、一般に、板状アンテナが用いられている。従来の板状アンテナ100の構成を
図20ないし
図22に示す。
図20は従来の板状アンテナ100の構成を示す平面図であり、
図21は従来の板状アンテナ100の構成を示す下面図であり、
図22は従来の板状アンテナ100の構成を示す側面図である。
これらの図に示す従来の板状アンテナ100は、正方形状とされた金属製のアース素子111上にスペーサ114を介して正方形状とされた金属製の励振素子110が所定間隔になるように配置されている。励振素子110には、左下と右上に縮退分離素子が設けられており、縮退分離素子は直角三角形状のCカットで構成されている。励振素子110には給電ケーブル112から給電されている。この場合、給電ピン110aが励振素子110の所定位置に設けられており、給電ピン110aは、絶縁性のスペーサ114内に挿通されて、アース素子111の裏面において給電ケーブル112の中心導体にハンダ付け等により接続されている。また、給電ケーブル112のシールド導体はアース素子111の裏面にハンダ付け等により接続されて、板状アンテナ100は給電ケーブル112により給電されるようになる。すなわち、給電ケーブル112の一端に接続された通信機器からの送信信号は板状アンテナ100に給電されて右旋円偏波が放射され、板状アンテナ100で受信された右旋円偏波の受信信号は給電ケーブル112を伝播して通信機器に供給されるようになる。
【0005】
板状アンテナ100が、5.8GHz帯を利用したETC用のアンテナとされた場合の寸法例を挙げると、
図20に示す励振素子110の同じ寸法とされる横幅と縦幅の長さW22は約21mmとされ、
図20に示すアース素子111の同じ寸法とされる横幅と縦幅の長さW21は約26mmとされ、
図21に示す励振素子110とアース素子111との間隔であるスペーサ114の長さD21は約3mmとされる。ここで、5.8GHzの自由空間波長をλとすると、W21は約0.5λとなり、W22は約0.41λとなる。このような寸法とされた場合の周波数5.8GHzにおける方位角に対する放射強度特性を
図23のグラフに示す。
図23を参照すると、放射強度のピーク値は+7.4dBとされその方位角は+2.80°が得られており、放射強度が3dB低下する方位角範囲である半値角は71.32°が得られている。
【0006】
次に、従来の板状アンテナ100において、アース素子111の横幅と縦幅の長さW21を変えた際の半値角の変化について示す。
アース素子111の長さW21を除いて上記した寸法とされた際の従来の板状アンテナ100において、周波数5.8GHzにおけるアース素子111の長さW21に対する半値角の特性を
図24に示す。
図24ではアース素子111の長さW21を20mm~50mmまで変えたときの半値角特性を示しており、
図24を参照すると、長さW21を20mmから50mmまで長くするにつれて半値角は約73°から約63°まで小さくなっていき放射ビームが次第に狭まっていくことが分かる。長さW21が約31mmを超えた時に目標とする70°の半値角が得られる。ここで、5.8GHzの自由空間波長をλとすると、約31mmの長さW21は約0.6λと表される。すなわち、アース素子111の長さW21を約0.6λ以上とすることで70°以下の半値角とされた指向性を得ることができるようになる。
上記した従来の板状アンテナ100の一例が特許文献1ないし特許文献3にそれぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-135045号公報
【文献】特開2005-269518号公報
【文献】特開2008-109252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近では、設計周波数の波長をλとした際に板状アンテナのアンテナ部分の大きさが約0.5λ以下に小型化されても、半値角として70°以下が得られる板状アンテナが求められている。70°以下の半値角により、所望の方向以外からの電波を受けない指向性とすることができる。しかしながら、従来の板状アンテナ100ではアース素子111の横幅と縦幅の長さW21を約26mm(約0.5λ)とすると、半値角が70°を超えてしまい、半値角が70°以下のビームが絞られた指向性を得るためには、従来の板状アンテナ100においては
図24に示すようにアース素子の幅が0.6λを超える大きさとなり、約0.5λ以下の大きさに小型化できないことになる。すなわち、必要とする指向性になるよう制御するには、要求される小型化の大きさを超えるアース素子が必要とされることになり、小型化した板状アンテナにおいて所望の半値角を得ることが困難になると云う問題点があった。
そこで、本発明は、小型化した板状アンテナにおいて所望の半値角を得ることができる板状アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の目的を達成することができる本発明の板状アンテナは、矩形状の上面板と、該上面板の4縁から立設する4つの立設壁からなる第1側面板からなる下面が開口された箱状の上ケースと、矩形状の下面板と、該下面板の4縁から立設する4つの立設壁からなる第2側面板からなる上面が開口された箱状の下ケースとを備え、前記上ケースの開口と前記下ケースの開口とを閉塞するよう前記上ケースを前記下ケースに嵌挿することにより構成された収納ケースと、矩形状のアース素子と、該アース素子上に第1所定間隔で配置された前記アース素子より小さい矩形状の励振素子と、該励振素子に給電する給電ケーブルとからなり、前記収納ケース内に収納されるアンテナモジュールと、前記下面板上に固着される前記アース素子より小さい矩形状の無給電素子とを備え、前記無給電素子は、前記収納ケース内に収納されたアンテナモジュールにおける前記アース素子から第2所定間隔で下方に配置されることを最も主要な特徴としている。
【0010】
また、上記本発明の板状アンテナは、前記アース素子と前記励振素子との間に前記第1所定間隔の高さとされた絶縁性のスペーサが設けられ、該スペーサの上面から上方へ突出する第1ボスを前記励振素子に設けられた位置決め孔に嵌挿することにより、前記励振素子が位置決めされて前記スペーサに固着されることを主要な特徴としている。
さらに、上記本発明の板状アンテナは、前記スペーサの下面から下方へ突出する突部を、前記アース素子に設けられた挿通孔へ嵌挿することにより、前記アース素子が位置決めされて前記スペーサに固着され、もって、前記励振素子と前記アース素子とが位置決めされることを主要な特徴としている。
さらにまた、上記本発明の板状アンテナは、前記下面板から立設された挿入壁を前記アース素子の側縁に設けられた位置決め溝に嵌挿することにより、前記アンテナモジュールが前記下ケースに位置決めされて固着されることを主要な特徴としている。
さらにまた、上記本発明の板状アンテナは、前記下面板から上方へ突出する第2ボスを前記無給電素子に設けられた嵌合孔に嵌挿することにより、前記無給電素子が位置決めされて前記下ケースに固着され、もって、前記無給電素子が前記アース素子に位置決めされることを主要な特徴としている。
さらにまた、上記本発明の板状アンテナは、前記第1側面板の内側面から下方へ突出する第2係合手段が形成されていると共に、前記第2側面板の内側面に凹状の係合部が形成され、前記上ケースを前記下ケースに嵌挿した際に、前記第2係合手段が前記係合部に係合されて、前記上ケースが前記下ケースに固着されることを主要な特徴としている。
さらにまた、上記本発明の板状アンテナは、前記無給電素子は長方形状とされており、設計周波数の波長をλとしたときに、所定の半値角が得られる前記無給電素子の1辺の長さを、約0.21λまで短くできることを主要な特徴としている。
さらにまた、上記本発明の板状アンテナは、前記アース素子は正方形状とされており、設計周波数の波長をλとしたときに、所定の半値角が得られる前記アース素子の1辺の長さを、約0.48λまで短くできることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の板状アンテナは、アース素子上に所定間隔でアース素子より小さい励振素子が配置され、アース素子の下にアース素子より小さい無給電素子が配置されているので、設計周波数の波長をλとした際に励振素子および無給電素子より大きいアース素子の大きさが約0.5λ以下に小型化されても、所望の方向以外からの電波を受けない指向性となる半値角が得られる板状アンテナとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例の板状アンテナの構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施例の板状アンテナの構成を断面図で示す側面図である。
【
図3】本発明の実施例の板状アンテナの構成を斜視図で示す分解組立図である。
【
図4】本発明の板状アンテナにおけるアンテナモジュールの構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の板状アンテナにおけるアンテナモジュールの構成を示す下面図である。
【
図6】本発明の板状アンテナにおけるアンテナモジュールの構成を示す背面図である。
【
図7】本発明の板状アンテナにおけるアンテナモジュールの構成を示す左側面図である。
【
図8】本発明の板状アンテナにおけるアンテナモジュールの構成を示す右側面図である。
【
図9】本発明の板状アンテナにおける上ケースの構成を示す平面図、側面図、正面図である。
【
図10】本発明の板状アンテナにおける下ケースの構成を示す斜視図、平面図、側面図である。
【
図11】本発明の板状アンテナにおけるスペーサの構成を示す斜視図、平面図、正面図、側面図である。
【
図12】本発明の板状アンテナにおける励振素子の構成を示す斜視図、正面図、左側面図、右側面図である。
【
図13】本発明の板状アンテナにおけるアース素子の構成を示す平面図、側面図、背面図である。
【
図14】本発明の板状アンテナにおける無給電素子の構成を示す平面図、側面図である。
【
図15】本発明の板状アンテナにおける保持金具の構成を示す斜視図、下面図、側面図である。
【
図16】本発明の板状アンテナにおける給電ケーブルの構成を示す斜視図である。
【
図17】本発明の板状アンテナにおける方位角に対する放射強度特性を示す図である。
【
図18】本発明の板状アンテナにおける無給電素子の長さに対する半値角の特性を示す図である。
【
図19】本発明の板状アンテナにおけるアース素子の幅に対する半値角の特性を示す図である。
【
図20】従来の板状アンテナの構成を示す平面図である。
【
図21】従来の板状アンテナの構成を示す下面図である。
【
図22】従来の板状アンテナの構成を示す側面図である。
【
図23】従来の板状アンテナにおける方位角に対する放射強度特性を示す図である。
【
図24】従来の板状アンテナにおけるアース素子の長さに対する半値角の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施例]
本発明にかかる実施例の板状アンテナ1の構成を
図1および
図2に示す。
図1は板状アンテナ1の構成を示す平面図であり、
図2は板状アンテナ1の構成を中心線であるa-a線で板状アンテナ1を切断したa-a断面図で示す下面図である。
これらの図に示す本発明の実施例の板状アンテナ1は、合成樹脂製の上ケース10と下ケース11とからなる収納ケース0を備え、収納ケース0にアンテナモジュール5と無給電素子16とが収納されている。収納ケース0は正方形状の断面とされ、その1辺の長さがW1とされ、収納ケース0の高さはH1とされる。アンテナモジュール5は、励振素子13とスペーサ14とアース基板15と給電ケーブル12とから構成され、その詳細は後述する。
図2に示すように、励振素子13はスペーサ14の高さに相当する所定間隔だけアース基板15の上に離隔されて配置されており、アース基板15はプリント基板とされて、アース基板15の表面と裏面にプリントからなるアース素子15aが形成されている。また、アース基板15の裏面には給電回路が形成されており、この給電回路から給電ピンを介して励振素子13に給電されている。励振素子13とアース素子15aからなるアンテナは、円偏波を送受信することができる。また、本発明にかかる板状アンテナ1は、無給電素子16を備えることを特徴的な構成としており、無給電素子16はアース基板15の裏面の下に所定間隔離れて配置されている。無給電素子16は、下ケース11の上面に接するよう配置されている。
【0014】
[本発明にかかる板状アンテナにおける各部品の説明]
図3ないし
図8の説明を行う前に、本発明の実施例の板状アンテナ1を構成する各部品の説明を
図9ないし
図16を参照して説明する。
図9(a)(b)(c)に上ケース10の構成を示す。
図9(a)は上ケース10の構成を示す平面図であり、
図9(b)は上ケース10の構成を示す側面図であり、
図9(c)は上ケース10の構成を示す正面図である。
これらの図に示す上ケース10は合成樹脂製とされており、下面が開口された箱状の形状とされている。上ケース10は、正方形状の上面板10aと、上面板10aの周囲の4縁のそれぞれから上面板10aから下方に向かって次第に幅が広がるよう斜めに立設する矩形リング状とされた立設壁10bとを有している。立設壁10bの4つの角部は丸みを帯びており角部のそれぞれから下方へほぼ垂直に突出する断面が丸みを帯びた嵌入片10cが設けられている。また、1つの立設壁10bのほぼ中央の縁から下方へほぼ垂直に突出する半円状の溝が形成された押さえ片10eが設けられている。さらに、押さえ片10eが設けられている立設壁10bにおいて、押さえ片10eの両側における内側面から下方へほぼ垂直にそれぞれ突出する係合爪10dが設けられ、この立設壁10bに隣接する2つの立設壁10bの角部近傍の内側面のそれぞれから下方へほぼ垂直に突出する係合爪10dが設けられている。なお、押さえ片10eが設けられている立設壁10bに対向する立設壁10bには係合爪10dは設けられていない。各係合爪10dの先端には上面板10aに向かって次第に幅が広くなるテーパ状の内側に向かう爪が形成されている。
【0015】
図10(a)(b)(c)に下ケース11の構成を示す。
図11(a)は下ケース11の構成を示す斜視図であり、
図11(b)は下ケース11の構成を示す平面図であり、
図10(c)は下ケース11の構成を示す側面図である。
これらの図に示す下ケース11は合成樹脂製とされており、上面が開口された箱状の形状とされている。下ケース11は、正方形状の下面板11aと、下面板11aの周囲の4縁のそれぞれから下面板11aに対してほぼ垂直に立設する矩形リング状とされた立設壁11bとを有している。立設壁11bのそれぞれの角部は丸みを帯びており、コ字状を形成する3つの立設壁11bのほぼ中央には中心に向かう所定長さの挿入壁11gが垂直に立設されている。残る1つの立設壁11bのほぼ中央に下端がほぼ半円形状とされた矩形状に切り欠かれた挿入部11eが設けられており、この挿入部11eの内側に位置して対向する2つの矩形板状の挟持片11hが下面板11aから垂直に立設して設けられている。また、下面板11aのほぼ中央部に細長い円筒状の一対のボス11dが互いに離隔されて垂直に立設されている。さらに、上ケース10における係合爪10dの位置に対応する位置であって、それぞれの立設壁11bの内側面に凹状の係合部11fが形成されている。係合部11fは、係合爪10dの爪が係合した際に容易に外れない角部を備える形状の凹部とされている。
【0016】
図11(a)(b)(c)(d)にスペーサ14の構成を示す。
図11(a)はスペーサ14の構成を示す斜視図であり、
図11(b)はスペーサ14の構成を示す平面図であり、
図11(c)はスペーサ14の構成を示す正面図であり、
図11(d)はスペーサ14の構成を示す側面図である。
これらの図に示すスペーサ14は合成樹脂製とされており、十字状の本体部14aにより構成されている。本体部14aは、ほぼ同じ長さの4本の断面矩形の細長い棒状部が互いにほぼ直交して配置されており、本体部14aは高さD2で形成されている。スペーサ14の本体部14aには、隣接する2本の棒状部の中間に断面が矩形状の挿通孔14cがそれそれ形成されている。また、十字状の本体部14aの上面の中央と挿通孔14cが形成されていない棒状部の一方に細長い円筒状のボス14dが形成されていると共に、十字状の本体部14aの下面の中央から突出する細長い円筒状の突部14bが形成されている。
【0017】
図12(a)(b)(c)(d)に励振素子13の構成を示す。
図12(a)は励振素子13の構成を示す斜視図であり、
図12(b)は励振素子13の構成を示す正面図であり、
図12(c)は励振素子13の構成を示す左側面図であり、
図12(d)は励振素子13の構成を示す右側面図である。
これらの図に示す励振素子13は導電性とされており、金属板を加工して作成することが可能とされている。励振素子13は1辺の幅がW2の正方形状とされた本体部13aからなり、本体部13aのほぼ中央に位置決め孔13cが形成されており、さらに、この位置決め孔13cと離隔されて2つめの位置決め孔13cが形成されている。この2つの位置決め孔13cには,スペーサ14の本体部14aの上面に形成されている一対のボス14dがそれぞれ挿通される。これにより、励振素子13はスペーサ14に対して位置決めされてスペーサ14に取り付けられる。また、本体部13aには2つの長孔13bが形成されている。一方の長孔13bは本体部13aの一辺にほぼ平行に形成され、他方の長孔13bは隣接する他の一辺にほぼ平行して形成され、2つの長孔13bはほぼ直行して本体部13aに形成されている。また、それぞれの長孔13bは打ち抜かれて形成されており、長孔13bを打ち抜いた細長い片が下方へ折り曲げられて本体部13aに対して垂直になるよう形成されている。この場合、ほぼ直交して形成された長孔13bから折り曲げられた2つの片が第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとを構成ている。なお、一対の位置決め孔13cにスペーサ14の一対のボス14dをそれぞれ挿通すると、第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとが、スペーサ14に形成されている2つの挿通孔14cにそれぞれ挿通されるようになる。なお、第1給電ピン18aと第2給電ピン18bの長さはL4とされる。
【0018】
図13(a)(b)(c)にアース基板15の構成を示す。
図13(a)はアース基板15の構成を示す平面図であり、
図13(b)はアース基板15の構成を示す側面図であり、
図13(c)はアース基板15の構成を示す背面図である。
これらの図に示すアース基板15は、角部が斜めに切り取られた1辺の幅がW3とされ、厚さがD3とされた正方形状のプリント基板により構成されており、アース基板15のおもて面の全面に形成されている金属箔によりアース素子15aが構成されているとともに、アース基板15の裏面における中央部を除く部位に形成されている金属箔によりアース素子15aが構成されている。アース基板15のおもて面のアース素子15aと裏面のアース素子15aとは複数設けられたスルーホール15fにより接続されている。アース基板15には3つの断面円形の挿通孔15cがほぼ直角三角形の各角になるよう形成されており、ほぼ中央に形成された挿通孔15cにはスペーサ14の下面に形成されている突部14bが挿通とされ、残る2つの挿通孔15cにはスペーサ14の挿通孔14cから突出された励振素子13の第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとがそれぞれ挿通される。これにより、スペーサ14とアース基板15とが位置決めされて固着され、スペーサ14上に取り付けられた励振素子13とアース基板15とが所定の間隔D2を持って対向配置されるよう位置決めされる。さらに、アース基板15の3縁のほぼ中央にそれぞれ断面矩形状の小さい位置決め溝15bが形成されている。アース基板15の残る縁の中央近傍に断面が細長い矩形状の取付孔15eが所定間隔で2つ平行に対向して形成されている。また、この縁の両側とこの縁に隣接する2つの縁の角部の近傍にそれぞれ深さの浅い細長い長方形状の切欠15gが形成されている。この4つの切欠15gには上ケース10の係合爪10dが挿通可能とされる。
【0019】
アース基板15の裏面の中央部には、中央に菱形状に金属箔を取り除いたランド15hが形成され、このランド15hを取り囲むように菱形枠状の90°位相回路15gが形成されている。90°位相回路15gは90°ハイブリッド回路で構成されており、端子P1,P2,P3,P4を有している。そして、90°位相回路15gを取り囲むようにアース素子15aが形成されている。中央に形成された挿通孔15cはランド15hに設けられており、残る2つの挿通孔15cは90°位相回路15gの互いに90°の位相差となる端子P2と端子P3とにそれぞれ設けられている。これにより、残る2つの挿通孔15cに挿通された励振素子13の第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとに互いに90°の位相差を持つ給電信号が供給されるようになる。この場合、端子P1に入力された給電信号は端子P2から90°位相が遅れて出力され、端子P3からは180°位相が遅れて出力される。
【0020】
図14(a)(b)に無給電素子16の構成を示す。
図14(a)は無給電素子16の構成を示す平面図であり、
図14(b)は無給電素子16の構成を示す側面図である。
これらの図に示す無給電素子16は導電性とされており、金属板を加工して作成することが可能とされている。無給電素子16は長方形状とされており、その短辺の長さがL1で長辺の長さがL2とされ、厚さがD4とされた本体部16aから構成されている。本体部16aの中央の両側には、断面円形の嵌合孔16cがそれぞれ形成されている。この嵌合孔16cには下ケース11に形成されているボス11dがそれぞれ挿通される。挿通させることにより、下ケース11に対して位置決めされて無給電素子16を取り付けることができる。また、本体部16aの長辺の一方に深さの浅い細長い長方形状の切欠16bが形成されている。この切欠16bには下ケース11に形成されている挿入壁11gが嵌挿されて、無給電素子16を下ケース11に対して位置決めすることができる。
【0021】
図15(a)(b)(c)にケーブルクランプ17の構成を示す。
図15(a)はケーブルクランプ17の構成を示す斜視図であり、
図15(b)はケーブルクランプ17の構成を示す下面図であり、
図15(c)はケーブルクランプ17の構成を示す側面図である。
これらの図に示すケーブルクランプ17は金属板を加工して作成されており、断面コ字状に形成されている。ケーブルクランプ17は中央部に位置する平面状の頂部17aと、頂部17aの両側がほぼ平行になるよう垂直に折り曲げられて対向された一対の脚部17bとから構成されている。ケーブルクランプ17は、アース基板15のおもて面の取付孔15eに脚部17bの先端部から挿通して、取付孔15eを突き抜けた脚部17bの間に給電ケーブル12のシールド導体の部位を挟持させることにより、給電ケーブル12のシールド導体をアース素子15aに接続している。ケーブルクランプ17の幅はL5とされ、脚部17b同士の外側の長さはL6とされ、高さがH2とされている。
【0022】
図16に給電ケーブル12の構成を示す斜視図を示す。
図16に示す給電ケーブル12は、中心軸上に配置された中心導体12dと、中心導体12dを保持する高周波特性の良好な樹脂製の絶縁筒体12cと絶縁筒体12cを覆うように絶縁筒体12c上に同心で設けられ円筒状のシールド導体とシールド導体を保護するよう円筒状に形成された合成樹脂製の外被12aとから構成されている。そして、外被12aが除去されたシールド導体には金属製の断面円形のシールドリング12bが嵌挿されている。
【0023】
[本発明の実施例の板状アンテナの組立]
次に、本発明の実施例の板状アンテナ1の組み立ての手順について
図3ないし
図8を参照して説明する。
図3は本発明の実施例の板状アンテナ1の構成を斜視図で示す分解組立図であり、
図4は本発明の実施例の板状アンテナ1におけるアンテナモジュールの構成を示す平面図であり、
図5は本発明の実施例の板状アンテナ1におけるアンテナモジュールの構成を示す下面図であり、
図6は本発明の実施例の板状アンテナ1におけるアンテナモジュールの構成を示す背面図であり、
図7は本発明の実施例の板状アンテナ1におけるアンテナモジュールの構成を示す左側面図であり、
図8は本発明の実施例の板状アンテナ1におけるアンテナモジュールの構成を示す右側面図である。
【0024】
本発明の実施例の板状アンテナ1を組み立てる際には、
図3に示すように、スペーサ14上に励振素子13を配置して、スペーサ14の一対のボス14dにそれぞれ励振素子13の位置決め孔13cを挿通させて、励振素子13をスペーサ14上に取り付ける。この取り付けでは励振素子13がスペーサ14上に位置決めされて取り付けられ、励振素子13の裏面から突出している第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとの2つの給電ピン18a,18bがそれぞれスペーサ14の挿通孔14cに挿通され、挿通孔14cを突き抜けた第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとがスペーサ14の裏面から突出する。次いで、アース基板15のおもて面上に励振素子13を取り付けたスペーサ14を配置して、スペーサ14の下面に形成されている突部14bをアース基板15の中央に形成されている挿通孔15cに挿通させると共に、スペーサ14の裏面から突出した第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとを、アース基板15の残る2つの挿通孔15cのそれぞれに挿通させる。次いで、アース基板15の裏面において第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとを90°位相回路15gの端子P2と端子P3とにそれぞれハンダ付けされる。これにより、励振素子13およびスペーサ14が位置決めされてアース基板15に固着され、励振素子13とスペーサ14とアース基板15とが一体になるように固着される。
【0025】
次に、ケーブルクランプ17の一対の脚部17bをアース基板15のおもて面から取付孔15eに挿通し、頂部17aをおもて面の取付孔15eの周囲にハンダ付けする。そして、給電ケーブル12をアース基板15の裏面に配置して、アース基板15を突き抜けたケーブルクランプ17の脚部17bの間に給電ケーブル12の先端部におけるシールド導体に嵌挿されたシールドリング12bを挿入して挟持させる。次いで、給電ケーブル12の中心導体12dを90°位相回路15gの端子P1にハンダ付けにより接続すると共に、一対の脚部17bの間に挟持されたシールド導体とシールドリング12bと脚部17bとをハンダ付けする。これにより、給電ケーブル12が所定の位置に固着されると共に、給電ケーブル12から給電された給電信号が互いに90°の位相差を持って第1給電ピン18aと第2給電ピン18bから出力される。この90°の位相差を持つ給電信号が第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとを介して励振素子13に給電され、励振素子13から円偏波が放射されるようになる。この場合、第2給電ピン18bからの給電信号は第1給電ピン18aからの給電信号より90°位相が遅れるため、励振素子13からは右旋円偏波が放射される。また、励振素子13により受信された右旋円偏波の受信信号は、給電ケーブル12を伝播して給電ケーブル12が接続されている通信機器に供給されるようになる。
【0026】
このようにして
図4ないし
図8に示すアンテナモジュール5が組み立てられる。なお、
図5ないし
図8では無給電素子16が図示されているが、無給電素子16はアンテナモジュール5には取り付けられていない。後述するように、無給電素子16は下ケース11に取り付けられるが、
図5ないし
図8では説明の都合上で無給電素子16を図示している。アンテナモジュール5において、アース基板15の上面と励振素子13との間隔は、スペーサ14の高さであるD2となり、アース基板15の下面と無給電素子16との間隔はD1とされる。すなわち、励振素子13とアース素子15aとの間隔はD2で、無給電素子16とアース素子15aとの間隔はD1となる。
【0027】
次に、下ケース11の2つのボス11dを無給電素子16の嵌合孔16cに嵌合させると共に、無給電素子16に形成されている切欠16bに下ケース11の挿入壁11gを嵌挿させることで、下ケース11の上面に接するよう載置した無給電素子16を下ケース11に取り付ける。これにより、無給電素子16が下ケース11に対して位置決めされて取り付けられる。そして、組み立てたアンテナモジュール5を無給電素子16を取り付けた下ケース11の上に配置して、下ケース11内に収納する。この際に、アース基板15の3つの位置決め溝15bに下ケース11の挿入壁11gがそれぞれ嵌入されて、アース基板15すなわちアンテナモジュール5が位置決めされて下ケース11内に収納され、アース基板15は無給電素子16にも位置決めされるようになる。さらに、給電ケーブル12が下ケース11の挿入部11eに上から挿入されて下ケース11から外部へ給電ケーブル12が引き出されるようになる。次いで、上ケース10をアンテナモジュール5の上に載置し、上ケース10を下ケース11に嵌合する。この際に、上ケース10の4つの嵌入片10cが下ケース11のそれぞれの丸みを帯びた角部に嵌入されると共に、上ケース10の4つの係合爪10dがアース基板15に形成されている切欠15gをそれぞれ通り抜けて下ケース11の4つの係合部11fのそれぞれに係合する。これにより、上ケース10は下ケース11に緊密に固着され、上ケース10と下ケース11とは容易に外れないようになり、本発明の実施例の板状アンテナ1が組み立てられる。
【0028】
[本発明にかかる板状アンテナの寸法および電気的特性]
上記説明した本発明の実施例の板状アンテナ1において、設計周波数を5.8GHzとした時に、励振素子13の1辺の幅W2は約19mm、アース基板15の1辺の幅W3は約26mm、無給電素子16の短辺の長さL1は約17mmで長辺の長さL2は約20mmとされ、励振素子13とアース素子15aとの間隔D2は約2mm、無給電素子16とアース素子15aとの間隔D1が約3mmとされる。また、この時の板状アンテナ1の収納ケース0の1辺の長さW1は約29mmとなり、その高さH1は約10mmとなる。さらに、スペーサ14における十字状の本体部14aの縦横は励振素子13の1辺の幅W2より若干短くされ、スペーサ14の高さD2は約2mmとされ、励振素子13の第1給電ピン18aと第2給電ピン18bとの長さL4は約4.2mmとされ、アース基板15の厚さD3は約1mmとされ、無給電素子16の厚さD4は約0.2mmとされ、ケーブルクランプ17の幅L5は約3mm、脚部17b同士の外側の長さL6は約3.5mm、高さH2は約4.18mmとされている。ここで、5.8GHzの自由空間波長をλとすると、長さW2は約0.37λとなり、長さW3は約0.5λとなり、長さL1は約0.33λ、長さL2は約0.41λとなり、長さD1は約0.058λとなり、長さD2は約0.039λとなる。
【0029】
上記した寸法とされた際の本発明の実施例の板状アンテナ1において、周波数5.8GHzにおける方位角に対する放射強度特性を
図17に示す。
図17を参照すると、放射強度のピーク値として+4.22dBが得られており、この時の方位角は+0.4°となる。また、放射強度が3dB減衰するまでの方位角の範囲である半値角は63.55°が得られており、アース素子15aの1辺の長さが26mmとされた際に、ビームが絞られた半値角が70°以下の指向性とされた放射強度特性が得られることが分かる。すなわち、本発明の実施例の板状アンテナ1では、設計周波数の波長をλとした際に板状アンテナ1のアンテナモジュール5の大きさが約0.5λ以下に小型化されても、70°以下の半値角が得られる板状アンテナとすることができる。これにより、本発明の実施例の板状アンテナ1では、アンテナモジュール5の大きさが約0.5λ以下に小型化されても所望の方向以外からの電波を受けない指向性とすることができる。なお、
図17に示す方位角に対する放射強度特性は、5.79GHz~5.84GHzの周波数帯域においてもほぼ同様の特性となる。
【0030】
次に、本発明の実施例の板状アンテナ1において、無給電素子16の大きさを変えた際の半値角の変化について考察する。
無給電素子16の短辺の長さL1を除いて上記した寸法とされた際の本発明の実施例の板状アンテナ1において、周波数5.8GHzにおける無給電素子16の短辺の長さL1に対する半値角の特性を
図18に示す。
図18では、長さL1を5mm~20mmまで変えたときの半値角特性を示しており、
図18を参照すると、長さL1を5mmから20mmまで長くするにつれて半値角は約71°から約63°まで小さくなっていき放射ビームが次第に狭まっていくことが分かる。長さL1が約11mmとなった時に目標とする70°の半値角が得られる。ここで、5.8GHzの自由空間波長をλとすると、約11mmの長さL1は約0.21λと表される。すなわち、本発明の実施例の板状アンテナ1では、無給電素子16の短辺の長さL1を0.5λ以下である約0.21λと短くして小型化しても、70°以下の半値角が得られる板状アンテナとすることができる。これにより、本発明の実施例の板状アンテナ1では、無給電素子16の短辺の長さL1を0.5λ以下である約0.21λと短くして小型化しても、所望の方向以外からの電波を受けない指向性とすることができる。なお、
図18に示す長さL1に対する半値角の特性は、5.79GHz~5.84GHzの周波数帯域においてもほぼ同様の特性となる。
【0031】
次に、本発明の実施例の板状アンテナ1において、アース素子15aの大きさを変えた際の半値角の変化について考察する。アース素子15aの寸法はアース基板15の寸法と同等であるので、アース素子15aの1辺の長さはW3となる。
アース素子15aの1辺の長さW3を除いて上記した寸法とされた際の本発明の実施例の板状アンテナ1において、周波数5.8GHzにおけるアース素子15aの1辺の長さW3に対する半値角の特性を
図19に示す。
図19ではアース素子15aの1辺の長さW3を20mm~50mmまで変えたときの半値角特性を示しており、
図19を参照すると、長さW3を20mmから50mmまで長くするにつれて半値角は約73°から約63°まで小さくなっていき放射ビームが次第に狭まっていくことが分かる。長さW3が約25mmとなった時に目標とする70°の半値角が得られる。ここで、5.8GHzの自由空間波長をλとすると、約25mmの長さW3は約0.48λと表される。すなわち、アース素子15aの1辺の長さW3を0.5λ以下である約0.48λと短くしても、70°以下の半値角が得られる板状アンテナとすることができる。これにより、本発明の実施例の板状アンテナ1では、アース素子15aの1辺の長さW3を0.5λ以下である約0.48λと短くしても、所望の方向以外からの電波を受けない指向性とすることができる。なお、
図19に示す長さW3に対する半値角の特性は、5.79GHz~5.84GHzの周波数帯域においてもほぼ同様の特性となる。
このように、アース素子15aの1辺の長さW3を約0.48λの長さとアース素子15aを小型化しても半値角の目標である70°の半値角を得ることができる。その際に、無給電素子16は短辺の長さL1を約0.21λとアース素子15aより小型化することができると共に、励振素子13の1辺の長さW2は約0.37λとアース素子11より小型化することができる。このように、本発明にかかる板状アンテナ1においては、設計周波数の波長をλとした際に板状アンテナの大きさが約0.5λ以下に小型化されても、半値角として70°以下を得ることができ、所望の方向以外からの電波を受けない指向性とすることができるようになる。
【0032】
[本発明にかかる板状アンテナの変形例]
本発明の実施例の板状アンテナ1においては、給電ケーブル12の断線や部品の接続不良を給電ケーブル12に接続された通信機側において検知する機能を付加することができる。このような機能を有させるには、
図13(a)に示すアース基板15の裏面において、90°位相線路15gのプリントとアース素子15aとの間にダイアグ抵抗と云われるkΩオーダの抵抗を接続する。これにより、給電ケーブル12の中心導体12dからの電流が90°位相回路15gとダイアグ抵抗とを通ってアース素子15aであるグランドに流れるようになる。アース素子15aには給電ケーブル12のシールド導体が接続されていることから、正常な状態においては通信機側から板状アンテナ1の励振部とダイアグ抵抗の合成抵抗が見える。しかしながら、給電ケーブル12の断線や部品の接続不良が発生すると、合成抵抗が開放端相当となるため、通信機側から給電ケーブル12の断線や部品の接続不良を検知することができる。
また、90°位相回路15gのインピーダンス調整を、90°位相回路15gの角部とアース素子15aとの間にLCチップを接続することで行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した本発明にかかる実施例の板状アンテナにおいて、板状アンテナの設計周波数や寸法の値は、上記記載した値に限定されるものではなく、板状アンテナにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏することができる値とされていれば、上記記載した値に限定されるものではない。すなわち、寸法の値には、上記記載した値の上下に許容範囲があり、この許容範囲は板状アンテナにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏する範囲とされている。
以上説明した本発明の板状アンテナでは、DSRCやETCのアンテナに適用することができ、5.79GHz~5.84GHzとされる5.8GHz帯を利用したETC用のアンテナとすることができる。この際には、上記説明したように板状アンテナの大きさを小型化しても目標とする半値角の指向性を得ることができるようになる。また、本発明の板状アンテナでは90°位相回路を90°ハイブリッド回路で構成したが、これに限らず、2つの出力の位相差が90°となる位相回路であればどのような位相回路でも用いることができる。また、本発明の板状アンテナは、右旋円偏波のアンテナとして説明したが、左旋円偏波のアンテナとしても良い。この場合は、第1給電ピンに第2給電ピンより90°の位相が遅れた給電信号を90°位相回路から供給するようにすればよい。
【符号の説明】
【0034】
0 収納ケース、1 板状アンテナ、5 アンテナモジュール、10 上ケース、10a 上面板、10b 立設壁、10c 嵌入片、10d 係合爪、10e 押さえ片、11 下ケース、11a 下面板、11b 立設壁、11d ボス、11e 挿入部、11f 係合部、11g 挿入壁、11h 挟持片、12 給電ケーブル、12a 外被、12b シールドリング、12c 絶縁筒体、12d 中心導体、13 励振素子、13a 本体部、13b 長孔、13c 位置決め孔、14 スペーサ、14a 本体部、14b 突部、14c 挿通孔、14d ボス、15 アース基板、15a アース素子、15b 位置決め溝、15c 挿通孔、15d 係合孔、15e 取付孔、15f スルーホール、15g 90°位相回路、15g 切欠、15h ランド、16 無給電素子、16a 本体部、16b 切欠、16c 嵌合孔、17 ケーブルクランプ、17a 頂部、17b 脚部、18a 第1給電ピン、18b 第2給電ピン、100 板状アンテナ、110 励振素子、110a 給電ピン、111 アース素子、112 給電ケーブル、114 スペーサ