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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】容器製造方法及び容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240318BHJP
   A45D 40/22 20060101ALI20240318BHJP
   B65D 25/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A45D33/00 620Z
A45D33/00 610C
A45D33/00 650A
A45D40/22
B65D25/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020079548
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021171489
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0025871(KR,A)
【文献】実開平05-048807(JP,U)
【文献】特開2009-082404(JP,A)
【文献】特開2019-164274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0140936(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収納空間を区画形成する本体側周壁と底壁とを備えた容器本体と、
蓋側周壁と天壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着されて前記収納空間の開口を覆う蓋体と、を有する容器を製造する容器製造方法であって、
第1方向の熱収縮率が前記第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有するフィルムに、スリットを形成するスリット形成工程と、
前記容器本体を、前記スリットが形成された前記フィルムをインサートとしたインサート成形により、前記本体側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記底壁を構成する前記フィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成される構成に形成する工程、及び/又は、前記蓋体を、前記スリットが形成された前記フィルムをインサートとしたインサート成形により、前記蓋側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記天壁を構成する前記フィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成される構成に形成する工程、を有するインサート成形工程と、
前記インサート成形工程の後、前記フィルムを加熱して熱収縮させて前記フィルムに残留ひずみを生じさせるとともに、前記スリットを円形または楕円形の孔に変形させるフィルム加熱工程と、を有することを特徴とする、容器製造方法。
【請求項2】
前記スリット形成工程において、前記フィルムに、前記第2方向に沿って前記スリットを形成する、請求項1に記載の容器製造方法。
【請求項3】
前記インサート成形工程において、前記容器本体を形成する、請求項1または2に記載の容器製造方法。
【請求項4】
前記底壁を、少なくとも前記収納空間の底部分において前記フィルムのみで構成された部分を有するものとし、
前記スリット形成工程において、前記フィルムの、前記フィルムのみで構成される部分に前記スリットを形成する、請求項3に記載の容器製造方法。
【請求項5】
前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器である、請求項1~4の何
れか1項に記載の容器製造方法。
【請求項6】
内容物の収納空間を区画形成する本体側周壁と底壁とを備えた容器本体と、
蓋側周壁と天壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着されて前記収納空間の開口を覆う蓋体と、を有する容器であって、
前記容器本体が
前記本体側周壁を構成する環状の枠体と、
前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記底壁を構成するフィルムと、を有し、
前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成され、
前記フィルムが残留ひずみを有するとともに円形または楕円形の孔を有しており、
及び/又は
前記蓋体が、
前記蓋側周壁を構成する環状の枠体と、
前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記天壁を構成するフィルムと、を有し、
前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成され、
前記フィルムが残留ひずみを有するとともに円形または楕円形の孔を有していることを特徴とする、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と、容器本体に開閉自在に装着された蓋体と、を有する容器の製造方法及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を収納する容器として、内容物の収納空間を区画形成する本体側周壁と底壁とを備えた容器本体と、蓋側周壁と天壁とを備え、容器本体に開閉自在に装着されて収納空間の開口を覆う蓋体と、を有するものが知られている。
【0003】
このような容器として、例えば特許文献1には、ファンデーション等の固形の化粧料を内容物として収納する扁平型のコンパクト容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-80284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成を有する従来の容器において、容器を軽量化するために、容器本体や蓋体の肉厚を薄くすることが求められている。容器本体や蓋体の肉厚を薄くすれば、容器に使用される合成樹脂材料の量を減らして、環境負荷を低減することもできる。
【0006】
しかし、上記従来の容器では、容器本体及び蓋体を、それぞれ合成樹脂材料の射出成形により形成するようにしているので、成形技術上、容器本体や蓋体の肉厚の薄型化には限界があり、そのため容器を十分に軽量化することができない、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために開発されたものであり、その目的は、より軽量化された容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の容器製造方法は、内容物の収納空間を区画形成する本体側周壁と底壁とを備えた容器本体と、蓋側周壁と天壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着されて前記収納空間の開口を覆う蓋体と、を有する容器を製造する容器製造方法であって、第1方向の熱収縮率が前記第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有するフィルムに、スリットを形成するスリット形成工程と、前記容器本体を、前記スリットが形成された前記フィルムをインサートとしたインサート成形により、前記本体側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記底壁を構成する前記フィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成される構成に形成する工程、及び/又は、前記蓋体を、前記スリットが形成された前記フィルムをインサートとしたインサート成形により、前記蓋側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記天壁を構成する前記フィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成される構成に形成する工程、を有するインサート成形工程と、前記インサート成形工程の後、前記フィルムを加熱して熱収縮させて前記フィルムに残留ひずみを生じさせるとともに、前記スリットを円形または楕円形の孔に変形させるフィルム加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の容器製造方法は、上記構成において、前記スリット形成工程において、前記フィルムに、前記第2方向に沿って前記スリットを形成するのが好ましい。
【0010】
本発明の容器製造方法は、上記構成において、前記インサート成形工程において、前記容器本体を形成するのが好ましい。
【0011】
本発明の容器製造方法は、上記構成において、前記底壁を、少なくとも前記収納空間の底部分において前記フィルムのみで構成された部分を有するものとし、前記スリット形成工程において、前記フィルムの、前記フィルムのみで構成される部分に前記スリットを形成するのが好ましい。
【0012】
本発明の容器製造方法は、上記構成において、前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器であるのが好ましい。
【0013】
本発明の容器は、内容物の収納空間を区画形成する本体側周壁と底壁とを備えた容器本体と、蓋側周壁と天壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着されて前記収納空間の開口を覆う蓋体と、を有する容器であって、前記容器本体が、前記本体側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記底壁を構成するフィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成され、前記フィルムが残留ひずみを有するとともに円形または楕円形の孔を有しており、及び/又は前記蓋体が、前記蓋側周壁を構成する環状の枠体と、前記枠体に固定されて前記枠体の一端側の開口を閉塞して前記天壁を構成するフィルムと、を有し、前記枠体の開口に対応する部分が前記フィルムのみで構成され、前記フィルムが残留ひずみを有するとともに円形または楕円形の孔を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より軽量化された容器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態である容器の断面図である。
図2図1に示す容器の、後側部分を拡大して示す拡大断面図である。
図3図1に示す容器の、前側部分を拡大して示す拡大断面図である。
図4図1に示す容器本体の平面図である。
図5】スリット形成工程においてスリットが形成された第1フィルムの平面図である。
図6】インサート成形工程により形成された容器本体の断面図である。
図7】フィルム加熱工程におけるスリットの孔への変形を示す説明図である。
図8】(a)、(b)、(c)は、それぞれフィルムに設けられる孔の形状の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明について詳細に例示説明する。以下ではまず、本発明の一実施の形態に係る容器製造方法により製造された本発明の一実施の形態に係る容器1の構成について説明する。
【0017】
なお、本明細書においては、「上」は、後述する容器本体10に対して閉じた状態の後述する蓋体20が位置する側であり、「下」はその反対側である。また、「前」は、蓋体20が閉じた状態において後述するヒンジ軸24に対して後述する係合解除部材33が位置する側であり、「後」はその反対側である。さらに、幅方向は、上下方向及び前後方向に垂直な方向である。
【0018】
本実施の形態に係る容器1は、内容物として、例えば固形のファンデーション等の化粧料を収納する用途に用いられる扁平型のコンパクト容器である。
【0019】
図1図3に示すように、容器1は、容器本体10と蓋体20とを有している。
【0020】
容器本体10は、本体側周壁11と底壁12とを備えた矩形皿状となっており、本体側周壁11と底壁12とで区画形成された収納空間13を備えている。容器本体10は、収納空間13に内容物を収納することができる。
【0021】
図4に示すように、本実施の形態では、容器本体10は、収納空間13が、隔壁14によって幅方向に並ぶ2つの空間すなわち第1収納空間13aと第2収納空間13bとに分割された構成となっている。
【0022】
第1収納空間13aは、内容物である化粧料が充填されたレフィル容器15を収納可能に構成されている。すなわち、本実施の形態では、容器本体10は、内容物である化粧料を、レフィル容器15に充填された状態でレフィル容器15とともに収納空間13に収納する構成となっている。
【0023】
なお、容器本体10は、収納空間13に、内容物ないしレフィル容器15への衝撃を吸収するための衝撃吸収部を備えた構成とすることもできる。
【0024】
第2収納空間13bは、例えばパフ等の、内容物を塗布対象に塗布するための塗布具16を収納可能に構成されている。
【0025】
図1図3に示すように、蓋体20は、蓋側周壁21と天壁22とを備えた矩形蓋状となっており、容器本体10に開閉自在に装着されている。蓋体20は収納空間13の開口を覆っており、容器本体10に対して開かれると収納空間13の開口を外部に開放する。
【0026】
本実施の形態では、蓋体20の蓋側周壁21の後側部分(図1において右側部分)には連結部23が一体に設けられており、蓋体20は連結部23においてヒンジ軸24により容器本体10の後側部分に回動自在に連結されている。ヒンジ軸24は、容器本体10ないし蓋体20の後側部分の一辺に沿って延びている。これにより、蓋体20は、容器本体10に対してヒンジ軸24を中心として回動することで、容器本体10の収納空間13を開閉することができる。蓋体20の開閉方向は上下方向である。
【0027】
容器1は、蓋体20を閉状態に保持するためのフック機構30を有している。図3に示すように、フック機構30は、容器本体10の、本体側周壁11の前側部分に一体に設けられた係止突起31と、蓋体20の、天壁22の前側部分に一体に設けられたフック部32とを有している。蓋体20が閉状態のときには、フック部32が係止突起31に下側からアンダーカット係合しており、これにより蓋体20は閉状態に保持される。一方、フック部32が係止突起31に対して上方に移動して互いの係合が解除されると、蓋体20は開くことが可能な状態となる。
【0028】
容器本体10の前側部分には、その一部を外部に露出させて係合解除部材33が装着されている。係合解除部材33は、容器内方に向けた押込み方向に押込み操作されることで、フック部32の係止突起31への係合を解除することができる。
【0029】
本実施の形態では、係合解除部材33は、合成樹脂材料による一体成型品となっており、操作部33a、スライド壁33b、係止爪33c及び押上げ片33dを有している。
【0030】
操作部33aは前後方向に垂直な壁状となっており、その前面は外部に露出している。スライド壁33bは容器内方に向けて延びる板状となっており、操作部33aの下端に一体に連なっている。容器本体10は、本体側周壁11の下端部分から前方に突出する支持壁17を備えており、係合解除部材33は、スライド壁33bが支持壁17に摺動自在に支持されることで、前後方向に移動自在となっている。係止爪33cはスライド壁33bの下面に設けられており、支持壁17の上面に設けられた溝部17aに配置されて係合解除部材33を容器本体10に対して抜け止め保持するようになっている。押上げ片33dは、操作部33aから後方に向けて突出しており、操作部33aに対して上下方向に揺動自在となっている。押上げ片33dに対応して、容器本体10の本体側周壁11の前面には、後方側ほど上方に位置するように傾斜した傾斜壁18が一体に設けられている。
【0031】
係合解除部材33が図3に示す初期位置から押込み方向に押し込まれると、押上げ片33dが、傾斜壁18に沿って上方に移動し、フック機構30のフック部32を上方に押し上げて係止突起31から離脱させる。このように、蓋体20が閉じられた状態において、係合解除部材33を初期位置から押込み方向に押し込むことにより、押上げ片33dによりフック部32を係止突起31から離脱させて、蓋体20を開くことが可能な状態とすることができる。
【0032】
図1図3に示すように、蓋体20は、蓋側周壁21を構成する環状の枠体40と、枠体40に固定されて枠体40の一端側の開口を閉塞するとともに残留ひずみを有するフィルム41とを有しており、天壁22が、フィルム41のみで構成された部分を有する構成となっている。
【0033】
蓋体20の天壁22のフィルム41のみで構成された部分には鏡42が固定されている。鏡42は、蓋体20を開いたときに外部に露出し、使用者は、内容物を使用しながら鏡42を見ることができる。
【0034】
同様に、図1図4に示すように、容器本体10は、本体側周壁11を構成する環状の枠体60と、枠体60に固定されて枠体60の一端側の開口を閉塞するとともに残留ひずみを有するフィルム61とを有しており、底壁12が、フィルム61のみで構成された部分を有する構成となっている。
【0035】
本体側周壁11を構成する枠体60は、前後左右の4つの辺部分を備えて本体側周壁11を構成する周壁部分60aと、周壁部分60aの外側に嵌合固定された外側部材60bとを有しており、周壁部分60aの内側は開口60cとなっている。開口60cは、容器本体10の第1収納空間13a及び第2収納空間13bそれぞれの底部分に対応している。枠体60は、合成樹脂製である。本実施の形態では、枠体60は、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)製である。
【0036】
なお、周壁部分60aの前側部分の幅方向中央部に係止突起31及び傾斜壁18が一体に設けられ、外側部材60bの前側部分の下端に支持壁17が一体に設けられている。
【0037】
フィルム61は、枠体60の周壁部分60aないし外側部材60bの厚みよりも厚みが薄い合成樹脂製の柔軟なフィルムで構成されている。本実施の形態では、フィルム61は、ポリスチレン(PS)製の延伸フィルムであり、所定の第1方向の熱収縮率が第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有している。フィルム61は、例えばスチームや熱風等が吹き付けられて加熱されることにより熱収縮する。
【0038】
フィルム61は、枠体60の開口60cを覆うとともに枠体60の外側部材60bの下側を向く表面全体を覆うフィルム本体部61aと、外側部材60bの側面に達して当該側面の一部を覆うフィルム張出し部61bとを有しており、外側部材60bの下側を向く表面全体及び側面に固定されている。
【0039】
枠体60に固定されたフィルム61の、フィルム本体部61aの開口60cに配置された部分は残留ひずみを有している。これにより、フィルム本体部61aは、開口60cの部分において張った状態となって外側部材60bと略平行な平面状となっている。すなわち、枠体60に固定されたフィルム本体部61aの開口60cに配置された部分は、内部に残留応力を有する状態となっている。
【0040】
なお、フィルム61は、枠体60に固定されて開口60cの全体を覆っていれば、外側部材60bの一部や外側部材60bの側壁を覆わない構成としてもよい。また、フィルム61は、その全体に残留ひずみを有していてもよい。
【0041】
図4に示すように、枠体60に固定されたフィルム61の、フィルム本体部61aの第2収納空間13bに対応する開口60cに配置された部分には、円形または楕円形の孔62が設けられている。すなわち、パフ等の塗布具16を収納する第2収納空間13bには、塗布具16に吸湿された湿度を開放するために孔62が設けられている。本実施の形態では、フィルム61の当該部分には、16個の孔62が、4個ずつ前後に等間隔に並ぶとともに左右方向に4列に並べて設けられている。図4においては、便宜上1つの孔のみに符号を付している。
【0042】
上記のように、本実施の形態の容器1では、容器本体10は、環状の枠体60にフィルム61が固定されることで、底壁12の開口60cに対応する部分がフィルム61のみで構成されたものとなっている。特に、本実施の形態では、容器本体10は、底壁12が、少なくとも収納空間13の底部分においてフィルム61のみで構成されたものとなっている。したがって、容器本体10を、本体側周壁11と底壁12の全体を射出成形により形成した構成とした場合に比べて、底壁12の大部分において当該底壁12の厚みを薄くすることができる。これにより、容器1に使用される合成樹脂材料の量を減らして、容器1を軽量化することができる。また、底壁12の大部分においてその肉厚を薄くすることができるので、容器1を薄型化することもできる。さらに、容器1に使用される合成樹脂材料の量を減らすことにより、環境負荷を低減することができる。
【0043】
また、本実施の形態の容器1では、底壁12を、少なくとも収納空間13の底部分においてフィルム61のみで構成されるようにしたので、底壁12の、容器本体10を効果的に薄くすることができる。これにより、容器1を、より効果的に薄型化することができるとともに、容器1に使用される合成樹脂材料の量をより減らして、容器1をさらに軽量化することができるとともに、環境負荷をさらに低減することができる。
【0044】
さらに、本実施の形態の容器1では、枠体60に固定されたフィルム61を、残留ひずみを有する構成としたので、フィルム61(フィルム本体部61a)の開口60cに配置された部分を、外側部材60bと略平行な平面状に張った状態とすることができる。これにより、容器本体10のフィルム61のみで構成された部分に、皺や弛み、歪み等が生じることを抑制して、容器1の美観を高めることができる。
【0045】
さらに、本実施の形態の容器1では、フィルム本体部61aの第2収納空間13bに対応する開口60cに配置された部分に孔62を設けるようにしたので、容器本体10の第2収納空間13bの通気性を高め、これにより塗布具16に吸湿された湿度が外部に開放されるようにして、塗布具16の劣化等を抑制することができる。
【0046】
本実施の形態の容器1では、内容物をレフィル容器15に充填した状態で容器本体10の第1収納空間13aに収納する構成としており、第1収納空間13aに収納されたレフィル容器15の底部分と第1収納空間13aの底部分を構成するフィルム61との間には若干の隙間が設けられている。このような構成により、容器本体10の第1収納空間13aの底部分をフィルム61のみで構成するようにしても、第1収納空間13aへの内容物の収納時や、内容物の使用時等において、レフィル容器15や内容物に加えられる荷重がフィルム61に直接伝達されることを防止して、フィルム61の破損を抑制することができる。また、フィルム61は薄肉で柔軟に伸縮が可能であるので、フィルム61を底壁12の外側から強制的に容器内方に向けて押し込むことで、レフィル容器15を第1収納空間13aから容易に取り外すことができる。
【0047】
容器本体10は、外側部材60bとフィルム61とが一体化されたインサート成形品となっている。本実施の形態では、容器本体10は、外側部材60bとフィルム61とが一体化されたインサート成形品とされ、当該インサート成形品に周壁部分60aが嵌合固定により組み合わされた構成となっている。このように、容器本体10の一部をインサート成形品とすることで、容器本体10を、容易且つ精度よく製造することができる。
【0048】
インサート成形品である容器本体10を備えた上記構成の容器1は、本発明の一実施の形態である容器製造方法により製造することができる。以下に、本発明の一実施の形態である容器製造方法により容器本体10を製造する手順を示す。
【0049】
まず、図5に示すように、枠体60の外側部材60bに対応した形状のフィルム本体部61aと、フィルム本体部61aの各辺から張り出す8つのフィルム張出し部61bとを備えた所定形状のフィルム61を用意する。フィルム61は、上記の通り、ポリスチレン製の延伸フィルムであり、左右方向に対応する第1方向の熱収縮率が第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有するものである。
【0050】
次に、フィルム61の、第2収納空間13bに対応する開口60cに配置されてフィルム61のみで構成される部分に、それぞれ第2方向に沿って延びる複数のスリット70を形成する(スリット形成工程)。複数のスリット70は、複数の孔62に対応した配置で形成する。それぞれのスリット70は、フィルム61をカッター等の刃物で切った切れ目である。
【0051】
次に、複数のスリット70が形成されたフィルム61をインサートとしたインサート成形により、外側部材60bと、外側部材60bに固定されて外側部材60bの一端側の開口を閉塞するフィルム61と、を有する構成のインサート成形品(容器本体10)を形成する(インサート成形工程)。
【0052】
より具体的には、複数のスリット70が形成されたフィルム61を射出成形用の金型にインサートとして配置し、次いで、金型の内部に、所定の温度にまで加熱されて溶融状態となった合成樹脂材料(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)を射出してインサート成形を行う。これにより、図6に示すように、外側部材60bにフィルム61が一体に固定されたインサート成形品を形成する。その際、射出成形による合成樹脂材料の収縮等により、フィルム61に皺や弛みが生じることになる。
【0053】
次に、インサート成形工程により外側部材60bに固定されたフィルム61を、例えばスチームや熱風等を吹き付けることで加熱して、フィルム61の、フィルム61のみで構成された部分(開口60cを覆う部分)を熱収縮させ、皺や弛み、歪みを除去するとともに残留ひずみが残った状態とする(フィルム加熱工程)。これにより、容器本体10のフィルム61のみで構成された部分を、フィルム61が残留ひずみを有して張った状態となって皺や弛み、歪み等がない、美観の高いものとすることができる。
【0054】
次に、別途射出成形により形成された周壁部分60aが外側部材60bに嵌合固定により組み合わされて容器本体10が構成される。
【0055】
このように、本実施の形態の容器製造方法によれば、環状の枠体60を構成する外側部材60bにフィルム61が固定されることで、底壁12の開口60cに対応する部分がフィルム61のみで構成された薄型で軽量化された容器本体10を備えた容器1を、容易に製造することができる。
【0056】
また、本実施の形態の容器製造方法では、フィルム加熱工程において、外側部材60bに固定されたフィルム61を加熱し、フィルム61のフィルム61のみで構成された部分を熱収縮させることで、図7に示すように、フィルム61のフィルム61のみで構成された部分に形成された複数のスリット70を、それぞれ円形の孔62に変形させる。すなわち、フィルム61は、左右方向に対応する第1方向の熱収縮率が第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有するものであり、これに対して複数のスリット70は、それぞれ第2方向に沿って延びるように形成されているので、フィルム加熱工程において、フィルム61が第2方向よりも第1方向に向けてより大きく熱収縮し、これによりスリット70が第2方向よりも第1方向により大きく引き伸ばされて円形に変形する。
【0057】
このように、本実施の形態の容器製造方法では、スリット形成工程において、第1方向の熱収縮率が第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率よりも大きい熱収縮性を有するフィルム61に、第2方向に沿ってスリット70を形成しておき、インサート成形工程において枠体60の外側部材60bにフィルム61を一体的に固定した後、フィルム加熱工程にいてフィルム61を熱収縮させてスリット70を円形に変形させるようにしたので、フィルム61を枠体60の外側部材60bに一体的に固定した後に抜き型などを用いてフィルム61に孔62を形成することを不要として、枠体60の外側部材60bに固定されたフィルム61に円形の孔62を容易に設けることができる。したがって、この容器本体10を備えた容器1の生産性を高めることができる。
【0058】
容器本体10のフィルム61に設ける孔62は、円形に限らず、楕円形であってもよい。例えば、フィルム加熱工程におけるフィルム61の加熱の程度やフィルム61の第1方向と第2方向の熱収縮率の差などにより、フィルム加熱工程において、スリット70が、図8(a)に示すように、第1方向が短軸、第2方向が長軸となる楕円形に変形する場合があるが、この場合、フィルム61の孔62を当該楕円形のものとしてもよい。また、フィルム加熱工程におけるフィルム61の加熱の程度やフィルム61の第1方向と第2方向の熱収縮率の差などにより、フィルム加熱工程において、スリット70が、図8(b)に示すように、第1方向が長軸、第2方向が短軸となる楕円形に変形する場合があるが、この場合、フィルム61の孔62を当該楕円形のものとしてもよい。さらに、図8(c)に示すように、フィルム形成工程において、フィルム61に、第1方向及び第2方向に対して傾斜した方向に沿って延びるようにスリット70を形成するようにしてもよい。この場合、フィルム加熱工程において、スリット70が、長軸及び短軸が、それぞれ第1方向及び第2方向に対して傾斜する楕円形に変形することで、楕円形の孔62が形成される。
【0059】
なお、楕円形の孔62は、数学的な完全な楕円(2つの焦点からの距離の和が一定となるような点の集合から作られる曲線)からなる形状に限らず、楕円のような形状であればよい。
【0060】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0061】
例えば、前記実施の形態では、本実施の形態の容器製造方法により容器本体10を形成する場合を示したが、蓋体20の天壁22のフィルム41のみで形成された部分に孔を設けた構成とし、これを本実施の形態の容器製造方法により形成するようにしてもよい。
【0062】
また、容器本体10は、枠体60が、周壁部分60aと外側部材60bとが一体化された構成とすることもできる。
【0063】
さらに、前記実施の形態では、フィルム61として、ポリスチレン製の延伸フィルムを用いるようにしているが、これに限らず、加熱されることで収縮するものであれば、例えばポリプロピレン(PP)等の他の合成樹脂材料製のフィルムを用いてもよい。
【0064】
さらに、前記実施の形態では、枠体60を、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂製としたが、これに限らず、他の合成樹脂材料製としてもよい。この場合、フィルム61として、枠体60に接着可能な材質ないし層構成のものが用いられる。
【0065】
さらに、前記実施の形態では、フィルム加熱工程において、スチームや熱風等を吹き付けることでフィルム61を加熱するようにしているが、これに限らず、加熱の方法は種々変更可能である。
【0066】
さらに、前記実施の形態では、容器1を矩形で平たい形状のものとしたが、これに限らず、その形状は種々変更可能である。
【0067】
さらに、前記実施の形態においては、容器1を、内容物としてファンデーション等の化粧料を収納するものとしたが、これに限らず、内容物として種々のものを収納する用途に用いられるものとすることができる。
【0068】
さらに、前記実施の形態においては、蓋体20は、ヒンジ軸24により容器本体10に連結されて容器本体10に対してヒンジ軸24を中心として回動することで開閉する構成とされているが、これに限らず、例えば、容器本体10に対してスライド式に開閉するものや、容器本体10に上方から組付けられる構成とするなど、蓋体20の容器本体10に対する開閉構造は種々変更可能である。
【0069】
さらに、フック機構30の構造、係合解除部材33及び傾斜壁18の構成も種々変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 容器
10 容器本体
11 本体側周壁
12 底壁
13 収納空間
13a 第1収納空間
13b 第2収納空間
14 隔壁
15 レフィル容器
16 塗布具
17 支持壁
17a 溝部
18 傾斜壁
20 蓋体
21 蓋側周壁
22 天壁
23 連結部
24 ヒンジ軸
30 フック機構
31 係止突起
32 フック部
33 係合解除部材
33a 操作部
33b スライド壁
33c 係止爪
33d 押上げ片
40 枠体
41 第1フィルム
42 鏡
60 枠体
60a 周壁部分
60b 外側部材
60c 開口
61 フィルム
61a フィルム本体部
61b フィルム張出し部
62 孔
70 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8